説明

口腔ケア製品ならびにその使用方法および製造方法

本発明は、有効量の遊離または塩形の塩基性アミノ酸を抗細菌剤と共に含む口腔ケア組成物、ならびにそれらの組成物を使用および製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、米国特許出願No.61/027,431、2008年2月8日出願;米国特許出願No.61/027,432、2008年2月8日出願;および米国特許出願No.61/027,420、2008年2月8日出願;に基づく優先権を主張し、それらの内容を本明細書に援用する。
【0002】
[0002] 本発明は、遊離または塩形の塩基性アミノ酸および抗細菌剤、たとえばトリクロサン(triclosan)を含む口腔ケア組成物、ならびにこれらの組成物を使用および製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] アルギニンその他の塩基性アミノ酸は口腔ケアに用いるものとして提唱され、空洞形成および歯の過敏性に対抗するのに著しい有益性をもつと考えられている。しかし、これらの塩基性アミノ酸と口腔ケア有益性をもつ無機質、たとえばフッ化物およびカルシウムとを組み合わせて許容できる長期安定性を備えた口腔ケア製品を調製するのは、困難であることが分かった。特に、塩基性アミノ酸はpHを高め、カルシウムイオンの解離を促進する可能性があり、これがフッ化物イオンと反応して不溶性沈殿物を形成する可能性がある。さらに、より高いpHは刺激を引き起こす可能性をもつ。しかし、中性pHまたは酸性pHでは、重炭酸アルギニンを用いる系(当技術分野ではこれが好ましいと教示されている)は二酸化炭素を放出して容器の膨張および破裂を生じる場合がある。さらに、pHを中性または酸性の状態に降下させるとアルギニンは歯の表面に対してより低い親和性をもつ不溶性のアルギニン−カルシウム複合体を形成する場合があるので配合物の有効性が低下すると予想され、さらに、pHの降下は口内の齲食原性乳酸の緩衝化に対して配合物がもついずれかの効果を低下させると予想されたであろう。一部はこれらの対処されていない配合ハードルのため、また一部はアルギニンが当技術分野で一般に共働物(co−active)よりむしろ潜在的なフッ化物代替品とみられていたため、アルギニンとフッ化物の両方を含む口腔ケア製品を製造するための動機づけはほとんどなかった。抗微生物剤の添加により、さらにハードルが負荷される可能性がある。市販のアルギニンベースの練り歯磨き、たとえばProClude(登録商標)およびDenClude(登録商標)は、重炭酸アルギニンおよび炭酸カルシウムを含有するが、フッ化物も抗微生物剤も含有しない。
【0004】
[0004] 同時に、練り歯磨き中における抗微生物剤、たとえばトリクロサンの価値が多くの歯科医によって認識されている。しかし、これらの薬剤を有効量で歯および歯肉へ送達するのは困難であり、それらの溶解度、送達、および歯における保持は配合物に依存する。たとえば、トリクロサン(5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール)は水にわずかに可溶性であるにすぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]したがって、塩基性アミノ酸を供給し、かつ有益な無機物、たとえばフッ化物およびカルシウムをも供給する安定な口腔ケア製品、ならびに改良された抗微生物剤送達をもたらす製品が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 塩基性アミノ酸、たとえばアルギニンは、抗細菌剤、たとえばトリクロサンの溶解度、送達、保持、および抗細菌効果を劇的に増大させうることが、今回、意外にも見いだされた。
【0007】
[0007] したがって本発明は、歯垢の蓄積を抑制または軽減し、酸産生(齲食原性)細菌のレベルを低下させ、歯を再石灰化し、かつ歯肉炎を抑制または軽減するのに有効な口腔ケア組成物、およびそれを使用する方法を包含する。本発明は口腔を清浄にする組成物および方法をも包含し、たとえば口腔組織を介した全身感染の潜在性を低下させることにより、口内の健康状態、および/または心血管の健康状態を含めた全身の健康状態を増進する、改良された方法をも提供する。
【0008】
[0008] したがって本発明は、下記のものを含む口腔ケア組成物(本発明組成物)、たとえば歯磨剤を含む:
i.有効量の遊離または塩形の塩基性アミノ酸、たとえばアルギニン;
ii.有効量の抗細菌剤、たとえばトリクロサン。
場合により、本発明はさらに、陰イオン界面活性剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム;有効量のフッ化物源、たとえば可溶性フッ化物塩;および/または陰イオン性ポリマー、たとえばメチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーを含む。したがって本発明は、1態様において、アルギニン塩、たとえば塩酸アルギニン、リン酸アルギニンまたは重炭酸アルギニン;トリクロサン;陰イオン界面活性剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム;可溶性フッ化物塩、たとえばモノフルオロリン酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウムを含む練り歯磨きを包含する。
【0009】
[0009] 1態様において、本発明は、さらに粒状物質を含む本発明組成物(組成物1.1)を包含し、この組成物は約200未満、たとえば約160未満、たとえば約40〜約140のRDAをもち、たとえば少なくとも約5%、たとえば少なくとも約20%の、約5マイクロメートル未満のd50をもつ粒状物質、たとえば約3〜約4マイクロメートルのd50をもつシリカ、または約0.5〜約3マイクロメートルのd50をもつ沈降炭酸カルシウムを含む。
【0010】
[0010] 特定の態様において、本発明組成物は、水、研磨剤、界面活性剤、発泡剤、ビタミン、ポリマー、酵素、湿潤剤、増粘剤、抗微生物剤、保存剤、着香剤、着色剤、および/またはその組合わせのうち1以上から選択される追加成分を含む歯磨剤の形態である。
【0011】
[0011] 特定の理論により拘束されるつもりはないが、アルギニンの有益な効果において重要な要因は、アルギニンその他の塩基性アミノ酸を、あるタイプの細菌、たとえば齲食原性ではなく歯および口腔における存在位置についてストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans)などの齲食原性細菌と競合するストレプトコッカス・サングイス(S.sanguis)が代謝できるという仮説が立てられる。これらのアルギニン分解細菌(arginolytic bacteria)はアルギニンその他の塩基性アミノ酸を使ってアンモニアを産生し、これによりそれらの環境のpHを上昇させることができ、一方、齲食原性細菌は糖を代謝して乳酸を産生し、これは歯垢pHを低下させ、歯を脱灰し、最終的に空洞を生じる傾向がある。本発明組成物を規則的に経時使用すると、アルギニン分解細菌が相対的に増加し、齲食原性細菌が相対的に減少し、その結果、歯垢pHがより高くなり、実際に歯が齲食原性細菌およびそれらの有害作用に対して免疫化されると考えられる。このpH上昇効果は、歯のエナメル質の再石灰化および強化の促進においてフッ化物の効果とは機序が異なり、それに対し相補的である可能性があると考えられる。
【0012】
[0012] しかし厳密な機序とは関係なく、意外にも、本発明の製品の特定の態様による口腔ケア製品におけるフッ化物と塩基性アミノ酸、たとえばアルギニンの組合わせは、再石灰化の促進、前齲食病変の修復、および口内健康状態の増進において、有効量のいずれかの化合物を個別に含む組成物を用いて観察できるものを超える質的に異なる予想外の有益性をもたらすことが見いだされた。さらに、小粒子研磨剤の添加によりこの作用をさらに増強しうることが見いだされた;これはエナメル質の微小裂溝および歯の微小管を埋めるのを補助する作用をすると思われる。
【0013】
[0013] 特に塩基性アミノ酸を陰イオン界面活性剤と組み合わせて付与した場合、塩基性アミノ酸の存在は、意外にも歯の表面への細菌の接着を低下させることも見いだされた。
【0014】
[0014] 本発明にとって特に有意義であるが、塩基性アミノ酸は、抗細菌剤、たとえばトリクロサンの可溶化、放出、送達、沈着および有効性を実質的に増大させる。
[0015] したがって、本発明はさらに、(i)齲歯の形成を軽減または抑制する、(ii)たとえば定量光誘導蛍光(quantitative light−induced fluorescence)(QLF)または電気的齲食測定(electrical caries measurement)(ECM)により検出される初期のエナメル質病変を軽減、修復または抑制する、(iii)歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進する、(iv)歯の過敏性を軽減する、(v)歯肉炎を軽減または抑制する、(vi)口内の潰瘍または切り傷の治癒を促進する、(vii)酸産生細菌のレベルを低下させる、(viii)アルギニン分解細菌の相対レベルを高める、(ix)口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制する、(x)糖負荷後の歯垢pHを少なくともpH5.5のレベルに上昇および/または維持する、(xi)歯垢の蓄積を軽減する、(xii)口内乾燥を治療、寛解または軽減する、(xiii)たとえば口腔組織を介した全身感染の潜在性を低下させることにより、心血管の健康状態を含めた全身の健康状態を増進する、(xiv)歯の侵食を軽減する、(xv)歯を増白する、(xvi)歯を齲食原性細菌に対して免疫化または保護する、ならびに/あるいは(xvii)歯および口腔を清浄にする方法であって、たとえば本発明組成物をその必要がある患者の口腔に適用することにより、本発明組成物を口腔に適用することを含む方法を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0016] したがって本発明は、下記のものを含む口腔ケア組成物(組成物1.0)を含む:
i.有効量の遊離または塩形の塩基性アミノ酸、たとえばアルギニン;
ii.有効量の抗細菌剤、たとえばトリクロサン;ならびに
iii.場合により、陰イオン界面活性剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム;有効量のフッ化物源、たとえば可溶性フッ化物塩;および/または陰イオン性ポリマー、たとえばメチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー;
たとえば下記のいずれかの組成物:
1.0.1.塩基性アミノ酸がアルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロプリオン酸(diaminoproprionic acid)、その塩類、および/またはその組合わせである、組成物1.0;
1.0.2.塩基性アミノ酸がL−立体配置をもつ、組成物1.0または1.0.1;
1.0.3.塩基性アミノ酸を含むジ−またはトリ−ペプチドの塩の形で提供される、前記のいずれかの組成物;
1.0.4.塩基性アミノ酸がアルギニンである、前記のいずれかの組成物;
1.0.5.塩基性アミノ酸がL−アルギニンである、前記のいずれかの組成物;
1.0.6.塩基性アミノ酸が部分的または完全に塩形である、前記のいずれかの組成物;
1.0.7.塩基性アミノ酸がリン酸アルギニンである、組成物1.0.6;
1.0.8.塩基性アミノ酸が塩酸アルギニンの形である、組成物1.0.6;
1.0.9.塩基性アミノ酸が硫酸アルギニンである、組成物1.0.6;
1.0.10.塩基性アミノ酸が重炭酸アルギニンである、組成物1.0.6;
1.0.11.塩基性アミノ酸の塩が配合物中においてその場で、酸または酸の塩類による塩基性アミノ酸の中和により形成される、前記のいずれかの組成物;
1.0.12.フッ化物塩と組み合わせる前に、塩基性アミノ酸の中和により塩基性アミノ酸の塩を形成してプレミックスを調製する、前記のいずれかの組成物;
