説明

可食性フィルムの製造方法

本発明は、成分が実質的に均一に分布している、可食性フィルムの製造方法を提供するものであり、この方法は、水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液と、水に対して活性な成分および溶媒を含むスラリー型の混合物とを組み合わせる段階;該ポリマー溶液および該スラリー型の混合物を、約10分間以下の間混合する段階;該混合された溶液およびスラリー型の混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および該フィルムを乾燥して、該水および溶媒を蒸発させる段階を含む。本発明は、この方法により作成されたフィルムをも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迅速に溶解するフィルムおよびその製造方法に関する。該フィルムは、また該フィルム全体に亘り均一に供給された、製薬的に活性な成分をも含むことができる。本発明の方法には、フィルム-形成組成物を迅速に組み合わせ、かつ供給するための装置が組込まれ、従って該製薬的に活性な成分は、水を主体とする溶媒との制限された接触を持つに過ぎない。本発明は、例えば結晶化、アモルファス化、溶解、加水分解、膨潤および/または崩壊等による、該製薬的に活性な成分の構造変化を起こす傾向を、減じまたは排除する。
【背景技術】
【0002】
活性成分、例えば薬物または医薬は、正確かつ不変の服薬を可能とすべく、錠剤形状で調製することができる。しかし、薬物を調製し、また供給するこの形状は、取扱い得るサイズを得るために添加する必要のある添加剤の量が大量であり、より大きな薬物の形状は、付随的な保存スペースを必要とし、また供給が、不正確となる傾向を持つ、該錠剤の計数を含むこと等を包含する多くの欠点を持つ。更に、人口の28%にも及ぶ多くの人々が、錠剤嚥下困難に直面している。錠剤は、この嚥下困難を克服するために、小片に破壊しあるいは更に圧潰することができるが、これは、多くの錠剤またはピル形状の薬物にとって適当な解決策ではない。例えば、単独でまたは食物との混合物としての、摂取を容易にするための、該錠剤またはピル形状の薬物の圧潰または破壊は、その制御放出特性をも破壊してしまう恐れがある。
【0003】
錠剤およびピルの代替品として、活性成分、例えば薬物、医薬等を担持するのに、フィルムを使用することができる。しかし、歴史的に、フィルムおよび該フィルムから薬物放出系を製造する方法は、フィルムの実際の使用を可能としない、多くの好ましからぬ特性を持っていた。
【0004】
製薬的に活性な成分を組込んだフィルムは、期限切れのフックス(Fuchs)等による米国特許第4,136,145号(フックス(Fuchs)特許)に記載されている。これらフィルムは、シートに成形され、乾燥され、次いで各用量に裁断される。該フック特許の開示は、均一なフィルムの製造を願い出ており、このフィルムは、水溶性ポリマー、界面活性剤、香料、甘味料、可塑剤および薬物の組合せを含むものである。これらの申し立てによる可撓性フィルムは、経口、局所または腸溶性薬剤としての用途において有用であるものとして記載されている。フック特許により記載された特定の用途の例は、口、直腸、膣、鼻および耳の領域を包含する、身体の粘膜領域への該フィルムの適用を含んでいる。しかし、該フック特許に記載された方法に従って作成されたフィルムを検討したところ、このようなフィルムが、粒子の凝集または凝塊形成、即ち自己-凝集性という問題をはらんでいることが明らかとなり、この問題は、該フィルムを本来的に不均一なものとしている。
【0005】
フィルム製品を製造する幾つかの方法は、上記成分全てを一緒に混合し、次いで該混合物をフィルムに供給または押出しする工程を含んでいる。しかし、水を主体とする溶媒と反応する、該製薬的に活性な成分またはその他の成分は、水を主体とするフィルム形成溶液と接触した場合に、これらの成分は、例えば結晶化またはアモルファス化等の、望ましからぬ方法で反応する恐れがある。このことは、特に水に対して活性な成分が、長期間に亘り該水を主体とする溶液と接触状態にある場合に当てはまる。該成分が結晶化しまたは一緒に凝集する場合、得られる混合物は、均一性の低いものとなる。というのは、より高い用量の該一緒に寄り集められた成分が、該混合物の様々な領域において沈降し、またフィルムの調製を一層困難なものとするからである。
【0006】
大用量が含まれている場合、該フィルムの寸法におけるほんの僅かな変動であっても、フィルム当たりに存在する活性成分の量における大きな差に導く可能性がある。フィルムのシート(「ウエブ」とも呼ばれる)が、活性成分のより低い用量を持つ領域を含む場合、該フィルムの部分が、実質的に如何なる活性成分をも含まない可能性がある。フィルムのシートは、通常単位投薬量に裁断されるので、幾つかの用量、特に該シートの中央部分における用量が、結果的に推奨される治療のための活性成分を含まないか、あるいは不十分な量でのみ該活性成分を含む恐れがある。該裁断フィルムにおける活性成分の量に関する高度の正確性を達成できないことは、患者にとって有害である可能性がある。そのために、該フック特許等の方法によって製造された投与剤形は、そこにおける活性成分の変動に係る、U.S.フェデラルドラッグアドミニストレーション[U.S. Federal Drug Administration: (FDA)]等の政府または取締機関の厳密な基準を満たさない恐れがある。一般的には、様々な世界的取締当局によって要求されているように、投与剤形は、存在する活性成分の量において、10%を越えて変動してはならない。フィルムを基本とする投薬単位に適用する場合、このことは、事実上、該フィルムにおける均一性が存在すべきであることを、要求している。
【0007】
追加の成分を添加することなしに、組成において実質的に均一なフィルムを調製する利益は、多数ある。最小量の材料の使用による明らかな経費-節減に加えて、製薬的に許容されるフィルムが極めて多数存在する。従って、殆どのフィルムは、「許容し得ない」ものとは見做されず、従って無駄となる活性成分の量が減ることになる。更に、活性成分のより均一な分布のために、全体として該混合物に与えるべき活性成分の量を減らすことができる。活性成分の不均一な分布が存在する場合、より多くの活性成分を該混合物に添加して、不均一なこれら部分につき補償する必要がある。
【0008】
ウレタン、エポキシ、シリコーン等を、封止、注型封入および結合するために混合し、かつ供給するための装置は、公知である。これら装置は、混合により化学的反応を迅速に促進し、次いで該反応の進行に伴う該材料の供給を行うための手段として与えられる。これらの場合において、該反応した混合物が該混合用の区画に余りに長期に亘り留まる場合には、該混合物は硬化し、その供給を、不可能ではないにしても困難にする。しかし、現在までのところ、これらの装置は、化学反応を回避する目的で、迅速に混合し、また供給するために利用されていない。
【0009】
従って、最小数の材料または成分を使用し、また該様々な成分を迅速に混合し、かつ供給し、また乾燥し、上記水に対して活性な成分と、上記水を主体とする溶液との接触時間の長さを減じる、フィルム製品用の組成物の製法および該組成物に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様においては、成分の実質的に均一な分布を持つ、可食性フィルムの製法が提供され、該方法は、以下の各段階を含む:連続的に、水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液、および水に対して活性な成分と溶媒との混合物を、インラインミキサー内に秤取る段階、ここで、該ポリマー溶液および該混合物の該ミキサー内における滞留時間は、約1秒〜約5分間またはそれ未満であり;連続的に、該混合された溶液および混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および該フィルムを乾燥して、該溶媒を蒸発させる段階。
【0011】
別の態様においては、可食性フィルム製造中の、水に対して活性な成分と、水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液との間の相互作用を減じる方法が提供され、該方法は、以下の各段階を含む:連続的に、水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液、および水に対して活性な成分と溶媒との混合物を、インラインミキサー内に秤取る段階、ここで、該ポリマー溶液および該混合物の滞留時間は、約1秒〜約5分間またはそれ未満であり;連続的に、該混合された溶液および混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および該フィルムを乾燥して、該溶媒を蒸発させる段階。
【0012】
更に別の態様においては、可食性フィルム製造中の、薬剤と水を主体とする溶媒との相互作用を実質的に制限する方法が提供され、該方法は以下の各段階を含む:同時にかつ連続的に、水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液および混合物を、インラインミキサー内に秤取る段階、ここで、該混合物は、薬剤と溶媒とを含み、該ポリマー溶液および該混合物の滞留時間は、約1秒〜約5分間またはそれ未満であり;連続的に、該混合された溶液および混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および該フィルムを乾燥して、該溶媒を蒸発させる段階。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、様々なpHの媒体における、1活性成分の溶解プロフィールをグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的にとって、上記用語「自己-凝集しない均一な不均質性」とは、一種の極性溶媒に加えて、1またはそれ以上の成分から形成された、本発明のフィルムの、例えば不均一な粒子および単一の流れ供給マニホルドの使用等の公知の方法で、フィルムが形成された場合に通常経験するような、該フィルム内での凝集または集塊の発生が実質的に減じられた、即ち凝集または集塊を殆どまたは全く発生しない能力を意味する。本発明において使用する「不均質性」なる用語は、単一の成分、例えばポリマー、並びに成分の組合せ、例えばポリマーと活性薬剤とを組込んだフィルムを含む。「均一な不均質性」なる用語は、フィルムを形成するのに使用される従来の混合および加熱乾燥法において一般的に見られる、凝集または集塊現象が実質的に存在しないことを含む。好ましくは、本発明のフィルムは、粒子の均一な分布、均一な高さ、重さおよび密度を持つ。上記用語「水に対して活性な成分」とは、水の存在下で反応する成分を意味する。幾つかの態様において、「水に対して活性な成分」は、水の存在下で結晶化し得る成分を意味することができ、他の態様においては、これは、水の存在下でアモルファス状態になり得る成分を意味することができる。他の態様において、該水に対して活性な成分は、水の存在下で、例えば溶解、加水分解、膨潤および/または崩壊によって、その構造を変化し得る成分を意味することができる。
