説明

可動装置

【課題】可動体の複数の可動形態のうちの少なくとも一つの可動形態の認識を、DCモータが発生する可聴音で行うことができる可動装置を提供する。
【解決手段】可動装置は、可動体1と、駆動に伴い可動体1を複数の可動形態で可動させるDCモータ20で形成されたDCモータ20をもつ駆動部2と、DCモータ20をPWM制御させて駆動電流を発生させると共にPWM周波数を変更可能な制御部3とを有する。制御部3は、可動体1のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータ20に給電される駆動電流のPWM周波数を他の可動形態に対して変更させることにより、DCモータ20が発生する可聴音の物理量を変更させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を複数の可動形態で可動させ得るDCモータを備える可動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、可動装置を動作させるステッピングモータが駆動停止している状態で、そのステッピングモータが有する最大起動周波数を超える周波数の信号を出力して、ステッピングモータを脱調させ、その振動音を報知音として用いる可動装置が開示されている。これにより、報知手段としてブザー装置を別途設けなくてもよいため、部品点数を減らしコスト削減を図り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−156921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した技術によれば、ステッピングモータを脱調させて、ブザー装置として利用するには、ステッピングモータは停止した状態でなくてはならない。このため、回転動作を行いながら報知動作を行うことができない問題がある。また、ステッピングモータをブザー装置として使用するために脱調させた場合、現在の作動位置がわからなくなってしまう問題がある。これでは、ステッピングモータを脱調させてブザーを鳴らすたびに、装置の通常動作ができなくなってしまう問題がある。また、ステッピングモータは本発明で用いるDCブラシモータに比べ、一般的にコスト高である。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、ステッピングモータを脱調させる方式を採用することなく、可動体の複数の可動形態のうちの少なくとも一つの可動形態の認識を、DCモータが発生する可聴音で行うことができる可動装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータに給電される駆動電流のPWM周波数fを他の可動形態に対して変更させれば、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更でき、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態をユーザは聴覚的に認識することができることを知見し、本発明に係る可動装置を開発した。
【0007】
上記したように可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータに給電する駆動電流のPWM周波数fを他の可動形態に対して変更させれば、DCモータ20で発生させる可聴音の物理量が変更される理由としては、DCモータの励磁巻線の微振動等が影響し、DCモータが発生する可聴音の物理量に影響を与えているものと考えられる。
【0008】
(1)様相1の本発明に係る可動装置は、複数の可動形態で可動する可動体と、駆動に伴い可動体を複数の可動形態で可動させるDCモータで形成されたDCモータをもつ駆動部と、DCモータをPWM制御させて駆動電流を発生させると共にPWM周波数を変更可能な制御部とを具備しており、制御部は、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータに給電される駆動電流のPWM周波数を変更させることにより、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更させることを特徴とする。
【0009】
制御部は、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータに給電される駆動電流のPWM周波数を変更させることにより、DCモータが発生する可聴音領域の物理量を変更させる。このためユーザは、DCモータにより可動体が現在可動している形態を可聴音に基づいて聴覚的に認識できる。
【0010】
ここで、可動体の可動形態は複数種類ある。例えば、可動体の往作動と可動体の復作動とに応じて、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更できる。可動体の正常作動および可動体の異常作動に応じて、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更させることができる。この場合、可動体の正常作動のときには、可聴音の音レベルをできるだけ低減させることが好ましい。これに対して可動体の異常が検知された後の異常作動のときには、可聴音の音レベルを大きくたり、聴覚に対して耳障りな可聴音を発生させることが好ましい。更には、可動体の開放作動と可動体の閉鎖作動とに応じて、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更させることができる。また、可動体の上昇作動と可動体の下降作動とに応じて、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更させる。また、可動体の持ち上げ作動と可動体の持ち下げ作動とに応じて、DCモータが発生する可聴音の物理量を変更させることができる。物理量としては、周波数または周波数の変更による音レベルが例示される。
