説明

吸着分解素子およびその製造方法およびそれを用いた空調装置

【課題】除湿空調機等に使用される吸湿フィルタにおいて、吸湿しながら同時に脱臭もできる吸湿脱臭フィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】吸着剤もしくは吸着剤を担持した吸着素子を触媒溶液に含浸し、吸着剤細孔壁および表面に触媒粒子を固定化した、もしくはイオン交換法にて吸着剤内に触媒を取り込んだ吸着分解素子9を作成する。この吸着分解素子9に通風するためのファン11と、吸着分解素子9から水分を脱着するための加熱手段13と、放湿した水蒸気15を凝縮するための熱交換器16を備えた装置に組込み、吸着分解素子9から水分を脱着するのと同時に吸着剤が吸着したガスを触媒処理面22によって酸化分解することができる装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿剤を用いた空気乾燥を目的とした除湿装置に使用される吸湿素子において、有機ガス等の臭い成分の吸着と分解を行う手段を付与した吸湿脱臭素子を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸湿脱臭素子は、吸湿素子中に触媒を混ぜて、吸湿剤に付着した臭い成分を分解する機能を付与したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、吸湿素子とそれを使用した除湿機について図12および図13を参照しながら説明する。
【0004】
図12および図13に示すように、吸湿素子101は素子基材102と吸湿剤103と触媒粒子104からなり、通気ファン105を備えることにより空気中の水分を吸着し、乾燥した処理空気106を提供する。また、回転手段107によって吸湿素子101は回転し、加熱手段108より吹き出る空気109によって吸湿剤103に吸着した水分が脱着され、同時に処理中に吸った臭い成分が脱着し、触媒粒子104が活性化され脱着した臭い成分を分解する。脱着した水は熱交換器110中にはいり、そこで吹き入れ空気111によって冷やされ結露し水滴112ができる。これをタンク113に回収する。
【特許文献1】特開2002−195604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように触媒粒子を単純に吸着素子基材上に吸着剤と同時に担持するだけでは、触媒の粒子が大きくなってしまい、その比表面積が小さく、効率が低い。また、触媒粒子と吸着剤は比重が異なるため、その触媒粒子と吸着剤の混合分散液にたいし、繰返し基材を含浸して担持すると、その分散溶液の組成が変化していってしまうという課題がある。
【0006】
また、触媒粒子を水ガラスなどの無機バインダ等によって接着しなくてはならず、無機バインダによって、表面が覆われてしまい、ガスとの接触確率は低下し、効率が低下してしまうという課題がある。
【0007】
また、吸着剤を再生するための加熱装置からの熱が高温である場合、その熱で触媒が劣化し、初期のようなガスの分解効率が得られないといった課題がある。
【0008】
そのため、本発明では、触媒が吸着剤と同時に担持されていても、その吸着能力は落とさないために、高効率で分解ができるよう、触媒の比表面積を大きくすることで少量の触媒で高効率にガスを分解できる素子およびその製造法を提供することを目的とする。
【0009】
また、触媒を吸着剤に担持する際には、その工程において触媒の組成が変化してしまい、作られる素子の特性が変化するようなことが無いものを提供することを目的とする。
【0010】
また、触媒を吸着剤もしくは吸着素子に担持するためにバインダを用いないかもしくは少量のバインダで担持することを目的とする。
【0011】
また、加熱装置の熱などでもその分解能力が低下しないようなガス分解能力を持った吸着素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の吸着分解素子は上記目的を達成するために、吸着剤を触媒成分の溶液に漬けて、吸着剤上もしくは細孔の一部に固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化した、ガス吸着分解能力をもった吸着剤を作成し、この吸着剤をその構成の全てもしくは一部に用いた吸着分解素子であり、この手段によりコロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。また、吸着剤に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0013】
また、本発明の吸着分解素子は、ハニカム構造や発泡構造をはじめとする通気性構造をもった基材上に吸着剤を担持して作成した吸着素子を、触媒成分の溶液に漬けて、吸着剤上もしくは細孔の一部に触媒を固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化したガス吸着分解能力をもった吸着分解素子であり、この手段によりコロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。また、吸着素子に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。また、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子を、触媒成分の溶液に漬け、乾燥、焼成するだけで上述の機能を有することができ、工程も簡単に作成することができる。
