説明

吸入による送達で治療効果のある薬剤の許容性の改善方法

主要な治療効果剤の投与の直前又は最高約30分前に投与する噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物により患者を前処置することを有する、吸入で送達される治療効果剤の許容性の改善方法。噴霧されたリドカイン又はリドカイン類似化合物による患者の前処置は、気道の許容性及び肺での薬剤の沈着を改善し、そのような沈着をより安全、有効、制御可能及び予測可能とする。この発明の方法は、移植患者の肺に免疫抑制剤の沈着の増強に特に役立ち、咳の低減により薬物の許容性を改良し、肺の薬物沈着を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸入による送達で治療効果のある薬剤の許容性の改善方法に関するものである。前記方法はリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む組成物を利用した前処置ステップを含む。前記組成物は、電子ネブライザを用いた噴霧治療によって送達される。特に、この発明は、吸入によって送達される主要な治療効果のある薬剤の許容性の改善方法に関するものである。前記方法は、主要な治療効果のある薬剤の投与直前又は約30分前までに投与される噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物によって患者を前処置することを含む。噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物により患者を前処置すると、肺における治療効果のある薬剤の気道の許容性及び沈着が改善され、そのような沈着が、より安全、有効、制御可能及び、予測可能となる。また、前処置ステップは、主要な治療薬の投与前に、リドカイン又はリドカイン類似化合物の経口的又は全身投与を含むことができる。この発明の方法は、肺移植患者の肺への、免疫抑制剤の沈着の増強に特に役立つ。
【背景技術】
【0002】
医学的な薬物送達における最近の傾向は、薬物治療が最も効果的である領域に、可能であるならならば、経口又は他の全身薬物送達においてより頻繁に認められる副作用を回避する特定の目的とともに、標的薬物送達に向けられる。したがって、肺に影響を及ぼす全ての疾患は、一般に全身投与の薬物で治療され、治療が必要な肺の領域に薬物の沈着ができる特定のパラメータを有するエアロゾルで、エアロゾル化した薬物によって優先的に治療される。一方、とりわけインスリン、モルヒネ、フェンタニル及び成長ホルモンのような全身投与薬物にも、エアロゾル化の薬物送達は好都合なことに用いることができる。薬物のエアロゾル化及び肺への投与は、全身薬物送達を置換又は補完することができる。
【0003】
エアロゾル化が薬物送達の代替を目的とするとき、エアロゾル化粒子は、最も効果のある肺領域に主に沈着し、他の領域又は口咽頭領域のような呼吸気道上部の沈着を最小となるように、エアロゾルを調製しなければならない。
【0004】
この点で、肺は、3つの領域に分けられる。肺の上部は、咽頭及び気管の領域を含む。肺の中央は、気管の下部、気管支及び細気管支分枝を含む。肺の下部は、細気管支及び肺胞を含む。肺への薬物送達を目的とするエアロゾルにより投与される薬物は、肺の中央又は下部に向けてエアロゾルで投与される。全身吸収を目的とするエアロゾルにより投与される薬物は、肺の下部、特に薬物が全身循環で吸収される肺胞での沈着に向けてエアロゾルで投与される。さらに、口及び鼻、すなわち口咽頭領域での沈着は、回避しなければならない。
【0005】
薬物が沈着すべき領域によっては、調製されたエアロゾルは、一定の性質を有する必要があり、特に、その特定の領域に到達し、他の肺の領域に好ましくは沈着しない粒径の範囲を有することが必要である。
【0006】
エアロゾル化した薬物の送達は、全身への薬物送達と比較して、例えば安全性及び有効性で一定の利点を有する。例えば、薬物が標的領域に直接送達されるため、その治療効果を有効にするのに必要な薬物の量は、全身投与量より低くする。全身への投与量は治療の必要な組織のみよりむしろ全身に薬物送達の割合を占めるためである。さらに、全身への送達が回避されるため、望ましくない副次的効果は、全くないか又は少ない。最後に、エアロゾル化の送達は、経口送達を代替する場合、胃腸管回避効果又は静脈内ルートの回避の効果がある。
【0007】
こうしたもろもろの利点にもかかわらず、いくつかの薬物、特に一定の免疫抑制薬、抗生物質及び抗菌類のような、より強力な薬物は、肺に十分に許容されず、このようなエアロゾル化の送達が限られるので、全身治療を代替する、エアロゾル化の薬物送達による最新の試みは、部分的な成功だけを収めていた。
【0008】
したがって、吸入による、これらの薬剤の送達並びに許容性を改善する方法及び手段を利用することが望ましい。
【0009】
標的エアロゾルとして調製され、電子ネブライザにより送達されるエアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物の名目投与量(nominal dose)により前処置をすると、エアロゾル化した薬物送達のこのような許容性を改善することを見出した。
【0010】
リドカインは、例えば、末梢神経、腰動脈若しくは仙骨ブロックの治療で注射可能な麻酔薬として、抗不整脈薬のような静脈内注入として、又は経皮、眼球及び粘膜を麻痺させる局所的な製剤のいずれかで、現在承認されている局所麻酔薬である(O’Neil MJ.et al.,Eds.,The Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals, Drugs and Biologicals,13th ed.,Whitehouse Station,N.J.:Merck&Co.,Inc.(2001)。
【0011】
また、局所リドカインは、気道反応性を減らすために気管支鏡検査法前に従来用いられ、難治の咳及び喘息による咳の発作にエアロゾルとして推奨された(Chest.105(5):1592−3(1994),JAMA,252(17):2456−7(1984),Anaesthesia,49(2):182(1994) and Chest,69(6):747−51(1976))。
【0012】
リドカインに関連した有害事象は、まれでなく、肺に適用することでアナフィラキシ反応及び急性呼吸不全症候群(ARDS)のケースが報告された。例えば、Chest,81(5):644−5(1982),Chest,83(3):585(983) and Chest,83(6):933−4(1983)。
【0013】
エアロゾル化リドカインと関連している有害事象は、口唇、舌及び口腔粘膜の麻痺、嘔吐反射を弱めることを含む(Am.Rev.Respir.Pis.,122(6):823−8(1980),Eur.J.Anaesthesiol.,17(11):672−9(2000) and JAMA,236(6):562(1976)に記載)。
【0014】
従来の研究で用いられた気道に対するエアロゾル化リドカインの長期局所適用は、全身毒性と関連していなかった(Mayo Clin.Proc.,71(4):361−8(1996) and Ann.Allergy Asthma Immunol.,82(1):29−32(1991)。
【0015】
ミネソタ、ロチェスタのメイヨクリニックで、重症の喘息を有する成人及び小児の被験者グループの研究で、長期の噴霧リドカインの有効性の評価が行なわれた。これらの研究は、入院中の、ステロイドの回避効果及び有効な低減を示した。重篤な有害事象と関連する薬物は報告されず、喘息にステロイドを用いる大多数の被験者は、経口コルチコステロイドを少なくともある程度離脱した(Int.J.Tuberc.Lung Pis.,1:5,Suppl1:S32(1997))。
【0016】
更に、気道にリドカインエアロゾルの適用は、ヒスタミン及びメタコリンを吸入する試み及び、高浸透圧並びに低浸透圧溶液(例えば水)の試みにより引き起こされた気管支収縮反射を減らす。(Am.J.Respir.Crit.Care Med.,154(4Ptl):885−8(1996)and Chest,72(4):429−38(1977))
【0017】
それにもかかわらず、エアロゾル化リドカインの投与は、課題及び併発症がないわけではない。例えば、PARI LC PLUS(商標)ネブライザを用いて、40mg/mL溶液2.5mLで投与される、100mg投与量のリドカインエアロゾルは、障害性の嘔吐反射と共に、口唇、舌及び粘膜の口内しびれを、リドカインの吸入後約15分で発生する(Am。J.Respir.Crit.CareMed.(163の(5)):A83(2001)。これらの反応を克服するために、エアロゾル治療後、一時間、飲食しないことを、処置された被験者は推奨された。この状況下で、障害性の嚥下又は吐出に関連した有害事象はより小さいと、報告された。
【0018】
近年、リドカインの使用は、特に、例えば気管支鏡検査法、すなわち呼吸検査で起こる、咳の治療及び抑制に提案された。このような検査では、患者の咳が影響を及ぼすためである(US Patent6,362,197Bl,JAOA,98(No3):170−172(1998),Chest.105:1592−93(1994),JAMA.252(No17)2456−2457(1984),J.Canadian Assoc.Radiol.,22:199−200(1971),Am.J.Emerg.Med.,19:206−207(2001),Regional Anesthetics,18:312−314(1993),British J.Pharmacol.,138:407−416(2003),J^APPI.Phvsiol.,74:1419−1424(1993)。
【0019】
リドカインの吸入処理の従来技術の全ては、吸入用リドカインの安全性及び許容性に関して一定の欠点を有する。リドカインの投与に関連する安全性の問題点は、嘔吐反射の消失による口咽頭に麻痺、流体並びに食品の吸引の危険性、中等度から重度の気管支痙攣及び味覚問題である。更に、先に述べた治療では、長時間にゆっくり送達される、大量のリドカインが用いられ、それは、吸入による一定の薬物送達において肺の許容性及び安全性を増加させるには十分に効率的でない。
【0020】
エアロゾル化サイクロスポリンの投与前に、エアロゾル化リドカインを用いる試みは、Am.J.Respir.Crit.Care Med.,151:516−521(1995),Am.J.Respir.Crit.CareMed.,153:1451−1455(1996),and Am.J.Respir.Crit.Care Med.,155:1690−1698(1997)に記載されている。全てのこれらの刊行物に記載される、サイクロスポリンの投与に先立ち、通常の又はインスピロンジェットネブライザを用いてエアロゾル化リドカイン単独で又はエアロゾル化アルブテロールと組合わせて、2%を5mL、すなわち100mgの投与を行う。これらの前処置は、咳、咽頭の痛み及び息切れを最小化するために投与する。しかしなから、不適切に設計されたサイクロスポリンエアロゾル並びにリドカインの治療により、及び非効率的なネブライザの使用により、咳、咽頭の痛み及び息切れは、十分に改善されず、エアロゾル化サイクロスポリン投与により急性息切れと共に、繰り返し観察された。更に、その種類のネブライザ(通常のもの又はジェットネブライザ)は、肺には名目投与量(nominal dose)の実質的に10%のみを、中咽頭には実質的により多くを(>20−30%)送達する。結果として、患者は、口並びに喉の麻痺及び吐出を実質的に感じる。これらの研究では、例えばFEV1の改善により測定される、エアロゾル化サイクロスポリンの有効性は、肺で沈着されるサイクロスポリンの量と、明らかに相関していた。沈着するサイクロスポリンの量は、エアロゾル化リドカインによる前処置に直接依存することを見出した。言い換えれば、エアロゾル化サイクロスポリンは、吸入されたリドカインの前処置がなければ効果的でない。
【0021】
安全性の観点から、手術の後に肺の神経は麻痺しているので、吐出及び吸引から、移植患者を保護することは極めて重要である。したがって、嘔吐反射を損なわず、肺にリドカインの送達又は吸引することは、非常に重要である。
【0022】
エアロゾル化の薬物送達により直面する問題の概要から、エアロゾル化により送達される治療効果薬物の気道許容性及び気道沈着を継続的に改良する要求があることは、非常に明白である。
【0023】
このような許容性の改善方法は、最小限の口咽頭の麻痺及び吐出で、多くても3分以内で最も短く可能な時間に、肺の下部又は気道の気管支内の空間へ、実質的に2−5又は3.5−10μの粒径で、エアロゾル化食塩水1mL中でリドカイン又はリドカイン類似化合物の治療有効量10、40、100mgを送達する、エアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物を有する処理前ステップを好ましくは含む。
【0024】
従って、この発明の主な目的は、5.5−7.5の間のpHを有する純粋で、保存剤のないリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液を用いた、安全であり、生理的に許容可能であり、効果のある吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物を吸入のために提供することにより、エアロゾル化した主要な治療効果剤の送達の許容性の改善と、エアロゾル化した薬剤の薬物沈着及び許容性の改善のための方法を提供することであり、その製剤は過剰でないが十分な濃度のリドカイン又はリドカイン類似化合物を含み、エアロゾル化した治療効果剤の薬物沈着及び許容性を改善し、それは特に改変及び改良された電子ネブライザを用いた噴霧によって、実質的に単分散の粒子分布範囲で、MMADが0.1−2、2−5又は3.5−10μmの範囲内であるエアロゾルへ効率的にエアロゾル化することができ、又はドライパウダ吸入器で投与される類似のエアロゾルの性質を有するドライパウダ製剤を提供し、両方とも十分に患者に許容される。
【0025】
ここで引用される全ての特許、特許出願及び刊行物は、本願明細書に引用したものとする。
【0026】
要約
この発明の一態様は、エアロゾル化した治療効果剤を投与する前に誘導気道の中央又は肺の下部いずれかに投与する、エアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物により、肺の標的化した前処置を目的とした、吸入用の噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物である。
【0027】
この発明のもう一つの態様は、エアロゾル化した薬物送達前の前処置として用いた吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液又はパウダである。前記溶液又はパウダは電子ネブライザ又は吸入器を用いて噴霧され、エアロゾルにより、約2−約5の範囲のMMADのエアロゾルで、実質的に単分散の粒子範囲(GSD<1.7)で肺の下部に送達し、約3.5μm−約10μmの範囲で肺の中央及び上部に薬物を送達し、又は0.1−2μmの範囲で全身に薬物を送達する。前記ネブライザは、約90%又は90%を超えてリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を送達する。
【0028】
この発明のさらにもう一つの態様は、肺へのエアロゾル化した薬物送達の許容性を改善する方法である。前記方法は、主に誘導気道及び気道の中央又は肺の下部のいずれかに、5.0−7.5の間のpHを有する生理食塩水1mLに溶解した、リドカイン又はリドカイン類似化合物10、40又は100mgを含む噴霧リドカイン若しくはリドカイン類似化合物溶液1mLを、一回又は複数回の投与を有する方法である。前記溶液はエアロゾルによって噴霧され、MMADが実質的に約3.5μm−約10μmの範囲で肺の上部及び中央に送達し、約2−約5μmで肺の下部に送達し、又は、0.1−2μmでエアロゾルで薬物を全身に送達する。前記エアロゾルは、エアロゾル化した薬物の投与の1−2.5分以内の直前に又は30分前以内に送達する。