【0011】
(2)様相2の本発明に係る可動装置によれば、上記様相において、制御部は、複数の可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータが発生する可聴音領域の周波数を他の可動形態に対して変更させ、DCモータが発生する可聴音の音レベルを変更させることを特徴とする。可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータが発生する可聴音の音レベル(一般的には音圧)を他の可動形態に対して変更させ、可動体の可動形態を聴覚的に認識させることができる。
【0012】
(3)様相3の本発明に係る可動装置によれば、上記様相において、制御部は、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータが発生する可聴音領域の周波数を他の可動形態に対して変更させ、DCモータが発生する可聴音の周波数を変更させることを特徴とする。可聴音の周波数は可聴音の音質(可聴音の高低等)に影響を与える。可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータが発生する可聴音の周波数(可聴音の高低等)を他の可動形態に対して変更させ、可動体の可動形態を聴覚的に認識させることができる。
【0013】
(4)様相4の本発明に係る可動装置によれば、上記様相において、制御部は、DCモータが発生する可聴音を発生させるようにDCモータの駆動電流のPWM周波数を設定する可聴音モードと、DCモータが発生する可聴音を可聴音モードよりも低減させるようにDCモータの駆動電流のPWM周波数を設定する静音モードとに切替可能とされていることを特徴とする。制御部は、静音モードおよび可聴音モードを切り替え可能に実行できる。静音モードは、DCモータが発生する可聴音を可聴音モードよりも低減させるモードである。このような静音モードでは、DCモータが発生する可聴音は低減されており、ユーザは音が特に気にならないか、音が耳障りでないことが好ましい。これに対して、可聴音モードは、DCモータに給電される駆動電流のPWM周波数を静音モードに対して変更させ、これによりDCモータが発生する可聴音の物理量を変更させ、DCモータが発生する可聴音を変更させるモードである。
【0014】
(5)様相5の本発明に係る可動装置によれば、上記様相において、可動装置はシャッタ装置であり、可動体はシャッタカーテンであり、シャッタカーテンの作動における異常発生時、シャッタカーテンの開放作動時、および、シャッタカーテンの閉鎖作動時のうちのいずれか一つにおいて、DCモータの可聴音を発生させることを特徴とする。この場合、シャッタカーテンの作動における異常発生時、シャッタカーテンの開放作動時、および、シャッタカーテンの閉鎖作動時のうちのいずれか一つについて、ユーザはDCモータの可聴音に基づいて聴覚的に認識できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータに給電される駆動電流のPWM周波数を他の可動形態に対して変更させることにより、DCモータが発生する可聴音の物理量を可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において変更させる。これによりユーザは可動体のその可動形態を聴覚的に認識できる。したがって、視覚が不自由なユーザ、可動体が視覚で視認できない場所に存在するときなどに有効である。
【0016】
従来の報知装置は、発生音源としてブザー装置を別途設ける形態や、特許文献1(特開2008-156921号公報)のように、ステッピングモータを脱調させてブザー装置として使用する形態がある。しかし、ブザー装置はコスト高を招く。ステッピングモータを採用する構造は、シャッタカーテンなどの可動体の動作中における報知操作はできなくなる問題がある。この点について本発明によれば、DCモータのPWM制御によるモータ動作を行うときにおいて、可動体のうちの少なくとも一つの可動形態においてPWM周波数を変化させることにより、DCモータが発生する可聴音の音レベル、可聴音の周波数等の物理量を変え、これにより可動体の可動形態の聴覚的な認識を行うことができる。例えば、PWM周波数を変化させることにより可聴音の音レベル、周波数等の物理量を変え、人体に耳障りな周波数帯をもつ可聴音を発生させ、ブザー装置としても用いることできる。
【0017】
更に本発明によれば、DCモータで形成されているDCモータは、ブザー装置等の発音装置を兼用できるため、ブザー装置等の発音装置を廃止させるのに有利であり、コストの低下に寄与できる。但しも場合によっては、ブザー装置等の発音装置を併用させても良い。更に本発明によれば、シャッタカーテン等の可動体が可動動作している間に、可聴音を発生させることができる。更に、ブザー装置等の発音装置として使用した後においても、可動体は通常の動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るブロック図である。
【図2】DCモータに給電される駆動電流を模式的に示す図である。
【図3】DCモータを制御する制御部を模式的に示すブロック図である。
【図4】試験結果を示し、PWM周波数と音レベルとの関係を示すグラフである。
【図5】PWM周波数が5000Hzのときにおける可聴音の周波数解析結果を示すグラフである。
【図6】PWM周波数が6000Hzのときにおける可聴音の周波数解析結果を示すグラフである。
【図7】PWM周波数が8000Hzのときにおける可聴音の周波数解析結果を示すグラフである。