【0015】
同様に本明細書において使用する用語「均一性」とは、物質の単位体積当たりの含有率が、該物質全体を通して実質的に同一であることを意味する。例えば、均一なフィルムとは、フィルムの単位体積当たりの含有率が、該フィルム全体に亘り実質的に同一であることを意味する。
【0016】
更に、本発明のフィルムでは、水を主体とするポリマー系において使用される、公知の乾燥法の使用によっては与えられない、より一層均一な厚みおよび均一な含有率をもたらす、特定の乾燥法を取入れることができる。均一な厚みの欠如は、与えられたフィルムの領域全体に渡る、成分分布の均一性に悪影響を及ぼす。
【0017】
本発明のフィルム製品は、場合により当分野において公知の他のフィラー並びに活性成分を含む、適切に選択されたポリマーおよび極性溶媒の組合せによって作られる。幾つかの態様においては、不揮発性溶媒または低揮発性溶媒を使用することができる。これらのフィルムは、選択された流し込み成形、堆積または押出し法、並びに制御された乾燥法の利用により、該フィルム内に、該成分の自己-凝集しない均一な不均一性を与える。制御された乾燥法の例は、マグーン(Magoon)の米国特許第4,631,837号(マグーン特許)に記載されている装置(該特許を参考としてここに組入れる)の使用、並びに本出願人による米国特許第7,425,292号および同第7,357,891号(これら特許の内容全体を、付随的に、参考としてここに組入れる)に示されている他の乾燥方法を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明による生成物および方法は、上記フィルム内の各成分の自己-凝集を実質的に減じたフィルムを提供するために、該フィルム製造の様々な段階における相互作用に頼っている。具体的には、該水に対して活性な成分と、該フィルム-形成懸濁液中の該水を主体とする材料とが接触している期間の短縮は、均一性および制御された処理の維持に役立つ。様々な成分の添加、これらの混合、および該混合物を極めて迅速に供給する装置の使用は、より均一なフィルム組成を与える。
【0019】
望ましくは、本発明により調製されたフィルムにおいては、高レベルの均一性が見られる。具体的には、該フィルム組成物全体に亘り、単位体積当たりの粒子含有率における変動は、約10%未満である。より望ましくは、該フィルム組成物全体に亘り、単位体積当たりの粒子含有率における変動は、5%未満であり、また最も好ましくは該変動は、1%未満である。
【0020】
他のフィルム形成法を、本発明の方法と組合せて利用することができる。該他のフィルム形成法は、ドクターロールの使用を含み、このデバイスは、該フィルムの表面と、その周辺部においてまたは穏やかに接触し、また制御可能な様式で、該フィルム表面に該粒子を配置して、該装置内の混合された懸濁液を平坦化する。ドクターロールの使用は随意であるが、好ましい方法は、該フィルムを製造しつつ、「オン」位置においてドクターロールを使用するものである。
【0021】
更に、本発明のフィルムは、温度に対して敏感な粒子、例えば揮発性の香料、または低い崩壊温度を持つ薬物等を含むことができる。このような場合において、該乾燥温度を下げ、一方乾燥時間を延長して、本発明の均一なフィルムを十分に乾燥することができる。更に、下部からの乾燥も、上部からの乾燥と比較して、より低い内部フィルム温度をもたらす傾向がある。下部からの乾燥において、蒸発する蒸気は、上部からの乾燥と比較して、一層容易に熱を該フィルムから運び去り、これは該内部フィルム温度を下げる。このようなより低い内部フィルム温度は、しばしば、薬物の低い分解性および幾つかの揮発性成分、例えば香料等の低い喪失量をもたらす。
【0022】
更に、該フィルム-形成組成物またはマトリックスをフィルムに流し込み成形した後に、粒子または粒状物質を、該組成物またはマトリックスに添加することができる。例えば、粒子は、該フィルムを乾燥する前に、該フィルムに添加することができる。粒子は、制御可能な様式で、該フィルムに添加し、また任意の適当な技術により該フィルム上に配置することができる。このような適当な技術は、上記のようなドクターロールの使用、該フィルム表面上に該粒子を配置するための追加のロールの使用、該フィルム表面への該粒子の散布等を包含する。該粒子は、対向するフィルム表面、即ち上部および/または下部フィルム表面の一方または両方に配置することができる。望ましくは、該粒子は、確保可能な状態で、例えば該フィルム内に埋設するように、該フィルム上に配置される。その上、このような粒子は、該フィルム内に完全に包み込まれまたは完全に埋設されてないことが望ましく、例えば該粒子が部分的に埋設または部分的に包み込まれている場合におけるように、該フィルムの表面に露出した状態を維持する。
【0023】
該粒子は、任意の有用な感覚的刺激剤、化粧剤、医薬、またはこれらの組合せであり得る。望ましくは、該医薬は、風味の隠蔽された、または制御放出型の薬剤である。有用な感覚的刺激剤は、香料および甘味料を含む。有用な化粧剤は、呼気清涼化または充血除去剤、例えばメントール結晶を含むメントールを包含する。
【0024】
該フィルムの厚みの監視および制御も、均一な厚みを持つフィルムを提供することにより、均一なフィルムの製造に寄与する。該フィルムの厚みは、ベータゲージ(Beta Gauges)等のゲージを用いて監視することができる。一つのゲージを、上記乾燥装置、即ち乾燥オーブンまたはトンネル乾燥器の端部においてもう一つのゲージと連結して、被覆装置における開口を制御および調節するために、フィードバックループを介して連絡することができ、これはフィルム厚の均一な調節をもたらす。
【0025】
該フィルム製品は、一般に、適切に選択されたポリマーおよび極性溶媒、並びに所望による任意の活性成分またはフィラーを組み合わせ、フィルム形成ポリマー溶液を生成することにより製造される。この溶液は、該溶媒とポリマーとの水性溶液であり得る。該粒子を篩別して、フィルムの形成前に、粒径を実質的に均一なものとする。望ましくは、この組み合わせの溶媒含有率は、該成分の組合せ全体の少なくとも約30質量%である。該材料は、次いで望ましくはロール塗布法によりフィルムに形成され、次いで望ましくは迅速かつ制御された乾燥法により乾燥されて、該フィルムの単位体積当たりの含有率の均一性、より具体的には自己-凝集のない均一な不均質性を維持する。この得られる乾燥されたフィルムは、望ましくは約10質量%未満の溶媒、より望ましくは約8質量%未満の溶媒、より一層望ましくは約6質量%未満の溶媒および最も望ましくは約2質量%未満の溶媒を含むであろう。該溶媒は、水、例えばエタノール、イソプロパノール、アセトン、塩化メチレン等を含むが、これらに限定されない極性有機溶媒、またはこれらの組合せであり得る。
【0026】
該固体粒子対該液状材料の比は、該フィルムにおける、単位体積当たりの含有率の均一性維持を助けるのに十分に高い値に維持すべきである。この固体対液状材料の比が、あまりに低い場合、均一性が影響を受ける恐れがある。該固体部分(%固体)が、該液状部分(%液体)に比して著しく低い状況においては、該固体粒子が自由に運動するためのより広い空間が、該溶液中に存在し、また単位体積当たりの含有率の均一性に乏しいスラリーをもたらす恐れがある。これとは対照的に、該固体粒子対液状材料の比が、十分に高い場合には、該粒子はより少ない自由に運動できる空間を有し、また該スラリーは、単位体積当たりの含有率の均一性に関して自動調節する傾向を持つ。他の投与剤形、例えば錠剤およびカプセル剤に関連して、該断片の体積比は固定される。しかし、ここに記載するような湿潤した剤形に関しては、成分の潜在的な運動および乾燥段階中の溶媒の蒸発のために、その重量は固定されない。従って、十分に高い固体粒子対液状材料の比を維持することが、均一なスラリーまたは混合物を維持する上で好ましい。好ましくは、該フィルムは、約99:1〜約75:25なる範囲の、固体対液状材料の比を持つであろう。最も好ましくは、該フィルムは、少なくとも98:2なる固体対液状材料の比を持つであろう。
フィルム-形成ポリマー
【0027】
該ポリマーは、水溶性、水膨潤性、水-不溶性、または1またはそれ以上の水溶性、水膨潤性または水-不溶性ポリマーの何れかの組合せであり得る。該ポリマーは、セルロースまたはセルロース誘導体を含むことができる。有用な水溶性ポリマーの具体例は、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ザンタンガム、トラガカンスゴム、グアーガム、アカシアガム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hypromellose)、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。有用な水-不溶性ポリマーの具体例は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0028】
ここで使用する慣用句「水溶性ポリマー」およびその変形は、少なくとも部分的に水に溶解性の、および望ましくは完全にまたは支配的に水に対して溶解性の、または水を吸収するポリマーを意味する。水を吸収するポリマーは、しばしば水膨潤性ポリマーであるといわれる。本発明に関連して有用な材料は、室温および他の温度、例えば室温を越える温度にて水溶性または水膨潤性であり得る。更に、該材料は、大気圧未満の圧力の下で、水溶性または水膨潤性であり得る。望ましくは、該水溶性ポリマーは、少なくとも20質量%なる水の取込み率を有する、水溶性または水膨潤性ポリマーである。25質量%またはこれを越える水の取込み率を有する水膨潤性ポリマーも有用である。このような水溶性ポリマーから作成された、本発明のフィルムまたは投与剤形は、望ましくは体液と接触した際に可溶性であるのに十分に水溶性である。
【0029】
本発明のフィルムに組込むのに有用な他のポリマーは、生分解性のポリマー、コポリマー、ブロックポリマーおよびこれらの組合せを含む。上記基準を満たす公知の有用なポリマーまたはポリマー群としては、特に以下に列挙するものがある:ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサン(polydioxanoes)、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、およびこれらの混合物およびコポリマー。付随的に有用なポリマーは、L-およびD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン酸およびセバシン酸のコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、α-アミノ酸のコポリマー、α-アミノ酸とカプロン酸とのコポリマー、α-ベンジルグルタメートとポリエチレングリコールとのコポリマー、サクシネートとポリ(グリコール)とのコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ-アルカノエートおよびこれらの混合物を含む。2成分および3成分系が意図されている。
