説明

可動接点付シート、および可動接点付シートの製造方法

【課題】各種電子機器の操作入力部に使用される可動接点付シート、および可動接点付シートの製造方法に関し、製品の外形端部側の位置に可動接点を配しても剥がれ等の発生が低減されるものを提供する。
【解決手段】下面に形成された粘着剤12でドーム状の可動接点1を粘着保持する第1シート11を、曲げ弾性率などの値が小さくて柔軟性に富むポリプロピレン製フィルムのものとして、可動接点1上面を保持した状態で発生する平面状に戻ろうとする力を小さくさせる構成とした。これによって、搭載状態で第1シート11が良好に配線基板7に密着維持されるものにでき、製品の外形端部側の位置に可動接点1を配しても第1シート11の外形端部位置における剥がれ等の発生が低減されたものに構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の各種電子機器の薄型化された操作入力部に使用される可動接点付シート、および可動接点付シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の薄型化された操作入力部には、絶縁フィルムからなるシート下面に上方凸形ドーム状の可動接点を粘着保持させた可動接点付シートを、上面に固定接点を有した配線基板上に貼り合わせて薄型のパネルスイッチに構成したものが多く用いられている。
【0003】
このような従来の可動接点付シートについて、以下に図面を用いて説明する。図13は従来の可動接点付シートの断面図、図14は同分解斜視図である。
【0004】
同図において、1は、上方凸形のドーム状に形成された可動接点であり、ステンレス等のばね性を有する金属薄板から形成されている。なお、可動接点1の上面側からみた外形は、円形や楕円形などに形成されている。
【0005】
2は、下面に粘着剤3を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)製のベースシートで、外形が、使用される機器の操作入力部に応じた矩形状などの所定形状に形成されていると共に、上記複数個の可動接点1が、それぞれの上面を上記粘着剤3によって粘着保持されて所定箇所に配設され、これらによって可動接点付シート4が構成されている。なお、ベースシート2の厚みは、一般的には25μm〜50μmのものが主流になってきている。
【0006】
この可動接点付シート4は、通常、ベースシート2下面の粘着剤3に、絶縁性フィルムからなるセパレータ5の離型層が形成された上面側が密着して貼り合わされ、ベースシート2とセパレータ5との間に可動接点1を挟み込んだ状態で輸送・保管などがされる。
【0007】
そして、上記可動接点付シート4は、使用時にはセパレータ5を剥がしたあと、図15の断面図に示すように、上面に中央接点6Aと外側接点6Bとが一対となり、それらが複数対配された配線基板7上にベースシート2下面の粘着剤3で貼り付け装着して搭載される。その搭載状態では、各中央接点6Aが各可動接点1の中央部下面に間隔をあけて対面し、かつそれぞれの外側接点6B上に上記可動接点1の外周下端がそれぞれ載置されて個々の単体スイッチが構成され、その単体スイッチを複数個備えた薄型のパネルスイッチに構成されて使用される。
【0008】
上記単体スイッチの動作としては、ベースシート2の上方から可動接点1のドーム状の頂点部に押し下げ力を加えていくと、可動接点1のドーム状部分が弾性反転し、中央部下面が中央接点6Aに接触する。これによって可動接点1を介して中央接点6Aと外側接点6B間が電気的に接続される。そして、その押し下げ力を除くと、可動接点1が自らの復元力で元の上方凸形に弾性復帰して、中央接点6Aと外側接点6Bとの間が元の電気的独立状態に戻る。
【0009】
そして、上記可動接点付シート4は、ベースシート2下面の粘着剤3で配線基板7上に貼り合わされて上記搭載状態になされることにより、可動接点1と各接点6A、6Bで構成される接点部分への異物や水分の侵入を防いで電気的接続安定性を確保するものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−183140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来の可動接点付シート4においては、ベースシート2として、可撓性を有するPETフィルムを用いていたが、定型に加工されたベースシート2の外形端部の近傍位置に可動接点1の配設が必要となる場合に、その外形端部側のベースシート2における粘着面積が少なくなって、ベースシート2自体が平面状に戻ろうとする弾性復帰力で当該部分の配線基板7からの剥がれや浮きが発生することも考慮される。