【図8】PWM周波数が10000Hzのときにおける可聴音の周波数解析結果を示すグラフである。
【図9】PWM周波数が15000Hzのときにおける可聴音の周波数解析結果を示すグラフである。
【図10】シャッタ装置を模式的に示す正面図である。
【図11】制御部が実行する制御の一例を示すフローチャートである。
【図12】他の実施形態において、制御部が実行する制御の一例を示すフローチャートである。
【図13】別の実施形態において、制御部が実行する制御の一例を示すフローチャートである。
【図14】局部洗浄装置を模式的に示す斜視図である。
【図15】ベッド装置に搭載される背上げ装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は可動装置を示す。可動装置は、複数の可動形態で可動する可動体1と、駆動に伴い可動体1を複数の可動形態で可動させ得るDCモータ20をもつ駆動部2と、DCモータ20をPWM制御させて駆動電流を発生させると共にPWM周波数fを変更可能な制御部3とを有する。制御部3は、可動体1のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータ20に給電される駆動電流のPWM周波数fを他の可動形態に対して変更させることにより、DCモータ20が発生する可聴音領域の物理量(音レベル、周波数等)を変更させる。この結果、ユーザは、可動体1のその可動形態を聴覚的に認識できる。
【0020】
図3は制御部3を示す。制御部3はマイコンを搭載しており、入力処理部30と、PWM周波数fを制御するPWM周期制御部31と、PWM制御における駆動電流のデューティ比Dを制御するPWM制御部32と、駆動回路33とを備えている。DCモータ20は駆動回路33により回転駆動され、励磁巻線部をもつ固定子と、永久磁石および出力軸をもつ回転子とをもつ。DCモータ20はブラシ付きでもブラシレスでも良い。駆動回路33は、PWM周期制御部31で規定されたPWM周波数fと、PWM制御部32で規定されたデューティ比Dとに基づいて、DCモータ20に給電される駆動電流を制御する。入力処理部30には、ユーザが操作する操作スイッチ40の信号S1、DCモータ20の温度を検知する温度センサ41の温度信号S2、DCモータ20の回転数を検知する回転数センサ42の回転数信号S3、DCモータ20の負荷を検知するモータ負荷センサ43の負荷信号S4等が入力される。なお、操作スイッチ40は、可動体1を一方向に移動(例えば閉鎖作動)させるスイッチ41、可動体1を他方向に移動(例えば開放作)させるスイッチ42、可動体1の作動を停止させる停止スイッチ43を有する。駆動部2のDCモータ20が一方向に回転すると、可動体1が一方向に可動する。駆動部2のDCモータ20が他方向に回転すると、可動体1が他方向に可動する。
【0021】
図2はPWM制御で駆動させるDCモータ20に給電される駆動電流を模式的に示す。駆動電流はパルス的に立ち上がり、パルス的に立ち下がる。駆動電流のオン時間をTON[秒]とし、駆動電流のオフ時間をTOFF[秒]とし、デューティ比をDとすると、D=TON/(TON+TOFF)で示される。PWM周期をT[秒]とし、PWM周波数をf[Hz]とすると、T=TON+TOFFで示される。T=1[秒]/fで示される。f=1[秒]/Tで示される。
【0022】
DCモータ20(ブラシ付きモータ)をPWM制御によって作動させるためには、PWM周波数fおよびデューティ比Dを任意の値に変えて、その決めた値に応じて、駆動電流のパルス幅をDCモータ20に給電する方法がある。一般的には、PWM周波数fはDCモータ20や制御ドライバの特性によって設定するため、一度設定されると変更されない。
【0023】
この点本実施形態によれば、DCモータ20に給電される駆動電流のPWM周波数fは、DCモータ20の動作中における振動音等の可聴音に大きく影響する。このため、このPWM周波数fを、人体の聴覚に影響を与える(例えば耳障りな)可聴音を発生させる周波数帯に設定することで、ユーザに何らかの情報を報知音として与えることができる。従って、可動形態において異常が検知されないときには、制御部3は、人体の聴覚に耳障りな可聴音を発生させる周波数帯を回避するように、PWM周波数fを設定することで、DCモータ20が発生する可聴音をできるだけ低減させる静音モードとさせる。
【0024】
これに対して、可動形態に何らかの異常が検知され、シャッタ装置が異常作動するときには、制御部3は、人体の聴覚に影響を与える(例えば、耳障りな)可聴音を発生させる周波数帯にPWM周波数fを設定することで、何らかの異常情報を報知音としてユーザに報知できる。従って、ユーザは、可動装置の可動形態における異常作動を聴覚的に認識できる。
【0025】
なお、前述したように、DCモータ20による可聴音で形成される報知音を鳴らしたくない場合には、PWM周波数fを、人体の聴覚に耳障りでなく人体の聴覚に聞こえにくい周波数帯に設定することで、人体の聴覚に影響を与えないようにできる。
【0026】
以上説明したように本実施形態によれば、可動装置の可動形態に何らかの異常が検知されたときには、制御部3は、人体の聴覚に影響を与える(例えば耳障りな)可聴音を発生させる周波数帯にPWM周波数fを設定することで、何らかの異常情報を報知音としてユーザに報知できる。従って、ユーザは、可動装置における異常作動を聴覚的に認識できる。
【0027】
このように本実施形態によれば、可動体1の複数の可動形態のうちの少なくとも一つの可動形態において、DCモータ20に給電される駆動電流のPWM周波数を他の可動形態に対して変更させることにより、DCモータ20が発生する可聴音領域の周波数を変更させる。よってユーザが、可動体1のその可動形態(異常作動の有無等)を聴覚的に認識するのに有利である。
