説明

含フッ素共重合体およびその薄膜形成体

【課題】有機溶媒に可溶性であり、高光透過率かつ低屈折率であり、しかも表面処理や接着剤の使用などを必要とはせず、それ自体各種基材に対して良好な接着性を有する含フッ素共重合体を提供する。
【解決手段】CF2=CFORfCOOR (Rf:炭素数1〜24のフルオロアルキレン基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルコキシフルオロアルキルエーテル基、R:水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、アラルキル基またはアリール基)で表わされる末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテル20重量%以上とこれ以外の含フッ素不飽和単量体の少なくとも一種80重量%以下との共重合体である含フッ素共重合体。末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルとしては、一般式 CF2=CF[OCF2CF(CF3)]bO(CF2)aO[CF(CF3)CF2O]cCF(CF3)COOR (a:0〜10、b+c:0〜8)で表わされる含フッ素ビニルエーテルが好んで用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体およびその薄膜形成体に関する。さらに詳しくは、各種基材に対する接着性や光透過性、低屈折率性などにすぐれた含フッ素共重合体およびその薄膜形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素共重合体は、含フッ素単量体であるフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)等を共重合反応することによって得られ、エラストマー領域から樹脂領域迄様々な特性を有しているが、特に含フッ素物質であることにより、高温での熱安定性や極く低温での靭性および柔軟性を有し、さらに耐薬品性にすぐれ、化学的に非常に安定であり、また非粘着性、摩擦特性、電気的な諸特性にもすぐれているなど、非常にすぐれた特性を備えている。
【0003】
これらの諸特性から、含フッ素共重合体は半導体、自動車、建築、電気・電子部品、食品分野等の様々な分野で有効に用いられている一方、含フッ素共重合体は高価であるため、その特徴を少量の使用量で発揮さすべく、他の重合体等への積層化および複合化の検討も活発に行われている。しかしながら、含フッ素樹脂はその表面エネルギーが低いため、他の重合体、金属、ガラス等の基材への接着が困難であるという問題点がみられる。
【0004】
含フッ素共重合体を他の基材と接着させる方法としては、
(a)基材の表面をサンドブラスト処理等の物理的な粗面処理を行い、含フッ素共重合体 と基材とのアンカー効果を利用する方法
(b)含フッ素樹脂に対して、ナトリウム・エッチング、プラズマ処理、光化学的処理等 の表面処理を行い、化学的・物理化学的に表面を活性化させる方法
(c)接着剤を用いる方法
等種々の方法が検討されているが、上記(a)、(b)の方法については、接着の前処理工程が必要となり、工程が複雑化して生産性が悪いばかりではなく、基材の種類や形状が限定され、得られた積層体の外観にも着色や傷等が生じ易いなどの種々の問題点がみられる。
【0005】
前記(c)の方法に関しても、多くの接着剤についての検討も行われているが、炭化水素系の接着剤を用いた場合には、それ自体の耐熱性が不十分なため、高温での溶融成形や溶融加工を必要とする含フッ素共重合体に対して用いた場合、接着剤が熱分解して剥離や着色などをひき起し、また耐油性、耐薬品性、耐候性も不十分なため、環境の変化により接着力を維持できなくなるなどの問題点を有している。
【0006】
上記以外の方法として、極性官能基を主鎖末端に配置させた含フッ素共重合体を用いる方法なども提案されているが、この場合にはこの共重合体をプライマーとして用いたり、接着させる基材とブレンドして接着剤として用いる方法であって、含フッ素共重合体自体を目的とする基材に直接接着させる方法ではない。
【特許文献1】特開2003-176394号公報
【0007】
また、極性官能基を含フッ素共重合体の側鎖末端に配置させた含フッ素エラストマーを用いる方法も提案されているが、側鎖末端に極性官能基を導入するために使用される単量体は、特殊かつ高価なパーフルオロ系の極性官能基含有単量体であるので、それから得られる含フッ素共重合体が高価となるのを避けることができない。
【特許文献2】米国特許第4,138,426号明細書
【0008】
さらに、イオン交換基含有含フッ素共重合体の前駆体として、
TFE/CF2=CFO(CF2)3COOCH3(モル比95.7/4.3)共重合体
が開示されているが、この含フッ素共重合体は有機溶媒には不溶である。