そして、そのようになって密閉状態が得られなくなった折には、粘着剤3と配線基板7の隙間から異物が侵入する恐れもあるため、可動接点1の配設位置を上記状態にならない位置に設定しなければならないという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、定型に加工形成された製品外形のものにおいて、従来よりも外形端部側の位置に可動接点を配しても搭載状態での剥がれや浮きの発生を低減することができる可動接点付シート、および可動接点付シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明は、ドーム状の可動接点と、下面に形成された粘着剤で上記可動接点の上面を保持する第1シートとを備え、その第1シートがポリプロピレン製フィルムで構成された可動接点付シートとしたものである。これによれば、曲げ弾性率などの値が小さいポリプロピレン製フィルムを使用した構成にしたことで、可動接点の上面を保持した状態で発生する平面状に戻ろうとする力が小さくなるため、従来のものよりも第1シートの外形端部側の位置に可動接点を配したものとしても、対応した配線基板への搭載状態で、可動接点のドーム状部分上面および配線基板上に貼り付けられた部分に対して第1シートが良好に密着維持されるものにでき、その第1シートの外形端部位置においても剥がれや浮きの発生が低減できるものとして実現できるという作用を有する。また、第1シートが柔軟性に富むものであるため、可動接点を操作した際に得られる操作感触(いわゆるクリック感触)も良好なものが得られるようになるという作用も得られる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第1シート下面に、可動接点を収納する収納孔を備えたスペーサとしてなる第2シートが貼り合わせられたものであり、可動接点を収納する第2シートの上面に第1シートを貼り合わせた構成としたので、第1シートの貼り合わせ高さ位置が可動接点の上面と第2シートの上面とにでき、第1シートを高低差の少ない高さ位置で貼り合わせたものに構成できる。これにより、第1シートの平面状に戻ろうとする力がさらに軽減されて第1シートの粘着状態がより強固で安定した粘着状態のものにでき、そして、配線基板上には第2シートが安定して粘着維持されて搭載できることから、一層、防塵性などに優れると共に操作感触にも有利なものとして実現できるという作用を有する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第1シートの厚みが、25μm以上100μm以下であるものであり、当該フィルム厚みのものを用いると、生産時におけるフィルム取り扱い性や加工性なども良好で、しかも製品状態で必要とする第1シートの柔軟性も十分に得られるものにでき、防塵性などに優れ、操作感触も良好に得られるものにできるという作用を有する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載の発明において、第2シートの厚みが、50μm以上100μm以下であるものであり、当該フィルム厚みのものを用いると、生産時におけるフィルム取り扱い性や加工性なども良好で、しかも第2シートで厚みをかせいで第1シートの平面状に戻ろうとする力を小さくすることができるという作用を有する。そして、第2シートを、ポリプロピレン製フィルムで構成すると、第2シートからの柔軟性の作用も加わったものに構成でき、さらに防塵性などに優れ、操作感触的にも良好なものにできる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、第2母材の下面に工程用セパレータフィルムが粘着剤で貼り合わせられた第1仕掛品に対し、上下に貫通させて所定箇所に孔あけ加工を施す工程と、その後に上記孔あけ済みの第1仕掛品の下面に補助フィルムを、またその上面には、少なくとも上記各孔が上方から覆われるように第1母材を貼り合わせて第2仕掛品を得る工程と、この第2仕掛品に、製作する可動接点付シートの外形に応じた形状で上方の上記第1母材側からハーフカット加工を施して第3仕掛品に形成する工程と、そのハーフカット加工を施した内部領域部分を上記工程用セパレータフィルムから剥がして、可動接点を装着させる前の第