説明

吸収性物品の表面シート

【課題】液の引き込み性が高く、表層部位に液残りが起こりづらく、また液戻りが起こりにくい吸収性物品の表面シートを提供すること。
【解決手段】表面シート10は、肌当接面側に第1層11、及びこれに隣接する第2層12を非肌当接面側に有する。第1層11は、芯鞘型の熱融着性複合繊維を含み、該熱融着性複合繊維は、熱伸長性繊維が熱処理によって伸長したものからなる。第2層12は、捲縮性繊維を含む繊維層からなる。第1層11と第2層12とが多数の接合部13によって接合されている。接合部13に囲まれて第1層11の肌当接面側に隆起する凸部14が、第1層11側の肌当接面側に多数形成されている。接合部13に連なる第1層11の繊維は、凸部14の頂部に向けて並列状態で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつを始めとする各種の吸収性物品に用いられる表面シートに関する。
【背景技術】
【0002】
捲縮した潜在捲縮性繊維を含む多層構造を有する吸収性物品の表面シートに関する従来の技術としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。同文献に記載の表面シートは、第1層とこれに隣接する第2層とを有し、第1層と第2層とが所定パターンの接合部によって部分的に接合されており、該接合部間で第1層が三次元的立体形状をなすものである。この表面シートは、第2層が、捲縮した潜在捲縮性繊維を含んでいる。この表面シートは、複数の接合部によって取り囲まれて形成された閉じた領域を多数有している。この閉じた領域において第1層は凸状の三次元的な立体形状をなしている。この立体形状をなしている部分は、ドーム状の形状をなしている。この表面シートは、平面方向へ伸長させた場合の回復性及び厚み方向へ圧縮させたときの圧縮変形性が十分に高いものであるという利点を有する。また、ドーム状をなす第1層が疎な構造となっているので、この表面シートは、粘度の高い液の透過や保持が可能なものとなっている。
【0003】
前記の技術とは別に、本出願人は先に、加熱によってその長さが伸びる繊維である熱伸長性繊維を原料とする不織布を提案した(特許文献2参照)。この不織布は、構成繊維が圧着又は接着されている多数の圧接着部を有するとともに、圧接着部以外の部分において構成繊維どうしの交点が圧接着以外の手段によって接合しており、圧接着部が凹部となっているとともに該凹部間が凸部となっている凹凸形状を少なくとも一方の面に有するものである。この不織布は、吸収性物品の表面シートとして好適に用いられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−187228号公報
【特許文献2】特開2005−350836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した各表面シートを用いることで、表面のさらっと感の向上や、液の逆戻りの防止等の吸収性物品の性能を高めることができる。しかし、これらの性能を一層高めることが望まれている。
【0006】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術の表面シートよりも各種の性能が更に向上した吸収性物品の表面シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肌当接面側に第1層、及びこれに隣接する第2層を非肌当接面側に有し、
前記第1層は、芯鞘型の熱融着性複合繊維を含み、該熱融着性複合繊維は、熱伸長性繊維が熱処理によって伸長したものからなり、
前記第2層は、捲縮性繊維を含む繊維層からなり、
前記第1層と前記第2層とが多数の接合部によって接合されており、該接合部に囲まれて第1層の肌当接面側に隆起する凸部が、前記第1層側の肌当接面側に多数形成されており、
前記接合部に連なる第1層の繊維は、凸部の頂部に向けて並列状態で構成されてなる吸収性物品の表面シートを提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記の表面シートの好適な製造方法として、
熱伸長性の芯鞘型複合繊維を用いカード法でウエブを形成し、該ウエブをエアスルー方式の熱風処理に付して該繊維の交点を熱融着させるとともに、該繊維を熱伸長させないか、又は再度の熱伸長の余地を残した状態で該繊維を伸長させてなる上層不織布を形成し、
この不織布の形成とは別に、潜在捲縮性繊維を用いカード法で下層ウエブを形成し、前記上層不織布と前記下層ウエブとを重ね合わせて、両者を複数の接合部によって接合して積層ウエブを得、該積層ウエブをエアスルー方式の熱風処理に付して、前記潜在捲縮性繊維を捲縮させるとともに、前記上伸長性の芯鞘型複合繊維を熱伸長させる吸収性物品の表面シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液の引き込み性が高く、表層部位に液残りが起こりづらく、また液戻りが起こりにくい吸収性物品の表面シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の表面シートの一実施形態における縦断面の構造を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す実施形態の表面シートを、その第1層側からみた斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す表面シートの製造に好適に用いられる装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の表面シートの一実施形態における縦断面の構造が模式的に示されている。