説明

吸収性物品

【課題】軽量でありながら吸収部分の腰が強く、もってヨレ、ズレが発生し難く、漏れ難い吸収性物品を提供する。
【解決手段】体液を吸収する吸収体56を備えた紙おむつにおいて、吸収体56を親水化処理した繊度5.0デニール以上の合成連続繊維52,52…の集合体により形成することとする。前記吸収体が繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成された第1の連続繊維部分と、多糖類またはその誘導体の連続繊維の集合体により形成された第2の連続繊維部分とを有する。第1の連続繊維部分および第2の連続繊維部分はそれぞれ層状をなしており、第1の連続繊維部分は、親水化処理していない合成連続繊維の集合体により形成されており、かつ第2の連続繊維部分の使用面側に第1の連続繊維部分が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液の吸収性物品に関し、たとえば使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、使用面側のトップシートと、背面側の体液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、前記トップシートを透過した排泄された体液を吸収する吸収体とを基本要素としている。
【0003】
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、製品の両側にいわゆるバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
【0004】
使用面側のトップシートを透過した体液を吸収する吸収体としては、従来は、パルプ短繊維の積繊体が一般的に使用されている。また、体液に吸収量を高めるために高吸収性ポリマー粒子(以下「SAP」ともいう。)を使用することも知られている。
【0005】
SAPはパルプ短繊維の積繊体上に散布する場合のほか、パルプ短繊維のSAPを分散保持させ積繊体させる場合(特許文献1)がある。
【0006】
一方、特表2002―524399号(WO99/27879:特許文献2)及び特表2004―500165号(米国特許第6,646,180号:特許文献3)には、連続繊維を吸収体として使用することを開示している。
【0007】
しかしながら、セルロースアセテート等のセルロース系連続繊維を用いた吸収体は、剛性が低く、腰が弱く、特に体液を吸収すると急激に腰が弱くなる。この問題点は、繊維使用量を増加することにより補うこともできるが、重量が嵩むため好ましくない。
【特許文献1】特開2004―65300号公報
【特許文献2】特表2002―524399号(WO99/27879)公報
【特許文献3】2004―500165号(米国特許第6,646,180号)公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、軽量でありながら吸収部分の腰が強く、もってヨレ、ズレが発生し難く、漏れ難い吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
体液を吸収する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記吸収体の一部または全部が、親水化処理した繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
腰を強くするための一つの解決策として、本発明者らは、セルロース系連続繊維よりも腰の強い合成連続繊維を用いることを考えた。しかしながら、単に合成繊維を用いた吸収体では、セルロース系連続繊維の場合と比べて吸水性に著しく劣ることになる。そこで、本発明では、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維を用いて連続繊維層を形成することにより、吸収部分における腰の強さを確保しつつ、繊維表面を親水化処理することにより吸水性をも確保したものである。なお、合成連続繊維の繊度が5.0デニール未満であると、含有水分量が繊維の自重の倍以上になったときに腰が弱くなり、厚みが50%未満まで低下してしまう。
【0011】
なお、親水化処理した繊維とは、親水化処理により液滴法による接触角が90°未満となっているものをいう。
【0012】
<請求項2記載の発明>
体液を吸収する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記吸収体が、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成された第1の連続繊維部分と、多糖類又はその誘導体の連続繊維の集合体により形成された第2の連続繊維部分とを有する、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
本項記載の発明は、上記親水化処理を特徴とする本発明とは別の解決策を提案するものであり、腰の強い第1の連続繊維部分と、腰は弱いが親水性に富む第2の連続繊維部分とを用いて吸収体を構成することによって、全体として親水性に富みながらも腰の強い吸収体とするものである。なお、第1の連続繊維部分の合成繊維は親水化処理されていても、されていなくても良い。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記第1の連続繊維部分および第2の連続繊維部分はそれぞれ層状をなしており、前記第1の連続繊維部分は、親水化処理していない合成連続繊維の集合体により形成されており、かつ前記第2の連続繊維部分の使用面側に前記第1の連続繊維部分が配設されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
この形態によれば、第1の連続繊維部分によって、体液を速やかに第2の連続繊維部分に移行させることができ、第2の繊維部分が吸収した体液の逆戻り現象を防止することができる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記第1の連続繊維部分および第2の連続繊維部分はそれぞれ層状をなしており、前記第1の連続繊維部分は、合成連続繊維の集合体と高吸収性ポリマーとにより形成されており、かつこの第1の連続繊維部分の使用面側に前記第2の連続繊維部分が配設されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
この形態では、使用面側となる第2の連続繊維部分によって体液の吸収及び一時的な保持が達成され、第1の連続繊維部分の高吸収性ポリマーによって体液の最終的かつ多量の保持が達成されるようになる。この際、第1の連続繊維部分はコシの強い合成連続繊維からなるため、高吸収性ポリマーの膨張空間をより強固に確保でき、より多くの吸収量を確保できる。
【0018】
<請求項5記載の発明>
体液を吸収する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記吸収体の一部または全部が、多糖類又はその誘導体の連続繊維の集合体により形成され、
この吸収体の使用面側に、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成された体液拡散層が配設されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
この形態では、吸収体としてではなく、その使用面側に、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成された体液拡散層を配設することによって、吸収体のより広い範囲に体液を拡散するとともに、吸収部位における腰を強くすることができるものである。
【0020】
<請求項6記載の発明>
前記合成連続繊維が捲縮繊維である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
繊維は捲縮加工を施すことにより、嵩のみならず腰も強くなる。よって、本発明の合成連続繊維としては捲縮繊維を用いるのが好ましい。
【0022】
<請求項7記載の発明>
前記合成連続繊維が異形断面繊維である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
H字形やY字形等の異形断面繊維は、剛性の割には重量が少ない。よって、合成連続繊維を用いることによる軽量化を更に向上させるため本発明の合成連続繊維としては異形断面繊維を用いるのが好ましい。
【0024】
<請求項8記載の発明>
前記合成連続繊維は熱可塑性繊維であり、前記合成連続繊維の集合体により形成された部分に、加熱圧縮加工により凹部が形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
