説明

吸排気弁

【課題】給水配管に設けられる吸排気弁において、閉弁時におけるシール性の向上を図る。
【解決手段】吸排気弁100の弁本体110内にはシート120を有する弁室114が形成してあり、球状のフロート弁130が配置される。シール部材150の弁座となるフロート弁接触部160は波形の微小突起162を有し、フロート弁130との間で確実に閉弁する。排水時には、シート120に設けた排水溝122を通って弁室114内の水は完全に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管に装備される吸排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は給水配管に装備される吸排気弁を開示している。
この吸排気弁は、給水配管の頂部に設けられ、給水時には給水配管内の空気を外部に排気するとともに給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から給水管内に空気を吸入してスムーズに水抜きを行うように構成されている。
【0003】
この種の吸排気弁は、水の漏出を防止するためのフロート弁を備えている。このフロート弁は水より比重の小さい材料で形成されており、弁本体に形成された弁室内に上下に変位可能に収容されている。弁室内の水位が上昇すると、フロート弁は上昇し、吸排気口に連通する弁口の周囲のテーパ状の弁座に当接して当該弁口を閉塞する。
【0004】
なお、弁口のシール性を向上するべく、弁座をゴム等の弾性材料で形成し、フロート弁によって弁座を若干圧縮した状態で弁口を閉塞するようにしたものもある。
【0005】
弁室内の水位が低下すると、フロート弁は弁口から離れて下降し、弁室の下方に設けられたシートに着座する。これにより吸排気孔から外気が弁室を介して給水配管内に取り込まれ、給水配管内の水が外部に排水される。なお、フロート弁が着座するシートには排水溝が設けられており、弁室内の水はこの排水溝を介して給水配管内に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3007623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の吸排気弁において、吸排気孔に連通する弁口の周囲の弁座が弾性材料で形成される場合には、フロート弁が接離する部位が平坦面であるため、弁座とフロート弁とが面接触する。この場合、弁座が圧縮されにくく、特に水圧が小さい微圧域において弁口の適切なシール性が確保しづらいとう問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、吸排気孔に連通する弁口のシール性の向上を図った吸排気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、給水配管に設けられ、給水時には給水配管内の空気を外部に排気するとともに給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から給水配管内に空気を吸入して水抜きを行う吸排気弁であって、弁室と、弁室の下方に設けられ、弁室及び給水配管に連通する給排水口と、弁室の上方に設けられ、弁室に連通するとともに外気に開放される吸排気孔と、弁室の上部に設けられ、弾性材料で形成されるとともに吸排気孔に連通する弁口及びその周囲に形成されたテーパ状の弁座を有するシール部材と、弁室内に上下に変位可能に収容されるとともに水より比重の小さい材料で形成され、弁座に接離して弁口を開閉する球状のフロート弁とを備え、弁座におけるフロート弁が接離する部位に微小突起群を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
なお、フロート弁による弁口のシール性をより向上するために、弁座の中心角度は120°≦α≦150°であることが好ましい。
また、フロート弁の弁口への食い付きを防ぐために、フロート弁の直径Dと弁口の直径Dとの比を0.65≦D/D≦0.75とすることが好ましい。また、弁座をゴム製にするとともに、ゴム硬度を65≦Hs≦75とすることが好ましい。
微小突起群は、例えば、弁口の周囲に同心円状に形成される複数の突条から成るものとすることができる。
この場合、複数の突条の高さLを5≦L≦15μmとすることが好ましく、さらに、ピッチPを30≦P≦50μmとすることが好ましい。
なお、複数の突条は、シール部材を成形する金型に切削加工を施すことにより容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸排気弁は、閉弁時にフロート弁が微小突起群を押し潰すため、微圧域でも弁口の高いシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の吸排気弁の全体構造を示す断面図。
【図2】本発明の吸排気弁の構成部品の断面図。
【図3】本発明の吸排気弁のフロート弁とシール部材の詳細を示す説明図であって、(b)は(a)の一部拡大図。
【図4】本発明の吸排気弁の要部の詳細を示す説明図であって、(a)はシール部材を装着した蓋部材の内面図、(b)は(a)の一部拡大図。(c)は(b)のA−A’線断面図。
【図5】本発明の吸排気弁の作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の吸排気弁の全体構造を示す説明図である。
吸排気弁100は弁本体110を有し、弁本体110には給排水口112に連通する弁室114が形成されている。給排水口112と弁室114の間にはテーパー状のシート120が設けられ、弁室114内には球状のフロート弁130が配置される。
【0014】
このフロート弁130はポリプロピレン(PP)等の比重が0.8程度のプラスチック材で形成され、弁室114内に給水されると水に浮き、給水されないときにはシート120上に着座する。弁本体110の頂部にはねじ部144が設けられ、蓋部材140が螺合される。蓋部材140には弁室114に連通するとともに外気に開放された吸排気孔142が形成されている。蓋部材140の内側にはゴム等の弾性材料で形成される環状のシール部材150が固着される。このシール部材150は、吸排気孔142に連通する弁口152を有しており、弁口152のフロート弁130に対向するエッジ部にテーパ状のフロート弁接触部160が形成されてフロート弁130の弁座として機能する。弁本体110と蓋部材140の間にはOリング170が挿入されて水漏れを防止する。
【0015】
図2は、本発明の吸排気弁の構成部品の詳細を示す説明図である。
弁本体110は給排水口112の外周部に給水配管への取付用の雄ねじ部116を有する。給排水口112と弁室114の間に形成されるシート120には4つの排水溝122(図5参照)が形成される。弁本体110の頂部の内壁部には雌ねじ部144aが形成される。