【0030】
有用な他の特定のポリマーは、メディソーブ(Medisorb)およびバイオデル(Biodel)なる商標の下で市販されているものを含む。メディソーブなる材料は、デラウエアウイルミントンのデュポン社(Dupont Company)により市販されており、また総称的に「ラクチド/グリコライドコポリマー」として同定されており、「プロパン酸、2-ヒドロキシポリマーとヒドロキシ酢酸」を含む。4種のこのようなポリマーは、338°-347°F(170°-175°C)なる融点範囲を持つ、100%ラクチドであると考えられる、ラクチド/グリコライド100L;437°-455°F(225°-235°C)なる融点範囲を持つ、100%グリコライドであると考えられる、ラクチド/グリコライド100L;338°-347°F(170°-175°C)なる融点範囲を持つ、85%ラクチドおよび15%グリコライドであると考えられる、ラクチド/グリコライド85/15;および338°-347°F(170°-175°C)なる融点範囲を持つ、50%ラクチドおよび50%グリコライドのコポリマーであると考えられる、ラクチド/グリコライド50/50を含む。
【0031】
該バイオデルなる材料は、化学的に異なる、一群の様々なポリ無水物を表す。
【0032】
様々な異なるポリマーを使用することができるが、乾燥前の混合物の所定の粘度をもたらすポリマーを選択することが望ましい。例えば、上記活性成分または他の成分が、選択された溶媒に不溶である場合、より高い粘度を与えるポリマーが、均一性の維持に役立つことから望ましい。他方、該成分が該溶媒に可溶性である場合には、より低い粘度を与えるポリマーが好ましい可能性がある。
【0033】
該ポリマーは、該フィルムの粘度に影響を及ぼす上で重要な役割を演じる。粘度は、エマルション、コロイドまたは懸濁液中の該活性成分の安定性を調節する液体の、一特性である。一般に、該マトリックスの粘度は、約400cps〜約100,000cpsなる範囲、好ましくは約800cps〜約60,000cpsなる範囲、および最も好ましくは約1,000cps〜約40,000cpsなる範囲で変動するであろう。望ましくは、該フィルム-形成マトリックスの粘度は、上記乾燥工程の開始時点において急速に増大するであろう。
【0034】
該粘度は、該マトリックス中の他の成分に依存して、該選択された活性成分に基いて調節することができる。例えば、該成分が該選択された溶媒に不溶である場合、適当な粘度は、該成分が沈降を生じないように選択することができ、ここで該沈降は、得られるフィルムの均一性に悪影響を及ぼすであろう。該粘度は、様々な方法により調節することができる。該フィルムマトリックスの粘度を増大するためには、該ポリマーは、より高い分子量をもつものを選択することができ、あるいは架橋剤、例えばカルシウム、ナトリウムおよびカリウムの塩を添加することができる。該粘度は、また温度を調節することにより、あるいは粘度増加成分を添加することによっても調節することができる。該粘度を高めることのできる、あるいは該エマルション/懸濁液を安定化することのできる成分は、より高分子量のポリマーおよび多糖類およびガムを包含し、これらは、制限なしに、アルギネート、カラギーナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ローカストビーンガム、グアーガム、ザンタンガム、デキストラン、アラビアゴム、ジェランガムおよびこれらの組合せを含む。
【0035】
また、単独で使用した場合に、可撓性のフィルムを得るためには、通常可塑剤を必要とする幾つかのポリマーを、可塑剤の使用なしに組合せ、しかも可撓性フィルムを得ることが可能であることも、観測されている。例えば、組合せて使用する場合、および特にポリエチレンオキサイドと組合せて使用する場合、HPMCおよびHPCは、製造および保存にとって適当な可塑性および弾性を持つ、可撓性で強力なフィルムを与える。可撓性にとっては、付随的な可塑剤またはポリアルコールは必要とされない。
制御放出性フィルム
【0036】
該用語「制御放出」とは、予め選択されたまたは所望の速度にて、活性成分を放出することを意味するものとする。この速度は、用途に依存して変化するであろう。望ましい速度は、迅速または即時的な放出プロフィール並びに遅延、持続または周期的放出を含む。放出パターンの組合せ、例えば活性成分の初期の瞬時的放出、およびこれに伴う低レベルの持続放出等が意図されている。パルス状の薬物放出も意図されている。
【0037】
本発明のフィルムに対して選択された該ポリマーは、また該活性成分の制御された崩壊を可能とするように選択することもできる。これは、該フィルムから経時に伴って放出される活性成分を配合した、実質的に水-不溶性のフィルムを提供することにより実現し得る。これは、様々な異なる可溶性または不溶性のポリマーを配合することにより、実現でき、また同様に生分解性のポリマーを組合せて含めることもできる。あるいはまた、被覆された制御放出性活性粒子を、容易に溶解するフィルムマトリックスに配合して、消費の際に該消化系内で、該活性成分の制御放出特性を実現することも可能である。
【0038】
該活性成分の制御放出をもたらすフィルムは、頬、歯肉、舌下および膣への適用にとって特に適している。本発明のフィルムは、粘膜または粘液が存在する場合には、容易に湿潤し、またこれら領域に付着するその能力のために、特に有用である。
【0039】
規則的な間隔にて多数の単一用量を投与する場合とは逆に、長期間に亘り制御された様式で、活性成分を放出する、薬物の単一用量を投与する利点は、当製薬技術分野において長きに亘り認識されている。長期間に亘り薬物の一定したかつ均一な血中レベルを維持することの、患者および臨床医にとっての利点も、同様に認識されている。様々な持続放出性投与剤形の利点は、周知である。しかし、活性成分の制御放出性を与えるフィルムの製造は、制御放出性錠剤に関して周知のこれら利点に加えて、更に利点を持つ。例えば、薄膜は、不注意による吸引は困難であり、また患者によって承認される可能性が高い。というのは、これらは錠剤の如く飲込む必要がないからである。その上、本発明のフィルムの幾つかの態様は、口腔内および舌に対して接着するように設計されており、これらの場所で、該フィルムは制御可能な様式で溶解する。更に、薄膜は、オキシコンチン等の薬物の誤用に導くという問題を持つ、制御放出性錠剤の如く、粉砕されることはない。
【0040】
本発明において使用される該活性成分は、制御放出形状で、本発明のフィルム組成物に配合することができる。例えば、薬物の粒子を、夫々アクアコート(Aquacoat) ECDおよびユードラジット(Eudragit) E-100等のブランド名の下に市販品として入手できるセルロースまたはポリメタクリレート等のポリマーで被覆することができる。また、薬物溶液を、かかるポリマー材料に吸収させ、本発明のフィルム組成物中に配合することもできる。脂肪およびワックス並びに甘味料および/または香料等の他の成分を、このような制御放出性組成物において使用することも可能である。該活性成分は、該フィルム組成物に配合する前に、風味-隠蔽処理することもできる。
活性成分
【0041】
活性成分を該フィルムに導入する場合、単位面積当たりの該活性成分の量は、該フィルムの均一分布性によって決定される。例えば、該フィルムを個々の投与剤形に裁断する場合、該投与剤形における該活性成分の量は、極めて高い精度にて知ることができる。これは、所定の面積内の該活性成分の量が、該フィルムの他の部分における同一のサイズの面積における活性成分の量と実質的に同等であることから実現される。用量におけるこの精度は、該活性成分が医薬、即ち薬物である場合に、特に有利である。
【0042】
典型的には、活性成分は、水に対して活性なものであり、これは水を主体とする材料の存在において、またはこれらに対して継続的に暴露された際に反応し得る、活性成分を意味する。このような反応は、例えば該成分の結晶化またはアモルファス化を含むことができる。
【0043】
本発明のフィルムに配合し得る該活性成分は、制限なしに、製薬および化粧学的に活性な成分、薬物、医薬、抗原またはアレルゲン、例えばブタクサ花粉、胞子、微生物、種子、口内洗剤の成分、香料、芳香剤、酵素、保存剤、甘味剤、着色剤、香辛料、ビタミンおよびこれらの組合せを含む。
【0044】
広範囲に渡る医薬、生物活性を持つ活性物質および医薬組成物を、本発明の投与剤形中に含めることができる。有用な薬物の例は、ACE-阻害薬、抗-狭心症薬、抗-不整脈薬、抗-喘息薬、抗-コレステロール血症薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗-痙攣薬、抗-鬱薬、抗-糖尿病薬、下痢止め製剤、解毒薬、抗-ヒスタミン薬、抗-高血圧薬、抗炎症薬、抗-高脂血症薬、抗-躁病薬、制吐薬、抗-発作薬、抗-甲状腺製剤、抗-腫瘍約、抗ウイルス剤、アクネ治療薬、アルカロイド、アミノ酸製剤、鎮咳薬、抗-尿酸血症薬、抗ウイルス薬、同化作用製剤、全身性または非-全身性抗感染症薬、抗-新生物薬、抗-パーキンソン病薬、抗-リュウマチ薬、食欲増進剤、生物学的応答調節剤、血液改良剤、骨代謝調節剤、心臓血管作用薬、中枢神経系刺激薬、コリンエステラーゼ阻害剤、避妊薬、充血除去薬、ダイエタリーサプリメント、ドーパミンレセプタアゴニストスト、エンドメトリオーシス治療薬、酵素、勃起不全症治療薬、排卵促進薬、胃腸薬、ホメオパシー治療薬、ホルモン、抗-カルシウム血症および低カルシウム血症治療薬、免疫調節剤、免疫抑制剤、片頭痛治療製剤、動揺病治療薬、筋弛緩剤、肥満症治療薬、骨粗鬆症治療製剤、子宮収縮薬、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神療法薬、呼吸器疾患薬、鎮静剤、禁煙補助薬、交感神経遮断薬、抗-震顫薬、尿路疾患治療薬、血管拡張薬、緩下薬、制酸薬、イオン交換樹脂、解熱薬、食欲抑制剤、去痰薬、抗-不安薬、抗-潰瘍剤、抗-炎症性物質、冠動脈拡張薬、脳血管拡張薬、末梢血管拡張薬、精神作用薬、重に約、抗-高血圧症薬、血管収縮剤、片頭痛治療薬、抗体、トランキライザー、抗精神病薬、抗-腫瘍約物、抗凝血薬、抗-血栓症薬、催眠薬、鎮吐薬、制吐薬、抗-痙攣薬、神経筋治療薬、高血糖および低血糖症薬、甲状腺および抗甲状腺製剤、利尿薬、鎮痙薬、子宮(terine)弛緩剤、抗-肥満薬、赤血球生成促進剤、抗-喘息薬、咳止め薬、ムコ多糖分解酵素、DNAおよび遺伝子改善剤、およびこれらの組合せを含む。
【0045】
本発明において使用を意図する投薬療法活性化成分は、制酸剤、H2-アンタゴニスト、および鎮痛薬を含む。例えば、制酸性投与剤は、炭酸カルシウム単独で、または水酸化マグネシウムおよび/または水酸化アルミニウムとの組合せで使用して調製することができる。更に、制酸剤は、H2-アンタゴニストとの組合せで使用することができる。
【0046】
鎮痛薬は、麻酔薬および麻酔薬誘導体、例えばオキシコドン(オキシコンチン(OxycontinTM)として入手できる)、イブプロフェン、アスピリン、アセタミノフェン、およびこれらの組合せを含むことができ、これらは場合によりカフェインを含むことができる。
【0047】