【0029】
更にまた、この発明のもう一つの態様は、パウダが沈着する領域により、粒子径分布が約2−約5μm又は約3.5μm−10μmのMMADであるリドカイン又はリドカイン類似化合物のドライパウダ製剤である。このようなパウダは、リドカイン又はリドカイン類似化合物が気道及び気道の中央に効率的な沈着するように、実質的に単分散の粒子範囲である。
【0030】
さらに、この発明の別の態様は、通常の生理食塩水若しくは希釈生理食塩水又は塩化物を含む他の水性溶媒に、リドカイン又はリドカイン類似化合物を約10、40又は100mgのいずれか有するリドカイン又はリドカイン類似化合物製剤である。前記製剤は、5.5−7.0の間のpHを有し、緩衝されていなく、重量オスモル濃度150−550mOsm/kg、透過アニオンとしての塩化物のイオン濃度が31−300mM及び粘度が1.5cp未満である。その製剤は約1mLの溶液の噴霧で送達され、生じたエアロゾルが2−5μm又は3.5−10μmのMMADを有し、比較的単分散の粒子範囲である。前記製剤は、振動性の穴の空いた膜を具えた電子ネブライザを用いて噴霧する。
【0031】
更にまた、この発明のもう一つの態様は、約10又は40mgのいずれかのリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を含むドライパウダ製剤である。前記製剤を粉砕、噴霧乾燥又は析出し、エアロゾル化による治療薬剤の送達と組合わせて投与されるドライパウダの吸入に用いられる、約3.5μm−10μmの間のMMAD及び比較的単分散の粒子分布の細粉とする。
【0032】
この発明のもう一つの態様は、乾燥又は凍結乾燥粉末の形態のリドカイン又はリドカイン類似化合物及び、使用するまで別に貯蔵される希釈液含む二成分再構成系であり、任意に、主要な治療薬剤も、この2成分再構成系に含むことができる。
【0033】
更にまた、この発明の別の態様は、肺移植患者における免疫抑制剤の許容性の改善及び沈着の増強方法である。
【0034】
この発明のもう一つの態様は、肺移植患者へエアロゾル化した免疫抑制剤を送達する許容性を改良する方法である。前記方法は、主に誘導気道及び気道の中央又は肺の下部のいずれかに、5.0−7.5の間のpHを有する生理食塩水1mL中に溶解したリドカイン又はリドカイン類似化合物10、40又は100mgを含む噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の約1mLを、一回又は複数回の投与を含む方法である。前記溶液は、MMADが実質的に約3.5μm−約10μmの範囲内で肺の上部及び中央に送達し、約2−約5μmで肺の下部に送達するエアロゾルで噴霧する。前記エアロゾルは、エアロゾル化した薬物の投与直前の1−2.5分以内に又は30分前以内に送達するか、又は、代わりに主要な免疫抑制剤と組合せて送達する。前記免疫抑制剤は、実質的にMMAD約2−約5μmの範囲内のエアロゾルで、移植された肺に送達する。
【0035】
この発明のもう一つの態様は、心臓、腎臓、肝臓又は他の臓器移植患者にエアロゾル化した免疫抑制剤を送達する許容性を改善する方法である。前記方法は、主に誘導気道及び気道の中央又は肺の下部のいずれかに、5.0−7.5の間のpHを有する生理食塩水1mLに溶解したリドカイン若しくはリドカイン類似化合物10、40又は100mgを含む噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の約1mLを、一回又は複数回の投与することを含む方法である。前記溶液はエアロゾルで噴霧され、実質的に約3.5μm−約10μmの範囲内のMMADで肺の上部及び中央に送達され、約2−約5μmで肺の下部に送達される。前記エアロゾルは、エアロゾル化した薬物を投与する直前の1−2.5分前以内か、又は投与30分前以内に送達され、あるいは代わりに、全身循環で送達される主要な免疫抑制剤と組合せて、MMADが実質的に約0.1−約2μmの範囲内のエアロゾルで、移植拒絶の予防のために送達される。
【0036】
更にまた、この発明のもう一つの態様は、煙草、スモッグ、大気汚染、粉塵又はアレルゲンに対しての許容性の改善方法である。
a)約10mg、40mg若しくは100mgのリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入用の製剤を調製するステップと、
b)実質的に3.5−10μmの間の粒径のエアロゾルを生成することが可能な電子ネブライザ又は定量吸入器を選ぶステップと、
c)幾何学的標準偏差1.7未満であり、空気動力学的中央粒子径が実質的に約4μm−約5μmの間の粒子を有するエアロゾルで前記リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤を噴霧するステップと、
d)煙草、スモッグ、大気汚染、粉塵又はアレルゲンに被曝した又は被曝後のヒト被験者に、前記被曝の直前又は直後に前記エアロゾル化した製剤を投与するステップと
を含む方法である。
【0037】
ここで、「薬物」、「薬剤」、「治療薬」又は「治療効果剤」は、吸入により、肺又は全身循環に送達される治療的に活性のある化合物を意味する。
【0038】
「主要な薬物」、「主要な薬剤」「主要な医薬品」、「主要な治療薬」又は「主要な治療効果剤」は、この発明に含まれる薬物のいずれをも意味するものであって、それらはエアロゾル化によって投与され、その中で、主要な薬物送達の直前若しくは30分前以内か、又は主要な薬物の送達と共に投与される、吸入投与されるリドカイン又はリドカイン類似化合物の溶液による前処置で沈着及び許容性が改善又は改良される。主要な薬物を、単独又は他の治療効果薬物若しくは薬学的に許容できる賦形剤と組合わせて投与することができる。主要な薬物及びリドカインを、併用することができる。
【0039】
「MMAD」は、空気動力学的中央粒子径を意味する。
【0040】
「通常の生理食塩水」又は「NS」は、0.9%(w/v)NaClを含む水溶液を意味する。
【0041】
「希釈食塩水」は、約0.04%−約0.8%より小さい強度に希釈した0.9%(w/v)NaClを含む通常の生理食塩水を意味する。
【0042】
「2分の1の通常の生理食塩水」又は「1/2NS」は、0.45%(w/v)NaClを含む半分の強度に希釈した通常の生理食塩水を意味する。
【0043】
「4分の1の通常の生理食塩水」又は「1/4NS」は、0.225%(w/v)NaClを含む4分の1の強度に希釈した通常の生理食塩水を意味する。
【0044】
「10分の1の通常の生理食塩水」又は「1/10NS」は、0.09%(w/v)NaClを含む10分の1の強度に希釈した通常の生理食塩水を意味する。
【0045】
「20分の1の通常の生理食塩水」又は「1/20NS」は、0.045%(w/v)NaClを含む10分の1の強度に希釈された通常の生理食塩水を意味する。
【0046】
「生理的に許容できる溶液」は、1/10NS−1NSに希釈された生理食塩水又は約31−154mMの塩化物を含む他の水溶液を意味する。
【0047】
「組成物」は、賦形剤、希釈液、等張液、バッファ等の他の成分をさらに含むことができる製剤を有するリドカイン又はリドカイン類似化合物を意味する
【0048】
「製剤」は、溶液を含むリドカイン又はリドカイン類似化合物の噴霧又はリドカイン若しくはリドカイン類似化合物ドライパウダの噴霧のような、特定の用途に調製された特定の組成物を意味する。
【0049】
「リドカイン組成物」、「リドカイン類似化合物組成物」、「リドカイン製剤」又は「リドカイン類似化合物製剤」は、リドカイン若しくはリドカイン類似化合物の表示量を含む組成物又は製剤を意味する。
【0050】
「気道の中央」は、気管、気管分岐部及び気管支で規定される呼吸器官系の区域を意味する。
【0051】
「気管分岐部」又は「気管分岐部」は、気管の分岐部に、左右の主な気管支で開口部を分離する隆起部を意味する。
【0052】
「LSI」は、吸入用リドカイン溶液を意味する。
【0053】
「TOR」は、総出力速度を意味する。
【0054】
「GSD」は、幾何学的標準偏差を意味する。
【0055】
「AE」は、有害事象を意味する。
【0056】
「SAE」は、重篤な有害事象を意味する。
【0057】
「AST」は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを意味する。
【0058】
「ALT」は、アラニンアミノトランスフェラーゼを意味する。
【0059】
「ARDS」は、急性呼吸不全症候群を意味する。
【0060】
「COPD」は、慢性閉塞性肺疾患を意味する。
【0061】
「CS」は、コルチコステロイドを意味する。
【0062】
「ICS」は、吸入用コルチコステロイドを意味する。
【0063】
「OCS」は、経口コルチコステロイドを意味する。
【0064】
「FEF」は、強制的呼気流量を意味する。
【0065】
「FEV1」は、一秒の強制的呼気流量を意味する。
【0066】
「FVC」は、強制肺活量を意味する。
【0067】
「PEF」は、最大呼気流量を意味する。
【0068】
「LFT」は、肝臓機能検査を意味する。
【0069】
「LLSI」は、リドカイン類似化合物を含む吸入用溶液を意味する。
【0070】
「MDI」は、定量投与量吸入器を意味する。
【0071】
発明の詳細な説明
この発明は、リドカイン若しくはリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液を、エアロゾル化した主要な治療効果薬物を投与する前に又は、主要な薬物と組合せて投与と同時に投与することにより、特に、許容性が良くないエアロゾル化した主要な薬物の許容性を改善し、肺での主要な薬物の沈着を改良するという知見に関するものである。
【0072】
この発明は、エアロゾル化した薬物送達の許容性の改良方法に関するものであり、エアロゾル化の薬物送達では、エアロゾル化した治療薬の投与直前又は約30分前にエアロゾル化したリドカイン又はリドカイン類似化合物による前処置を先に行うか、又は代わりに、吸入によるリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液を主要薬物と同時に投与する。エアロゾル化したリドカイン又はリドカイン類似化合物により被験者へのこのような前処置を行うことにより、気道の許容性を改善し、肺への治療薬の沈着を改善する。
【0073】
この方法は、うまく許容されない主要な薬物の許容性の改善及び肺に沈着に特に役立ち、そこでエアロゾル化した形式でのそれらの用途は限られる。この態様において、この発明は、同じく肺、心臓、腎臓、肝臓又は他の器官における移植患者の免疫抑制剤の許容性及び沈着を改善するのに特に役立つのみならず、炎症性肺疾患の治療を改善する。さらに、この発明の方法は、煙草、汚染物質及びアレルゲンのような環境刺激による気道感受性の低減に適しており、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤は、これらの環境刺激に接触する人に投与される。
【0074】
I.エアロゾル化薬物送達として、許容性及び沈着を改善する方法
エアロゾル化した主要薬物の許容性及び沈着の改善方法は、吸入するためのリドカイン又はリドカイン類似化合物の溶液の表示量による患者の前処置を含む。
【0075】
このような前処置は、吸入により、これらの薬物の投与の直前又は30分以内の前のいずれかで投与される。さらに、吸入用のリドカイン又はリドカイン類似化合物の溶液は、吸入可能な薬物と同時に、又は吸入可能な主要薬物と組合せて又は薬物と組合せてさえも投与することができる。
【0076】
この方法を用いることで、下記の表1に例示される主要な薬物又はそれと同種類の薬物から選ばれる主要なエアロゾル化された薬物により治療される患者又は移植患者は、これらの主要な薬物の許容性の低さ及び沈着と関連する問題、又は、移植による拒絶反応、肺疾患の治療及び/又は煙草、塵、アレルゲン及び空気汚染による環境的な気道の課題である増加した感受性に関連する問題を解決するために、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液で前処置される。
【0077】
この発明の目的は、
1)吸入を介して主要な治療効果剤を送達する前処置として、リドカイン又はリドカイン類似化合物の効果的及び安全な投与量を誘導気道及び気道の中央又は肺の作用点に直接に送達する。
2)吸入で前記薬物を投与することによって、疾患の処置で必要とされる主要な治療薬剤の全量の低減を可能にする状況を提供することによって、主要な治療薬による有意な全身被曝を回避する。
3)エアロゾル化した主要な薬物に対する肺の許容性及びその沈着を改善し、それによってその効力を増強し、かつ吸入に必要とされる主要な薬物の全量を低減することにより、吸入により送達される主要な治療薬の濃度を減少する。
【0078】
このようにこの発明の一つの観点は、ネブライザ又は吸入器と共に用いるために製剤されたリドカイン又はリドカイン類似化合物に関連し、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、主要な薬物又は主要な薬物が治療に効果的であるように沈着する領域に依存して、誘導中央気道又は肺の下部へ標的化した送達をするためのものである。エアロゾル化の薬物の許容性を改善する方法は同時に、これらの薬物を、経口により又は全身的に投与する必要性を減らすか又はなくす。電子ネブライザ又はドライパウダ若しくは定量吸入器で送達されたエアロゾル化されたリドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤は、吸入に主要な薬物の投与とともに投与され、一般的に、エアロゾル化した主要な治療薬の投与の直前又はこのような投与の30分前以内に投与される。しかし、必要に応じて、このような吸入治療も、主要な薬物の全身投与とともに投与することができる。
【0079】
溶媒1mLにつき約10、40、100mgを1日量で投与するリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む製剤は、一般的に、一日に一、二、三回、又は必要に応じて何度でも、エアロゾル化した薬物と共に肺へ送達する。投与量は、主要な治療薬剤の投与回数に依存する。リドカイン又はリドカイン類似化合物は、溶液かドライパウダのいずれかとして調製される。リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液は、1回の投与量送達あたり、pH5.5−7.5の間の正常生理食塩水又は希釈食塩水1mLに溶解した10、40又は100mgの塩酸リドカイン又はリドカイン類似化合物を含む。溶液は、肺の標的とする領域に、約2−5μm、好ましくは約3.5−10μmの範囲の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するエアロゾルへと噴霧され、改良電子ネブライザを用いて実質的に単分散粒子範囲で送達される。このようなネブライザは、振動性の穴を空いた膜を好ましくは具えるか又は、定量投与量吸入器である。
【0080】
本願明細書で記載されるこの発明によるエアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物は、最小有効量で与えられ、エアロゾルの粒径により、口咽頭領域又は全身にみられる麻酔薬のいかなる実質的残留物もなく、気道の中央又は肺の下部、ほとんど細気管支及び肺胞のみに沈着する。
【0081】
吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の投与は、薬学的に効果を有する主要剤の許容性の改善を生じ、このような薬剤のより効果的な送達をもたらす。電子ネブライザ、好ましくは振動性の穴のあいた膜によって改良されたネブライザを用いて、リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液は、実質的に単分散粒子範囲を生じ、リドカイン又はリドカイン類似化合物の気道の中央における沈着量は多くなり、中咽頭における量は少なくなる。
【0082】
したがって、この発明は、効果的であり、安全であり、非刺激性であり、生理的に許容可能であって適合性があるリドカイン又はリドカイン類似化合物又はドライパウダ溶液を提供するものであって、エアロゾルで送達される薬剤の許容性を改善する方法として用いるのに適している。この方法は、1−2.5分、多くても3分、好ましくは1−2分以内で、吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物の有効量の早い送達を提供する。エアロゾル化のために、リドカイン又はリドカイン類似化合物は、粒径3.5μm−10μmの粒径を有するドライパウダとして、又は5.5−7.5の間のpH、200−550mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を有する生理食塩水1mLにリドカイン又はリドカイン類似化合物10、40、100mgが溶解した溶液として送達される。この溶液又はドライパウダは、1日2回、例えばPARI eFlow電子ネブライザのような電子ネブライザを用いて、空気動力学的中央粒子径(MMAD)2−5μm、3.5μm−10μmのエアロゾルで噴霧される。このネブライザは、約1−約2.5分の時間で、リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液を必要な大きさにエアロゾル化することができる。
【0083】
電子ネブライザの高い有効性のため、リドカイン又はリドカイン類似化合物の最小の量のみエアロゾル化の薬物治療による許容性の改善を成し遂げる必要がある。特に長時間の被曝による、リドカインの麻酔性による口唇、舌若しくは咽頭領域の粘膜の麻痺、気管支痙攣のような二次性の望ましくない症状、又はリドカインの高い全身濃度を、排除又は大いに減少する。この発明の開発で実施した研究では、LSIが吸入によって送達される主要な薬物の前処置で良好な許容性、安全性及び有効性を示す。
【0084】
A.肺の標的部位
主要な薬物が沈着する必要がある肺の標的領域は、気道の上部、誘導気道の中央又は気道の下部である。治療される必要がある肺疾患により、エアロゾル化した主要な薬物は、疾患が発生し、その結果として、適当なMMADを有するエアロゾルが送達されるであろう領域に沈着する。許容性の改善および主要な薬物の沈着促進のための前処置として用いる吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液は、誘導気道の中央、肺の下部、またはいくらかの事例では主要な薬物が標的とするのと同じ領域のいずれかを標的とする。
【0085】
リドカイン又はリドカイン類似化合物及び投与される主要な薬物の肺における標的領域は、疾患及び目的される処置の種類により異なる。したがって、一定の薬物は、伝染性若しくは炎症性の過程又は気管支痙攣が発生する、気管、気管分岐部及び気管支を含む誘導気道及び気道の中央に送達されることを目的とする。他の薬物は、根絶する必要がある病原体が存在する肺の下部に主に送達されることを目的とし、その部分には化学治療剤が沈着する必要があり、あるいはそこを通じて薬物が体循環に投与される。これらの状況の吸入治療は、特定の疾患に冒された領域を標的とする。しかし、肺の主要な薬物の許容性及び沈着を改善するために、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物は、主要な治療薬が沈着するよりむしろ、一定の薬物への肺の不許容性が主な原因となる誘導肺領域に主に送達されるように調製される。しかしそれは、主要な薬物が沈着するのと同じ領域に送達するように調製されてもよい。
【0086】
後者の事例において、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液は、治療薬が沈着し、治療に最も効果的である肺領域に、適当な粒径でエアロゾル化される。例えば、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)の根絶に用いられるペンタミジンは、肺の下部の肺胞に沈着する必要がある。従って、吸入用溶液のリドカイン又はリドカイン類似化合物は、誘導気道の中央に沈着するようにエアロゾル化され、ペンタミジン溶液も同様である。両者は、主に2−5μmの粒径を有するエアロゾルで噴霧され、肺の下部に送達される。同様に、肺胞扁平組織によって体循環にすることを目的とする主要な薬物は、約0.1−2μmの粒径の範囲でエアロゾルに調製される。一方、一般的には肺の上部又は中央を標的とする、抗生物質、ステロイド及びこのような薬剤は、粒径3.5−10μmのエアロゾルで噴霧される。
【0087】
B.主要な治療効果剤
ほとんど全ての治療効果剤は、本願明細書では主要な薬剤と呼ばれ、肺又は全身疾患の治療に用いられ、吸入によって潜在的に送達されることができる。しかし、この発明の方法の主要な目的は、投与又は吸入によって投与される治療効果剤である。他の器官との解剖学的及び組織学的な違いにより、吸入によって投与されるとき、いくつかの治療効果剤は、許容できないか又は良好な許容性を示す。
【0088】
下記の表1は、吸入によって送達できる治療薬の例示的なグループを要約したものであり、主要な治療薬の種類、その種類の例示的な治療薬及びその適用を記載した。
【0089】
【表1−1】

【0090】
【表1−2】

【0091】
【表1−3】

【0092】
表1に記載される化合物は、単なる例示であり、同一又は相違する適用の処置に適している、同一又は相違する種類の、他の全ての治療効果剤は、吸入によって送達される限り、この目的の範囲内であることを意図することは、理解される。
【0093】
コリスチン、トブラマイシン、ペンタミジン、サイクロスポリン、α−インターフェロン、インターロイキン2、アンホテリシンB及びプロスタグランジンのような、一定の化合物は肺での沈着が特に低いことがわかっており、しばしば、これらの薬物は肺による良好な許容性を示さないか又は全く許容されない。
【0094】
エアロゾルのリドカイン又はリドカイン類似化合物を用いる前処置方法は、これらのいずれかの薬物の単独で、又は組合わせて、投与前に用いられる。
【0095】
II.肺移植患者における吸入用治療薬の許容性及び沈着を改善する方法
この発明の方法は、肺移植患者に、免疫抑制治療薬を単独で又は組合わせて、許容性を改善したり、沈着の増強を改善するにも適している。
【0096】
肺移植は、不治の肺及び心血管疾患以外で、嚢胞性線維症、特発の肺線維症、肺高血圧症及び気管支拡張症の患者での治療でしばしば行われる。
【0097】
他のいかなる移植処置と同様に、患者の生存の重要な要素は、肺移植が患者自身の免疫系によって拒絶されないことが確実であることである。従って、サイクロスポリン、プレドニゾン、メトトレキセート、アザチオプリン、マイコフェノリン、モフェチル、シロリムス又はクロリムスのような免疫抑制剤による免疫抑制治療は、肺移植患者の生存に極めて重要である。
【0098】
不運にも、経口又は静脈内ルートのいずれかを用いて全身に投与されるとき、これらの薬剤は、患者の全ての組織に対する強力な免疫抑制効果を示し、ウイルス、細菌又は寄生性な日和見感染を克服するのに必要な他の全ての免疫反応も抑制し、患者の生命は深刻な危険にさらされる。
【0099】
最近、これらの問題を解決するために、エアロゾル化した免疫抑制薬、特にサイクロスポリンによる肺臓器移植患者の治療は、例えば、米国特許番号第09/244792号公報(1999年2月5日出願)、米国特許番号第2002/0006901号公報(2002年1月17日公表)に提案され、記載されており、本願明細書に完全に引用したものとする。背景及び関連開示において既に議論された他の参照例は、類似の治療方法を開示する。全てのこれらの技術は、肺移植拒絶に拮抗するためのエアロゾル化したサイクロスポリンの投与が記載され、エアロゾル化のためにサイクロスポリン300mgを、エタノール又はプロピレングリコール4.8mLに溶解し、約20−30分の吸入時間で、通常の又はジェットネブライザのいずれかを用いてエアロゾルとして投与する。
【0100】
先に述べたエアロゾル化したサイクロスポリンの投与と関連する、いくつかの問題がある。
【0101】
第一に、サイクロスポリンは水に溶解しないので、他の溶媒を用いる必要がある。エタノール又はプロピレングリコールに溶解させたサイクロスポリンのエアロゾルを調製する試みは、咳、気管支痙攣、急性息切れ及び咽頭の痛みのような重症な副作用を生じる。エタノール及びプロピレングリコールの両者は肺の刺激薬であることが知られ、上記に記載した長時間の送達(20−30分)は副作用の発生率を増やす。エタノールは、サイクロスポリンのエアロゾル化の溶媒として、もはや用いられない。しかしなから、患者の咳及び他の副作用によりエアロゾル化したサイクロスポリン処置が重症でしばしば中止しなければならなかったという報告が続いたにもかかわらず、プロピレングリコールは、サイクロスポリンの溶媒とし現在も用いられている。
【0102】
第二に、記載されたサイクロスポリンのエアロゾル化は、プロピレングリコールを比較的大量で利用し、サイクロスポリン300mgを実質的に4.8mLをエアロゾルで送達するために、約20−30分間投与される。プロピレングリコールは目及び皮膚に対する既知の刺激物質であるので、それは一般に安全と認められる物質(GRAS)に、現在分類されていない。プロピレングリコール噴霧によるへ短い被曝により、喘息でない患者に急性の眼球及び上気道刺激を生じる:Handbook of Pharmaceutical Additives.Eds.Ash Michael et al.,P.682(2002);Crit.Rev.Toxicol.,29:331−365(1999)及びOccup.Environ.Med.,58:649−655(2001)。このような高容量の溶媒及びそれに長時間曝露することは、患者に悪影響を与える副作用の発現を生じる。
【0103】
患者が肺に投与されたエタノールを一般的に許容しないことは、よく知られ、’792の特許出願で発明者によっても認められている。同様に、一定の患者は、プロピレングリコールを許容しない。エアロゾル化プロピレングリコールに対する不許容性は、ヒトに示された(Occup.Environ.Med.,58:649−655(2001))。
【0104】
これらの問題を解決する試みは、通常の又はジェットネブライザの投与により10%リドカイン溶液5mLで患者を前処置するという提案へ至る(Am.J.Respir.Crit Care Med.,151:516−521(1995),Am.J.Respir.Crit.CareMed.,153:1451−1455(1996),及びAm.J.Respir.Crit.Care Med.,155:1690−1698(1997))。この種の前処置によっていくつかの改善が成し遂げられたが、口咽頭の麻痺及び嘔吐反射の抑制とともに、上記述べた副作用は、この方法に従った処置でもなお認められた。それは第一に、この前処置は、通常の又はジェットネブライザを用いたために効果がなかったためである。これらのネブライザは、エアロゾル化した用量の全体の約5−10%のみを送達すること及び、エアロゾル化の時間を長時間、20−30分間必要とすることは既知である。
【0105】
免疫抑制薬の許容性及び肺移植におけるそれらの沈着の程度は、吸入用のリドカイン若しくはリドカイン類似化合物溶液又はドライパウダにより肺移植患者を前処置することによって改善することを見出した。上記の通り、約1−2.5分、最大でも3分、好ましくは1−2分で、電子ネブライザにより送達するエアロゾルで、主要な免疫抑制薬の投与直前又は30分前に患者に投与し、続いて同種類の電子ネブライザを用いて主要な免疫抑制薬の投与し、溶媒に溶解した薬物の有効量を短時間で送達することを可能にする。
【0106】
このような前処置は、刺激のある溶媒への患者の被曝を短くし、90%を超えるエアロゾル化したものの投与量をより有効に薬物送達することを可能にし、より高い薬物沈着を生じ及びエアロゾル化免疫抑制薬による処置の肺移植許容性を改善した。
【0107】
おおよそのエアロゾル化したものの投与量は、サイクロスポリン(2.5−5mg/kg/日)、メトトレキセート(0.03mg/kg/日)、タクロリムス(0.03−0.05mg/kg/日)、シロリムス(0.05−0.2mg/kg/日)、プレドニゾン(0.3mg/kg/日)、アザチオプリン(1−2mg/kg/日)又は他の免疫抑制薬である。これらの投与量は、主要な免疫抑制薬を送達する手段により、ネブライザから名目投与量のおおよそ10%以下が肺に沈着することを仮定する。
【0108】
おおよその経口又は全身の投与量は、サイクロスポリン(50−200mg/日)、メトトレキセート(2−10mg/日)、タクロリムス(0.5−5mg/日)、シロリムス(2−5mg/日)、プレドニゾン(5−50mg/日)及びアザチオプリン(50mg/日)である。
【0109】
III.臓器移植患者の吸入用治療薬の許容性の改善方法
この発明の方法は、許容性の改善、及び臓器移植患者にエアロゾル化によって投与される免疫抑制治療薬の沈着の増強により適切である。
【0110】
心臓、腎臓、肝臓及び他の臓器移植のような、全ての臓器移植は、患者の免疫系による拒絶反応に影響を受けやすい。全ての移植患者は、免疫抑制剤で処置される必要がある。しかし問題は、免疫抑制剤であるこれらの薬剤を全身投与することにより生じ、これらの薬剤は一般的に非常に強い薬物であって、移植されたもののみならず無差別に影響を及ぼし、それの拒絶を予防するだけでなく、ある程度患者の免疫系を抑制し、移植されたものが拒絶されないが、他の全ての免疫反応が抑制され、患者は接触するかもしれない任意の日和見感染にさらされる。
【0111】
従って、エアロゾルによって主要な免疫抑制薬を投与することは、主要な薬物をより少ない投与量で投与することを可能にする別のルートの投与を提供する。免疫抑制薬の許容性及び移植患者におけるそれらの沈着の程度は、主要な免疫抑制薬の投与直前又は30分前以内に吸入で投与されるリドカイン若しくはリドカイン類似化合物溶液又はドライパウダで、肺移植患者を前処置することによって改善されることを発見した。溶液を、約1−2.5分、最大3分で、電子ネブライザによって送達されるエアロゾルとして投与すると、薬物送達の有効性はエアロゾル化したものの投与量の90%を超える。前処置ステップに続いて、同じ種類の電子ネブライザを用いて主要な免疫抑制薬を投与し、溶媒で送達される主要な薬物の有効量(90%を超えて)の短時間での送達を可能にする。したがって、主要な免疫抑制薬は、他のネブライザによって送達することができる。
【0112】
リドカイン又はリドカイン類似化合物による前処置は、患者が刺激性の溶媒に被曝することを短くし、より効果的な薬物送達を可能にし、肺の実質組織を通じて体循環により高い薬物移動が起こり、エアロゾル化サイクロスポリン(2.5−5mg/kg/日)、メトトレキセート(0.03mg/kg/日)、タクロリムス(0.03−0.05mg/kg/日)、プレドニゾン(0.3mg/kg/日)、アザチオプリン(1−2mg/kg/日)又は他の免疫抑制薬が、肺を介した体循環への送達の許容性を改善する。
【0113】
IV. 肺疾患の治療による吸入用治療薬の許容性の改善方法
