説明

可変光分散補償および可変電子分散補償を有するイコライザ

【課題】コンパクトで調整可能な波長分散補償器を提供すること。
【解決手段】光信号の分散を補償するための方法および装置には可変光分散補償(ODC)および電子分散補償(EDC)が使用されている。ODCによって大きな1次分散が補償されるが、大きな高次数の分散および透過率のリップル効果は放置される。EDCを使用してODCからの高次数の分散および透過率のリップルが補償される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に光学的および電気的等化構成に関し、より詳細には可変光波長分散補償および電子波長分散補償を有するイコライザを実施するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、80kmを超える標準単一モード・ファイバ(SSMF)の10Gb/sでの伝送には、波長分散補償ファイバ(DCF)が必要である。DCFは高価であり、大型で、損失が多く、非線形でかつ固定である。この固定の性質は、伝送経路長が変化するメッシュ・ネットワークにはとりわけ問題である。
【0003】
また、非常に安価なコストが約束される新しいタイプの10Gb/s光トランシーバである10Gb/s差込み可能トランシーバ(XFP)が存在している。これは、回路パックのフェースプレート上のケージに差し込むことができる小型モジュール(9mm×18mm×62mm)である。このモジュールには、低コスト電界吸収型変調レーザ(EML)、受信機、およびクロックおよびデータ回復チップが含まれている。EMLは、デュオバイナリなどの耐分散フォーマットを使用することができず、また、通常、それに対応するものであるより高価なLiNbOベースの送信機より伝送性能が悪い。
【0004】
より小さな分散許容範囲(dispersion tolerance)を有し、より低コスト、より小さいフットプリント、およびより柔軟な送信機に向かう傾向を考慮すると、受信機ベースのコンパクトでかつ調整可能な分散補償が強く要求される。従来、L.D.Garrettらによって、バルク光デバイスによる可変光分散補償を使用した480kmの10Gb/s伝送が立証されている(L.D.Garrett等、OFC 2000、187頁参照)が、L.D.Garrettらの分散補償はその可変範囲が狭いため、ファイバ長の大きな変化に対する調整が不可能である。また、L.D.Garrettらは分散補償をスパン自体に置いているが、受信機からのフィードバックを使用して制御することは困難である。最後に、L.D.Garrettらは、LiNbOベースの送信機を使用している。
【非特許文献1】L.D.Garrett等、OFC 2000、187頁
【非特許文献2】A.J.Weiss等、IEEE Photon、Technol.Lett.,15(2003)、1225頁
【非特許文献3】J.X.Cai等、IEEE Photon Technol.Lett.9、1455、1990
【非特許文献4】M.Shiraski、IEEE Photon Technol.Lett.9、1598、1997
【非特許文献5】C.K.Madsen and J.H.Zhao、John Wiley & Sons、1999、D.J.Moss等、OFC、2002
【非特許文献6】C.K.Madsen、IEEE Photon Technol.Lett.11、1623、1999
【非特許文献7】C.R.Doerr等、IEEE Photon Technol.Lett.5、1258、2003
【非特許文献8】K.Tagiguchi等、IEEE JSTQE 2、270、1996
【非特許文献9】D.Nelson等、OFC PD29、200年
【非特許文献10】J.H.Winters and R.Gitlin、IEEE Trans.
