合金物品における平坦度の誤差を低減させるプロセス
合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスが開示される。合金物品は、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度である第1の温度に加熱されてもよい。第1の温度で、機械力が合金物品に加えられてもよい。機械力は、合金物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある場合がある。合金物品は合金のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度まで冷却されてもよい。機械力は、第1の温度から第2の温度まで冷の合金物品の冷却の少なくとも一部の間、合金物品に維持されていてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は例えば、金属ならびに合金のプレートおよびシートのような金属および合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスを対象としている。
【背景技術】
【0002】
鉄系合金(例えば、鋼)は、例えば、フェライト系、フェライト・オーステナイト(二相)系、オーステナイト系、またはマルテンサイト系として合金の結晶構造に基づき分類される場合がある。フェライト合金は体心立方(BCC)結晶構造を有する。オーステナイト合金は面心立方(FCC)結晶構造を有する。フェライト・オーステナイト(二相)合金はオーステナイト相およびフェライト相の混合微細構造を有する。フェライト合金およびオーステナイト合金は平衡相図上に存在している安定相を有する。マルテンサイト合金は平衡相図上に存在しない非平衡かつ準安定相を有する。
【0003】
マルテンサイト合金は、母合金の結晶構造(マルテンサイト合金および相ならびにそれらの母合金および相の相対的元素組成が同一)における無拡散固相変態の結果として生じる場合がある。結晶構造におけるその変化は、母相の一様な変形の結果である。例えば、マルテンサイト鋼はFCC結晶構造から体心正方(BCT)結晶構造へのオーステナイト鋼の無拡散固相変態の結果として生じる。マルテンサイト相変態は様々な合金において、昇温された温度において母相からなる合金が急速に冷却(焼入れ)される際に発生する場合がある。合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度から合金のマルテンサイト変態開始温度、またはそれより低い温度までの冷却(焼入れ)速度は、固体拡散および平衡相の形成を防ぐため、十分な速さでなければならない。
【0004】
合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度から合金が急速に冷却(焼入れ)される場合、その温度が合金のマルテンサイト変態開始温度に達する時点でマルテンサイト相変態が開始する場合がある。冷却している合金の温度がマルテンサイト変態開始温度より低い温度に低下するに伴い、マルテンサイト相変態のおよぶ範囲は増大する。冷却している合金の温度がマルテンサイト変態終了温度に達するときに、合金の結晶構造は母相から非平衡かつ準安定マルテンサイト相へ全て変態している場合がある。冷却している合金をマルテンサイト変態開始温度とマルテンサイト変態終了温度との間の中間温度に維持する場合、マルテンサイト相変態のおよぶ範囲は経時的に変化しない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスを対象とする。合金物品は合金シート、合金プレート、または他の平面状の合金製品からなる場合がある。このようなプロセスの限定されない実施形態によると、合金物品は第1の温度まで加熱される。第1の温度は少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度であってもよい。機械力が第1の温度において合金物品に加えられる。機械力は物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある。合金物品は合金のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度まで冷却される。機械力は、合金物品を第1の温度から第2の温度まで冷却する間の少なくとも一部において、合金物品上に維持される。
【0006】
開示される発明は、本発明の概要に記載の実施形態に限定されないものと理解される。本発明は特許請求の範囲にのみ定義される本発明の範囲内にある変更および他の主題を含むことを目的としている。
【0007】
開示される限定されない実施形態の様々な特徴は、以下にある添付図の参照により、よりよく理解される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度での合金物品の概略側面断面図である。
【図1B】その領域がマルテンサイト変態開始温度とマルテンサイト変態終了温度との中間の温度にある合金物品の概略側面断面図である。
【図1C】合金物品のマルテンサイト変態終了温度以下の温度での概略側面断面図である。
【図2A】合金物品が、少なくともマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図2B)以下の温度へ、そして最終的に周辺温度(図2C)まで冷却される間における平坦度の誤差の発生を図示している合金物品の概略側面図である。
【図2B】合金物品が、少なくともマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図2B)以下の温度へ、そして最終的に周辺温度(図2C)まで冷却される間における平坦度の誤差の発生を図示している合金物品の概略側面図である。
【図2C】合金物品が、少なくともマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図2B)以下の温度へ、そして最終的に周辺温度(図2C)まで冷却される間における平坦度の誤差の発生を図示している合金物品の概略側面図である。
【図3A】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度へ、そして最終的には合金物品に圧縮力が全く加えられない周辺の温度状態(図3C)まで冷却される間に、圧縮力が合金物品に加えられる。
【図3B】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度へ、そして最終的には合金物品に圧縮力が全く加えられない周辺の温度状態(図3C)まで冷却される間に、圧縮力が合金物品に加えられる。
【図3C】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度へ、そして最終的には合金物品に圧縮力が全く加えられない周辺の温度状態(図3C)まで冷却される間に、圧縮力が合金物品に加えられる。
【図4A】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの別の実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から、マルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度へ、そして最終的に合金物品に張力が全く加えられない周辺温度の状態(図4C)まで冷却される間に、張力が合金物品に加えられる。
【図4B】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの別の実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から、マルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度へ、そして最終的に合金物品に張力が全く加えられない周辺温度の状態(図4C)まで冷却される間に、張力が合金物品に加えられる。
【図4C】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの別の実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から、マルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度へ、そして最終的に合金物品に張力が全く加えられない周辺温度の状態(図4C)まで冷却される間に、張力が合金物品に加えられる。
【図5】延伸操作中の合金物品の概略側面断面図である。
【図6】ローラーレベリング操作中の合金物品の概略側面断面図である。
【図7】プラテンプレスレベリング操作中の合金物品の概略側面断面図である。
【図8】ローラーレベリング中の2つの合金物品の積み重ねの概略斜視図である。
【図9A】合金プレートにおける平坦度の誤差の測定に使用された直線状のエッジバーの位置を示す、平坦度の誤差測定テーブルの概略上面図である。
【図9B】平坦度の誤差を示し、直線状のエッジバーが平坦度の誤差の測定に使用される平坦度の誤差測定テーブル上に位置する、合金プレートの概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において開示される実施形態のいくつかの説明は、他の要素、特徴、および態様を明確性の目的で排除する一方で、開示される実施形態の明確な理解に関係する要素、特徴、および態様のみを図示するために簡略化されたことが理解されるべきである。当業者は、開示される実施形態の本説明を考慮した上で、他の要素および/または特徴が、開示される実施形態の特定の実行または出願において望ましいことを認識するだろう。しかしながら、このような他の要素および/または特徴は、開示される実施形態の本説明を考慮した上で、当業者により容易に究明および実行される場合があり、したがって開示される実施形態の完全な理解が必要ではないため、このような要素および/または特徴の説明は本明細書に提供されない。このように、本明細書に記載の説明は、開示される実施形態の単に典型的かつ例示的なものにすぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。
【0010】
本開示において他に明示される場合を除き、量または特性を表す全ての数字は、全ての場合において「約(about)」という言葉により前置きされかつ修正されているものとして理解されるべきである。したがって、以下の説明に記載されるいかなる数値パラメーターも、これに反すると明示されない限り、本開示による合成物および方法において得ようとする所望の特性によって変化する場合がある。最低でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとする試みとしてではなく、本説明において記載される各数値パラメーターは、少なくとも報告される有効桁の数字を踏まえて、通常の概数法を適用することにより解釈されるべきである。
【0011】
また、本明細書に挙げられるどのような数値範囲も、そこに含まれる全ての副範囲を含むことを意図する。例えば、「1から10」の範囲は、挙げられている最小値1と挙げられている最大値10との間の(およびこれらを含む)全ての副範囲を含む、つまり、1以上の最小値および10以下の最大値を有することを意図する。本明細書に挙げられるどのような最大値限定も、そこに含まれる全てのより小さい数値限定を含み、また、本明細書に挙げられるどのような最小値限定も、そこに含まれる全てのより大きい数値限定を含むことを意図する。したがって、出願者は、特許請求の範囲を含め、本明細書に明確に挙げられる範囲内に含まれるどのような副範囲をも明確に挙げるために、本開示を改正する権利を留保する。このような範囲は全て、米国特許法第112条(35U.S.C.§112)第1の段落、および米国特許法第132条(35U.S.C.§132(a))の要件に従い、このような副範囲を明確に挙げるために改正するように、本明細書に本質的に開示されることを意図する。
【0012】
本明細書において使用される文法的な冠詞「1つの(one)」、「1つの(a)」、「1つの(an_)」、および「その(the)」は、他に明示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことを意図する。したがって、本明細書では、1つ以上(つまり、少なくとも1つ)の文法的なその冠詞の目的語を意味するために本明細書に使用される。例として、「1つの構成要素(a component)」は1つ以上の構成要素を意味し、したがって、可能性として2つ以上の構成要素が考えられ、記載の実施形態の実行において採用または使用される場合がある。
【0013】
本明細に参照により組み込まれると言われる、どのような特許、出版物、または他の開示物も、その全部または一部が、本明細書に完全に組み込まれるが、組み込まれた資料が、この開示において明確に記載される既存の定義、明細書、または他の開示物と矛盾しない範囲内においてのみである。このように、必要な範囲内において、本明細書に記載の明示的開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料に優先される。本明細書に参照により組み込まれると記載されるが、本明細書に記載される既存の定義、明細書、または他の開示物と矛盾する、どのような資料、またはその一部も、組み込まれる資料と既存の開示物の間に矛盾がない範囲内においてのみ組み込まれる。
【0014】
本開示は、様々な実施形態の説明を含む。本明細書に記載の実施形態は全て、例示的、実例的、および非限定的であることが理解されるべきである。したがって、本発明は様々な例示的、実例的、および非限定的実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、本開示によって明示的または本質的に記載されるか、または別法により明示的または本質的に支持される、任意の特徴を挙げるために改正してもよい特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0015】