【0016】
蓋部材140の外周には雄ねじ部144bが形成され、蓋部材140の上面には、取付用の工具が係合する係合部としての2個の有底の工具用穴146が設けられる。蓋部材140は工具用穴146に工具を係合して回転させることで、弁本体110に強固に固定することができるとともに、弁本体110から容易に取り外すことができるので、吸排気弁100を容易にメンテナンスすることが可能となる。
【0017】
図3は、シール部材150のフロート弁接触部160の詳細を示す説明図である。フロート弁130の径寸法Dは例えば19mm(3/4インチ)であって、シール部材150の弁口152の径寸法Dは例えば13.5mmである。シール部材150がフロート弁130に接離する部位に設けられるフロート弁接触部160は、全体が傾斜面に形成されている。後述する微小突起162が容易に潰れて良好な気密性及び水密性を確保するために、中心角度αは、好ましくは120°〜150°程度に設定される。
【0018】
図3の(b)は、フロート弁接触部160の表面を模式化して示すもので、断面リップ状で環状の突条からなる微小突起162と断面リップ状で環状の溝部164とが交互に出現する波状に形成されている。微小突起162のピッチPは、30≦P≦50μm程度、高さ寸法Lは、5≦L≦15μm程度に形成するのが好ましい。フロート弁接触部160の表面形状を上記の態様に形成することによって、フロート弁130が水圧で押し付けられることにより微小突起162が容易に潰れて気密性及び水密性を確保することができる。
【0019】
なお、シール部材150のゴム硬度は、Hスケールで65より小さいと、軟かすぎてフロート弁130が弁口152に食い込んでフロート弁接触部160に固着してしまい、Hが75より大きいと、微圧領域でのシール性に問題があるので、65≦H≦75であることが望ましいとの結果を得た。
【0020】
図4に示すように、微小突起162と溝部164は交互に同心円状に形成されている。かかる微小突起162と溝部164は、シール部材150を成形する金型に切削加工を施すことにより容易に形成することができる。
【0021】
図5は、本発明の吸排気弁100の作用を示す説明図である。
図5の(a)は、給水管に給水される前の状態を示し、吸排気弁100の内部には空気が存在する。この状態ではフロート弁130は弁本体110のシート120上に載置されている。
【0022】
図5の(b)は、給排水口112内に矢印F側から水Wが給水された状態を示し、フロート弁130は、弁本体110の弁室114内で浮き上り、弁本体110内の空気は蓋部材140の吸排気孔142から排気される。水圧によりフロート弁130がシール部材150のフロート弁接触部160に押圧されると、フロート弁130とフロート弁接触部160との間はシールされ、弁室114の水が吸排気孔142側へ漏れ出ることは防止される。
【0023】
図5の(c)は、給水配管内の水が排出される状態を示す。弁室114内の水Wは給排水口112から排出され、フロート弁130はフロート弁接触部160から離れて吸排気孔142から弁室114内に空気が導入される。弁室114内の水はシート120に設けた4本の排水溝122を通り、完全に排出される。この作用により、吸排気弁100の弁室114内に水が残留することは防止され、衛生が確保される。
【0024】
図5の(d)は、図5(a)のB−B’断面図であって、破線Rはシート120に対するフロート弁130の接触円を示し、フロート弁130と4つの排水溝122との間に排水路が形成されることが示されている。排水溝122は給排水口112から放射状に形成された平面視十字形をなすように形成されている。このような形状の排水溝122は、フライスで横方向の加工を施すことにより容易に形成することができる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0026】
100 吸排気弁
110 弁本体
112 給排水口
114 弁室
116 雄ねじ部
120 シート
122 排水溝
130 フロート弁
140 蓋部材
142 吸排気孔
144 ねじ部
144a 雌ねじ部
144b 雄ねじ部
146 工具用穴
150 シール部材
152 弁口
160 フロート弁接触部
162 微小突起
164 溝部
170 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管に設けられ、給水時には前記給水配管内の空気を外部に排気するとともに前記給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から前記給水配管内に空気を吸入して水抜きを行う吸排気弁であって、
弁室と、該弁室の下方に設けられ、前記弁室及び前記給水配管に連通する給排水口と、前記弁室の上方に設けられ、前記弁室に連通するとともに外気に開放される吸排気孔と、前記弁室の上部に設けられ、弾性材料で形成されるとともに前記吸排気孔に連通する弁口及びその周囲に形成されたテーパ状の弁座を有するシール部材と、前記弁室内に上下に変位可能に収容されるとともに水より比重の小さい材料で形成され、前記弁座に接離して前記弁口を開閉する球状のフロート弁とを備え、
前記弁座における前記フロート弁が接離する部位に微小突起群を形成したことを特徴とする吸排気弁。
【請求項2】
前記弁座の中心角度が120°≦α≦150°であることを特徴とする請求項1記載の吸排気弁。
【請求項3】
前記フロート弁の直径Dと前記弁口の直径Dとの比が0.65≦D/D≦0.75であることを特徴とする請求項1記載の吸排気弁。
【請求項4】
前記弁座がゴム製であるとともに、ゴム硬度Hsが65≦Hs≦75であることを特徴とする請求項1記載の吸排気弁。
【請求項5】
前記微小突起群は、前記弁口の周囲に同心円状に形成される複数の突条から成ることを特徴とする請求項1記載の吸排気弁。
【請求項6】
前記複数の突条の高さLが5≦L≦15μmであることを特徴とする請求項5記載の吸排気弁。
【請求項7】
前記複数の突条のピッチPが30≦P≦50μmであることを特徴とする請求項6記載の吸排気弁。
【請求項8】
前記複数の突条は、前記シール部材を成形する金型に切削加工を施すことにより形成されることを特徴とする請求項5記載の吸排気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19489(P2013−19489A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153854(P2011−153854)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】