説明

可変厚さの多層物品

可塑性樹脂の多層充填物の圧縮成形で製造される、軸対称性でない多層物品であって、上記物品は、圧縮前に鋳型中の充填物の中心となる点に対応する供給中心を備えており、流れの長さである、上記供給中心と上記物品の端部の間の距離が一定でないものにおいて、与えられた流れの長さに対して、該流れの長さが大きいほど、この流れの長さに沿う部分の平均厚さが小さく、与えられた流れの長さに対して、該流れの長さが小さいほど、この流れの長さに沿う部分の平均厚さが大きい、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融された熱可塑性樹脂の多層充填により製造される、軸対称性のない多層物品に関する。本発明は、また、これらの物品に関して使用される充填方法に関する。
【0002】
本発明は、その内容が本出願に全て包含されている国際出願PCT/IB2007/053573に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1〜6には、多層物品及び圧縮成形による多層物品の製造のための手段または技術が記載されている。これらの手段は、鋳型の中に溶融された熱可塑性樹脂の多層充填物を圧縮するためのものである。上記充填物の圧縮により、それ自身も多層構造を有する物品が製造される。これらの手段により得られる物品は、特に物品の厚さの中に得られる多層構造に起因する有利な特性を有する。すなわち、これらの物品は気体、臭いまたは様々の化学物質の透過性を低下させることができるのである。
【0004】
しかしながら、従来の技術文献に記載された手段は、軸対称性を有する、いわゆる軸対称物体を形成する多層物品を製造するために使用できるだけである。これらの物品は、全方向に同一の流動長さを有している。多くの物品は軸対称性を有しておらず、その結果、以下に記載する従来技術によっては製造できないものであった。
【0005】
図1および図2は、圧縮成形によるその製造が従来技術によって記載されている多層物品の説明図である。図1は多層物品の平面図を示し、図2はその断面図を示す。多層物品1は、圧縮前に鋳型中の充填物の中心となる点に対応する供給中心2を備えている。従来技術の物品の場合、点2は物品1と対称軸とが交差する点に対応する。点2はまた、流れの中心、すなわち圧縮中に材料がその周囲を流れる点でもある。物品の端部3は流れの最長距離に対応する。多層構造は、そこを超えると物品の厚さが単層から形成されるのみとなる限界4を有する。輪郭4により物品の単層部6と多層部5が分けられる。従来技術の物品の場合、輪郭3と4の間の距離は、一定である。一般的に、単層のみを有する部分6を減少させることが望ましい。
【0006】
図2は物品の断面図を示す。多層構造は、流れの中心から端部3へと広がる物品の部分を形成する。物品が軸対称物体を形成するため、流れは点2の周りの全方向に同一の流れである。
【0007】
図3は公知の手段により製造された軸対称でない物品1を示す。多層構造の半径方向への広がりは、点2の周りの全ての方向には同一でない流れによって変化している。多層構造は、そこを超えると物品の厚さが単層から形成されるのみとなる限界4を有する。輪郭4により物品の単層部6と多層部5が分けられる。輪郭3と4の間の距離は、一定でない。したがって、物品1の中の多層構造の分配は最適なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4876052号
【特許文献2】特許2098415号
【特許文献3】特許国際公開2005087473号
【特許文献4】特許国際公開2005084904号
【特許文献5】特許国際公開2005084903号
【特許文献6】特許国際公開2005084902号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、多層充填物の圧縮成形によって製造される軸対称でない多層物品、及びその製造手段に関する。これらの物品は、例えば楕円管のエンドピース、楕円形ストッパー、または長方形の包装用部品といったものである。本発明は、特に物品の端部への多層構造のより良い分配を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は軸対称物体ではない多層物品の製造に関し、上記物品は溶融された熱可塑性樹脂の多層充填物を圧縮成形することで製造される。
