説明

含フッ素重合性単量体及びそれを用いた高分子化合物

【課題】含フッ素材料としての表面特性(撥水性、撥油性等)、耐性(耐熱性、耐候性、耐腐食性等)、その他の特性(透明性、低屈折率性、低誘電性等)とアルカリ可溶性、感光性、有機溶媒溶解性などを併せ持つ重合可能な新規な高分子材料用単量体を見出し、かつそれを用いた新規な高分子化合物を提供する。
【解決手段】一般式[1]


で表される含フッ素重合性単量体。(式中、aは、1〜4の整数を表す。)さらに一般式[1]を重合して成る高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素重合性単量体およびそれを用いた新規な高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の耐熱性を有する有機高分子の代表としてポリアミドやポリイミドが開発され、電子デバイス分野、自動車や航空宇宙用途などのエンジニアリングプラスチック分野、燃料電池分野、医療材料分野、光学材料分野などにおいて大きな市場を形成している。それらの中心は、ナイロン、ケブラーなどに代表されるポリアミド、耐熱高分子の代名詞とも言えるポリアミド酸やポリイミド、それらの複合体であるポリアミドイミド、さらにポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾールなどの多種多様な高分子が数多く、実用化されている。特に最近では鉛フリーのハンダ工程に耐える材料としてポリイミドが改めて注目されている。
【0003】
これらの耐熱性高分子の多くは2官能、3官能の反応性基を分子内に有した単量体を複数種用いて、重付加、重縮合などの反応を連鎖的に起こすことで高分子化されている。
【0004】
重合における単量体の組み合わせは、ポリアミドの場合、ジアミン型単量体を、ジカルボン酸、酸クロリドまたはエステルなどのジカルボン酸誘導体と縮合させる方法、ポリアミド酸又はポリイミドの場合はジアミンと酸二無水物の重付加による方法などが知られている。一般に使用されているジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンが報告されているが、重合性や耐熱性の観点からは、ベンゼン環単環、ビフェニル型、または複数のベンゼン環が直接または間接に結合した多環構造を支持骨格とし、その分子内に複数のアミンが含まれたアニリン系単量体が好適に採用されている。一方、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンズチアゾールの場合には、ベンゼン環のオルト位にアミンとヒドロキシ基、アミンとチオール基を有した単量体が使用されている。
【0005】
アミンおよびそれ以外の官能基を同時に分子内に持たせる目的としては次のように説明される。すなわち、重合部位としてはジアミンを用い、同時に分子内縮合環化用の官能基として、ヒドロキシ基、チオール基を用い、さらにまたこれらのアルカリ可溶性基などの感光性機能性基として、フェノール性の酸性基を持たせた設計を行っている。しかしながら複数種の官能基をジアミンとともに含有させる試みは限られた前述のような組み合わせしか報告されていない。
【0006】
一方、フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料分野を中心としてポリオレフィンや縮合性高分子などの幅広い材料分野で開発または実用化されている。縮合性高分子分野では、ジアミン単量体中にフッ素を導入する試みがなされ、ベンゼン環の水素をフッ素原子やトリフルオロメチル基に置換したジアミン単量体、2つの芳香環の間にヘキサフルオロイソプロペニル基を導入したジアミン単量体、さらにはベンゼン環を水素還元した含フッ素ジアミン単量体などが報告されている。また、ヘキサフルオロイソプロペニル基を中心原子団とし、その両サイドに芳香族ヒドロキシアミンを有したビスヒドロキシアミン単量体も実用化されている。この場合、ポリベンゾオキサゾールやヒドロキシ基含有ポリイミドとして応用されている。例えば、非特許文献1などに含フッ素ポリベンゾアゾール類として説明されている。
【0007】
さらに一方、最近になってフッ素系化合物の紫外線領域、特に、真空紫外波長域での透明性を応用したフォトレジスト材料など活発な研究開発が行われている。フッ素を導入することで各使用波長での透明性を実現しつつ、基板への密着性、高いガラス転移点、フルオロカルビノール基の酸性による感光性、アルカリ現像性などを実現させようとする試みである。特に、フルオロカルビノールの中でもヘキサフルオロイソプロピル基がその溶解挙動、非膨潤性、高コントラストなどから注目され数多くの研究開発が行われている。
【0008】
フォトレジストの開発例からも推察されるように酸性アルコールであるヘキサフルオロイソプロピル基は少ない膨潤性を維持したまま、すみやかで均一なアルカリ可溶性を発現し得る可能性を有しているが、同様なコンセプトを利用した耐熱性高分子、すなわちヘキサフルオロイソプロピル基を酸性アルコールとして含有した耐熱性高分子の開発例はほとんど報告されていない。また一般的な酸性基としてはカルボキシル基を挙げることができるが、アミンとの反応性の高さから同一分子内にカルボキシル基を有したアミンを安定に存在させることは難しいとされている。
【非特許文献1】日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド−基礎と応用−」P426
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち本発明では、含フッ素材料としての表面特性(撥水性、撥油性等)、耐性(耐熱性、耐候性、耐腐食性等)、その他の特性(透明性、低屈折率性、低誘電性等)とアルカリ可溶性、感光性、有機溶媒溶解性などを併せ持つ重合可能な新規な高分子材料用単量体を見出し、かつそれを用いた新規な高分子化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フェニレンジアミン骨格を有し、そのフェニレンジアミン上の少なくとも1つの水素原子がヘキサフルオロイソプロピル基に置換した新規なフェニレンジアミン系化合物を見出した。またアミンのオルト位にヘキサフルオロイソプロピル基を有した特定の単量体の場合、環化反応を伴い、低誘電性、耐熱性、耐溶剤性などの多くの特徴を有する新規な高分子化合物となることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
「1」 一般式[1]
【0012】
【化9】