【特許文献3】特許第3,450,597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、有機溶媒に可溶性であり、高光透過率かつ低屈折率であり、しかも表面処理や接着剤の使用などを必要とはせず、それ自体各種基材に対して良好な接着性を有する含フッ素共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる本発明の目的は、一般式
CF2=CFORfCOOR 〔I〕
(ここで、Rfは炭素数1〜24のフルオロアルキレン基、フルオロアルキルエーテル基またはフルオロアルコキシフルオロアルキルエーテル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜24のアルキル基、アラルキル基またはアリール基である)で表わされる末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルとこれ以外の含フッ素不飽和単量体の少くとも一種との共重合体である含フッ素共重合体によって達成される。この含フッ素共重合体は、数平均分子量Mnが1,000以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る含フッ素共重合体で数平均分子量Mnが1000以上のものは、有機溶媒可溶性であるので、コーティング性にもすぐれ、薄膜の形成が容易である。また、波長300〜650nmにおける光透過率が80%以上と高く、あるいは波長400〜800nmにおける光透過率が90%以上と高く、また589nmにおける屈折率1.36以下、好ましくは1.35以下と低く、しかも表面処理や接着剤の使用などを必要とはせず、それ自体各種基材に対して良好な接着性を有するので、この共重合体薄膜形成体として各種基材との積層体(多層構造体)や複合体の形成に有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルとしては、一般式
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]bO(CF2)aO[CF(CF3)CF2O]cCF(CF3)COOR 〔II〕
(ここで、aは0〜10の整数であり、b+cは0〜8の整数であり、Rは水素原子または炭素数1〜24のアルキル基、アラルキル基またはアリール基である)で表わされる含フッ素ビニルエーテルが好んで用いられる。かかる末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルは、一般式
ROOCCF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bO(CF2)aO[CF(CF3)CF2O]cCF(CF3)COOR
で表わされる両末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルの一方のカルボン酸基をビニル化反応することにより製造される。
【0013】
前記一般式〔I〕で表わされる末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルとしては、例えば次のようなメチルエステル化合物が挙げられる。なお、最初の2つの化合物は、一般式〔II〕で表わされる末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルに含まれる。
CF2=CFOCF2CF2OCF(CF3)COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2OCF(CF3)COOCH3
CF2=CFOCF2COOCH3
CF2=CFO(CF2)2COOCH3
CF2=CFO(CF2)3COOCH3
CF2=CFO(CF2)4COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)3COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)4COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)4COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF2CF(CF3)CF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF2CF(CF3)(CF2)2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF2CF(CF3)(CF2)3COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF2CF(CF3)(CF2)4COOCH3
他のエステル化合物としては、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル等のアルキルエステル、ベンジル等のアラルキルエステル、フェニル等のアリールエステルが挙げられる。または、これらに対応するカルボン酸であってもよい。