4仕掛品に形成する工程とを含む可動接点付シートの製造方法としたものであり、簡素な工程を経て第2シート付の可動接点付シートを連続的に生産できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明による可動接点付シート、および可動接点付シートの製造方法によれば、その可動接点付シートにおいては、ポリプロピレン製フィルムを用いた構成にしたことにより、配線基板との密着性が向上して搭載状態での防塵性などが高くて、操作時に得られる操作感触も良好なパネルスイッチを構成できるものとして実現することができ、また、その可動接点付シートの製造方法では、第2シート付の可動接点付シートを連続的に効率よく生産できるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図12を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態による可動接点付シートの断面図、図2は同分解斜視図、図3は同可動接点付シートを用いて構成したパネルスイッチの断面図である。
【0022】
同図において、11は、外形が定型に加工されると共に、その下面全体に粘着剤12が備えられた第1シートで、その粘着剤12によりドーム状の可動接点1が複数個、所定位置に互いに独立状態で粘着保持されて可動接点付シート15が構成されている。ここに、当該構成においては、第1シート11として、可撓性を有し、しかも曲げ弾性率などの値が小さくて柔軟性に富む絶縁性のポリプロピレン製フィルムを用いたものとしている。そして、第1シート11においては、可動接点1の周囲を囲む位置に熱押しなどをして、可動接点1上に沿わせつつ、その周囲位置の部分を下方高さ位置に維持されるように塑性変形させている。なお、輸送時や保管時に、セパレータ5を粘着剤12側に貼り合わせたものとすることは従来同様である。
【0023】
そして、可動接点付シート15は、搭載時には、セパレータ5を剥がして下面の粘着剤12を露出させ、図3に示すように、上記粘着剤12で従来同様にエポキシ樹脂等からなる配線基板7上に貼り合わせて薄型のパネルスイッチを構成して使用される。配線基板7の上面には、対としてなる中央接点6A、外側接点6Bが、複数対、配設されており、各可動接点1は、外周下端が対応した外側接点6B上に常接状態に載置され、ドーム状の中央部下面が中央接点6Aと間隔をあけて対面して、個々に単体スイッチが構成されている。なお、中央接点6A、外側接点6Bは、導電性の銅箔やカーボン塗膜等から形成されている。
【0024】
上記単体スイッチの動作としては、第1シート11の上方から可動接点1のドーム状の頂点部に押し下げ力を加えていくと、可動接点1のドーム状部分が弾性反転し、その中央部下面が中央接点6Aに接触することにより中央接点6Aと外側接点6Bとの間が電気的に接続される。そして、その押し下げ力を除くと、可動接点1が自らの復元力で元の上方凸形に弾性復帰して、中央接点6Aと外側接点6Bとの間が元の電気的独立状態に戻る。
【0025】
ここに、当該実施の形態による可動接点付シート15においては、上述したように第1シート11としてポリプロピレン製フィルムを用いた構成としている。なお、その厚みとしては、25μm以上100μm以下のものが好ましく、特に25μm以上50μm以下の厚みのものが好ましい。そして、上記ポリプロピレン製フィルムの曲げ弾性率は、400〜600MPaであり、従来のPETフィルムの曲げ弾性率は3000〜5000MPaである。すなわち、当該実施の形態によるものの方が、可動接点1を覆い込むシート部材自身が柔軟性に富み、そのため、可動接点1の動作時に不要な応力の影響が緩和されるものにできる。
【0026】
例えば、可動接点1について、動作力が1Nのものを、厚み50μmの第1シート11に装着したもので、クリック率の低下を実測すると、3〜3.5%前後の低下に留まった。なお、クリック率とは、上記構成とされた状態で、可動接点1に押下げ力を加えていき上述したように可動接点1が押し込まれて弾性反転動作した際のピーク値(P)とボトム値(Q)との差をとって、その差を上記ピーク値(P)で割ったものの百分率で計量値評価をするものであり、通常、{(P−Q)/P×100%}で示される。
【0027】