で表される含フッ素重合性単量体。(一般式[1]中、aは、1〜4の整数を表す。)
「2」 一般式[2]
【0013】
【化10】

で表される含フッ素重合性単量体。(一般式[2]中、aは、1〜4の整数を表す。)
「3」 一般式[3]
【0014】
【化11】

で表される含フッ素重合性単量体。(一般式[3]中、aは、1〜4の整数を表す。)
「4」 一般式[4]
【0015】
【化12】

で表される、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミン。
【0016】
「5」 上記「1」〜「4」のいずれか1つに記載の含フッ素重合性単量体を用いて重合した高分子化合物。
【0017】
「6」 一般式[5]
【0018】
【化13】

で表される上記「5」記載の高分子化合物(一般式[5]中、aは、1〜4の整数を表す。Bは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基などで置換されてもよい。nは重合度を表す。)
「7」 上記「6」記載の高分子化合物であって、a=1で且つアミノ基のα位に2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル基を有する化合物を環化縮合してなる一般式[6]で表される高分子化合物。(一般式[6]中、Bおよびnは一般式[5]と同じ)
【0019】
【化14】

「8」一般式[2]記載の単量体を用いて合成した一般式[7]で表される高分子化合物。
【0020】
【化15】

(一般式[7]中、aは一般式[2]と同じ。R1は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換されてもよい。nは重合度を表す。)
「9」 一般式[7]記載の高分子化合物を環化縮合してなる一般式[8]で表される高分子化合物。
【0021】
【化16】

(一般式[8]中、a、R1およびnは一般式[7]と同じ)。
【0022】
なお、一般式[5]〜[8]におけるn(重合度)とは、重合の程度に依存する繰り返し単位の数(正の整数)を意味し、5〜10000が好ましく、10〜1000がさらに好ましい。また、本発明の重合体は、重合度に一定の幅のある重合体の混合物であるが、重合体重量平均分子量でいうと、概ね1000〜5000000が好ましく、2000〜200000の範囲が特に好ましい。重合度、分子量は、後述の重合方法の条件を適宜調節することによって、所望の値に設定することができる。
【発明の効果】
【0023】
ジアミンとヘキサフルオロイソプロピル基を同時に含有させることで、フルオロカルビノール性酸性基を有した新規なフェニレンジアミン型含フッ素重合性単量体及びそれを用いた新規な高分子化合物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は一般式[1]
【0025】
【化17】

