説明

可変インダクタおよびそれを備えた高周波回路モジュール

【課題】 インピーダンスのズレを容易に調整でき、マルチバンドやマルチモードにも対応できる高周波回路モジュールを提供する。
【解決手段】 多層基板1の導体層25により伝送線路41と導体板42、43を形成し、それらにより可変インダクタ40を構成する。伝送線路41からの距離が異なるように配置された導体板42、43をスイッチ素子SW1’、SW2’で選択的に接地して可変インダクタ40のインダクタンスを可逆的に変化させる。それにより高周波回路のインピーダンスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変インダクタおよび高周波回路モジュールに関し、さらに言えば、高周波回路の受動素子として好適に使用される可変インダクタと、その可変インダクタを備えた高周波回路モジュールとに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話など無線通信装置に使用される高周波回路は、半導体トランジスタ、ICチップ、受動素子(抵抗器、コンデンサ、インダクタ)などの多数の部品で構成されている。そして、装置を小型化するため、これらの部品のうちの集積化が可能な部品を1つの基板やパッケージに搭載してモジュール化する技術が広く用いられている。例えば、携帯電話の端末に使用される高周波増幅器モジュールでは、高周波(Radio Frequency、RF)信号を増幅するトランジスタと、そのトランジスタにRF信号を効率良く供給するための入力インピーダンス整合回路と、増幅されたRF信号を効率良く取り出すための出力インピーダンス整合回路とが一つの基板に形成される。そして、その基板として、ガラスセラミックや樹脂材料からなる多層基板が多く用いられる。
【0003】
一般に、この種の高周波回路モジュールでは、基板やトランジスタの製造ばらつきによって整合回路のインピーダンスが設計値からずれた場合、製造後にインピーダンスを調整する必要がある。そこで、従来より、整合回路のインピーダンスを調整可能とする技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開平11−176987号公報には、多層基板の表面に複数の電極パッドを設け、多層基板内部のグランド電極層とそれらの電極パッドとの間にインピーダンス調整用のコンデンサを形成するようにした技術が開示されている。この従来技術では、レーザーなどを使用して、電極パッドを選択的に除去または切断することにより、電極パッドの面積を変化させる。あるいは、所望の電極パッドの接続部を切断することにより、整合回路の伝送線路に接続されるコンデンサを選択する。このような方法により、整合回路の伝送線路に付加される静電容量を変化せしめることで、整合回路のインピーダンスを調整可能としている。
【0005】
他方、近年、複数の周波数帯や複数の動作モードに対応可能な、いわゆるマルチバンド型やマルチモード型の無線通信装置に使用できる高周波回路モジュールの必要性が高まっている。例えば、欧州のデジタル・セルラ・システムでは、900MHz帯のGSM(Global System for Mobile Communication)と1.8GHz帯のDCS(Digital Cellular System)が普及しており、この両方のモードを扱える携帯端末機が必要とされる。そして、このようなマルチバンド型やマルチモード型の無線通信装置に使用される高周波回路モジュールでは、周波数帯毎あるいは動作モード毎にインピーダンス整合が得られなければならない。
【0006】
そこで、従来の高周波回路モジュールでは、例えば、1999年に発行された「IEEE MTT−S インターナショナル・マイクロウェーブ・シンポジウム ダイジェスト」第1397頁〜第2700頁(Yamamoto et al., 1999 IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest, pp.1397-1400)に報告されているように、GSMおよびDCSの各モードに対応した2系統の増幅器および整合回路を別々に設けておき、それらを選択的に使用することでインピーダンス整合を得ている。
【特許文献1】特開平11−176987号公報
【非特許文献1】Yamamoto et al., 1999 IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest, pp.1397-1400
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平11−176987号公報に開示された従来技術では、電極パッドと整合回路の伝送線路とがいずれも多層基板の表面に形成される。そのため、整合回路の実装面積が増大し、高周波回路モジュールを小型化するのに適していないという問題がある。
【0008】
さらに、この従来技術では、インピーダンスを調整する際に、レーザーなどを使用して電極パッドを除去または切断したり、電極パッドの接続部を切断する。そのため、整合回路のインピーダンスの変化は非可逆的であり、マルチバンドやマルチモードに対応してインピーダンス整合を得ることはできない。
【0009】
他方、周波数帯毎あるいは動作モード毎に別系統の回路を設ける従来技術では、マルチバンド型やマルチモード型の無線通信装置に使用できるものの、高周波回路モジュールを構成する部品数が増大し、高周波回路モジュールの小型化・低コスト化が困難であるという問題がある。
【0010】