【0014】
また、本発明の吸着分解素子は、ハニカム構造や発泡構造をはじめとする通気性構造をもった基材上に、吸着剤を担持して作成した吸着素子の、通気と接触する端部に、触媒成分の溶液を、1回もしくは複数回塗布し、触媒成分を端部に染み込ませ、その吸着剤上および細孔壁の一部に固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化した吸着分解素子であり、この手段により、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子を、触媒成分の溶液を塗付して、乾燥、焼成するだけで上述の機能を有することができ、工程も簡単であり機能付加のための工数を減らすことができる。また、加熱装置などで再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。また、コロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。また、吸着素子に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0015】
また、本発明の吸着分解素子は、吸着剤を触媒成分の溶液に浸漬し、吸着剤上もしくは細孔の一部に固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化した、ガス吸着分解能力をもった吸着剤を作成し、これを吸着剤を担持した通気性のある吸着素子の通気面および通気の端部に含浸もしくは塗布などの方法によって添着することでえられる吸着分解素子であり、この手段により、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子に対し、新たな触媒担持吸着剤を一部に塗付するだけで、上述の機能を有することができ、工程も簡単であり機能付加のための工数を減らすことができる。また、加熱装置などで再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。また、コロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。
【0016】
また、本発明の吸着分解素子は、上述の吸着分解素子の吸着剤として、その細孔径、あるいは表面状態、あるいは結晶構造のうち少なくとも一つが異なる湿分を取るための吸湿用ゼオライトと臭い成分を取るための脱臭用ゼオライトとを用いたものであり、前述の脱臭用ゼオライトを触媒成分の溶液に浸漬し、ゼオライト上もしくは細孔の一部に触媒を固定し、乾燥、焼成することで触媒担持脱臭ゼオライトとし、少なくともこの触媒担持脱臭用ゼオライトと前記の吸湿用ゼオライトとで構成した吸着分解素子であり、脱臭用ゼオライト上に触媒を担持するため効率的に臭い分子を吸着し、触媒を活性化することで分解することができる。また、ゼオライトは臭い成分に対して吸着選択性があるため、狙ったにおいを吸着分解できる。また、吸湿ゼオライトをもちいた吸湿素子にたいし、前記の触媒担持脱臭ゼオライトをその通気端面に塗付した吸湿分解素子では、加熱装置などで湿分を脱着するために素子を加熱再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。
【0017】
また、本発明の吸着分解素子は、吸着剤のもつカチオンが、溶液中などでカチオン化した触媒と交換するイオン交換法をもちいて、触媒を吸着剤の構造内に取りこみ、これにより吸着剤そのものに触媒作用をもたせ、この触媒吸着剤をその構成の全てもしくは一部に用いた吸着分解素子である。なお、本発明では、イオン交換によって触媒機能を持たせた吸着剤を触媒吸着剤と呼ぶ。これにより吸着剤に触媒作用を簡単に持たせることができ、吸着剤に触媒作用を持たせることで効率よくガス成分を分解できる。また、吸着剤に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0018】
また、本発明の吸着分解素子は、ハニカム構造や発泡構造をはじめとする通気性構造をもった基材上に吸着剤を担持して作成した吸着素子をカチオン性の触媒成分の溶液に含浸して、吸着素子の吸着剤のカチオンと触媒がイオン化した触媒カチオンとをイオン交換することで、吸着素子の吸着剤の一部もしくは全てに触媒作用をもたせた吸着分解素子である。これにより従来からある吸着素子に触媒作用を簡単に持たせることができ、吸着剤に触媒作用を持たせることで効率よくガス成分を分解できる。また、吸着剤に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0019】