1.0.13.塩基性アミノ酸の重量を遊離塩基形として計算して、塩基性アミノ酸が全組成物重量の約0.1〜約20%、たとえば約1重量%〜約10重量%に相当する量で存在する、前記のいずれかの組成物;
1.0.14.塩基性アミノ酸が全組成物重量の約7.5重量%の量で存在する、組成物1.0.11;
1.0.15.塩基性アミノ酸が全組成物重量の約5重量%の量で存在する、組成物1.0.11;
1.0.16.塩基性アミノ酸が全組成物重量の約3.75重量%の量で存在する、組成物1.0.11;
1.0.17.塩基性アミノ酸が全組成物重量の約1.5重量%の量で存在する、組成物1.0.11;
1.0.18.フッ化物塩が、フッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン(たとえばN’−オクタデシルトリメチレンジアミン−N,N,N’−トリス(2−エタノール)−ジヒドロフルオリド)、フッ化アンモニウム、フッ化チタン、ヘキサフルオロ硫酸塩、およびその組合わせから選択される、前記のいずれかの組成物;
1.0.19.フッ化物塩がフルオロリン酸塩である、前記のいずれかの組成物;
1.0.20.フッ化物塩がモノフルオロリン酸ナトリウムである、前記のいずれかの組成物;
1.0.21.フッ化物塩がフッ化ナトリウムである、前記のいずれかの組成物;
1.0.22.フッ化物塩が全組成物重量の約0.01重量%〜約2重量%の量で存在する、前記のいずれかの組成物;
1.0.23.フッ化物塩が全組成物重量の約0.1〜約0.2重量%の量のフッ化物イオンを供給する、前記のいずれかの組成物;
1.0.24.可溶性フッ化物塩が約50〜約25,000ppmの量のフッ化物イオンを供給する、前記のいずれかの組成物;
1.0.25.約100〜約250ppmの有効フッ化物イオンを含むマウスウォッシュ(mouthwash)である、前記のいずれかの組成物;
1.0.26.約750〜約2000ppmの有効フッ化物イオンを含む歯磨剤である、前記のいずれかの組成物;
1.0.27.組成物が約750〜約2000ppmのフッ化物イオンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.28.組成物が1000〜約1500ppmのフッ化物イオンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.29.組成物が約1450ppmのフッ化物イオンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.30.pHが約6〜約9、たとえば約6.5〜約7.4、または約7.5〜約9である、前記のいずれかの組成物;
1.0.31.pHが約6.5〜約7.4である、前記のいずれかの組成物;
1.0.32.pHが約6.8〜約7.2である、前記のいずれかの組成物;
1.0.33.pHがほぼ中性である、前記のいずれかの組成物;
1.0.34.さらに研磨剤または粒状物質を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.35.研磨剤または粒状物質が、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム(たとえばリン酸二カルシウム・2水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム(たとえば沈降炭酸カルシウム)、シリカ(たとえば水和シリカ)、酸化鉄、酸化アルミニウム、パーライト、プラスチック粒子、たとえばポリエチレン、およびその組合わせから選択される、上記の組成物;
1.0.36.研磨剤または粒状物質が、リン酸カルシウム(たとえばリン酸二カルシウム・2水和物)、硫酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、シリカ(たとえば水和シリカ)、およびその組合わせから選択される、上記の組成物;
1.0.37.さらに、全組成物重量の約15重量%〜約70重量%の量の研磨剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.38.さらに、約5マイクロメートル未満のd50を有する少なくとも約5%の小粒子研磨剤画分を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.39.約150未満、たとえば約40〜約140のRDAを有する、前記のいずれかの組成物;
1.0.40.さらに抗歯石剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.41.さらに抗歯石剤を含み、それらがポリホスフェート、たとえばピロホスフェート、トリポリホスフェート、またはヘキサメタホスフェート、たとえばナトリウム塩形のものである、前記のいずれかの組成物;
1.0.42.さらに、少なくとも1種類の界面活性剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.43.さらに、ラウリル硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、およびその組合わせから選択される少なくとも1種類の界面活性剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.44.さらに陰イオン界面活性剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.45.さらにラウリル硫酸ナトリウムを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.46.さらに、少なくとも1種類の湿潤剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.47.さらに、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、およびその組合わせから選択される少なくとも1種類の湿潤剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.48.さらにキシリトールを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.49.さらに、少なくとも1種類のポリマーを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.50.さらに、ポリエチレングリコール、ポリビニルメチルエーテル−マレイン酸コポリマー、多糖類(たとえばセルロース誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロース、または多糖ガム、たとえばキサンタンガムもしくはカラギーナンガム)、およびその組合わせから選択される少なくとも1種類のポリマーを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.51.さらに、ガムのストリップまたはフラグメントを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.52.さらに、着香剤、芳香剤および/または着色剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.53.さらに水を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.54.下記のものから選択される抗細菌剤を含む、前記のいずれかの組成物:ハロゲン化ジフェニルエーテル(たとえばトリクロサン)、草本エキスおよび精油(たとえばローズマリーエキス、茶エキス、モクレン(magnolia)エキス、チモール(thymol)、メントール、ユーカリプトール(eucalyptol)、ゲラニオール、カルバクロール(carvacrol)、シトラール(citral)、ヒノキトール(hinokitol)、カテコール、サリチル酸メチル、没食子酸エピガロカテキン(epigallocatechin gallate)、エピガロカテキン、没食子酸、ミスワク(ナチュラルブラシ)(miswak)エキス、シーバックソーン(sea−buckthorn)エキス)、ビスグアニド系防腐薬(たとえばクロルヘキシジン(chlorhexidine)、アレキシジン(alexidine)またはオクテニジン(octenidine))、第四級アンモニウム化合物(たとえばセチルピリジニウムクロリド(CPC)、塩化ベンザルコニウム、テトラデシルピリジニウムクロリド(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド(TDEPC))、フェノール系防腐薬、ヘキセチジン(hexetidine)、オクテニジン、サンギナリン(sanguinarine)、ポビドンヨード(povidone iodine)、デルモピノール(delmopinol)、サリフルオル(salifluor)、金属イオン(たとえば亜鉛塩、たとえばクエン酸亜鉛、スズ(II)塩、銅塩、鉄塩)、サンギナリン、プロポリス(propolis)および酸素化剤(たとえば過酸化水素、緩衝化されたペルオキシホウ酸ナトリウムまたはペルオキシ炭酸ナトリウム)、フタル酸およびその塩、モノパーサル酸(monoperthalic acid)ならびにその塩およびエステル、ステアリン酸アスコルビル、オレオイルサルコシン(oleoyl sarcosine)、硫酸アルキル、スルホコハク酸ジオクチル、サリチルアニリド、臭化ドミフェン(domiphen bromide)、デルモピノール、オクタピノール(octapinol)および他のピペリジノ誘導体、ナイシン製剤、亜塩素酸塩、ならびに以上の混合物;
1.0.55.さらに、抗炎症性化合物、たとえば下記のものを含む、前記のいずれかの組成物:マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング成長因子β1(TGF−β1)、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子カッパB(NF−κB)、およびIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)から選択される宿主炎症性因子のうち少なくとも1つの阻害薬、たとえばアスピリン、ケトロラク(ketorolac)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、インドメタシン(indomethacin)、アスピリン、ケトプロフェン(ketoprofen)、ピロキシカム(piroxicam)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、ノルジヒドグアイアレチン酸(nordihydoguaiaretic acid)、およびその混合物;