さらにまた、この発明の方法は、許容性の改善及び肺疾患の治療に用いられる主要な治療効果薬物の沈着の増強に適切である。この点に関しては、許容性の改善及び肺疾患を患う患者の肺への噴霧治療によって送達された、免疫抑制薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症治療薬又はその組合せの沈着の増強は、リドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入可能な溶液で患者を前処置することによって成し遂げられる。そこにおいて、例えば喘息、嚢胞性線維症、特発の肺線維症、慢性気管支炎及びアレルギー性反応のような、バクテリア若しくはウイルス感染、寄生虫症又は炎症性疾患などの肺疾患の、とりわけ通常の主要な薬物による処置は、本方法のステップによる前処置を用いて有利に高められ、患者は、リドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入で特異的に調製された溶液により前もって処置される。
【0114】
リドカイン又はリドカイン類似化合物の吸入用溶液を、電子ネブライザによって、約1−2.5分、多くても3分で、エアロゾル中で送達される主要な薬物の投与の直前又は30分前以内に患者に投与する患者の前処理により、通常の抗菌薬、抗ウイルス薬、消炎薬又は免疫抑制薬の許容性が改善され、それらの肺への沈着は促進されることが見出され、その後主要な薬物が投与される。主要な薬物の送達では、溶媒体積1mLで送達される薬物の有効量の送達時間を短くすることが可能な同種類の電子ネブライザが、好ましくは用いられる。また一方、他の種類のネブライザも、用いることができる。リドカイン又はリドカイン類似化合物によるこのような前処置は、刺激性の溶媒及びリドカイン若しくはリドカイン類似化合物による患者の被曝を短くし、肺又は体循環への効果的な薬物送達を可能にし、肺に対するエアロゾル化した免疫抑制薬、消炎薬、抗ウイルス薬又は抗菌治療薬の送達についての肺の許容性を改善する。リドカイン又はリドカイン類似化合物と主要な薬物の間の相乗効果があるようなので、リドカイン又はリドカイン類似化合物によるこれらの疾患の前処置は、主要な薬物の抗炎症効果を改良することができる。
【0115】
この点に関して、1999年2月5日に出願の米国特許出願番号第09/244792号公報、2002年1月17日に公開された公開番号第2002/0006901号公報は、本願明細書に引用したものとする。そこに記載された処置の全ての方法は都合がよいように改善され、そこに記載された薬物の許容性及び沈着は、この発明によるリドカイン又はリドカイン類似化合物の前処置によって改良することができる。
【0116】
さらに、この発明により、上記方法は、煙草、スモッグ、大気汚染、粉塵又はアレルゲン、これらの汚染物質の影響を受けたヒト被験者の許容性の改善及びこのような被曝に対応する過敏性の減少に適切である。このような許容度の改善方法は、約10mg、40mg、100mgのリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入可能な製剤を調製することを含み、実質的に粒径3.5−10μmのエアロゾルを生成することができる電子ネブライザ又は定量投与量吸入器を選び、幾何標準偏差1.7未満である空気動力学的中央粒子径で実質的に約4−5μmの粒子径を有するエアロゾルに調製される前記リドカイン又はリドカイン類似化合物を噴霧し、煙草、スモッグ、大気汚染、粉塵又はアレルゲンに被曝したか、若しくは被曝した後の被験者に、被曝の直前若しくは直後に前記エアロゾル化した製剤を投与する。
【0117】
V.リドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入用組成物
一態様において、この発明は、リドカインの効果的な送達に適切な吸入用リドカイン製剤に関するものであり、誘導気道の中央又は気道の下部にリドカイン溶液(LSI)又はリドカインドライパウダを噴霧することにより、前記リドカイン製剤は、エアロゾル化することにより、主要な薬物送達の前処置として用いられる。
【0118】
更に、リドカインと化学的及び機能的に類似である化合物(以下リドカイン類似化合物)は、この発明と同一又は類似の方法で用いることができる。
【0119】
この発明は、電子ネブライザ、特に具体的には、改良PARI eFLOW(商標)電子ネブライザを用いて噴霧することにより、リドカイン又はリドカイン類似化合物を送達するのが最も好ましく適切である。このネブライザは、約0.1−約2μm、約2−約5μmまた約3.5−約10μmの所定の粒径で実質的に単分散粒子を製造し、粒径は送達の標的とした領域に依存する。約3.5−10μm、好ましくは4μm−5μmの間のMMADであるエアロゾルを製造するドライパウダ吸入器を用いて、ドライパウダとして調製されたリドカイン又はリドカイン類似化合物を噴霧する。
【0120】
異なる粒径のエアロゾルは、誘導気道の中央、肺の下部又は、肺胞扁平組織を通じた体循環へのリドカインの効果的な送達に必要であり、一方、リドカイン麻酔薬の口咽頭の沈着を最小化する。
【0121】
肺疾患の処置において過去に最も用いられていたネブライザは、末梢の気道に沈着する必要がある薬物の投与のために設計されているため、この発明を実施するネブライザの選択は、非常に重要であり、この発明の不可分の部分である。これらのネブライザは、エアロゾル化の投与量の約5−10%のみを送達して効率が低く、噴霧に、非常により長い時間を必要とし、一般的に20−30分である。
【0122】
さらに、エアロゾル化用リドカインは、肺に認容されるため、保存剤及びエピネフリンなしで調製する必要がある。
【0123】
A.リドカイン
リドカインは、化学名、アセトアミド2−(ジエチルアミノ)−N−(2、6−ジメチルフェニル)で、既知の局所麻酔薬である。この発明で用いる適切なリドカインは、例えばDSM Wyckoff, South Haven,MIから市販されており、Cardinal Health Technologies−STW,Woodstock,ILにより、静脈内に使用するために1%(10mg)又は4%(40mg)塩酸リドカイン溶液として包装されている。滅菌された、保存剤を含まない、非発熱性の一回量アンプル1.0mLとして、吸入用リドカイン溶液(LSI)を提供する。10若しくは40mgの塩酸リドカイン、又はpH5.0−7.5の範囲であるUSP(1%又は4%の塩酸リドカイン溶液1mL)を、アンプルは含む。塩化ナトリウム含有量は、1%リドカインについては塩化ナトリウム(USP)6.844g/L及び、4%リドカインについては塩化ナトリウム(USP)0.351g/Lである。両方の溶液の重量オスモル濃度は、実質的に275−300のmOsm/kgである。
【0124】
この発明では、吸入用リドカイン溶液(LSI)は、特に改良電子ネブライザと、好ましくは振動性の穴のあいた膜を具え、好ましくはPARI eFlow電子ネブライザとを組合わせて用いられることを意図する。LSIと適当な電子ネブライザ又は吸入器との間の組合わせのみで、この発明の利点は、確かであり明らかである。吸入用に特に調製されたLSIは、保存剤がなく、電子ネブライザによる噴霧が適切となるように、透圧濃度、pH及び粘性に関して最適化する。
【0125】
B.リドカイン類似化合物
リドカイン類似化合物は、発明者によって、2003年11月4日にPCT出願の米国暫定出願番号60/517,284号公報、2004年11月4日に出願の米国第04/36926号に記載した、新たな置換アセトアニリド及びベンズアミドであり、ここで完全に引用したものとする。
【0126】
置換ベンズアミド及びアセトアニリドの調製、合成、製剤及び送達は、仮出願60/517,284号公報に開示されている。
【0127】
この発明のリドカイン類似化合物の例は、テトラデカン酸[3−(2−ジエチルアミノ−アセチルアミノ)―2,4−ジメチルフェニル]−アミド;2−ジエチルアミノ−N−(2,6−ジメチル−3−トリデシルアミノ−フェニル)−アセトアミド;2−ジエチルアミノ−N−{2,6−ジメチル−3−[5−(4−フェニル−ブトキシ)−ペンチルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;N−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4−(4−トリフルオロメソキシ−ベンジルアミノ)−ベンズアミド;N−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4−(4−トリフルオロメソキシ−ベンゾイルアミド)−ベンズアミド;N−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4−(4−フェニル−ベンゾイルアミド)−ベンズアミド;2−[1,4’]ビピペリジニル−1’−イル−N−[2、6−ジメチル−3−(4−フェニル−ブチルアミノ)−フェニル]−アセトアミド;2−[1,4’]ビピペリジニル−1’−イル−N−{2,6−ジメチル−3−[2−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;2−[1,4’]ビピペリジニル−1’−イル−N−(2、6−ジメチルフェニル)―アセトアミド及び、前記化合物の薬学的に許容できる塩類、を含む。
【0128】
この発明の目的で、リドカイン類似化合物は、エアロゾル化の、主要な薬物送達のための前処置として吸入で送達され、リドカインと同様に、これらの化合物は主要な薬物の肺での許容性を改善し、処置が必要となる肺領域で、薬物の沈着を改善する。
【0129】
この発明の全ての他の態様において、リドカイン類似化合物の濃度、吸入用ドライパウダ又は溶液としての調製、エアロゾルによる送達、ネブライザの選択、粒径及び送達時間については、リドカイン類似化合物は、リドカインと同様に調製され、これら全ての観点についてリドカインと置換される。
【0130】
C.エアロゾル化吸入用溶液
リドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液は、肺の中央又は気道の下部に、エアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物を最も効果的に、しかし安全に送達するために調製される。
【0131】
リドカイン又はリドカイン類似化合物の組成物は、塩酸リドカイン、リドカイン類似化合物又はその塩を10、40、100mg含み、一回の吸入投与量用の総容量である約1mLの食塩水で送達される。この発明の方法により調製及び投与されるとき、それはリドカイン又はリドカイン類似化合物の治療に効果のある投与量を肺の標的部位に送達し、リドカイン又はリドカイン類似化合物の量は、吸入可能な主要な治療薬の許容性と沈着を改善するために十分である。
【0132】
リドカイン又はリドカイン類似化合物の組成物と電子ネブライザの組合せは、吸入の有効性が改善されるという結果を生じる。リドカイン又はリドカイン類似化合物の量が実質的により少なくなるという点及び、主要な、治療に効果のある薬物による許容性の改善を実現するのに必要な、送達時間が実質的により短縮されるという点に関して、このような改善された有効性を示す。電子ネブライザ、特にドイツのミュンヘンのPARI社から入手した、振動性の穴のあいた膜を具えるPARI eFlowネブライザは、実質的に単分散の粒子範囲のエアロゾルを製造し、口咽頭領域又は肺の下部に、リドカイン又はリドカイン類似化合物の実質的な沈着をすることなく、誘導気道の中央又は肺の下部に実質的に全投与量(一般的に約90%又は90%を超えて)のリドカイン又はリドカイン類似化合物を送達することを可能にする。このような沈着は、局所的な麻痺及び口咽頭領域の嘔吐反射の損失を生じ、肺の下部に送達されたときには、望ましくない副作用及び/又は吸収若しくは体循環への運搬を引き起こすことは公知である。PARI eFlowネブライザは、FDA(510−k)で承認され、商業的に利用できる。
【0133】
ただし、現在利用でき、又は将来利用できるようになる必要なエアロゾル特性を有するエアロゾルを製造する同じ機能を有するいかなる装置も、この発明の範囲内に含まれることを目的とすることを理解されたい。このような装置の実施例は、Omron、Boehringer、Ingelheim、Chrysalis又はAerogenによって製造された吸入器である。
【0134】
リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の各々の投与量は、投与量1mLにつき、リドカイン又はリドカイン類似化合物10、40、100mgのいずれかで、最小であっても有効な量であり、重量オスモル濃度275−300mOsm/kg及びpH約5.0−7.5、好ましくはpH約5.5−6である生理食塩水又は希釈食塩水約1mLの可能な限り最も少ない容積に調整し、送達する。気管支痙攣、麻痺のような望ましくない副作用の発現を最小化し、口咽頭の沈着が最小化するような、患者に良好な許容性を示すエアロゾルの生成を可能にするように、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液を調製する。
【0135】
1.安全性
エアロゾル化した局所麻酔製剤に主要な必要条件は、その安全性である。気道の他の部位に現れる局所麻酔薬の麻酔効果によって、吸入用薬物が沈着することを目的とした場所より別の気道領域にそれが沈着すること及びその麻痺効果によって、安全性を測定する。
【0136】
文献に詳細に記載されているように、肺の気管支痙攣は最も観察可能な症状の一つであり、従って、肺の上部にエアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物を投与しても、吸入可能な製剤に含まれるいかなる保存剤によっても気管支痙攣を生じないこと、又は、リドカイン若しくはリドカイン類似化合物のエアロゾルの粒径によって、気管支痙攣を生じないことは重要である。肺へのリドカインの送達がコントロールできないと、頭痛、振戦及び眩暈のような中枢神経系の全身作用などの副作用が、発生することは既知であり、薬物送達安全性の基準である。さらにより重要なことに、通常の又はジェットネブライザによって送達されるリドカインの口咽頭の投与量が高いと、嚥下障害、吸引及び吐出の高発生率をもたらす。
【0137】
吸入用のリドカイン又はリドカイン類似化合物を、リドカイン又はリドカイン類似化合物の表示量のみを含むように調製し、口咽頭領域ではなく標的とされた肺領域に主に沈着する粒径で送達するので、この発明によるリドカイン又はリドカイン類似化合物の前処置による主要な吸入可能な薬物の許容性及び沈着の改善方法は、安全で効果的である。
【0138】
2.有効性
処置の有効性は、疾患軽減に必要な薬物量により、病徴が抑制される必要な投与の回数により、薬物量の送達に必要な時間及び特定の標的領域に沈着する薬物のパーセンテージにより、同様に他の部位へ沈着しないことにより測定される。とても重要なことに、気道への環境攻撃の患者の許容性及び煙草、塵及び大気汚染に対する彼(女)の許容性で、有効性を測定する。
【0139】
リドカイン又はリドカイン類似化合物を含むこの製剤の主な利点は、その安全性、主要な吸入用薬物の許容性及び沈着を改善する際のその有効性、そのより少ない麻酔効果、そのより小さい口咽頭の沈着、その気管支痙攣の欠如、そのより早い送達、その目的とされた投与、実用性及び使用の便利さと同様に、その長い品質保持期限、貯蔵及び噴霧治療装置の投与若しくは処置の容易性である。製剤若しくはネブライザの利便性、安全性及び実用性のために、前処置は、病院の環境で、診療所又は在宅で提供することができる。
【0140】
エアロゾル化したリドカイン又はリドカイン類似化合物の90%以上を送達できる電子ネブライザを用いて、本願明細書で記載されたリドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤を記載された方法で送達することによって、エアロゾル化リドカイン又はリドカイン類似化合物の安全性及び有効性の必要性を満たすことが見出された。
【0141】
3.許容性
満たされる必要があるエアロゾル化したものを被曝する間の吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤に関する気道許容性の主要パラメータは、重量オスモル濃度、pH、リドカイン又はリドカイン類似化合物の濃度、イオン濃度、粘性及び保存剤を含まない事である。これらのパラメータを、下の表2に記載する。