【非特許文献11】A.Fabert等、「Performance of a 10.7 Gb/s receiver with digital equaliser using maximum likelihood sequence estimation」、paper Th4.1.5、ECOC 2004
【非特許文献12】M.Bohn等、ECOC 2003、Th2.2.4
【非特許文献13】C.R Doerr等、IEEE Photon.Technol.Lett.16(2004)、1340
【非特許文献14】P.J.Winser等、OFC 2004、PDP7
【非特許文献15】C.R.Doerr等、Journal of Lightwave Technology、Vol.22、249〜256頁、2004年1月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、コンパクトで調整可能な波長分散補償器が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、可変光分散補償および電子分散補償(それぞれODCおよびEDC)を有する、分散を補償するための方法および装置が開示される。理想的なODCは、無限量の分散を補償することができるが、実際のODCは、狭い帯域幅を有している。したがってこれらのODCはかなりの1次分散を補償するが、かなりの大きさの高次数の分散および透過率のリップル(ripple)効果を補償せずに残してしまう。知られているように、電子分散補償(EDC)は、光検出器内での位相情報の損失のため、EDCが提供することができる分散補償の量が基本的に制限されている(A.J.Weiss等、IEEE Photon、Technol.Lett.,15(2003)、1225頁)。本発明によれば、本出願人らが認識しているように、(1次分散補償のための)ODCと(高次分散および透過率リップル効果の補償のための)EDCを組み合わせることによって、性能が改良された実用的な分散補償器を実施することができる。
【0007】
より詳細には、本発明によれば、
第1の制御信号に応答し、受信した光信号中の1次分散を主として補償するための可変光分散補償器(ODC)(このODCは、直列に接続された1つまたは複数のより単純なODCで構成することができる)と、
ODCにより補償された受信光信号を検出し、かつ、電気信号を生成するための光信号検出器と、
1つまたは複数の制御信号に応答し、電気信号のより高次の分散および/または透過率のリップルを補償するための適応電子分散補償器(EDC)と、
EDCからの電気信号を検出し、かつ、受信した信号の品質を表す品質信号を生成するための電気信号モニタ検出器と、
品質信号に応答し、ODCによる1次分散補償を制御するための第1の制御信号を生成し、かつ、EDCによるより高次の分散補償および/または透過率のリップルを制御するための1つまたは複数の制御信号を生成し、それにより、受信した光信号の全分散を小さくするための制御器と
を備えた分散補償器が提供される。
【0008】
本発明によれば、光信号分散補償を提供する方法には、
受信した光信号中の1次分散を主として補償する可変光分散補償器(ODC)を使用する工程と、
補償された受信光信号を検出し、かつ、当該検出した補償受信光信号から電気信号を生成する工程と、
電気信号のより高次の分散および/または透過率のリップルを補償する適応電子分散補償器(EDC)を使用する工程と、
EDCからの電気信号を検出する工程であって、受信した信号の品質を表す品質信号を生成するための工程と、
品質信号に応答してODCによる1次分散補償を制御し、かつ、EDCによるより高次の分散補償および/または透過率のリップルを制御する工程であって、それにより、受信した光信号中の全分散を小さくする工程と
が含まれている。
【0009】
他の実施形態では、
第1の制御信号に応答し、受信した光信号中の1次ひずみを補償するための狭帯域可変符号間干渉(ISI)光イコライザ(OEQ)と、
OEQによって補償された受信光信号を検出し、かつ、電気信号を生成するための光信号検出器と、
第2の制御信号に応答し、当該電気信号を等化して、受信した光信号中の高次のひずみを提供するための適応ISI電子イコライザ(EEQ)と、
EEQからの電気信号を検出し、かつ、受信した信号の品質を表す品質信号を生成するための電気信号検出器と、
品質信号に応答し、OEQによる1次ひずみ補償を制御するための第1の制御信号を生成し、かつ、EEQによるより高次のひずみ補償を制御するための第2の制御信号を生成し、それにより、受信した光信号の全ひずみを小さくするための制御器と
を備えた符号間干渉(ISI)軽減器が提供される。
【0010】
本発明については、添付の図面に照らして読むべき以下の詳細な説明を考察することにより、より完全に理解されよう。