様々な合金において、母相がマルテンサイト相変態中の時に、合金材料の比容積が増加することがある。例えば、BCTマルテンサイト鋼は、組成的に同一な母材のFCCオーステナイト鋼より低い密度および高い比容積を示す。結果として、母相合金が、昇温された温度からマルテンサイト相合金を形成するために焼入れされる時、合金材料の比容積は増加することがある。
【0016】
母相の合金物品が昇温された温度からマルテンサイト合金物品を形成するために焼入れされる時、その物品の表面および表面付近の領域は、その物品の内部容積領域よりも急速に冷却されることがある。結果として、合金物品の表面および表面付近の領域を形成する母相材料は、母相材料がその物品の内部容積領域を形成する前に、マルテンサイト相変態を受ける場合がある。これは、マルテンサイト相からなる表面および表面付近の領域に囲まれた、母相からなる内部容積領域からなる中間混合相物品をもたらすことがある。母相からなる内部容積領域は、後にマルテンサイト相に変態し、拡大し、それによって、後から変態したマルテンサイト相を囲んでいる先に変態したマルテンサイト相を、引張状態にする。これは、例えば、マルテンサイト相変態の間および/または後に、合金物品の割れ、反り、歪曲、または他の変形をもたらす場合がある。
【0017】
図1A〜図1Cは、合金物品10を図示する。図1Aは、その合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)における、またはそれより高い初期温度(T0)における合金物品10を示す。合金物品10は全て母相12からなる。
【0018】
図1Bは、合金物品10の表面および表面付近の領域が、その合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)とマルテンサイト変態終了温度(TMF)との中間の温度(Ti)である、合金物品10を示す。合金物品10は、合金物品10の内部容積領域を形成する母相12からなる。内部容積領域は、合金のマルテンサイト変態開始温度より低い領域に温度を低下させるために十分な熱エネルギーを未だ失っていないため、マルテンサイト変態開始温度またはそれより高い温度にとどまる。
【0019】
内部容積領域を形成する母相12は、合金物品10の表面および表面付近の領域を形成しているマルテンサイト相14に囲まれている。合金物品10の表面および表面付近の領域は、その合金のマルテンサイト変態開始温度より低い温度に低下させるため、十分な熱エネルギーを失った。その領域における結晶構造の差異をもたらす合金物品10の領域間の温度差は、表面および表面周辺の領域がその物品の中間領域前に十分な熱エネルギーを失うという事実による。
【0020】
図1Cは、その合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)またはそれより低い最終温度(Tf)での合金物品10を示す。合金物品10は、全てのマルテンサイト相14からなる。合金物品10を形成する材料の比容積は、マルテンサイト相変態の間に増加し、図1Cに図示されるように、合金物品10の歪曲をもたらす。
【0021】
例えば、合金シート、合金プレート、および他の平面状合金物品における平坦度の誤差の制御は、高強度および/または高硬度合金製品の使用者にとって重要である場合がある。本明細書に使用される場合、「平面状合金物品」は、合金材料から形成される、および実質的に平坦であることが意図される少なくとも1つの表面からなる物品を指す。平面状合金物品は、合金シート、合金プレート、および他の平面状の幾何学的形状を有する製品形状を含む。様々な組立品、工学的構造物、形成または製造された構成要素等の用途を目的とした平面状合金物品における平坦度の誤差は、平面状合金物品から形成された構成要素の嵌合する表面、縁、および/または末端の均一配置を達成することに困難を引き起こすことがある。これは、許容可能な形、大きさ、および/または平坦許容値(例えば、形成と調整(form and fit)の特性)を満たすための高費用の再作業および/または他の是正措置の必要性をもたらすことがある。
【0022】
合金物品がマルテンサイト相変態中の熱硬化操作は、熱処理された合金物品における平坦度の誤差を誘導することがある。結果として、空気または液体焼入れ操作を使用する硬化熱処理は、例えば、平坦度の誤差を示す合金物品を製造することがある。本明細書に記載される様々な実施形態は、硬化した(例えば、マルテンサイト相変態を誘導するために焼入れされた)合金物品において平坦度の誤差を低下させることがあるプロセスに関連しており、それは、単一のおよび/または組み立てられた合金物品の寸法公差および形状特性を維持することにおける利点を提供する場合がある。
【0023】
本明細書に記載の実施形態は、合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスを対象としている。例えば、プロセスは、合金物品を少なくともその合金のマルテンサイト変態開始温度程度である第1の温度に加熱することを含んでもよい。機械力が、第1の温度において合金物品に加えられてもよい。機械力が、その物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある場合がある。合金物品は、その合金のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度に冷却されてもよい。機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度に冷却される間の少なくとも一部の間、合金物品上に維持されてもよい。
【0024】
様々な実施形態において、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は連続的に合金物品に維持されてもよい。様々な他の実施形態において、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は不連続的に合金物品上に維持されてもよい。合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は逐次的に合金物品上に維持されてもよい。例えば、加力は合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって、循環的または周期的であってもよい。様々な実施形態において、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は半連続的および逐次的に合金物品上に維持されてもよい。
【0025】
様々な実施形態において、機械力は一定の機械力であってもよい。例えば、その力が一定の強度でおよび/または一定の方向で合金物品に加えられてもよい。一定の機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間を通して、連続的に、半連続的に、または不連続的に加えられてもよい。一定の機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって逐次的に加えられてもよい。例えば、一定の機械力を、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって、合金物品の表面に加える、合金物品の表面から取り除く、合金物品の表面に再び加える、合金物品の表面から取り除く、等々と繰り返してもよい。一定の機械力は、合金物品の少なくとも1つの表面に均一に加えられてもよい。一定の機械力は合金物品の少なくとも1つの表面に不均一に加えられてもよい。例えば、一定の機械力が合金物品の表面の様々な領域に加えられてもよい一方で、その表面のその他の領域には加えられない。
【0026】
様々な実施形態において、機械力は変化する機械力であってもよい。例えば、その力は変化する強度でおよび/または変化する方向で合金物品に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間を通して、連続的に、半連続的に、または不連続的に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって逐次的に加えられてもまたよい。例えば、機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって所定の循環的波形に従って加えられた力の強度が変化するように、合金物品の表面に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品の少なくとも1つの表面にわたって均一に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品の表面にわたって不均一に加えられてもまたよい。例えば、変化する機械力は合金物品の表面の様々な領域に加えられてもよい一方で、機械力がその表面のその他の領域には加えられなくてもよい。
【0027】
図2A〜図2Cは合金物品20を図示し、図2Aは少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)程度の温度(T)における合金物品20を示す。図2Bは合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)以下の温度(T)における合金物品20を示し、図2Cは周辺温度(TA)に等しい温度(T)の合金物品20を示す。合金物品20が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度(図2Bおよび図2C)以下の温度まで冷却される間、外力は合金物品20に加えられない。図2Bおよび図2Cで示すように、合金物品20はマルテンサイト相変態後における縦方向の平坦度の誤差を示す。合金物品20の幾何学的歪みおよび平坦度の誤差は、縦方向(図2Bおよび図2Cに示すように)および/または横方向(図2Bおよび図2Cに示されていない)で起こる場合がある。
【0028】
一般的に、平面状合金物品は、物品のゲージ(すなわち、厚み)が減少する時および物品の長さおよび/または幅(すなわち、実質的に平坦だとされる少なくとも1つの表面の物理的寸法)が増す時に、歪曲および平坦度の誤差による影響をうけやすい。
【0029】
様々な実施形態において、合金物品に加えられた機械力は、合金物品を圧縮する力を含んでもよい。図3A〜図3Cは合金物品30を図示し、図3Aは少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)程度の温度(T)における合金物品30を示す。図3Bは合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)以下の温度(T)における合金物品30を示し、図3Cは周辺温度(TA)に等しい温度(T)の合金物品30を示す。矢印35で表された圧縮力は、合金物品30が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度まで冷却される間、合金物品30に加えられる。図3Cに示すように、合金物品30はマルテンサイト相変態後の実質的に低下した平坦度の誤差を示す。平坦度の誤差の実質的低下は、圧縮力が取り除かれて合金物品30が周辺温度に達した後も保持される。
【0030】
様々な実施形態において、圧縮機械力はローラーレベリング操作を用いて加えられてもよい。ローラーレベリングは、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度である温度の時に開始し、合金物品が合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。ローラーレベリング操作の間、ローラーは、ローラーおよび合金物品の表面の接触の位置が経時的に変化するにつれて、半連続的および逐次的な力を合金物品に加えてもよい。
【0031】
様々な実施形態において、ローラーレベリング操作の間、合金物品は、マルテンサイト変態開始温度においてまたはそれより高い温度で開始し、マルテンサイト変態終了温度においてまたはそれより低い温度で終了する温度範囲にわたる冷却の間、レベリングローラーと接触していてもよい。ローラーレベリング操作は、単一の通過により合金物品をローラーレベリングすることを含んでもよい。単一の通過は、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始してもよく、合金物品がマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。ローラーレベリング操作は、複数の通過により合金物品をローラーレベリングすることを含んでもよい。第1の通過は合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始してもよく、最終の通過は合金物品がマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。
【0032】
様々な実施形態において、圧縮機械力はプラテンプレスレベリング操作を用いて加えられてもよい。例えば、合金物品はプラテンプレスの2つの平行面の間に配置されてもよい。圧縮力はプラテンプレスの機械的なプレス作用を通して物品に加えられてもよい。プラテンのプレスは合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始してもよく、合金物品が合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。
【0033】
様々な実施形態において、プラテンプレスレベリング操作の間、圧縮機械力は、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度までの合金物品の冷却の少なくとも一部の間、合金物品上に維持されてもよい。合金物品は、マルテンサイト変態開始温度におけるまたはそれより上の温度で開始し、マルテンサイト変態終了温度におけるまたはそれより下の温度で終了する温度領域を通じた冷却の間、少なくとも1つのプラテンの面と連続的にまたは不連続的に接触してもよい。一定のまたは変化する圧縮力が、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度まで冷却される間に、プラテンプレスのプラテンによって連続的にまたは不連続的に合金物品上に維持されてもよい。
【0034】