1.0.56.さらに、抗酸化薬、たとえば補酵素Q10、PQQ、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、アネトール−ジチオチオン(anethole−dithiothione)、およびその混合物からなる群から選択されるものを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.57.貧溶性である抗細菌剤、たとえばトリクロサンより可溶性ではないものを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.58.抗細菌剤がトリクロサンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.59.トリクロサンおよびキシリトールを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.60.トリクロサン、キシリトールおよび沈降炭酸カルシウムを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.61.さらに、トリクロサンおよびZn2+イオン源、たとえばクエン酸亜鉛を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.62.さらに、全組成物重量の約0.01〜約5重量%の量の抗細菌剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.63.さらに、全組成物重量の約0.01〜約1重量%の量のトリクロサンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.64.さらに、全組成物重量の約0.3%の量のトリクロサンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.65.さらに増白剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.66.さらに、ペルオキシド、亜塩素酸金属塩、ペルボレート、ペルカーボネート、ペルオキシ酸、次亜塩素酸塩、およびその組合わせからなる群から選択される増白活性物質から選択される増白剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.67.さらに、過酸化水素または下記の過酸化水素源を含む、前記のいずれかの組成物:たとえば過酸化尿素、またはペルオキシド塩もしくは複合体(たとえばペルオキシホスフェート、ペルオキシカーボネート、ペルボレート、ペルオキシシリケートまたはペルスルフェート塩;たとえばペルオキシリン酸カルシウム、過ホウ酸ナトリウム、ナトリウムカーボネートペルオキシド、ペルオキシリン酸ナトリウム、および過硫酸カリウム)、または過酸化水素−ポリマー複合体、たとえば過酸化水素−ポリビニルピロリドンポリマー複合体;
1.0.68.さらに、細菌の付着を妨害または阻止する薬剤、たとえばソルブロール(solbrol)またはキトサンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.69.さらに、下記のものから選択されるカルシウムおよびホスフェートの供給源を含む、前記のいずれかの組成物:(i)カルシウム−ガラス複合体、たとえばカルシウムナトリウムホスホシリケート、および(ii)カルシウム−タンパク質複合体、たとえばカゼインホスホペプチド−非晶質リン酸カルシウム;
1.0.70.さらに、可溶性カルシウム塩、たとえば硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびその組合わせから選択されるものを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.71.さらに、生理的に許容できるカリウム塩、たとえば硝酸カリウムまたは塩化カリウムを、象牙質知覚過敏を軽減するのに有効な量で含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.72.さらに、約0.1%〜約7.5%の生理的に許容できるカリウム塩、たとえば硝酸カリウムおよび/または塩化カリウムを含む、前記のいずれかの組成物;
1.0.73.アルギニン塩、たとえば塩酸アルギニン、リン酸アルギニンまたは重炭酸アルギニン;トリクロサン;陰イオン界面活性剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム;および可溶性フッ化物塩、たとえばモノフルオロリン酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウムを含む練り歯磨きである、前記のいずれかの組成物;
1.0.74.たとえばブラッシングにより口腔に適用した際に、下記のために有効な、前記のいずれかの組成物:(i)齲歯の形成を軽減または抑制する、(ii)たとえば定量光誘導蛍光(QLF)または電気的齲食測定(ECM)により検出される前齲食エナメル質病変を軽減、修復または抑制する、(iii)歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進する、(iv)歯の過敏性を軽減する、(v)歯肉炎を軽減または抑制する、(vi)口内の潰瘍または切り傷の治癒を促進する、(vii)酸産生細菌のレベルを低下させる、(viii)アルギニン分解細菌の相対レベルを高める、(ix)口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制する、(x)糖負荷後の歯垢pHを少なくともpH5.5のレベルに上昇および/または維持する、(xi)歯垢の蓄積を軽減する、(xii)口内乾燥を軽減する、(xiii)歯および口腔を清浄にする、(xiv)侵食を軽減する、(xv)歯を増白する、ならびに/あるいは(xvi)歯を齲食原性細菌に対して免疫化する;
1.0.75.前記のいずれかの組成物において述べた成分を組み合わせることにより得られた、または得ることができる、組成物;
1.0.76.マウスリンス(mouthrinse)、練り歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、非研摩ゲル、ムース、フォーム、口内スプレー、トローチ、口内錠、インプラント義歯、およびペットケア製品から選択される形態の、前記のいずれかの組成物;
1.0.77.組成物が練り歯磨きである、前記のいずれかの組成物;
1.0.78.組成物が、場合によりさらに、水、研磨剤、界面活性剤、発泡剤、ビタミン、ポリマー、酵素、湿潤剤、増粘剤、抗微生物剤、保存剤、着香剤、着色剤、および/またはその組合わせのうち1以上のうち1以上を含む練り歯磨きである、前記のいずれかの組成物;
1.0.79.組成物がマウスウォッシュである、組成物1.0〜1.0.76のいずれかの組成物;
1.0.80.さらに、ブレスフレッシュナー(breath freshner)、芳香剤または着香剤を含む、前記のいずれかの組成物。
【0016】
[0017] 他の態様において、本発明は下記のものを含む本発明組成物(組成物1.1)、たとえば前記の組成物1.0〜1.0.80のいずれかによるものを包含する:
i.有効量の塩基性アミノ酸の塩;
ii.有効量の可溶性フッ化物塩;
iii.陰イオン界面活性剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム;
iv.陰イオン性ポリマー、たとえばメチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー;ならびに
v.抗細菌剤、たとえばトリクロサン。
【0017】
[0018] 他の態様において、本発明は下記のものを含む本発明組成物(組成物1.2)、たとえば前記の組成物1.0〜1.0.80のいずれかによるものを包含する:
i.有効量の塩基性アミノ酸の塩;
ii.抗細菌剤、たとえばトリクロサン;
iii.有効量の可溶性フッ化物塩;ならびに
iv.組成物が約160未満、たとえば約40〜約140のRDAをもつような小粒子研磨剤、たとえば少なくとも約5%、たとえば少なくとも約20%の、約5マイクロメートル未満のd50をもつ研磨剤、たとえば約3〜約4マイクロメートルのd50をもつシリカを含むもの。
【0018】
[0019] 他の態様において、本発明は、有効量の組成物1.0、1.1または1.2に定めるいずれかの態様の口腔用組成物をその必要がある対象の口腔に適用することを含む、口腔の健康状態を改善するための方法(方法2)、たとえば下記のための方法を包含する:
i.齲歯の形成を軽減または抑制する、
ii.たとえば定量光誘導蛍光(QLF)または電気的齲食測定(ECM)により検出される初期のエナメル質病変を軽減、修復または抑制する、
iii.歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進する、
iv.歯の過敏性を軽減する、
v.歯肉炎を軽減または抑制する、
vi.口内の潰瘍または切り傷の治癒を促進する、
vii.酸産生細菌のレベルを低下させる、
viii.アルギニン分解細菌の相対レベルを高める、
ix.口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制する、
x.糖負荷後の歯垢pHを少なくとも約pH5.5のレベルに上昇および/または維持する、
xi.歯垢の蓄積を軽減する、
xii.口内乾燥を治療、寛解または軽減する、
xiii.たとえば口腔組織を介した全身感染の潜在性を低下させることにより、心血管の健康状態を含めた全身の健康状態を増進する、
xiv.歯を増白する、
xv.歯の侵食を軽減する、
xvi.歯を齲食原性細菌に対して免疫化する、ならびに/あるいは
xvii.歯および口腔を清浄にする。
【0019】
[0020] 本発明はさらに、たとえば方法2に述べたいずれかの適用に用いるための本発明組成物の製造における、アルギニンの使用を含む。
[0021] 本発明はさらに、対象の口腔の抗細菌処置に際して使用するための、遊離または塩形の塩基性アミノ酸、および抗細菌剤を含む、口腔ケア組成物を提供する。
【0020】
[0022] 本発明はさらに、対象の口腔において口腔表面への抗細菌剤の送達を増大させるための、抗細菌剤および遊離または塩形の塩基性アミノ酸を含む口腔ケア組成物を提供する。
【0021】
[0023] 本発明はさらに、対象の口腔において口腔表面への抗細菌剤の送達を増大させるための、抗細菌剤を含む口腔ケア組成物における遊離または塩形の塩基性アミノ酸の使用、および対象の口腔において口腔表面への抗細菌剤の送達を増大させる際に用いる、抗細菌剤を含有する医薬の製造のための、遊離または塩形の塩基性アミノ酸の使用を提供する。
【0022】
[0024] 本発明はさらに、対象の口腔において口腔表面への口腔ケア組成物中の抗細菌剤の送達を増大させる方法を提供し、この方法は、抗細菌剤および遊離または塩形の塩基性アミノ酸を含む口腔ケア組成物で口腔を処置することを含む。
【0023】
[0025] したがって、有効な構成要素または成分の組合わせ、好ましくは組成物中におけるそれらのそれぞれの量を提供することに関する本発明の1以上の観点による口腔ケア組成物、たとえば歯磨剤の配合物および使用から、歯への抗細菌剤の送達増大という意外な技術的効果および利点が得られることは、口腔ケア技術分野の専門家には分かるであろう。
【0024】
[0026] 抗細菌剤は下記のものから選択できる:ハロゲン化ジフェニルエーテル(たとえばトリクロサン)、草本エキスおよび精油(たとえばローズマリーエキス、茶エキス、モクレンエキス、チモール、メントール、ユーカリプトール、ゲラニオール、カルバクロール、シトラール、ヒノキトール、カテコール、サリチル酸メチル、没食子酸エピガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸、ミスワクエキス、シーバックソーンエキス)、ビスグアニド系防腐薬(たとえばクロルヘキシジン、アレキシジンまたはオクテニジン)、第四級アンモニウム化合物(たとえばセチルピリジニウムクロリド(CPC)、塩化ベンザルコニウム、テトラデシルピリジニウムクロリド(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド(TDEPC))、フェノール系防腐薬、ヘキセチジン、オクテニジン、サンギナリン、ポビドンヨード、デルモピノール、サリフルオル、金属イオン(たとえば亜鉛塩、たとえばクエン酸亜鉛、スズ(II)塩、銅塩、鉄塩)、サンギナリン、プロポリスおよび酸素化剤(たとえば過酸化水素、緩衝化されたペルオキシホウ酸ナトリウムまたはペルオキシ炭酸ナトリウム)、フタル酸およびその塩、モノパーサル酸ならびにその塩およびエステル、ステアリン酸アスコルビル、オレオイルサルコシン、硫酸アルキル、スルホコハク酸ジオクチル、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、デルモピノール、オクタピノールおよび他のピペリジノ誘導体、ナイシン製剤、亜塩素酸塩、ならびに以上のいずれかの混合物。
【0025】