本実施形態の表面シート10は、使用者の肌当接面側に位置する第1層11と、非肌当接面側に位置する第2層12とを有する2層構成のものである。つまり、表面シート10が吸収性物品に組み込まれた状態では、第1層11が上側に位置し、かつ第2層が下側に位置する。したがって以下の説明では、第1層のことを「上層」と呼び、第2層のことを「下層」と呼ぶこととする。表面シート10は、上層11と下層12とが積層された2層構造を有しており、表面シート10は、上層11側を着用者の肌側に向け、下層12側を吸収体側に向けて吸収性物品に組み込まれて使用される。
【0012】
上層11及び下層12はいずれも繊維材料から構成されている繊維層であり、表面シート10はその全体が不織布から構成されている。後述する表面シート10の好適な製造方法から明らかなように、上層11と下層12とは、所定パターンで配置された複数の接合部13によって部分的に接合され、その後に熱処理によって下層12に含まれる潜在捲縮性繊維を収縮させることで、表面シート10が得られる。
【0013】
表面シート10は、図1に示すように、上層11と下層12との界面に、上層11と下層12とが互いに接合している多数の接合部13を有している。接合部13は、図2に示すように、表面シート10の平面方向の全域にわたって散点状に規則的に配置されている。各接合部13の形状としては例えば円形が挙げられるが、これに限られず、その他の形状、例えば三角形、矩形若しくは六角形等の多角形、楕円形、星形、十字形又はハート形等でもよく、あるいはそれらの2種以上の任意の組み合わせでもよい。
【0014】
接合部13は、上層11の原反であるウエブ又は不織布と、下層12の原反であるウエブ又は不織布とを積層し、その積層体に、ヒートエンボス加工又は超音波エンボス加工などのエンボス加工を施して形成されている。接合部13は、エンボス加工に代えて、上下層11,12間を、接着剤を介して接合することで形成することもできる。特に、接合部13が熱を伴うエンボス加工(すなわちヒートエンボス加工や超音波エンボス)によって形成されている場合には、接合部13がフィルム化し、吸収した経血を隠蔽し、使用者の不快感を軽減するという有利な効果が奏される。
【0015】
表面シート10は、その上層11の肌当接面側が、多数の凸部14及び多数の凹部15からなる凹凸形状をなしている。凹部15はその最底部が、主として接合部13の形成位置と一致している。凸部14は、主として上層11を構成する繊維によって形成されている。凸部14は、複数の接合部13によって取り囲まれている。凸部14の突出を一層顕著なものとする観点からは、凸部14は3つ以上の接合部13によって取り囲まれていることが好ましく、4個以上の接合部13によって取り囲まれていることが更に好ましい。この場合、凸部14は、複数の接合部13によって囲まれた領域の略中央部に頂部を有していることが好ましい。
【0016】
表面シート10の上層11側の面10aが凹凸形状をなしていることで、該表面シート10を吸収性物品に組み込んで使用したときに、表面シート10と着用者の肌との接触面積が低減して蒸れやかぶれが効果的に防止される。表面シート10の下層12における吸収体対向面10bも、凹凸形状をなしている。尤も、面10bにおける凹凸の程度は、面10aよりも小さくなっている。面10bにおける凸部の頂部の位置は、面10aにおける凸部14の頂部の位置とほぼ一致している。また、面10bにおける凹部の位置も、面10aにおける凹部15の位置とほぼ一致している。面10aに加えて、面10bも凹凸形状をしていることで、凸部14が圧縮されたときの圧縮仕事量が大きくなり、そのことに起因して表面シート10のクッション感が高くなる。したがって、着用感に優れた表面シートを提供できるという有利な効果が奏される。
【0017】
表面シート10における上層11には熱融着性繊維が含まれている。この繊維は、高融点樹脂からなる第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点より低い融点又は軟化点を有する低融点樹脂からなる第2樹脂成分からなる2成分系複合繊維である。この複合繊維としては、芯鞘型(同心芯鞘型及び偏心芯鞘型の双方を含む)のものを用いることができる。複合繊維の熱融着性は、主として第2樹脂成分によって発現する。したがって芯鞘型の複合繊維における第2樹脂成分は、鞘を構成する成分となる。
【0018】
後述する表面シート10の好ましい製造方法に従う場合、上層11に含まれる熱融着性繊維は、熱伸長性の芯鞘型複合繊維が熱処理によって伸長したもの(つまり、伸長した後の熱伸長性繊維)からなることが好ましい。
【0019】