様々な実施形態において、合金物品に加えられる機械力は、合金物品を引張状態にする力を含んでもよい。図4A〜図4Cは合金物品40を図示し、図4Aは少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)程度の温度(T)における合金物品40を示す。図4Bは合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)以下の温度(T)の合金物品40を示し、図4Cは周辺温度(TA)に等しい温度(T)の合金物品30を示す。矢印45で表された張力は、合金物品40が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度まで冷却される間、合金物品40に加えられる。図4Cで示すように、合金物品40はマルテンサイト相変態後の実質的に低下した平坦度の誤差を示す。平坦度の誤差の実質的低下は、張力が取り除かれ合金物品40が周辺温度に達した後も保持される。
【0035】
様々な実施形態において、張力は延伸操作を用いて加えられてもよい。延伸操作を用いる張力の適用は、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始し、合金物品が合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。
【0036】
様々な実施形態において、延伸操作の間引張延伸力は、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度までの合金物品の冷却の少なくとも一部の間、合金物品を同時に反対方向に引くことによって合金物品に維持されてもよい。一定のまたは変化する引張延伸力は、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度まで冷却される間、連続的にまたは不連続的に合金物品上に維持されてもよい。
【0037】
様々な実施形態において、合金物品は、合金シート、合金プレート、または他の平面状合金物品からなる場合がある。様々な実施形態において、合金物品は、鉄のマルテンサイト合金または非鉄のマルテンサイト合金からなる場合がある。例えば、本明細書に開示されるプロセスに従って処理される合金物品は、チタン系マルテンサイト合金物品、コバルト系マルテンサイト合金物品、および他の非鉄のマルテンサイト合金物品を含んでもよいが、それに限定されない。
【0038】
様々な実施形態において、合金物品は、マルテンサイト鋼物品またはマルテンサイト・ステンレス鋼物品からなる場合がある。様々な実施形態において、合金物品は、析出硬化鋼物品または析出硬化ステンレス鋼物品からなる場合がある。本明細書に開示されるプロセスに従って処理される合金物品は、400系ステンレス鋼物品、500系低合金鋼物品、および600系ステンレス鋼物品を含んでもよいが、それに限定されない。例えば、合金は、403ステンレス鋼、410ステンレス鋼、416ステンレス鋼、419ステンレス鋼、420ステンレス鋼、440ステンレス鋼、522低合金鋼、529低合金鋼、13−8ステンレス鋼、15−5ステンレス鋼、15−7ステンレス鋼、17−4ステンレス鋼、または17−7ステンレス鋼からなる場合がある。様々な実施形態において、合金物品は、表1または表2に定められるような化学組成式からなるステンレス鋼を含んでもよい。
【表1】
【表2】
【0039】
様々な実施形態において、合金物品は、合金シート、合金プレート、または、空気焼入れ硬化性高強度、および/または高硬度鋼合金を構成する他の平面状合金物品からなる場合がある。例えば、様々な実施形態において、合金物品は、表3または表4に定められるような化学組成式からなる鋼を含んでもよい。
【表3】
【表4】
【0040】
様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理される合金物品は、重量パーセントにおいて、0.22〜0.32炭素、3.50〜4.00ニッケル、1.60〜2.00クロム、0.22〜0.37モリブデン、0.80〜1.20マンガン、および0.25〜0.45ケイ素を含む合金からなってもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理される合金物品は、重量パーセントにおいて、0.42〜0.52炭素、3.75〜4.25ニッケル、1.00〜1.50クロム、0.22〜0.37モリブデン、0.20〜1.00マンガン、および0.20〜0.50ケイ素を含む合金からなってもよい。
【0041】
本明細書に記載のプロセスの様々な実施形態に従って処理される合金物品は、0.030インチから5.000インチの範囲の厚さを有する平面状合金物品からなってもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理をされた平面状合金物品は、0.030インチから2.000インチの範囲内の厚さを有してもよい。
【0042】
様々な実施形態において、合金のマルテンサイト変態開始温度またはそれより高い温度から、合金のマルテンサイト変態終了温度またはそれより低い温度への冷却は、0.0001°F/秒から1000°F/秒の推定温度降下速度で実施されてもよい。実際に利用された温度降下速度は、合金のマルテンサイト変態開始温度、合金のマルテンサイト変態終了温度、力が初めに合金物品に加えられた温度、合金物品と接触している何らかの処理装置の温度、合金物品周囲の環境温度、合金物品の幾何学的寸法および形状、ならびにその物品を形成している特定の合金の化学成分に依存するであろう。
【0043】
様々な実施形態において、合金のマルテンサイト変態開始温度またはそれより高い温度から、合金のマルテンサイト変態終了温度またはそれより低い温度への冷却は、空気冷却を用いて実施されてもよい。本明細書に記載のプロセスに従って処理される物品は、その物品上に流れる強制空気流動によって対流的に空気冷却されてもよく、または物品は、強制空気流動なしに外気環境内で対流的に空気冷却されてもよい。本明細書に記載のプロセスに従って処理される物品は、合金物品と接触する何らかの処理装置表面を通じて、物品からの熱エネルギーの伝達によって伝導的に冷却されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理される物品は、合金物品と接触する処理装置の表面を通じた熱伝達により、対流的に空気冷却され、かつ伝導的に冷却されてもよい。
【0044】
延伸操作において、例えば、合金物品の対向する端面、および/またはその付近での領域は、処理装置と接触する場合があり、そして合金物品の主な平面状表面の大部分は、強制空気または外気と接触してもよい。図5は、矢印55によって示される張力が処理装置53を通じて合金物品50に加えられる、延伸操作中の合金物品50を図示する。処理装置53は、合金物品50の対向する端面、およびその付近の領域51において、合金物品50と接触する。合金物品50の主な平面状表面の大部分は、強制空気または外気と接触する。このようにして、熱は空気と接触する主な平面状表面から対流的に伝達する場合があり、かつ熱は処理装置53を通じて伝導的に伝達する場合がある。
【0045】
ローラーレベリング操作において、例えば、合金物品の主な平面状表面領域はローラー表面と接触していてもよく、また、主な平面状表面の他の領域は、強制空気または外気と接触していてもよい。図6は、矢印65によって示される、圧縮力がローラー63を通じて合金物品60に加えられる、ローラーレベリング操作中の合金物品60を図示する。ローラー63は、合金物品60の主な平面状表面上の領域61において合金物品60と接触する。合金物品60の主な平面状表面の大部分は、強制空気または外気と接触する。このようにして、熱は空気と接触する平面状表面から対流的に伝達する場合があり、かつローラー63を通じて伝導的に伝達する場合がある。ローラーが合金物品60の主な平面状表面上を進むに従い、さらなる熱がローラー63を通じて合金物品60から伝導的に伝達する場合がある。
【0046】
プラテンプレスレベリング操作において、例えば、合金物品の主な平面状表面の領域は、1つ以上のプラテンと接触していてもよく、かつ主な平面状表面の他の領域は、強制空気または外気と接触していてもよい。あるいは、プラテンプレスレベリング操作において、合金物品の主な平面状表面全体は、1つ以上のプラテンと接触していてもよいが、強制空気または外気と接触している主な平面状表面領域はない。図7は、矢印75によって示される圧縮力が、プラテン73を通じて合金物品70に加えられるプラテンプレスレベリング操作中の合金物品70を図示する。プラテン73は、合金物品70の主な平面状表面全体を形成する、領域71における合金物品70と接触している。合金物品70の主な平面状表面71は、強制空気または外気と接触しない。このようにして、熱はプラテン73と接触している主な平面状表面71から伝導的に伝達する場合がある。熱は空気と接触している合金物品70の側面表面および端部表面から対流的に伝達する場合もある。
【0047】
様々な実施形態に従って、それぞれ、延伸操作、ローラーレベリング操作、およびプラテンプレスレベリング操作を受けている3つの同一の合金物品に対して、すべての他の温度変数が等しい(つまり、外気温度、表面と接している処理装置の温度、等)とすれば、プラテンプレスレベリング操作に見られる冷却速度が、延伸操作において見られる冷却速度より大きいであろう、ローラーレベリング操作に見られる冷却速度より大きいということが予期されることになる。
【0048】
様々な実施形態において、加えられる機械力は、処理温度範囲内(つまり、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の開始温度から、合金のマルテンサイト変態終了温度以下の終了温度まで)の温度点での合金物品の降伏強さ(それぞれ圧縮状態または伸長状態にある)に等しいかまたはそれより大きい強度を有する場合がある。このようにして、加えられる力の強度、および/または方向は、合金物品の処理温度範囲、合金の特定の化学成分、および/または合金物品の幾何学的図形および寸法によって決まる場合がある。
【0049】
加えられる力の強度、および/または方向は、力を加えるために使用される特定の操作(例えば、延伸、ローラーレベリング、およびプラテンプレスレベリング)によっても変わる場合もある。様々な実施形態において、加えられる力は、力が加えられる温度での最終的な引っ張り強さに近づく強度を有してもよい。様々な実施形態において、加えられる力は、合金物品の降伏強さ(それぞれ圧縮または伸長)とほぼ等しい強度を有してもよい。様々な実施形態において、加えられる力は、加力操作の間に合金物品の厚さが減少しない程の強度を有してもよい。様々な実施形態において、加えられる力は、合金物品の降伏強さ(それぞれ圧縮または伸長)より小さい強度を有してもよい。
【0050】
様々な実施形態において、ローラーレベリング操作は、ローラーの接触域内で、平面状合金物品の主な平面状表面へ力を加える。比較的均一な圧縮力を加えるために、合金物品は連続的および逐次的な様態でローラーの接触域へ導入され、ローラーが合金物品の主な平面状表面へ比較的一定の力を加える。このようにして、主な平面状表面の隣接域は逐次的に、同一の状態下で同一の力を受ける。
【0051】
様々な実施形態において、2つ以上の平面状合金物品は、合金物品の主な平面状表面が接触するように、積み重ねられ、力がその積み重なったものに加えられる。例えば、図8は、矢印85によって示される圧縮力が、積み重ねた合金物品80へローラー83を通じて加えられる、ローラーレベリング操作中の2つの平面状合金物品80の積み重ねを図示する。ローラー83は、上側の合金物品80の上側の主な平面状表面および下側の合金物品80の下側の主な平面状表面の領域81において、合金物品80の積み重ねと接触する。図8はローラーレベリング操作中の2つの合金物品を示すのみだが、3つ以上の合金物品が、同様の様態で重ねられてもよく、2つ以上の積み重ねられた合金物品が、本明細書に記載の様々な実施形態に従って、プラテンプレスレベリング操作または延伸操作されてもよいことが理解される。
【0052】
様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、マルテンサイトの、および/または析出硬化合金の硬化熱処理およびその後の冷却と統合され、母相合金からマルテンサイト相、および/または析出硬化合金を形成する。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、以前の処理の間、および/またはその後に発達した平坦度誤差を改善するために、以前に処理した合金物品に適用されてもよい。例えば、平坦度誤差を示しているマルテンサイト合金物品は、少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度、またはマルテンサイト変態開始温度を下回る温度、またはマルテンサイト変態終了温度を下回る温度へ再加熱され、そして本明細書に記載の様々な実施形態に従い処理されてもよい。しかしながら、本明細書に記載の様々な実施形態に従った改善処理が合金物品への様々な影響を有する場合があるので注意しなければならず、それは改善処理前および改善処理後の合金物品を比較する場合に、粒度、強靱性、強度、硬度、耐食性、弾道抵抗、等における治金差異を引き起こすことを含むが、必ずしもそれに限定されない。
【0053】
以下の実例的かつ非限定的な例は、それらの範囲制限なしに本明細書に開示される実施形態をさらに説明することを意図する。当業者は、実施例の変更が、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で可能だということを理解するであろう。全ての割合および割合は別段の明示がない限り、重量による。
【実施例】
【0054】
実施例1
【0055】
0.250×101×252インチの合金プレートは、表5に規定されるように組成式を有する高強度鋼合金から調製された。
【表5】
【0056】
鋼合金プレートは炉内に配置され、鋼合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度まで加熱された。機械力はローラーを通る7回の通過を含むローラー平坦化操作を用いて、プレートに加えられた。機械力は516°Fの温度で開始(つまり、第1の通過)された。機械力の適用は、プレートが217°Fの温度に達した時点で終了(つまり、第7の通過)された。プレートはローラーレベリング操作の間、外気中で冷却された。プレートの冷却プロファイルは表6に提供される。