[0027] 本発明組成物はさらに、抗炎症性化合物、たとえば下記のものを含むことができる:マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング成長因子β1(TGF−β1)、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子カッパB(NF−κB)、およびIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)から選択される宿主炎症性因子のうち少なくとも1つの阻害薬、たとえばアスピリン、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、アスピリン、ケトプロフェン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、ノルジヒドグアイアレチン酸、およびその混合物。これらの組成物は、これらに加えて、またはさらに、抗酸化薬、たとえば補酵素Q10、PQQ、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、アネトール−ジチオチオン、およびその混合物からなる群から選択されるものを含むことができる。
【0026】
[0028] 有効成分のレベルは、送達系および個々の有効物質の性質に基づいて異なるであろう。たとえば塩基性アミノ酸は、たとえば約0.1から約20重量%(遊離塩基の重量として表わす)、たとえばマウスリンスについては約0.1から約3重量%、消費者用練り歯磨きについては約1から約10重量%、または専門用もしくは処方箋処置製品については約7から約20重量%のレベルで存在することができる。フッ化物は、たとえば約25〜約25,000ppm、たとえばマウスリンスについては約25〜約250ppm、消費者用練り歯磨きについては約750〜約2,000ppm、または専門用もしくは処方箋処置製品については約2,000〜約25,000ppmのレベルで存在することができる。抗細菌剤のレベルも同様に異なり、練り歯磨き中に用いるレベルはマウスリンス中に用いるレベルよりたとえば約5〜約15倍大きいであろう。たとえば、トリクロサンマウスリンスはたとえば約0.03重量%のトリクロサンを含有することができ、一方、トリクロサン練り歯磨きは約0.3重量%のトリクロサンを含有することができる。
【0027】
塩基性アミノ酸
[0029] 本発明の組成物および方法に使用できる塩基性アミノ酸には、天然の塩基性アミノ酸、たとえばアルギニン、リジンおよびヒスチジンだけでなく、分子中にカルボキシル基およびアミノ基をもち、水溶性であって約7以上のpHの水溶液を与える塩基性アミノ酸はいずれも含まれる。
【0028】
[0030] したがって、塩基性アミノ酸にはアルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロプリオン酸、その塩類、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。具体的な態様において、塩基性アミノ酸はアルギニン、シトルリンおよびオルニチンから選択される。
【0029】
[0031] 特定の態様において、塩基性アミノ酸はアルギニン、たとえばL−アルギニン、またはその塩である。
[0032] ある態様において、塩基性アミノ酸は、アルギニンデイミナーゼ系で産生される少なくとも1種類の中間体を含む。アルギニンデイミナーゼ系で産生される中間体は、口腔ケア組成物において齲食の抑制および/または予防のための歯垢中和をもたらすのに有用な可能性がある。アルギニンは、口腔に見いだすことができる天然の塩基性アミノ酸である。口内のアルギニンは、特定の歯垢細菌株、たとえばストレプトコッカス・サングイス(S.sanguis)、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(S.gordonii)、ストレプトコッカス・パラサングイス(S.parasanguis)、ストレプトコッカス・ラッタス(S.rattus)、ストレプトコッカス・ミレリ(S.milleri)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(S.anginosus)、ストレプトコッカス・フェーカリス(S.faecalis)、アクチノマイセス・ネスランディイ(A.naeslundii)、アクチノマイセス・オドノリチカス(A.odonolyticus)、ラクトバチルス・セロビオスス(L.cellobiosus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)、およびトレポネーマ・デンティコラ(T.denticola)が、それらの生存のために利用できる。そのような生物は、酸産生性および耐酸性の齲食原菌株が糖を利用して有機酸を産生することができる歯の表面近くの領域にある酸性環境では、死滅する可能性がある。したがって、これらのアルギニン分解菌株は生存のためにアルギニンをアンモニアに分解してアルカリ性を生じ、さらに歯垢を緩衝化して齲食原系に敵対する環境を作り出すことができる。
【0030】
[0033] そのようなアルギニン分解菌は、”アルギニンデイミナーゼ系”と呼ばれる内在性の細胞酵素経路系によりアルギニンを異化することができ、これによりこの経路の中間体が形成される。この経路において、L−アルギニンはアルギニンデイミナーゼにより分解されてL−シトルリンとアンモニアになることができる。L−シトルリンは、次いで無機ホスフェートの存在下でオルニチントランスカルバミラーゼにより分解されてL−オルニチンとリン酸カルバミルになるであろう。次いでカルバメートキナーゼがリン酸カルバミルを分解してさらに1分子のアンモニアと二酸化炭素を形成することができ、この過程でATP(アデノシン−5’−三リン酸)も生成する。ATPはアルギニン分解細菌が増殖のためのエネルギー源として利用することができる。したがって、アルギニンデイミナーゼ系が利用された場合、2分子のアンモニアが得られる可能性がある。
【0031】
[0034] ある態様において、アンモニアは歯垢pHを中和して齲食の抑制および/または予防を補助しうることが見いだされた。
[0035] 本発明のある態様の口腔ケア組成物は、アルギニンデイミナーゼ系で産生される中間体を含有することができる。そのような中間体には、シトルリン、オルニチンおよびリン酸カルバミルを含めることができる。ある態様において、他の口腔ケア組成物はシトルリンを含有する。ある態様において、口腔ケア組成物はオルニチンを含有する。ある態様において、口腔ケア組成物はリン酸カルバミルを含有する。他の態様において、口腔ケア組成物はシトルリン、オルニチン、リン酸カルバミル、および/またはアルギニンデイミナーゼ系で産生される他の中間体のいずれかの組合わせを含有する。
【0032】
[0036] 口腔ケア組成物は、前記の中間体を有効量で含有することができる。ある態様において、口腔ケア組成物は約1mmol/L〜約10mmol/Lの中間体を含有する。他の態様において、口腔ケア組成物は約3mmol/L〜約7mmol/Lの中間体を含有する。他の態様において、口腔ケア組成物は約5mmol/Lの中間体を含有する。
【0033】
[0037] 本発明組成物は、口内に局所使用するためのものであり、したがって本発明に使用するための塩類は、提示した量および濃度でそのような用途について安全でなければならない。適切な塩類には医薬的に許容できる塩類であることが当技術分野で知られている塩類が含まれ、これらは提示した量および濃度で一般に生理的に許容できると考えられる。生理的に許容できる塩類には、医薬的に許容できる無機酸もしくは有機酸または塩基から誘導されるもの、たとえば生理的に許容できる陰イオンを形成する酸により形成される酸付加塩、たとえば塩酸塩または臭化物塩、ならびに生理的に許容できる陽イオンを形成する塩基により形成される塩基付加塩、たとえばアルカリ金属、たとえばカリウムおよびナトリウム、またはアルカリ土類金属、たとえばカルシウムおよびマグネシウムから誘導されるものが含まれる。生理的に許容できる塩類は、当技術分野で既知の標準法を用いて、たとえば十分に塩基性の化合物、たとえばアミンと、生理的に許容できる陰イオンを与える適切な酸との反応により得ることができる。
【0034】
[0038] 多様な態様において、塩基性アミノ酸は全組成物重量の約0.5重量%〜約20重量%、全組成物重量の約1重量%〜約10重量%、たとえば全組成物重量の約1.5重量%、約3.75重量%、約5重量%、または約7.5重量%の量で存在する。
【0035】
[0039] RDA:RDAは、放射性象牙質研摩(radioactive dentin abrasion)、すなわち摩耗性の相対尺度の略号である。一般に、抜歯したヒトまたはウシの歯を中性子束で照射し、メタクリル酸メチル(骨接着剤)中に固定し、エナメル質を剥離し、ブラッシング機に装入し、米国歯科協会(American Dental Association)(ADA)基準によりブラッシングする(基準歯ブラシ、150gの圧力、1500回、4:1 水−練り歯磨きスラリー)。次いですすぎ水の放射能を測定し、記録する。実験対照のために、ピロリン酸カルシウムで調製したADA基準練り歯磨きを用いて試験を繰り返し、この測定値を数値100として相対測定尺度を較正する。
【0036】
フッ化物イオン源
[0040] 口腔ケア組成物はさらに1種類以上のフッ化物イオン源、たとえば可溶性フッ化物塩を含有することができる。多様なフッ化物イオン供与物質を本発明組成物中に可溶性フッ化物の供給源として使用できる。適切なフッ化物イオン供与物質の例は下記にある:U.S.Pat.No.3,535,421,Brinerらに付与;U.S.Pat.No.4,885,155,Parran,Jr.らに付与;およびU.S.Pat.No.3,678,154,Widderらに付与;これらを本明細書に援用する。
【0037】
[0041] 代表的なフッ化物イオン源には、フッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン、フッ化アンモニウム、およびその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、フッ化物イオン源には、フッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、およびその混合物が含まれる。
【0038】
[0042] 特定の態様において、本発明の口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源またはフッ素供給成分を、約25ppm〜約25,000ppm、一般に少なくとも約500ppm、たとえば約500〜約2000ppm、たとえば約1000〜約1600ppm、たとえば約1450ppmのフッ化物イオンを供給するのに十分な量で含有することもできる。フッ化物の適切なレベルは、個々の用途に依存するであろう。たとえばマウスウォッシュは、一般に約100〜約250ppmのフッ化物を含むであろう。一般消費者用の練り歯磨きは一般に約1000〜約1500ppmを含み、小児用練り歯磨きはこれより若干少ない量を含むであろう。専門用の歯磨剤またはコーティングは、約5,000ppmに及ぶフッ化物、または約25,000ppmのフッ化物すら含むことができる。
【0039】
[0043] フッ化物イオン源は、1態様においては組成物の約0.01重量%〜約10重量%、または他の態様においては約0.03重量%〜約5重量%、他の態様においては約0.1重量%〜約1重量%のレベルで本発明組成物に添加することができる。適切なレベルのフッ化物イオンを供給するフッ化物塩の重量は、明らかにその塩中の対イオンの重量に基づいて異なるであろう。
【0040】
研磨剤
[0044] 本発明組成物はリン酸カルシウム研磨剤、たとえばリン酸三カルシウム(Ca(PO)、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、またはリン酸二カルシウム・2水和物(CaHPO・2HO、本明細書中で時にはDiCalとも言う)、またはピロリン酸カルシウムを含むことができる。あるいは、炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムを研磨剤として使用できる。
【0041】
[0045] 本発明組成物は、1種類以上の追加の研磨剤、たとえばシリカ研磨剤、たとえば最高で約20ミクロンの平均粒度をもつ沈降シリカ、たとえばJ.M.Huberが市販するZeodent 115(登録商標)を含有することができる。他の有用な研磨剤には、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、焼成アルミナ、ベントナイトもしくは他のケイ質材料、またはその組合わせも含まれる。
【0042】