上層11は、上述した熱融着性繊維のみから構成されていてもよく、あるいは、これに加えて熱融着性を有さない繊維を含んでいてもよい。また上層11は、下層12に含まれる捲縮した潜在捲縮性繊維を始めとする熱収縮性繊維(つまり収縮後の熱収縮性繊維)を非含有であることが好ましい。上述した熱融着性繊維は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本実施形態の表面シート10は、その凸部14の形状に特徴の一つを有するものである。すなわち、図1に示すように、上層11に含まれる繊維(この繊維は主として凸部14の構成繊維である。)は、凸部14の頂部に向けて並列状態になっている。具体的には、上層11に含まれる熱融着性繊維は、凸部14の凸形状に沿って上に凸の滑らかな曲線を描きながら概ね並列している。「概ね並列している」とは、厳密に並列している場合だけでなく、繊維どうしが多少交差しているが、巨視的にみて並列とみなせる状態も許容する趣旨である。これに加えて、上層11に含まれる熱融着性繊維は、それらどうしが接する部分、すなわち交点において融着されていることが好ましい。
【0021】
図1に示すように、上層11に含まれる各熱融着性繊維は、凸部14の頂部から接合部13に向けて概ね並列している。したがって、凸部14を平面視した場合、熱融着性繊維は、該凸部14の頂部から、該凸部14を取り囲む複数の接合部13へ向けて略放射状に延びている。尤も、熱融着性繊維が並列状態で延びる方向は、表面シート10の製造方法にも依存し、例えば後述する製造方法に従えば、上層11に含まれる熱融着性繊維は主として、表面シート10の製造時における流れ方向に沿って並列した状態になる。この場合、流れ方向と直交する方向における熱融着性繊維の並列状態は、流れ方向よりは顕著ではない。このように、流れ方向とそれに直交する方向とで、熱融着性繊維の並列状態に違いがあることで、表面シート10の凸部14に別の特徴を付与することができる。具体的には、流れ方向においては、熱融着性繊維が並列状態になっていることで、液の素早い透過や液の引き込み性が向上し、流れ方向と直交する方向においては、熱融着性繊維が比較的ランダムに配向しているので、凸部14の風合いが高まる。
【0022】
並列状態にある熱融着性繊維の繊維間距離は凸部14の頂部付近において最も広く、その部位から接合部13に向けて漸次狭くなっている。その結果、凸部14においては、その頂部に位置する繊維の繊維密度が、接合部13の周縁部に位置する繊維の繊維密度よりも低くなっている。これによって凸部14は、その頂部から裾野へ向けて繊維密度が徐々に高くなっている。つまり、繊維密度に勾配を有している。このような繊維密度の勾配に起因して、凸部14は、その頂部から裾野へ向けて毛細管力が徐々に高くなっている。つまり、毛細管力に勾配を有している。その結果、本実施形態の表面シートは、上層11から下層12へ向けて、排泄された液の引き込み性が従来の表面シートよりも高くなっている。
【0023】
上述のとおり、凸部14は、それに含まれる熱融着性繊維が、略アーチ状の上に凸の滑らかな曲線を描くような形態になっている。それによって、凸部14となっている上層11の内部においては、凸部14の頂部の略直下部分に繊維が存在しない中空部16がある。それによって、凸部14となっている上層11の内部は中空構造になっている。この中空構造と、先に述べた毛細管力の勾配との相乗作用によって、排泄された液は上層11に留まりにくくなり、下層12へと素早く導かれる。その結果、上層11の表面は、液の排泄後であっても、さらっとしたドライ感を呈するものとなる。また、吸収体に吸収された液が表面シート10表面にまで逆戻りすることが、前記の中空部16によって阻止され、それによっても上層11の表面は、さらっとしたドライ感を呈するものとなる。更に、液吸収後の表面シート10が白く見え、液残りが起きている印象を与えづらい。
【0024】
そのうえ凸部14においては、これを構成する熱可塑性繊維が概ね並列しているので、該凸部14の頂部から各接合部13へ向けての液の移動が円滑に行われ、それによっても液の素早い引き込みと、液残りの防止とが達成される。
【0025】
以上のような利点を有する本実施形態の表面シート10に対して、従来の表面シート、例えば特許文献1に記載の表面シートでは、凸部を構成する繊維の向く方向がランダムであるため、凸部内に液溜まりが発生しやすく、それによって上層から下層へ向けての液の流通経路が閉塞されることがあり、表面シートの表層部に液が残る場合がある。
【0026】
上述のとおりの構造を有する上層11によって奏される液の素早い引き込み効果や液残りの防止効果、液の逆戻り防止効果等を一層顕著なものとする観点から、下層12は、上層11よりも繊維密度が高い(つまり見かけ密度が低い)構造を有していることが有利である。そこで本実施形態の表面シート10においては、下層12に、捲縮した潜在捲縮性繊維を含有させることで繊維密度を高めている。捲縮した潜在捲縮性繊維は、螺旋状の三次元捲縮を有するものであり、その構造に起因して繊維が密に絡み合い、繊維間距離が短くなっている。この繊維間距離は、上層11の繊維間距離よりも小さくなっている。
【0027】