また、本発明の吸着分解素子は、吸着剤のもつカチオンが、溶液中などでカチオン化した触媒と交換するイオン交換法をもちいて、触媒を吸着剤の構造内に取りこみ、これにより吸着剤そのものに触媒作用をもたせた触媒吸着剤を作成し、これを吸着剤を担持した通気性のある吸着素子の通気面および通気の端部に含浸もしくは塗布などの方法によって添着することでえられる吸着分解素子であり、この手段により、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子に対し、新たな触媒吸着剤を一部に塗付するだけで、上述の機能を有することができ、工程も簡単であり機能付加のための工数を減らすことができる。また、加熱装置などで再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒吸着剤担持面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明の吸着分解素子は、その細孔径、あるいは表面状態、あるいは結晶構造のうち少なくとも一つが異なる湿分を取るための吸湿用ゼオライトと臭い成分を取るための脱臭用ゼオライトとの二つの吸着剤を用いたものであり、イオン交換法によって脱臭用ゼオライトのもつ第1カチオンと触媒がイオン化した第2カチオンとを交換して触媒脱臭ゼオライトとし、少なくともイオン交換した触媒脱臭用ゼオライトと前記の吸湿用ゼオライトとで構成される吸着分解素子である。脱臭用ゼオライトに触媒機能をもたせることによって、効率的に臭い分子を吸着し、脱臭用ゼオライトを加熱などにより活性化することで分解することができる。
【0021】
また、吸湿用ゼオライトのみを担持した湿分吸着用の素子である吸着素子に前記の触媒脱臭ゼオライトをその通気端面に塗付して、吸着分解素子も作成することができる。そして、加熱装置などで湿分を脱着するために吸着分解素子を加熱再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。
【0022】
また、本発明の吸着分解素子は、触媒の成分が、マンガン、コバルト、銅、スズ、チタン、ニッケル、銀、金、白金、パラジウムのいずれかひとつもしくは複数からなり、その形態は単体もしくは酸化物とすることで、前記の触媒溶液から作成でき、その酸化物も、焼成による酸化によって得ることができる。これにより、各温度域や対象ガスの分解に際しては、それぞれ適当な触媒を選ぶことができる。また、その際には複数の触媒成分を選択しても良いし、複数の触媒成分を同時に固定化することで、新たな活性を得ることができる。
【0023】
また、本発明の吸着分解素子は吸着剤がゼオライトもしくはシリカゲルもしくは酸化アルミナもしくは活性炭もしくはシリカアルミナのいずれかひとつもしくは複数であり、無機の吸着剤を用いることで、触媒によって吸着剤自体が劣化することが無い。また、ゼオライトやシリカアルミナなど、中心金属を持つ吸着剤では、カチオン交換によって触媒機能を持った吸着剤を作ることも可能である。
【0024】
また、本発明の吸着分解素子は、その触媒を付着させた部位がわかるようにすることで、本体筐体内で加熱装置と反対側のみに触媒成分を付着した吸着剤を配置したい場合も、その識別に用いることができる。これによって、均一に触媒材料が付着しているかわかる。また、識別の方法としては触媒と共に無機もしくは有機の顔料を用いて、その顔料と触媒を同時に吸着剤に固定化もしくは添着することで、可能である。無機系の顔料を使用すれば、焼成や加熱装置の熱を受けても、変化しにくいので色がかわらず、触媒による分解も起こらないのでよい。一方で有機顔料であれば、加熱装置によって焼けたり、触媒成分によって分解され、焼失、分解により失色もしくは変色するため、その触媒の効果や、適当な温度が触媒にかけられているかの確認に用いることができる。
【0025】
また、本発明の空調装置では、その本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる前述の吸着分解素子を有し、その吸着分解素子が加熱空気の通気下流側のみに触媒を担持した端面が配されているようにしたもので、これによって、加熱装置から輻射熱が与えられる場合などの高温を触媒が受けて劣化してしまい、分解能力が低下していくのをなくすことが可能である。なお、この触媒の担持される下流側領域は、加熱空気温度を測定し、加熱空気が素子の通気穴の上流から下流に行く際に温度が低下していくが、低下した温度で触媒を劣化させない温度になる程度の下流領域にするのが望ましい。この際、加熱装置の熱量、装置の材料や吸着素子が吸った水分などによって温度は変化するので、その決定にはさまざまな条件がある。
【0026】
また、本発明の空調装置では、筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる吸着分解素子とを有し、その吸着分解素子を、その処理空気の通気下流側端面に触媒を担持した端面が配されているようにした空調装置であり、これによって吸着剤が吸着した際に発生する吸着熱によって触媒が低温ながら活性化し、再生の加熱空気があたっているときだけでなく、吸着の場合であってもガスを分解する効果が得られる。ただし、前述の課題にあるように、加熱装置からの熱で触媒が劣化しないように触媒の種類を選定し、加熱装置の配置をすることが必要である。
【0027】
また、本発明の空調装置では、その本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされるガス吸着素子とを有し、その加熱空気と処理空気が平行に流れる構成に配置され、その吸着分解素子を、その処理および、加熱空気の通気下流側に加熱空気が触媒を劣化させない温度に下がる下流領域範囲のみに触媒を担持した端面が配されているようにしたもので、これによって上記の空調装置のようなメリット以外にも吸着剤が吸着した際に発生する吸着熱によって触媒が低温ながら活性化し、再生の加熱空気があたっているときだけでなく、吸着の場合であってもガスを分解する効果が得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば比表面積の大きい状態で触媒を担持したガス分解効率の良い吸着分解素子を提供できる。