換言すれば、可逆的にインピーダンスを変化させることができ、且つ小型化が可能なリアクタンス素子が必要であるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、インダクタンスを可逆的に変化させることができ、ひいては可逆的にインピーダンスを変化させることができ、且つ小型化が可能な可変インダクタを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、製造ばらつきにより生じるインピーダンスのズレを容易に調整できると共に、マルチバンドやマルチモードにも対応でき、且つ小型化・低コスト化が可能な高周波回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明の可変インダクタは、
インダクタンスを生成する伝送線路と、
前記伝送線路からの距離が各々異なるように配置された、前記伝送線路の接地面として動作可能な複数の第1導体板と、
前記第1導体板と接地端子との電気的な接続及び非接続を可逆的に切り替える第1切替手段とを備え、
前記接地面として動作する前記第1導体板を前記第1切替手段によって変更することにより、値の異なる前記インダクタンスが生成されるものである。
【0014】
(2) 本発明の可変インダクタでは、前記インダクタンスを生成する前記伝送線路が設けられていると共に、前記伝送線路からの距離が各々異なるように複数の前記第1導体板が配置されている。そして、それらの第1導体板の各々は、前記伝送線路の接地面として動作可能である。また、前記第1導体板と接地端子との電気的な接続及び非接続を可逆的に切り替える第1切替手段を備えている。
【0015】
このため、前記第1切替手段によって前記第1導体板のいずれか一つを接地すれば、その第1導体板が前記伝送線路の前記接地面として動作し、複数の前記第1導体板の全てを接地しない場合に比べ、前記伝送線路から前記接地面までの距離が小さくなる。また、接地される前記第1導体板を前記第1切替手段によって変更することにより、前記伝送線路から前記接地面までの距離を変化させることができるから、前記伝送線路の特性インピーダンスを変化させることができ、それに伴って前記伝送線路の等価的なインダクタンスをも変化させることができる。しかも、前記第1切替手段は、スイッチ素子などを使用して容易に実現できる。したがって、インダクタンスを可逆的に変化させることができる。
【0016】
さらに、隣接する前記第1導体板の間隔や前記伝送線路の形状を適宜に設定することにより、前記第1導体板や前記伝送線路の大きさを抑制しながら所望のインダクタンスを得ることができる。よって、当該可変インダクタを小型化することが可能となる。
【0017】
(3) 本発明の可変インダクタの好ましい例では、前記伝送線路が蛇行線路を含んでいる。この例では、所望のインダクタンスを容易に得ることができる。
【0018】
本発明の可変インダクタの他の好ましい例では、前記伝送線路がスパイラル状線路を含んでいる。この例でも、所望のインダクタンスを容易に得ることができる。
【0019】
(4) 本発明の高周波回路モジュールは、
高周波回路の受動素子として上記(1)または(3)の可変インダクタを多層基板上に備えた高周波回路モジュールであって、
前記多層基板が、
前記可変インダクタの前記伝送線路および複数の前記第1導体板の各々を形成する複数の第1導体層と、
隣接する二つの前記第1導体層の間に各々形成された、前記伝送線路からの距離が各々異なるように複数の前記第1導体板を配置せしめる複数の第1絶縁体層と
を含んでなるものである。
【0020】
(5) 本発明の高周波回路モジュールでは、本発明の可変インダクタの場合と同じ理由により、インダクタンスを可逆的に変化させることができ、ひいては高周波回路のインピーダンスを可逆的に変化させることができる。そのため、製造ばらつきにより生じるインピーダンスのズレを容易に調整できると共に、マルチバンドやマルチモードにも対応できる。
【0021】
しかも、マルチバンドやマルチモードに対応するために周波数帯毎あるいは動作モード毎に別系統の回路を設ける必要がないので、小型化・低コスト化が可能となる。
【0022】
(6) 本発明の高周波回路モジュールの好ましい例では、高周波回路の受動素子としてさらに可変コンデンサを備える。この可変コンデンサは、誘電体層を介して積層された、静電容量を生成する電極対として動作可能な複数の第2導体板と、前記第2導体板と外部端子との電気的な接続及び非接続を可逆的に切り替える第2切替手段とを備えていて、前記電極対を形成する前記第2導体板の組み合わせを前記第2切替手段によって変更することにより、値の異なる前記静電容量が生成されるものである。そして、前記多層基板は、前記可変コンデンサの前記第2導体板の各々を形成する複数の第2導体層と、隣接する二つの前記第2導体層の間に各々形成された、前記可変コンデンサの前記誘電体層として各々機能する複数の第2絶縁体層とをさらに含んでいる。
【0023】
この例では、インダクタンスだけでなく静電容量をも可逆的に変化させることができ、ひいては高周波回路のインピーダンスを可逆的に変化させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の可変インダクタによれば、インダクタンスを可逆的に変化させることができ、しかも小型化が可能となる。
【0025】
本発明の高周波回路モジュールによれば、製造ばらつきにより生じるインピーダンスのズレを容易に調整できると共に、マルチバンドやマルチモードにも対応でき、且つ小型化・低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
[構成]
図1は、本発明の第1実施形態の高周波回路モジュール100を示す概略断面図である。また、図2および図3は、高周波回路モジュール100の可変コンデンサ30および可変インダクタ40を示す拡大斜視図である。
【0028】
図1に示すように、高周波回路モジュール100は、可変コンデンサ30と可変インダクタ40とを内部に有する多層基板1と、多層基板1の表面に実装された半導体素子チップ2とを備えている。
【0029】