で表される含フッ素重合性単量体である。一般式[1]中、aは、1〜4の整数を表している。
【0026】
上記一般式[1]の重合性単量体を具体的に例示するならば、次の一般式[4]、[9a]、[9b]、[9c]および一般式[10]〜[27]などが挙げられる。
【0027】
【化18】

ここで、一般式[1]の代表例の一つとして一般式[4]
【0028】
【化19】

で表される単量体である、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンの合成方法を説明する。
【0029】
この単量体は、1,4−フェニレンジアミンとヘキサフルオロアセトンもしくはヘキサフルオロアセトン・3水和物を反応させることによって得られる。
【0030】
ヘキサフルオロアセトンを使用する場合、反応は、原料である1,4−フェニレンジアミンの中へヘキサフルオロアセトンを導入することによって行われる。ヘキサフルオロアセトンの沸点が低い(−28℃)ことから、ヘキサフルオロアセトンの反応系外への流出を防ぐための装置(冷却装置もしくは密封反応器)を使用することが好ましく、装置としては密封反応器が特に好ましい。
【0031】
また、ヘキサフルオロアセトン・3水和物を使用する場合、反応は、原料である1,4−フェニレンジアミンとヘキサフルオロアセトン・3水和物を同時に混合することによって開始することができる。また、ヘキサフルオロアセトン・3水和物の沸点が比較的高い(105℃)ことから、ヘキサフルオロアセトン(沸点:−28℃)と比較して取扱いが容易である。この場合、反応装置としては、密封容器を使用することもできるが、通常の還流冷却管に上水(室温)を通じる程度でも十分にヘキサフルオロアセトン・3水和物の反応系外への流出を防ぐことができる。
【0032】
また、ヘキサフルオロアセトンはヘキサフルオロアセトン・3水和物に比較して反応性が高く、反応条件によってはヘキサフルオロアセトンがアニリン骨格上のアミノ基と反応して、次の一般式[28]〜[30]
【0033】
【化20】

