説明

可変容量タービンおよびこれを備えた可変容量ターボチャージャ

【課題】構造の簡略化を図り、部品点数を減少させ、製造コストを抑制し、メンテナンス性を向上させること。
【解決手段】流体入口流路24に、周方向に沿って等ピッチで配置された複数枚のノズル翼31と、前記流体入口流路24の一壁面を形成するとともに、前記ノズル翼31の一側の端面31aが結合される端面32aを備えたノズル台板32と、前記ノズル台板32と対向し前記流体入口流路24の他壁面を形成するとともに、前記ノズル翼31の他側の端部31bを収容する凹所34bが形成された端面34aを備えたバックプレート34と、前記ノズル翼31と結合された前記ノズル台板32を回転軸方向に沿って進退させ、前記流体入口流路24の流路断面積を変化させる駆動手段45とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスタービン過給機、ガスタービン、ガスエキスパンダ等に適用され、タービンホイールへの流体(例えば、排気ガス)の流速を変化させる機能を有する可変容量タービンおよびこれを備えた可変容量ターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タービンロータへのガスの流速を変化させる機能を有する可変容量タービンとしては、駆動リンク機構およびノズル駆動軸を介してノズル翼を回動させることにより、タービンホイールに流入する流体の流路断面積を変化させるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−144615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズル翼を回動させてタービンホイールに流入する流体の流路断面積を変化させるものでは、駆動リンク機構およびノズル駆動軸が必要であるため、構造が複雑で部品点数も多かった。したがって、製造コストの上昇を招くとともに、メンテナンスが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、構造の簡略化を図り、部品点数を減少させることができ、製造コストを抑制することができて、メンテナンス性を向上させることができる可変容量タービンおよびこれを備えた可変容量ターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る可変容量タービンは、回転駆動されるタービンホイールへの流体入口流路の流路断面積を変化させることにより、前記タービンホイールに流入する流体の流速を変化させる可変容量タービンであって、前記流体入口流路に、周方向に沿って等ピッチで配置された複数枚のノズル翼と、前記流体入口流路の一壁面を形成するとともに、前記ノズル翼の一側の端面が結合される端面を備えたノズル台板と、前記ノズル台板と対向し前記流体入口流路の他壁面を形成するとともに、前記ノズル翼の他側の端部を収容する凹所が形成された端面を備えたバックプレートと、前記ノズル翼と結合された前記ノズル台板を回転軸方向に沿って進退させ、前記流体入口流路の流路断面積を変化させる駆動手段とを備えている。
【0007】
本発明に係る可変容量タービンによれば、例えば、図2に示すように、駆動レバー45を周方向に沿って回転操作することにより、ノズル翼31と結合されたノズル台板32を、白抜き矢印の方向に移動させ(バックプレート34に向かって進み出させ)、流体入口流路24の流路断面積を線形的に減少させるようにしている。また、図1に示すように、駆動レバー45を周方向に沿って逆回転操作することにより、ノズル翼31と結合されたノズル台板32を、バックプレート34から遠ざかるように移動させ(バックプレート34から退かせ)、流体入口流路24の流路断面積を線形的に増加させるようにしている。
これにより、構造が複雑で部品点数の多い駆動リンク機構およびノズル駆動軸を不要とすることができる。すなわち、構造の簡略化を図り、部品点数を減少させることができ、製造コストを抑制することができて、メンテナンス性を向上させることができる。
【0008】
上記可変容量タービンにおいて、前記凹所が、前記ノズル翼の他側の端部と嵌め合うように形成されているとさらに好適である。
【0009】
このような可変容量タービンによれば、例えば、図3に示すように、凹所34b内にノズル翼31の他側の端部31b(図1および図2参照)がすっぽりと嵌り込み、流体が、流体入口流路24(図1および図2参照)を通らずに凹所34bを通ってタービンホイール入口23(図1および図2参照)に抜け出てしまう(流入してしまう)ことを防止することができ、流体をタービンホイール入口23にスムーズに導くことができる。
【0010】
上記可変容量タービンにおいて、前記流体入口流路と、前記ノズル台板を収容する空間とは、前記ノズル台板の内周側および/または外周側に配置されたシール部材により、仕切られているとさらに好適である。