【0142】
【表2】

【0143】
表2に示すように、この発明のリドカイン溶液は、150−550mOsm/kgの間の重量オスモル濃度、イオン濃度31−300mMの間の透過アニオン、5.5−7.0の間のpH、及び1.5cpより低い粘度を有する。リドカイン又は濃度は、食塩水1mLあたり1、4又はまれに10%(10、40又は100mg)のいずれかである。食塩水以外で、二次的な副作用を生じる他のいかなる保存剤もない。TORが0.4g/分より大きいか等しい電子ネブライザ(PARI eFlow)の出力速度の、電子ネブライザによって送達するとき、リドカイン溶液1mLの噴霧時間は、約<l−2.5分、多くても3分である。出力速度が約0.5g/分であるとき、リドカイン製剤1mLの送達は、2分未満と短くなる。許容度パラメータは、リドカイン類似化合物で同一又は類似である。
【0144】
上記説明から、本願明細書で記載されたように、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤は、上記特徴を有する電子ネブライザと組合せると、2分未満及びほとんど2.5−3分で、患者の肺に、リドカイン又はリドカイン類似化合物の有効量(約又は90%以上)を送達することは明らかである。リドカイン又はリドカイン類似化合物への患者の被曝は、吸入可能なリドカインによる全ての以前の試みと比較して実質的に短くなり、従って、このような前処置はより許容される。
【0145】
4.リドカイン又はリドカイン類似化合物の投与量
効果的な前処置には治療計画が必要であり、その治療計画は、リドカイン又はリドカイン類似化合物を十分量提供するものであって、吸入で送達される主要な薬物と、標的領域に沈着させる前記薬物の有効量が肺に許容される。
【0146】
したがって、リドカイン又はリドカイン類似化合物の一日の総投与量は、一日の投与量約10若しくは約160mgの間に設定され、一日あたりの投与量を10、40又は100mgとして一回又は数回の服薬で投与される。リドカインの総最大1日量は、一般的に約200mgを超えてはならない。
【0147】
一般的に、製剤及び電子ネブライザは、リドカイン又はリドカイン類似化合物の効果の少なくとも約70%、好ましくは90%以上を、誘導気道又は気道の中央若しくは肺の下部に与えるように選択される。
【0148】
投与されたリドカイン又はリドカイン類似化合物の有効投与量の測定及び各々の患者で前処置に用いられる投与計画は、主要な薬物治療の吸入に対する個々の患者の反応性に依存する。
【0149】
最大の決定的要因は、薬物が沈着する領域における主要な吸入用薬物の改善された許容性及び沈着である。したがって、投与回数は、主要な薬物による処置の回数と相関する。
【0150】
5.エアロゾル製剤のpHの効果
リドカイン又はリドカイン類似化合物を含む噴霧製剤のpHは、リドカイン又はリドカイン類似化合物による前処置ステップにおいて重要な特徴である。その結果として、リドカイン又はリドカイン類似化合物を含むエアロゾルの調製に用いられる食塩水は、一定の要件を有する。このようなエアロゾルは、275−300mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を提供し、同時にpH5.5−7.0、好ましくはpH5.5−6.5の間の最適範囲を維持するようにしなければならない。
【0151】
噴霧されたリドカイン又はリドカイン類似化合物の安全及び効果的な送達に、製剤のpHの制御は必要である。吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物のエアロゾルがより酸性で又は塩基性であり、上記所定のpHの範囲外であるとき、それは、気道の中央に気管支痙攣をもたらし、疾患を悪化させるか又は吸入可能な薬物の許容性と沈着を改善するよりむしろ低減させる。pH5.5−7.0の間であるエアロゾル化可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤は、良好な許容性を示し、安全である。
【0152】
従って、主要な薬物送達の前に肺の前処置に用いられる噴霧されたリドカイン又はリドカイン類似化合物の最適pHは、pH5.5以上、7.0未満であり、好ましくは5.5−6.5の間である。
【0153】
6.吸入可能な製剤の塩分の効果
急性又は慢性の肺疾患を患う患者は、さまざまな化学薬品に対して感度が増大し、気管支痙攣の事故の発生率が高い。この方法は吸入用薬物の送達の改善のために設計されているので、エアロゾル化用の溶液の塩分は非常に重要である。
【0154】
肺疾患を患う患者の気道は、永続的な塩化物イオンの過剰又は欠乏と同様に低浸透圧、高浸透圧、酸性、塩基性の状況下で特に感受性が高い。これらの状況のいかなるアンバランス又は一定の値を超えた塩化物の存在は、気管支痙攣又は炎症性事象及び/又は吸入によって主要な薬物送達を非常に悪化させた状況を導く。
【0155】
安全であって気道に許容されるリドカイン又はリドカイン類似化合物の噴霧の好ましい溶液は、塩素濃度31mM−300mMの間の範囲であって、275−300mOsm/kgの間の総重量オスモル濃度を有する。所定の重量オスモル濃度は気管支痙攣を制御し、透過アニオンとしての塩素濃度は、発明の方法による前処置の成功をもたらす。
【0156】
通常の生理食塩水(NS、0.9%)は塩化物154mMを含み、一方、塩化物31mMは約0.2%の通常の生理食塩水に対応する。生理食塩水未満に溶解したとき、リドカイン又はリドカイン類似化合物が気道の中央に効果的に送達することができることを発見した。1/20N食塩水は、気道の中央にリドカイン又はリドカイン類似化合物の送達を可能とし、保証する。
【0157】
その結果として、この発明のリドカイン又はリドカイン類似化合物エアロゾルの製剤は、約10、40又は100mgのいずれであり、好ましくは約40mgであり、約1/20の通常の生理食塩水(NS)から約及び最大でも1の通常の生理食塩水までの、生理食塩水又は希釈食塩水1mLに溶解したリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む。
【0158】
7.重量オスモル濃度
噴霧は溶液の重量オスモル濃度に影響し、噴霧の間、重量オスモル濃度は噴霧前の値と比較して、11%から62%増える。重量オスモル濃度のピークの増加は、噴霧10−15分で一般的に認められる。
【0159】
重量オスモル濃度のこの上昇は、噴霧のメカニズムによって説明することができる。ジェットネブライザにおいて、エアロゾルは、乾燥ガスの高速流で突っ切る流体によって生じる。最初の液滴の発生の後、水は、エアロゾル液滴の表面から蒸発し、空気を湿らすことで液滴の重量オスモル濃度を増やす。そして、液滴の実質的に99%は、ネブライザに残る液体の溶質の濃度の連続的な増加及びエアロゾル液滴の重量オスモル濃度の連続的な増加を生じさせてリザーバに戻る。時間とともにこの重量オスモル濃度の増加が起こるため、噴霧時間をわずか10分、及び好ましくは3分未満に制限することは重要である。
【0160】
Pari e−Flow電子ネブライザ又は他の同様に具えた電子ネブライザのうちの1つを用いるとき、噴霧時間は1−2.5分まで短くなり、重量オスモル濃度の上記増加は回避される。
【0161】
8.イオン濃度及び浸透率
超音波噴霧した溶液の透過アニオンの欠如は、等浸透圧の条件下でさえも喘息の発現の刺激となる。
【0162】
塩化物は、理想的な透過イオンであることが見出され、その存在は噴霧溶液の高浸透圧によって生じるいくつかの副作用を軽減する。31−300mMの塩化物濃度は、最適であることが見出された。用いられるイオンが塩化物でない場合、選択される代替物は呼吸器粘膜に自由に浸透しなければならない。
【0163】
適切な透過アニオンを発生し、塩化ナトリウムの代替物として用いことができる代替の塩の例は、塩化カルシウム、塩化コリン、一塩酸塩リジン、塩化カリウム、臭化ナトリウム及びヨウ化ナトリウムである。
【0164】
しかし、これらの置換物を用いることができるが、この発明の目的のためには、塩化ナトリウムアニオンが最も好ましい。
【0165】
9.粘度
噴霧速度及び粒子径分布は溶液の粘度に直接に比例し、粘度が増加すると噴霧速度及び粒径は減少する。
【0166】
その結果として、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の粘度は、1.5cp付近に保たれなければならない。
【0167】
10. 添加剤
すでに上記で述べたように、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物溶液は、保存剤を含まず、好ましくは、他のいかなる添加剤も用いない。
【0168】
添加剤を用いるいかなる用途又は意図は、それの気道の許容度に対する効果及び溶液の毒性に関して注意深い考慮を必要とする。
【0169】
11.リドカイン製剤−パラメータ
2つの特定のリドカイン製剤のパラメータを、表3に示す。
【0170】
表3
1%及び4%の吸入用リドカイン溶液のパラメータ
1%のリドカインHCl 4%リドカインHCl
[Cl−]mM 153 153
重量オスモル濃度mOsm/kg 291 286
pH 6.4 6.2
ppm (Na) 160
表面張力 58.32
dynes/cm=mN/m
粘度cps 1.39 1.33
密度 1.00315 1.00239
表示量% 99 100
【0171】
リドカイン類似化合物を含む吸入用溶液のパラメータは、同一又は類似である。
【0172】
全ての製剤は、良好な許容性を示すように設計され、2−5μm又は3.5−10μm、好ましくは4−5μmである呼吸用サイズの範囲内のエアロゾル粒子で確実に完全に噴霧することが可能であり、気道の中央又は誘導気道に急速に及び大部分沈着させる。肺の下部又は全身循環への送達が求められない限り、いずれの場合も呼吸用サイズ0.1−2μmの範囲内で用いることができる。
【0173】
多くても、この発明による前処置を達成するリドカイン又はリドカイン類似化合物のほとんど活性体の必要なだけの量を含むように投与量は設計され、それ以上ではない。
【0174】
患者は、噴霧溶液のpH、重量オスモル濃度及びイオン含有量に感受性を有する。したがって、リドカイン又はリドカイン類似化合物の化学的性質に適合し、患者に許容できるように、これらのパラメータを調整する。
【0175】
主要な薬物送達で肺の許容性に大きな影響を及ぼす気道の中央への薬物送達及び、主要な薬物沈着の増進を最適化する特性を有するエアロゾルで、この発明の製剤を噴霧する。
【0176】
この発明による前処置用の製剤は、可能な限り最も短い時間にリドカイン又はリドカイン類似化合物の有効量を送達することができる、可能な限り最も少ないエアロゾルの容積を有しなければならない。さらに製剤は、気道の中央の機能に悪影響を与えない条件を提供しなければならない。その結果として、有効な送達を可能にする状況下で、その調製される薬物の十分な量を、製剤は含まなければならず、一方、上気道の麻痺と、喘息による影響を受けない肺の下部領域における沈着を回避する。この発明による新たな製剤は、これらの必要性の全てを満たす。
【0177】
12.好ましい吸入用製剤
リドカイン又はリドカイン類似化合物の吸入可能な製剤は、食塩水約1mLに10、40又は100mgの量のリドカイン又はリドカイン類似化合物を含み、5.0−7.0の間に調整されたpHを有し、前記製剤は約2−5又は3.5−10μmの間の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するエアロゾルを製造することができる、電子ネブライザを用いたエアロゾル化によって送達される。この発明で最も好ましい製剤は、通常の生理食塩水又は希釈食塩水約1mLに溶解した40mgの用量のリドカイン又はリドカイン類似化合物を含み、5.5−6.5の間に調整されたpHを有し、主として2−5又は3.5−10μm、好ましくは4μm−5μmの空気動力学的中央粒子径を有するエアロゾル粒子の噴霧で送達される。前記製剤は、好ましくは振動性の穴のあいた膜もまた具えた、好ましくはPARI eFlow電子ネブライザを用いて噴霧される。
【0178】
A.リドカイン又はリドカイン類似化合物のドライパウダ
吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物を送達する代替方法は、吸入可能なドライパウダの方法によるものである。ドライパウダ製剤は集団としての方式で効力を有し、リドカイン又はリドカイン類似化合物のこのようなドライパウダの型の代替送達がドライパウダ吸入器を用いて形成を可能にする。
【0179】
リドカイン又はリドカイン類似化合物は、ネブライザによって送達された吸入用溶液の代替として、ドライパウダ又は定量吸入器を用いてドライパウダ製剤として気道の中央若しくは誘導気道、又は肺の下部に投与される。
【0180】
ドライパウダ製剤は、10、40又は100mg、好ましくは40mgのリドカイン若しくはリドカイン類似化合物のいずれかを含む。この発明のドライパウダ製剤のために、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、ドライパウダに加工する。ドライパウダは、本技術分野のさまざまな公知技術によって調製することができる。パウダ加工技術の例は、メディアミリング、ジェットミリング、噴霧乾燥又は粒子析出技術を含むが、これらに限定されるものではない。
【0181】
この態様において、この発明は、ドライパウダ吸入器又は定量吸入器で使用されるためにドライパウダとして調製されたリドカイン又はリドカイン類似化合物の十分に強力な製剤を提供する。装置からパウダを噴霧するとき、生じるエアロゾルは、結果として約3.5μm−10μm、好ましくは約5μm−4μmの間のMMADを有する。
【0182】
したがって、ドライパウダ製剤は、薬物の希釈又は他の取り扱いを必要とせず、長期の品質保持期限並びに貯蔵安定性を有し、ドライパウダ吸入送達装置は、携帯可能で、ネブライザに必要なコンプレッサ又は他の付属品を必要としないので、実用性で、特に移動性の用途に便利である。
【0183】
いかなるドライパウダ又は定量吸入器と同様に、吸入可能なドライパウダの調製及び任意の並びに全てのその改善に、適切な全ての技術は、それらが上記粒径を提供及び送達することが可能な限り、この発明の範囲内であることを意図する。
【0184】
E.品質保持期限、貯蔵及び包装
製剤の品質保持期限及び安定性は、薬物送達に重要な考慮事項である。薬物が噴霧前に分解する場合、送達された薬物の量はより少なく未知である。薬物の正確な量は、決定することが不可能である。肺に送達された薬物の量が少なかったり、決定されないと、処置の有効性を損なう可能性がある。さらに、貯蔵リドカイン又はリドカイン類似化合物の分解過程により、患者によって十分に許容されない物質を生成するかもしれない。その結果として、相当に長い品質保持期限を有する安定した製剤を提供することは、重要である。
【0185】
貯蔵において、エアロゾル化したリドカイン又はリドカイン類似化合物は、好ましくは凍結乾燥の剤形に調製される。リドカイン又はリドカイン類似化合物の凍結乾燥の剤形は、吸入治療の前に再構成して、又は溶液を無菌的に再構成して吸入する製剤の両方のドライパウダ製剤として、冷凍溶液、リポソーム懸濁液として又は微細粒子として用いることができる。
【0186】
乾燥形態のリドカイン又はリドカイン類似化合物は、少なくとも2年の品質保持期限を有する。エアロゾル化用の吸入可能な溶液は、二つの分離した成分で提供され、一つは乾燥した又は凍結乾燥したリドカイン若しくはリドカイン類似化合物又はその塩を含んでおり、第二に食塩水のような適当な希釈液を含んでおり、同様に長い品質保持期限を有する。二つの成分包装は、投与の直前に再構成することを可能にする。水性溶媒中のリドカイン又はリドカイン類似化合物の長期安定性で生じる問題を、この種の包装は予防する。