で表される副生物(イミン体)を生じやすい。
【0034】
このように、取扱いの容易さ、装置の簡便さ、そして生成物選択性の高さの観点から、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンの製造に当たっては、ヘキサフルオロアセトン・3水和物を使用することが特に好ましい。
【0035】
本反応に使用するヘキサフルオロアセトンもしくはヘキサフルオロアセトン・3水和物の量は、1,4−フェニレンジアミンに対して、1当量〜10当量が好ましく、さらに好ましくは1.5当量〜5当量である。これ以上使用しても反応は問題なく進行するが、経済性の面から好ましくない。
【0036】
本反応は、通常、室温〜180℃の温度範囲で行われるが、50℃〜150℃が好ましく、90℃〜130℃が特に好ましい。180℃を超える温度では副反応が進行するので好ましくない。
【0037】
本反応は、触媒を使用しなくても行うことができるが、酸触媒を使用することで反応を促進させることができる。使用される酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、フッ化硼素等のルイス酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸(CSA)、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)・一水和物、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)などの有機スルホン酸が好ましいが、これらの中でも、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)・一水和物が特に好ましい。使用される触媒の量は、1,4−フェニレンジアミン1モルに対して、0.5モル%〜10モル%が好ましく、1モル%から5モル%が特に好ましい。これ以上使用しても反応は問題なく進行するが、経済性の面から好ましくない。
【0038】
本反応は溶媒を使用せずに行うことができるが、溶媒を使用することもできる。使用される溶媒としては、反応に関与しないものなら特に制限は無いが、キシレン等の芳香族炭化水素類または水が好ましい。使用する溶媒の量には特に制限が無いが、多量に使用することは容積あたりの収量が減少するので好ましくない。
【0039】
本反応を密封反応器(オートクレーブ)を使用して行う場合には、ヘキサフルオロアセトンとヘキサフルオロアセトン・3水和物のいずれか用いるかによって様態が異なる。ヘキサフルオロアセトンを用いる場合には最初に1,4−フェニレンジアミンと、必要に応じて触媒および/または溶媒を反応器内に仕込む。次いで、反応器内圧が0.5MPaを越えないように、温度を上げつつ、ヘキサフルオロアセトンを逐次導入していくことが好ましい。ヘキサフルオロアセトン・3水和物を用いる場合には、最初に1,4−フェニレンジアミンと必要量のヘキサフルオロアセトン・3水和物を仕込むことが可能であり、さらに必要に応じて触媒および/または溶媒を反応器内に仕込んで反応を行うことができる。
【0040】
本反応の反応時間に特別な制限はないが、温度や、用いる触媒の量等に依存して最適の反応時間は異なる。従って、ガスクロマトグラフィー等、汎用の分析手段により、反応の進行状況を測定しつつ反応を実施し、原料が十分消費されたことを確認した後、本工程を終了することが好ましい。反応終了後、抽出、蒸留、晶析等の通常の手段により、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンを得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。
【0041】
その他の一般式[1]で表される含フッ素重合性単量体を製造するにあたっては、使用するヘキサフルオロアセトンもしくはヘキサフルオロアセトン・3水和物の量を制御する以外は、上述した、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンの合成方法に準拠して行うことができる。
【0042】
次に、本発明による含フッ素重合性単量体の使用方法例を説明する。本発明の含フッ素重合性単量体は、ジアミンであり、ヘキサフルオロイソプロピル基を一つ以上有する化合物であり、少なくとも分子内に3つ以上の官能基を同時に有している。高分子を製造する場合、これらの3つ以上の官能基を有効に利用することになるが、具体的にはジアミンを使用することが好ましい。
【0043】
本発明の含フッ素重合性単量体であるジアミンの相手方としてジカルボン酸単量体を使用でき、生成する高分子としてポリアミド樹脂が合成される。この場合、ジカルボン酸はもとより、その誘導体、例えば、ジカルボン酸ジハライド(ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素)、ジカルボン酸モノエステル、ジカルボン酸ジエステルを用いることができる。
【0044】
本発明の含フッ素重合性単量体の相手となる重合性単量体を例示するならば、一般式[31]で示されるジカルボン酸およびそのエステル誘導体および一般式[32]で示されるジカルボン酸ハライドが挙げられる。
【0045】
【化21】