【0011】
このような可変容量タービンによれば、例えば、図1および図2に示すピストンリング38,39,47により、流体が、流体入口流路24からノズル台板32を収容する空間Sに抜け出てしまう(流入してしまう)ことを、防止することができ、メンテナンス性を向上させるとともに流体をタービンホイール入口23にスムーズに導くことができる。
【0012】
本発明に係る可変容量ターボチャージャは、上記いずれかの可変容量タービンを具備している。
【0013】
本発明に係る可変容量ターボチャージャによれば、構造が複雑で部品点数の多い駆動リンク機構およびノズル駆動軸を不要とすることができる可変容量タービンを具備しているので、構造の簡略化を図り、部品点数を減少させることができ、製造コストを抑制することができて、メンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る可変容量タービンおよびこれを備えた可変容量ターボチャージャによれば、構造の簡略化を図り、部品点数を減少させることができ、製造コストを抑制することができて、メンテナンス性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る可変容量タービンを具備した可変容量ターボチャージャの要部縦断面図であって、排気ガスの流路を最大限に開いた状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る可変容量タービンを具備した可変容量ターボチャージャの要部縦断面図であって、排気ガスの流路を最大限に閉じた状態を示す図である。
【図3】図2のa−a矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る可変容量タービンの一実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る可変容量タービンを具備した可変容量ターボチャージャの要部縦断面図であって、排気ガスの流路を最大限に開いた状態を示す図、図2は本実施形態に係る可変容量タービンを具備した可変容量ターボチャージャの要部縦断面図であって、排気ガスの流路を最大限に閉じた状態を示す図、図3は図2のa−a矢視断面図である。
【0017】
図1および図2に示すように、可変容量ターボチャージャ10は、可変容量タービン(以下、VG(Variable Geometry)タービンという。)11と、コンプレッサ(図示せず)とを主たる要素として構成されている。
VGタービン11とコンプレッサとは、軸受ハウジング13を介して連結されているとともに、この軸受ハウジング13内には、軸受14に回転支持されたタービンロータ15が挿通されている。
【0018】
コンプレッサは、タービンロータ15の一端側に取り付けられたコンプレッサホイール(図示せず)と、このコンプレッサホイールを囲んで覆うように設けられたコンプレッサケーシング(図示せず)とを主たる要素として構成されている。
一方、VGタービン11は、タービンロータ15の他端側に取り付けられたタービンホイール18と、このタービンホイール18を囲んで覆うように設けられたタービンケーシング(ガス入口ケーシング)19と、タービンホイール18に流入する排気ガス(流体)の流路断面積を変化させる可変ノズル機構20とを主たる要素として構成されている。
【0019】
タービンケーシング19の内側には、タービンロータ15の回転軸心21回りにタービンホイール18の外周を囲むようにスクロール22が形成されている。このスクロール22とタービンホイール入口23とは流体入口流路24により連通されている。また、スクロール22の外周側には概ねスクロール22の接線方向に沿った排気ガス入口(図示せず)が設けられ、タービンロータ15の回転軸心21に沿って排気ガス出口25が設けられている。
【0020】
可変ノズル機構20は、図3に示すような断面視翼形状を呈する複数枚のノズル翼31と、断面視環形状を呈する一本のノズル台板32と、断面視環形状を呈する一本の駆動リング(駆動手段)33と、断面視環形状を呈する一本のバックプレート34とを備えている。
ノズル翼31は、スクロール22の内周側(半径方向内側)に、周方向に沿って等ピッチで配置されており、ノズル翼31の一側(図1および図2において右側)の端面31aは、流体入口流路24の一壁面を形成するノズル台板32の一側(図1および図2において左側)の端面32aにその全体が密着するようにして固定されている。
【0021】
ノズル台板32は、タービンケーシング19と、断面視環形状を呈するとともに、タービンケーシング19の内周側(半径方向内側)に配置される一本のタービンシュラウドリング35と、タービンケーシング19とタービンシュラウドリング35とを結合して、タービンシュラウドリング35をタービンケーシング19に対して固定するガス出口フランジ36とにより形成された空間S内に収容されている。また、タービンケーシング19とタービンシュラウドリング35との間には、平面視環形状を呈する開口37が形成されており、ノズル台板32は、開口37を介して回転軸心21に平行となる方向に進退可能となっている。