【表6】
【0057】
第1の通過の開始と第7の通過の終了との間に合計19分が経過した。プレートは第1の通過から第5の通過まで連続的にローラー操作された。プレートが加力なしに冷却されることを可能とするため、ローラー操作は第5の通過と第6の通過との間で中断された。プレートは第6の通過と第7の通過との間、連続的にローラー操作された。プレートは第7の通過後、加力なしに周辺温度(約70°F)まで冷却することができた。
【0058】
周辺温度におけるプレートは、平坦度テーブルを用いて平坦度の誤差の検査を行った。図9Aおよび図9Bは止め具98を有する平坦度テーブル97を図示する。図9Aで示すように、プレート90はテーブル97の表面の周囲内に、および止め具98に隣接して配置される。直線状のエッジバー99が、図9Aに示すようにプレート90の表面の様々な部位に配置される。それぞれの位置において、空隙値(図9Bにおいて矢印96によって示される)として測定された平坦度の誤差は、バー99の下のエッジとプレート表面との間の最大距離として測定される。
【0059】
平坦度テーブルおよびプレートは、清潔であり異物がない状態であった。0.250×101×252インチのプレートは、テーブル表面の周囲内に位置した。1つのプレートの縁はテーブルの1側面に沿った止め具に当接して付けられた。長さ9フィートのアルミニウムの直線状エッジバーが、すべての平坦度の誤差の測定に使用された。長さ9フィートの直線状エッジバーは図9Aで図示されるように位置付けられた。それぞれの位置において、バーの下のエッジとプレート表面との間の平坦度の最大誤差はバーの9フィートのバー長さに沿って3箇所で測定された。
【0060】
0.250×101×252インチの鋼プレートは、縦方向で最大3/32インチ(0.09375インチ)(直線状エッジバーを253インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有し、横方向で最大1/4インチ(0.25インチ)(直線状エッジバーを101インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有した。0.250×101×252インチの高強度鋼プレートにおける平坦度の誤差に対する最大許容度は、参照により本明細書に組み込まれるASTM A6/A6M−08、Standard Specification for General Requirements for Rolled Structural Steel Bars, Plates, Shapes, and Sheet Pilingに準拠すると2インチである。ASTM A6/A6M−08は12フィートの部分において測定された許容値を提供するが、ここで9フィートのバーを用いて測定された平坦度の誤差はその典型であり、著しく低い測定された平坦度の誤差を前提とした12フィートのバーを使用した測定と実質的に異ならないはずである。
実施例2
【0061】
0.200×102×296インチの合金プレートは、表5で規定されるように化学組成式を有する高強度鋼合金から調製された。鋼合金プレートは炉内に配置され、鋼合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度まで加熱された。機械力はローラーを通した9回の通過を含むローラー平坦化操作を用いて、プレートに加えられた。プレートは第1の通過から第9の通過にわたって連続的にローラー操作された。機械力は585°Fの温度で開始(つまり、第1の通過)された。機械力の適用はプレートが233°Fの温度に達した時点で終了(つまり、第9の通過)された。プレートはローラーレベリング操作の間、外気で冷却された。プレートの冷却プロファイルは表7に提供される。
【表7】
【0062】
プレートは第9の通過後、加力なしに周辺温度(約70°F)まで冷却することができた。周辺温度におけるプレートは、実施例1と関連して記載されるように、平坦度テーブルを用いて平坦度の誤差の検査を行った。
【0063】
0.200×102×296インチの鋼プレートは、縦方向で最大1/16インチ(0.0625インチ)(直線状エッジバーを296インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有し、横方向で最大7/32インチ(0.21875インチ)(直線状エッジバーを102インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有した。0.200×102×296インチの高強度鋼プレートにおける平坦度の誤差の最大許容度は、ASTM A6/A6M−08に準拠すると2と3/8インチ(2.375インチ)である。
実施例3
【0064】
0.200×103×292インチの合金プレートは、表5で規定されるように化学組成式を有する高強度鋼合金から調整された。鋼合金プレートは炉内に配置され、鋼合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度まで加熱された。機械力はローラーを通した9回の通過を含むローラー平坦化操作を用いて、プレートに加えられた。プレート第1の通過から第9の通過にわたって連続的にローラー操作した。機械力は585°Fの温度で開始(つまり、第1の通過)された。機械力の適用はプレートが263°Fの温度に達した時点で終了(つまり、第9の通過)された。プレートはローラーレベリング操作の間、外気で冷却された。プレートの冷却プロファイルは表8において提供される。
【表8】
【0065】
プレートは第9の通過後、加力なしに周辺温度(約70°F)まで冷却することができた。周辺温度におけるプレートは、実施例1と関連して記載されるように、平坦度テーブルを用いて平坦度の誤差の検査を行った。
【0066】
0.200×103×292インチの鋼プレートは縦方向で最大1/16インチ(0.0625インチ)(直線状エッジバーを292インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有し、横方向で最大17/64インチ(0.265625インチ)(直線状エッジバーは103インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有した。0.200×102×296インチの高強度鋼プレートにおける平坦度の誤差の最大許容度は、ASTM A6/A6M−08に準拠すると2と3/8インチ(2.375インチ)である。
【0067】
本開示は、様々な例示的、実例的、かつ限定されない実施形態に関連して記載されている。しかしながら、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を逸脱しない範囲で任意の開示された実施形態(もしくはそれらの一部)の様々な置き換え、変更または組み合わせを行うことができることを当業者は理解するであろう。したがって、本開示は本特許に明記されない追加的な実施形態を含むことが予想および理解される。このような実施形態は、例えば、本明細書に記載される実施形態の任意の開示されたステップ、含有物、成分、構成要素、要素、特徴、態様、等を組み合わせ、変更、または再編することで実現されてもよい。したがって、この開示は様々な例示的、実例的、かつ限定されない実施形態の説明によって限定されず、むしろ特許請求の範囲によってのみ限定される。このようにして、出願者は審査の間、本明細書で様々に記載するように特徴を追加するための本特許請求の範囲を改正する権利を保持する。
【技術分野】
【0001】
本開示は例えば、金属ならびに合金のプレートおよびシートのような金属および合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスを対象としている。
【背景技術】
【0002】
鉄系合金(例えば、鋼)は、例えば、フェライト系、フェライト・オーステナイト(二相)系、オーステナイト系、またはマルテンサイト系として合金の結晶構造に基づき分類される場合がある。フェライト合金は体心立方(BCC)結晶構造を有する。オーステナイト合金は面心立方(FCC)結晶構造を有する。フェライト・オーステナイト(二相)合金はオーステナイト相およびフェライト相の混合微細構造を有する。フェライト合金およびオーステナイト合金は平衡相図上に存在している安定相を有する。マルテンサイト合金は平衡相図上に存在しない非平衡かつ準安定相を有する。
【0003】
マルテンサイト合金は、母合金の結晶構造(マルテンサイト合金および相ならびにそれらの母合金および相の相対的元素組成が同一)における無拡散固相変態の結果として生じる場合がある。結晶構造におけるその変化は、母相の一様な変形の結果である。例えば、マルテンサイト鋼はFCC結晶構造から体心正方(BCT)結晶構造へのオーステナイト鋼の無拡散固相変態の結果として生じる。マルテンサイト相変態は様々な合金において、昇温された温度において母相からなる合金が急速に冷却(焼入れ)される際に発生する場合がある。合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度から合金のマルテンサイト変態開始温度、またはそれより低い温度までの冷却(焼入れ)速度は、固体拡散および平衡相の形成を防ぐため、十分な速さでなければならない。
【0004】
合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度から合金が急速に冷却(焼入れ)される場合、その温度が合金のマルテンサイト変態開始温度に達する時点でマルテンサイト相変態が開始する場合がある。冷却している合金の温度がマルテンサイト変態開始温度より低い温度に低下するに伴い、マルテンサイト相変態のおよぶ範囲は増大する。冷却している合金の温度がマルテンサイト変態終了温度に達するときに、合金の結晶構造は母相から非平衡かつ準安定マルテンサイト相へ全て変態している場合がある。冷却している合金をマルテンサイト変態開始温度とマルテンサイト変態終了温度との間の中間温度に維持する場合、マルテンサイト相変態のおよぶ範囲は経時的に変化しない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスを対象とする。合金物品は合金シート、合金プレート、または他の平面状の合金製品からなる場合がある。このようなプロセスの限定されない実施形態によると、合金物品は第1の温度まで加熱される。第1の温度は少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度であってもよい。機械力が第1の温度において合金物品に加えられる。機械力は物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある。合金物品は合金のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度まで冷却される。機械力は、合金物品を第1の温度から第2の温度まで冷却する間の少なくとも一部において、合金物品上に維持される。
【0006】
開示される発明は、本発明の概要に記載の実施形態に限定されないものと理解される。本発明は特許請求の範囲にのみ定義される本発明の範囲内にある変更および他の主題を含むことを目的としている。
【0007】
開示される限定されない実施形態の様々な特徴は、以下にある添付図の参照により、よりよく理解される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度での合金物品の概略側面断面図である。
【図1B】その領域がマルテンサイト変態開始温度とマルテンサイト変態終了温度との中間の温度にある合金物品の概略側面断面図である。
【図1C】合金物品のマルテンサイト変態終了温度以下の温度での概略側面断面図である。
【図2A】合金物品が、少なくともマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図2B)以下の温度へ、そして最終的に周辺温度(図2C)まで冷却される間における平坦度の誤差の発生を図示している合金物品の概略側面図である。
【図2B】合金物品が、少なくともマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図2B)以下の温度へ、そして最終的に周辺温度(図2C)まで冷却される間における平坦度の誤差の発生を図示している合金物品の概略側面図である。
【図2C】合金物品が、少なくともマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図2B)以下の温度へ、そして最終的に周辺温度(図2C)まで冷却される間における平坦度の誤差の発生を図示している合金物品の概略側面図である。
【図3A】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度へ、そして最終的には合金物品に圧縮力が全く加えられない周辺の温度状態(図3C)まで冷却される間に、圧縮力が合金物品に加えられる。
【図3B】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度へ、そして最終的には合金物品に圧縮力が全く加えられない周辺の温度状態(図3C)まで冷却される間に、圧縮力が合金物品に加えられる。
【図3C】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度からマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度へ、そして最終的には合金物品に圧縮力が全く加えられない周辺の温度状態(図3C)まで冷却される間に、圧縮力が合金物品に加えられる。
【図4A】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの別の実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から、マルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度へ、そして最終的に合金物品に張力が全く加えられない周辺温度の状態(図4C)まで冷却される間に、張力が合金物品に加えられる。