以下の説明においては、異なる図における同じ構成要素の指定は、同じ構成要素を表している。また、構成要素の指定に際して、最初の桁はその構成要素が最初に出現する図を示している(たとえば101が最初に出現するのは図1である)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、受信した光信号103の分散を等化するための、調整可能(つまり可変)光分散補償器(ODC)101および調整可能電気分散補償器(EDC)102を備えた本発明による分散補償器100をブロック図で示したものである。図2Aを参照すると、本発明による分散補償器100は、実例として光通信システム200の受信機ユニット207の一部を構成することができる。このようなシステムでは、データ変調光信号202が増幅され、光送信機201によって光学設備203を介して受信機ユニット207へ伝送される。光学設備203は、通常、分散補償ファイバ(DCF)のセグメントを備える光ファイバであり、あるいはDCFのセグメントを備えない光ファイバである。光学設備203は、光中継器206および光ファイバ205を備えた1つまたは複数の光リンク204を備えることができる。光学設備203を介した伝送により、変調光信号は、光分散、透過率リップルおよび他の符号間干渉を経ることになる。受信機ユニット207では、本発明による調整可能分散補償器100が光学設備203から光信号103を受信し、受信した光信号103中の分散を等化する。得られる等化信号は、調整可能分散補償器100から出力される電気信号108であり、データ受信機208によって処理され、データ信号209が回復される。
【0012】
図1を参照すると、本発明による分散補償器100は、調整可能光分散補償器(ODC)101、光前置増幅器105、および増幅自然放出を小さくするためのフィルタ106を備えている。このフィルタは任意選択である。また、コンポーネント101、105および106の順序は、フィルタが光増幅器の後段にくる限り任意である。調整可能なODC101は、主として一定量の1次分散を補償している。この補償は、制御器110からの少なくとも第1の制御信号111によって制御することができる。調整可能なODC101は、1つまたは複数のODC要素を使用して実施することができる。後の段落で考察するように、制御ユニット121は、第1の制御信号111を使用して調整可能なODC101を制御し、受信した光信号103中の主として1次分散を補償している。個々のODC要素は、よく知られている、(1)サンプル・チャープ・ファイバ・ブラッグ回折格子(J.X.Cai等、IEEE Photon Technol.Lett.9、1455、1990参照)、(2)虚像(virtually imaged)位相アレイ(M.Shiraski、IEEE Photon Technol.Lett.9、1598、1997参照)、(3)Gires−Tournoisエタロン(C.K.Madsen and J.H.Zhao、John Wiley & Sons、1999、D.J.Moss等、OFC、2002参照)、(4)リング共振器(C.K.Madsen、IEEE Photon Technol.Lett.11、1623、1999参照)、(5)導波路回折格子(C.R.Doerr等、IEEE Photon Technol.Lett.5、1258、2003参照)、(6)マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)(K.Tagiguchi等、IEEE JSTQE 2、270、1996参照)、および(7)変形可能ミラー(D.Nelson等、OFC PD29、2003参照)を始めとする様々な可変分散イコライザ(可変分散補償器TDCとも呼ばれている)を使用して実施することができる。よく知られているこれらの可変分散イコライザの回路および動作説明は、参照により本明細書に組み込まれている。ODCは無色であることが好都合であるが、これは必要事項ではない。
【0013】
図1に戻ると、検出器107によってフィルタ106の出力が検出され、得られた復調電気信号が調整可能なEDC102に結合され、分散が電気的に補償される。適応EDC102は、制御器110からの1つまたは複数の第2の制御信号112の制御の下で制御可能であり、より高次の分散および/または光透過率のリップル(このリップルは、ODCに起因する場合もある)効果が補償される。得られたEDC102からの補償電気信号108は、次にデータ検出器(図2Aの208で示す)もしくは他の回路に結合される。EDC102は、1つまたは複数のEDC要素を備えることができる。個々のEDC要素は、(1)復調電気信号の品質を検出するためのアイ(eye)信号モニタ(信号検出器109のような)回路を使用した適応多重タップ・フィードフォワード・イコライザ(J.H.Winters and R.Gitlin、IEEE Trans.