【0028】
従来の報知装置としては、発生音源としてブザー装置を別途設ける形態や、特許文献1(特開2008-156921号公報)のように、ステッピングモータを脱調させてブザー装置として使用する形態がある。しかし、ブザー装置はコスト高を招く。ステッピングモータを採用する構造は、シャッタカーテン53などの可動体1の動作中における報知操作はできなくなる問題がある。この点について本実施形態によれば、DCモータ20のPWM制御によるモータ動作を行うときにおいて、可動体1の可動形態に応じてPWM周波数fを変化させることにより、DCモータ20が発生する可聴音の音レベル、周波数等の物理量を変え、これにより可動体1の可動形態の認識(異常作動の有無等)を行うことができる。例えば、PWM周波数fを変化させることにより可聴音の音レベル、可聴音の周波数等の物理量を変更させ、人体に耳障りな周波数帯をもつ可聴音を発生させ、ブザー装置としても用いることできる。
【0029】
更に本実施形態によれば、DCモータ20は、ブザー装置等の発音装置を兼用できるため、コストの低下に寄与できる。更に、シャッタカーテン53等の可動体1の可動している間においても、可聴音を発生させることができる。更に、ブザー装置等の発音装置として使用した後においても、可動体1は通常の動作を行うことができる。
【0030】
更に本実施形態によれば、通常時のPWM周波数fよりも低下させてDCモータ20の可聴音を発生させるとしても、一般的には、ノイズの発生や基板の発熱に対して有利に働くことが多いため、PWM周波数の変更に伴う部品追加が低減または不要となる。
【0031】
[試験例1]
本発明者等は、DCモータ20(ブラシ付き,DC100V、製造元:キャノンプレシジョン,型式CN38−22201)を用いて可聴音の発生試験を行った。この試験では、モータ20の表面から水平に10ミリメートル離れた部位に検音計を設置した。DCモータ20のモータギヤアッシー出力部には、1.5Nmの負荷を加えてモータ回転数を約33rpmとした。PWM制御におけるデューティ値を20%に固定させた。この状態で、PWM周波数fを300〜15000Hzまで変更させ、検音計のA特性での可聴音の測定値を目視で読みとり、更に、その可聴音を試験者の聴覚にて確認した。そして、フラット特性で音を録音し、FET解析を行った。
【0032】
図4は測定結果を示す。図4において、横軸はPWM周波数fを示し、縦軸は可聴音の物理量としての音レベル(dBA)を示す。図4に示すように、PWM周波数fが4600Hz付近の領域のとき、音レベルの極大値P1が現れた。PWM周波数fが2300Hz付近の領域のとき、音レベルの極大値P2が現れた。また3300Hz付近、7200Hz付近には音レベルの極小値P9,P10が存在した。従って、シャッタ装置におけるPWM周波数fの常用範囲は、可聴音が低減されている静音モードであり、DCモータ20が発生させる可聴音の音レベルを抑えるべく、PWM周波数fを、極小値P10付近すなわち6000〜8000Hzの領域(特に7200Hz)、極小値P9付近すなわち3000〜3600Hzの領域(特に7200Hz)等が好ましい。可聴音の音レベルが低い領域だからである。
【0033】
これに対して、シャッタ装置のシャッタカーテン53の作動の異常時には、制御部3は、PWM周波数fを、極大値P1付近すなわち4400〜4800Hz(特に4600Hz)付近の領域、または、極大値P2付近すなわち2000〜2400Hz(特に2200Hz)付近の領域に設定すれば、DCモータ20が発生する可聴音の音レベルが大きくなり、ブザー音に相当する報知音や警告音として利用できる。
【0034】
更に周波数解析した結果を図5〜図9に示す。図5〜9において、横軸はDCモータ20が発生した音の周波数を示し、縦軸は可聴音の音レベル(dBA)を示す。図5はPWM周波数fが5000Hzの場合の試験結果を示す。図5に示すように、DCモータ20に給電する駆動電流のPWM周波数fが5000Hzのとき、約5000Hz付近において音レベルのピークPが現れた。図6に示すように、DCモータ20に給電する駆動電流のPWM周波数が6000Hzのとき、約6000Hz付近において音レベルのピークPが現れた。図7に示すように、DCモータ20に給電する駆動電流のPWM周波数が8000Hzのとき、約8000Hz付近において音レベルのピークPが現れた。図8に示すように、DCモータ20に給電する駆動電流のPWM周波数が10000Hzのとき、約10000Hz付近において音レベルのピークPが現れた。図9に示すように、DCモータ20に給電する駆動電流のPWM周波数が15000Hzのとき、約15000Hz付近において音レベルのピークPが現れた。
【0035】
上記した試験結果に基づけば、DCモータ20に給電する駆動電流のPWM周波数fを変更させれば、DCモータ20で発生させる可聴音の周波数(物理量)を変更でき、可聴音の音質(可聴音の高低等)を変更できることが知見された。
【0036】
[実施形態1]
図10は、可動装置としてのシャッタ装置5に適用した実施形態を示す。本実施形態は図1〜図9を準用できる。シャッタ装置5は、建築物などの構造物の開口に設けられており、高さ方向に沿って延びる互いに対向する複数の縦柱部50と、縦柱部50の上部に設けられた基部51と、基部51に設けられ水平方向に延びる軸線W回りで回転可能に設けられた巻き取りドラム52と、巻き取りドラム52を軸線W回りで回転駆動させる駆動部2と、縦柱部50間において駆動部2により矢印Y1,Y2方向に昇降可能に設けられたシャッタカーテン53(可動体)とをもつ。シャッタカーテン53は、水平方向に沿った複数のスラット54の両端部54eを高さ方向(矢印H方向)に沿ってチェーン部材55で吊持して形成されている。シャッタカーテン53の下端部には、床面に設置可能な座板56が設けられている。チェーン部材55の上端部は、巻き取りドラム52に連設されており、巻き取りドラム52の回転によりシャッタカーテン53と共に巻き取りドラムに巻き取られる。