【図4B】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの別の実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から、マルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度へ、そして最終的に合金物品に張力が全く加えられない周辺温度の状態(図4C)まで冷却される間に、張力が合金物品に加えられる。
【図4C】合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスの別の実施形態を図示する合金物品の概略側面図であり、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から、マルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度へ、そして最終的に合金物品に張力が全く加えられない周辺温度の状態(図4C)まで冷却される間に、張力が合金物品に加えられる。
【図5】延伸操作中の合金物品の概略側面断面図である。
【図6】ローラーレベリング操作中の合金物品の概略側面断面図である。
【図7】プラテンプレスレベリング操作中の合金物品の概略側面断面図である。
【図8】ローラーレベリング中の2つの合金物品の積み重ねの概略斜視図である。
【図9A】合金プレートにおける平坦度の誤差の測定に使用された直線状のエッジバーの位置を示す、平坦度の誤差測定テーブルの概略上面図である。
【図9B】平坦度の誤差を示し、直線状のエッジバーが平坦度の誤差の測定に使用される平坦度の誤差測定テーブル上に位置する、合金プレートの概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において開示される実施形態のいくつかの説明は、他の要素、特徴、および態様を明確性の目的で排除する一方で、開示される実施形態の明確な理解に関係する要素、特徴、および態様のみを図示するために簡略化されたことが理解されるべきである。当業者は、開示される実施形態の本説明を考慮した上で、他の要素および/または特徴が、開示される実施形態の特定の実行または出願において望ましいことを認識するだろう。しかしながら、このような他の要素および/または特徴は、開示される実施形態の本説明を考慮した上で、当業者により容易に究明および実行される場合があり、したがって開示される実施形態の完全な理解が必要ではないため、このような要素および/または特徴の説明は本明細書に提供されない。このように、本明細書に記載の説明は、開示される実施形態の単に典型的かつ例示的なものにすぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。
【0010】
本開示において他に明示される場合を除き、量または特性を表す全ての数字は、全ての場合において「約(about)」という言葉により前置きされかつ修正されているものとして理解されるべきである。したがって、以下の説明に記載されるいかなる数値パラメーターも、これに反すると明示されない限り、本開示による合成物および方法において得ようとする所望の特性によって変化する場合がある。最低でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとする試みとしてではなく、本説明において記載される各数値パラメーターは、少なくとも報告される有効桁の数字を踏まえて、通常の概数法を適用することにより解釈されるべきである。
【0011】
また、本明細書に挙げられるどのような数値範囲も、そこに含まれる全ての副範囲を含むことを意図する。例えば、「1から10」の範囲は、挙げられている最小値1と挙げられている最大値10との間の(およびこれらを含む)全ての副範囲を含む、つまり、1以上の最小値および10以下の最大値を有することを意図する。本明細書に挙げられるどのような最大値限定も、そこに含まれる全てのより小さい数値限定を含み、また、本明細書に挙げられるどのような最小値限定も、そこに含まれる全てのより大きい数値限定を含むことを意図する。したがって、出願者は、特許請求の範囲を含め、本明細書に明確に挙げられる範囲内に含まれるどのような副範囲をも明確に挙げるために、本開示を改正する権利を留保する。このような範囲は全て、米国特許法第112条(35U.S.C.§112)第1の段落、および米国特許法第132条(35U.S.C.§132(a))の要件に従い、このような副範囲を明確に挙げるために改正するように、本明細書に本質的に開示されることを意図する。
【0012】
本明細書において使用される文法的な冠詞「1つの(one)」、「1つの(a)」、「1つの(an_)」、および「その(the)」は、他に明示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことを意図する。したがって、本明細書では、1つ以上(つまり、少なくとも1つ)の文法的なその冠詞の目的語を意味するために本明細書に使用される。例として、「1つの構成要素(a component)」は1つ以上の構成要素を意味し、したがって、可能性として2つ以上の構成要素が考えられ、記載の実施形態の実行において採用または使用される場合がある。
【0013】
本明細に参照により組み込まれると言われる、どのような特許、出版物、または他の開示物も、その全部または一部が、本明細書に完全に組み込まれるが、組み込まれた資料が、この開示において明確に記載される既存の定義、明細書、または他の開示物と矛盾しない範囲内においてのみである。このように、必要な範囲内において、本明細書に記載の明示的開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料に優先される。本明細書に参照により組み込まれると記載されるが、本明細書に記載される既存の定義、明細書、または他の開示物と矛盾する、どのような資料、またはその一部も、組み込まれる資料と既存の開示物の間に矛盾がない範囲内においてのみ組み込まれる。
【0014】
本開示は、様々な実施形態の説明を含む。本明細書に記載の実施形態は全て、例示的、実例的、および非限定的であることが理解されるべきである。したがって、本発明は様々な例示的、実例的、および非限定的実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、本開示によって明示的または本質的に記載されるか、または別法により明示的または本質的に支持される、任意の特徴を挙げるために改正してもよい特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0015】
様々な合金において、母相がマルテンサイト相変態中の時に、合金材料の比容積が増加することがある。例えば、BCTマルテンサイト鋼は、組成的に同一な母材のFCCオーステナイト鋼より低い密度および高い比容積を示す。結果として、母相合金が、昇温された温度からマルテンサイト相合金を形成するために焼入れされる時、合金材料の比容積は増加することがある。
【0016】
母相の合金物品が昇温された温度からマルテンサイト合金物品を形成するために焼入れされる時、その物品の表面および表面付近の領域は、その物品の内部容積領域よりも急速に冷却されることがある。結果として、合金物品の表面および表面付近の領域を形成する母相材料は、母相材料がその物品の内部容積領域を形成する前に、マルテンサイト相変態を受ける場合がある。これは、マルテンサイト相からなる表面および表面付近の領域に囲まれた、母相からなる内部容積領域からなる中間混合相物品をもたらすことがある。母相からなる内部容積領域は、後にマルテンサイト相に変態し、拡大し、それによって、後から変態したマルテンサイト相を囲んでいる先に変態したマルテンサイト相を、引張状態にする。これは、例えば、マルテンサイト相変態の間および/または後に、合金物品の割れ、反り、歪曲、または他の変形をもたらす場合がある。
【0017】
図1A〜図1Cは、合金物品10を図示する。図1Aは、その合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)における、またはそれより高い初期温度(T0)における合金物品10を示す。合金物品10は全て母相12からなる。
【0018】
図1Bは、合金物品10の表面および表面付近の領域が、その合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)とマルテンサイト変態終了温度(TMF)との中間の温度(Ti)である、合金物品10を示す。合金物品10は、合金物品10の内部容積領域を形成する母相12からなる。内部容積領域は、合金のマルテンサイト変態開始温度より低い領域に温度を低下させるために十分な熱エネルギーを未だ失っていないため、マルテンサイト変態開始温度またはそれより高い温度にとどまる。
【0019】
内部容積領域を形成する母相12は、合金物品10の表面および表面付近の領域を形成しているマルテンサイト相14に囲まれている。合金物品10の表面および表面付近の領域は、その合金のマルテンサイト変態開始温度より低い温度に低下させるため、十分な熱エネルギーを失った。その領域における結晶構造の差異をもたらす合金物品10の領域間の温度差は、表面および表面周辺の領域がその物品の中間領域前に十分な熱エネルギーを失うという事実による。
【0020】
図1Cは、その合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)またはそれより低い最終温度(Tf)での合金物品10を示す。合金物品10は、全てのマルテンサイト相14からなる。合金物品10を形成する材料の比容積は、マルテンサイト相変態の間に増加し、図1Cに図示されるように、合金物品10の歪曲をもたらす。
【0021】
例えば、合金シート、合金プレート、および他の平面状合金物品における平坦度の誤差の制御は、高強度および/または高硬度合金製品の使用者にとって重要である場合がある。本明細書に使用される場合、「平面状合金物品」は、合金材料から形成される、および実質的に平坦であることが意図される少なくとも1つの表面からなる物品を指す。平面状合金物品は、合金シート、合金プレート、および他の平面状の幾何学的形状を有する製品形状を含む。様々な組立品、工学的構造物、形成または製造された構成要素等の用途を目的とした平面状合金物品における平坦度の誤差は、平面状合金物品から形成された構成要素の嵌合する表面、縁、および/または末端の均一配置を達成することに困難を引き起こすことがある。これは、許容可能な形、大きさ、および/または平坦許容値(例えば、形成と調整(form and fit)の特性)を満たすための高費用の再作業および/または他の是正措置の必要性をもたらすことがある。
【0022】
合金物品がマルテンサイト相変態中の熱硬化操作は、熱処理された合金物品における平坦度の誤差を誘導することがある。結果として、空気または液体焼入れ操作を使用する硬化熱処理は、例えば、平坦度の誤差を示す合金物品を製造することがある。本明細書に記載される様々な実施形態は、硬化した(例えば、マルテンサイト相変態を誘導するために焼入れされた)合金物品において平坦度の誤差を低下させることがあるプロセスに関連しており、それは、単一のおよび/または組み立てられた合金物品の寸法公差および形状特性を維持することにおける利点を提供する場合がある。
【0023】
本明細書に記載の実施形態は、合金物品における平坦度の誤差を低下させるためのプロセスを対象としている。例えば、プロセスは、合金物品を少なくともその合金のマルテンサイト変態開始温度程度である第1の温度に加熱することを含んでもよい。機械力が、第1の温度において合金物品に加えられてもよい。機械力が、その物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある場合がある。合金物品は、その合金のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度に冷却されてもよい。機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度に冷却される間の少なくとも一部の間、合金物品上に維持されてもよい。
【0024】
様々な実施形態において、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は連続的に合金物品に維持されてもよい。様々な他の実施形態において、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は不連続的に合金物品上に維持されてもよい。合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は逐次的に合金物品上に維持されてもよい。例えば、加力は合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって、循環的または周期的であってもよい。様々な実施形態において、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間、機械力は半連続的および逐次的に合金物品上に維持されてもよい。
【0025】
様々な実施形態において、機械力は一定の機械力であってもよい。例えば、その力が一定の強度でおよび/または一定の方向で合金物品に加えられてもよい。一定の機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間を通して、連続的に、半連続的に、または不連続的に加えられてもよい。一定の機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって逐次的に加えられてもよい。例えば、一定の機械力を、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって、合金物品の表面に加える、合金物品の表面から取り除く、合金物品の表面に再び加える、合金物品の表面から取り除く、等々と繰り返してもよい。一定の機械力は、合金物品の少なくとも1つの表面に均一に加えられてもよい。一定の機械力は合金物品の少なくとも1つの表面に不均一に加えられてもよい。例えば、一定の機械力が合金物品の表面の様々な領域に加えられてもよい一方で、その表面のその他の領域には加えられない。