ここで、Rはそれぞれ独立に水素、またはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基等のアルキル基、ベンジル基などであり、Bは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基などで置換されてもよい。また、Xはハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)を表す。
【0046】
本発明で使用できるジカルボン酸をジカルボン酸の形で例示すると、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、3,3’−ジカルボキシルジフェニルエーテル、3,4’−ジカルボキシルジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシルジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシルジフェニルメタン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルメタン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジカルボキシルジフェニルスルホン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルスルホン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、3,4’−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、4,4’−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、3,3’−ジカルボキシルジフェニルケトン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルケトン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルケトン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、2,2−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルホン、5−(パーフルオロノネニルオキシ)イソフタル酸、4−(パーフルオロノネニルオキシ)フタル酸、2−(パーフルオロノネニルオキシ)テレフタル酸、4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)イソフタル酸などのパーフルオロノネニルオキシ基含有のジカルボン酸、5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)イソフタル酸、4−(パーフルオロヘキセニルオキシ)フタル酸、2−(パーフルオロヘキセニルオキシ)テレフタル酸、4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)イソフタル酸などのパーフルオロヘキセニルオキシ基含有のジカルボン酸、等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。
【0047】
重合反応の一例として、例えば、本発明の一般式[1]で示される含フッ素重合性単量体と上記のジカルボン酸単量体(一般式[31]または一般式[32])を反応させると、一般式[5]で示される高分子化合物(ポリアミド樹脂)が得られる。
【0048】
この重合反応の方法、条件については特に制限されない。例えば、前記ジアミン成分と前記ジカルボン酸のアミド形成性誘導体を150℃以上で相互に溶解(溶融)させて無溶媒で反応させる方法、また有機溶媒中高温(好ましくは150℃以上)で反応させる方法、−20〜80℃の温度で有機溶媒中にて反応する方法があげられる。
【0049】
使用できる有機溶媒としては原料の両成分が溶解すれば特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類などを例示することができる。このような有機溶媒とともに、酸受容体、例えば、ピリジン、トリエチルアミンなどを共存させて反応を行うことが効果的である。特に上記のアミド系溶媒を用いるとこれらの溶媒自身が酸受容体となり高重合度のポリアミド樹脂を得ることができる。
【0050】
本発明の含フッ素重合性単量体は、他のジアミン、ジヒドロキシアミンなどと併用した共重合体とすることも可能である。併用できるジアミン化合物としては、3,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、2,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、3,3’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビストリフルオロメチル−5,5’−ジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルキル)−4,4’−ジアミノジフェニル、ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジブロモ−4,4’−ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルコキシ)−4,4’−ジアミノジフェニル、ジフェニル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビナフチルアミン、o−、m−、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノジュレン、ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、ジアルキル−4,4’−ジアミノジフェニル、ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド等が例示できる。これらを2種以上併用することもできる。
【0051】
本発明の含フッ素重合性単量体は、ヘキサフルオロプロピル基を保護して、酸により脱離する保護基(酸不安定基)を導入することも可能である。使用できる酸不安定基の例としては、光酸発生剤や加水分解などの効果で脱離が起きる基であれば制限なく使用できる。具体的な例を挙げるとするならば、tert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルキコキシカルボニル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基等のアセタール基、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基のシリル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基等のアシル基等を挙げることができる。
【0052】
酸脱離基を導入することにより、本発明の含フッ素重合性単量体を用いて重合した高分子化合物をレジスト材料として使用することが可能である。すなわち、分子内のヘキサフルオロイソプロパノール基を酸不安定性の保護基で保護した後に光酸発生剤と混合してレジスト化し、これを露光することによって酸不安定基がはずれ、ヘキサフルオロプロパノール基が生成し、その結果アルカリ現像可能となるので、ポジ型のレジストや感光性材料として有用である。
【0053】
また、本発明の含フッ素重合性単量体は、他の官能基を付与して使用することも可能である。例えば、不飽和結合を付与することにより架橋部位を導入できる。例えば、本発明の含フッ素重合性単量体と無水マレイン酸を反応させると、ビスマレイミド化して二重結合を導入することができる。この化合物は架橋剤として有用である。
【0054】
本発明の一般式[5]で表される高分子化合物を脱水することにより、環化させることができる。一例を示すと、一般式[5]で示される高分子化合物であって、a=1で且つアミノ基のα位に2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル基を有する化合物(例えば下記式[5−1])を環化させることにより、一般式[6]で示される高分子化合物が得られる。下記式中、Bは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基などで置換されてもよい。nは重合度を表す。
【0055】
【化22】

環化反応は、特に制限はないが、環化は、熱、酸触媒など脱水条件を促進する種々の方法で行うことができる。例えば200℃〜500℃の温度まで加熱するか、あるいは1Mから12Mの塩酸水溶液で処理することによって環化させることが可能である。
【0056】
環化させた場合、耐熱性の向上、溶解性変化、屈折率や誘電率の低下、撥水撥油性の発現など、大きな物性面の変化を伴う樹脂変性を行うことができる。特に本発明の一般式[6]で表される含フッ素高分子化合物は、分子内に環状構造を有することから耐熱性がさらに向上する。
さらに本発明の含フッ素重合性単量体であるジアミンの相手方としてテトラカルボン酸系の誘導体、例えば、一般式[33]
【0057】
【化23】