【0037】
なお、操作スイッチ40は、シャッタカーテン53(可動体)を一方向に移動(閉鎖作動)させるスイッチ41、シャッタカーテン53を他方向に移動(例えば開放作動)させるスイッチ42、シャッタカーテン53の作動を停止させる停止スイッチ43を有する。
【0038】
駆動部2のDCモータ20が一方向に回転すると、巻き取りドラム52が軸線W回りで巻き取り方向に回転し、シャッタカーテン53をチェーン部材55と共に巻き取り、シャッタカーテン53を矢印Y1方向に上昇させて開放させる。駆動部2のDCモータ20が他方向に回転すると、巻き取りドラム52が軸線W回りで巻き取り方向に回転し、巻き取りドラム52に巻き取られるシャッタカーテン53をチェーン部材55と共に巻き外し、これによりシャッタカーテン53を矢印Y2方向に下降させて閉鎖させる。
【0039】
本実施形態は図1〜図9を準用できる。準用する図3に示すように、制御部3は、入力処理部30と、PWM周波数fを制御するPWM周期制御部31と、PWM制御における駆動電流のデューティ比Dを制御するPWM制御部32と、駆動回路33とを備えている。駆動回路33は、PWM周期制御部31で規定されたPWM周波数fと、PWM制御部32で規定されたデューティ比Dとに基づいて、DCモータ20を制御する。入力処理部30には、ユーザが操作する操作スイッチ40の信号S1、DCモータ20の温度を検知する温度センサの温度信号S2、DCモータ20の回転数を検知する回転数センサの回転数信号S3、DCモータ20の負荷を検知するモータ負荷センサ43の負荷信号S4等が入力される。
【0040】
図11は、実施形態1において、シャッタカーテン53を閉鎖作動させるときにおいて制御部3のマイコンが実行するフローチャートの一例を示す。まず、制御部3は、操作スイッチ40を読み込む(ステップS102)。シャッタカーテン53を閉鎖作動させるように操作スイッチ40が操作されているときには(ステップS104のYES)、制御部3は、シャッタカーテン53を閉鎖作動させるように、DCモータ20を一方向に駆動させる信号を出力する(ステップS106)。この場合、制御部3は、DCモータ20が可聴音を発生させないか、あるいは、実質的にあまり耳障りでない音が発生する周波数領域に、PWM周波数fを設定する(ステップS106)。この場合、PWM周波数fを、図4に示す極小値P9,P10の領域に設定することができる。なお、DCモータ20が音を発生させないか、あるいは、実質的にあまり耳障りでない音が発生するように、PWM周波数fが予め設定されていても良い。
【0041】
ところで、矢印Y2方向に閉鎖作動するシャッタカーテン53の下端部が異物にあたると、シャッタカーテン53のこれ以上の閉鎖作動が制限されるため、モータ負荷が大きくなる。このためモータ負荷センサ43がこれを検知し、制御部3に信号を入力させる。制御部3はモータ負荷センサ43の信号を読み込み、異物有りか無しかを判定する(ステップS108)。シャッタカーテン53の下端部が異物にあたっておらず、異物がなければ、シャッタカーテン53が全閉するまで、制御部3は、シャッタカーテン53を継続的に閉鎖作動させるように、DCモータ20に閉鎖作動の出力信号を継続させる。シャッタカーテン53が全閉すれば(ステップS110のYES)、制御部3は、DCモータ20の駆動を停止させる(ステップS112)。
【0042】
ステップS108における判定の結果、シャッタカーテン53の下端部が異物にあたり、異物有りと判定されるときには(ステップS108のYES)、制御部3は、DCモータ20の回転を反転させる信号を異常信号として出力し、シャッタカーテン53を異常作動として矢印Y1方向に開放作動させると共に(ステップS120)、DCモータ20に給電するPWM周波数fを変更させ(ステップS122)、メインルーチンにリターンする。この場合、PWM周波数fを、図4に示す極大値P1,P2の領域に設定することができる。このようにシャッタカーテン53(可動体)の異常作動時には、DCモータ20が発生させる可聴音の音レベルを大きくさせたり、あるいは、DCモータ20が発生させる可聴音の周波数を変更させて聴覚に影響を与える(例えば、耳障りな)可聴音を発生させたりする。この場合、図4〜図9の試験データに基づくことができる。上記した操作によりシャッタカーテン53を開放作動させるときにおいて、ブザー装置を用いずとも、異物の有り後のシャッタカーテン53の反対作動、即ち、シャッタカーテン53の異常作動をユーザ等に聴覚的に報知することができる。ブザー装置を用いずとも良いため、部品点数を低減できる。
【0043】
[実施形態2]
図12は実施形態2を示す。本実施形態は、図10に示すシャッタ装置5に適用されており、前記した実施形態1と同様の構成および作用効果を有しており、図1〜図10を準用できる。本実施形態によれば、操作スイッチ40は、静音モードと可聴音モードとをユーザが切り替えできる切替スイッチ45(切替要素,図10参照)を有する。制御において、まず、制御部3は、操作スイッチ40(スイッチ41,42,43,45)の操作状況を読み込む(ステップS202)。操作スイッチ40(切替スイッチ45)が静音モードに切り替えられているか否か判定する。操作スイッチ40が静音モードに切り替えられているときには、制御部3は、PWM周波数fをfSILENTに変更させる(ステップS206)。周波数fSILENTは、DCモータ20が可聴音をできるだけ発生させない領域の周波数であり、図4に示す極小値P9,極小値P10付近の周波数領域である。
【0044】