本項記載のように、合成繊維として熱可塑性繊維を用いると、便等の排泄物の収容スペースとなる凹部を加熱圧縮加工により容易に形成できるため好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、軽量でありながら吸収部分の腰が強くなり、ヨレ、ズレが発生し難く、漏れ難くなる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの体液(後述する生理用ナプキンでは経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
【0028】
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
【0029】
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
【0030】
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
【0031】
外装シート12は望ましくは2枚のたとえば撥水性不織布のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。前記弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できるが、多数の糸ゴムを使用するのが望ましい。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
【0032】
(吸収性本体)
実施の形態の吸収性本体20は、図3に示されるように、使用面側から順に、体液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、中間シート(セカンドシート)40と吸収要素50とを備えている。また、吸収要素50の裏面側にはプラスチックシートなどからなる体液不透過性シート(バックシートとも呼ばれる)70が設けられている。この体液不透過性シート70の裏面側には、前記の外装シート12が設けられている。さらに、両側にバリヤーカフス60、60を備えている。
【0033】
(トップシート)
トップシート30は、体液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0034】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0035】
(中間シート)
トップシート30を透過した体液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より体液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シートは、体液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した体液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。
【0036】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
【0037】
中間シート(セカンドシート)40は、トップシート30と包被シート58との間に介在されている。図4に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。
【0038】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、体液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は体液の透過性に優れる不織布である。
【0039】
(体液不透過性シート)
体液不透過性シート70は、単に吸収体56の裏面側に配されるシートを意味し、本実施の形態においては、トップシート30との間に吸収体56を介在させるシートとなっている。したがって、本体液不透過性シートは、その素材が、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
【0040】
体液不透過性シート70は、いわゆる額巻きする形態で使用面に延在させる(図示せず)ことで、体液の横漏れを防止できるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2体液不透過性シート72を介在させることにより防止している。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立まで第2体液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した体液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
【0041】
(バリヤーカフス)
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられているが、付加的な要素である。
【0042】
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にしたものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重の不織布シート間に体液不透過性シート70の側部が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
【0043】
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
【0044】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。さらに、図示形態では、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられているが、この保持シート80は図4に示す例のように省略することもできる。
【0045】
(吸収体の第1の形態)
図3は、第1の形態の吸収体56を採用したものであり、この吸収体56は、その全体が親水化処理した繊度5.0デニール以上の合成連続繊維52,52…の集合体により形成されているものである。
【0046】
合成連続繊維52としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどを用いることができ、これらの繊維の表面に、親水剤を含む液を塗布する等により親水化処理することができる。親水性の程度としては、液滴法による接触角が55°以下、特に40°以下であると好適である(他の親水化処理、親水性も同様)。合成連続繊維52の繊度は、腰の強さを確保する観点から、少なくとも5デニールとされ、好ましくは7〜20デニールとされる。合成連続繊維52の繊度が細すぎると腰の向上効果が不足し、太すぎると腰が強くなり過ぎ、柔軟性の欠如により装着感やフィット性の悪化をもたらす。
【0047】
かくして、親水化した合成連続繊維を用いることにより、吸水性能の低下を抑制しつつも腰を強くすることができる。
【0048】
合成連続繊維52は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0049】
合成連続繊維52は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり1〜50個、好ましくは2〜30個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いるのが好ましい。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体56を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高い吸収体56を容易に製造できる。
【0050】
合成連続繊維52の断面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、H字状、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などの異形断面繊維であるのも好ましい。
【0051】
合成連続繊維52は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(連続繊維の束)の形で入手することができ、合成連続繊維52,52…の集合体は、トウをベールから引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊することにより得ることができる。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛け渡し、トウの進行に伴って次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0052】