本発明において使用するための他の好ましい活性成分としての好ましい他の薬物は、下痢止め剤、例えばイモジウム(immodium)AD、抗-ヒスタミン剤、鎮咳薬、充血除去剤、ビタミンおよび呼気清涼剤を含む。風邪、痛み、熱、咳、充血、鼻水およびアレルギーに対する単独でまたは組合せで使用される普通薬、例えばアセタミノフェン、クロルフェニラミンマレエート、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリンHClおよびジフェンヒドラミンを、本発明のフィルム組成物中に含めることができる。
【0048】
同様に本発明において使用を意図するものは、不安緩解薬、例えばアルプラゾラム(ザナックス(XanaxTM)として入手できる);抗精神病薬、例えばクロゾピン(クロザリル(ClozarilTM)として入手できる)およびハロペリドール(ハルドール(HaldolTM)として入手できる);非-ステロイド系抗炎症薬(NSAID’s)、例えばヂシクロフェナックス(ボルタレン(VoltarenTM)として入手できる)オオビエトドラック(ロジン(LodineTM)として入手できる)、抗-ヒスタミン薬、例えばロラタジン(クラリチン(ClaritinTM)として入手できる)、アステミゾール(ヒスマナール(HismanalTM)として入手できる)、ナブメトン(リラフェン(RelafenTM)として入手できる)およびクレマスチン(タビスト(TavistTM)として入手できる);制吐薬、例えばグラニセトロン塩酸塩(キトリル(KytrilTM)として入手できる)およびナビロン(セサメット(CesametTM)として入手できる);気管支拡張薬、例えばベントリン(Bentolin TM)、アルブテロール硫酸塩(プロベンチル(ProventilTM)として入手できる);抗-鬱薬、例えばフルオキセチン塩酸塩(プロザック(ProzacTM)として入手できる)、セルトラリン塩酸塩(ゾロフト(ZoloftTM)として入手できる)およびパロキセチン塩酸塩(パキシル(PaxilTM)として入手できる);抗-片頭痛薬、例えばイミグラ(ImigraTM)、ACE-阻害剤、例えばエナラプリラト(バソテック(VasotecTM)として入手できる)、カプトプリル(カポテン(Capoten TM)として入手できる)およびリシノプリル(ゼストリル(ZestrilTM)として入手できる);抗アルツハイマー病薬、例えばニセルゴリン;およびCaH-アンタゴニスト、例えばニフェジピン(プロカルディア(ProcardiaTM)およびアダラット(AdalatTM)として入手できる)およびベラパミル塩酸塩(カラン(CalanTM)として入手できる)である。
【0049】
勃起不全治療薬は、ペニスへの血流を容易にし、また自律神経系を活性化するための薬物、例えば副交感神経(コリン作用性)を増進し、および交感神経(アドレナリン作動性)活性を低下させる薬剤を含むが、これらに限定されない。有用な非-限定的薬物は、シルデナフィル、例えばバイアグラ(ViagraTM)、タダラフィル、例えばシアリス(CialisTM)、バルデナフィル、アポモルフィン、例えばウプリマ(UprimaTM)、ヨヒンビン塩酸塩、例えばアフロジン(AphrodyneTM)、およびアルプロスタジル、例えばカベルジェクト(CaverjectTM)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明における使用を意図している上記極性H2-アンタゴニストは、シメチジン、ラニチジン塩酸塩、ファモチジン、ニザチジン、エブロチジン、ミフェンチジン、ロキサチジン、ピサチジンおよびアセロキサチジンを含む。
【0051】
活性な制酸剤成分は、以下に列挙するものを含むが、これらに限定されない:水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、アミノ酢酸、リン酸アルミニウム、炭酸ジヒドロキシアルミニウムナトリウム、重炭酸塩、アルミン酸ビスマス、炭酸ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、次サリチル酸ビスマス(bismuth subsilysilate)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸イオン(酸または塩)、アミノ酢酸、水和マグネシウムアルミネートサルフェート、マガルドラート、マグネシウムアルミノシリケート、炭酸マグネシウム、マグネシウムグリシネート、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムトリシリケート、ミルク固形分、アルミニウム一または二塩基性リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、重炭酸カリウム、酒石酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、マグネシウムアルミノシリケート、酒石酸およびその塩。
【0052】
本発明において使用される製薬的に活性な薬剤は、アレルゲンまたは抗原、例えば草本、木本、またはブタクサ由来の植物の花粉、ネコまたは他の毛皮を持つ動物の皮膚および毛から落ちた小さな鱗片状物である動物の鱗屑;昆虫、例えばヒョウヒダニ、ミツバチ、およびスズメバチ;並びに薬物、例えばペニシリンを含むが、これらに限定されない。
【0053】
本発明により作成された該フィルムは、高度に水に対して敏感な活性成分に対して特に適している。本発明において特に使用できる、このような水に対して敏感な活性成分の非-限定例は、ベタメタゾンバレレート、プロピオン酸クロベタゾール(clobetasal)、二プロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノロン(Flucinolone)アセトニド、ヒドロコルチゾンブチレート、アシクロビール、ムピロシン、ジクロフェナク、Naバルプロアート、アーユルベディック(Ayurvedic)、アミトリプチリン(Amitriyptyline)HCl、アモキシシリン、クラブラン酸、アトルバスタチンCal、クロピドグレル(Copidogrel)、エタンブトール、グルコサミン+、コンドロイチン(Chondritin)、ラニチジンHCl、ファモチジン、シメチジン、リファンピシン、クリキシバン、およびアスピリンを含む。他の水に対して敏感な化合物は、本発明のフィルムに配合することができる。
【0054】
酸化防止剤も、特に活性成分が光感受性である場合に、該活性成分の劣化を防止するために、該フィルムに添加することができる。
【0055】
化粧学的に活性な薬剤は、メントール等の呼気清涼性化合物、他の香料または芳香剤、特に口内衛生の目的で使用されるもの、並びに歯科および口腔の清浄化において使用される活性成分、例えば四級アンモニウム塩基を含むこともできる。香料の効果は、酒石酸、クエン酸、バニリン等の香味増強剤を用いて高めることができる。
【0056】
同様に、着色添加剤を、該フィルムの製造において使用することができる。このような着色添加剤は、食品、薬物および化粧料用着色剤(FD&C)、薬物および化粧料用着色剤(D&C)、または外用薬物および化粧料用着色剤(Ext. D&C)を包含する。これら着色剤は、染料、その対応するレーキ、および幾つかの天然および合成着色料である。レーキは、水酸化アルミニウム上に吸収された染料である。
【0057】
着色剤の他の例は、公知のアゾ染料、有機または無機顔料、または天然起源の着色剤を含む。無機顔料、例えば鉄またはチタンの酸化物が好ましく、これらの酸化物は、該成分全体の質量を基準として、約0.001〜約10%、および好ましくは約0.5〜約3%なる範囲の濃度で添加される。
【0058】
香料は、天然および合成香味液体から選択することができる。このような薬剤の例示的なリストは、揮発性オイル、合成香味油、調味芳香剤、オイル、液体、オレオレジンまたは植物、葉、花、果実、茎およびこれらの組合せから誘導される抽出液を含む。これらの例の非-限定的な代表的リストは、ミント油、シナモン、ココア、および柑橘油、例えばレモン、オレンジ、グレープ、ライムおよびグレープフルーツ、並びにリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、キイチゴ、チェリー、プラム、パイナップル、アンズを包含する果実エッセンス、またはその他の果実香料を含む。
【0059】
香味料を含む本発明のフィルムを添加して、高温または低温の香味付け飲料またはスープを得ることができる。これらの香味料は、制限なしに、茶およびスープ香味料、例えばビーフおよびチキンを含む。
【0060】
他の有用な香味料は、アルデヒドおよびエステル、例えばベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド)、シトラール、即ちα-シトラール(レモン、ライム)、ネラール、即ちβ-シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC-8(柑橘類果実)、アルデヒドC-9(柑橘類果実)、アルデヒドC-12(柑橘類果実)、トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタノール(未熟な果実)、および2-ドデセナール(柑橘系、マンダリン)、これらの組合せ等を包含する。
【0061】
上記甘味料は、以下の非-限定的なリストから選択することができる:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、およびこれらの組合せ;サッカリンおよびその様々な塩、例えばナトリウム塩;ジペプチド甘味料、例えばアスパルテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア(Stevia Rebaudiana)(ステビオシド);スクロースのクロロ-誘導体、例えばスクラロース;イソマルト;糖アルコール、例えばソルビトール、マニトール、キシリトール等。同様に意図されているものは、水添デンプン水解物および合成甘味料である3,6-ジヒドロ-6-メチルl-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキサイド、特にそのカリウム塩(アセスルファム-K)、およびそのナトリウムおよびカルシウム塩、および天然強力甘味料、例えばローハンクオ(Lo Han Kuo)である。その他の甘味料も使用可能である。
【0062】
該活性成分を溶媒中でポリマーと組み合わせた場合、形成されるマトリックスの型は、該活性成分および該ポリマーの溶解度に依存する。該活性成分および/または該ポリマーが、該選択された溶媒に可溶性である場合、これは溶液を生成し得る。しかし、該成分が溶解性でない場合には、該マトリックスは、エマルション、コロイド、または懸濁液として分類できる。
投与量
【0063】
本発明のフィルム製品は、該活性成分の広範囲に及ぶ量を収容できる。該フィルムは、必要とされる用量が高いか、あるいは極端に低いかとは無関係に、正確な投薬量を与えることができる(その量は、該フィルムのサイズおよび初めのポリマー/水の組合せにおける該活性成分の濃度によって決定される)。従って、該フィルムに配合される活性成分または製薬組成物の型に依存して、該活性成分の量は、約300mg程度、望ましくは約150mgまで、あるいはμg程の低い値、あるいはこれらの間の任意の量であり得る。