これに対して、操作スイッチ40が静音モードではなく、可聴音モードに切り替えられているときには(ステップS204のNO)、DCモータ20の作動時において可聴音を積極的に発生させる。ここで、可聴音モードにおいて(ステップS204のNO)、シャッタカーテン53を開放作動させるように操作スイッチ40が操作されているとき(ステップS210)には、制御部3は、PWM周波数fをfOPENに変更させる(ステップS212)。これに対して、可聴音モードにおいて、シャッタカーテン53を閉鎖作動させるように操作スイッチ40が操作されているときには、制御部3は、PWM周波数fをfCLOSEに変更させる(ステップS214)。その後、メインルーチンにリターンする。周波数fOPENおよびfCLOSEは、例えば、DCモータ20の可聴音を大きくさせる領域の周波数であり、図4に示す極大値P1,極大値P2付近の周波数領域である。
【0045】
以上説明したように本実施形態によれば、操作スイッチ40が静音モードとして操作されているときには、制御部3は、PWM周波数fをfSILENTにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、シャッタカーテン53を閉鎖作動させたり、開放作動させたりする。この場合、DCモータ20の可聴音は小さい。
【0046】
また、操作スイッチ40が静音モードではなく可聴音モードであり、且つ、シャッタカーテン53を開放させるように操作されているときには、制御部3は、PWM周波数fをfOPENにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、開放作動用の可聴音を発生させつつシャッタカーテン53を開放作動させる。この場合、DCモータ20は、開放作動用の可聴音を発生させつつシャッタカーテン53を開放作動させる。
【0047】
また、操作スイッチ40が静音モードではなく可聴音モードであり、且つ、シャッタカーテン53を閉鎖させるように操作されているときには、制御部3は、PWM周波数fをfCLOSEにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、閉鎖作動用の可聴音を発生させつつシャッタカーテン53を閉鎖作動させる。この場合、DCモータ20は、閉鎖作動用の可聴音を発生させつつシャッタカーテン53を閉鎖作動させる。
【0048】
これによりユーザ等は、シャッタカーテン53の閉鎖作動、開放作動を視覚的にはもちろんのこと、聴覚的にも認識することができる。この場合、視覚が不自由なユーザ、シャッタカーテン53が他の物体が隠れているため、シャッタカーテン53を視認できないユーザに適する。なお、fOPEN=fCLOSEとしても、fOPEN≒fCLOSEとしても良い。
【0049】
以上説明したように本実施形態は、前述したようにシャッタカーテン53の可動形態に応じて、PWM周波数fを変更すれば、DCモータ20が発生する可聴音の周波数を変更できることに基づいている。可聴音の周波数を変更できれば、可聴音の周波数(可聴音の高低)をシャッタカーテン53の作動形態に応じて変更させることができ、ユーザ等の聴覚による認識性を高めることができる。
【0050】
[実施形態3]
図13は実施形態3を示す。本実施形態はシャッタ装置5に適用されており、前記した実施形態1,2と同様の構成および作用効果を有しており、図1〜図10を準用できる。本実施形態によれば、操作スイッチ40は、静音モードと可聴音モードとを切り替えできる切替スイッチ45(図10参照)を有する。
【0051】
まず、制御部3は、操作スイッチ40(切替スイッチ45)の操作状況を読み込む(ステップS302)。操作スイッチ40が静音モードに切り替えられているか否か判定する。操作スイッチ40が静音モードに切り替えられているときには、制御部3は、PWM周波数fをfSILENTに変更させる(ステップS306)。周波数fSILENTは、DCモータ20が可聴音をできるだけ発生させない領域の周波数である。周波数fSILENTは、DCモータ20が可聴音をできるだけ発生させない領域の周波数であり、図4に示す極小値P9,極小値P10付近の周波数領域である。
【0052】
これに対して、操作スイッチ40が静音モードではなく、可聴音モードに切り替えられているときには(ステップS304のNO)、DCモータ20の作動時において可聴音を積極的に発生させる。
【0053】
すなわち、可聴音モードにおいて、シャッタカーテン53を開放作動および閉鎖作動させるように操作スイッチ40が操作されているときには(ステップS304のNO)、制御部3は、PWM周波数fをfhearに変更させる(ステップS308)。周波数fhearは、例えば、DCモータ20の可聴音を大きくさせる領域の周波数であり、図4に示す極大値P1,極大値P2付近の周波数領域である。あるいは、周波数fhearは、例えば、図5〜図9に示すピークP付近の周波数領域である。その後、メインルーチンにリターンする。
【0054】
このような本実施形態によれば、操作スイッチ40が静音モードとして操作されているときには、制御部3は、PWM周波数fをfSILENTにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、シャッタカーテン53を閉鎖作動させたり、開放作動させたりする。このように静音モードでは、DCモータ20は可聴音をできるだけ発生させないように回転駆動する。
【0055】
これに対して操作スイッチ40が可聴音モードに切り替えられているときには、制御部3は、PWM周波数fをfhearにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、シャッタカーテン53を開放作動または閉鎖作動させる。この場合、DCモータ20の可聴音の音レベルが大きくなったり、周波数が変更される。これにより可聴音モードにおいては、ユーザ等は、シャッタカーテン53の閉鎖作動および開放作動を視覚的にはもちろんのこと、聴覚的にも認識することができる。この場合、視覚が不自由なユーザ、シャッタカーテン53が他の物体が隠れているため、シャッタカーテン53を視認できないユーザに適する。