(一般式[33]中、R1は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換されてもよい。)で表されるテトラカルボン酸二無水物単量体を用いることができる。この場合のテトラカルボン酸二無水物単量体は一般にポリアミド酸、又はポリイミド原料として使用されている構造であれば特に制限なく使用できる。
【0058】
かかるテトラカルボン酸二無水物としては、その構造は特に限定されないが、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物;PMDA)、トリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ビストリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ジフルオロベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水化物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フェキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水化物、2,5,6,2',5',6'- ヘキサフルオロ- 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水化物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水化物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物等を挙げることができなどが挙げられるが、ピロメリット酸、6FDAが特に好ましい。
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。本発明において、上記テトラカルボン酸二無水物とアミン成分との使用割合は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して0.9〜1.1モル用いられ、好ましくは0.95〜1.05モル、更に好ましくは0.98〜1.03モル用いられる。この範囲を外れると、モル比のバランスがくずれ特性が低下するため好ましくない。
重合反応の一例として、例えば、本発明の一般式[1]で示される含フッ素重合性単量体と上記のテトラカルボン酸無水物を反応させると、一般式[7]で示される高分子化合物(ポリアミド酸)が得られる。重合反応の方法、条件については、ジカルボン酸類との反応と同様な重合方法、重合条件を適応することができる。使用できる溶媒も原料の両成分が溶解すれば特に限定されず、ジカルボン酸類との反応と同様な溶媒を用いることができるが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類などを例示することができる。このような有機溶媒とともに、酸受容体、例えば、ピリジン、トリエチルアミンなどを共存させて反応を行うことも同様に効果的である。
【0059】
また、ジカルボン酸類との反応と同様に他のジアミン、ジヒドロキシアミンなどと併用した共重合体とすることも可能である。併用できるジアミン化合物としては前記のジアミンを用いることができ、2種以上を併用できることも同様である。
前述した一般式[7]で表されるポリアミド酸は加熱または脱水試薬によってイミド化反応することにより一般式[8]で表される含フッ素脂環式ポリイミドとすることができる。加熱イミド化を行う場合、80〜400℃の温度で処理可能であるが、特に150〜350℃の温度範囲が好ましい。イミド化温度が150℃未満の場合はイミド化率が低いためポリイミド膜の膜強度が損なわれるため好ましくなく、350℃を超える場合は塗膜が着色したり脆くなるので問題がある。また熱処理に代えて無水酢酸などの脱水試薬と反応させて化学的に行うこともできる。
【0060】
本発明の含フッ素重合体は有機溶媒に溶解したワニス状態、または粉末状態、フィルム状態、固体状態で使用に供することが可能である。ワニスで使用する場合は、ガラス、シリコンウエーハ、金属、金属酸化物、セラミックス、樹脂などの基材上にスピンコート、スプレーコート、フローコート、含浸コート、ハケ塗りなど通常用いられる方法で塗布することができる。
[実施例]
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0061】
1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンの製造
100mlのガラス製密封容器(オートクレーブ)内に1、4−フェニレンジアミン 10.0g(92.5mmol)、p−トルエンスルホン酸・一水和物 352mg(1.85mmol、2mol%)、およびキシレン20mlを仕込み、系内を窒素雰囲気にした。次いで昇温を開始し、反応液の内温を100℃とした後、50分間かけてヘキサフルオロアセトンを32.2g(194mmol、2.1当量)導入した。内温120℃にて1.5時間反応後、反応液を冷却した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析したところ、目的化合物である1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンが47.6%、ヘキサフルオロアセトンと1、4−フェニレンジアミンのアミン部が反応することにより生じた種々のイミン体が合計20.7%であった。
【実施例2】
【0062】
1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミン(一般式[4])の製造
100mlのガラス製密封容器(オートクレーブ)内に1、4−フェニレンジアミン10.0g(92.5mmol)、p−トルエンスルホン酸・一水和物 704mg(3.70mmol、4mol%)、およびヘキサフルオロアセトン・三水和物40.7g(185mmol、2当量)を仕込み、系内を窒素雰囲気にした。次いで昇温を開始し、反応液の内温を110℃とした。21時間攪拌後、反応液を冷却した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析したところ、目的化合物である1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンが75.5%、1、4−フェニレンジアミンが3.6%、ヘキサフルオロアセトンと1、4−フェニレンジアミンのアミン部が反応することにより生じたイミン体が20.9%であった。反応液に水200mlを加え、氷浴にて冷却した。析出した固体を濾過、減圧乾燥して、粗1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンを24.7g(収率97%、純度78.9%)得た。この粗体をトルエン中で再結晶することにより、目的とする1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンを18.6g(収率73%、純度99.4%)得た。
【0063】
[1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンの物性]
紫色粉末。融点184.5−185.5℃。1H−NMR(基準物質:TMS、溶媒:(CD32CO)δ(ppm):2.83(br,2H),4.80(br,2H),6.71(dd,1H,J=2.6,8.5Hz),6.88(m,1H),6.98(d,1H,J=8.5Hz)。19F−NMR(基準物質:CCl3F、溶媒:(CD32CO)δ(ppm):−75.0(s,6F)。
【実施例3】
【0064】
実施例2で合成した1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンを用いて、次に示すジカルボン酸クロリドの化合物(a)と重合反応を行った。
【0065】
【化24】