【0064】
本発明のフィルム製品および方法は、高い効能を持ち、低い用量の薬物に対して十分に適している。これは、該フィルムの高度の均一性によって達成されるものである。従って、低用量の薬物、特により高い効能を持つ、活性成分のラセミ混合物が望ましい。
消泡並びに脱泡組成物
【0065】
消泡および/または脱泡成分を、本発明のフィルムと共に使用することもできる。これら成分は、取込み空気等の空気を、該フィルム-形成組成物から除去するのに役立つ。上述のように、このような取込み空気は、不均一なフィルムの生成に導く恐れがある。シメチコンは、一種の特に有用な消泡および/または脱泡剤である。しかし、本発明は、これに限定されず、他の消泡および/または脱泡剤を、適当に使用することができる。
【0066】
シメチコンは、一般に幼児におけるガスまたは疝痛に対する治療薬として使用されている。シメチコンは、トリメチルシロキシ末端保護単位で安定化されたポリジメチルシロキサンおよび二酸化ケイ素の繰返し単位を含む、完全にメチル化された線状シロキサンポリマーの混合物である。これは、通常90.5〜99%のポリメチルシロキサンおよび4-7%の二酸化ケイ素を含んでいる。この混合物は、灰色で、透明かつ粘稠な流体であり、これは水に不溶である。
【0067】
水に分散した場合、シメチコンは、表面全体に亘り拡がって、低い表面張力を持つ薄膜を形成する。このように、シメチコンは該溶液中に局在する気泡、例えば泡の表面張力を減じ、その破壊をもたらす。シメチコンの機能は、水中でのオイルおよびアルコール両者の作用とよく似ている。例えば、油性溶液において、あらゆる取込まれた気泡は、表面に向かって上昇し、より迅速かつ容易に消失する。というのは、油性液体は水性溶液と比較して低い密度を持つからである。他方、アルコール/水混合物は、水の密度を下げ、また水の表面張力を低下することが知られている。従って、この混合溶液内部に取込まれたあらゆる気泡も、容易に消失する。シメチコン溶液は、これら利点両者をもたらす。これは、該水性溶液内部に取込まれたあらゆる気泡の表面エネルギーを下げ、しかも該水性溶液の表面張力をも低下する。この特有の機能性の結果として、シメチコンは、生理的な過程(腹部におけるガス発生防止)のために、並びに製品から気泡を除去するのに必要なあらゆる外的な過程に対して利用可能な優れた消泡特性を持つ。
【0068】
本発明のフィルムにおける気泡形成を防止するために、上記混合段階を、真空条件下で行うことができる。しかし、該混合段階が完了するやいなや、また該フィルム溶液が通常の大気圧条件下に戻されるやいなや、空気が再度導入され、あるいは該混合物と接触することになる。多くの場合において、小さな気泡が、再度このポリマーの粘稠な溶液内部に取込まれることになる。該フィルム-形成組成物へのこのシメチコンの配合は、気泡の形成を実質的に減じるか、あるいは排除する。
【0069】
シメチコンは、消泡剤として、約0.01質量%〜約5.0質量%なる範囲、より望ましくは約0.05質量%〜約2.5質量%なる範囲、および最も望ましくは約0.1質量%〜約1.0質量%なる範囲の量で、該フィルム-形成混合物に添加することができる。
随意の成分
【0070】
また、様々な他の成分およびフィラーを、本発明のフィルムに添加することもできる。これらは、制限なしに、界面活性剤;該混合物内にこれら成分を相溶化するのに役立つ可塑剤;ポリアルコール;消泡剤、例えば該フィルムから酸素を放出することにより、平滑なフィルム表面の生成を促進する、シリコーン-含有化合物;および成分を分散状態に維持するのに役立つ、熱硬化性ゲル、例えばペクチン、カラギーナン、およびゼラチンを含むことができる。
【0071】
本発明の組成物に配合することのできる様々な該添加物は、様々な異なる機能を与えることができる。添加物群の例は、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、安定化剤、発泡剤、顔料、着色剤、フィラー、増量剤、甘味剤、矯味剤、香料、放出調節剤、アジュバント、可塑剤、流動性促進剤、金型離型剤、ポリオール、造粒剤、希釈剤、バインダ、バッファー、吸収剤、グリダント、接着剤、付着防止剤、酸味付与剤、柔軟剤、樹脂、粘滑薬、溶媒、界面活性剤、乳化剤、エラストマーおよびこれらの混合物を含む。これらの添加剤は、上記活性成分と共に添加することができる。
【0072】
有用な添加剤は、例えばゼラチン、植物タンパク質、例えばヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、ピーナッツタンパク質、ブドウ種子タンパク質、ホエータンパク質、ホエータンパク質単離体、血液タンパク質、エッグタンパク質、アクリレート化タンパク質、水溶性多糖類、例えばアルギネート、カラギーナン、グアーガム、寒天、ザンタンガム、ジェランガム、アラビアガムおよび関連するガム(ガッチガム、カラヤガム、トラガカンスゴム)、ペクチン、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースエステルおよびヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えばセルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロースおよびそのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVY/酢酸ビニルコポリマー、およびポリクロトン酸を含み;また同様に適当な物は、以下に列挙するものである:フタレート化ゼラチン、ゼラチンサクシネート、架橋ゼラチン、シェラック、デンプンの水溶性の化学的誘導体、例えば三級または四級アミノ基、例えば必要に応じて四級化されていてもよいジエチルアミノエチル基を持つ、カチオン的に変性されたアクリレートおよびメタクリレート;およびその他の同様なポリマー。
【0073】
このような増量剤は、場合により、任意の所望の量、望ましくは全成分の質量を基準として、約80%までの範囲内の量、望ましくは約3%〜50%なる範囲およびより望ましくは3%〜20%なる範囲の量で添加することができる。
【0074】
更に、添加剤は、無機フィラー、例えばマグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン等の酸化物であり得、その量は、望ましくは全成分の質量を基準として、約0.02%〜約3質量%なる範囲および望ましくは約0.02%〜約1質量%なる範囲の濃度にて使用できる。
【0075】
添加物の更なる例は、可塑剤であり、これはポリアルキレンオキサイド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-プロピレングリコール、低分子量を持つ有機可塑剤、例えばグリセロール、グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテート、トリアセチン、ポリソルベート、セチルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、ナトリウムジエチルスルホサクシネート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート等を含み、これらは、該ポリマーの質量を基準として、約0.5%〜約30%なる範囲および望ましくは約0.5%〜約20%なる範囲の濃度にて添加される。
【0076】
更に、該デンプン物質の流動特性を改善するために、化合物、例えば動物または植物脂肪、望ましくはその水素添加形状にある脂肪、特に室温にて固体状態にあるものを添加することができる。これら脂肪は、望ましくは50℃またはそれ以上の融点を持つ。その好ましい例は、C12-、C14-、C16-、C18-、C20-およびC22-脂肪酸とのトリグルセライドである。これらの脂肪は、エキステンダーまたは可塑剤を加えることなしに、単独で添加することができ、また有利には単独でまたはモノ-および/またはジ-グリセライドまたはホスファチド、特にレシチンと共に添加することができる。該モノ-およびジ-グリセライドは、望ましくは上記型の脂肪から、即ちC12-、C14-、C16-、C18-、C20-およびC22-脂肪酸を用いて誘導されたものである。
【0077】
該脂肪、モノ-、ジ-グリセライドおよび/またはレシチンの全使用料は、全組成物の質量を基準として、約5質量%までおよび好ましくは約0.5〜約2質量%なる範囲にある。
【0078】
更に、二酸化ケイ素、珪酸カルシウム、または二酸化チタンを、全組成物の質量を基準として、約0.02〜約1質量%なる範囲の濃度にて添加することが有効である。これら化合物は構造化剤として機能する。
【0079】
これらの添加剤は、その意図した目的を達成するのに十分な量で使用すべきである。一般に、これら添加剤の幾つかの組合せは、該活性成分の全体的な放出プロフィールを変更し、また該放出特性を変更するために、即ち妨害または促進するために使用できる。
【0080】
レシチンは、本発明において使用する1種の界面活性剤である。レシチンは、供給原料に、約0.25%〜約2.00質量%なる範囲の量で含めることができる。他の表面活性剤、即ち界面活性剤は、セチルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ICIアメリカズ社(ICI Americas, Inc.)から市販品として入手できる、スパン(SpansTM)およびツイーン(TweensTM)を含むが、これらに限定されない。エトキシル化ヒマシ油を包含するエトキシル化オイル、例えばバスフ(BASF)社から市販品として入手できるクレモフォア(CremophorTM) ELも有用である。カーボワックス(CarbowaxTM)は、本発明において極めて有用なもう一つの改良剤である。ツイーン(TweensTM)または界面活性剤の組合せを使用して、所望の親水性-親油性バランス(HLB)を達成することができる。しかし、本発明は、界面活性剤の使用を必要とせず、また本発明のフィルムまたはフィルム-形成組成物は、本質的に界面活性剤を含まないものであり得、それでも、本発明の望ましい均質性という特徴を与えることができる。
【0081】
本発明の手順および生成物を増強する、追加の調節剤が確認されたので、本出願人は、このような追加の調節剤全てを、ここに特許請求した本発明の範囲に含めるものとする。
【0082】
その他の成分は、本発明のフィルム製造の容易さおよび一般的なその品質に寄与する、バインダを含む。バインダの非-限定的な例は、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキサゾリドン(polyvinyloxoazolidone)、およびポリビニルアルコールを含む。
フィルムの形成
【0083】
本発明の好ましいフィルムを、幾つかのパラメータに従って説明したが、これらは、得られる最終製品に実質的な影響を及ぼすことなしに、様々な方法で変更することができるものと理解されよう。
【0084】