【0056】
[実施形態4]
図14は便器に搭載されている局部洗浄装置6を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図9,図11〜図13を準用できる。図14に示すように、局部洗浄装置6は、便鉢69aを有する便器69に取り付けられ操作スイッチ40を有する箱体60と、箱体60に揺動可能に枢支された便座61(可動体)と、箱体60に揺動可能に枢支された便蓋62と、矢印K1,K2方向に進退可能に箱体60に設けられた局部洗浄用のノズル63とを備えている。便座61を開放作動させるとき、および、閉鎖作動させるときにおいて、制御部3は、PWM周波数fをfSILENTに設定し静音モードにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、DCモータ20の発生音をできるだけ抑制させて静粛化を図りつつ、便座61を閉鎖作動させたり開放作動させたりできる。
【0057】
本実施形態によれば、例えば、図11〜図13のいずれかの制御を実行できる。制御の一例によれば、便座61を下方に旋回させて閉鎖作動させるときにおいて、異物噛み込み有りと判定されるとき、これを異常として、これ以上の噛み込みを抑制するため、DCモータ20の回転を反転させて、噛み込み後の異常作動として便座61を開放作動させると共に、PWM周波数fを可聴音の音レベルを大きくさせる方向に変更させ、これによりDCモータ20が発生させる可聴音を大きくさせることができる。これによりブザー装置を用いずとも、異物の噛み込み後の開放作動(異常作動)、即ち、異物の噛み込みをユーザ等に聴覚的に報知することができる。
【0058】
[実施形態5]
本実施形態は局部洗浄装置6に適用した実施形態であり、前記した実施形態3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図9,図11〜図14を準用できる。本実施形態は、例えば図11〜図13のいずれかに示す制御を実行できる。
【0059】
本実施形態に係る制御の一例によれば、制御部3は、便座61の開放作動のときには、PWM周波数fをfCLOSEに変更させる。また、制御部3は、便座61の閉鎖作動ときにはPWM周波数fをfOPENに変更させる。このようにすれば、便座61の開放作動および閉鎖作動に応じて、DCモータ20が発生する可聴音の周波数または音レベルをそれぞれ変更できる。
【0060】
ここで、可聴音の周波数を変更できれば、可聴音の周波数(可聴音の高低)を変更させることができる。このような本実施形態によれば、便座61の開放作動および閉鎖作動の認識において、発音装置などを用いずとも、ユーザ等の聴覚による認識性を高めることができ、商品価値を高め得るばかりか、視覚が不自由なユーザに適する。
【0061】
[実施形態6]
図15は、横たわっているユーザの背中を持ち上げる背上げ装置7を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図9,図11〜図13を準用できる。図15に示すように、背上げ装置7はベッド装置に搭載されており、水平方向に沿っている固定フレーム70と、ユーザの背中を支えるために起伏可能な背中支え部71と、固定フレーム70に軸部72eを介して高さ方向(矢印H方向)に沿って揺動可能に枢支された背上げフレーム72(可動体)と、直線方向に沿って前進後退可能な駆動ロッド28をもつ駆動部2と、駆動ロッド28に連結された回動リンク73と、背上げフレーム72と固定フレーム70との間に設けられた補助アーム74とを備えている。補助アーム74は枢支部741,742により枢支されている。背中支え部71を固定フレーム70に回動可能に保持する保持アーム75が設けられている。背上げフレーム72の先端には、背中支え部71の裏面71rに沿って矢印R1,R2方向に転動して移動できる転動ローラ77が設けられている。
【0062】
ここで、駆動部2のDCモータ20が一方向に回転すると、駆動ロッド28が矢印M1方向に前進し、回動リンク73が連動して軸部72eの回りで回動し、背上げフレーム72が矢印Y1方向に回動しつつゆっくりと持ち上がる。これに対して、駆動部2のDCモータ20が他方向に回転すると、駆動ロッド28が矢印M2方向に後退し、回動リンク73が軸部72eの回りで回動し、背上げフレーム72が矢印Y2方向に回動しつつゆっとりと持ち下がる。
【0063】
背上げフレーム72を背上げ作動させるとき、および、背下げ作動させるときにおいて、制御部3は、PWM周波数fをfSILENTにした状態で、DCモータ20をPWM制御で駆動させ、DCモータ20の発生音をできるだけ抑制させて静粛化を図りつつ、背上げフレーム72を背上げ作動させたり背下げ作動させたりできる。この場合、PWM周波数fは、DCモータ20の可聴音を低減させる領域の周波数(常用周波数)であり、図4に示す極小値P9,極小値P10付近の周波数領域が好ましい。
【0064】
本実施形態によれば、背上げフレーム72を下方(矢印Y2方向)に旋回させて持ち下げ作動させるとき、異物の噛み込み有りと判定されるときには、これを異常として、DCモータ20の回転を反転させて背上げフレームを矢印Y1方向に所定量持ち上げ作動(異物噛み込み後の異常作動)させると共に、PWM周波数fを変更させて、DCモータ20が発生させる可聴音の音レベルを大きくさせることができる。この場合、PWM周波数fは、DCモータ20の可聴音を大きくさせる領域の周波数であり、図4に示す極大値P1,極大値P2付近の周波数領域が好ましい。これにより背上げフレーム72の作動時において、ブザー装置等の発音装置を用いずとも、異物の噛み込みをユーザ等に聴覚的に報知することができる。