多層基板1は、4つの絶縁体層21と所定形状にパターン化された3つの内部導体層24とが積層されてなる第1積層部11と、5つの絶縁体層22と所定形状にパターン化された4つの内部導体層25とが積層されてなる第2積層部12と、4つの絶縁体層23と所定形状にパターン化された3つの内部導体層26とが積層されてなる第3積層部13とを有している。
【0030】
第1積層部11の絶縁体層21の各々は、比誘電率が7.1で厚さが40μmのガラスセラミック層からなる。第2積層部の絶縁体層22の各々は、比誘電率が4.8で厚さが160μmのガラスセラミック層からなる。第3積層部13の絶縁体層23の各々は、比誘電率が7.1で厚さが40μmのガラスセラミック層からなる。
【0031】
第1積層部11の最上層の絶縁体層21の表面には、所定形状にパターン化された外部導体層27が形成されている。第3積層部13の最下層の絶縁体層23の裏面には、所定形状にパターン化された外部導体層28が形成されている。
【0032】
多層基板1の内部には、複数のビア孔29が形成されている。それらのビア孔29を介して、内部導体層24、25、26および外部導体層27、28の所定箇所が互いに電気的に接続されている。それにより、多層基板1に高周波回路が形成されている。
【0033】
第3積層部13の内部導体層26は3つの導体板31、32、33を形成し、外部導体層28は導体板34を形成している。それらの導体板31、32、33、34はいずれも、一辺の長さが2mmの正方形状である。
【0034】
図2に明瞭に示すように、導体板32は絶縁体層23を介して導体板31に対向し、導体板33は絶縁体層23を介して導体板32に対向している。さらに、導体板34は絶縁体層23を介して導体板33に対向している。そして、4つの導体板31、32、33、34は、高周波回路の可変コンデンサ30を構成している。導体板31、32、33、34の間に介在する3つの絶縁体層23は、可変コンデンサ30の誘電体層として機能する。
【0035】
第2積層部12の内部導体層25は、蛇行した伝送線路41と2つの矩形状の導体板42、43とを形成している。伝送線路41の長さは6mmであり、幅は200μmである。
【0036】
図3に明瞭に示すように、導体板42は絶縁体層22を介して伝送線路41に対向し、導体板43は絶縁体層22を介して導体板42に対向している。そのため、伝送線路41から導体板42、43までの距離は各々異なっている。そして、伝送線路41および導体板42、43は、高周波回路の可変インダクタ40を構成している。
【0037】
外部導体層28は、可変コンデンサ30の導体板32、33を外部のスイッチ素子SW1、SW2に電気的に接続するための2つの接続用端子15a、15bを形成している。さらに、可変インダクタ40の導体板42、43を外部のスイッチ素子SW1’、SW2’に電気的に接続するための2つの接続用端子16a、16bを形成している。
【0038】
多層基板1の側周面の全体は、導体からなるシールド層14で覆われている。多層基板1の裏面には接地用端子3が設けられており、この接地用端子3が外部導体層28の所定箇所に接触して電気的に接続されている。
【0039】
半導体チップ2は、その接続用リード4を外部導体層27の所定箇所に固着することにより、高周波回路に電気的に接続されている。
【0040】
上記の構成を持つ高周波回路モジュール100を実装する場合、実装回路基板(図示せず)に設けられたスイッチ素子SW1、SW2が接続用端子15a、15bに電気的に接続され、実装回路基板に設けられた接地線が接地用端子3に電気的に接続される。それにより、図2に示すように、可変コンデンサ30の導体板32、33はスイッチ素子SW1、SW2を介して接地され、可変コンデンサ30の導体板34は接地される。
【0041】
さらに、実装回路基板に設けられたスイッチ素子SW1’、SW2’が接続用端子16a、16bに電気的に接続される。それにより、図3に示すように、可変インダクタ40の導体板42、43は、スイッチ素子SW1’、SW2’を介して接地される。
【0042】
こうして実装された高周波回路モジュール100は、外部接続されたスイッチ素子SW1、SW2の開閉動作により、可変コンデンサ30の導体板32、33の各々が接地または電気的浮遊状態とされる。さらに、外部接続されたスイッチ素子SW1’、SW2’の開閉動作により、可変インダクタ40の導体板42、43の各々が接地または電気的浮遊状態とされる。
【0043】
[可変コンデンサの動作]
次に、図4を参照しながら可変コンデンサ30の動作原理を説明する。ここでは、図4(a)に示すように、可変コンデンサ30が(n+1)枚の導体板CP1、CP2、CP3、・・・、CPn、CP(n+1)を有しており、導体板CP2、CP3、・・・、CPnがスイッチ素子SW1、SW2、・・・、SW(n−1)を介して接地され、導体板CP(n+1)が接地されているものとする。
【0044】
図4(a)の可変コンデンサ30は、図4(b)に示すようなn個のコンデンサが直列接続され、各接続点P1、P2、・・・、P(n−1)がスイッチ素子SW1、SW2、・・・、SW(n−1)を介して接地されたものに相当する。
【0045】
一般に、2枚の導体板が対向している場合、生成される静電容量Ci[F]は、導体板間の距離d[m]、導体板の面積S[m2]、真空の誘電率ε0(=8.85×10-12[F/m])、導体板間に挟まれた誘電体層の比誘電率εrとすると、次の数式(1)で表される。
【0046】
【数1】

【0047】
図4(a)の可変コンデンサ30の場合、互いに対向する導体板間の静電容量をCiとすると、全体の静電容量Cは、次の数式(2)で表される。
【0048】
【数2】

【0049】
ここで、導体板CP2、CP3、・・・、CPnのうちの電位の固定されないもの(すなわち、電気的浮遊状態にあるもの)は、全体の静電容量Cに寄与しない。例えば、スイッチ素子SW2のみをオン(ON)状態にして、上から3番目の導体板CP3のみを接地すると、3番目以降の導体板CP4〜CP(n+1)は無いものと等しく、全体の容量は次の数式(3)で表される。