参照)、(2)復調電気信号の品質を検出するための決定フィードバック回路(信号検出器109のような回路)を使用した適応フィードフォワード・イコライザ(J.H.Winters and R.Gitlin、IEEE Trans.参照)、(3)復調電気信号の品質を検出するための順方向誤り修正(FEC)回路(信号検出器109のような回路)からのフィードバックを使用した多重閾値等化(A.Fabert等、「Performance of a 10.7 Gb/s receiver with digital equaliser using maximum likelihood sequence estimation」、paper Th4.1.5、ECOC 2004参照)、もしくは(4)最尤シーケンス推定器として実施することができる。後の段落で考察するように、制御ユニット122は、第2の制御信号112を使用してEDC102を制御し、受信した光信号中のより高次の分散および/または光透過率のリップル効果を補償している。本発明の他の特徴によれば、EDC102は、同じく、受信した光信号103中の1次分散を補償するように制御することができる。良く知られているこれらの調整可能EDCの回路および動作説明は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0014】
図1に示すように、EDC102からの補償電気信号108は、同じく信号品質検出器109にも結合されている。信号品質検出器109は、補償電気信号108を検出して、補償電気信号108の品質を表す電気信号113を生成している。信号検出器109には、よく知られている、(1)それぞれパリティ・ビットあるいは誤り修正ビットを含んだデータ信号中のビット誤り率を検出するための誤り検出回路または誤り修正回路(図5を参照して考察する)、(2)EDCからの電気信号中のアイ開口を検出するためのアイ・モニタ回路、(3)EDCからの電気信号中の平均二乗誤差を検出するための平均二乗誤差検出器、もしくは(4)EDC102からの電気信号の電気スペクトル中の異常を検出するための電気信号スペクトル・モニタ(M.Bohn等、ECOC 2003、Th2.2.4参照)を始めとする様々な電気信号検出器のうちの任意の検出器を使用することができる。良く知られているこれらの信号品質検出器の回路および動作説明は、同じく参照により本明細書に組み込まれている。
【0015】
信号検出器109からの電気品質信号113は、制御器110に結合されている。制御器110は、良く知られている方法で動作し、電気品質信号113の特性を利用して制御ユニット121および122がODC101およびEDC102を個別に独立して制御することを可能にしている。したがって、ユニット101、105、106、107、102、109および121を介した制御ループは、制御ユニット121がEDC102の動作には無関係にODC101の調整(つまり可変性)を制御することを可能にする。この方法によれば、制御ユニット121は第1の制御信号111を使用してODC101を制御し、それにより、受信した光信号103中の主として1次分散を補償している。同様に、ユニット101、105、106、107、102、109および122を介した制御ループは、制御ユニット122がODC101の動作には無関係にEDC102の適合性を制御することを可能にする。この方法によれば、制御ユニット122は第2の制御信号112を使用してEDC102を制御し、それにより、受信した光信号中のより高次の分散および/または透過率のリップルを補償している。制御器110は、最初にODC101を調整し、次にEDC102を調整し、続いてODC101およびEDC102を再調整する等々、ODC101およびEDC102の動作を反復して制御することができる。別法としては、EDC102の適合性の方が一般的にODC101の可変性よりはるかに速いため、制御器110は、ODC101に信号を送信して調整させ、かつ、EDC102を自由に動作させて、ODC101の個々の再調整に応答して自動的に再調整させることも可能である。したがって制御器110は、電気品質信号113の品質レベルを記憶し、調整制御信号111をODC101に送信し、かつ、電気品質信号113の品質レベルが予め記憶されている品質レベルに対して向上したか、あるいは低下したかを決定することができる。品質が向上している場合、制御器110は、ODC101への調整制御信号111の送信を継続し、品質をさらに向上させるべく試行することができる。品質が低下している場合、制御器110は、ODC101への調整制御信号111の送信方向を変更し、品質レベルを向上させるべく試行することができる。EDC102の応答時間は、ODC101の応答時間より速いため、制御器110は、最初にODC101に制御信号111を送信し、次にEDC102に制御信号112を送信する。また、EDC102が自らを自動的に再調整することができる場合、制御器は、EDC102に制御信号112を送信する必要はない。この方法によれば、本発明による分散等化が反復して実施され、制御器110は、最初にODC101が1次光分散を補償することを可能にし、次にEDC102がより高次の分散および/または透過率のリップルを補償することを可能にする。この手順は、電気信号113の品質が最適化されたこと、つまり電気信号113の品質が所望もしくは許容可能なレベルに到達したことを制御器110が決定するまで反復して継続される。