【0187】
包装において、例えば、リドカイン又はリドカイン類似化合物の液体形態(1%、4%又は10%)は、1mLのブローフィルシールバイアル(室温で、貯蔵を可能にしているポリエチレン塑性物質でできている)で、都合よく供給することができる。これらのアンプルは、便利及び安全な使い捨ての容器を提供する。具体的には、市販のプラスチックHuntsman Rexene 6010及びFlexicon Flexi−2114のような低密度ポリエチレン(LDPE)プラスチックで、これ又は異なるプラスチック若しくは相違する材料と共にオーバーラップとして使用され、容器は製造される。貯蔵のために選択されるプラスチック材料は、バイアルのプラスチック壁にリドカイン又はリドカイン類似化合物が吸着することを回避する材料から選ばれ、吸着は一定の標準プラスチックでは一般的な出来事である。1mLの充填容量は、安全であって有効な量の薬物と共に、患者に便利なプラスチックバイアルの使用を提供する。ブローフィルシールバイアルは、プラスチック又はアルミニウムオーバーラップで覆われ、リドカイン又はリドカイン類似化合物は、1%、4%又は10%の溶液で、室温で少なくとも9−12ヵ月、強度の損失なしに安定である。加速された状況(40℃及び75%の相対湿度)で、両方の製剤は、少なくとも6ヵ月活性であった。プラスチックブローフィルシールバイアルを用いることは、ガラス瓶の使用及びニードル並びに注射器の取り扱いに関する問題を回避する。
【0188】
VI.吸入によるリドカイン又はリドカイン類似化合物の投与
リドカイン又はリドカイン類似化合物は、溶液又はドライパウダの製剤として、投与することができる。
【0189】
A.吸入投与の2つのモード
1つのモードにおいて、この発明による吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物の投与は、電子ネブライザを用いた噴霧によって投与されるリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液によって行う。リドカイン又はリドカイン類似化合物の適正量は、約1−3mLの溶媒中に調製され、約2−5μm又は3.5−10μm、好ましくは4−5μmの間のMMADを有する粒径のエアロゾルとして送達される。
【0190】
もう一つのモードにおいて、吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物は、約3.5−10μm、好ましくは4−5μmの間の粒径を有するドライパウダエアロゾル中で、定量投与量吸入器又はドライパウダ吸入器を用いて、リドカイン又はリドカイン類似化合物ドライパウダとして調製及び送達される。代替として、上記のように、粉末として調製及び保管され、投与の直前に食塩水に、薬物を溶解する。
【0191】
B.投与回数
投与回数は、主要な治療薬のための処置療法に依存し、指示される。一般的な回数は、主要な薬物の吸入の前処置として、吸入可能なリドカイン又はリドカイン類似化合物を1日1−4回投与するものである。
【0192】
1日量は、主要な薬物送達とともに一日一回又は数回の送達で10mgと小さくすることができる。一日の最大制限量は、一日あたり約200mgのリドカイン又はリドカイン類似化合物であり、好適な1日の最大制限量160mgで送達される。ドライパウダ吸入において、一般的に、一回の投与量は、一回の投与量あたり約5−20mgの間であり、一日の最大投与量は200mg/日に達することができる。
【0193】
好ましくは、投与回数はエアロゾル化した主要な治療薬剤の投与回数と一致し、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、主要な薬剤を投与する前に単独で投与することができるし、又は一つのエアロゾルで主要な薬剤とともに投与することもできる。
【0194】
VII.エアロゾル化したリドカイン又はリドカイン類似化合物の送達装置
この発明の第一の要件は、吸入の主要な薬物送達の前の、前処置ステップとして、気道の中央並びに誘導気道又は必要に応じて、肺の下部に、可能な限り少ない容量及び可能な限り短い時間で、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、早く及び効果的に送達することである。
【0195】
肺への薬物送達は、吸入されたエアロゾルの粒子径分布の、デリバリーシステム、すなわち選択されたネブライザ又は吸入器の、及び粒子中の薬物含量の関数である。例えば、The Mechanics of Inhaled Pharmaceutical Aerosols”by W.H.Finlay,Academic Press,(2001)に、これらの態様の効果は、適切に記録されている。
【0196】
噴霧で生成されるエアロゾルが、このような効率的な送達に必要な基準を満たすならば、上記発明のリドカイン又はリドカイン類似化合物を、表示量の薬物を高効率で送達できる溶液に調製される。2.5分未満の時間で実質的に均一の粒径の大きさで約1mLの溶媒に溶けた、リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤をエアロゾル化する電子ネブライザは、この発明の不可分の部分である。
【0197】
A.通常のネブライザ
可能な限り最も少ない容量で肺に、実質的に全ての噴霧リドカイン又はリドカイン類似化合物を送達する、前処置ステップとして効率的であり、送達の時間がより短く、エアロゾルが患者に良好な許容されるように、選択されたネブライザは、この発明によって調製される塩分濃度、浸透圧及びpHを有する製剤の効率的なエアロゾル化を可能としなければならない。
【0198】
したがって、選択されたネブライザは、エアロゾル化可能な最も少ない容量の製剤を処理することができ、作用部位にリドカイン又はリドカイン類似化合物の有効量を送達もできなければならない。さらに、エアロゾル化した製剤は、上気道の上部の機能を害することなく、特に口咽頭領域に相当量を沈着してはならない。
【0199】
均一の所定の粒径のエアロゾルで薬物の治療量を噴霧する、一定のネブライザが無力であることは、よく知られている。肺に容量及び薬物の約10%のみを送達する間に、多くの市販のネブライザは、多量の溶液をエアロゾル化することができる。これらのネブライザは、この発明によるリドカイン又はリドカイン類似化合物の送達に非効率的であり適切でない。
【0200】
薬学的なエアロゾルの送達に使用されるほとんどの一般的ネブライザは、粒径1μm−100μmの範囲でエアロゾルを生成し、このサイズ範囲は吸入可能性と薬物を運搬する能力及びバランスが最も良い。この範囲内において、より小さい粒子は肺のより深くに沈着する傾向があり、より大きい粒子は口及び喉の口腔咽頭に沈着する傾向がある。反対に、小粒子に含まれる薬物はずっと少なければならず(質量は、直径の三乗で増加する)、それは、肺に有効投与量を送達する時間が、より小さい粒子でずっと長いことを意味している。
【0201】
さらに、現在利用可能な大部分の薬剤のエアロゾルは、多分散系である。多分散エアロゾルは、多くの粒径からなり、その結果として、より多分散であるエアロゾルは標的領域に沈着する薬物のより小さい投与量で、気道のより広い領域に粒子を沈着する傾向がある。
【0202】
すでに、ジェット及び超音波ネブライザのような一定の種類のネブライザは、1μm−5μmの間のMMDSでエアロゾルをより選択的に発生及び送達できることを示した。これらのエアロゾルは、肺細菌感染症の治療に適切かもしれない。しかしながら、それらは、誘導気道及び気道の中央又は肺の下部に、薬物を主に及び有効に沈着させる粒子を発生するには、十分に有効及び選択的でない。さらに、これらのネブライザは治療効果を得るために薬物の十分量を投与するのに、5mLより大きい容量が一般的に必要である。しかし、一般的に、臨床的な条件下で、ジェットネブライザの効率でさえも約10%である。したがって、ネブライザに入れられて噴霧される薬物は多量であるにもかかわらず、肺に沈着及び吸収される量は10%の部分である。
【0203】
現在市販のネブライザ種類は相当な数ある。電子ネブライザを除いたそれらのいずれも、この発明を実施する適切でない。さらに、電子ネブライザでさえ、特定のパラメータを有するもののみが、この発明を実施するのに適切である。この発明を実施するのに最も適切な電子的なネブライザは、少なくとも約70%送達することが可能でなければならない。しかし、好ましくは90%を超えたリドカイン又はリドカイン類似化合物が、2.5分より短い期間、好ましくは約1−1.5分未満で、溶媒約1−3mL、好ましくは約1mLに溶解する。最も好ましい電子ネブライザは、振動性の穴のあいた膜を有する改良PARI eFlowネブライザである。
【0204】
B.ネブライザ−比較有効性
いくつかの市販のネブライザを、この発明を実施する適合性について試験した。これらの研究の結果は、表3及び表4にまとめる。
【0205】
表3及び表4は、様々な種類のネブライザが生体内で肺に沈着する有効性を比較した結果を示す。
【0206】
【表3】

【0207】
表3は、様々なネブライザが呼吸用に投与した薬物が沈着するのに必要とする時間を、分で示す。
【0208】
表3の結果から見られるように、eFlowネブライザのみが6分で、呼吸用薬物の投与量100%を送達することができた。全ての他のネブライザは、薬物を9.7―61%送達した。
【0209】
表4に示すように、表3に示すように呼吸用に投与した同じ投与量の送達に、6分の時間を設定した。
【0210】
【表4】

【0211】
噴霧時間が6分に設定されたとき、表4に示すように、この場合も、eFlowネブライザのみが呼吸用投与量の100%を送達した。全ての他のネブライザは、同時刻で、薬物送達パーセンテージの13−62%のみの間の非常に少ない薬物の用量しか送達できなかった。
【0212】
同じネブライザの生体内の沈着を研究評価すると、電子ネブライザが用いられるとき全投与量のおおよそ40%の肺沈着が見られた。これは、ジェットPARI LC PLUSネブライザで投与される投与量の、肺沈着のおおよそ12%と比較して、送達効率の著しい増加であった。
【0213】
さらに、電子ネブライザにみられる口咽頭沈着は、約5%のみであり、ジェットネブライザが用いられたときに見られる口咽頭沈着より実質的に低い。このような沈着は、ジェットPARI LC PLUSネブライザでおよそ16%認められた。更に、eFlowネブライザは、8−10μL/秒の出力を有し、約1−1.5分で薬物1mLの送達を可能にする。すなわち、PARI eFlow以外は、表4で比較したネブライザで最も適切な、ジェットPARI Pro Neb Ultra LC PLUSネブライザより2−5倍早い。
【0214】
他のネブライザ以上の電子ネブライザ、特にPARI eFlowネブライザの主な利点は、送達速度である。PARI eFlowネブライザは、他のネブライザより非常に早くエアロゾルを生成とすることができ、処置時間を2.5分未満、一般的に1−2分に減少する。また、他のネブライザと比較して、eFlowネブライザは処置の後に装置に残る薬物残余(残留量)が非常に少なく、さらに治療の費用を減少させる。
【0215】
全てのこれらの態様を組合わせることによって、改良PARI eFlowネブライザは、ジェット又は他の未改良電子ネブライザより、平均で2−5倍早く肺に、ある薬物の投与量を送達することができ、さらに疾患の部位で沈着させないエアロゾルにより、副作用を減少する。
【0216】
したがって、一般的に電子ネブライザ、特にPARI eFlow電子ネブライザは、実質的に単分散の粒子範囲で、3.5−10μmの間の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有し、MMADの大部分は5μm−4μm間のであるリドカイン又はリドカイン類似化合物エアロゾルの調製を可能とすることに主として基づき、最も好ましいネブライザである。
【0217】
C.好ましい電子ネブライザ
この発明を実施する好ましいネブライザは、電子ネブライザである。特に好ましいのは、電子PARI eFlowネブライザである。
【0218】
好ましい電子ネブライザは、約3.5−10μm、好ましくは4μm−5μmの間のMMADで、1.7未満の幾何学的標準偏差(GSD)の比較的単分散の粒子範囲を有するエアロゾルを生成することができるような電子ネブライザである。考えられる適切な電子ネブライザの例は、Aerogen Aeroneb Pro、Aerogen AeroNeb Go、Batelle White Phaser 並びにその派生品、Boehringer Spiromat及びPARI eFlowネブライザである。全てのこれらのネブライザは潜在的に、この発明を実施するのに用いることができる。
【0219】
最も好ましいものは、ドイツのシュタルンベルクのPARI社によって製造されるPARI eFlow(登録商標)ネブライザである。PARI eFlowネブライザは、口咽頭沈着を著しく減少させ、肺にリドカイン又はリドカイン類似化合物を早く投与すること(1−2.5分)を可能にする、新規な穴のあいた膜のエアロゾル発生器を利用する。また、PARI eFlowネブライザは電池式で、治療の場所について患者はより柔軟にすることができる。
【0220】
PARI eFlowネブライザは、一つの対象であり、現在市販されている他のネブライザと同じ方法で用いられるように、多用途のネブライザが設計された。その機能に影響を及ぼす違いは、薬物リザーバからエアロゾルを生成するジェットネブライザの圧縮空気に置換する改良によるものであると考えられる。改良PARI eFlowネブライザは、振動性で、圧電性の穴のあいた膜を代わりに用いる。この振動性の膜を用いることは、0.4g/分より長い総出力速度(TOR)及び一般的に5%未満の口咽頭沈着で、リドカイン又はリドカイン類似化合物の速度及び効率投与を増進し、非常に効率的なネブライザをもたらす。
【0221】
好ましい特性でエアロゾルを生成する電子ネブライザを用いる利点は、麻痺及び他の併発症を生じさせる口及び喉により少ない残留物が沈着することで、より多くの薬物が作用部位に、すなわち気道の中央に沈着するということである。
【0222】
振動性の穴のあいた膜を具えるPARI eFlowネブライザは、粒子径分布の調整、最適サイズで実質的に全ての粒子が生成する微調整及び、薬物の早い送達を可能にする。実質的に誘導気道及び気道の中央へ薬物が沈着する最適な粒径は、およそ4.5μである。さらに、振動性の穴のあいた膜による改良eFlow電子ネブライザは、粒径1.7未満で、一般的標準偏差(GSD)で、主として単分散のエアロゾルを生成する。このようなGSDは、他のネブライザによって生成した粒子で発生するGSDより非常に小さい。
【0223】
eFlowネブライザの基本的仕様性能は、表5に示す。
【0224】
【表5】

【0225】
eFlowを、装置内に入れられた水性の薬物の全てをエアロゾル化するように設計されている。最高150μLの析出物が、装置壁上に残る。
【0226】
これらの利点の組合せは、一般的に現在の治療の処置時間を10分の1以下とし、LSI溶液1mLにつき1分の短さである。
【0227】
もう一つの研究において、バッテル社(現在ベンタラ社)から入手したネブライザバッテルHH5(Phaser)を、試験した。結果は、表6に示す。28.3L/分(R=585Ohm−m)の速度で送達される薬物14.6%及び17.5%を含む吸入用リドカイン溶液は、バッテルHH5(Phaser)により生体外(in vitro)で噴霧された。フィルタ(吸入された用量)への沈着に加えて、複数の粒径が、多数の作動で測定された。
【0228】
【表6】

【0229】
リドカイン濃度17.5%(175mg/mL、1作動につき16ul、一定容量2.8mg)で、吸入用フィルタ上のリドカインのフィルタ沈着は、作動につき2.15−2.67mgの間であった(平均2.46±0.18mg、RSD7.16%)。粒子径分布は72%の粒子で2.1−9μmの間を示し、この発明の目的において、部分的にしか許容できない噴霧であることを示した。