【0050】
【数3】

【0051】
また、スイッチ素子SW1のみをオン(ON)状態にして、上から2番目の導体板CP2を接地したときは、C=C1となる。
【0052】
このように、スイッチ素子SW1、SW2、・・・、SW(n−1)の開閉状態を適宜に設定することにより、可変コンデンサ30の静電容量Cを変化させることができる。
【0053】
図2の可変コンデンサ30では、4つの導体板31、32、33、34の面積が等しく、導体板31、32、33、34に挟まれた3つの絶縁体層(すなわち、誘電体層)23の比誘電率εrと厚さが等しい。したがって、上記の数式(2)において、n=3、C1=C2=C3(=C0=6.3pF)とした場合に相当する。そして、下記の表1に示すように、スイッチ素子SW1、SW2の開閉状態の組み合わせにより、静電容量Cが(C0/3)、(C0/2)、C0と変化する。
【0054】
【表1】

【0055】
すなわち、スイッチ素子SW1、SW2がいずれもオフ(OFF)状態の場合、導体板32、33が電気的浮遊状態となり、導体板31、34が静電容量Cを生成する電極対として動作する。そのため、静電容量C0の3つの直列コンデンサに相当する静電容量C0/3が生成される。
【0056】
スイッチ素子SW1がオフ(OFF)状態で且つスイッチ素子SW2がオン(ON)状態の場合、導体板32が電気的浮遊状態となり、導体板31、33が静電容量Cを生成する電極対として動作する。そのため、静電容量C0の2つの直列コンデンサに相当する静電容量C0/2が生成される。
【0057】
スイッチ素子SW1、SW2がいずれもオン(ON)状態の場合、導体板31、32が静電容量Cを形成する電極対として動作する。そのため、静電容量C0の1つのコンデンサに相当する静電容量C0が生成される。
【0058】
このように、導体板31、32、33、34のうちのいずれか二つが静電容量Cを生成する電極対として動作し、その電極対として動作する導体板31、32、33、34の組み合わせがSW1、SW2の開閉状態に応じて変更されることにより、生成される静電容量Cが変化する。しかも、SW1、SW2の開閉状態は自在に何度でも変更できる。したがって、静電容量Cを可逆的に変化させることが可能となる。
【0059】
[可変インダクタの動作]
次に、図5を参照しながら可変インダクタ40の動作原理を説明する。ここでは、図5(a)に示すように、可変インダクタ40が線路長lの伝送線路TLとn枚の導体板CP1’、CP2’、・・・、CPn’を有しており、導体板CP1’、CP2’、・・・、CPn’がスイッチ素子SW1’、SW2’、・・・、SWn’を介して接地されているものとする。
【0060】
一般に、伝送線路TLの特性インピーダンスをZ0とすると、伝送線路TLの長さlが波長短縮された時の波長λgよりも十分短い場合には、伝送線路TLは等価的に次の数式(4)で近似されるインダクタンスを持つインダクタとみなすことができる。
【0061】

ここで、fは伝送線路TLに供給される信号の周波数である。
【0062】
上記数式(4)の特性インピーダンスZ0は、伝送線路TLに対向する接地面までの距離に応じて変化し、距離が大きいほど特性インピーダンスZ0も大きくなる。
【0063】
図5(a)の可変インダクタ40の場合、スイッチ素子SW1’、SW2’、・・・、SWn’の開閉状態を適宜に設定することにより、導体板CP1’、CP2’、・・・、CPn’からのうちのいずれか一つを接地面として動作させることができる。したがって、伝送線路TLから接地面までの距離が変化し、それに伴って可変インダクタ40のインダクタンスLを変化させることができる。すなわち、図5(b)に示すように、可変インダクタ40が特性インピーダンスZ0の変化する伝送線路TLによって実現される。
【0064】
図3の可変インダクタ40の場合、l=6mmであり、下記の表2に示すように、SW1’、SW2’の開閉状態の組み合わせにより、伝送線路41の特性インピーダンスZ0が109、79、57Ωと変化する。そして、それに伴って、等価的なインダクタンスLも4.8、3.5、2.5nHと変化する。
【0065】
【表2】

【0066】
このように、導体板42、43が伝送線路41の接地面として動作可能であり、SW1’、SW2’の開閉状態に応じて伝送線路41から接地面までの距離が変わることにより、生成されるインダクタンスLが変化する。しかも、SW1’、SW2’の開閉状態は自在に何度でも変更できる。したがって、インダクタンスLを可逆的に変化させることが可能となる。
【0067】
[高周波回路モジュールの動作]
図6は、高周波回路モジュール100の等価回路を示す。
【0068】
図6の高周波回路は、コンデンサ205とインダクタ204で構成される入力整合回路201と、増幅器であるトランジスタ202(図1の半導体素子チップ2に対応する)と、可変コンデンサ30と可変インダクタ40とで構成される出力整合回路203とを備えている。
【0069】
この高周波回路では、可変コンデンサ30の静電容量Cと可変インダクタ40のインダクタンスLとを調整することにより、出力整合回路203のインピーダンスを変化させる。それにより、製造ばらつきに起因するインピーダンスのズレが調整され、さらには、マルチバンドやマルチモードに対応したインピーダンス整合がなされる。そして、その状態で、入力端子221に供給された電力PINがトランジスタ202で増幅され、電力POUTとして出力端子222から取り出される。
【0070】
なお、図6において、211、212は直流遮断用コンデンサ、206、207はバイアス電圧生成用の(1/4)波長線路、208、209は交流遮断用コンデンサである。
【0071】
図7および図8は、高周波回路モジュール100の出力整合回路203のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【0072】