[0046] 本発明に有用なシリカ研磨剤系の研摩材料、および他の研磨剤は、一般に約0.1〜約30ミクロン、ほぼ5〜約15ミクロンの範囲の平均粒度をもつ。シリカ研磨剤は、沈降シリカまたはシリカゲルからのもの、たとえばU.S.Pat.No.3,538,230,Paderらに付与、およびU.S.Pat.No.3,862,307,Digiulioに付与(両方を本明細書に援用する)に記載されたシリカキセロゲルであってもよい。具体的なシリカキセロゲルは、商品名Syloid(登録商標)でW.R.Grace & Co.,Davison Chemical Divisionにより市販されている。沈降シリカ材料には、J.M.Huber Corp.が商品名Zeodent(登録商標)で市販しているものが含まれ、これにはZeodent 115および119の表示をもつシリカが含まれる。これらのシリカ研磨剤はU.S.Pat.No.4,340,583,Wasonに付与(本明細書に援用する)に記載されている。
【0043】
[0047] 特定の態様において、本発明による口腔ケア組成物の実施に有用な研磨剤には、約100cc/100gシリカ未満、約45cc/100g〜約70cc/100gシリカの範囲の吸油価(oil absorption value)をもつシリカゲルおよび沈降非晶質シリカが含まれる。吸油価は、ASTM Rub−Out、方法D281を用いて測定される。特定の態様において、シリカは約3ミクロン〜約12ミクロン、および約5〜約10ミクロンの平均粒度をもつコロイド粒子である。
【0044】
[0048] 特定の態様において、研磨剤は、たとえば約5ミクロン未満のd50をもつきわめて小さい粒子、たとえば約3〜約4ミクロンのd50をもつ小粒子シリカ(small particle silica)(SPS)、たとえばSorbosil AC43(登録商標)(Ineos)を大きな割合で含む。そのような小粒子は、過敏性の軽減を目標とする配合物に特に有用である。小粒子成分は、より大きい第2の粒子研磨剤との組合わせで存在してもよい。特定の態様において、たとえば配合物は約3〜約8%の小粒子、たとえばSPS、および約25〜約45%の一般的な研磨剤を含む。
【0045】
[0049] 本発明の実施に特に有用な吸油性の低いシリカ研磨剤は、商品名Sylodent XWA(登録商標)でW.R. Grace & Co.,Davison Chemical Division、21203メリーランド州ボルチモア、により市販されている。Sylodent 650 XWA(登録商標)、すなわち約29重量%の含水率をもち、平均約7〜約10ミクロンの範囲の直径、および約70cc/100gシリカ未満の吸油価のコロイドシリカ粒子からなるシリカヒドロゲルは、本発明の実施に有用な吸油性の低いシリカ研磨剤の一例である。研磨剤は、本発明の口腔ケア組成物中に約10〜約60重量%、他の態様においては約20〜約45重量%、他の態様においては約30〜約50重量%の濃度で存在する。
【0046】
[0050] ある態様においては、炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムを研磨剤として含む基礎配合をもつ歯磨組成物中に塩基性アミノ酸を含有させる。L−アルギニンおよびアルギニン塩、たとえば重炭酸アルギニン自体は著しい苦味があり、水溶液中では生臭い(fishy)味覚を与える可能性もある。したがって、L−アルギニンまたはアルギニン塩を空洞形成抑制効果および過敏性寛解の付与に有効な濃度、一般に歯磨配合物の全重量を基準として2から10重量%までの量で口腔ケア製品、たとえば歯磨配合物中に含有させた場合、その歯磨配合物の味および口あたりはL−アルギニンまたはアルギニン塩を添加しない同じ配合物と比較して損なわれるであろうと予想された。
【0047】
[0051] しかし意外にも、本発明のこの観点によれば、炭酸カルシウムを含む基礎歯磨配合物へのL−アルギニンまたはアルギニン塩の添加は、味および口あたりの属性の著しい向上を歯磨配合物にもたらし、その製品の消費者への全般的な受入れを高めうることが見いだされた。
【0048】
発泡量を増大させる作用物質
[0052] 本発明の口腔ケア組成物は、口腔をブラッシングした際に発生する泡の量を増加させるための作用物質を含有することもできる。
【0049】
[0053] 泡の量を増加させる作用物質の具体例には、ポリオキシエチレンおよび特定のポリマー(アルギネートポリマーが含まれるが、これに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
[0054] ポリオキシエチレンは、本発明の口腔ケアキャリヤー成分により発生する泡の量および泡の厚みを増大させることができる。ポリオキシエチレンは一般にポリエチレングリコール(”PEG”)またはポリエチレンオキシドとしても知られている。本発明に適切なポリオキシエチレンは約200,000〜約7,000,000の分子量をもつであろう。1態様において分子量は約600,000〜約2,000,000、他の態様においては約800,000〜約1,000,000であろう。Polyox(登録商標)は、Union Carbideにより製造される高分子量ポリオキシエチレンに対する商品名である。
【0051】
[0055] ポリオキシエチレンは、本発明の口腔ケア組成物の口腔ケアキャリヤー成分の約1%〜約90%、1態様においては約5%〜約50%、他の態様においては約10%〜約20%(重量)の量で存在することができる。口腔ケア組成物中の発泡剤の投与量(すなわち1回量)は、約0.01〜約0.9重量%、約0.05〜約0.5重量%、他の態様においては約0.1〜約0.2重量%である。
【0052】
界面活性剤
[0056] 本発明の口腔ケア組成物に場合により含まれる他の作用物質は、界面活性剤、または適合する界面活性剤の混合物である。適切な界面活性剤は、広いpH範囲を通して妥当な程度に安定なもの、たとえば陰イオン、陽イオン、非イオンまたは両性イオン界面活性剤である。
【0053】
[0057] 適切な界面活性剤は、より詳細に、たとえば下記に記載されている:U.S.Pat.No.3,959,458,Agricolaらに付与;U.S.Pat.No.3,937,807,Haefeleに付与;およびU.S.Pat.No.4,051,234,Gieskeらに付与;これらを本明細書に援用する。
【0054】
[0058] 特定の態様において、本発明に有用な陰イオン界面活性剤には、アルキル基中に約10〜約18個の炭素原子をもつアルキルスルフェートの水溶性塩、および約10〜約18個の炭素原子をもつ脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が含まれる。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、およびヤシ(椰子)モノグリセリドスルホネートナトリウムは、このタイプの陰イオン界面活性剤の例である。陰イオン界面活性剤の混合物も使用できる。
【0055】
[0059] 他の態様において、本発明に有用な陽イオン界面活性剤は、約8〜約18個の炭素原子を含む長いアルキル鎖を1つ含む脂肪族第四級アンモニウム化合物の誘導体であると広く定義できる;たとえばラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジ−イソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヤシアルキルトリメチルアンモニウムナイトレート、セチルピリジニウムフルオリド、およびその混合物。
【0056】
[0060] 具体的な陽イオン界面活性剤は、U.S.Pat.No.3,535,421,Brinerらに付与(本明細書に援用する)に記載された第四級アンモニウムフルオリドである。特定の陽イオン界面活性剤は、組成物中で殺菌薬としても作用することができる。
【0057】
[0061] 本発明組成物中に使用できる具体的な非イオン界面活性剤は、アルキレンオキシド基(親水性)と脂肪族またはアルキル芳香族いずれの性質であってもよい有機疎水性化合物との縮合により製造される化合物であると広く定義できる。適切な非イオン界面活性剤の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない;プルロニック(Pluronic)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物との縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖第三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、およびこれらの物質の混合物。
【0058】
[0062] 特定の態様において、本発明に有用な両性イオン性の合成界面活性剤は、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物の誘導体であると広く記載でき、それらにおいて脂肪族基は直鎖または分枝鎖であってよく、脂肪族置換基のうち1つは約8〜約18個の炭素原子を含み、1つは陰イオン性の水可溶化基、たとえばカルボキシ、スルホネート、スルフェート、ホスフェートまたはホスホネートを含む。本発明組成物に含有させるのに適切な界面活性剤の具体例には、アルキル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ココアミドプロピルベタインおよびポリソルベート(polysorbate)20、およびその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
[0063] 特定の態様において、本発明組成物は陰イオン界面活性剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウムを含む。
[0064] 界面活性剤、または適合する界面活性剤の混合物は、本発明組成物中に全組成物の約0.1%〜約5.0%、他の態様においては約0.3%〜約3.0%、他の態様においては約0.5%〜約2.0%(重量)で存在することができる。
【0060】
着香剤
[0065] 本発明の口腔ケア組成物は、着香剤をも含有することができる。本発明の実施に際して用いられる着香剤には、精油ならびに種々の芳香性アルデヒド類、エステル類、アルコール類、およびこれらに類する物質が含まれるが、これらに限定されない。精油の例には、スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン(wintergreen)、サッサフラス、チョウジ、セージ(sage)、ユーカリ、マヨラマ(marjoram)、ニッケイ、レモン、ライム、グレープフルーツ、およびオレンジの油が含まれる。メントール、カルボン(carvone)、およびアネトールなどの化学物質も有用である。特定の態様には、ペパーミントおよびスペアミントの油を用いる。
【0061】
[0066] 着香剤は、口腔用組成物中に約0.1〜約5重量%、および約0.5〜約1.5重量%の濃度で含有される。個々の口腔ケア組成物投与に際しての着香剤の投与量(すなわち1回量)は、約0.001〜約0.05重量%、他の態様においては約0.005〜約0.015重量%である。
【0062】
キレート化剤
[0067] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により、細菌の細胞壁中にあるカルシウムを錯化することができる1種類以上のキレート化剤をも含有することができる。このカルシウムの結合は、細菌細胞壁を脆弱にし、細胞溶解を促進する。
【0063】
[0068] 本発明にキレート化剤として用いるのに適切な他のグループの作用物質は、可溶性ピロホスフェートである。本発明組成物中に用いるピロホスフェート塩は、いずれかのアルカリ金属ピロホスフェート塩であってもよい。特定の態様において、塩類には四アルカリ金属ピロホスフェート、二アルカリ金属ジ酸ピロホスフェート(dialkali metal diacid pyrophosphate)、三アルカリ金属モノ酸ピロホスフェート(trialkali metal monoacid pyrophosphate)、およびその混合物が含まれ、それらにおいてアルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。これらの塩類は、それらの水和形および非水和形の両方が有用である。本発明組成物に有用なピロホスフェート塩の有効量は、一般に少なくとも約1.0重量%のピロホスフェートイオン、約1.5重量%〜約6重量%、約3.5重量%〜約6重量%のピロホスフェートイオンを供給するのに十分なものである。