それに対して、同じ可動接点1を従来構成のように厚み50μmのPETフィルムに装着したものでは、クリック率の低下は5〜6%であり、その差は、可動接点1を覆い込むシート部材(第1シート11)の柔軟性つまり弾性率の違いによると推測される。つまり、可動接点1の弾性変形時にポリプロピレン製フィルムのものの方が、シート部材自身の追従性がよく、かつその弾性変形する可動接点1周囲のシート部材部分からの影響も少なくなるから上記の差があるようになったと推測される。
【0028】
以上のように、当該可動接点付シート15であれば、可動接点1を覆い込むシート部材(第1シート11)に曲げ弾性率などの値が小さくて柔軟性に富む素材のフィルムを使用した構成としているため、配線基板7上に貼り合わせた搭載状態で、操作時に可動接点1からの良好な操作感触が得られるものに構成することができる。
【0029】
さらに、第1シート11が柔軟性を有するため、配線基板7への搭載状態では、可動接点1上面のドーム状部分を覆う曲面部分、配線基板7上に貼り付けられた平坦部分のそれぞれにも追従しやすくなり、その両者の表面に良好な密着状態で維持されるものにできる。つまり、これは、第1シート11として柔軟性のあるフィルムを使用しているため、第1シート11の可動接点1上面を保持した状態で発生する平面状に戻ろうとする力が小さくなることに起因すると推察される。そして、これによって従来のものよりも第1シート11の外形端部側の位置に可動接点1を配置したものとしても、第1シート11の外形端部側の位置においての剥がれや浮きの発生が低減され、外形の小型化を図ることなども可能となる。そして、第1シート11の外形端部位置における剥がれや浮きの発生が低減できるため、パネルスイッチの接点部分に対しての不要な塵埃や水分の侵入も防止でき、防塵性ならびに接触安定性に優れたパネルスイッチを容易に構成することができる。
【0030】
なお、第1シート11の厚みとして25μm以上のものであれば、製品生産時での搬送や準備工程でのフィルムの取り扱い性などに劣ることなく、一方、100μm以下であれば、可動接点1が反転する際の操作ストロークに与える影響なども少なく、しかも良好な操作感触が得られるものに構成することができる。
【0031】
(実施の形態2)
図4は本発明の第2の実施の形態による可動接点付シートの断面図、図5は同分解斜視図、図6は同上面図、図7は同可動接点付シートを用いて構成したパネルスイッチの断面図である。
【0032】
同図に示すように、外形を定型に加工された可撓性を有するポリプロピレン製フィルムからなる第1シート11には、その下面全体に粘着剤12が備えられており、その粘着剤12によりドーム状の可動接点1が、複数個互いに独立状態に粘着保持されている。
【0033】
上記第1シート11は、その下面の粘着剤12で第2シート22の上面に貼り合わせられている。第2シート22は、外形が第1シート11と同形状に形成されていると共に、可動接点1の配置位置に応じた箇所毎に上下に貫通する収容孔22Aが設けられており、第1シート11に保持された各可動接点1は、上記収容孔22A内にそれぞれ収容状態で配されている。
【0034】
さらに、その第2シート22には、隣り合う収容孔22A同士間を連通する空気流路用の連通部22Bが設けられている。連通部22Bは、上記収容孔22Aと同じく上下に貫通した状態で形成されている。なお、第2シート22上に貼り合わせられた第1シート11は、第2シート22の収容孔22Aや連通部22Bの上面を塞いでいる。そして、第2シート22の下面全面には粘着剤23が形成されている。
【0035】
なお、第1シート11においては、実施の形態1と同様に、可動接点1に沿わせて、その周囲を囲むように熱押しなどをして、その周囲部分を下方高さ位置で維持されるように塑性変形させておくとよい。その構成であれば、第1シート11における可動接点1の周囲位置が、第2シート22の収容孔22A周囲の上面位置に確実に粘着保持したものに容易に構成することができる。
【0036】
なお、上記第2シート22の材質としては、絶縁性のポリプロピレン製フィルムを用いることが特に好ましいが、PETフィルムなどであってもよい。
【0037】
以上のように、当該実施の形態による可動接点付シート25は構成され、上述したものと同様に、その輸送時や保管時には、第2シート22下面の粘着剤23に、絶縁性のフィルムからなるセパレータ5の離型処理が施された上面側が貼り付けられて第2シート22の下面全面がセパレータ5で覆われた形態とされる。
【0038】