重合は十分に乾燥した攪拌機付き密閉100mlガラス製3つ口フラスコ中に、ジメチルアセトアミドを40g、ピリジンを10g、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンを0.01モル(2.74g)仕込み、均一になるように窒素を吹き込みながら攪拌し、そこに化合物(a)であるテレフタル酸クロリドを0.01モル(2.02g)仕込み、5時間攪拌しながら重合を進行させた。次いで、大量のメタノール中に再沈させ単離した。単離した高分子(A)をγ−ブチロラクトンに溶解させ、高分子(A)のγ−ブチロラクトン溶液を得た(高分子(A)の重量平均分子量(Mw):9600)。
【0066】
【化25】

【実施例4】
【0067】
実施例3の化合物(a)の代わりにジカルボン酸ジクロリドとして化合物(b)および化合物(c)を用いて、同様の条件下で1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミンとそれぞれ重合させた。
【0068】
【化26】

実施例3と同様な後処理を行って単離後、γ−ブチロラクトンに溶解し、それぞれ高分子(B)および(C)のγ−ブチロラクトン溶液を得た(高分子(B)の重量平均分子量(Mw):10200、高分子(C)の重量平均分子量(Mw):10000)。
【0069】
【化27】

【0070】
【化28】

【実施例5】
【0071】
実施例3および実施例4で合成した高分子(A)、(B)、(C)のγ−ブチロラクトン溶液をガラス基板上に展開し、120℃で2時間乾燥したところ、どの場合も透明で強靱なフィルムを得た。
【0072】
次いで、得られた高分子(A)のフィルム(40ミクロン厚み)を280℃で2時間熱処理を行ったところ、次に示す高分子(D)に閉環し、強靱なフィルムを得た。得られたフィルムの熱分解温度を測定したところ400℃でも安定に保持した。また1kHzの誘電率は2.8であった(高分子(D)の重量平均分子量(Mw):10000)。
【0073】
【化29】

【実施例6】
【0074】
実施例2で合成した1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミン(一般式[4])を用いて、次に示すテトラカルボン酸無水物化合物(d)、(e)、(f)との重合反応を行った。
【0075】
【化30】

重合は十分に乾燥した攪拌機付き密閉100mlガラス製3つ口フラスコ中に、メチルイソブチルケトンを30g、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミン(一般式[4])を0.01モル(2.47g)仕込み、均一になるように窒素を吹き込みながら攪拌し、そこに化合物(d)、(e)、(f)である3種の無水物を0.01モル仕込み、5時間攪拌しながら重合を進行させた。次いで、大量のメタノール中に再沈させ単離した。単離した高分子(E)、(F)、(G)をγ−ブチロラクトンにそれぞれ溶解させ、3種の高分子溶液を得た(高分子(E)の重量平均分子量(Mw):10500、高分子(F)の重量平均分子量(Mw):9900、高分子(G)の重量平均分子量(Mw):10000)。
【0076】
これらの高分子溶液をシリコンウエハー上に塗布したところ、均一性の高い強靭で透明なフィルムが生成した。
【0077】
【化31】