【0014】
これらの末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルは、共重合体中20重量%以上、好ましくは30〜70重量%を占めるような割合で共重合される。これ以上の割合で共重合されると、有機溶媒に不溶性となり、一方この成分を共重合させないと、製膜性が悪くなるばかりではなく、製膜できても膜強度が小さくなってしまう。
【0015】
これらの末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルと共重合される、これ以外の含フッ素不飽和単量体としては、一般式
R1R2C=CR3R4 〔III〕
R1,R2,R3,R4:同一または異なる基であり、それぞれ水素原子、塩素原子、フッ
素原子、炭素数1〜24のフルオロアルキル基、フルオロアルキルエ ーテル基またはフルオロアルコキシフルオロアルキルエーテル基で あり、その内少くとも1個はフッ素原子または含フッ素基である
で表わされる化合物、例えばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、トリフルオロクロロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルビニルエーテル、下記フルオロアルコキシフルオロアルキルエーテル基含有化合物
CF2=CFO(CF2)3OCF3
CF2=CFOCF(CF3)CF2OCF3
CF2=CFOCF(CF3)CF2OC3F7
CF2=CFOCF(CF3)CF2OCF(CF3)C4F9
等が挙げられ、好ましくはテトラフルオロエチレン、ヘキサフルプロペン、パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)が用いられる。これらの含フッ素不飽和単量体は、生成共重合体中70重量%以下、好ましくは70〜30重量%を占めるような割合で共重合される。
【0016】
含フッ素共重合体の製造は、溶液重合法、乳化重合法、けん濁重合法等任意の重合方法で行われるが、重合原料由来の不純物含有量を低減し易い溶液重合法、溶液けん濁重合法が好んで用いられ、また生産性を考慮した場合には乳化重合法が好んで用いられる。
【0017】
溶液重合法、溶液けん濁重合法の場合には、重合反応溶媒としてクロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン等の塩素化および/またはフッ素化カーボン、パーフルオロ(2-n-ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロヘキサン等のパーフルオロ化合物が好んで用いられるが、この他アルコール類、酢酸エステル類、炭化水素類等も用いられる。
【0018】
溶液けん濁重合法の場合には、水に対する混和性のないあるいは乏しい溶媒に水を加えたものが重合反応の溶媒として用いられる。これらの溶媒と水との混合比については、重合温度、重合圧力、原料単量体の仕込量等に応じて任意に変更し得るが、重合熱の除去や共重合組成の均一化という観点からは、溶媒に対して重量で約0.1〜10倍量、好ましくは約1〜5倍量の水を共存させることが好ましい。
【0019】
また、この共存させる水は、NaOH、KOH、NaHCO3、NaKCO3、Na2CO3、K2CO3、Na2HPO4・12H2O、K2HPO4、(NH4)2HPO4、アンモニア水等、好ましくはアルカリ金属塩を溶解させたアルカリ水溶液として用いられることが好ましい。このアルカリ水溶液を添加した反応系は、反応条件、組成比等によっては重合反応の進行と共に酸性へと変化し、重合反応が進行し難い場合も生ずるが、このような場合には重合反応の途中で再度アルカリ水溶液を追加してもよい。このようにして、重合反応系はpH5〜12の範囲内に保たれることが好ましい。
【0020】
さらに、乳化重合法の場合には、乳化剤およびpH調整剤に水を加えたものが重合溶媒として用いられる。
【0021】
重合開始剤は、重合方法に応じたものが選択され、一般には有機過酸化物、アゾ化合物、無機過酸化物等が用いられ、得られる含フッ素共重合体の耐熱性や耐薬品性などを考慮すると、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル等が用いられ、好ましくはイソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、ビス(4-第3ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート等のラジカル開始剤やビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド、ペンタフルオロブチロイルパーオキサイド等の含フッ素系ラジカル開始剤が用いられる。また、水性媒体中での溶液けん濁重合や乳化重合などを行う場合には、好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が用いられる水溶性過硫酸塩を用いることが好ましい。