スイッチ素子SW1、SW2、SW1’、SW2’をオン(ON)、オフ(OFF)、オン(ON)、オフ(OFF)の状態とすることにより、出力インピーダンスが図7の矢印で示すように変化し、出力インピーダンスは(3.3+j1.5)Ωとなる。この場合、出力端子222から取り出される電力POUTを最大にするのに最適なインピーダンスが得られる。
【0073】
他方、スイッチ素子SW1、SW2、SW1’、SW2’をオフ(OFF)、オン(ON)、オフ(OFF)、オフ(OFF)の状態とすることにより、出力インピーダンスが図8の矢印で示すように変化し、出力インピーダンスは(11+j5.7)Ωとなる。この場合、増幅器の出力効率を最大にするのに最適なインピーダンスが得られる。
【0074】
以上述べたように、本発明の第1実施形態の高周波回路モジュール100では、多層基板1の内部に可変コンデンサ30と可変インダクタ40が形成される。可変コンデンサ30は、多層基板1の内部導体層26が形成する導体板31、32、33と、多層基板1の外部導体層28が形成する導体板34と、それらの導体板31、32、33、34の間に介在する多層基板1の絶縁体層23とにより構成される。可変インダクタ40は、多層基板1の内部導体層25が形成する伝送線路41と導体板42、43とにより構成される。それらの導体板42、43は、伝送線路41からの距離が各々異なるように配置される。
【0075】
高周波回路モジュール100を実装する場合、可変コンデンサ30の導体板32、33は、実装回路基板に設けられたスイッチ素子SW1、SW2を介して接地され、可変コンデンサ30の導体板34は接地される。さらに、可変インダクタ40の導体板42、43は、実装回路基板に設けられたスイッチ素子SW2’、SW1’を介して接地される。
【0076】
そのため、スイッチ素子SW1、SW2の開閉状態に応じて、静電容量を生成する電極対として動作する導体板31、32、33、34の組み合わせが変更されて、可変コンデンサ30の静電容量Cが変化する。したがって、静電容量Cが可逆的に変化するコンデンサが実現される。
【0077】
また、スイッチ素子SW1’、SW2’の開閉状態に応じて、伝送線路41の特性インピーダンスZ0が変化し、それに伴って伝送線路41の等価的なインダクタンスLが変化する。したがってインダクタンスLが可逆的に変化する可変インダクタが実現される。
【0078】
したがって、高周波回路モジュール100では、高周波回路のインピーダンスを可逆的に変化させることができる。よって、製造ばらつきにより生じるインピーダンスのズレを容易に調整できると共に、マルチバンドやマルチモードにも対応できる。しかも、マルチバンドやマルチモードに対応するために周波数帯毎あるいは動作モード毎に別系統の回路を設ける必要がない。よって、小型化・低コスト化が可能となる。
【0079】
さらに、可変コンデンサ30では、導体板31、32、33、34の間隔や内部絶縁体層23の比誘電率を適宜に設定することにより、導体板31、32、33、34の大きさを抑制しながら所望の静電容量を得ることができる。そのため、小型化が可能である。
【0080】
可変インダクタ40では、伝送線路41から導体板42、43までの距離や伝送線路41の形状を適宜に設定することにより、伝送線路41や導体板42、43の大きさを抑制しながら所望のインダクタンスを得ることができる。そのため、小型化が可能である。
【0081】
したがって、高周波回路モジュール100では、さらに小型化されたモジュールが実現できる。
【0082】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態の可変コンデンサ30Aを示す。図9(a)は概略斜視図であり、図9(b)はその縦断面図である。
【0083】
図9の可変コンデンサ30Aは、比誘電率の異なる3つの絶縁体層(すなわち、誘電体層)51、52、53を有する点で、第1実施形態の可変コンデンサ30と異なっている。それ以外の構成は、第1実施形態の可変コンデンサ30のそれと同じである。よって、図9において第1実施形態の可変コンデンサ30と同一または対応する構成要素に図2と同じ符号を付して、同一構成の部分についての説明は省略する。
【0084】
可変コンデンサ30Aでは、導体板31と32との間に、比誘電率が10.5の高誘電率材料からなり、厚さが40μmの絶縁体層51が形成されている。また、導体板32と33との間に、比誘電率が7.1の材料からなり、厚さが40μmの絶縁体層52が形成されている。さらに、導体板33と34との間に、比誘電率が4.8の材料からなり、厚さが40μmの絶縁体層52が形成されている。
【0085】
4つの導体板31、32、33、34は、第1実施形態の可変コンデンサ30と同様に、一辺の長さが2mmの正方形状である。
【0086】
可変コンデンサ30Aでは、下記の表3に示すように、スイッチ素子SW1、SW2の開閉状態に応じて静電容量Cを変化させることができる。
【0087】
【表3】

【0088】
このように、第2実施形態の可変コンデンサ30Aでは、比誘電率の異なる絶縁体層51、52、53を使用しているので、第1実施形態の可変コンデンサ30に比べ、静電容量値を設定する際のパラメータが増え、設計の自由度を高めることができる。
【0089】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態の可変コンデンサ30Bを示す。図10(a)は概略斜視図であり、図10(b)はその縦断面図である。
【0090】
図10の可変コンデンサ30Bは、導体板31、34に対して表面の面積が異なる導体板62、63を有する点で、第1実施形態の可変コンデンサ30と異なっている。それ以外の構成は、第1実施形態の可変コンデンサ30のそれと同じである。よって、図10において第1実施形態の可変コンデンサ30と同一または対応する構成要素に図2と同じ符号を付して、同一構成の部分についての説明は省略する。