合成連続繊維52,52…の集合体における繊維間の絡み合いを強くする目的で、繊維の接触部分を接着または融着する、あるいはそのような作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチンなどのエステル系可塑剤の他、熱可塑性樹脂などの樹脂接着剤を用いることができる。
【0053】
好適には、図3に示すように、吸収体56中に高吸収性ポリマー粒子54,54…を含ませる。そして、少なくとも体液受け入れ領域において、連続繊維52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図として概念的に示した。
【0054】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、連続繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が連続繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が連続繊維52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や、後述するような保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
【0055】
(吸収体の第2の形態)
本発明では、図5〜図7に示すように、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体からなる第1の連続繊維部分56Aと、多糖類又はその誘導体の連続繊維の集合体からなる第2の連続繊維部分56Bとを有する吸収体56についても提案される。この形態では、第1の連続繊維部分56Aにより腰の強さを確保しつつ、その影響による親水性の低下を第2の連続繊維部分56Bにより補うものである。
【0056】
吸収体56における第1及び第2の連続繊維部分56A,56Bの配置は任意であるが、図5に示すように層状に、すなわち第1の連続繊維層56Aと、第2の連続繊維層56Bとを積層するのが一つの好ましい形態である。
【0057】
具体的には、図5に示すように、親水性に富む第2の連続繊維層56Bを上層とし(使用面側に配置し)、合成連続繊維からなる第1の連続繊維層56Aを下層(裏面側)とし、上層56B中に高吸収性ポリマー粒子54を含ませることができる。この場合、上層56Bが吸収体56の主たる吸収性能を発揮し、下層56Aは吸収体56の腰を強化する役割を担う。第1の連続繊維部分56Aに用いる合成繊維は親水化処理するのが好ましいが、親水化処理していなくても良い。
【0058】
反対に、図6に示すように、合成連続繊維からなる第1の連続繊維層56Aを上層とし(使用面側に配置し)、親水性に富む第2の連続繊維層56Bを下層(裏面側)とし、下層に高吸収性ポリマー粒子54を含ませることができる。この場合、親水化処理していない合成繊維を上層56Aに用いることにより、上層56Aを前述の中間シートと同様に機能させることができ、腰の強化だけでなく、体液の拡散や逆戻り防止も図ることができる。図示形態では、中間シート40を設けているが、省略することも可能である。
【0059】
さらに、図7に示すように、親水性に富む第2の連続繊維層56Bを上層とし(使用面側に配置し)、合成連続繊維からなる第1の連続繊維層56Aを下層(裏面側)とし、下層56Aに高吸収性ポリマー粒子54を含ませることもできる。この場合、上層56Bによって体液の吸収及び一時的な保持が達成され、下層56Aの高吸収性ポリマー54によって体液の最終的かつ多量の保持が達成される。この際、下層56Aはコシの強い合成連続繊維からなるため、高吸収性ポリマー54の膨張空間をより強固に確保でき、より多くの吸収量を確保できる。この形態では、下層56Aに用いる合成繊維は親水化処理するのが好ましいが、親水化処理していなくても良い。なお、これらのいずれの形態を採用するか製品の種類・特徴等に応じて適宜定めることができる。
【0060】
第2の連続繊維層56Bに用いる多糖類又はその誘導体の連続繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0061】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。
【0062】
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0063】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0064】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
【0065】
多糖類又はその誘導体の連続繊維の繊度は、1.0〜20デニール、特に2.0〜10デニールとするのが好ましい。この繊度が細くなりすぎると腰の向上効果が不足するとともに、繊維を十分に解すことが困難となり、高吸収性ポリマー粒子を含有させる場合には粒子を均一に分散させるのも困難となる。また、この繊度が太くなりすぎると腰が強くなり過ぎ、柔軟性の欠如により装着感やフィット性の悪化につながる。
【0066】
その他、添加剤の使用、捲縮の有無、捲縮度、繊維の断面形状、バインダーを用いた繊維相互の接着または融着、トウの開繊等については、前述の合成連続繊維と同様であるため、敢えて説明を省略する。
【0067】
(吸収体の第3の形態)
さらに別の形態として、図8に示すように、吸収体56については、親水性に富む多糖類又はその誘導体の連続繊維の集合体を採用しつつ、吸収体56の使用面側の部材として(具体的には前述の中間シート40に代えて)、腰の強い繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体からなる体液拡散層53を設けることも提案される。この場合において、連続繊維の集合体は、繊維連続方向に沿って体液が拡散し易いため、所望の方向、例えば製品前後方向(長手方向)または幅方向に沿って繊維が連続するように体液拡散層53を設ける。体液拡散層53の厚さとしては、0.05〜3mmとすることができる。厚さが0.05mm未満であると、繊維が少ない又は存在しない部分が所々に混じるようになり体液拡散効果に乏しくなる。一方、厚さが3mmを超えるとコストが嵩むだけでなく、ゴワゴワした装着感をもたらし、フィット性が低下する。
【0068】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー54を用いる形態において、高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、100〜1000μm、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が60g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0069】
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された体液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0070】
また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、体液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0071】
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量によって、合成連続繊維を採用することにより軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0072】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子54は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、体液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0073】
必要により、高吸収性ポリマー粒子54として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次供給し、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。
【0074】