【0026】
様々な実施形態において、機械力は変化する機械力であってもよい。例えば、その力は変化する強度でおよび/または変化する方向で合金物品に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間を通して、連続的に、半連続的に、または不連続的に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって逐次的に加えられてもまたよい。例えば、機械力は、合金物品が第1の温度から第2の温度まで冷却される間の期間にわたって所定の循環的波形に従って加えられた力の強度が変化するように、合金物品の表面に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品の少なくとも1つの表面にわたって均一に加えられてもよい。変化する機械力は、合金物品の表面にわたって不均一に加えられてもまたよい。例えば、変化する機械力は合金物品の表面の様々な領域に加えられてもよい一方で、機械力がその表面のその他の領域には加えられなくてもよい。
【0027】
図2A〜図2Cは合金物品20を図示し、図2Aは少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)程度の温度(T)における合金物品20を示す。図2Bは合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)以下の温度(T)における合金物品20を示し、図2Cは周辺温度(TA)に等しい温度(T)の合金物品20を示す。合金物品20が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(図2A)程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度(図2Bおよび図2C)以下の温度まで冷却される間、外力は合金物品20に加えられない。図2Bおよび図2Cで示すように、合金物品20はマルテンサイト相変態後における縦方向の平坦度の誤差を示す。合金物品20の幾何学的歪みおよび平坦度の誤差は、縦方向(図2Bおよび図2Cに示すように)および/または横方向(図2Bおよび図2Cに示されていない)で起こる場合がある。
【0028】
一般的に、平面状合金物品は、物品のゲージ(すなわち、厚み)が減少する時および物品の長さおよび/または幅(すなわち、実質的に平坦だとされる少なくとも1つの表面の物理的寸法)が増す時に、歪曲および平坦度の誤差による影響をうけやすい。
【0029】
様々な実施形態において、合金物品に加えられた機械力は、合金物品を圧縮する力を含んでもよい。図3A〜図3Cは合金物品30を図示し、図3Aは少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)程度の温度(T)における合金物品30を示す。図3Bは合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)以下の温度(T)における合金物品30を示し、図3Cは周辺温度(TA)に等しい温度(T)の合金物品30を示す。矢印35で表された圧縮力は、合金物品30が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(図3A)程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度(図3B)以下の温度まで冷却される間、合金物品30に加えられる。図3Cに示すように、合金物品30はマルテンサイト相変態後の実質的に低下した平坦度の誤差を示す。平坦度の誤差の実質的低下は、圧縮力が取り除かれて合金物品30が周辺温度に達した後も保持される。
【0030】
様々な実施形態において、圧縮機械力はローラーレベリング操作を用いて加えられてもよい。ローラーレベリングは、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度である温度の時に開始し、合金物品が合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。ローラーレベリング操作の間、ローラーは、ローラーおよび合金物品の表面の接触の位置が経時的に変化するにつれて、半連続的および逐次的な力を合金物品に加えてもよい。
【0031】
様々な実施形態において、ローラーレベリング操作の間、合金物品は、マルテンサイト変態開始温度においてまたはそれより高い温度で開始し、マルテンサイト変態終了温度においてまたはそれより低い温度で終了する温度範囲にわたる冷却の間、レベリングローラーと接触していてもよい。ローラーレベリング操作は、単一の通過により合金物品をローラーレベリングすることを含んでもよい。単一の通過は、合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始してもよく、合金物品がマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。ローラーレベリング操作は、複数の通過により合金物品をローラーレベリングすることを含んでもよい。第1の通過は合金物品が少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始してもよく、最終の通過は合金物品がマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。
【0032】
様々な実施形態において、圧縮機械力はプラテンプレスレベリング操作を用いて加えられてもよい。例えば、合金物品はプラテンプレスの2つの平行面の間に配置されてもよい。圧縮力はプラテンプレスの機械的なプレス作用を通して物品に加えられてもよい。プラテンのプレスは合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始してもよく、合金物品が合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。
【0033】
様々な実施形態において、プラテンプレスレベリング操作の間、圧縮機械力は、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度までの合金物品の冷却の少なくとも一部の間、合金物品上に維持されてもよい。合金物品は、マルテンサイト変態開始温度におけるまたはそれより上の温度で開始し、マルテンサイト変態終了温度におけるまたはそれより下の温度で終了する温度領域を通じた冷却の間、少なくとも1つのプラテンの面と連続的にまたは不連続的に接触してもよい。一定のまたは変化する圧縮力が、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度まで冷却される間に、プラテンプレスのプラテンによって連続的にまたは不連続的に合金物品上に維持されてもよい。
【0034】
様々な実施形態において、合金物品に加えられる機械力は、合金物品を引張状態にする力を含んでもよい。図4A〜図4Cは合金物品40を図示し、図4Aは少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(TMS)程度の温度(T)における合金物品40を示す。図4Bは合金のマルテンサイト変態終了温度(TMF)以下の温度(T)の合金物品40を示し、図4Cは周辺温度(TA)に等しい温度(T)の合金物品30を示す。矢印45で表された張力は、合金物品40が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度(図4A)程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度(図4B)以下の温度まで冷却される間、合金物品40に加えられる。図4Cで示すように、合金物品40はマルテンサイト相変態後の実質的に低下した平坦度の誤差を示す。平坦度の誤差の実質的低下は、張力が取り除かれ合金物品40が周辺温度に達した後も保持される。
【0035】
様々な実施形態において、張力は延伸操作を用いて加えられてもよい。延伸操作を用いる張力の適用は、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度の時に開始し、合金物品が合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度に冷却された時に終了してもよい。
【0036】
様々な実施形態において、延伸操作の間引張延伸力は、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度までの合金物品の冷却の少なくとも一部の間、合金物品を同時に反対方向に引くことによって合金物品に維持されてもよい。一定のまたは変化する引張延伸力は、合金物品が少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の温度から合金のマルテンサイト変態終了温度以下の温度まで冷却される間、連続的にまたは不連続的に合金物品上に維持されてもよい。
【0037】
様々な実施形態において、合金物品は、合金シート、合金プレート、または他の平面状合金物品からなる場合がある。様々な実施形態において、合金物品は、鉄のマルテンサイト合金または非鉄のマルテンサイト合金からなる場合がある。例えば、本明細書に開示されるプロセスに従って処理される合金物品は、チタン系マルテンサイト合金物品、コバルト系マルテンサイト合金物品、および他の非鉄のマルテンサイト合金物品を含んでもよいが、それに限定されない。
【0038】
様々な実施形態において、合金物品は、マルテンサイト鋼物品またはマルテンサイト・ステンレス鋼物品からなる場合がある。様々な実施形態において、合金物品は、析出硬化鋼物品または析出硬化ステンレス鋼物品からなる場合がある。本明細書に開示されるプロセスに従って処理される合金物品は、400系ステンレス鋼物品、500系低合金鋼物品、および600系ステンレス鋼物品を含んでもよいが、それに限定されない。例えば、合金は、403ステンレス鋼、410ステンレス鋼、416ステンレス鋼、419ステンレス鋼、420ステンレス鋼、440ステンレス鋼、522低合金鋼、529低合金鋼、13−8ステンレス鋼、15−5ステンレス鋼、15−7ステンレス鋼、17−4ステンレス鋼、または17−7ステンレス鋼からなる場合がある。様々な実施形態において、合金物品は、表1または表2に定められるような化学組成式からなるステンレス鋼を含んでもよい。
【表1】
【表2】
【0039】
様々な実施形態において、合金物品は、合金シート、合金プレート、または、空気焼入れ硬化性高強度、および/または高硬度鋼合金を構成する他の平面状合金物品からなる場合がある。例えば、様々な実施形態において、合金物品は、表3または表4に定められるような化学組成式からなる鋼を含んでもよい。
【表3】
【表4】
【0040】
様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理される合金物品は、重量パーセントにおいて、0.22〜0.32炭素、3.50〜4.00ニッケル、1.60〜2.00クロム、0.22〜0.37モリブデン、0.80〜1.20マンガン、および0.25〜0.45ケイ素を含む合金からなってもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理される合金物品は、重量パーセントにおいて、0.42〜0.52炭素、3.75〜4.25ニッケル、1.00〜1.50クロム、0.22〜0.37モリブデン、0.20〜1.00マンガン、および0.20〜0.50ケイ素を含む合金からなってもよい。
【0041】
本明細書に記載のプロセスの様々な実施形態に従って処理される合金物品は、0.030インチから5.000インチの範囲の厚さを有する平面状合金物品からなってもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理をされた平面状合金物品は、0.030インチから2.000インチの範囲内の厚さを有してもよい。
【0042】
様々な実施形態において、合金のマルテンサイト変態開始温度またはそれより高い温度から、合金のマルテンサイト変態終了温度またはそれより低い温度への冷却は、0.0001°F/秒から1000°F/秒の推定温度降下速度で実施されてもよい。実際に利用された温度降下速度は、合金のマルテンサイト変態開始温度、合金のマルテンサイト変態終了温度、力が初めに合金物品に加えられた温度、合金物品と接触している何らかの処理装置の温度、合金物品周囲の環境温度、合金物品の幾何学的寸法および形状、ならびにその物品を形成している特定の合金の化学成分に依存するであろう。
【0043】
様々な実施形態において、合金のマルテンサイト変態開始温度またはそれより高い温度から、合金のマルテンサイト変態終了温度またはそれより低い温度への冷却は、空気冷却を用いて実施されてもよい。本明細書に記載のプロセスに従って処理される物品は、その物品上に流れる強制空気流動によって対流的に空気冷却されてもよく、または物品は、強制空気流動なしに外気環境内で対流的に空気冷却されてもよい。本明細書に記載のプロセスに従って処理される物品は、合金物品と接触する何らかの処理装置表面を通じて、物品からの熱エネルギーの伝達によって伝導的に冷却されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスに従って処理される物品は、合金物品と接触する処理装置の表面を通じた熱伝達により、対流的に空気冷却され、かつ伝導的に冷却されてもよい。
【0044】
延伸操作において、例えば、合金物品の対向する端面、および/またはその付近での領域は、処理装置と接触する場合があり、そして合金物品の主な平面状表面の大部分は、強制空気または外気と接触してもよい。図5は、矢印55によって示される張力が処理装置53を通じて合金物品50に加えられる、延伸操作中の合金物品50を図示する。処理装置53は、合金物品50の対向する端面、およびその付近の領域51において、合金物品50と接触する。合金物品50の主な平面状表面の大部分は、強制空気または外気と接触する。このようにして、熱は空気と接触する主な平面状表面から対流的に伝達する場合があり、かつ熱は処理装置53を通じて伝導的に伝達する場合がある。