【0230】
リドカイン又はリドカイン類似化合物14.6%(146.5mg/mL、1作動につき16ul、名目投与量2.34mg)で、吸入用フィルタ上のリドカイン沈着は、作動につき1.86−2.13mgの間であった(平均2.03±0.08mg、RSD3.85%)。粒子径分布は、89%の粒子で2.1−9μmの間を示した。肺の低い薬物沈着を改善することができるならば、代替ネブライザとして、バッテルHH5(Phaser)は、この発明で潜在的に用いることができることを、これらの研究は示す。
【0231】
送達時間に関して、リドカイン又はリドカイン類似化合物1mL、2mL及び3mLの投与量を送達するPARI eFlow電子ネブライザの比較研究を、表7に示す。
【0232】
【表7】

IMPは、振動性の穴のあいた膜による改良を意味する。
【0233】
表7において、PARI eFlowネブライザは、薬物送達の有効性を測定するために用いられた。研究は、名目薬物投与量92mgを1mL、名目薬物投与量184を溶媒2mL及び名目薬物投与量276mgを溶媒3mLの噴霧を、比較するために設計した。送達投与量(DD)及び呼吸用投与量(RD)の両者は、薬物のmgで表す。さらに、1分(DDR及びRDDR)につき送達される薬物(mg)及び噴霧を、測定した。噴霧時間の欄の結果は、呼吸用の投与量40.4mgが2.21分で送達され、81.2mgが4.37分で送達され及び、薬物122.6mgが6分の長い噴霧で送達されることを示す。
【0234】
表7に示す結果は、明らかにPARI eFlow電子ネブライザの使用が薬物送達速度に十分な改善をもたらし、薬物送達時間は実質的に短くすることができ、さらに送達の有効性がこのような時間短縮に影響を受けない。
【0235】
D.ドライパウダ吸入器
ドライパウダは、ドライパウダを肺に直接送達するドライパウダ吸入器又は定量吸入器のような装置を用いて投与される。
【0236】
ドライパウダ吸入器の使用において、リドカイン又はリドカイン類似化合物は、上記の通り、投与量1−100mg、好ましくは10−50mgの、ドライパウダとして調製される。パウダが吸入器から噴霧されるとき、パウダの粒径が約3.5−10μm、好ましくは実質的に4μm−約5μmの間の中央粒子径であるエアロゾルを形成する。
【0237】
E.リドカイン又はリドカイン類似化合物噴霧の有効性
上記の通り、ネブライザの選別及び選択は、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物の送達の有効性に非常に影響を及ぼす。
【0238】
リドカイン又はリドカイン類似化合物のエアロゾル製剤及び噴霧する装置の組合せは、リドカイン又はリドカイン類似化合物の投与の効率及び速度を十分に促進する。
【0239】
現在、例えば、他の製剤及びネブライザを用いた吸入用のリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の投与の平均的時間は、一投与につき10−20分である。この時点で、リドカイン溶液の包装及び貯蔵のための、安全で便利なプラスチックバイアルは利用できないので、患者は、静脈内投与リドカインのガラスバイアルを用い、製剤に保存剤がないこと確かめ、注射器を用いてバイアルからリドカインの規定された量を引き出し、ジェットネブライザにより吸入する必要がある。このような吸入は、少なくとも10−20分を一般的に必要とする。
【0240】
現在利用可能な処置に必要な時間は、薬物のかなりの消失、時間の消失をもたらし、患者に不必要な負担を負わせ、日々の治療におけるコンプライアンスの減少を助長する。
【0241】
さらにまた、過去に用いられたリドカイン投与のネブライザシステムは、新たな電子装置より効率的でない。これらのネブライザを用いて、最大で、肺への薬物の総沈着投与量は、12―15%の範囲である。投与薬物のおよそ30%は、処置後ネブライザに残り、エアロゾル化されたものの一部の、約30%は、気道の中央に達するには大きすぎるか又は小さすぎる粒子として噴霧される。口咽頭の麻痺、嘔吐反射の障害、咳、呼吸の短縮及び息切れは、末梢及び/又は肺の上部で薬物の沈着によって生じ、その他の全身性副作用は、これらの処置の結果である。
【0242】
8−10μL/秒、又は0.48−0.60mL/分の出力の、新規の電子ネブライザは、例えばPARI LCプラスジェットネブライザのような従来のネブライザより2−5倍早く薬物成分を送達することができる。さらにまた、新規のネブライザは、投与量の90%以上をエアロゾル化することできる。結果として、電子ネブライザを用いて、リドカイン又はリドカイン類似化合物の特に計画された製剤を投与すると、気道の中央への薬物送達を実質的に改善し、送達に必要な時間はより短くなり、吸入用中の溶液のリドカイン又はリドカイン類似化合物の最終濃度により、1−2分ほど処置時間は減少する。
【0243】
有用性
この発明による方法は、主要な治療効果剤の吸入送達の前に、肺への前処置に対して適切である。この方法は、肺への標的領域における主要な吸入可能な薬剤の許容性及び沈着を改善する。また、この処置は、煙草、スモッグ、粉塵及び大気汚染への患者の許容性を改善する。
【0244】
この発明のもう一つの使用法において、消防士、都心の大人、都心の児童、喫煙者、職場等で煤煙及び蒸気にさらす人、煙草、粉塵及び大気汚染にさらされる人のような、人の予防として、エアロゾル化リドカインを用いることができる。
【0245】
医学的に、この発明の利点は、安全性、有効性、許容性の実質的な改善及び、PARI eFlow並びに他の電子装置で達成される標的化した投与である。
【0246】
実施例1
吸入用のリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液
この実施例は、生体内(in vivo)での研究で用いられるリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液の調製を記載する。
【0247】
吸入用リドカイン溶液(LSI)は、1.0mLの、滅菌され、保存剤を含まない、発熱性のない、一回量アンプルとして提供される。アンプルは、pH5.0−7.0の範囲で、USP(1%又は4%のリドカイン1mL)塩酸リドカインを10又は40mgを含む。添加された塩化ナトリウムの含有量は、1%リドカインについてはUSP塩化ナトリウム6.844g/L、4%リドカインについてはUSP塩化ナトリウム0.351g/Lである。両方の溶液の重量オスモル濃度は、およそ275−300のmOsm/kgである。
【0248】
LSIは、PARI eFlowネブライザとの組合せで用いることを意図している。
【0249】
リドカイン類似化合物を含む吸入用溶液の調製は、同じ調製プロトコールに従う。
【0250】
実施例2
リドカイン又はリドカイン類似化合物を含むドライパウダの調製
この実施例は、吸入用ドライパウダを含むリドカイン又はリドカイン類似化合物の調製に用いられる方法及び製法を提供する。
【0251】
この発明のドライパウダ製剤で、精製されたリドカイン又はリドカイン類似化合物は、メディアミリング、ジェットミリング、噴霧乾燥又は粒子析出技術によって、3μm−10μmの間の平均中央粒子径を有するパウダに加工される。
【0252】
メディアミリングは、例えば、ステンレススチール又はセラミックボールを含むミルにリドカイン又はリドカイン類似化合物の材料を入れ、望ましい薬物粒径範囲に達するまで材料を回動又は回転することによって、遂行される。
【0253】
ジェットミリングは、超高圧気流を用いて、互いにコロイド粒子を衝突させ、望ましいサイズの微粉をミルから回収する。
【0254】
噴霧乾燥は、支持体上にリドカイン又はリドカイン類似化合物溶液の微粉霧を吹き付けて、粒子を乾燥させることによって、達成する。そして粒子を集める。
【0255】
粒子析出は、スプレー乾燥粒子に共溶媒を加えることによって達成する。薬物の溶解度は、固体薬剤粒子が形成される点になる。粒子は、3μmフィルタを通じた濾過又は遠心分離により集められる。析出は非常に再現性が高いという利点があり、低い温度条件の下で実行することができ、それにより分解が減少する。
【0256】
ドライパウダの調製に用いるのに利用できる他の技術も、用いることができる。
【0257】
実施例3
リドカイン又はリドカイン類似化合物パウダを用いるドライパウダ吸入器
この発明のリドカイン又はリドカイン類似化合物ドライパウダ製剤は、定量投与量吸入器又はドライパウダ吸入器の中で直接用いることができる。
【0258】
定量投与量吸入器は、次の3つの成分を含む。高圧ガス(propellant)リドカイン又はリドカイン類似化合物懸濁剤を含むキャニスタ、正確に測定した容量の高圧ガス懸濁剤を送達するように設計された計測弁、及び測定した投与量を送達するスプレオリフィスを含む経口アダプタである。安静位において、弁の計量室は、充填溝又はオリフィスにより薬剤懸濁液リザーバに接続する。弁の降下で、この充填溝は塞がれ、計量室は経口アダプタ中のスプレオリフィス及びバルブステムオリフィスにより大気圧にさらされる。この急速な圧力低下は、噴霧剤の瞬間沸騰及び計量室からの急速に膨張する混合物の放出を導く。そして、液体/蒸気混合物は、バルブステムの内部容積及び経口アダプタによって構成される膨張室に入る。スプレーノズルから、それ自身の圧力の下で、放出される前に、混合物は、更なる膨張を受ける。スプレオリフィスから出口で、高圧ガスの蒸気に組み込まれている液柱は、空気の力によって分解する。一般的に、現段階で、液滴は、直径20−30μmであって、二相の気液混合物の音速(およそ30m/秒)で作動する。液滴の雲がスプレーノズルから離れて作動し、それは周囲から空気を取り込んで減速する。噴霧剤が蒸発によって蒸発する間に、取り込まれた液滴は、最終的にはそれらの残りの直径に達する。
【0259】
この点で、粒子/液滴は、界面活性剤で覆われた粉末リドカイン又はリドカイン類似化合物コアから成る。濃度及び懸濁物質のサイズにより、粉末剤コアは、個々の薬物粒子又は凝集物のいずれかから成る。
【0260】
リドカイン又はリドカイン類似化合物ドライパウダ送達の代替ルートは、ドライパウダ吸入器による。
【0261】
しかし、ドライパウダ製剤で一般に使用される賦形剤はラクトースであり、リドカイン又はリドカイン類似化合物の遊離塩基の場合、アミノ酸リジン又はロイシンの添加はより適切なパウダの調製に導く。
【0262】
ドライパウダ吸入器及び定量投与量吸入器による、リドカイン又はリドカイン類似化合物の有効投与量のレベルは、患者が受けている治療の誘導気道及び気道の中央に、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、少なくとも約10mg、好ましくは約40mgの名目上の投与量を適用することになる。沈着する用量は、10mg及び40mgの名目上の投与量で、誘導気道及び気道の中央についてそれぞれ2及び20mgである。ドライパウダ送達装置の効率により、この発明で用いるのに適切なドライパウダ製剤は、気道の中央にリドカイン又はリドカイン類似化合物を有効に送達するのに必要な、平均中央粒子径で3μm−10μmの間の粒径の、アモルファス若しくは結晶リドカインまたリドカイン類似化合物の、約1.0−約50mg、好ましくは約10−約40mgのパウダを含む。ドライパウダ製剤は一般的には、主要な薬物送達ともに送達され、毎日1−4回行うことができる。ドライパウダ製剤は、温度に安定で、生理的に許容できるpH5.0−7.5、好ましくは5.5−7.0及び長い保存性を有する。
【0263】
実施例4
喘息患者の治療に用いられる吸入用リドカイン溶液
この実施例では、アルブテロールで治療された喘息患者の治療のための吸入用のリドカイン(10及び40mg)による臨床試験を記載する。
【0264】
臨床試験は二重盲検法で実行され、プラセボは軽度から中度の喘息患者における研究を管理した。この研究で、吸入用リドカイン溶液10mg(1mLの1%リドカイン/生理食塩水)、40mg(1mLの4%リドカイン/生理食塩水)、又はプラセボ(1mLの生理食塩水)を、改良電子ネブライザPARI eFlowで投与した。単独又はアルブテロールの投与ととものいずれかで1日2回で、リドカイン溶液は投与された。
【0265】
喘息患者(100人の女性及び54人の男性、31.3+1.8歳、FEV 78.4±1.8%で予測)を登録し、3つのグループに無作為に選び、12週間治療した。十分な個々の投与量の1mLを、2−3分の処置時間で投与した。
【0266】
リドカインの両方の投与量は、良好な許容性及び安全性が見出され、プラセボ(30/48、63%)、リドカイン10mg(39/55、71%)及びリドカイン40mg(33/51、65%)の間で、少なくとも一つの有害事象(AE)を有する患者数の違いは見出されなかった。特に、プラセボ(14/48、29%)、10mgのリドカイン又はリドカイン類似化合物(16/55、29%)及び40mgのリドカイン又はリドカイン類似化合物(18/51、35%)の間で、一つ以上の呼吸器のAEを有する患者数の違いはなかった。
【0267】
気道刺激及び急性の気管支痙攣を、エアロゾル投与の直前及び完了30分後に、肺気量測定で評価した。30分の肺気量測定試験で、一秒の強制的呼気容量(FEVl)の20%以上の減少は、気管支痙攣の証明であると考えられた。全ての患者は、前述の全て3つの投与量(LSI 1%、4%及びプラセボ)をエアロゾル化することで気管支痙攣を試験し、FEV1を薬物の薬物適用の前後で比較した。154人の治療でいずれも、気管支痙攣を発生しなかった。
【0268】
他のネブライザにより投与された吸入用リドカインの過去の研究と比較して、口咽頭の麻痺に関する訴えの総計は非常に減少した。全ての過去の研究において麻痺は、事実上全ての被験者に現れた。一方、この臨床試験における麻痺の発生率は、治療された患者の40%(22/55)及び31.45%(16/51)であり、12週間の研究コースでは少なくとも一度も、リドカイン治療された患者の1%グループの60%、4%グループの68.6%が、全く麻痺を訴えなかった。
【0269】
嘔吐反射の消失は、報告されなかった。食品又は液体を気管吸引したケースは、報告されなかった。最も重要なことに、リドカイン送達による気管支痙攣の報告がなく、臨床的に重要なリドカイン吸入によるFEV降下(気管支痙攣測定)のいかなる報告もなかった。
【0270】
喘息QOL質問票(AQLQ)(環境の範囲)で、全ての患者に、どの程度粉塵、煙草及び大気汚染の影響を許容しているかについて尋ねた。AQLQを分析すると、質問の環境の範囲で治療グループとプラセボとの間で、ベースラインから12週で、十分な改善は認められた(平均変化は、プラセボ=0.35、10mgのリドカイン=2.09及び40mgのリドカイン=2.45;10mgのリドカインv.プラセボp=0.012、40mgv.プラセボp=0.01)。
【0271】
これらの結果は、煙草、粉塵、汚染、アレルゲンなどのような環境の気道への攻撃を許容するのにおいて、治療後に気道の感受性及び喘息が改善されていることを示す。リドカインの肺沈着は、二−三倍に増加する。同じ有効量は、以前に用いられた時間の1/3で送達することができる。気管支痙攣を取り除き、リドカインの肺が下部及び全身に沈着することによる、口咽頭の麻痺、嘔吐反射の消失の発生率を大きく減少させることで、安全性プロフィールは大きく改善された。
【0272】
これらの結果により、この発明により投与された吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物が、誘導気道への送達について安全で、許容されることが確認された。従来技術の説明のいずれも、気道の上部及び気道の中央に、リドカイン又はリドカイン類似化合物の、便利で、許容可能で且つ安全な投与を提供していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0273】