高吸収性ポリマー粒子54と連続繊維との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における体液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/連続繊維重量が、1〜14、特に3〜9であることが望ましい。
【0075】
(吸収体のサイズ・重量)
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が400cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜5mmであるのが好ましい。吸収体56のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体56の重量は25g以下、特に10〜20gとなるように構成するのが好ましい。吸収体56の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
【0076】
(吸収体の圧縮特性)
吸収体56の圧縮レジリエンスRCは、40〜60%、特に50〜60%とするのが好ましい。これにより、吸収体自体で十分な復元性を発揮できるようになる。
【0077】
さらに、吸収体56の圧縮エネルギーWCは4.0〜10.0gf・cm/cm2であると、包装に際して従来と同レベルあるいはそれ以上にコンパクトに圧縮することができるため好ましい。
【0078】
これらの圧縮特性は、開繊等による連続繊維の集合体の繊維密度の調整、繊維素材の選定、可塑剤等のバインダーの種類の選定・処理の程度の調整、あるいはこれらの組み合わせ等により調整できる。
【0079】
ここで、圧縮エネルギー(WC)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。
【0080】
この圧縮エネルギーは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:STD、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
【0081】
一方、圧縮レジリエンス(RC)とは、繊維が圧縮されたときの回復性を表すパラメータである。したがって、回復性がよければ、圧縮レジリエンスが大きくなる。この圧縮レジリエンスは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、上記圧縮エネルギーの場合と同様である。
【0082】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、8〜20g/m2、特に10〜15g/m2のものが望ましい。
【0083】
この包被シート58は、図3のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、たとえば図9に示すように、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0084】
(保持シート)
保持シート80を設ける場合、保持シート80と吸収体56上との間には、高吸収性ポリマー粒子54をその散布などにより介在させることができる。高吸収性ポリマー粒子54は、連続繊維52の集合体への供給時又はその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、連続繊維52の集合体を通り抜けることがある。連続繊維の集合体を通り抜けた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に高吸収性ポリマー54の保持性能を有する保持シート80を介在させるのも好ましい形態である。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
【0085】
なお、図10には、吸収体56の下方に高吸収性ポリマー粒子54を設けた場合、あるいは吸収体56中に含ませた高吸収性ポリマー粒子54が、製造から消費者が使用するまでの段階で、連続繊維52の集合体から抜け出て、保持シート80上に集まった場合を概念的に示した。
【0086】
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
【0087】
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
【0088】
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー54を保持することにある。したがって、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、その機能が十分に発揮する。
【0089】
また、抜け出た高吸収性ポリマー54は、保持シート60によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
【0090】
保持シート80は、図3等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図10に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
【0091】
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート58を設ける例であるが、保持シートは、包被シートより裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シートを設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
【0092】
(エンボス加工)
トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、図11に示すように、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したり(図示せず)することができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が8〜40g/m2、厚さ0.2〜1.5mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
【0093】
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
【0094】
凹部Eはこれが延在する方向に、体液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、体液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
【0095】
一方、連続繊維からなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、体液不透過性シート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
【0096】
エンボスによる凹部はその延在方向に体液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
【0097】
他方、上記吸収体56や体液拡散層53の合成連続繊維として、熱可塑性繊維を用いる場合、これらにヒートエンボス等の加熱圧縮加工を施すことにより、各種の凹部を形成することができる。具体的には、合成連続繊維を用いた吸収体56またはその一部56Aに剛性向上のためのパターン状のエンボスを施したり、図12に示すように、吸収体56の一部にヒートエンボスを施すことにより、便を収容する窪み56Uを形成したり、図13に示すように、前述の体液拡散層53に同様の便収容窪み53Uを形成したりすることができる。
【0098】
(その他)
なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより相互に固定される。
【0099】
(テープ式使い捨ておむつの例)
一方、図14及び図15はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図15は図14におけるIX−IX線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
【0100】
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片を有し、このファスニング片の止着面にフック要素を有するとともに、前記おむつの裏面を構成するバックシートを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、前記ファスニング片のフック要素を前記バックシートの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