【0016】
本発明は、波長分割多重化(WDM)システムに使用することができる。このようなシステムは、ODC101の前段に接続された、受信したWDM光信号103Aを個別のチャネル、たとえば103および131に逆多重化するデマルチプレクサ130、あるいはODC101と光信号検出器107の間に接続された、WDM光信号104を個別のチャネル141および142に逆多重化するデマルチプレクサ140のいずれかを備えることができる。後者の場合、ODC101を無色にする必要があり、それによりODC101は、複数のチャネル301、311および321上で同時に動作することができる。また、この後者の場合、制御器110は、ただ1つのチャネルからの電気品質信号113を使用してODC101を制御することになる。また、図2Aに示すように、このようなWDMシステムは、WDMシステムの中で利用されるWDM光信号を形成するためにマルチプレクサ211の中で1つに多重化される複数のデータ信号202(202A等)を含むことができる。
【0017】
図3Aを参照すると、光伝送線路302の分散が実例で示されている。図3Bは、単一波長チャネル受信光信号103に対するODC101の分散特性301、および受信したWDM型信号103の複数の波長チャネルに対する分散特性301、311および321を実例で示したものである。図3Cの304で示す、ODC101から出現する単一波長チャネル光信号104に対する残りの分散は、2次分散およびより高次の分散である(305および306は、WDM型信号103の他のチャネルに対する残りの2次分散およびより高次の分散を示している)。実際には、最初の反復一巡(ODC101およびEDC102の調整)の後の1次分散は、ゼロ・レベルより上か下かのいずれかである。304における残りの分散は、本質的に、EDC102によって補償される残りの2次分散およびより高次の分散である。既に指摘したように、EDC102を使用して、2次分散およびより高次の分散および/または透過率のリップルだけでなく、同じく一定量の1次分散を補償することができる。
【0018】
図4の402は、ODCの透過率特性のグラフを実例で示したものである。この透過率特性は、非線形成分すなわち2次成分を有している。既に指摘したように、この透過率のリップルは、EDC102を使用して補償することができる。
【0019】
図2Bを参照すると、本発明による分散補償器100のODC101は、光通信システム210の送信機ユニット211の一部として利用することも可能である。このようなシステムでは、データ変調光信号212は、ODC101によって予備分散補償された後、増幅器220によって増幅され、光学設備203を介して受信機ユニット207へ伝送される。
【0020】
実験光学システム
図5を参照すると、本発明による分散補償器装置の有効性を立証する実験光通信システムが示されている。このシステムは、本質的に図2Aに示すシステムの特定の実施形態であり、送信機500、光学設備すなわちスパン510および受信機520を備えている。送信機の位置500における入力変調データ信号500Aは、ビット誤り率テスタ(BERT)501からの9.95Gb/sの231−1擬似ランダム・ビット列である。入力変調データ信号500Aは、強化順方向誤り修正(FEC)ユニット502によって順方向誤り修正ビットを使用して符号化されている。このシステムは、FEC復号器526を使用してこれらの符号化FECビットを復号し、また、FECからのビット誤り率信号を、受信した光信号の品質を表す品質信号として使用している。
【0021】
FECユニット502の出力は、10.66Gb/sの信号(データ+FECのためのオーバヘッド・ビット)であり、中間到達10Gb/s差込み可能トランシーバ(XFP)503の送信機を駆動している。トランシーバXFP503は、実例として波長1549.315nm(193.5THz)で動作している。XFP503の消光比は、10.4dB(消光比は、分散許容範囲を改善するために犠牲にされていないことに留意されたい)。XFP503の出力は、0kmのファイバもしくは427kmのファイバのいずれかからなる光学設備すなわちスパン510に出力されている。これは、ネットワークの構成に応じて近傍に位置するノードもしくは遠くに位置するノードのいずれかから伝送される信号をノードが受信するメッシュ・ネットワークにおける状況をシミュレートしている。個々のスパンに入力されるパワーは−2dBmである。3番目のスパンには、1530nmの増幅自然放出ピークが大きくなり過ぎないように維持するための光フィルタ511が存在している。427kmスパン510の末端における光信号対雑音比(OSNR)は20dBである。