【0022】
重合開始剤の使用量は、反応に用いられる重合溶媒、重合条件、重合温度等によって異なり、一概には規定できないが、一般には重合反応に供せられる単量体合計モル量に対して約0.01〜20モル%、好ましくは約0.1〜10モル%に相当する量を仕込み時に添加することができる。また、反応条件や組成比によっては、重合反応が進行し難い場合もあるが、このような場合には重合反応の途中で再度重合開始剤を追加してもよい。
【0023】
また、連鎖移動剤として、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、メタン、酢酸エチル、アセトン等を必要により添加し、分子量の調整を行うこともできる。溶媒を兼ねて酢酸エチル等の連鎖移動剤を用いた場合には、後記実施例2の結果に示されるように、数平均分子量Mnの値を低下せしめることができる。
【0024】
重合温度としては、特に限定されないが、約0〜100℃、好ましくは約5〜60℃の温度範囲内で反応が行われ、また重合圧力は、約0.1〜10MPa・G、好ましくは約0.2〜5MPa・Gの範囲内で反応が行われる。反応終了後、反応混合物から反応溶媒を減圧留去し、さらに必要に応じてイオン交換水洗浄および乾燥などを行うことにより、所定の含フッ素共重合体を得ることができる。
【0025】
かかる共重合組成を有する含フッ素共重合体であって、ガラス転移温度Tgが20℃以上、好ましくは30℃以上、数平均分子量Mnが1,000以上、好ましくは1,000〜300,000のものは有機溶媒可溶性であるので、コーティング用途などに好適に用いられる。
【0026】
この含フッ素共重合体を、重合反応溶媒として使用した如き各種有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の1価または多価アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン化物などの少くとも一種へ5重量%以上の濃度で溶解させることもできる。これらの溶媒に溶解させた溶液を、各種樹脂成形品、合成繊維製品、半合成繊維製品、金属製品、ガラス製品等の基材上にキャスティングし、溶媒を乾燥させることによっても、多層構造体または複合体を形成させることができる。乾燥温度は、使用した溶媒の種類によっても異なるが、一般には約30〜260℃の範囲内である。
【0027】
上記の如き含フッ素共重合体の有機溶媒溶液は、コーティング性にもすぐれているので、薄膜を形成させることが容易である。コーティングは、濃度が約1〜20重量%、好ましくは約2〜10重量%の溶液を用い、コールコーター法、キャスト法、ディッピング法、スピンコート法等一般的に用いられている方法で行われ、溶融成形では実現困難な厚さ数μm以下の薄膜を形成させることができる。コーティングが適用される基材としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等からなるプラスチックフィルムまたはシートが挙げられる。このような基材上にコーティング薄膜を形成させることにより、多層構造体または複合体を得ることができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0029】
参考例1
冷却管を備えた蒸留器、大型の羽根を有する攪拌器、滴下ロートおよび温度計を取り付けた容量5Lのガラス製反応容器に、予め焼成した炭酸カリウム 1656g(12.0モル)およびフッ素オイル(NOKクリューバー製品バリエルタJ100)1500gを仕込み、内部を窒素で置換した後、ジメチル-2,2′-(パーフルオロエチレン)ジオキシジ(2,3,3,3-テトラフルオロプロピオネート)
CH3OOCCF(CF3)O(CF2)2OCF(CF3)COOCH3
(99.5GC%)1357g(3.03モル)を室温下でゆっくりと加え、続いて反応容器内温度を速やかに180℃以上に昇温させた。
【0030】
ビニル化反応が進行すると、還流が始まり、蒸留器の還流器部温度が130℃を超えた時点の留出物を回収した。反応器内で還流しなくなる迄加熱を行い、メチル パーフルオロ-2-(2-ビニルオキシエトキシ)プロパネート
CF2=CFO(CF2)2OCF(CF3)COOCH3 〔FVEPM〕
(GC純度61.2%)1090g(収率59%)を得た。
【0031】
参考例2
冷却管を備えた蒸留器、大型の羽根を有する攪拌器、滴下ロートおよび温度計を取り付けた容量3Lのガラス製反応容器に、予め焼成した炭酸カリウム 346g(2.51モル)およびフッ素オイル(NOKクリューバー製品バリエルタJ100)760gを仕込み、内部を窒素で置換した後、ジメチル パーフルオロ-2,5,10,13-テトラメチル-3,6,9,12-テトラオキソテトラデカネート