そして、その使用時には上記セパレータ5が剥がされた後、露出した第2シート22下面の粘着剤23で配線基板7上に貼り合わせて搭載状態にされる(図7参照)。その搭載状態では、各可動接点1は、外周下端が外側接点6B上に常接状態に載置され、ドーム状の中央部下面が中央接点6Aと間隔をあけて対面した状態とされ、個々の単体スイッチを複数箇所に備えたパネルスイッチに構成されて使用される。
【0039】
上記単体スイッチの動作としては、第1シート11の上方から可動接点1のドーム状の頂点部に押し下げ力を加えていくと、可動接点1のドーム状部分が弾性反転し、その中央部下面が中央接点6Aに接触して中央接点6Aと外側接点6B間が電気的に接続され、その押し下げ力を除くと、可動接点1が自らの復元力で元の上方凸形に弾性復帰して、中央接点6Aと外側接点6Bとの間が元の電気的独立状態に戻る。
【0040】
ここに、当該実施の形態によるものは、柔軟性の高い第1シート11を用いている上、さらに第1シート11の下方位置に第2シート22を配設した構成としている。このため、第1シート11が粘着される箇所としては、可動接点1の上面と第2シート22の上面位置になり、両者の高さ位置は実施の形態1などによる場合よりも高低差が少なくなる。これによって両者に貼り合わせられた第1シート11は、さらに平面状に戻ろうとする力が軽減されて、より強固で安定した粘着状態で、スペーサとしてなる第2シート22に粘着されたものに構成できる。また、その第1シート11の平面状に戻ろうとする力が軽減される分、下面側の第2シート22への影響度合いも軽減され、上記第2シート22が、容易に配線基板7上に密着性高く貼り付けられた状態で搭載できるものに実現できる。
【0041】
そして、上述した動作時においても、第1シート11が柔軟な材質で構成され、かつ、その平面状に戻ろうとする力も軽減される分、可動接点1の動作力を阻害する要因が少なくなり、操作感触(クリック率)がさらに良化したものとなる。例えば、実施の形態1と同様に、動作力が1Nの可動接点1を、厚み25μmの第1シート11に装着し、PETフィルムからなる第2シート22の厚みを50μmにした構成のもので、クリック率の低下を実測すると、2.5%前後の低下に留まった。
【0042】
さらに、上述構成の中で第2シート22のみをポリプロピレン製フィルムで厚みを50μmのものに代えてクリック率の低下を実測すると、2%前後のものとなりさらに良化傾向が見られた。これは、可動接点1の動作時に、第1シート11が柔軟に追従する上、その周囲部分で貼り付けられた第2シート22も可動接点1側の方向へ若干引っ張られるが、その力を、柔軟性の高い材質で所定厚みの第2シート22であれば緩和させることができるためと推察される。
【0043】
以上のように、当該実施の形態によるものは、さらに良好な操作感触が得られて防塵性など高く搭載可能なものとして構成することができる。なお、当該構成であれば、第1シート11の平面状に戻ろうとする力が、より軽減されたものにできるため、例えば可動接点1の配置位置を、一層、第1シート11の外形端部側の位置に設定することも可能である。
【0044】
そして、第1シート11の厚みとしては、25μm以上100μm以下であれば、製造時での搬送や準備工程でのフィルム取り扱い性などに劣ることなく、第2シート22の上面に貼り合わせる場合においても、しわや気泡の混入がない状態に容易に貼り合わせ可能で、操作時に良好な操作感触が得られるものにできる。
【0045】
また、第2シート22としても、所定厚みで、曲げ弾性率などの値が小さくて柔軟性に富む材質のもの、例えば50μm以上100μm以下のポリプロピレン製フィルムを用いた構成にすると厚みをかせいで非常に良い操作感触が得られるものにできる。なお、いわゆるスペーサとして機能するように配した第2シート22は、上述したPETフィルムとポリプロピレン製フィルム以外の素材のものであってもよい。
【0046】
(実施の形態3)
当該実施の形態3は、上記実施の形態2に説明した可動接点付シートやそれに類する構成のものを製造する際に用いる可動接点付シートの製造方法を説明するものであり、はじめに上記実施の形態2に説明した可動接点付シート25を製造する場合について説明する。
【0047】
まず、準備工程として、加工後には第2シート22とされる長尺フィルム製の第2母材32を準備し、その下面全面にアクリル系粘着剤33を10μmの厚みで塗布形成する。なお、ここでは第2母材32に50μm以上100μm以下の厚みのPETフィルムまたはポリプロピレン製フィルムを用いている。
【0048】