【実施例7】
【0078】
実施例6で得られた高分子(E)、(F)、(G)を固形分10%になるようにγ−ブチロラクトン溶液を調整し、無水酢酸とピリジンを添加し、50℃で2時間、攪拌混合し、化学反応によるイミド化処理を行った。得られた高分子溶液をメタノールに再沈処理し、清浄なメタノールで3回繰り返し攪拌洗浄を行ったのち、室温で真空乾燥した。得られた高分子固体は、イミド環化が確認されたものの、ジメチルアセトアミドに可溶であり、可溶性ポリイミドで(H)、(I)、(J)あることがわかった。次いで(H)、(I)、(J)を12%の固形分になるようにそれぞれジメチルアセトアミド溶液を調整し、シリコンウエハー上にスピンコートしたところ、強靭な含フッ素高分子膜が得られた。一方、高分子(E)、(F)、(G)のフィルムを350℃で1時間熱処理を行ったところ、同様な脱水反応を起こし、やはりポリイミド(H)、(I)、(J)が生成していた。
【0079】
次いで、高分子(H)、(I)、(J)の熱分解温度をDSC(示差熱操作熱量計)にて測定したところ、5%重量減少温度として、それぞれ、465℃、450℃、420℃と高い耐熱性を示し、さらに1MHzでの誘電率をLCRメーターを用いて測定したところ、それぞれ2.8、2.6、2.4と低い値を示した。
【0080】
【化32】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の含フッ素重合性単量体は、分子内に複数の重合性アミンを有し、かつ同時にヘキサフルオロイソプロピル基を有することで、撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などを発現できる有効な重合性単量体として使用することができ、先端高分子材料分野に供することが可能である。しかもヘキサフルオロイソプロピル基はアルカリ可溶性を有する酸性基であり、低誘電性、高溶解性、高コントラストなどを有した電子デバイス用感光性絶縁膜として使用することも可能にする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]
【化1】

で表される含フッ素重合性単量体。(一般式[1]中、aは、1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
一般式[2]
【化2】

で表される含フッ素重合性単量体。(一般式[2]中、aは、1〜4の整数を表す。)
【請求項3】
一般式[3]
【化3】

で表される含フッ素重合性単量体。(一般式[3]中、aは、1〜4の整数を表す。)
【請求項4】
一般式[4]
【化4】

で表される、1−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)−2,5−フェニレンジアミン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の含フッ素重合性単量体を用いて重合した高分子化合物。
【請求項6】
一般式[5]
【化5】

で表される請求項5記載の高分子化合物(一般式[5]中、aは、1〜4の整数を表す。Bは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基などで置換されてもよい。nは重合度を表す。)。
【請求項7】
請求項6記載の高分子化合物であって、a=1で且つアミノ基のα位に2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル基を有する化合物を環化縮合してなる一般式[6]で表される高分子化合物。(一般式[6]中、Bおよびnは一般式[5]と同じ)
【化6】

【請求項8】
一般式[2]記載の単量体を用いて合成した一般式[7]で表される高分子化合物。
【化7】

(一般式[7]中、aは一般式[1]と同じ。R1は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素、塩素、酸素、硫黄、窒素などを含有してもよく、さらには水素の一部がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換されてもよい。nは重合度を表す。)
【請求項9】
一般式[7]記載の高分子化合物を環化縮合してなる一般式[8]で表される高分子化合物。
【化8】

(一般式[8]中、a、R1およびnは一般式[7]と同じ)。


【公開番号】特開2007−119504(P2007−119504A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303786(P2005−303786)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】