【0101】
吸収性本体20は、トップシート30と、体液不透過性シート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、ティッシュペーパによる包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
【0102】
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。体液不透過性シート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなるバックシート12Aが設けられている。
【0103】
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、体液不透過性シート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0104】
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
【0105】
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から体液不透過性シート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面においてバックシート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
【0106】
バリヤーシート64の内面の、体液不透過性シート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
【0107】
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、バックシート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
【0108】
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部がバックシート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
【0109】
前身頃の開口部側には、バックシート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部からバックシート12Aを通して視認可能なように施されている。
【0110】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
【0111】
起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
【0112】
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
【0113】
その他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おむつカバーと併用する吸収パッド等の吸収性物品における吸収体の製造に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図3】図2の3―3線矢視断面図である。
【図4】他の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図5】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図6】変形例の3―3線矢視相当断面図である。
【図7】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図8】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図9】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図10】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図11】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図12】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図13】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図14】テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図15】図13のIX−IX断面図である。
【符号の説明】
【0116】
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…吸収性本体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…連続繊維、53…体液拡散層、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…連続繊維の集合体、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、56A…第1の連続繊維層、56B…第2の連続繊維層、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…体液不透過性シート、72…第2体液不透過性シート、80…保持シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を吸収する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記吸収体の一部または全部が、親水化処理した繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
体液を吸収する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記吸収体が、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成された第1の連続繊維部分と、多糖類又はその誘導体の連続繊維の集合体により形成された第2の連続繊維部分とを有する、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の連続繊維部分および第2の連続繊維部分はそれぞれ層状をなしており、前記第1の連続繊維部分は、親水化処理していない合成連続繊維の集合体により形成されており、かつ前記第2の連続繊維部分の使用面側に前記第1の連続繊維部分が配設されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1の連続繊維部分および第2の連続繊維部分はそれぞれ層状をなしており、前記第1の連続繊維部分は、合成連続繊維の集合体と高吸収性ポリマーとにより形成されており、かつこの第1の連続繊維部分の使用面側に前記第2の連続繊維部分が配設されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項5】
体液を吸収する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記吸収体の一部または全部が、多糖類又はその誘導体の連続繊維の集合体により形成され、
この吸収体の使用面側に、繊度5.0デニール以上の合成連続繊維の集合体により形成された体液拡散層が配設されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
前記合成連続繊維が捲縮繊維である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記合成連続繊維が異形断面繊維である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記合成連続繊維は熱可塑性繊維であり、前記合成連続繊維の集合体により形成された部分に、加熱圧縮加工により凹部が形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−305043(P2006−305043A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130878(P2005−130878)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】