【0011】
本発明は、樹脂の多層充填物の圧縮により成形される、軸対称でない物品に関する。この物品は、厚さが一定でないにもかかわらず、物品中の多層構造の最適な分配を行うことができるという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術の多層物品の説明図であり、多層物品の平面図を示す。
【図2】従来技術の多層物品の説明図であり、多層物品の断面図を示す。
【図3】従来技術の多層物品の説明図であり、公知の手段により製造された軸対称でない多層物品を示す。
【図4】本発明の第一の実施形態を示す図であり、輪郭により区切られた、薄い楕円形のシェルから形成される物品を示す。
【図5】角度位置θの関数として図4の物品の厚さを示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態を示す図であり、輪郭で区切られるシェルを形成する物品を示す。
【図7】角度位置θの関数として図6の物品の厚さを示す図である。
【図8】本発明の第三の実施形態を示す図であり、輪郭で区切られるシェルを形成し、ネックを備える管のショルダーの平面図を示す。
【図9】図8の断面Cに沿った断面図である。
【図10】本発明の第四の実施形態を示す図であり、対称軸を有さず、オリフィスを備える長方形のシェルを形成する物品の平面図を示す。
【図11】図10の断面Cに沿った断面図である。
【図12】本発明の第五の実施形態を示す図であり、管のショルダーの平面図を示す。
【図13】図12の断面Cに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一の実施形態を図4及び図5で説明する。図4は、輪郭3により区切られた、薄い楕円形のシェルから形成される物品1を示す。この物品は鋳型の空洞に入れられた多層の充填物の圧縮により製造される。充填物は流れの中心を示す点2上を中心とする。物品1の厚さの輪郭によって多層の流れが修正され、その結果、物品の中の多層構造5のより良い分配が行われる。単層構造6から多層構造5を区切る輪郭4は、物品の外面を形成する輪郭3から一定の距離にある。物品の中の多層構造の制御された分配は、厚さの輪郭のおかげで得られる。
【0014】
物品1の厚さの輪郭は、図5に示されている。図5は角度位置θの関数として物品の厚さを示しており、角度θは図4に示されている。特に、点2と端部3の間の曲線の長さが小さいとき、物品1の厚さがより大きいことが分かる。その逆も同じである。物品1の厚さの輪郭と、流れの中心2と物品の端部3とを結ぶ距離の間にある関係が存在する。角度θがπ/2または3π/2に等しいとき、点2と端部3との間の曲線の長さは最短であるのに対して、厚さは最大である。逆に、角度θが0またはπに等しいとき、点2と端部3との間の曲線の長さは最長であるのに対して、厚さは最小である。
【0015】
本発明の第二の実施形態を図6及び図7で説明する。図6は輪郭3で区切られるシェルを形成する物品1を示す。シェルは軸対称ではない。重心2と輪郭3との間の距離は一定ではない。物品の製造中、多層の充填物は重心上を中心とされ、それは流れの中心2でもある。物品の厚さの輪郭は図7に示される。厚さは図6に示す角度位置θに依存する。点2と物品の外面3とを結ぶ曲線の距離(流れの長さ)が大きいほど物品の厚さは小さい。逆も同じである。物品の厚さの輪郭が多層構造の最適な分配を可能にする。多層構造の限界により形成される輪郭4と端部3との間の距離は、物品の全周に亘って一定である。
【0016】
図8はネック7を備える管のショルダー1を示す。断面Cに沿ったこのショルダーの切断面を図9に示す。図9はショルダーの厚さが一定でないことを示す。この厚さの輪郭が多層構造の最適な分配を可能とする。多層構造の限界4とショルダーの外面3との距離が全周に亘って一定であることが分かる。
【0017】
図9に示すように、物品中の位置により厚さは変化している。したがって、ショルダーのネックは全周に亘って一定厚さであるのに対して、ショルダーの厚さは変化している。図8及び図9に示されるショルダーは、多層構造が物品全体に均一に分配されており、この多層構造の制御された広がりにより、物品の端部3にスカート状の管を溶接することを可能としている点に特に注意すべきである。
【0018】