【0064】
ポリマー
[0069] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により1種類以上のポリマー、たとえばポリエチレングリコール、ポリビニルメチルエーテル−マレイン酸コポリマー、多糖類(たとえばセルロース誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロース、または多糖ガム、たとえばキサンタンガムもしくはカラギーナンガム)をも含有することができる。酸性ポリマー、たとえばポリアクリレートゲルは、それらの遊離酸、または部分的もしくは完全に中和された水溶性アルカリ金属(たとえばカリウムおよびナトリウム)塩、またはアンモニウム塩の形で供給することができる。
【0065】
[0070] 特に、非陽イオン抗細菌剤または抗細菌剤、たとえばトリクロサンがいずれかの歯磨剤成分に含有される場合、好ましくは口腔表面へのそれらの薬剤の送達および保持ならびに表面における保持を増強させる作用物質も約0.05から約5%まで含有される。本発明に有用なそのような作用物質は、U.S.Pat.No.5,188,821および5,192,531に開示されている;合成陰イオン性高分子ポリカルボキシレート、たとえば無水マレイン酸またはマレイン酸と他の重合性エチレン性不飽和モノマーの1:4〜4:1コポリマー、好ましくは約30,000〜約1,000,000、最も好ましくは約30,000〜約800,000の分子量(M.W.)をもつメチルビニルエーテル/無水マレイン酸がこれに含まれる。これらのコポリマーは、たとえばGantrez、たとえばAN 139(M.W.500,000)、AN 119(M.W.250,000)、好ましくはS−97医薬グレード(M.W.700,000)として得られ、ISP Technologies,Inc.,08805ニュージャージー州バウンド・ブルックから入手できる。これらの増強剤が存在する場合、それらは約0.05から約3重量%までの量で存在する。
【0066】
[0071] 他の作用性ポリマーには、たとえば下記のものが含まれる:無水マレイン酸とアクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、N−ビニル−2−ピロリドン、またはエチレンとの1:1コポリマー、後者はたとえばMonsanto EMA No.1103、M.W.10,000、およびEMAグレード61として入手できる;ならびにアクリル酸とメタクリル酸メチルもしくはヒドロキシエチル、アクリル酸メチルもしくはエチル、イソブチルビニルエーテル、またはN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマー。
【0067】
[0072] 一般に適切なものは、活性化された炭素−炭素オレフィン性二重結合および少なくとも1つのカルボキシル基を含むオレフィン性またはエチレン性不飽和カルボン酸、すなわち、重合に際して容易に機能するオレフィン性二重結合を含む酸が、そのモノマー分子中にカルボキシル基に対してアルファ−ベータの位置にまたは末端メチレン基の一部として二重結合が存在するため、重合したものである。そのような酸の具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アルファ−クロロアクリル酸、クロトン酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アルファ−クロロソルビン酸、ケイ皮酸、ベータ−スチリルアクリル酸、ムコン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、アルファ−フェニルアクリル酸、2−ベンジルアクリル酸、2−シクロヘキシルアクリル酸、アンゲリカ酸、ウンベリカ酸、フマル酸、マレイン酸、および酸無水物である。そのようなカルボン酸モノマーと共重合しうる他の種々のオレフィン系モノマーには、酢酸ビニル、塩化ビニル、マレイン酸ジメチルなどが含まれる。コポリマーは、水溶性であるのに十分なカルボン酸塩の基を含む。
【0068】
[0073] 他のクラスのポリマー系作用物質には、置換アクリルアミドのホモポリマーおよび/または不飽和スルホン酸およびその塩のホモポリマーを含有する組成物が含まれる;特にその際、ポリマーは、アクリルアミドアリカンスルホン酸(acrylamidoalykane sulfonic acid)から選択される不飽和スルホン酸、たとえば2−アクリルアミド 2−メチルプロパンスルホン酸をベースとし、分子量約1,000〜約2,000,000をもつ;U.S.Pat.No.4,842,847,1989年6月27日にZahidに付与(本明細書に援用する)に記載。他の有用なクラスのポリマー系作用物質には、ポリアミノ酸、特にある割合の陰イオン界面活性アミノ酸、たとえばアスパラギン酸、グルタミン酸およびホスホセリンを含有するものが含まれる;U.S.Pat.No.4,866,161,Sikesらに付与(本明細書に援用する)に開示。
【0069】
[0074] 口腔ケア組成物を調製する際、望ましい稠度を付与するために、または配合物の安定化もしくは性能増強のために、時にはある増粘剤を添加することが必要である。特定の態様において、増粘剤はカルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ならびに水溶性セルロースエーテル塩、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムである。天然ガム、たとえばカラヤガム、アラビアゴム、およびトラガントゴムを含有させることもできる。組成物のテキスチャーをさらに改善するために、コロイド状のケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは微細に分割したシリカを増粘組成物の成分として使用できる。特定の態様において、増粘剤は全組成物の約0.5重量%〜約5.0重量%の量で用いられる。
【0070】
酵素
[0075] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により1種類以上の酵素を含有することもできる。有用な酵素には、利用可能ないずれかのプロテアーゼ、グルカノヒドロラーゼ、エンドグリコシダーゼ、アミラーゼ、ムタナーゼ、リパーゼおよびムチナーゼ、またはその適合する混合物が含まれる。特定の態様において、酵素はプロテアーゼ、デキストラナーゼ、エンドグリコシダーゼおよびムタナーゼである。他の態様において、酵素はパパイン、エンドグリコシダーゼ、またはデキストラナーゼとムタナーゼの混合物である。本発明に使用するのに適切な他の酵素は、U.S.Pat.No.5,000,939,Dringらに付与;U.S.Pat.No.4,992,420;U.S.Pat.No.4,355,022;U.S.Pat.No.4,154,815;U.S.Pat.No.4,058,595;U.S.Pat.No.3,991,177;およびU.S.Pat.No.3,696,191に開示されており、これらのすべてを本明細書に援用する。本発明において酵素、あるいは幾つかの適合性酵素の混合物は、1態様においては約0.002%〜約2.0%、または他の態様においては約0.05%〜約1.5%、またはさらに他の態様においては約0.1%〜約0.5%を構成する。
【0071】

[0076] 水も本発明の口腔用組成物中に存在することができる。商業用の口腔用組成物を調製する際に用いる水は、脱イオン処理されかつ有機不純物を含まないものとすべきである。水は一般に組成物の残部を補い、口腔用組成物の約10%〜約90%、約20%〜約60%、または約10%〜約30%(重量)含有される。この水の量は、添加した遊離水と、他の物質により、たとえばソルビトールまたは本発明のいずれかの成分により導入された量とを合わせたものを含む。
【0072】
湿潤剤
[0077] 口腔用組成物の特定の態様においては、組成物が空気に曝された際に硬化するのを防ぐために湿潤剤を含有させることも望ましい。特定の湿潤剤は、望ましい甘味または香味を歯磨組成物に付与することもできる。湿潤剤は、純湿潤剤を基準として、一般に1態様においては歯磨組成物の約15%〜約70%、または他の態様においては約30%〜約65%(重量)含有される。
【0073】
[0078] 適切な湿潤剤には、食用多価アルコール、たとえばグリセリン、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール、および他のポリオール、ならびにこれらの湿潤剤の混合物が含まれる。グリセリンとソルビトールの混合物を、特定の態様において本発明の練り歯磨き組成物の湿潤剤成分として使用できる。
【0074】
[0079] 前記成分のほかに、本発明の態様は多様な任意の歯磨剤成分を含有することができ、それらのうちの若干を以下に記載する。任意成分には、たとえば接着剤、起泡剤(sudsing agent)、着香剤、甘味剤、追加の歯垢抑制薬、研磨剤、および着色剤が含まれるが、これらに限定されない。これらおよび他の任意成分は、さらに下記に記載されている:U.S.Pat.No.5,004,597,Majetiに付与;U.S.Pat.No.3,959,458,Agricolaらに付与;およびU.S.Pat.No.3,937,807,Haefeleに付与;これらのすべてを本明細書に援用する。
【0075】
製造方法
[0080] 本発明組成物は、口腔用製品の領域で一般的な方法を用いて製造できる。
[0081] 例示態様のひとつにおいて、口腔ケア組成物は以下により製造される:アルギニンをゲル相で、酸、たとえばリン酸、塩酸または炭酸により中和または部分中和し、混合してプレミックス1を調製する。
【0076】
[0082] 有効物質、たとえばビタミン、CPC、フッ化物、研磨剤、および他のいずれかの要望する有効成分をプレミックス1に添加し、混合してプレミックス2を調製する。
[0083] 最終製品が練り歯磨きである場合、練り歯磨き基剤、たとえばリン酸二カルシウムまたはシリカをプレミックス2に添加し、混合する。この最終スラリーを付形して口腔ケア製品にする。
【0077】
組成物の使用
[0084] 方法の観点における本発明は、安全かつ有効な量の本明細書に記載する組成物を口腔に適用することを伴う。
【0078】
[0085] 本発明による組成物および方法は、修復および再石灰化を促進することにより歯を保護し、特に齲歯の形成を軽減または抑制し、歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進し、歯の過敏性を軽減し、ならびに、たとえば定量光誘導蛍光(QLF)または電気的齲食モニター(ECM)により検出される初期のエナメル質病変を軽減、修復または抑制する方法に有用である。
【0079】
[0086] 定量光誘導蛍光は、初期病変を検出してその進行または退縮を縦断的にモニターすることができる可視光蛍光である。正常な歯は可視光線中で蛍光発光する;脱灰した歯は発光しないか、またはより低い程度に発光するにすぎない。脱灰領域を定量し、その進行をモニターすることができる。青色レーザー光線を用いて歯を自然蛍光発光させる。無機質が失われた領域は、健全な歯の表面と比較してより低い蛍光をもち、より暗く見える。ソフトウェアを用いて、病変関連の白斑または面積/体積から蛍光を定量する。一般に、既存の白斑病変をもつ対象をパネリストとして参加させる。インビボで実際の歯について測定を行なう。病変面積/体積を臨床試験の開始時に測定する。病変面積/体積の減少(改善)を6カ月間の製品使用後に測定する。このデータは、しばしばベースラインに対する改善率パーセントとして報告される。
【0080】