【0022】
ノズル台板32の外周面32eには、周方向に沿って二本の周溝38,39が設けられ、回転軸心21に平行となる方向(周方向と直交する方向)に沿って少なくとも一本のキー溝40が設けられている。周溝38,39にはそれぞれ、ピストンリング(シール部材)41,42が嵌め込まれ、キー溝40には、キー43が嵌め込まれている。一方、ノズル台板32の外周面32eと対向するタービンケーシング19の内周面19aには、キー43の外周側を収容して、キー43を回転軸心21に平行となる方向のみに案内(ガイド)する(第1の)案内溝44が設けられており、案内溝44には、キー43の外周側の端部が嵌り込んでいる。
【0023】
また、ノズル台板32の内周側(半径方向内側)には、タービンシュラウドリング35の外周面35aの直径よりもわずかに大きい内径を有する第1の内周面32bと、第1の内周面32bの直径よりも概ね駆動リング33の板厚分だけ大きい内径を有する第2の内周面32cとが形成されている。また、第2の内周面32cには、駆動リング33の外周面に設けられた雄ねじ部33aと螺合する雌ねじ部32dが設けられている。
【0024】
駆動リング33の外周面には、ノズル台板32の第2の内周面32cに形成された雌ねじ部32dと螺合する雄ねじ部33aが形成されているとともに、径方向(回転軸心21と直交する方向)に沿って延びる駆動レバー(操作レバー:駆動手段)45が立設されている。
【0025】
バックプレート34は、ノズル翼31の他側(図1および図2において左側)の端部31bと対向するようにして配置されており、ノズル台板と対向する流体入口流路24の他壁面を形成するバックプレート34の一側(図1および図2において右側)の端面34aには、ノズル翼31の他側の端部31bを収容する凹所34bが、周方向に沿って等ピッチで形成されている。また、凹所34bは、平面視翼形状を呈しており、図3に示すように、凹所34b内にノズル翼31の他側の端部31bがすっぽりと嵌り込むようになっている。
【0026】
ノズル台板32の第1の内周面32bと対向するタービンシュラウドリング35の外周面35aには、周方向に沿って一本の周溝46が設けられており、周溝46には、ピストンリング(シール部材)47が嵌め込まれている。また、ノズル台板32の第1の内周面32bと対向するタービンシュラウドリング35の外周面35aには、駆動リング33方向を周方向に案内(ガイド)する(第2の)案内溝48が設けられており、案内溝48には、駆動リング33の内周側の端部が嵌り込んでいる。
【0027】
ガス出口フランジ36には、駆動レバー45が貫通するとともに、駆動レバー45の周方向への移動を許容する貫通穴49が、周方向に沿って設けられている。また、タービンシュラウドリング35の端面と接するガス出口フランジ36の端面36aの外周部は、案内溝48に収容された駆動リンク33の回転軸方向(回転軸心21に平行となる方向)への移動を制限(阻止)するストッパとしての役目を果たしている。
【0028】
そして、このような構成を有する可変ノズル機構20では、図示しないリンク機構および駆動装置を介して、または人の手で駆動レバー45を周方向に沿って回転操作することにより、図2に示すように、ノズル翼31と結合されたノズル台板32が、白抜き矢印の方向に移動して(バックプレート34に向かって進み出て)、流体入口流路24の流路断面積を線形的に減少させるようになっている。一方、図示しないリンク機構および駆動装置を介して、または人の手で駆動レバー45を周方向に沿って逆回転操作することにより、図1に示すように、ノズル翼31と結合されたノズル台板32が、バックプレート34から遠ざかるように移動して(バックプレート34から退いて)、流体入口流路24の流路断面積を線形的に増加させるようになっている。
【0029】
また、可変容量ターボチャージャ10の駆動流体としての排気ガスは、排気ガス入口からスクロール22に入り、スクロール22および流体入口流路24を通って、スクロール22の内周側に周方向に等ピッチで設けられたノズル翼31およびノズル台板32によってタービンホイール18に流入する流量(流速)が調整されてタービンホイール18に流入し、タービンホイール18を回転駆動した後、タービンホイール18の出口部空間25を通って排気ガス出口から排出される。一方、コンプレッサホイールは、タービンホイール18によって回転駆動され、例えば、空気等の圧送に用いられる。
【0030】