【0065】
更に本実施形態によれば、背上げフレーム72を上方(矢印Y1方向)に旋回させて持ち上げ作動させる場合において、異物の噛み込み有りと判定されるときには、これを異常として、DCモータ20の回転を反転させて背上げフレーム72を矢印Y2方向に持ち下げ作動(異物噛み込み後の異常作動)させると共に、PWM周波数fを変更させて、DCモータ20が発生させる可聴音を大きくさせることができる。これにより背上げフレーム72の作動時において、ブザー装置を用いずとも、異物の噛み込みをユーザ等に聴覚的に報知することができる。
【0066】
[実施形態7]
本実施形態は、横たわっているユーザの背中を持ち上げる図15に示す背上げ装置7に適用したものであり、前記した実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図9,図11〜図13,図15を準用できる。本実施形態は、背上げフレーム72を矢印Y2方向に旋回させて背下げ作動させるときには、制御部3は、PWM周波数fをfCLOSEに変更する。これに対して、背上げフレーム72を矢印Y1方向に旋回させて背上げ作動させるときには、制御部3は、PWM周波数fをfOPENに変更する。fOPENおよびfCLOSEは互いに相違する周数である。このようにすれば背上げフレーム72の背上げ作動および背下げ作動に応じて、DCモータ20が発生する可聴音の音レベルまたは周波数をそれぞれ変更できる。
【0067】
ここで、可聴音の周波数を変更できれば、ユーザが聴覚する可聴音の音質(高低)を背上げ作動および背下げ作動に応じて変更させることができる。よって、背上げフレーム72の背上げ作動および背下げ作動の認識において、発音装置などを用いずともユーザ等の聴覚による認識性を高めることができ、商品価値を高め得るばかりか、視覚が不自由なユーザに適する。
【0068】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、可動装置としては、複数の可動形態で可動する可動体をDCモータで駆動させる構造をもつものであればなんでも良い。各実施形態において、静音モードおよび可聴音モードを切り替え可能な切替スイッチが設けられていることが好ましい。この場合には、必要時には可聴音モードとして実行でき、不必要時には静音モードとして実行できる。
【符号の説明】
【0069】
1は可動体、2は駆動部、20はDCモータ、3は制御部、31はPWM周期制御部、32はPWM制御部、40は操作スイッチ、5はシャッタ装置(可動装置)、52は巻き取りドラム、53はシャッタカーテン(可動体)、6は局部洗浄装置(可動装置)、61は便座(可動体)、7は背上げ装置(可動装置)、72は背上げアーム(可動体)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可動形態で可動する可動体と、駆動に伴い前記可動体を複数の前記可動形態で可動させるDCモータをもつ駆動部と、前記DCモータをPWM制御させて駆動電流を発生させると共にPWM周波数を変更可能な制御部とを具備しており、
前記制御部は、前記可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、前記DCモータに給電される駆動電流のPWM周波数を他の可動形態に対して変更させることにより、前記DCモータが発生する可聴音の物理量を変更させることを特徴とする可動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御部は、前記可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、前記DCモータが発生する可聴音領域の周波数を他の可動形態に対して変更させ、前記DCモータが発生する前記可聴音の音レベルを変更させることを特徴とする可動装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記制御部は、前記可動体のうちの少なくとも一つの可動形態において、前記DCモータが発生する可聴音領域の周波数を他の可動形態に対して変更させ、前記DCモータが発生する可聴音の周波数を変更させることを特徴とする可動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記制御部は、前記DCモータが発生する可聴音を発生させるように前記DCモータの駆動電流のPWM周波数を設定する可聴音モードと、前記DCモータが発生する可聴音を前記可聴音モードよりも低減させるように前記DCモータの駆動電流のPWM周波数を設定する静音モードとに切替可能とされていることを特徴とする可動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記可動装置はシャッタ装置であり、前記可動体はシャッタカーテンであり、前記シャッタカーテンの作動における異常発生時、前記シャッタカーテンの開放作動時、および、前記シャッタカーテンの閉鎖作動時のうちのいずれか一つにおいて、前記DCモータの可聴音を発生させることを特徴とする可動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−211431(P2012−211431A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76208(P2011−76208)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】