【0091】
可変コンデンサ30Bでは、一辺の長さが1mmの正方形状の導体板62が、絶縁体層(すなわち、誘電体層)23を介して導体板31に対向している。また、一辺の長さが1.5mmの正方形状の導体板63が絶縁体層(すなわち、誘電体層)23を介して導体板34に対向している。導体板31、34は、第1実施形態の可変コンデンサ30と同様に、一辺の長さが2mmの正方形状である。換言すれば、導体板62の表面の面積は、導体板31、34、63の表面の面積よりも小さい。また、導体板63の表面の面積は、導体板31、34の表面の面積よりも小さい。
【0092】
このように、表面の面積が互いに異なる導体板31と62、62と63、63と34が対向する場合、生成される静電容量は小さい方の面積で与えられる。例えば、スイッチ素子SW1のみがオン(ON)状態の場合、導体板31と62が1.6pFの静電容量を生成し、さらに、導体板31、34の導体板62と重ならない部分が容量1.6pFの静電容量を生成する。そして、可変コンデンサ30Bの全体では、これらの静電容量の並列接続で与えられる3.2pFの静電容量Cが生成される。
【0093】
可変コンデンサ30Bでは、下記の表4に示すように、スイッチ素子SW1、SW2の開閉状態に応じて静電容量Cを変化させることができる。
【0094】
【表4】

【0095】
上記の表4が示すように、第3実施形態の可変コンデンサ30Bでは、静電容量Cを2.1〜3.2pFの範囲内で細かく変化させることができる。したがって、第1実施形態の可変コンデンサ30に比べ、静電容量値を設定する際のパラメータが増え、設計の自由度を高めることができる。
【0096】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態の可変コンデンサ30Cを示す。図11(a)は概略斜視図であり、図11(b)はその縦断面図である。
【0097】
図11の可変コンデンサ30Cは、比誘電率が7.1、厚さが40μmの絶縁体層(すなわち、誘電体層)23を介して積層された5つの導体板71、72、73、74、75を有している。導体板71、72、73、74は、一辺の長さが2mmの正方形状である。
【0098】
可変コンデンサ30Cを内部に有する高周波回路モジュール100では、導体板72と74が多層基板1の対応するビア孔29を介して互いに電気的に接続され、さらに接続用端子15aに電気的に接続されている。また、導体板73は、多層基板1の対応するビア孔29を介して接続用端子15bに電気的に接続されている。さらに、導体板71は、対応するビア孔29を介して接続用端子16cに電気的に接続されている。導体板75は、接地用端子3に電気的に接続されている。
【0099】
可変コンデンサ30Cを内部に有する高周波回路モジュール100を実装する場合、実装回路基板(図示せず)に設けられたスイッチ素子SW1が接続用端子15aに電気的に接続される。また、実装回路基板に設けられたスイッチ素子SW2の一端が接続用端子15bに電気的に接続され、他端が接続用端子15cに電気的に接続される。また、実装回路基板に設けられた接地線が接地用端子3に電気的に接続される。それにより、図11に示すように、導体板72、74はスイッチ素子SW1を介して接地され、導体板75は接地される。さらに、導体板73はスイッチ素子SW2を介して導体板71に電気的に接続される。
【0100】
可変コンデンサ30Cでは、スイッチ素子SW1、SW2の開閉状態に応じて、下記の表5に示すように、静電容量Cが変化する。
【0101】
【表5】

【0102】
可変コンデンサ30Cでは、スイッチ素子SW1、SW2を共にオフ(OFF)状態にした場合に、導体板71と75が静電容量Cを生成する電極対として動作する。そして、静電容量Cが1.6pFと最も小さくなる。
【0103】
スイッチ素子SW1、SW2を共にオン(ON)状態にした場合には、導体板71、73が静電容量Cを生成する電極対の一方の電極として動作し、導体板72、74が他方の電極として動作する。そして、導体板71と72、72と73、73と74の各々により6.3pFの静電容量が生成される。可変コンデンサ30Cの全体では、これらの静電容量の並列接続で与えられる19pFの静電容量Cが生成されることになり、この場合に静電容量Cが最も大きくなる。
【0104】
このように、第4実施形態の可変コンデンサ30Cでは、電極対の一電極として複数の導体板が動作可能に構成されているため、静電容量値Cを1.6〜19pFと広範囲に変化させることができる。したがって、第1実施形態の可変コンデンサ30に比べ、静電容量値を設定する際のパラメータが増え、設計の自由度を高めることができる。
【0105】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態の可変コンデンサ30Dを示す。図12(a)は概略斜視図であり、図12(b)はその縦断面図である。
【0106】
図12の可変コンデンサ30Dは、導体板81と、絶縁体層23(すなわち、誘電体層)を介して導体板71に対向する3つの導体板82、83、84と、絶縁体層(すなわち、誘電体層)23を介して導体板82、83、84に対向する導体板85とを有している。導体板82、83、84は、同一平面内において互いに離間して配置されている。
【0107】
導体板81、85は、一辺の長さが2.5mmの正方形状である。導体板82は、2.5mm×1mmの長方形状である。導体板83、84は、一辺の長さが1mmの正方形状である。導体板82と83、82と84、83と84の間隔は、各々0.5mmである。
【0108】
絶縁体層23は、第1実施形態の可変コンデンサ30と同様に、比誘電率が7.1、厚さが40μmである。
【0109】