また下層12は、上層11を通過してきた液を、該下層12の下側に位置する吸収体へ素早く通過させるために、上層11と異なり、中空部を有していないことが好ましい。同様の観点から、下層12はその厚みが上層11よりも小さいことが好ましい。具体的には、下層12の厚みは、200〜2000μm、特に 500〜1500μmであることが好ましい。一方、上層11の厚みは、下層12の厚みよりも大きいことを条件として、500〜4000μm、特に800〜3000μmであることが好ましい。上層11及び下層12の厚みは次の方法で測定される。すなわち、フェザー安全剃刀社製片刃剃刀を用い、凸部14の最頂部と少なくとも一つの接合部13とを含む面で凸部14を縦断面が表れるよう切断し、凸部の縦断面を得る。この縦断面を、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX−1000を用いて撮影する。得られた画像中の第1層11と第2層12において厚みが最も厚い部分を選び、各層の厚みに応じた線分を引く。その線分の長さを、デジタルマイクロスコープVHX内蔵の画像解析ソフトウェアを用いて測定することで、上層11及び下層12の厚みが求められる。
【0028】
上層11及び下層12の坪量は、それらの層の厚みとの関係で、各層の繊維密度が、上層11<下層12となるような値とすることが好ましい。具体的には、上層11の坪量は10〜50g/m2、特に20〜40g/m2とすることが好ましく、下層12の坪量は、20〜60g/m2、特に30〜50g/m2とすることが好ましい。
【0029】
上述のとおり、下層12は捲縮した潜在捲縮性繊維を含むものであるところ、該下層12は、捲縮した潜在捲縮性繊維のみから構成されていてもよく、又は該繊維に加えて他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては、機械捲縮された二次元状の捲縮繊維や、捲縮処理されていない繊維などを用いることができる。また、下層12は、上層11に含まれているような熱伸長した熱伸長性繊維を非含有であることが好ましい。
【0030】
上層11及び下層12に含まれる繊維の太さは、上層11から下層12へ向けての液の引き込み性を顕著にする観点からは、下層12に含まれる繊維の太さは、上層11に含まれる繊維の太さと同じであるか、それよりも細いことが好ましい。上層11に含まれる繊維の太さは、1.0〜8.0dtex、特に2.0〜5.0dtexであることが好ましい。下層11に含まれる繊維の太さは、上層11に含まれる繊維の太さと同じであるか、又はそれよりも細いことを条件として、1.0〜6.0dtex、特に1.5〜4.0dtexであることが好ましい。
【0031】
表面シート10における接合部13は、上層11及び下層12の構成繊維が圧密化されて形成されている。接合部13においては、上層11及び下層12の構成繊維は、繊維の形態を維持していてもよく、あるいはフィルム化していてもよい。接合部13の大きさは、上層11及び下層12が着用中に剥がれることを防止する目的で十分な接着強度を保つこと、かつ体液を素早く透過させ肌を素早くドライにすることの観点から、1.0〜5.0mm2、特に2.0〜4.0mm2であることが好ましい。また、平面視した表面シート10の見かけの面積に対する接合部13の面積の総和の割合は、5〜25%、特に10〜20%であることが、体液吸収後のナプキン表面を白く保ち、ナプキン交換時に着用者に不快感を与えない観点、及び液が透過可能な領域を十分に保ち、液を素早く透過させて肌を素早くドライな状態にする観点から好ましい。
【0032】
次に、本実施形態の表面シート10の好適な製造方法について図4を参照しながら説明する。図4に示す装置100は、ウエブ製造部110、第1熱風吹き付け部120、エンボス加工部130、第2熱風吹き付け部140を備えている。ウエブ製造部110においては、熱伸長性繊維を含む上層ウエブ11a及び潜在捲縮性繊維を含む下層ウエブ12aが製造される。
【0033】
ウエブ製造部110としては例えば、図示するような2台のカード機110a,110bを用いることができる。表面シート10の具体的な用途に応じ、カード機に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。上層ウエブ11aの製造に関しては、カード機を用いることが、熱伸長性繊維が流れ方向に配向しやすくなり、得られる表面シート10における上層11を構成する熱融着性繊維が流れ方向に並列しやすくなるので好ましい。カード機110aには、熱伸長性繊維を含む原料繊維が供給される。カード機110bには、潜在捲縮性繊維が供給される。
【0034】
上層ウエブ11aの原料である熱伸長性繊維として好ましく用いられるものは、高融点樹脂からなる第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点より低い融点又は軟化点を有する低融点樹脂からなる第2樹脂成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している2成分系の熱融着性芯鞘型複合繊維である。この熱伸長性繊維における第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。この熱伸長性繊維は、第1樹脂成分の融点よりも低い温度において熱によって伸長可能になっている。そして熱伸長性繊維は、第2樹脂成分の融点又は軟化点より10℃高い温度での熱伸長率が0.5〜20%、特に3〜20%、とりわけ7.5〜20%であることが好ましい。