任意の添加剤および上記活性成分に加えて、該フィルム-形成ポリマーおよび溶媒を含む上記マトリックスは、多くの段階において製造できる。本発明の一態様においては、これらの成分を一緒に添加して、別々のプレミックスバッチとすることができる。該プレミックスの利点は、該活性成分または任意の他の水に対して活性な成分を除く、全ての成分を予め結合することができるという点にある。該水に対して活性な成分、例えば幾つかの活性成分、風味隠蔽成分、または該溶媒と反応する恐れのある他の成分は、該フィルムの製造直前に、該溶媒マトリックスに添加することができる。このことは、水、空気または他の極性溶媒に長期間に亘り暴露されることにより分解する恐れのある成分にとっては、特に重要である。
【0085】
該マトリックスを形成するためのこの特定の方法において、上記水を主体とする材料、例えば該フィルム-形成ポリマーおよび溶媒、並びに水に対して活性でない他の任意の添加剤を含む該プレミックスは、一つの容器内で混合することができる。該溶媒は、任意の所定の溶媒であり得、また有機溶媒、非-極性溶媒、極性溶媒、およびこれらの組合せであり得る。更に、該溶媒は、高いpH、低いpHまたは中性pHを持つことができる。更に、該溶媒は、塩を含まず、また低い塩濃度を持つことができ、あるいはまた該溶媒は高い塩濃度を持つこともできる。得られる該混合物は、「水を主体とする溶液」と呼ばれる。同時に、別の容器において、第二のプレミックスを調製するが、これは上記製薬的に活性な薬剤、並びに所望の任意の他の水に対して活性な成分例えば、風味-隠蔽成分を含む。「水に対して活性な混合物」または「水に対して活性なスラリー」と呼ばれる、この第二のプレミックスにおいて、水を主体とする材料は、殆どまたは全く存在しない。該水に対して活性な混合物は、任意の所望の形状であり得、またスラリー、エマルション、溶液、懸濁液、コロイド分散液、またはこれらの組合せ等の形状であり得る。この2つの部分からなる混合物の態様は、該水に対して活性な成分と該水を主体とする材料との間の接触を制限し、これら2種の成分間の反応を、効果的に減じまたは排除する。該水を主体とする材料と反応しない成分は、何れかのプレミックスに添加するか、あるいは別途に添加することができる。
【0086】
上記2種のプレミックス材料を調製した後、次いで迅速混合装置を用いて、これらを混合し、かつ供給することができる。これらの成分は、ここに記載する所謂「計量-混合-供給」装置を用いて、組み合わせ、供給することができる。この態様において、該2種の別々のプレミックスは、同時にまたはほぼ同時に、所定量にて、該装置の混合区画に添加され、あるいは実質的に一定の、予め定められた速度にて、インラインミキサーを介して計量される。該ミキサー内においては、該プレミックスは、極めて高い剪断ミキサーを用いて混合され、この混合は、極めて短期間にて、該プレミックスを十分に混合することを可能とする。一態様において、該混合された成分の滞留時間は、約1秒程度の短期間を含む、数秒程度であり得る。他の態様では、該インラインミキサー内の滞留時間は、約5〜10分なる期間を含む、数分程度であり得る。この迅速かつ効果的な混合段階の完了後、引続き該混合された溶液を、該ミキサーから迅速に供給する。他の態様は、様々な成分を別々に直接、該ミキサーに添加するが、該ミキサーは、2つを越えるプレミックスバッチ、および該水に対して活性なおよび水を主体とする成分を、混合するまで別々に維持する、他の任意の手段を持つ。
【0087】
ここでは、様々な型の混合装置が意図されており、該装置は以下に列挙するものを含むが、これらに限定されない:静的ミキサー、動的ミキサー、および小容量および大容量のインラインミキサー。本発明の組成物は、場合により任意の所望のミキサー内で連続的に組み合わせおよび混合することができる。これらミキサーは、成分の連続的な流れの発生を可能とし、あるいは該成分は、断続的であり得、あるいは結合が見られてもよく、ここで特定の成分を、該ミキサーに連続的に供給し、一方で他の成分を、間欠的に供給することもできる。この装置は、混合ヘッドの断続的な充填を取入れることができ、これは、該混合および供給段階の前にあるいはこれらと同時に、例えばピストンポンプを用いて実現することができる。一態様において、本発明の組成物を、小容量のインラインミキサーを用いて結合し、また混合することができ、該ミキサーは、間欠的に一定分量の溶液およびスラリーが充填され、計量を行い、また引続き放出を行う。
【0088】
該フィルムを製造するのに任意の手段を使用することができ、そのような手段は、押出し、被覆、流し込み成形等を含む。該フィルムは、該供給装置から直接製造することができ、あるいは該フィルム原料を、別の供給手段に入れ、そこで該原料を被覆し、またはフィルムに流し込み成形することも可能である。あるいはまた、該成分を、貯槽またはトラフに供給し、そこで該混合された成分を基材上に塗布することによりフィルムを製造することもできる。該フィルムが、被覆、流し込み成形、押出等によって作成された後、該フィルムを次に迅速に乾燥し、該溶液の該水を主体とする部分を蒸発させて、これを迅速に除去することができる。任意の乾燥手段を使用することができ、該手段は、本明細書に記載したものを含む。迅速な乾燥および該水を主体とする材料の迅速な除去は、該水に対して活性な成分が該水を主体とする材料と接触している時間の長さを減じ、かつ制限するのに役立つ。上述の如く、これは、該水に対して活性な成分が水と反応する傾向を、更に制限し、かつ減じる。
【0089】
好ましくは、該水に対して活性な成分は、約1秒〜約10分間、該水を主体とする材料に暴露され、およびより好ましくは約1秒以下〜約5分間程度暴露される。制限された期間内の暴露に加えて、他の変数は、該水に対して活性な成分が、該水を主体とする溶液と反応する傾向を減じるのに役立つ可能性があり、そのような変数は、混合速度、温度、薬物の割合、流れの流動比(stream flow ratios)およびスラリー比を含むが、これらに限定されない。該混合速度は、好ましくは0(静的ミキサーの場合におけるように)乃至著しく高強度のミキサーに対する約10,000rpmなる値の範囲内にある。混合温度は、好ましくは4℃〜80℃なる範囲にある。
【0090】
更に、該流れ比、即ち固体対液体の比は、最適には1:1000〜1:1なる範囲にある。該流動流れは、好ましくは約50g/分〜約500g/分なる範囲の速度である。更に、最適のスラリー比は、約20%固体〜約80%固体なる範囲にある。
【0091】
幾つかの態様においては、被覆された薬物のスラリーを使用することが好ましいことであり得る。該スラリーは、次いで被覆溶液の流動流れ内に計取ることができる。この態様において、所望の活性薬剤は、先ず所望の塗膜で被覆される。この塗膜は、該活性薬剤が水に対して敏感である可能性があることから望ましいことであり得、また該塗膜は、結果として該活性成分を、水を主体とする流れとの実質上の接触から保護するであろう。適当な塗膜は、水分遮断ポリマー、例えばユードラジット(Eudragit)L30 D-55、ユードラジット(Eudragit)E100、オパドライ(Opadry)AMP(ポリビニルアセテート)、セピフィルム(Sepifilm)LB 014(HPMC/MCCおよびステアリン酸)、アクアコート(Aquacoat)CPD、アクアコート(Aquacoat) ECD、およびCAP(セルロースアセテートフタレート)を含む。好ましい一態様においては、CAPが該被膜として使用される。例えば、活性成分をCAP+可塑剤で被覆し、次いで該被覆された粒子を補助溶媒としてのエタノール中に分散させることが可能である。該被覆薬物/エタノールスラリーは、次に任意の所定の流れ比にて、被覆溶液の流動流れ内に計取ることができる。
【0092】
ここに記載するような迅速混合かつ供給装置の使用は、更に一態様において、上記の予め混合されたスラリーおよび予め混合された水を主体とする溶液を含む様々な成分の上記ミキサーへの連続的添加を可能とし、これは、伝統的な装置において通常必要とされるような、フィルムバッチ間の該ミキサーの清浄化および消毒に関する量(回数)的な問題を実質的に減じる。
【0093】
幾つかの態様においては、ミキサー内での処理中、押出し後、乾燥後、または該フィルム-形成工程中の他の任意の段階の何れかにおいて、該フィルム内の様々な成分の濃度を監視するための装置を含むことが望ましいことであり得る。例えば、該フィルム内の該活性な製薬成分(API)の濃度を、例えば取締機関および他の政府による要件に従うように、監視することが望ましいことであり得る。該フィルム組成物中の濃度の様々なレベルを監視するための任意の手段を使用することができ、例えば公知の分光学的または他の分析的メカニズムを使用できる。ここに記載するフィルムの製法において、該APIの濃度を監視するためのこのような好ましい方法の一つは、フーリエ変換近赤外分光光度法(Fourier Transform Near-Infrared Spectroscopy (FT-NIR))の使用による方法である。特に有用な監視法は、マルチプローブ連続式FT-NIR装置の使用により実現でき、この装置は、製造中のフィルムウエブのスパン全体に亘り、APIの濃度を監視する。
【0094】
幾つかの態様において、望ましいことは、上記製造および混合工程中の、風味-隠蔽被膜の溶解を防止するための、1種またはそれ以上の添加剤を使用することであり得る。上記乾燥工程中に、該添加剤を、熱および/または輻射エネルギーの適用により、除去することができる。例えば、CO2を炭酸として使用して、該風味-隠蔽被膜の溶解を防止することができる。該フィルム形成工程中に、エネルギーの適用によって、該CO2を辞去することができる。
【0095】
多層フィルムが望ましい場合には、その製造は、既に形成されたフィルム層上に、成分の組合せを、被覆、展開または流し込み成形することにより実現できる。あるいはまた、これらの層は、一緒に同時押出しすることができる。様々な異なるフィルム形成技術を使用することが可能であるが、可撓性フィルムを与える方法、例えばリバースロール塗布技術を選択することが望ましいことであり得る。該フィルムの可撓性は、フィルムシートを巻回し、かつ保存のために、あるいは個々の投与剤形に裁断する前にこれを輸送することを可能とする。望ましくは、該フィルムは、また自立式のものであり得、即ち別の支持体を用いることなしに、その保全性および構造を維持できるものであり得る。更に、本発明のフィルムでは、可食性のまたは摂取可能な材料を選択することができる。
【0096】
被覆または流し込み成形法は、本発明のフィルムを製造するために、特に有用である。具体的な例は、特に多層フィルムが望ましい場合には、リバースロール塗布または流し込み成形法、グラビア塗布法、浸漬または漬け塗り法、計量ロッドまたはメイヤーバー塗布法、スロットダイまたは押出し塗布法、ギャップまたはロール式ナイフ塗布法、エアーナイフ塗布法、フローコーティング法、またはこれらの組合せを含む。
【0097】