一方、第2母材32と少なくとも同一幅の長尺で、その上面に離型処理が施された工程用セパレータフィルム35を準備して、上記アクリル系粘着剤33にその上面を粘着させて、図8に示した第1仕掛品40を形成する。工程用セパレータフィルム35の材質は特に限定されないが、例えば腰のある50μm程度のPETフィルムなどを用いるとよい。なお、予め上記状態で貼り合わせられているものを購入して使用してもよい。
【0049】
次に、第1仕掛品40に対し、図9に示すように、可動接点1の配置位置に応じた箇所毎に、上下に貫通させて孔あけ加工を施して孔40Aあけ済みの第1仕掛品40とする。また、図示や詳細説明は省略するが、連通部22B用の孔についても当該工程で同様に設けておけばよい。
【0050】
次に、孔40Aあけ済みの第1仕掛品40の下面に対し、各孔40Aを下方から覆うように、補助フィルム42の微粘着剤(図示せず)を備えた上面側を工程用セパレータフィルム35下面に貼り合わせる。この補助フィルム42は、例えば50μmのポリエチレンフィルム(PEフィルム)やPETフィルムなどを用いればよいが、特に限定はされない。一方、孔40Aあけ済みの第1仕掛品40の上面に対しては、下面全面にアクリル系粘着剤50が形成された第1母材51を、各孔40Aが上方から覆われるように上記アクリル系粘着剤50で貼り合わせて図10に示した第2仕掛品55とする。この第1母材51は、加工後に第1シート11となるものであり、上述した可動接点付シート25を製造するには、第1母材51を25μm以上100μm以下の厚みのポリプロピレン製フィルムとし、その下面に10μm程度の厚みでアクリル系粘着剤50が塗布形成されたものを用いればよい。
【0051】
続いて、上記第2仕掛品55に対して、上方からハーフカット加工を行い、図11に示した第3仕掛品58とする。ここに上記ハーフカット加工は、製作する可動接点付シート25の外形の輪郭に応じた形状で、上方の第1母材51側から行い、第1母材51、アクリル系粘着剤50、第2母材32、アクリル系粘着剤33までがハーフカット加工部58Aでの切断状態になるように加工を施す。
【0052】
次に、第3仕掛品58において、ハーフカット加工を施した内部領域部分を工程用セパレータフィルム35から剥がして、可動接点付シート25の可動接点1を装着させる前の第4仕掛品60(図12参照)とする。
【0053】
その第4仕掛品60は、第1母材51から所望の外形に形成された第1シート11下面に同一形状で第2母材32から形成された第2シート22が粘着剤12(アクリル系粘着剤50)を介して貼り合わせられ、また、その第2シート22下面には粘着剤23(アクリル系粘着剤33)が露出した形態のものとなる。さらに、第2シート22およびその下面の粘着剤23においては、可動接点1の配置位置毎に下方開口の収容孔22Aが設けられ、各収容孔22Aは第1シート11で上方から覆われると共に、各収容孔22A内の第1シート11下面位置には、上記粘着剤12が露出した形態のものとなる。そして、第4仕掛品60に対して、下方から可動接点1を各収容孔22A内に装着する。つまり、可動接点1の上方に突出したドーム状部分の上面を、各収容孔22A内に露出した粘着剤12部分に粘着保持させ、その後、第1シート11への熱押しなどをすると共に、第2シート22下面の粘着剤23に対して搬送保管用のセパレータ5を貼り合わせることにより、上述したセパレータ5付の可動接点付シート25に完成させる。
【0054】
以上のように、当該製造方法においては、常に複数フィルムを貼り合わせた状態で工程作業を進めていくため、例えば第1母材51などが柔軟性に富むポリプロピレン製フィルムであってもフィルム取り扱い性などを含んで作業性は良好で、連続的に効率よく生産することができる。なお、例えばパイロット孔を設けるなどして、さらに製造効率の向上を図るようにすることもできる。
【0055】
そして、当該製造方法の適用は、第1母材51、第2母材32が上述した材質や厚みのもののみに限定されることはなく、上記実施の形態2で説明した可動接点付シート25において、第1シート11の材質や厚み違いのもの、第2シート22の材質や厚み違いのもの、それらが組み合わさって構成されるものにも有効である。つまり、それらのいずれの構成であっても、薄い厚みの個別フィルムを用いて完成品までに製造することには変わりなく、その個別フィルム毎で取り扱って製造工程を進めるよりも、当該製造方法を用いて製造する方が製造効率の向上が容易に図れるからである。なお、完成品状態での構成事例としては、第1母材51を例えば25μm以上50μm以下の厚みのPETフィルムを用いて、上記PETフィルムで第1シート11を構成する場合などである。