可変コンデンサ30Dを内部に有する高周波回路モジュール100では、導体板82、83、84が多層基板1の対応するビア孔29を介して接続用端子15a、15b、15cに電気的に接続されている。また、導体板85は、接地用端子3に電気的に接続されている。
【0110】
可変コンデンサ30Dを内部に有する高周波回路モジュール100を実装する場合、実装回路基板(図示せず)に設けられたスイッチ素子SW1、SW2、SW3が接続用端子15a、15b、15cに電気的に接続される。実装回路基板に設けられた接地線が接地用端子3に電気的に接続される。それにより、図12に示すように、導体板82、83、84はスイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して接地され、導体板85は接地される。
【0111】
このように、表面の面積が互いに異なる導体板81と82、81と83、81と84、82と85、83と85、84と85が対向する場合、形成される静電容量は小さい方の面積で与えられる。例えば、スイッチ素子SW1のみがオン(ON)状態の場合、導体板81と82が3.9pFの静電容量を生成し、さらに、導体板81、85の導体板82と重ならない部分が容量2.9pFの静電容量を生成する。そして、可変コンデンサ30Dの全体では、これらの静電容量の並列接続で与えられる6.9pFの静電容量Cが生成される。
【0112】
可変コンデンサ30Bでは、下記の表6に示すように、スイッチ素子SW1、SW2の開閉状態に応じて静電容量Cを変化させることができる。
【0113】
【表6】

【0114】
上記の表6が示すように、第5実施形態の可変コンデンサ30Dでは、静電容量Cを4.9〜8.4pFの範囲内で細かく変化させることができる。したがって、第1実施形態の可変コンデンサ30に比べ、静電容量値を設定する際のパラメータが増え、設計の自由度を高めることができる。
【0115】
(第6実施形態)
図13は、本発明の第6実施形態の可変インダクタ40Aを示す概略斜視図である。
【0116】
図13の可変インダクタ40Aは、スパイラル状の伝送線路(すなわち、スパイラルインダクタ)91を有する点で、第1実施形態の可変インダクタ40と異なっている。それ以外の構成は、第1実施形態の可変インダクタ40のそれと同じである。よって、図13において第1実施形態の可変インダクタ40と同一または対応する構成要素に図3と同じ符号を付して、同一構成の部分についての説明は省略する。
【0117】
この第6実施形態の可変インダクタ40Aは、第1実施形態の可変インダクタ40と同様に動作し、実効的なインダクタンスLが変化する。
【0118】
(応用例)
図14は、第1実施形態の可変コンデンサ30に接続されるスイッチ素子SW1、SW2として電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)を使用した例を示す。
【0119】
図14に示すように、この例では、FET301のドレインが導体板32に電気的に接続され、ソースが接地される。また、FET302のドレインが導体板33に電気的に接続され、ソースが接地される。FET301、302のゲートには、制御電圧V1、V2が各々供給される。
【0120】
そして、制御電圧V1、V2をFET301、302の閾値電圧よりも高くするとFET201、202は導通状態となり、導体板32、33が接地される。他方、制御電圧V1、V2をFET301、302の閾値電圧よりも低くすると、FET301、302が非導通状態となり、導体板32、33が電気的浮遊状態となる。
【0121】
このように、制御電圧V1、V2を調整することにより、FET301、302の導通が制御されるので、静電容量Cを変化させることができる。
【0122】
図15は、第1実施形態の可変コンデンサ30に接続されるスイッチ素子SW1、SW2としてダイオード素子を使用した例を示す。
【0123】
図15に示すように、この例では、ダイオード401のアノードが導体板32に電気的に接続され、カソードが接地される。また、ダイオード402のアノードが導体板33に電気的に接続され、カソードが接地される。ダイオード401、402のアノードには、制御電圧V1’、V2’が各々供給される。
【0124】
そして、制御電圧V1、V2をダイオード401、402のターンオン電圧よりも高くするとダイオード401、402は導通状態となり、導体板32、33が接地される。他方、制御電圧V1、V2をダイオード401、402のターンオン電圧よりも低くすると、ダイオード401、402が非導通状態となり、導体板32、33が電気的浮遊状態となる。
【0125】
このように、制御電圧V1、V2を調整することにより、FET301、302の導通が制御されるので、静電容量Cを変化させることができる。
【0126】
(変形例)
なお、上記実施形態は、本発明の好適な例を示すものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0127】
例えば、第3、第4および第5の実施形態の可変コンデンサ30B、30C、30Dの絶縁体層(すなわち、誘電体層)23の各々を比誘電率の異なる材料で形成してもよい。
【0128】
また、第1、第2、第3、第4および第5の実施形態の可変コンデンサ30、30A、30B、30C、30Dと第1および第6の実施形態の可変インダクタ40、40Aとを適宜に組み合わせて、高周波回路モジュール100を構成することができる。
【0129】
第1実施形態の高周波回路モジュール100では、可変コンデンサ30と可変インダクタ40とを備えているが、それらのうちのいずれか一方を通常のリアクタンス素子(すなわち、固定コンデンサや固定インダクタ)に置換してもよい。その場合にも、出力整合回路203のインピーダンスを可逆的に変化させることができるからである。
【0130】