ロール塗布法、あるいはより具体的にはリバースロール塗布法が、本発明に従ってフィルムを形成する場合には、特に望ましい方法である。この手順は、本発明において望まれているような、得られるフィルムの優れた制御性および均一性を与える。この手順において、該塗布材料は、上部計量ロールとその下方の塗布ロールとの間のギャップを正確に設定することにより、該アプリケータロール上に計り取られる。該塗布液は、これが該塗布ロールに隣接する、支持ロールの回りを通過する際に、該塗布ロールから該基材に転写される。多重ロール法、例えば3本ロール法または4本ロール法は、当分野において一般的に知られている。
【0098】
該グラビア塗布法は、塗布浴中を走行する彫刻ロールの使用に基いており、該浴は、該ロールの彫刻されたドットまたはラインを、該塗布物質で満たす。該ロール上の過剰量の塗布液は、ドクターブレードによって拭い去られ、また該塗布液は、次に、これが該彫刻ロールと圧力ロールとの間を通過する際に、基材上に堆積される。
【0099】
オフセットグラビア塗布が一般的であり、そこでは塗布液は、該基材に転写される前に、中間ロール上に堆積される。
【0100】
浸漬または漬け塗布法において、該基材は、該塗布液の浴中に浸漬される。ここで、該塗布液は、通常該基材が該浴から出てくる時に、該塗布液が該浴に戻ることができるように、粘度の低いものである。
【0101】
該計量ロッド塗布法においては、該基材が該浴ロール上を通過する際に、過剰量の該塗布液が、該基材上に堆積される。しばしばメイヤーバー(Meyer Bar)と呼ばれる、線巻計量ロッドは、所定量の塗布液を該基材上に残すことを可能とする。その量は、該ロッド上で使用する該ワイヤの径によって決定される。
【0102】
上記スロットダイ法においては、該塗布液は重力の作用または加圧下で、スロットを介して該基材上に絞出される。該塗布剤が約100%の固体である場合、この方法は、「押出し」と呼ばれ、この場合には、線速度は、しばしば押出し速度よりも著しく大きい。これにより、塗膜を、該スロット幅よりも著しく薄いものとすることが可能となる。
【0103】
上記ギャップまたはロール式ナイフ塗布法は、該基材上に塗布液を適用することに基く方法であり、この場合、該基材は、次いで「ナイフ」と支持ロールとの間の「ギャップ」を通過する。該塗布液および基材が、該ギャップを通過する際に、過剰量の塗布液が掻取られる。
【0104】
上記エアーナイフ塗布法では、該塗布液が、該基材上に適用され、次いでその過剰量が、該エアーナイフからの強力なジェットによって「吹き飛ばされる」。この方法は、水性塗布液に対して有用である。
【0105】
上記フローコーティング法では、底部にスロットを持つ浴が、該塗布液の連続するカーテンを、2つの搬送ロール間のギャップに落し込むことを可能とする。被覆すべき対象は、制御された速度にて該搬送ロールに沿って該装置に通されて、その上部表面に該塗布液を受取る。
該フィルムの乾燥
【0106】
制御された乾燥法を使用して、該フィルムを乾燥することができ、また付随的に該フィルム中の該組成のばらつきを減じることができる。上で説明したように、本明細書に記載する製造方法は、より迅速に該水を主体とする材料を除去し、また該水に対して活性な成分が該材料と接触する時間を減じるために、好ましくは迅速乾燥を取入れる。溶媒の迅速な除去は、約0.5〜約10分間で、該フィルムが粘弾性塊を形成することを可能とし、このことは、該フィルム内の内容物の均一性を固定化する。制御された乾燥法は、該フィルムを乾燥する際に、その中での気泡の生成を排除する上で有用であり、結果的に該フィルムの内容物のばらつきの可能性が減じられる。該制御された乾燥法を必要としない、正確な用量を持つフィルムを製造するもう一つの方法は、予め決められたウエル上にフィルムを流し込み成形することである。この方法により、上記成分が凝集する可能性があるが、これによって、該活性成分が隣接する投与剤形に移動することはない。というのは、各ウエルが、該投与単位自体を規定し得るからである。制御されたまたは迅速な乾燥法が望まれる場合には、このような制御された乾燥は、様々な方法によって実現される。様々な方法を使用することができ、その例は、熱エネルギーおよび/または輻射エネルギー、例えば熱、マイクロ波、赤外光、またはその他の同様なエネルギーの適用を必要とする方法を含む。上記液状担体は、湿潤フィルムにおいて達成されるような、均一性、より具体的には自己凝集しないという意味で均一な不均質性が維持されるような方法で、該フィルムから除去される。
【0107】
望ましくは、該フィルムは、該フィルムの底部から該フィルム上部に向かって乾燥される。より望ましくは、中実の、粘弾性構造が形成される、該フィルムの初期硬化期間中に、該フィルムの上部を横切る空気流は、実質上存在しない。これは、最初の数分間、例えば該乾燥工程の初めの約0.5〜約10.0分、およびより望ましくは該乾燥工程の初めの約0.5〜約4.0分なる範囲内で起り得る。該乾燥をこのように調節することにより、該フィルム上部表面の変形および再構成を回避する。これは、該フィルムを形成し、かつ該フィルムを、上側および下側を持つ表面を上向きに配置することにより実現される。次いで、熱を、先ず該フィルムの下側に適用して、必要なエネルギーを与え、結果として該液状担体を蒸発または除去する。このようにして乾燥されたフィルムは、風乾されたフィルム、または従来の乾燥手段により乾燥されたフィルムと比較して、より迅速にかつ均一に乾燥されている。先ず上部および端部が乾燥される、風乾フィルムとは対照的に、該フィルムの底部に熱を掛けて乾燥したフィルムは、同時にその中心部並びに端部も乾燥される。この乾燥法は、また従来の手段により乾燥されたフィルムについて見られるような、成分の沈降をも回避する。適当な乾燥方法は、米国特許第7,357,891号および同第7,425,292号に記載されている方法を含む。これら米国特許の全内容を、参考としてここに組入れる。
【0108】
該乾燥工程中の該マトリックスの温度は、約100℃以下、望ましくは約90℃以下、およびより望ましくは約80℃以下である。該マトリックスの周囲の温度は、必要ならばより高くすることもできるが、望ましくは該乾燥中のマトリックスの温度は、約100℃以下、あるいは何れが高いにせよ、該マトリックス内に存在するあらゆる活性成分の分解温度以下に維持される。
【0109】
単独でまたは上記のような他の制御された方法との組合せで使用することができる、該乾燥法を調節するもう一つの方法は、該フィルムが乾燥される、該乾燥装置内の湿度を調節または変更する工程を含む。このようにして、該フィルム上部表面の早期の乾燥を回避する。
【0110】
付随的に、乾燥時間の長さは、適当に調節、即ち該成分、および特に香味オイルおよび薬物の感熱性および揮発性と釣合わせることができる。エネルギーの量、温度およびコンベアの長さおよび速度は、上記活性成分を収容していることおよび該最終的なフィルムにおける損失、分解または無効化と釣合わせることができる。
【0111】
該フィルムは、初期において約500μm〜約1,500μm(または約20ミル〜約60ミル)なる範囲の厚みを持つことができ、この厚みは、上記ドクターロールおよび被動ロール間のギャップを変更することにより調節することができ、また乾燥された場合、該フィルムは、上に示されたような所望の範囲内の厚みを持つことができる。
薄膜の使用
【0112】
本発明の薄膜は、多くの用途に対して十分に適したものである。該フィルムにおける該成分の高度の均一性は、これらフィルムを、医薬を配合するのに特に適したものとする。更に、該フィルムを構築する際に使用される該ポリマーは、該フィルムが、ある範囲内の崩壊時間を持つように選択することができる。フィルムが崩壊する時間の変更または延長は、該活性成分が放出される速度を調節することにより実現でき、これは、持続放出型の放出系の実現を可能とする。更に、該フィルムは、幾つかの身体表面、特に粘膜を含むもの、例えば口腔、肛門、膣、眼科学的表面、皮膚表面または身体内の何れかの創傷、例えば外科手術中の切開部の表面、および同様な表面の何れかに、活性成分を投与するのに使用することができる。口腔および舌下投与経路が、特に有用であり得る。
【0113】
該フィルムは、活性成分を経口投与するために使用できる。これは、上述のように該フィルムを製造し、該フィルムを哺乳動物の口腔内に導入することにより実現される。このフィルムは、使用前に、即ち該口腔内に導入する前に除去される、第二のまたは支持層に接着させることができる。接着剤を使用して、該フィルムを該支持体または裏材料に結合することができ、該支持体または裏材料は、当分野において公知の任意のものであり得、また好ましくは水-不溶性のものである。接着剤を使用する場合、これは、摂取可能な、また該活性成分の諸特性を変更しない、食品等級の接着剤であることが望ましい。粘膜接着性の組成物が、特に有用である。多くの場合には、該フィルム組成物が、粘膜接着剤自体として機能する。
【0114】
該フィルムは、哺乳動物の舌の下方または舌自体に適用することができる。このようなものが望ましい場合、好ましくは、該舌部の形状に対応する特定のフィルム形状であり得る。従って、該フィルムは、該舌の裏側に対応する該フィルムの側が、該舌の前部に対応する側よりも長くなるような形状に裁断することができる。具体的には、該所望の形状は、三角形または台形の形状であり得る。望ましくは、該フィルムは、これが該口腔から放逐されるのを防止し、また該フィルムの溶解に伴って、より多くの該活性成分を該口腔内に導入できるように、口腔に接着されるであろう。
【0115】
本発明のフィルムのもう一つの用途では、該フィルムが、液体に導入された際に迅速に溶解する傾向を利用している。本発明に従ってフィルムを製造し、これを液体中に導入し、これを溶解させることにより、活性成分を液体中に導入することができる。これは、活性成分の液状投与剤形を製造し、あるいは飲料を風味付けするために使用することができる。
【0116】
本発明のフィルムは、封止された、気密かつ防湿性の包装材料内に包装して、該活性成分を、酸素に対する暴露、その加水分解、揮発及び環境との相互作用から保護することが望ましい。更に、該フィルムは、ディスペンサーを含むことができ、該ディスペンサーは、意図された治療のために典型的に処方された医薬の全供給量を含むことができるが、該フィルムおよび包装体の厚みのために、錠剤、カプセル剤および液剤に対して使用されている伝統的なボトルよりも一層小さく、しかもより便利である。その上、本発明のフィルムは、唾液または粘膜領域と接触した際に迅速に溶解し、結果として該用量を水の使用により流込む必要が排除される。
【0117】
望ましくは、一群のこのような単位用量が、規定された養生または治療に従って一緒に包装される。例えば、特定の治療に応じて、10-90日分の供給量が、一緒に包装される。個々のフィルムは、裏地の上に包装され、使用のために剥ぎ取られる。
【実施例】
【0118】
本発明の特徴並びに利点は、以下の実施例によってより完全に示される。ここで、該実施例は、例示の目的で与えられるものであり、本発明を何ら限定するものと理解すべきではない。
【0119】
実施例1:フィルムの形成