CH3OOCCF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3
(98.0GC%)1000g(1.25モル)を室温下でゆっくりと加え、続いて反応容器内温度を速やかに240℃以上に昇温させた。
【0032】
ビニル化反応が進行すると、還流が始まり、蒸留器の還流器部温度が190℃を超えた時点の留出物を回収した。反応器内で還流しなくなる迄加熱を行い、メチル パーフルオロ-
2,5,10-トリメチル-3,6,9,12-テトラオキソ-13-テトラデセネート
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3 〔FVE4PM〕
(GC純度62.0%)797g(収率56%)を得た。
【0033】
実施例1
撹拌機付きの内容量500mlのSUS 316製オートクレーブを真空まで脱気し、
パーフルオロ(2-n-ブチルテトラヒドロフラン) 330g
を仕込んだ後、オートクレーブの脱気・窒素置換を行い、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 20g(67モル%)
CF2=CFO(CF2)2OCF(CF3)COOCH3〔FVEPM〕 37g(33モル%)
をそれぞれ仕込み、50℃に加温すると、オートクレーブの内圧は0.62Mpa・Gとなった。次いで、開始剤としてイソブチリルパーオキサイド(CF3CF2CHCl/CClF2CF2CHClF)溶液を定量ポンプにより導入して重合を開始させ、内圧が0.30Mpa・Gになるまで20時間重合反応を行った。
【0034】
得られたスラリーをn-ヘキサン中に投入し、ロ過、乾燥させて含フッ素共重合体18gを得た。この含フッ素共重合体の組成は、TFE/FVEPM=62/38重量%であった。また、得られた含フッ素共重合体について、数平均分子量Mn、ガラス転移温度、屈折率、溶解性、光透過率、接着性および塗布性の測定または評価を行った。
共重合体組成比:前記方法による
数平均分子量Mn:Shodex GPC KD805+KD-803+KD-Gを用い、THF溶出液によりGPC測定 を行った
ガラス転移温度Tg:セイコーインスツルメント社製DSC220C型により測定
屈折率:アッベ屈折率計を用い、厚さ100μmのフィルムについて、25℃、波長589
nmで測定
溶解性:MEKまたはC6F6の5重量%溶液を調製し、24時間振とう後目視で判定し、溶 解したものを○、一部溶解したものを△、溶解しないものを×と評価
光透過率:日本分光製紫外可視分光光度計を用い、厚さ100μmのフィルムについて
、波長300nm、450nmおよび650nmで測定
波長300〜650nmでの透過率が95%以上を○、80〜95%を△、80%以下を ×と評価
接着性:MEKまたはC6F6の5重量%溶液をキャスティング法によりポリカーボネート 板(厚さ2mm)上に塗布し、溶媒を乾燥、除去して得られた塗膜に、カッタ ーナイフで1mm角の升目100個の切れ目を入れ、セロファン粘着テープで10 回剥離試験を行い、残存した升目を数え、95個以上を○、80〜95個を△、 80個以下を×と評価
塗布性:塗工性良好なものを○、溶液がゲル化してしまい、塗工できない場合を
×と評価
【0035】
実施例2
実施例1において、反応溶媒を酢酸エチル200gに変更した。得られた含フッ素共重合体(15g)の組成は、TFE/FVEPM=62/38重量%であった。
【0036】
実施例3
実施例2において、脱気後の仕込みを
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 20g(54.4モル%)
フッ化ビニリデン〔VdF〕 3.3g(14.0モル%)
CF2=CFO(CF2)2OCF(CF3)COOCH3〔FVEPM〕 43.3g(31.6モル%)
に変更した。得られた含フッ素共重合体(15g)の組成は、TFE/VdF/FVEPM=52/6/42重量%であった。
【0037】
実施例4
実施例2において、FVEPMの代りにFVE4PM 60g(30モル%)が用いられた。得られた含フッ素共重合体(14g)の組成は、TFE/FVE4PM=55/45重量%であった。
【0038】
比較例
実施例1において、脱気後の仕込みを
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 20g(54モル%)
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔FMVE〕 37g(46モル%)
に変更した。得られた含フッ素共重合体(16g)の組成は、TFE/FMVE=70/30重量%であった。
【0039】
以上の各実施例および比較例で得られた測定・評価結果は、次の表に示される。

測定・評価項目 実−1 実−2 実−3 実−4 比較例
共重合体組成