【0035】
熱伸長率は次の方法で測定される。熱機械分析装置TMA−50(島津製作所製)を用い、平行に並べた繊維をチャック間距離10mmで装着し、0.025mN/texの一定荷重を負荷した状態で10℃/minの昇温速度で昇温させる。その際の繊維の伸長率変化を測定し、第2樹脂成分の融点又は軟化点での伸長率、及び第2樹脂成分の融点又は軟化点より10℃高い温度での伸長率をそれぞれ読み取って各温度の熱伸長率とする。熱伸長率を前記の温度で測定する理由は、繊維の交点を熱融着させる場合には、第2樹脂成分の融点又は軟化点以上で、かつそれらより10℃程度高い温度までの範囲で製造するのが通常だからである。
【0036】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよい。特に、両樹脂成分の融点差、又は第1樹脂成分の融点と第2樹脂成分の軟化点との差が20℃以上、特に25℃以上であることが、繊維の熱融着を容易に行い得る点から好ましい。熱伸長性繊維が芯鞘型である場合には、鞘成分の融点又は軟化点よりも芯成分の融点の方が高い樹脂を用いる。特にポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)を芯とし、これらよりも融点の低い樹脂を鞘とする芯鞘型の熱伸長性繊維を用いることが好ましい。第1樹脂成分と第2樹脂成分との好ましい組み合わせとしては、第1樹脂成分をPPとした場合の第2樹脂成分としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン(PE)、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、第1樹脂成分としてPET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、第2樹脂成分として、前述した第2樹脂成分の例に加え、PP、共重合ポリエステルなどが挙げられる。更に、第1樹脂成分としては、ポリアミド系重合体や前述した第1樹脂成分の2種以上の共重合体も挙げられ、また第2樹脂成分としては前述した第2樹脂成分の2種以上の共重合体なども挙げられる。これらは適宜組み合わされる。
【0037】
熱伸長性繊維としては、例えば特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報、特開2008−101285号公報等に記載の繊維を用いることができる。
【0038】
下層ウエブ12aの原料である潜在捲縮性繊維としては、加熱される前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、かつ所定温度での加熱によって螺旋状の三次元捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維が用いられる。潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる
【0039】
各カード機110a,110bによって形成された上層ウエブ11a及び下層12aのうち、上層ウエブ11aは、次いで第1熱風吹き付け部120に搬送される。第1熱風吹き付け部120はフード121を備えている。上層ウエブ11aはこのフード121内を通過する。また第1熱風吹き付け部120は、通気性ネットからなるコンベアベルト122を備えている。コンベアベルト122はフード121内を周回している。上層ウエブ11aはコンベアベルト122上に載置されて第1熱風吹き付け部120内を搬送される。コンベアベルト122は、金属やポリエチレンテレフタレート等の樹脂から形成されている。
【0040】
第1熱風吹き付け部120においては上層ウエブ11aに対して熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。すなわち第1熱風吹き付け部120は、所定温度に加熱された熱風が、上層ウエブ11aを貫通するように構成されている。エアスルー加工は、上層ウエブ11a中の熱伸長性繊維が熱伸長を起こさないか、又は再度の熱伸長の余地を残した状態で該繊維が伸長する温度で行われる。これに加えて、熱伸長性繊維どうしが熱融着する温度でエアスルー加工が行われる。
【0041】
第1熱風吹き付け部120における熱風を用いたエアスルー加工によって、上層ウエブ11aから、エアスルー不織布(この不織布を「上層不織布11b」という。)が得られる。上層不織布11bにおいては、それに含まれる熱伸長性繊維がそれらの交点において熱融着している。また、熱伸長性繊維は、再度の熱の付与によって熱伸長が発現可能な状態になっている。このような状態の上層不織布11bの繊維の配向について本発明者らが検討したところ、意外にもエアスルー加工後の熱伸長性繊維は、不織布製造時の流れ方向に沿って配向していることが判明した。
【0042】