本実施形態に係るVGタービン11および本実施形態に係るVGタービン11を具備した可変容量ターボチャージャ10によれば、駆動レバー45を周方向に沿って回転操作することにより、図2に示すように、ノズル翼31と結合されたノズル台板32を、白抜き矢印の方向に移動させ(バックプレート34に向かって進み出させ)、流体入口流路24の流路断面積を線形的に減少させるようにしている。また、駆動レバー45を周方向に沿って他側(前記一側と反対の側)に操作することにより、図1に示すように、ノズル翼31と結合されたノズル台板32を、バックプレート34から遠ざかるように移動させ(バックプレート34から退かせ)、流体入口流路24の流路断面積を線形的に増加させるようにしている。
これにより、構造が複雑で部品点数の多い駆動リンク機構およびノズル駆動軸を不要とすることができる。すなわち、構造の簡略化を図り、部品点数を減少させることができ、製造コストを抑制することができて、メンテナンス性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るVGタービン11および本実施形態に係るVGタービン11を具備した可変容量ターボチャージャ10によれば、凹所34bが、ノズル翼31の他側の端部31bと嵌め合うように、すなわち、凹所34b内にノズル翼31の他側の端部31bがすっぽりと嵌り込むように形成されているので、排気ガスが、流体入口流路24を通らずに凹所34bを通ってタービンホイール入口23に抜け出てしまう(流入してしまう)ことを防止することができ、排気ガスをタービンホイール入口23にスムーズに導くことができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係るVGタービン11および本実施形態に係るVGタービン11を具備した可変容量ターボチャージャ10によれば、流体入口流路24と、ノズル台板32を収容する空間Sとは、ノズル台板32の内周側および外周側に配置されたピストンリング38,39,47により、仕切られているので、排気ガスが、流体入口流路24からノズル台板32を収容する空間Sに抜け出てしまう(流入してしまう)ことを防止することができ、メンテナンス性を向上させるとともに排気ガスをタービンホイール入口23にスムーズに導くことができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜必要に応じて変形して、あるいは変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 可変容量ターボチャージャ
11 VGタービン(可変容量タービン)
24 流体入口流路
31 ノズル翼
31a 端面
31b 端部
32 ノズル台板
32a 端面
33 駆動リング(駆動手段)
34 バックプレート
34a 端面
34b 凹所
38 ピストンリング(シール部材)
39 ピストンリング(シール部材)
45 駆動レバー(駆動手段)
47 ピストンリング(シール部材)
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるタービンホイールへの流体入口流路の流路断面積を変化させることにより、前記タービンホイールに流入する流体の流速を変化させる可変容量タービンであって、
前記流体入口流路に、周方向に沿って等ピッチで配置された複数枚のノズル翼と、
前記流体入口流路の一壁面を形成するとともに、前記ノズル翼の一側の端面が結合される端面を備えたノズル台板と、
前記ノズル台板と対向し前記流体入口流路の他壁面を形成するとともに、前記ノズル翼の他側の端部を収容する凹所が形成された端面を備えたバックプレートと、
前記ノズル翼と結合された前記ノズル台板を回転軸方向に沿って進退させ、前記流体入口流路の流路断面積を変化させる駆動手段とを備えていることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項2】
前記凹所が、前記ノズル翼の他側の端部と嵌め合うように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量タービン。
【請求項3】
前記流体入口流路と、前記ノズル台板を収容する空間とは、前記ノズル台板の内周側および/または外周側に配置されたシール部材により、仕切られていることを特徴とする請求項1または2に記載の可変容量タービン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された可変容量タービンを具備していることを特徴とする可変容量ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231740(P2011−231740A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105201(P2010−105201)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】