TFE (重量%) 62 62 52 55 70
VdF (重量%) 6
FVEPM (重量%) 38 38 42
FVE4PM (重量%) 45
FMVE (重量%) 30
数平均分子量Mn 95,000 21,500 18,000 12,000 測定不可
Tg (℃) 32 31 28 23 0
屈折率 (nD25) 1.343 1.345 1.351 1.348 1.340
溶解性
MEK ○ ○ ○ ○ ×
C6F6 ○ ○ ○ ○ ×
光透過性 ○ ○ ○ ○ ○
接着性 ○ ○ ○ ○ −
塗布性 ○ ○ ○ ○ −
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る含フッ素共重合体は、可視光領域におけるすぐれた光透過性や低屈折率性を実質的に損うことなく、良好な有機溶媒溶解性を有しているばかりではなく、各種基材に対する接着性にすぐれているという大きな特徴を有しているので、フィルム、シート、チューブ、ホース、ロッド、ブロック、ベルト、ボトル、タンク等の各種成形材料としてあるいは各種基材への積層材料や複合材料として有効に使用することができ、得られた積層体、複合体は、薬液チューブ、燃料ホース、反射防止膜等の耐薬品性、高光透過性、低光屈折性、耐誘電性等が要求される用途に好適に用いることができる。特に、含フッ素共重合体の有機溶媒溶液からは、溶融成形では実現が難しい薄膜を容易に形成することができるので、薄膜形成用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CF2=CFORfCOOR 〔I〕
(ここで、Rfは炭素数1〜24のフルオロアルキレン基、フルオロアルキルエーテル基またはフルオロアルコキシフルオロアルキルエーテル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜24のアルキル基、アラルキル基またはアリール基である)で表わされる、末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテル20重量%以上とこれ以外の含フッ素不飽和単量体の少くとも一種70重量%以下との共重合体である含フッ素共重合体。
【請求項2】
末端カルボン酸基を有する含フッ素ビニルエーテルが生成共重合体中30〜70重量%の割合で共重合された請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
含フッ素ビニルエーテルが、一般式
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]bO(CF2)aO[CF(CF3)CF2O]cCF(CF3)COOR 〔II〕
(ここで、aは0〜10の整数であり、b+cは0〜8の整数である)で表わされる末端水酸基を有する含フッ素ビニルエーテルである請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
含フッ素不飽和単量体が、一般式
R1R2C=CR3R4 〔III〕
(ここで、R1、R2、R3およびR4は同一または異なる基であり、それぞれ水素原子、塩素原子フッ素原子、炭素数1〜24のフルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基またはフルオロアルコキシフルオロアルキルエーテル基であり、その内少くとも1個はフッ素原子または含フッ素基である)で表わされる化合物である請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
数平均分子量Mnが1,000以上である請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
数平均分子量Mnが1,000〜300,000である請求項5記載の含フッ素共重合体。
【請求項7】
波長300〜650nmにおける光透過率が80%以上である請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項8】
589nmにおける屈折率が1.36以下である請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項9】
請求項1、2または3記載の含フッ素共重合体の有機溶媒溶液。
【請求項10】
コーティング剤として用いられる請求項9記載の含フッ素共重合体有機溶媒溶液。
【請求項11】
請求項10記載の含フッ素共重合体有機溶媒溶液から形成された薄膜。
【請求項12】
基材上に請求項11記載の薄膜を形成させた多層構造体または複合体。

【公開番号】特開2007−153960(P2007−153960A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348014(P2005−348014)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】