[0087] 電気的齲食モニターは、電気抵抗に基づいて歯の無機質含量を測定するために用いる技術である。電導度測定は、脱灰およびエナメル質侵食を受けて流体が充たされた歯細管は電気を伝導するという事実を利用する。歯が無機質を失うのに伴って、多孔性が増すため歯は電流に対する抵抗がより低くなる。したがって、患者の歯の電導度の上昇を脱灰の指標とすることができる。一般に、既存の病変をもつ歯根表面について試験を実施する。インビボで実際の歯について測定を行なう。6カ月間の処置の前と後で電気抵抗の変化を測定する。さらに、触覚プローブ(tactile probe)を用いて歯根表面についての古典的な齲食採点を行なう。硬度を3点スケールで分類する:硬い、皮革様、または柔らかい。このタイプの試験では、一般にECM測定についての電気抵抗(高い数字ほど良い)、および触覚プローブ採点に基づく病変部の硬度の改善として、結果を報告する。
【0081】
[0088] したがって、本発明組成物は、有効量のフッ素および/またはアルギニンを含まない組成物と対比して初期のエナメル質病変(QLFまたはECMにより測定)を軽減する方法に有用である。
【0082】
[0089] 本発明組成物はさらに、口腔の有害細菌を減少させる方法、たとえば歯肉炎を軽減または抑制し、酸産生細菌のレベルを低下させ、アルギニン分解細菌の相対レベルを高め、口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制し、糖負荷後の歯垢pHを少なくとも約pH5.5のレベルに上昇および/または維持し、歯垢の蓄積を軽減し、ならびに/あるいは歯および口腔を清浄にする方法に有用である。
【0083】
[0090] 最後に、本発明組成物は、口内のpHを上昇させて病原性細菌を阻害することにより、口内の潰瘍または切り傷の治癒を促進するのに有用である。
[0091] 口腔組織は全身感染の入り口となる可能性があるので、口内の健康状態の増進は全身の健康状態にも有益となる。口内の良好な健康状態は、心血管の健康状態を含めた全身の健康状態に関連する。塩基性アミノ酸、特にアルギニンは、NO合成経路に補給する窒素源であり、したがって口腔組織における微小循環を増強するので、本発明の組成物および方法は格別な有益性を提供する。より酸性の低い口腔環境を提供することは、胃部不快感(gastric distress)の軽減にも役立ち、胃潰瘍に関連するヘリコバクター(Heliobacter)にとって、より好ましくない環境を作り出す。アルギニンは特に特定の免疫細胞受容体、たとえばT細胞受容体の高発現に必要であり、したがってアルギニンは有効な免疫応答を増強することができる。したがって本発明の組成物および方法は、心血管の健康状態を含めた全身の健康状態を増進するのに有用である。
【0084】
[0092] 本発明による組成物および方法は、口内および歯のケアのための口腔用組成物、たとえば練り歯磨き、透明なペースト、ゲル、マウスリンス、スプレーおよびチューインガムに採用できる。
【0085】
[0093] 全体を通して用いる範囲は、その範囲内にあるあらゆる数値を記述するための略記として用いられる。その範囲内の数値をいずれも範囲の末端として選択できる。さらに、本明細書に引用するすべての参考文献は、それらの全体が本明細書に援用される。本発明の開示における定義と引用した参考文献の定義が矛盾する場合、本発明の開示が支配する。配合物について記載する場合、それらは当技術分野で一般に行なわれるようにそれらの成分により記載することができると理解され、実際の配合物中でその製造、貯蔵および使用に伴ってそれらの成分が互いに反応する可能性があるにもかかわらず、そのような製品は本明細書に記載する配合物に包含されるものとする。
【0086】
[0094] 以下の実施例は、本発明の範囲における具体的な態様をさらに記載および立証する。これらの実施例は説明のために示したにすぎず、本発明の精神および範囲から逸脱しない多数の変更が可能なので、本発明の限定とみなすべきではない。本明細書に提示および記載したもののほか本発明の多様な改変が当業者に自明なはずであり、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【実施例】
【0087】
実施例1−アルギニン配合物中における抗細菌剤の利用能および送達
[0095] 市販の練り歯磨き、すなわち0.3重量%のトリクロサン、0.243重量%のフッ化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびメチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー(PVM/MA)を含むものを用い、これに0、1%、3%、および5%のL−アルギニン塩酸塩(pH7.0)を添加して配合物を調製する。
【0088】
[0096] 市販の配合物にL−アルギニンを含有させると、配合物から利用しうる可溶性トリクロサンの量が約70%(0%のアルギニン)から約80%(1%のアルギニン)、85%(3%のアルギニン)、および95%(5%のアルギニン)に増加する。
【0089】
[0097] これらの配合物を、練り歯磨き処理したヒドロキシアパタイト(HAP)ディスクへの細菌の付着を測定するために設計した人工口腔モデルにおいて、インビトロで24時間にわたって試験する;全般的に、Gaffar, A. et al. American Journal of Dentistry, vol. 3, 1990年9月、による記載に従い、唾液コートしたヒドロキシアパタイトディスクを細菌に曝露する前に歯磨剤スラリーで処理する改変を行なう。L−アルギニンを市販の配合物に含有させると、ディスクへのトリクロサンの送達が約50%増加することが示される;30分目の取込みが、対照についてのディスク当たり40マイクログラムのトリクロサンから5%アルギニン配合物についてのディスク当たり60マイクログラムのトリクロサンに増加する。24時間後、5%アルギニン配合物についての20マイクログラムと比較して、対照ディスクはディスク当たり約10マイクログラムを保持しており、これは有意の増加である。アルギニンの代わりにヒスチジンまたはリジンを用いて、類似の結果が達成される。
【0090】
[0098] この送達増加により配合物の抗細菌効果の増強が直接得られ、5%アルギニン配合物を用いたアクチノマイセス・ビスコーサス(A.viscosus)の増殖阻害において対照と対比して約15%の統計的に有意の低下が得られる。
【0091】
実施例2−アルギニンを含むシリカ基剤配合物の調製
[0099] シリカ基剤中に5%のアルギニンを含む練り歯磨き配合物を下記に従って調製する:
フッ化ナトリウムおよびサッカリンナトリウムを処方量の水の一部に溶解することにより、プレミックス溶液(プレミックスI)を調製する。別の容器内でポリマーガムおよび二酸化チタンを湿潤剤に分散させる。プレミックスIをこのゲル相に添加し、必要ならば加熱する;
最初にL−アルギニンを処方水の一部に分散させることにより、他のプレミックス溶液(プレミックスII)を調製する。次いでPVM/MA(Gantrez)をこのL−アルギニン分散液に添加し、均質になるまで混合する。次いで、適量の無機酸または塩基の添加によりゲル相のpHを中性pHに調整することができる。次いでプレミックスIIを湿潤剤/ポリマーガム溶液に添加して、ゲル相を完成させる;
このゲル相を適宜な加工容器に移す。研磨剤をゲル相に添加し、均質になるまで真空下で混合する。最後にトリクロサン、香料および界面活性剤を混合物に添加し、均質になるまで真空下で混合する。
【0092】
処方組成:トリクロサン+L−アルギニン
【0093】
【表1】

【0094】
[00100] 追加の配合物を下記に従って調製する。
【0095】
【表2−1】

【0096】
【表2−2】

【0097】
実施例3−トリクロサン取込みおよび細菌付着に対する配合物の有効性
[00101] 唾液コートしたヒドロキシアパタイトディスクに歯磨剤スラリーを37℃で一定期間適用することにより、トリクロサンの取込みを調べる。ディスクをすすいで、表面の過剰の歯磨剤を除去する。ディスクに取り込まれた有効物質を、次いで可溶化し、HPLCにより分析する。前記の実施例2の処方IIに類似の配合をもつ市販の練り歯磨き、すなわち0.3重量%のトリクロサン、0.243重量%のフッ化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびメチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーを含み、ただしアルギニンを含まないものが陽性対照である。この陽性対照は、処方IIの58.8と対比してディスク当たり32.7マイクログラムのトリクロサン取込みをもつ。したがって、アルギニンを含む製品は市販の配合物より79.8%高い取込みをもつ。
【0098】
[00102] 付着阻害試験において、処方II(0.1845の低下)は、陽性対照(アルギニンを含まないトリクロサン、0.1809の低下)(わずかに非有意限界で)および処方I(トリクロサンを含まないアルギニン、0.1556の低下)(より広い限界で)の両方より優れている。抗細菌試験において、処方II(0.1980の低下)は、陽性対照(0.1789の低下)および処方I(0.1891の低下)より優れている。
【0099】
実施例3−沈降炭酸カルシウムを含む配合物における抗細菌剤の送達
[00103] 2%の重炭酸アルギニンを含む配合物を下記に従って調製する:
【0100】
【表3−1】

【0101】
【表3−2】

【0102】
前記の実施例に記載した取込み試験において、処方C(アルギニンを含まない対照)についての22.88マイクログラムと対比して、処方Aはディスク上に57.86マイクログラムのトリクロサンを示す。
【0103】
実施例5−マウスリンス配合物
[00104] 下記の成分を用いて、本発明のマウスウォッシュ配合物を調製する。
【0104】
【表4】

【0105】
実施例6−沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む歯磨配合物
[00105] 歯磨配合物の感覚属性の試験において訓練された消費者テスターのパネルに、種々の歯磨配合物を付与し、これらを歯磨配合物の消費者使用を再現した二重盲検消費者試験条件下で用いた。
【0106】
[00106] パネルに歯磨配合物を通常どおりに使うように頼み、次いで種々の感覚特性を採点した。沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む基礎歯磨配合物について、この既知の配合物をプラセボ対照として用い、さらに1、2、3または5%の重炭酸アルギニンを含む対応する配合物を同様に試験した。意外にも、重炭酸アルギニンを含有するPCC配合物は、香味の強さ、清涼感、および泡立ちやすさの属性について消費者による受入れの向上を示し、さらに、2重量%の重炭酸アルギニンをさらに含む配合物は全体的な好み、全体的な味の好み、ブラッシング中の味、およびブラッシング後の味の向上を示すことが認められた。これに加えて、重炭酸アルギニンをさらに含む配合物は、感知された有効性、口/歯の清浄感、製品の適性、味、および全体的な製品品質を含むすべての印象属性において、プラセボ対照より有意に良好であると認められた。
【0107】
[00107] これに対し、沈降炭酸カルシウム(PCC)ではなくリン酸二カルシウムを基剤として含む配合物を試験した場合、重炭酸アルギニンの添加は、重炭酸アルギニンを添加しない同じ配合物と比較して有意に改善された感覚特性を示さなかった。
【0108】
[00108] この実施例は、塩基性アミノ酸、たとえば特に重炭酸塩としてのアルギニンの添加が、本発明の口腔ケア組成物中に用いた場合、歯磨配合物、殊に沈降炭酸カルシウム(PCC)の基礎配合物を含むものの感覚特性を驚異的に向上させうることを示す。
【0109】
実施例7−アルギニン以外の塩基性アミノ酸
[00109] ストレプトコッカス・サングイス(S.sanguis)の一夜培養物を37℃でトリプチケース大豆ブロス(Becton Dickinson,メリーランド州スパークス)中において増殖させた。約5ミリグラム重量の湿潤ペレットを集めるために、培養物を一度に1ミリリットルずつ、予め秤量した試験管内へ5,000rpmで5分間遠心分離した。次いでペレットを20ミリモル濃度のリン酸カリウム緩衝液(JT Baker,ニュージャージー州フィリプスバーグ)、pH4.0、に再懸濁して、生存のためにアンモニアを産生する細菌細胞に対するストレス負荷環境を模倣した。最終濃度は5ミリグラム/ミリリットルであった。この最終濃度に、最終濃度5ミリモル濃度のL−アルギニン、L−シトルリンまたはL−オルニチンを、最終濃度0.1%のショ糖(VWR,ペンシルベニア州ウェスト・チェスター)と一緒に添加した。次いでこの混合物を、振とう水浴中、37℃で30分間インキュベートした後、アンモニアの産生を測定した。