図10及び図11は本発明の他の実施形態を示す。物品1は、液体の製品を保持するための容器のネック部を示す。この容器はネック部1と、ネック部1の端部3に溶接される管本体、及び容器が閉じられる際にオリフィス7の封止を可能にする開閉装置で構成される。図10は物品1の平面図を示す。物品1は対称軸を有しておらず、オリフィスを備える長方形のシェルを形成している。物品1の厚さの輪郭は、物品1の面Cに沿った断面図である図11に示されている。
【0019】
最後の実施形態を図12及び図13に示す。図12は管のショルダー1の平面図を示す。その厚さの輪郭は、面Cに沿った断面図である図13に示されている。このショルダーは場所によって厚さが増加しており、この厚さの変化によりある種の半径方向リブを形成するという明確な特徴を有している。この厚さは、ショルダーの短軸に沿って、すなわち流れの中心2と端部3とを結ぶ曲線の長さが最小と成る位置で、最大となる。
【0020】
上記の物品の多層構造から大きな多様性が得られる。例えば、実効的な樹脂と保護用の樹脂の組み合わせにより、酸素または臭いに関する物品の不浸透特性を改良することが可能となる。以下に述べる多層構造は包装の分野でしばしば使用されるものであり、特に効果的である。
−PE/接着剤/EVOH/接着剤/PE
−PP/接着剤/EVOH/接着剤/PP
−PET/PET+脱酸素剤/接着剤/EVOH/接着剤/PET
ここで、
−PE:ポリエチレン
−PP:ポリプロピレン
−PET:ポリエチレンテレフタレート
−EVOH:エチレンビニルアルコール
−接着剤:いくつかの樹脂を結合するために使われるポリマー
【0021】
多層充填は軸対称になされることが望ましいが、軸対称でない充填物の製造にも使用することができる。しかしながら、充填物が軸対称でない場合は、鋳型の空洞に関して充填物を角度に応じて案内することが必要である。
【0022】
さらに、本発明は電磁波、特に可視光及び紫外線の伝達に関してバリア効果を発揮する多層構造を得ることを可能にする。これらの場合では、バリア層は、電磁波を吸収する要素で満たされた熱可塑性樹脂で製造される。
【0023】
鋳型の空洞中の充填物の正確な位置決めが、物品の端部まで多層構造を広げるために必要である。充填物は鋳型の中で、通常は、物品の重心に対応する流れの中心をその中心として充填される。バリア層を物品の端部まで広げる必要のない場合は、鋳型の空洞の中の充填物の中心位置が正確でなくても問題はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の多層充填物の圧縮成形で製造される、軸対称性でない多層物品であって、
上記物品は、圧縮前に鋳型中の充填物の中心となる点に対応する供給中心を備えており、
流れの長さである、上記供給中心と上記物品の端部の間の距離が一定でないものにおいて、
与えられた流れの長さに対して、該流れの長さが大きいほど、この流れの長さに沿う部分の平均厚さが小さく、
与えられた流れの長さに対して、該流れの長さが小さいほど、この流れの長さに沿う部分の平均厚さが大きい、
ことを特徴とする多層物品。
【請求項2】
上記多層物品は多層構造が物品中に均一に分配されていることを特徴とする、請求項1に記載の多層物品。
【請求項3】
上記多層物品は楕円の形状である、請求項1または2に記載の多層物品。
【請求項4】
上記多層物品は正方形の形状である、請求項1または2に記載の多層物品。
【請求項5】
上記多層物品は長方形の形状である、請求項1または2に記載の多層物品。
【請求項6】
上記多層物品は管のショルダー状の形状である、請求項1または2に記載の多層物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−537859(P2010−537859A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523612(P2010−523612)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053403
【国際公開番号】WO2009/031066
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(508053821)エイサパック ホールディング ソシエテ アノニム (16)
【Fターム(参考)】