上層不織布11b及び下層ウエブ12aは積層されて、積層ウエブ10aとなる。積層ウエブ10aにおいては、上層不織布11bが上側に位置し、下層ウエブ12aが下側に位置する。積層ウエブ10aの上側に位置する上層不織布11bは、製造された表面シート10における上層11を主として構成する。積層ウエブ10aの下側に位置する下層ウエブ12aは、表面シート10における下層12を主として構成する。
【0043】
積層ウエブ10aにおいては、その下側を構成する下層ウエブ12aの構成繊維どうしが緩く絡合した状態にあるので、積層ウエブ10a全体として保形性を獲得するには至っていない。そこで積層ウエブ10aに、シートとしての保形性を付与するために、該積層ウエブ10aをエンボス加工部130において処理し、エンボスウエブ10bを形成する。
【0044】
エンボス加工部130は、積層ウエブ10aを挟んで対向配置された一対のロール131,132を備えている。両ロールは、所定のクリアランスを隔てて離間している。ロール131はその周面に多数の凹凸が形成された金属製のパターンロールからなる。エンボス加工部130において積層ウエブ10aをエンボス加工することで、目的とする表面シート10に接合部13が形成される。したがって、パターンロールにおける凹凸のパターンは、表面シート10の具体的な用途に応じ適切に選択することができる。例えば図1に示す配置パターンの接合部13が形成された表面シート10を製造する場合には、その配置パターンに対応したドット状の形状の凸部を、ロール131の周面に形成すればよい。一方、ロール132はその周面が平滑なフラットロールからなる。ロール132は金属製、ゴム製、紙製等である。
【0045】
エンボス加工部130においては、積層ウエブ10aを両ロール131,132で挟圧してエンボス加工を行う。具体的には、熱を伴うか又は伴わない圧密化によって、積層ウエブ10aの構成繊維を圧密化して、該積層ウエブ10aに多数のエンボス部からなる接合部を形成し、エンボスウエブ10bを製造する。本製造方法においてはロール131及びロール132は加熱可能な構造になっている。エンボス加工部130の動作時には、パターンロール131及び/又はフラットロール132が所定温度に加熱されていることが好ましい。
【0046】
エンボス加工部130において、パターンロール131及びフラットロール132の少なくともいずれか一方を加熱する場合、その加熱温度は、下層ウエブ12aに含まれる潜在捲縮性繊維が熱収縮しない温度とする。これに加えて、上層不織布11bに含まれる繊維と、下層ウエブ12aに含まれる繊維とが熱融着する温度とする。したがって、エンボス加工物130における加工によっては、潜在捲縮性繊維の熱収縮は発現せず、上層不織布11bと下層ウエブ12aとの熱融着による接合のみが起こる。また上層不織布11bに含まれる熱伸長性繊維の伸長も起こらない。
【0047】
エンボス加工部130においては、一対のエンボスロール131,132を用いることに代えて、超音波エンボス装置を用いることもできる。超音波エンボス装置を用いることで、潜在捲縮性繊維の収縮及び熱伸長性繊維の伸長を一層抑制しつつ、上層不織布11bと下層ウエブ12aとを部分接合することができる。
【0048】
エンボス加工部130よる処理で保形性が付与されたエンボスウエブ10bは、次いで第2熱風吹き付け部140に搬送される。第2熱風吹き付け部140は、先に説明した第1熱風吹き付け部120と同様の構造をしている。すなわち第2熱風吹き付け部140はフード141を備えている。エンボスウエブ10bはこのフード141内を通過する。また第2熱風吹き付け部140は、通気性ネットからなるコンベアベルト142を備えている。コンベアベルト142はフード141内を周回している。エンボスウエブ10bはコンベアベルト142上に載置されて熱風吹き付け部140内を搬送される。コンベアベルト142の材質は、第1熱風吹き付け部120に備えられたコンベアベルト122と同様とすることができる。
【0049】
第2熱風吹き付け部140においてはエンボスウエブ10bに対して熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。すなわち熱風吹き付け部140は、所定温度に加熱された熱風が、エンボスウエブ10bを貫通するように構成されている。エアスルー加工は、エンボスウエブ10b中の潜在捲縮性繊維が加熱によって熱収縮する温度で行われる。また、エンボスウエブ10b中の熱伸長性繊維の伸長が起こる温度で行われる。
【0050】
潜在捲縮性繊維の熱収縮によって、接合部13間に位置する下層ウエブ12aの構成繊維が収縮し、下層ウエブ12aの繊維密度が高くなる。この構成繊維の収縮に伴い、下層ウエブ12aは水平方向に収縮するとともに、上下方向へ向けて厚みを増す。その結果、接合部13間において、下層ウエブ12aの下面は、下に凸の緩やかな曲線を描く輪郭となる。また、接合部13間に位置する上層不織布11bの構成繊維は、平面方向への行き場を失い厚み方向(上方向)へ移動する。この場合、先に述べたとおり、上層不織布11b中の繊維は一方向に概ね配向していることから、その配向状態を維持したままで、厚み方向(上方向)へ移動する。その結果、凸部14が形成されるとともに、凸部14の頂部から接合部13に向けて繊維が並列状態に配向する。しかも、上層不織布11b中の熱伸長性繊維の伸長が生じることで、凸部14の隆起の程度が一層顕著になる。これによって、凸部14を構成する繊維は、繊維間距離が大きくなり、見かけ密度が低くなる。更に、上述した中空部16が首尾良く形成される。