【0045】
ローラーレベリング操作において、例えば、合金物品の主な平面状表面領域はローラー表面と接触していてもよく、また、主な平面状表面の他の領域は、強制空気または外気と接触していてもよい。図6は、矢印65によって示される、圧縮力がローラー63を通じて合金物品60に加えられる、ローラーレベリング操作中の合金物品60を図示する。ローラー63は、合金物品60の主な平面状表面上の領域61において合金物品60と接触する。合金物品60の主な平面状表面の大部分は、強制空気または外気と接触する。このようにして、熱は空気と接触する平面状表面から対流的に伝達する場合があり、かつローラー63を通じて伝導的に伝達する場合がある。ローラーが合金物品60の主な平面状表面上を進むに従い、さらなる熱がローラー63を通じて合金物品60から伝導的に伝達する場合がある。
【0046】
プラテンプレスレベリング操作において、例えば、合金物品の主な平面状表面の領域は、1つ以上のプラテンと接触していてもよく、かつ主な平面状表面の他の領域は、強制空気または外気と接触していてもよい。あるいは、プラテンプレスレベリング操作において、合金物品の主な平面状表面全体は、1つ以上のプラテンと接触していてもよいが、強制空気または外気と接触している主な平面状表面領域はない。図7は、矢印75によって示される圧縮力が、プラテン73を通じて合金物品70に加えられるプラテンプレスレベリング操作中の合金物品70を図示する。プラテン73は、合金物品70の主な平面状表面全体を形成する、領域71における合金物品70と接触している。合金物品70の主な平面状表面71は、強制空気または外気と接触しない。このようにして、熱はプラテン73と接触している主な平面状表面71から伝導的に伝達する場合がある。熱は空気と接触している合金物品70の側面表面および端部表面から対流的に伝達する場合もある。
【0047】
様々な実施形態に従って、それぞれ、延伸操作、ローラーレベリング操作、およびプラテンプレスレベリング操作を受けている3つの同一の合金物品に対して、すべての他の温度変数が等しい(つまり、外気温度、表面と接している処理装置の温度、等)とすれば、プラテンプレスレベリング操作に見られる冷却速度が、延伸操作において見られる冷却速度より大きいであろう、ローラーレベリング操作に見られる冷却速度より大きいということが予期されることになる。
【0048】
様々な実施形態において、加えられる機械力は、処理温度範囲内(つまり、少なくとも合金のマルテンサイト変態開始温度程度の開始温度から、合金のマルテンサイト変態終了温度以下の終了温度まで)の温度点での合金物品の降伏強さ(それぞれ圧縮状態または伸長状態にある)に等しいかまたはそれより大きい強度を有する場合がある。このようにして、加えられる力の強度、および/または方向は、合金物品の処理温度範囲、合金の特定の化学成分、および/または合金物品の幾何学的図形および寸法によって決まる場合がある。
【0049】
加えられる力の強度、および/または方向は、力を加えるために使用される特定の操作(例えば、延伸、ローラーレベリング、およびプラテンプレスレベリング)によっても変わる場合もある。様々な実施形態において、加えられる力は、力が加えられる温度での最終的な引っ張り強さに近づく強度を有してもよい。様々な実施形態において、加えられる力は、合金物品の降伏強さ(それぞれ圧縮または伸長)とほぼ等しい強度を有してもよい。様々な実施形態において、加えられる力は、加力操作の間に合金物品の厚さが減少しない程の強度を有してもよい。様々な実施形態において、加えられる力は、合金物品の降伏強さ(それぞれ圧縮または伸長)より小さい強度を有してもよい。
【0050】
様々な実施形態において、ローラーレベリング操作は、ローラーの接触域内で、平面状合金物品の主な平面状表面へ力を加える。比較的均一な圧縮力を加えるために、合金物品は連続的および逐次的な様態でローラーの接触域へ導入され、ローラーが合金物品の主な平面状表面へ比較的一定の力を加える。このようにして、主な平面状表面の隣接域は逐次的に、同一の状態下で同一の力を受ける。
【0051】
様々な実施形態において、2つ以上の平面状合金物品は、合金物品の主な平面状表面が接触するように、積み重ねられ、力がその積み重なったものに加えられる。例えば、図8は、矢印85によって示される圧縮力が、積み重ねた合金物品80へローラー83を通じて加えられる、ローラーレベリング操作中の2つの平面状合金物品80の積み重ねを図示する。ローラー83は、上側の合金物品80の上側の主な平面状表面および下側の合金物品80の下側の主な平面状表面の領域81において、合金物品80の積み重ねと接触する。図8はローラーレベリング操作中の2つの合金物品を示すのみだが、3つ以上の合金物品が、同様の様態で重ねられてもよく、2つ以上の積み重ねられた合金物品が、本明細書に記載の様々な実施形態に従って、プラテンプレスレベリング操作または延伸操作されてもよいことが理解される。
【0052】
様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、マルテンサイトの、および/または析出硬化合金の硬化熱処理およびその後の冷却と統合され、母相合金からマルテンサイト相、および/または析出硬化合金を形成する。様々な実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、以前の処理の間、および/またはその後に発達した平坦度誤差を改善するために、以前に処理した合金物品に適用されてもよい。例えば、平坦度誤差を示しているマルテンサイト合金物品は、少なくともマルテンサイト変態開始温度程度の温度、またはマルテンサイト変態開始温度を下回る温度、またはマルテンサイト変態終了温度を下回る温度へ再加熱され、そして本明細書に記載の様々な実施形態に従い処理されてもよい。しかしながら、本明細書に記載の様々な実施形態に従った改善処理が合金物品への様々な影響を有する場合があるので注意しなければならず、それは改善処理前および改善処理後の合金物品を比較する場合に、粒度、強靱性、強度、硬度、耐食性、弾道抵抗、等における治金差異を引き起こすことを含むが、必ずしもそれに限定されない。
【0053】
以下の実例的かつ非限定的な例は、それらの範囲制限なしに本明細書に開示される実施形態をさらに説明することを意図する。当業者は、実施例の変更が、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で可能だということを理解するであろう。全ての割合および割合は別段の明示がない限り、重量による。
【実施例】
【0054】
実施例1
【0055】
0.250×101×252インチの合金プレートは、表5に規定されるように組成式を有する高強度鋼合金から調製された。
【表5】
【0056】
鋼合金プレートは炉内に配置され、鋼合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度まで加熱された。機械力はローラーを通る7回の通過を含むローラー平坦化操作を用いて、プレートに加えられた。機械力は516°Fの温度で開始(つまり、第1の通過)された。機械力の適用は、プレートが217°Fの温度に達した時点で終了(つまり、第7の通過)された。プレートはローラーレベリング操作の間、外気中で冷却された。プレートの冷却プロファイルは表6に提供される。
【表6】
【0057】
第1の通過の開始と第7の通過の終了との間に合計19分が経過した。プレートは第1の通過から第5の通過まで連続的にローラー操作された。プレートが加力なしに冷却されることを可能とするため、ローラー操作は第5の通過と第6の通過との間で中断された。プレートは第6の通過と第7の通過との間、連続的にローラー操作された。プレートは第7の通過後、加力なしに周辺温度(約70°F)まで冷却することができた。
【0058】
周辺温度におけるプレートは、平坦度テーブルを用いて平坦度の誤差の検査を行った。図9Aおよび図9Bは止め具98を有する平坦度テーブル97を図示する。図9Aで示すように、プレート90はテーブル97の表面の周囲内に、および止め具98に隣接して配置される。直線状のエッジバー99が、図9Aに示すようにプレート90の表面の様々な部位に配置される。それぞれの位置において、空隙値(図9Bにおいて矢印96によって示される)として測定された平坦度の誤差は、バー99の下のエッジとプレート表面との間の最大距離として測定される。
【0059】
平坦度テーブルおよびプレートは、清潔であり異物がない状態であった。0.250×101×252インチのプレートは、テーブル表面の周囲内に位置した。1つのプレートの縁はテーブルの1側面に沿った止め具に当接して付けられた。長さ9フィートのアルミニウムの直線状エッジバーが、すべての平坦度の誤差の測定に使用された。長さ9フィートの直線状エッジバーは図9Aで図示されるように位置付けられた。それぞれの位置において、バーの下のエッジとプレート表面との間の平坦度の最大誤差はバーの9フィートのバー長さに沿って3箇所で測定された。
【0060】
0.250×101×252インチの鋼プレートは、縦方向で最大3/32インチ(0.09375インチ)(直線状エッジバーを253インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有し、横方向で最大1/4インチ(0.25インチ)(直線状エッジバーを101インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有した。0.250×101×252インチの高強度鋼プレートにおける平坦度の誤差に対する最大許容度は、参照により本明細書に組み込まれるASTM A6/A6M−08、Standard Specification for General Requirements for Rolled Structural Steel Bars, Plates, Shapes, and Sheet Pilingに準拠すると2インチである。ASTM A6/A6M−08は12フィートの部分において測定された許容値を提供するが、ここで9フィートのバーを用いて測定された平坦度の誤差はその典型であり、著しく低い測定された平坦度の誤差を前提とした12フィートのバーを使用した測定と実質的に異ならないはずである。
実施例2
【0061】
0.200×102×296インチの合金プレートは、表5で規定されるように化学組成式を有する高強度鋼合金から調製された。鋼合金プレートは炉内に配置され、鋼合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度まで加熱された。機械力はローラーを通した9回の通過を含むローラー平坦化操作を用いて、プレートに加えられた。プレートは第1の通過から第9の通過にわたって連続的にローラー操作された。機械力は585°Fの温度で開始(つまり、第1の通過)された。機械力の適用はプレートが233°Fの温度に達した時点で終了(つまり、第9の通過)された。プレートはローラーレベリング操作の間、外気で冷却された。プレートの冷却プロファイルは表7に提供される。
【表7】
【0062】
プレートは第9の通過後、加力なしに周辺温度(約70°F)まで冷却することができた。周辺温度におけるプレートは、実施例1と関連して記載されるように、平坦度テーブルを用いて平坦度の誤差の検査を行った。
【0063】
0.200×102×296インチの鋼プレートは、縦方向で最大1/16インチ(0.0625インチ)(直線状エッジバーを296インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有し、横方向で最大7/32インチ(0.21875インチ)(直線状エッジバーを102インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有した。0.200×102×296インチの高強度鋼プレートにおける平坦度の誤差の最大許容度は、ASTM A6/A6M−08に準拠すると2と3/8インチ(2.375インチ)である。
実施例3
【0064】
0.200×103×292インチの合金プレートは、表5で規定されるように化学組成式を有する高強度鋼合金から調整された。鋼合金プレートは炉内に配置され、鋼合金のマルテンサイト変態開始温度より高い温度まで加熱された。機械力はローラーを通した9回の通過を含むローラー平坦化操作を用いて、プレートに加えられた。プレート第1の通過から第9の通過にわたって連続的にローラー操作した。機械力は585°Fの温度で開始(つまり、第1の通過)された。機械力の適用はプレートが263°Fの温度に達した時点で終了(つまり、第9の通過)された。プレートはローラーレベリング操作の間、外気で冷却された。プレートの冷却プロファイルは表8において提供される。
【表8】
【0065】
プレートは第9の通過後、加力なしに周辺温度(約70°F)まで冷却することができた。周辺温度におけるプレートは、実施例1と関連して記載されるように、平坦度テーブルを用いて平坦度の誤差の検査を行った。
【0066】
0.200×103×292インチの鋼プレートは縦方向で最大1/16インチ(0.0625インチ)(直線状エッジバーを292インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有し、横方向で最大17/64インチ(0.265625インチ)(直線状エッジバーは103インチ寸法と平行に配置)の平坦度の誤差を有した。0.200×102×296インチの高強度鋼プレートにおける平坦度の誤差の最大許容度は、ASTM A6/A6M−08に準拠すると2と3/8インチ(2.375インチ)である。
【0067】
本開示は、様々な例示的、実例的、かつ限定されない実施形態に関連して記載されている。しかしながら、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を逸脱しない範囲で任意の開示された実施形態(もしくはそれらの一部)の様々な置き換え、変更または組み合わせを行うことができることを当業者は理解するであろう。したがって、本開示は本特許に明記されない追加的な実施形態を含むことが予想および理解される。このような実施形態は、例えば、本明細書に記載される実施形態の任意の開示されたステップ、含有物、成分、構成要素、要素、特徴、態様、等を組み合わせ、変更、または再編することで実現されてもよい。したがって、この開示は様々な例示的、実例的、かつ限定されない実施形態の説明によって限定されず、むしろ特許請求の範囲によってのみ限定される。このようにして、出願者は審査の間、本明細書で様々に記載するように特徴を追加するための本特許請求の範囲を改正する権利を保持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金物品において平坦度の誤差を減少させるプロセスであって、