当該構成のものでも、第1シート11が可動接点1と第2シート22上に高低差少なく貼り合わせられ、しかもその厚みも薄いものであるため、従来品の課題緩和が図れるものとなる。さらには、第1シート11に加えて第2シート22をもPETフィルム製のものとすると効率よく生産することができて安価なものを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明による可動接点付シート、および可動接点付シートの製造方法は、その可動接点付シートにおいては、ポリプロピレン製フィルムを用いた構成にしたことにより、配線基板との密着性が向上して搭載状態での防塵性などが高くて、操作時に得られる操作感触も良好なパネルスイッチを構成することができるという有利な効果を有し、また、その可動接点付シートの製造方法では、第2シート付の可動接点付シートを連続的に効率よく生産できるという有利な効果を有し、接点部分への異物や水分の侵入を防ぎ、電気的接続安定性を求められる薄型のパネルスイッチを構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態による可動接点付シートの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同可動接点付シートを用いて構成したパネルスイッチの断面図
【図4】本発明の第2の実施の形態による可動接点付シートの断面図
【図5】同分解斜視図
【図6】同上面図
【図7】同可動接点付シートを用いて構成したパネルスイッチの断面図
【図8】本発明の第3の実施の形態による可動接点付シートの製造方法を説明する図
【図9】同可動接点付シートの製造方法を説明する図
【図10】同可動接点付シートの製造方法を説明する図
【図11】同可動接点付シートの製造方法を説明する図
【図12】同可動接点付シートの製造方法を説明する図
【図13】従来の可動接点付シートの断面図
【図14】同分解斜視図
【図15】同可動接点付シートを用いて構成したパネルスイッチの断面図
【符号の説明】
【0058】
1 可動接点
5 セパレータ
6A 中央接点
6B 外側接点
7 配線基板
11 第1シート
12 粘着剤
15、25 可動接点付シート
22 第2シート
22A 収容孔
22B 連通部
23 粘着剤
32 第2母材
33 アクリル系粘着剤
35 工程用セパレータフィルム
40 第1仕掛品
40A 孔
42 補助フィルム
50 アクリル系粘着剤
51 第1母材
55 第2仕掛品
58 第3仕掛品
58A ハーフカット加工部
60 第4仕掛品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状の可動接点と、下面に形成された粘着剤で上記可動接点の上面を保持する第1シートとを備え、その第1シートがポリプロピレン製フィルムで構成された可動接点付シート。
【請求項2】
第1シート下面に、可動接点を収納する収納孔を備えたスペーサとしてなる第2シートが貼り合わせられた請求項1記載の可動接点付シート。
【請求項3】
第1シートの厚みが、25μm以上100μm以下である請求項1記載の可動接点付シート。
【請求項4】
第2シートの厚みが、50μm以上100μm以下である請求項2記載の可動接点付シート。
【請求項5】
第2母材の下面に工程用セパレータフィルムが粘着剤で貼り合わせられた第1仕掛品に対し、上下に貫通させて所定箇所に孔あけ加工を施す工程と、その後に上記孔あけ済みの第1仕掛品の下面に補助フィルムを、またその上面には、少なくとも上記各孔が上方から覆われるように第1母材を貼り合わせて第2仕掛品を得る工程と、この第2仕掛品に、製作する可動接点付シートの外形に応じた形状で上方の上記第1母材側からハーフカット加工を施して第3仕掛品に形成する工程と、そのハーフカット加工を施した内部領域部分を上記工程用セパレータフィルムから剥がして、可動接点を装着させる前の第4仕掛品に形成する工程とを含む可動接点付シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−108747(P2010−108747A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279439(P2008−279439)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】