【0051】
本製造方法においては、第2熱風吹き付け部140を用いることに代えて、エンボスウエブ10bを乾燥炉内に載置して熱処理を行ってもよい。
【0052】
以上の工程によって、目的とする表面シート10が得られる。このようにして得られた表面シート10は吸収性物品の構成部材として用いられる。この吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば生理用ナプキン、使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0053】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収性物品は、一般に、着用時に着用者の肌に当接する肌当接面及びそれとは反対側(通常、ショーツ等の衣類側)に向けられる非肌当接面を有し、表面シートは、肌当接面側に配され、裏面シートは、非肌当接面側に配される。本実施形態における表面シートは、上層11側の面を着用者の肌側に向けて、吸収性物品に配される。
【0054】
吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限なく用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の実質液不透過性又は撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の製造方法においては、上層ウエブ11a及び下層ウエブ12aを製造した後に、上層ウエブ11aのみにエアスルー加工を施して上層不織布11bを製造したが、これに代えて又はこれに加えて下層ウエブ12aにもエアスルー加工を施してもよい。また、上層ウエブ11a及び下層ウエブ12aの双方にエアスルー加工を施さなくてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0057】
〔実施例1〕
本実施例においては、図3に示す装置を用いて、図1及び2に示す構造の表面シート10を製造した。製造工程の詳細は以下のとおりである。
【0058】
(1)上層ウエブ11a及び上層不織布11bの製造
熱伸長性繊維として、ポリプロピレン(PP)を芯成分、ポリエチレン(PE)を鞘成分とした熱融着性芯鞘型複合繊維(伸長前の繊度2.9dtex、伸長前の繊維長51mm、熱伸長開始温度60℃、130℃における熱伸長率10%)を原料として用いた。この繊維を用いてカード法によって坪量22g/m2のカードウェブ(上層ウエブ11a)を製造した。このカードウェブに対して138℃±5℃の熱風をエアスルー方式で10秒間通過させて、繊維間の交点を熱融着させた。このようにして上層不織布11bを得た。上層不織布11bにおいては、熱伸長性繊維が、不織布製造時の流れ方向に概ね配向していた。なお、この熱伸長性繊維の熱伸長開始温度は、吹き付けられる熱風の温度よりも低いが、熱風の吹き付け時間が10秒と短いことから、該熱伸長性繊維は完全に伸長しきった状態とはならず、再度の熱伸長の余地を残していた。
【0059】
(2)下層ウエブ12aの製造
大和紡績株式会社製の潜在螺旋状捲縮繊維(商品名:L(V)繊維、(芯:ポリプロピレン樹脂/鞘:ポリエチレン系樹脂)、捲縮前の繊度2.2dtex、捲縮前の繊維長51mm、熱収縮開始温度115℃)を原料として用いた。この繊維を用いてカード法によって22g/m2のカードウェブ(下層ウエブ12a)を製造した。
【0060】
(3)エンボス加工
上層不織布11bと下層ウエブ12aとを重ね合わせ、超音波エンボス法によって両者を部分的に接合した。接合によって形成された接合部は、面積が3.07mm2の十字形状であり、エンボス面積率(完成した表面シートにおけるエンボス面積率)は12.5%であった。
【0061】
(4)熱処理
恒温乾燥機中にエンボスウエブ10bを載置し、115℃±5℃で1分間熱処理を行った。これによって上層不織布11b中の熱伸長性繊維を伸長させるとともに、下層ウエブ12a中の潜在捲縮性繊維を収縮させた。これによって、目的とする表面シート10を得た。得られた表面シート10の構造を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図1に示す構造をしていることが確認された。
【0062】
〔比較例1〕
本比較例は、特許文献1の実施例に対応するものである。
実施例1において、上層不織布11bを次の方法で製造した。すなわち、ポリプロピレン(PP)を芯成分、ポリエチレン(PE)を鞘成分とした熱融着性芯鞘型複合繊維(伸長前の繊度2.4dtex、伸長前の繊維長51mm)を原料として用いた。この繊維を用いてカード法によって坪量22g/m2のカードウェブ(上層ウエブ11a)を製造した。このカードウェブに対して130℃±10℃の熱風をエアスルー方式で10秒間通過させて、繊維間の交点を熱融着させた。これ以外は実施例1と同様にして表面シートを得た。この表面シートは、特許文献1の図2に示す断面構造をしていた。
【0063】
〔評価〕