【図1】図1は、八個の異なるネブライザで薬物送達された総投与量及び、アルブテロールの呼吸用投与量を時間で測定した比較研究の結果を示す図である。
【図2】図2は、プラセボ、1%のリドカイン及び4%のリドカイン吸入用溶液の投与による、朝の最大呼気流量の平均変化ベースラインを示すグラフである。
【図3】図3は、プラセボ、1%のリドカイン及び4%のリドカイン吸入用溶液の投与による夕方の最大呼気流量の平均変化ベースラインを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル化した薬物送達の許容性の改善方法であって、
a)約10mg、40mg又は100mgのリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を含む吸入用の製剤を調製するステップと、
b)実質的に3.5と10μmの間の粒径のエアロゾルを生成することが可能な電子ネブライザ又は定量吸入器を選ぶステップと、
c)幾何学的標準偏差1.7未満であり、空気動力学的中央粒子径が実質的に約4μmと約5μmの間の粒子を有するエアロゾルで前記リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤を噴霧するステップと、
d)エアロゾル化した主要な治療効果剤を投与する直前又は30分以内に患者に前記エアロゾル化した製剤を投与するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物を吸入用溶液として製剤し、約1から約3mLの生理食塩水又は希釈食塩水に溶解する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記生理食塩水が通常の生理食塩水の強度である方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記生理食塩水を通常の生理食塩水の強度の1/10から9/10に希釈する方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物をエアロゾル単独で又は主要な治療効果剤と組合わせて投与する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物は、pH5.5と7.0の間に調整され、約275−300mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を有する生理食塩水約1から3mLにつき、10mg又は40mgのリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液として調製する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物を、電子ネブライザを用いて噴霧によって投与する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記ネブライザがPARI(登録商標)eFlow電子ネブライザである方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記PARI(登録商標)eFlow電子ネブライザが、振動性の穴の空いた膜を含むように改良されている方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物製剤を、殺菌し、貯蔵のための無菌条件下でポリエチレンで密封された1mLのバイアルの中に包装するか又は、第一成分中にリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を単独又は前記主要な治療効果化合物と組合せて、且つ、第二成分中に溶媒を含む2つの成分で包装する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物をドライパウダとして製剤する方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物ドライパウダを、ドライパウダ吸入器又は定量投与量吸入器によって送達する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、前記主要な薬物の投与前に一日に一回から四回投与し、その送達が前記主要な治療効果剤の送達計画と一致する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記主要な治療効果剤が、α−プロテイナーゼ阻害剤、アミカシン、カルベニシリン、セフタジジム、コリスチン、ゲンタマイシン、イミペネム、チカルシリン、ペニシリン、トブラマイシン、バンコマイシン、アズトレオナム、ホスホマイシン、リファンピシン、シプロフロキサシン、キノロン、グルタチオン、ペンタミジン、ニフェジピン、ベラパミル、アミロライド、ベンザミル、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、ヘパリン、サイクロスポリン、プレドニゾン、メトトレキセート、アザソプリン、マイコフェノリン、シロリムス、タクロリムス、モフェチル、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ―インターフェロン、インターロイキン2、アドレナリン、レチノイン酸、アンホテリシンB、ベクロメタソン、セフォペラゾン、シプロフラキシン、フェンタニル、フサフンジン、DNA、硫酸マグネシウム、デキストラン、ドルナーゼα、高張生理食塩水、マンニトール、N−アセチルシステイン、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、モルヒネ、プロスタグランジン、インドメタシン、ブデソニド、デキサメタゾン、アミノフィリン、リバビリン及びヒトの成長因子からなるグループから選択された方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物及び前記主要治療効果剤を組合わせて、リドカイン又はリドカイン類似化合物及び前記主要な治療効果剤の前記組合せを約1から約3mLの通常の生理食塩水又は希釈食塩水中に溶解して、吸入用溶液として製剤する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記食塩水が通常の生理食塩水の強度である方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記食塩水を通常の生理食塩水の強度の1/10−9/10に希釈する方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記主要な薬剤とリドカイン又はリドカイン類似化合物との前記組合せを、一日につき一回から数回で投与する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記主要な薬剤とリドカイン又はリドカイン類似化合物との前記組合せを、5.5−7.0の間のpHに調整し、約275−300mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を有する食塩水1mLにつき、10mg又は40mgのリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液として、製剤する方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、吸入用溶液として製剤された前記主要な薬剤とリドカイン又はリドカイン類似化合物との前記組合せを、電子ネブライザを用いて投与する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記ネブライザがPARI(登録商標)eFlow電子ネブライザである方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記PARI eFlow電子ネブライザが振動性の穴の空いた膜を含むように改良された方法。
【請求項23】
α−プロテイナーゼ阻害剤、アミカシン、カルベニシリン、セフタジジム、コリスチン、ゲンタマイシン、イミペネム、チカルシリン、ペニシリン、トブラマイシン、バンコマイシン、アズトレオナム、ホスホマイシン、リファンピシン、シプロフロキサシン、キノロン、グルタチオン、ペンタミジン、ニフェジピン、ベラパミル、アミロライド、ベンザミル、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、ヘパリン、サイクロスポリン、プレドニゾン、メトトレキセート、アザソプリン、マイコフェノリン、シロリムス、タクロリムス、モフェチル、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロン、インターロイキン2、アドレナリン、レチノイン酸、アンホテリシンB、ベクロメタソン、セフォペラゾン、シプロフラキシン、フェンタニル、フサフンジン、DNA、硫酸マグネシウム、デキストラン、ドルナーゼα、高張生理食塩水、マンニトール、N−アセチルシステイン、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、モルヒネ、プロスタグランジン、インドメタシン、ブデソニド、デキサメタゾン、アミノフィリン、リバビリン及びヒトの成長因子からなるグループから選ばれた、エアロゾル化した主要な治療効果剤と組合せたリドカイン又はリドカイン類似化合物を約10又は約40mg含む吸入用組成物であって、吸入用ドライパウダ又はエアロゾル化した溶液として調製された前記組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物であって、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物を、約1mLから約3mLの生理食塩水中に溶解し、約4μm−約5μmの中央粒子径を有するエアロゾルに噴霧して患者に一日一回から四回投与される組成物。
【請求項25】
請求項23に記載の組成物であって、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物を、ドライパウダとして製剤した組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の組成物であって、前記ドライパウダは、粉砕、噴霧乾燥又は粒子析出によって、約1μmから約5μmの空気動力学的中央粒子径の粒径を有するパウダへ調製される前記組成物。
【請求項27】
請求項25に記載の組成物であって、前記パウダが賦形剤粒子をさらに含む組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の組成物であって、前記賦形剤粒子がラクトース、リジン又はロイシンである組成物。
【請求項29】
請求項24に記載の組成物であって、前記患者が肺移植患者である組成物。
【請求項30】
請求項24に記載の組成物であって、前記患者が臓器移植患者である組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の組成物であって、前記臓器移植が心臓移植、腎臓移植、肝臓移植又は脾臓移植である組成物。
【請求項32】
免疫抑制薬の沈着の改善及び咳の低減のために臓器移植患者の治療のために用いる、エアロゾル化した免疫抑制薬の許容性の改善方法であって、
a)リドカイン又はリドカイン類似化合物の約10mg、40mg又は100mgを含む吸入用の製剤を調製するステップと、
b)粒径が実質的に3.5と10μmの間のエアロゾルを生成することが可能な電子ネブライザ又は定量吸入器を選ぶステップと、
c)幾何学的標準偏差1.7未満で、空気動力学的中央粒子径が実質的に約4μmと約5μmの間の粒子を有するエアロゾルで、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤を噴霧するステップと、
d)エアロゾル化した主要な免疫抑制薬を投与する、直前又は30分前以内に患者に前記エアロゾル化した製剤を投与するステップと
を含む方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物を吸入用溶液として製剤し、約1から約3mLの通常の生理食塩水又は希釈食塩水に溶解する方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記食塩水が通常の強度である方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記食塩水を通常の生理食塩水の強度の1/10−9/10に希釈する方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物をエアロゾル単独又は主要な治療効果剤と組合わせて投与する方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物を、5.5から7.0のpHに調整され、約275から300mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を有する生理食塩水の約1から3mLにつき10mg又は40mgのリドカイン若しくはリドカイン類似化合物を含む吸入用溶液として製剤する方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、吸入用リドカイン又はリドカイン類似化合物を、電子ネブライザを用いて噴霧によって投与する方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記ネブライザがPARI(登録商標)eFlow電子ネブライザである方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記PARI(登録商標)eFlow電子ネブライザが、振動性の穴の空いた膜を含むように改良されている方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、吸入用の前記溶液を前記免疫抑制薬の投与前、30分以内に投与する方法。
【請求項42】
請求項40に記載の方法であって、吸入用の前記溶液を前記免疫抑制薬の投与と同時に投与する方法。
【請求項43】
請求項32に記載の方法であって、リドカイン又はリドカイン類似化合物をドライパウダとして製剤する方法。
【請求項44】
煙草、スモッグ、大気汚染、粉塵又はアレルゲンの許容性の改善方法であって、
a)約10mg、40mg若しくは100mgのリドカイン又はリドカイン類似化合物を含む吸入可能な製剤を調製するステップと、
b)実質的に3.5と10μmの間の粒径のエアロゾルを生成することが可能な電子ネブライザ又は定量吸入器を選ぶステップと、
c)幾何学的標準偏差1.7未満で、空気動力学的中央粒子径が実質的に約4μmと約5μmの間の粒子を有するエアロゾルで、前記リドカイン又はリドカイン類似化合物の製剤を噴霧するステップと、
d)煙草、スモッグ、大気汚染、粉塵又はアレルゲンに被曝した又は被曝後のヒト被験者に、前記被曝の直前又は直後に前記エアロゾル化した製剤を投与するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−513445(P2008−513445A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532308(P2007−532308)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003532
【国際公開番号】WO2006/060027
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(505011095)コラス ファーマ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】