プレドニソロンリン酸ナトリウムを、40質量%のユードラジット(EudragitTM) L 100-55の被膜で被覆する。これらの被覆された粒子を、5.0なるpHを持つ炭酸の水性スラリー中に懸濁させ、約1.013kPa(0.01atm)のCO2雰囲気内に保存する。これとは別に、ポリマー溶液を調製するが、これはポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、香料、甘味料および他の賦形剤を含む。該溶液およびスラリーを、計量ポンプを使用して、ミキサーに汲み上げ、該ミキサー内で、これらを短期間に亘り混合し、次いでスロットダイコーターに送り、基材上に供給する。こうして、該基材上に塗布された湿潤フィルムが得られる。この湿潤フィルムを、次に乾燥オーブン内で乾燥する。該CO2は、該乾燥オーブン内で失われ、その結果該フィルムのpHは上昇する。このようにして得られたフィルムは、所定濃度の活性成分を含み、また可溶性風味-隠蔽被膜を含む。次いで、このフィルムは、各個人による摂取が可能である。
【0120】
実施例2:フィルムの形成
プレドニソロンリン酸ナトリウムを、40質量%のメトセル(MethocelTM) 310の被膜で被覆する。これらの被覆された粒子を、イソプロパノール溶液中に懸濁させる。これとは別に、PEO、メチルセルロース、香料、甘味料および他の賦形剤を含むポリマー溶液を調製する。該懸濁液および該ポリマー溶液を、計量ポンプを使用して、静的ミキサーに汲み上げ、該ミキサー内で、該懸濁液および該ポリマー溶液を短期間に亘り混合する。次いで、得られたこの混合物を、スロットダイコーターに送り、支持体上に供給する。こうして、該支持体上に塗布された湿潤フィルムが得られる。この湿潤フィルムを、次に乾燥オーブン内で乾燥して、該イソプロパノールを効率良く除去し、また自立式フィルム製品を作成する。
【0121】
実施例3:活性成分の溶解
活性成分は、これが分散されている溶液のpHに応じて、様々な速度で溶解し得る。該溶解された活性成分は、一旦風味-隠蔽媒体から溶出すると、該フィルムに不快な風味を付与するであろう。その結果、より低いpHを持つ溶液中に留まる時間を、最小限に維持することが望ましい。
【0122】
一種の活性成分、即ちゾルピデム酒石酸塩(Zolpidem Tart)を、40質量%のユードラジット(EudragitTM) L 100-55の被膜で被覆し、約1〜約8なる範囲のpHレベルを持つ様々な媒体中に入れ、各溶液に対する該活性成分の溶解速度を測定した。その結果を、図1に示した。理解されるように、該溶液のpHが低いほど、該活性成分はより迅速に溶解する。更に、中性溶液においてさえ、該活性成分は、ある期間に渡って溶解する。従って、該活性成分が溶液、特に低いpH値を持つ溶液に暴露される時間を制限することが望ましい。従って、該風味-隠蔽された活性成分を、別途高いまたは中性pHを持つ溶液中で混合し、次いで低pHを持つポリマー溶液と混合することが好ましい。これは、該風味-隠蔽された活性成分の、該低pH溶液に対する暴露時間を効果的に制限する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分の実質的に均一な分布を持つ可食性フィルムの製造方法であって、
a. 水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液と、スラリー混合物とを組み合わせる段階、ここで該スラリー混合物は、水に対して活性な成分および溶媒を含み;
b. 該ポリマー溶液と該スラリー混合物とを約10分以下の間混合する段階;
c. 該混合された溶液およびスラリー混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および
d. 該フィルムから該溶媒を迅速に除去する段階、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記水に対して活性な成分が、製薬的に活性な薬剤である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水に対して活性な成分が、風味隠蔽剤である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記組み合わせおよび混合段階が、計量-混合-供給装置を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記組み合わせおよび混合段階が、静的ミキサーを通過する、連続式メータドフローを用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わせおよび混合段階が、動的ミキサーを通過する、連続式メータドフローを用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記組み合わせおよび混合段階が、小容量のインラインミキサーを用いて行われ、該ミキサーは、一定分量の溶液およびスラリー混合物が充填され、そこでこれらが混合され、かつ放出される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー溶液とスラリー混合物とが、約60秒以下の間混合される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒を迅速に除去する段階が、粘弾性構造を形成する前記フィルムを与える、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を押出して、前記フィルムを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、フィルムに流し込み成形する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、貯槽に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、基材上に塗布する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法により作成されたフィルム。
【請求項15】
可食性フィルムの製造中の、水に対して活性な成分と水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液との間の相互作用を減じる方法であって、
a. 水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液と、スラリー混合物とを組み合わせる段階、ここで該スラリー混合物は、水に対して活性な成分および溶媒を含み;
b. 該ポリマー溶液と該スラリー混合物とを約10分以下の間混合する段階;
c. 該混合された溶液およびスラリー混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および
d. 該フィルムから該溶媒を迅速に除去する段階、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項16】
前記水に対して活性な成分が、製薬的に活性な薬剤である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記水に対して活性な成分が、風味隠蔽剤である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液をミキサーに投入する段階、該ミキサーに同時にスラリー混合物を投入する段階、該ポリマー溶液およびスラリー混合物を、約10分以下の間混合する段階、および前記混合された溶液およびスラリー混合物を供給する段階が、計量-混合-供給装置を用いて行われる、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー溶液およびスラリー混合物を、約60秒以下の間混合する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒を迅速に除去する前記段階が、粘弾性構造を形成する前記フィルムを与える、請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を押出して、前記フィルムを形成する、請求項15記載の方法。
【請求項22】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、フィルムに流し込み成形する、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、貯槽に供給する、請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、基材上に塗布する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項15記載の方法により作成されたフィルム。
【請求項26】
可食性フィルムの製造中の、薬剤と水を主体とする溶媒との相互作用を実質的に制限する方法であって、
a. 水を主体とするフィルム形成ポリマー溶液と、スラリー混合物とを、ミキサー内に同時に添加する段階、ここで該スラリー混合物は、薬剤および溶媒を含み;
b. 該ポリマー溶液と該スラリー混合物とを約10分以下の間混合する段階;
c. 該混合された溶液およびスラリー混合物を供給して、フィルムを形成する段階;および
d. 該フィルムから該溶媒を迅速に除去する段階、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項27】
前記組み合わせおよび混合段階を、計量-混合-供給装置を用いて行う、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記ポリマー溶液および前記スラリー混合物を、約60秒以下の間混合する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒を迅速に除去する前記段階が、粘弾性構造を形成する前記フィルムを与える、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を押出して、前記フィルムを形成する、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、フィルムに流し込み成形する、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、貯槽に供給する、請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記混合されたポリマー溶液およびスラリー混合物を、基材上に塗布する、請求項33記載の方法。
【請求項34】
請求項26記載の方法により作成されたフィルム。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512167(P2012−512167A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540927(P2011−540927)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/067698
【国際公開番号】WO2010/077780
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511051177)モノソル アールエックス リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】