【0022】
受信機520は、3つのODCを直列に備えたODC521ステージ、前置増幅器522、フィルタ523、フォトダイオード検出器524、2つのEDCを直列に備えたEDCステージ525およびFEC復号器526からなっている。3つのODC521は、シリカ系導波路マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)ベース可変分散補償器(TDC)である。スパン510に導入される大きな分散に適応するためには3つのODCが必要である。ODC#1およびODC#2の各々は、同じチップ上に統合され、かつ、50GHzの自由スペクトル・レンジ(FSR)を有する2つの3ステージMZI TDC(図6の601および602参照)からなっている。第3のODC#3は、1つの3ステージMZI
【0023】
TDCであり、そのFSRは25GHzである。図6は、この3つのODCを実例で示したもので、C.R.Doerr等、IEEE Photon.Technol.Lett.16(2004)、1340に記載されている方法で動作している。最初の2つのODCおよび3番目のODCの分散調整範囲は、それぞれ〜±1700ps/nmおよび〜±2000ps/nmである。ITU(国際電気通信連合)のチャネル間隔は、ODC FSRの整数倍であるため、ODC521は、ITU格子上のすべてのチャネルを補償することができる。図6に示すすべてのODCには、それらを偏光独立型にするための2分の1波長板604が使用されている。MZI中における経路長差は、すべてハイパーヒーティングを使用して製造後に永久仕上げされている。個々のODCに要求されるのは、1つの分散制御電圧605および1つのチップ温度制御606のみである(ODCの波長帯域と受信した光信号の波長帯域を整列させるためのものである)。個々のODCの挿入損失は、〜5dBである。これらの3つのODCは直列に実装されているが、これらをすべて単一チップ上に統合することも可能であり、それによりサイズおよび挿入損失を小さくすることができる。
【0024】
EDCユニット525のEDC#1は、アイ監視フィードバックを使用した適応多重タップ・フィードフォワード等化(J.H.Winters and R.Gitlin、IEEE Trans.参照)を有しており、また、EDC#2は、適応フィードフォワード等化、決定フィードバック等化(J.H.Winters and R.Gitlin、IEEE Trans.参照)、およびFEC526からのフィードバックを使用した多重閾値等化(P.J.Winser等、OFC 2004、PDP7参照)を有している。EDC#2から出力される電気信号は、FEC526に出力される変調信号(データ+FECビットを有している)である。FEC526は、あらゆるデータ誤りを修正し、修正済みデータ信号527を出力している。また、このデータ信号527は、修正済みデータ信号527中のビット誤りの数を決定するBERT501に接続されている。この測定ビット誤り率は、この実験システムを介したデータ伝送品質の測度である。
【0025】
図7は、光学スパン510が427kmの標準単一モード・ファイバである場合の測定ビット誤り率対OSNR(光信号対雑音比)を示したものである。1549nmにおける427kmスパンの分散が7200ps/nmであることが測定された。ODC521は手動で調整され、EDC525は、自動的に自らを調整している。図に示すように、FEC526が可能である場合の427kmに対する経路ペナルティ701は3.8dBである。図に示すように、15dBより大きいすべてのOSNRに対するビット誤り率が劇的に改善されている。
【0026】
図5に示す実験システムは、より典型的な光通信システムに容易に適合させることができることに留意されたい。そのような光通信システムの場合、データ源から入力変調データ信号500Aを入力することができ、また、FECからのビット誤り率を図1に示す分散補償器100の検出器109として使用することができる。このようなシステムでは、受信機ユニット520は、図1に示す分散補償器100であっても良い。ビット誤り率信号は、FECからの品質電気信号531として働かせることができ、制御器ユニット510はそれを使用して制御信号511および512を生成し、図1で説明した方法と同じ方法でODC521ユニットおよびEDC525ユニットを制御することができる。図5に示すシステムのFEC502およびFEC526は、他のパリティ・ビット回路に置き換えることができ、したがって変調データ信号502Aは、誤り修正ビットではなく、誤り検出パリティ・ビットを有するデータ信号であってもよいことに留意されたい。このようなシステムでは、品質信号531は、受信したデータ信号527のビット誤り率であってもよい。