合金物品を、少なくとも前記合金のマルテンサイト変態開始温度程度の第1の温度に加熱することと、
前記第1の温度で前記合金物品に機械力を加えることであって、前記機械力は前記物品の表面の平坦度の誤差を抑制する傾向がある、加えることと、
前記合金物品を前記合金のマルテンサイト変態の終了温度以下である第2の温度に冷却することと、を含み、
前記機械力は、前記第1の温度から前記第2の温度までの前記合金物品の冷却の少なくとも一部の間、前記合金物品上に維持される、プロセス。
【請求項2】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度に冷却される間、連続的または半連続的のいずれかで、前記合金物品上に前記機械力を維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記連続的または半連続的に維持される機械力が、一定の機械力である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度に冷却される間、逐次的に前記合金物品上に前記機械力を維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記機械力が、前記合金物品を圧縮する力を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記機械力が前記合金物品を引張状態にする力からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる、前記合金物品をローラーレベリングすることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる単一の通過で、前記合金物品をローラーレベリングすることを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる複数の通過で、前記合金物品をローラーレベリングすることを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる、前記合金物品に延伸力を連続的に加えることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる、前記合金物品に延伸力を逐次的に加えることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記合金物品をプラテンプレスの2つの平行面の間に配置し、前記第1の温度で前記合金物品に圧縮力を加えることと、前記第1の温度から前記第2の温度までの前記合金物品の冷却の少なくとも一部の間、前記圧縮力を前記合金物品上に維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度まで冷却される間、連続的に前記合金物品上に前記圧縮力を維持することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記圧縮力が前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる一定の圧縮力である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度まで冷却される間、逐次的に前記合金物品上に前記圧縮力を維持することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記合金物品が平面構造を有する幾何学的図形を備え、空気焼入れ硬化性の高強度合金鋼をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記合金物品が、空気焼入れ硬化性の高強度合金鋼を含むプレートまたはシートである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記合金物品が0.030インチから5.000インチの厚さを備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記加えられた機械力が、前記第1の温度と前記第2の温度との間の温度で、前記合金物品の降伏強さ以上の強度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
シートおよびプレートから選択される空気焼入れ硬化性の高強度鋼物品における平坦度の誤差を抑制するためのプロセスであって、
シートおよびプレートから選択される空気焼入れ硬化性の高強度鋼物品を、少なくとも前記空気焼入れ硬化性高強度鋼のマルテンサイト変態開始温度程度の第1の温度に加熱することと、
前記第1の温度で前記物品へ機械力を加えることであって、前記機械力は、ローラーレベリング操作、延伸レベリング操作、およびプラテンプレスレベリング操作からなる群から選択される操作を用いて加えられる、加えることと、
前記物品を、前記第1の温度から、空気焼入れ硬化性の高強度鋼のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度まで冷却することと、を含み、
前記機械力が、前記第1の温度と前記第2の温度との間の温度で、前記合金物品の降伏強さ以上の強度を有し、前記機械力が、前記物品の前記第1の温度から前記第2の温度までの冷却の少なくとも一部の間加えられる、プロセス。
【請求項21】
平面状合金物品における平坦度の誤差の改善のためのプロセスであって、
前記合金物品を昇温された温度へ加熱することと、
前記昇温された温度において前記合金物品へ機械力を加えることであって、前記機械力は前記物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある、加えることと、
前記合金物品を前記昇温された温度から冷却することと、を含み、前記機械力は、前記合金物品の前記昇温された温度からの冷却の少なくとも一部の間、前記合金物品上に維持される、プロセス。
【請求項22】
前記昇温された温度が少なくとも前記合金のマルテンサイト変態開始温度程度である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記昇温された温度が前記合金のマルテンサイト変態開始温度より低い、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記昇温された温度が前記合金のマルテンサイト変態終了温度より低い、請求項21に記載のプロセス。
【請求項1】
合金物品において平坦度の誤差を減少させるプロセスであって、
合金物品を、少なくとも前記合金のマルテンサイト変態開始温度程度の第1の温度に加熱することと、
前記第1の温度で前記合金物品に機械力を加えることであって、前記機械力は前記物品の表面の平坦度の誤差を抑制する傾向がある、加えることと、
前記合金物品を前記合金のマルテンサイト変態の終了温度以下である第2の温度に冷却することと、を含み、
前記機械力は、前記第1の温度から前記第2の温度までの前記合金物品の冷却の少なくとも一部の間、前記合金物品上に維持される、プロセス。
【請求項2】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度に冷却される間、連続的または半連続的のいずれかで、前記合金物品上に前記機械力を維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記連続的または半連続的に維持される機械力が、一定の機械力である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度に冷却される間、逐次的に前記合金物品上に前記機械力を維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記機械力が、前記合金物品を圧縮する力を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記機械力が前記合金物品を引張状態にする力からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる、前記合金物品をローラーレベリングすることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる単一の通過で、前記合金物品をローラーレベリングすることを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる複数の通過で、前記合金物品をローラーレベリングすることを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる、前記合金物品に延伸力を連続的に加えることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる、前記合金物品に延伸力を逐次的に加えることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記合金物品をプラテンプレスの2つの平行面の間に配置し、前記第1の温度で前記合金物品に圧縮力を加えることと、前記第1の温度から前記第2の温度までの前記合金物品の冷却の少なくとも一部の間、前記圧縮力を前記合金物品上に維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度まで冷却される間、連続的に前記合金物品上に前記圧縮力を維持することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記圧縮力が前記第1の温度で始まり前記第2の温度で終わる一定の圧縮力である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記合金物品が前記第1の温度から前記第2の温度まで冷却される間、逐次的に前記合金物品上に前記圧縮力を維持することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記合金物品が平面構造を有する幾何学的図形を備え、空気焼入れ硬化性の高強度合金鋼をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記合金物品が、空気焼入れ硬化性の高強度合金鋼を含むプレートまたはシートである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記合金物品が0.030インチから5.000インチの厚さを備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記加えられた機械力が、前記第1の温度と前記第2の温度との間の温度で、前記合金物品の降伏強さ以上の強度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
シートおよびプレートから選択される空気焼入れ硬化性の高強度鋼物品における平坦度の誤差を抑制するためのプロセスであって、
シートおよびプレートから選択される空気焼入れ硬化性の高強度鋼物品を、少なくとも前記空気焼入れ硬化性高強度鋼のマルテンサイト変態開始温度程度の第1の温度に加熱することと、
前記第1の温度で前記物品へ機械力を加えることであって、前記機械力は、ローラーレベリング操作、延伸レベリング操作、およびプラテンプレスレベリング操作からなる群から選択される操作を用いて加えられる、加えることと、
前記物品を、前記第1の温度から、空気焼入れ硬化性の高強度鋼のマルテンサイト変態終了温度以下である第2の温度まで冷却することと、を含み、
前記機械力が、前記第1の温度と前記第2の温度との間の温度で、前記合金物品の降伏強さ以上の強度を有し、前記機械力が、前記物品の前記第1の温度から前記第2の温度までの冷却の少なくとも一部の間加えられる、プロセス。
【請求項21】
平面状合金物品における平坦度の誤差の改善のためのプロセスであって、
前記合金物品を昇温された温度へ加熱することと、
前記昇温された温度において前記合金物品へ機械力を加えることであって、前記機械力は前記物品の表面における平坦度の誤差を抑制する傾向がある、加えることと、
前記合金物品を前記昇温された温度から冷却することと、を含み、前記機械力は、前記合金物品の前記昇温された温度からの冷却の少なくとも一部の間、前記合金物品上に維持される、プロセス。
【請求項22】
前記昇温された温度が少なくとも前記合金のマルテンサイト変態開始温度程度である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記昇温された温度が前記合金のマルテンサイト変態開始温度より低い、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記昇温された温度が前記合金のマルテンサイト変態終了温度より低い、請求項21に記載のプロセス。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2013−505836(P2013−505836A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530922(P2012−530922)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048328
【国際公開番号】WO2011/037759
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048328
【国際公開番号】WO2011/037759
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【Fターム(参考)】
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