実施例1及び比較例1で得られた表面シートについて、以下の方法で馬血の吸い上げ残存量及び馬血の吸い上げ後の表面シートの明度を測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0064】
〔吸い上げ残存量及び表面シートの明度〕
(1)花王(株)製の生理用ナプキンであるロリエ(登録商標)の表面シートを剥がし、その代わりに実施例1及び比較例1で得られた表面シートを組み込んで、試験用の生理用ナプキンを得た。
(2)ガラス板の上に馬血1gがほぼ円状(直径20mm)に広がるように乗せた。
(3)アクリル板の上に、表面シートが上を向くようにナプキンを固定した。
(4)ナプキンの表面シートと馬血とが接するように、ナプキンの表面シート側を下向きにしてガラス板の上に載置し、10秒放置した。この状態では、ナプキンに147.1Paの圧力が加わっている。表面シート側を下向きにすることで、表面シートの液の引き込み性の条件がシビアなものになる。
(5)ナプキンを取り除き、予め重量を測定したティッシュペーパーを用い、ガラス板上に残存する馬血を拭き取った。
(6)拭き取り後、ティッシュペーパーの重量を測定し、ティッシュペーパーに吸収された馬血の重量を、吸い上げ液残存量(g)とした。
(7)馬血を吸収したナプキンの表面シートの明度(L値)を、日本電色工業株式会社製簡易型分光色差計NF333を用いて測定した。明度はその値が大きいほど、色が白に近づき、表面シートの液残りの程度が低いことを意味する。
(8)上述の操作を、放置時間を60秒にして同様に行い、吸い上げ液残存量及び明度を測定した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1の表面シートを備えたナプキンは、比較例1の表面シートを備えたナプキンに比べて馬血の吸い上げ残存量が少なく、液の引き込み性が高いことが判る。特に、10秒放置後の吸い上げ残存量の比較から明らかなように、実施例1では、短時間で多量の馬血を吸い上げていることが判る。また、馬血を吸収した後の表面シートの白さは、実施例1の表面シートを備えたナプキンの方が高いことから、この表面シートは液残りが起こりづらいものであることが判る。
【符号の説明】
【0067】
10 表面シート
11 第1層(上層)
12 第2層(下層)
13 接合部
14 凸部
15 凹部
16 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に第1層、及びこれに隣接する第2層を非肌当接面側に有し、
前記第1層は、芯鞘型の熱融着性複合繊維を含み、該熱融着性複合繊維は、熱伸長性繊維が熱処理によって伸長したものからなり、
前記第2層は、捲縮性繊維を含む繊維層からなり、
前記第1層と前記第2層とが多数の接合部によって接合されており、該接合部に囲まれて第1層の肌当接面側に隆起する凸部が、前記第1層側の肌当接面側に多数形成されており、
前記接合部に連なる第1層の繊維は、凸部の頂部に向けて並列状態で構成されてなる吸収性物品の表面シート。
【請求項2】
前記第1層と前記第2層との接合部がヒートエンボス又は超音波エンボスによって形成されている請求項1記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項3】
多数の前記凸部それぞれは、3つ以上の前記接合部によって囲まれた領域の略中央部に頂部を有しており、該頂部の繊維密度が前記接合部の周縁部に向けて徐々に高くなっている請求項1又は2記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項4】
凸部となっている前記第1層の内部は、中空構造になっている請求項3記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の吸収性物品の表面シートと、液不透過性又は撥水性の裏面シートと、これら両シート間に介在配置された液保持性の吸収体とを有し、前記表面シートは、前記第1層側の面が着用者の肌に当接するように配されている吸収性物品。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品の表面シートの製造方法であって、
熱伸長性の芯鞘型複合繊維を用いカード法でウエブを形成し、該ウエブをエアスルー方式の熱風処理に付して該繊維の交点を熱融着させるとともに、該繊維を熱伸長させないか、又は再度の熱伸長の余地を残した状態で該繊維を伸長させてなる上層不織布を形成し、
この不織布の形成とは別に、潜在捲縮性繊維を用いカード法で下層ウエブを形成し、前記上層不織布と前記下層ウエブとを重ね合わせて、両者を複数の接合部によって接合して積層ウエブを得、該積層ウエブをエアスルー方式の熱風処理に付して、前記潜在捲縮性繊維を捲縮させるとともに、前記伸長性の芯鞘型複合繊維を熱伸長させる吸収性物品の表面シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55362(P2012−55362A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198700(P2010−198700)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】