【0027】
図8は、本発明による符号間干渉(ISI)軽減器(mitigator)の実例をブロック図で示したものである。この符号間干渉(ISI)軽減器800は、図1に示す分散補償器100と同様の方法で実施されており、同じように動作するが、このISI軽減器800を使用することができるのは、受信機の位置だけのようである(図2A参照)。このISI軽減器800は、狭帯域可変ISI光イコライザ(OEQ)801(図1に示すODC101の代わりに使用されている)(C.R.Doerr等、Journal of Lightwave Technology、Vol.22、249〜256頁、2004年1月参照)、および適応ISI電子イコライザ(EEQ)802(図1に示すEDC102の代わりに使用されている)(J.H.Winters and R.Gitlin、IEEE Trans.参照)を備えている。したがってISI軽減器800は、本質的に、第1の制御信号811に応答する、受信した光信号803中の1次ひずみを補償するための狭帯域可変ISI光イコライザ(OEQ)801を備えている。増幅805およびフィルタリング806の後、光信号検出器807がOEQ801補償受信光信号を検出し、電気信号807Aを生成している。801、805および806の順序は、フィルタ806が増幅器805の後段にくる限り任意である。帯域外増幅自然放出が大きくない場合、フィルタ806は完全に省略することができる。適応ISI電子イコライザ(EEQ)802は、第2の制御信号812に応答して電気信号807Aを等化し、それにより、受信した光信号803中のより高次のひずみを補償している。電気信号検出器809は、EEQ802からの電気信号を検出し、受信した信号808の品質を表す品質信号813を生成している。制御器810は、品質信号813に応答して、OEQ801による1次ひずみ補償を制御するための第1の制御信号811を生成し、かつ、EEQ802によるより高次のひずみ補償を制御するための第2の制御信号812を生成し、それにより、受信した光信号808中の全ひずみを小さくしている。
【0028】
当業者には本発明の様々な改変が可能であろう。したがって、当分野に進歩をもたらした本発明の原理およびそれらの等価物を基本的に利用した、本明細書の特定の教示からのすべての逸脱は、正当に、本明細書において説明し、かつ、特許請求する本発明の範囲に属するものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による分散補償器の実例を示すブロック図である。
【図2A】光学システムの受信機の位置における本発明による分散補償の使用を示す図である。
【図2B】光学システムの送信機・受信機の位置における本発明による分散補償の使用を示す図である。
【図3A】光伝送線路の分散特性を示すグラフである。
【図3B】ODCの分散特性を示すグラフである。
【図3C】ODCから出現する残りの分散を示すグラフである。
【図4】分散補償器が受信する光信号の透過率特性の実例を示すグラフである。
【図5】本発明による分散補償器を受信機の位置に使用した実験光学システムの実例を示す図である。
【図6】マッハ・ツェンダー干渉計をベースとする可変分散補償器を使用して実施されたODCの実例を示す図である。
【図7】本発明による分散補償器を使用した、427kmスパンに対するビット誤り率の改善を示すグラフである。
【図8】本発明による符号間干渉(ISI)軽減器の実例ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御信号に応答して、受信した光信号中の1次光分散を主として補償するための可変光分散補償器(ODC)と、
ODCにより補償された受信光信号を検出し、かつ、電気信号を生成するための光信号検出器と、
1つまたは複数の制御信号に応答して、前記電気信号のより高次の光分散および/または光透過率のリップル効果を補償するための適応電子分散補償器(EDC)と、
前記EDCからの電気信号を検出し、かつ、前記受信した信号の品質を表す品質信号を生成するための電気信号検出器と、
前記品質信号に応答して、前記ODCによる1次分散補償を制御するための前記第1の制御信号を生成し、かつ、前記EDCによるより高次の分散補償および/または透過率のリップルを制御するための前記1つまたは複数の制御信号を生成し、それにより前記受信した光信号の全分散を小さくするための制御器と
を備えた分散補償器。
【請求項2】