また、スイッチ素子SW1、SW2、SW1’、SW2’を実装回路基板に設ける代わりに、同様の機能を持つスイッチ素子を高周波回路モジュール100に設けることも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1実施形態の高周波回路モジュールを示す概略断面図である。
【図2】図1の高周波回路モジュールの可変コンデンサを示す斜視図である。
【図3】図1の高周波回路モジュールの可変インダクタを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の可変コンデンサの動作原理を示す、(a)は斜視図、(b)は等価回路図である。
【図5】本発明の第1実施形態の可変インダクタの動作原理を示す、(a)は斜視図、(b)は等価回路図である。
【図6】図1の高周波回路モジュールの等価回路を示す回路図である。
【図7】図1の高周波回路モジュールの出力整合回路のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【図8】図1の高周波回路モジュールの出力整合回路の他のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【図9】(a)は本発明の第2実施形態の可変コンデンサを示す斜視図、(b)はその縦断面図である。
【図10】(a)は本発明の第3実施形態の可変コンデンサを示す斜視図、(b)はその縦断面図である。
【図11】(a)は本発明の第4実施形態の可変コンデンサを示す斜視図、(b)はその縦断面図である。
【図12】(a)は本発明の第5実施形態の可変コンデンサを示す斜視図、(b)はその縦断面図である。
【図13】本発明の第6実施形態の可変インダクタを示す斜視図である。
【図14】図2の可変コンデンサの応用例を示す断面図である。
【図15】図2の可変コンデンサの他の応用例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0132】
1 多層基板
2 半導体素子チップ
3 接地用端子
4 接続用リード
11 多層基板の第1積層部
12 多層基板の第2積層部
13 多層基板の第3積層部
14 シールド層
15a、15b、15c 接続用端子
16a、16b 接続用端子
21、22、23 絶縁体層
24、25、26 内部導体層
27、28 外部導体層
29 ビア孔
30、30A、30B、30C、30D 可変コンデンサ
31、32、33、34 導体板
40、40A 可変インダクタ
41 伝送線路
42、43 導体板
51、52、53 絶縁体層
62、63 導体板
71、72、73、74 導体板
81、82、83、84、85 導体板
91 伝送線路
100 高周波回路モジュール
201 入力整合回路
202 トランジスタ
203 出力整合回路
204 インダクタ
205 コンデンサ
206、207 (1/4)波長線路
208、209、211、212 コンデンサ
221 入力端子
222 出力端子
301、302 電界効果トランジスタ(FET)
401、402 ダイオード
SW1、SW2、SW(n−1) スイッチ素子
SW1’、SW2’、SWn スイッチ素子
CP1、CP2、CP3、CPn、CP(n+1) 導体板
CP1’、CP2’、CPn’ 導体板
TL 伝送線路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタンスを生成する伝送線路と、
前記伝送線路からの距離が各々異なるように配置された、前記伝送線路の接地面として動作可能な複数の第1導体板と、
前記第1導体板と接地端子との電気的な接続及び非接続を可逆的に切り替える第1切替手段とを備え、
前記接地面として動作する前記第1導体板を前記第1切替手段によって変更することにより、値の異なる前記インダクタンスが生成される可変インダクタ。
【請求項2】
前記伝送線路が蛇行線路を含んでいる請求項1に記載の可変インダクタ。
【請求項3】
前記伝送線路がスパイラル状線路を含んでいる請求項1に記載の可変インダクタ。
【請求項4】
高周波回路の受動素子として請求項1〜3のいずれかに記載の可変インダクタを多層基板上に備えた高周波回路モジュールであって、
前記多層基板が、
前記可変インダクタの前記伝送線路および複数の前記第1導体板の各々を形成する複数の第1導体層と、
隣接する二つの前記第1導体層の間に各々形成された、前記伝送線路からの距離が各々異なるように複数の前記第1導体板を配置せしめる複数の第1絶縁体層と
を含んでなる高周波回路モジュール。
【請求項5】
高周波回路の受動素子としてさらに可変コンデンサを備えており、
前記可変コンデンサが、
誘電体層を介して積層された、静電容量を生成する電極対として動作可能な複数の第2導体板と、
前記第2導体板と外部端子との電気的な接続及び非接続を可逆的に切り替える第2切替手段とを備えていて、
前記電極対を形成する前記第2導体板の組み合わせを前記第2切替手段によって変更することにより、値の異なる前記静電容量が生成されるものであり、
前記多層基板が、
前記可変コンデンサの前記第2導体板の各々を形成する複数の第2導体層と、
隣接する二つの前記第2導体層の間に各々形成された、前記可変コンデンサの前記誘電体層として各々機能する複数の第2絶縁体層と
をさらに含んでいる請求項4に記載の高周波回路モジュール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−332683(P2006−332683A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156303(P2006−156303)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【分割の表示】特願2001−255750(P2001−255750)の分割
【原出願日】平成13年8月27日(2001.8.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】