【0110】
[00110] アンモニアを分析するために、Diagnostic Chemicals Limited(コネチカット州オックスフォード)からのアンモニアアッセイキットを用いた。この特殊なキットの使用目的は血漿中アンモニアのインビトロ定量のためであるが、歯垢および/または細菌におけるアンモニア産生を測定および定量するために操作法を改変した。
【0111】
[00111] 下記の表は、前記に従ってストレプトコッカス・サングイスをpH4.0で用いた6つの別個の試験からのアンモニア産生値を示す。これらの結果は、アルギニンデイミナーゼ系により産生される中間体を利用して細胞生存のためのアンモニアを産生しうることを確認する。
【0112】
【表5】

【0113】
[00112] この実施例は、本発明の口腔ケア組成物中に用いた場合、アルギニン以外の塩基性アミノ酸が口腔内でアンモニアを産生し、したがって歯垢のpHを上昇させるのに有効であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のものを含む口腔ケア組成物:
a.有効量の遊離または塩形の塩基性アミノ酸;
b.有効量の抗細菌剤。
【請求項2】
さらに、陰イオン界面活性剤;有効量のフッ化物源;および/または陰イオン性ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩基性アミノ酸がアルギニンである、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
塩基性アミノ酸が塩形であり、リン酸アルギニン、重炭酸アルギニン、および塩酸アルギニンから選択される、請求項1、請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗細菌剤がトリクロサンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
抗細菌剤がスズ(II)イオン源および亜鉛イオン源から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、陰イオン界面活性剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
陰イオン界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに、陰イオン性ポリマーを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
陰イオン性ポリマーがメチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
下記のものを含む歯磨剤である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物:
a.有効量の、重炭酸アルギニン、リン酸アルギニンおよび塩酸アルギニンから選択される塩基性アミノ酸塩;
b.有効量のトリクロサン;
c.有効量の、フッ化ナトリウムおよびモノフルオロリン酸ナトリウムから選択される可溶性フッ化物塩;
d.陰イオン界面活性剤;ならびに
e.メチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー。
【請求項12】
さらに、キシリトールを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、シリカおよび炭酸カルシウムから選択される粒状物質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
放射性象牙質研摩(radioactive dentin abrasion)(RDA)が約150未満である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
さらに、水、研磨剤、界面活性剤、発泡剤、ビタミン、ポリマー、酵素、湿潤剤、増粘剤、抗微生物剤、保存剤、着香剤、着色剤、および/またはその組合わせのうち1以上を含む練り歯磨きの形態である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の口腔用組成物を、下記のために、その必要がある対象の口腔に適用することを含む方法:
a.齲歯の形成を軽減または抑制する、
b.初期のエナメル質病変を軽減、修復または抑制する、
c.歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進する、
d.歯の過敏性を軽減する、
e.歯肉炎を軽減または抑制する、
f.口内の潰瘍または切り傷の治癒を促進する、
g.酸産生細菌のレベルを低下させる、
h.アルギニン分解細菌(arginolytic bacteria)の相対レベルを高める、
i.口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制する、
j.糖負荷後の歯垢pHを少なくともpH5.5のレベルに上昇および/または維持する、
k.歯垢の蓄積を軽減する、
l.口内乾燥を治療、寛解または軽減する、
m.歯を増白する、
n.たとえば口腔組織を介した全身感染の潜在性を低下させることにより、心血管の健康状態を含めた全身の健康状態を増進する、
o.歯の侵食を軽減する、
p.歯を齲食原性細菌に対して免疫化または保護する、ならびに/あるいは
q.歯および口腔を清浄にする。
【請求項17】
齲歯または歯肉炎の形成を軽減または抑制するための、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
遊離または塩形の塩基性アミノ酸、および抗細菌剤を含む、対象の口腔の抗細菌処置に使用するための口腔ケア組成物。
【請求項19】
塩基性アミノ酸が全組成物重量の0.1から20重量%までの量で存在する、請求項18に記載の口腔ケア組成物。
【請求項20】
塩基性アミノ酸が全組成物重量の1から10重量%までの量で存在する、請求項18または請求項19に記載の口腔ケア組成物。
【請求項21】
塩基性アミノ酸がアルギニンを含む、請求項18〜20のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項22】
抗細菌剤が全組成物重量の0.01から5重量%までの量で存在する、請求項18〜21のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項23】
抗細菌剤が全組成物重量の0.01から1重量%までの量で存在する、請求項22に記載の口腔ケア組成物。
【請求項24】
抗細菌剤がトリクロサンである、請求項18〜23のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項25】
さらに、全組成物重量の0.01から2重量%までの量の可溶性フッ化物塩を含む、請求項18〜26のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項26】
さらに、全組成物重量中に50〜25,000重量ppmのフッ化物イオンを供給する量のフッ化物イオン源を含む、請求項18〜26のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項27】
可溶性フッ化物塩またはフッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、およびその混合物から選択される、請求項25または請求項26に記載の口腔ケア組成物。
【請求項28】
さらに、全組成物重量の0.01から10重量%までの量の陰イオン界面活性剤を含む、請求項18〜27のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項29】
陰イオン界面活性剤が全組成物重量の0.3から4.5重量%までの量で存在する、請求項28に記載の口腔ケア組成物。
【請求項30】
陰イオン界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、およびその混合物から選択される、請求項28または請求項29に記載の口腔ケア組成物。
【請求項31】
さらに研磨剤を含み、研磨剤が全組成物重量の少なくとも約5重量%を構成する小粒子画分を含有し、その際、小粒子画分の粒子が5μm未満のd50を有する、請求項18〜30のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項32】
小粒子画分が全組成物重量の少なくとも約20重量%を構成する、請求項31に記載の口腔ケア組成物。
【請求項33】
研磨剤が、炭酸カルシウム、シリカ、およびその混合物から選択される、請求項31または請求項32に記載の口腔ケア組成物。
【請求項34】
研磨剤が全組成物重量の15から70重量%までを構成する、請求項31〜33のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項35】
抗細菌剤、および遊離または塩形の塩基性アミノ酸を含む、対象の口腔において口腔表面への抗細菌剤の送達を増大させるための口腔ケア組成物。
【請求項36】
塩基性アミノ酸が全組成物重量の0.1から20重量%までの量で存在する、請求項35に記載の口腔ケア組成物。
【請求項37】
塩基性アミノ酸が全組成物重量の1から10重量%までの量で存在する、請求項36に記載の口腔ケア組成物。
【請求項38】
塩基性アミノ酸がアルギニンを含む、請求項35〜37のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項39】
抗細菌剤が全組成物重量の0.01から5重量%までの量で存在する、請求項35〜38のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項40】
抗細菌剤が全組成物重量の0.01から1重量%までの量で存在する、請求項39に記載の口腔ケア組成物。
【請求項41】
抗細菌剤がトリクロサンである、請求項35〜40のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項42】
対象の口腔において口腔表面への抗細菌剤の送達を増大させるための、抗細菌剤を含む口腔ケア組成物における、遊離または塩形の塩基性アミノ酸の使用。
【請求項43】
塩基性アミノ酸が全組成物重量の0.1から20重量%までの量で存在する、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
塩基性アミノ酸がアルギニンを含む、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
抗細菌剤が全組成物重量の0.01から5重量%までの量で存在する、請求項42〜44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
抗細菌剤がトリクロサンである、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
対象の口腔において口腔表面への抗細菌剤の送達を増大させるのに使用する、抗細菌剤を含有する医薬の製造のための、遊離または塩形の塩基性アミノ酸の使用。
【請求項48】
対象の口腔において口腔表面への口腔ケア組成物中の抗細菌剤の送達を増大させる方法であって、抗細菌剤および遊離または塩形の塩基性アミノ酸を含む口腔ケア組成物で口腔を処置することを含む方法。

【公表番号】特表2011−510982(P2011−510982A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544954(P2010−544954)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058704
【国際公開番号】WO2009/099454
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】