前記受信した光信号が複数の波長チャネルを有し、前記分散補償器が、前記ODCと光信号検出器の間に接続されたデマルチプレクサをさらに備え、前記光信号検出器が、複数のODC補償波長チャネルのうちの1つを前記ODCから受け取る、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項3】
前記EDCが同じく若干の1次分散を補償する、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項4】
前記品質信号が、誤り検出回路または誤り修正回路によって計算されるビット誤り率に関連する、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項5】
前記電気信号検出器が、
a.前記EDCからの前記電気信号中のビット誤り率を検出するための誤り検出回路または誤り修正回路と、
b.前記EDCからの前記電気信号中のアイ開口を検出するためのアイ・モニタ回路と、
c.前記EDCからの前記電気信号中の平均二乗誤差を検出するための平均二乗誤差検出器と、
d.前記EDCからの前記電気信号の電気スペクトル中の異常を検出するための異常電気信号検出器と
を含む信号検出器のグループから選択される検出器である、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項6】
前記ODCが、
(a)サンプル・チャープ・ファイバ・ブラッグ回折格子と、
(b)虚像位相アレイと、
(c)Gires−Tournoisエタロンと、
(d)リング共振器と、
(e)導波路回折格子と、
(f)マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)と、
(g)変形可能ミラーと組み合わせた回折格子と
を含むグループから選択される、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項7】
前記EDCが、
(a)復調電気信号の品質を検出するためのアイ信号モニタ回路を使用した適応多重タップ・フィードフォワード・イコライザと、
(b)復調電気信号の品質を検出するための決定フィードバック回路を使用した適応フィードフォワード・イコライザと、
(c)復調電気信号の品質を検出するための順方向誤り修正(FEC)回路からのフィードバックを使用した多重閾値等化と、
(d)最尤シーケンス推定器と
を含むグループから選択される、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項8】
光通信システムの受信機の一部である、請求項1に記載の分散補償器。
【請求項9】
第1の制御信号に応答して、受信した光信号中の1次ひずみを補償するための狭帯域可変符号間干渉(ISI)光イコライザ(OEQ)と、
前記OEQにより補償された受信光信号を検出し、かつ、電気信号を生成するための光信号検出器と、
第2の制御信号に応答して、前記電気信号を等化し、それにより前記受信した光信号中のより高次のひずみを補償するための適応ISI電子イコライザ(EEQ)と、
前記EEQからの電気信号を検出し、かつ、受信した信号の品質を表す品質信号を生成するための電気信号検出器と、
前記品質信号に応答して、前記OEQ内で1次ひずみ補償を制御するための前記第1の制御信号を生成し、かつ、前記EEQ内でより高次のひずみ補償を制御するための前記第2の制御信号を生成し、それにより前記受信した光信号の全ひずみを小さくするための制御器と
を備えた符号間干渉(ISI)軽減器。
【請求項10】
光信号分散補償を提供する方法であって、
受信した光信号中の1次分散を主として補償する可変光分散補償器(ODC)を使用する工程と、
補償受信光信号を検出し、かつ、検出した補償受信光信号から電気信号を生成する工程と、
前記電気信号のより高次の光分散および/または光透過率のリップル効果を補償する適応電子分散補償器(EDC)を使用する工程と、
前記EDCからの電気信号を検出する工程であって、前記受信した信号の品質を表す品質信号を生成するための工程と、
前記品質信号に応答して前記ODCによる1次分散補償を制御し、かつ、前記EDCによるより高次の分散補償および/または透過率のリップルを制御する工程であって、それにより前記受信した光信号中の全分散が小さくなる工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−94500(P2006−94500A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271257(P2005−271257)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(596092698)ルーセント テクノロジーズ インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】