【0029】
また、加熱装置の熱を受けても触媒が劣化しにくい吸着分解素子を提供できる。
【0030】
また、その製造工程で多くの量を作成しても触媒の担持量が変化していない吸着分解素子を提供できる。
【0031】
また、本発明によれば上記吸着分解素子を用いて、触媒劣化によるガス分解能力の低下の少ない空調装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の請求項1記載の発明は、吸着剤を触媒成分の溶液に漬けて、吸着剤上もしくは細孔の一部に固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化した、ガス吸着分解能力をもった吸着剤を作成し、この吸着剤をその構成の全てもしくは一部に用いた吸着分解素子であり、コロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。また、吸着剤に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできるという作用を有する。
【0033】
また、本発明の請求項2記載の発明は、ハニカム構造や発泡構造をはじめとする通気性構造をもった基材上に吸着剤を担持して作成した吸着素子を、触媒成分の溶液に漬けて、吸着剤上もしくは細孔の一部に触媒を固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化した吸着分解素子であり、コロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。また、吸着素子に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。また、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子を、触媒成分の溶液に漬け、乾燥、焼成するだけで上述の機能を有することができ、工程も簡単に作成することができる。
【0034】
また、本発明の請求項3記載の発明は、ハニカム構造や発泡構造をはじめとする通気性構造をもった基材上に、吸着剤を担持して作成した吸着素子の、通気と接触する端部に、触媒成分の溶液を、1回もしくは複数回塗布し、触媒成分を端部に染み込ませ、その吸着剤上および細孔壁の一部に固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい触媒粒子を吸着剤上に固定化した吸着分解素子であり、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子を、触媒成分の溶液に漬け、乾燥、焼成するだけで上述の機能を有することができ、工程も簡単に作成することができる。また、本体内では加熱装置などをもちいて再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。また、コロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。また、吸着素子に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0035】
本発明の請求項4記載の発明は、吸着剤を触媒成分の溶液に漬けて、吸着剤上もしくは細孔の一部に固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい粒子の触媒粒子を吸着剤上に固定化した、ガス吸着分解能力をもった吸着剤を作成し、吸着剤を担持して作成した吸着素子の、通気と接触する端部に、触媒成分の溶液を、1回もしくは複数回塗布もしくは含浸して作成した吸着分解素子であり、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子を加工するため、工程も簡単に作成することができる。また、本体内で加熱装置などを用いて再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。また、コロイダルシリカなどのバインダ成分を用いないで吸着剤上に触媒を固定化できるため、バインダ成分に覆われずまた非常に小さい触媒粒子のためその比表面積が大きくなり吸着ガスとの接触効率も良いため、高効率で吸着剤が吸着した臭い成分を分解することができる。
【0036】
本発明の請求項5記載の発明は吸着剤として特にその細孔径や表面状態、結晶構造がことなる湿分を取るための吸湿用ゼオライトと、一方で臭い成分を取るための脱臭用ゼオライトを用いるといった複数の吸着剤をもちいたガス分解吸着用素子であり、脱臭用ゼオライトによって、狙ったにおいを吸着できるといった作用がある。
【0037】
なお、脱臭用ゼオライトに対して触媒成分の溶液に漬けて、吸着剤上もしくは細孔の一部に触媒を固定し、必要ならば水洗し、乾燥、焼成することで、非常に小さい粒子の触媒粒子を吸着剤上に固定化し、この触媒担持済み脱臭用ゼオライトと前記の吸湿用ゼオライトを混合して特に脱臭用ゼオライトの吸ったガス成分を分解できるようにした、吸着分解素子としても良く、臭い成分をより効率よく分解できる。なお、触媒担持済みの脱臭ゼオライトは、吸着分解素子内に吸湿用ゼオライトと混合しても良いし、前述のように素子の通気端面に塗付するなどの加工でも良い。
【0038】
本発明の請求項6記載の発明は、吸着剤のもつカチオンが、溶液中などでカチオン化した触媒と交換するイオン交換法をもちいて、触媒を吸着剤の構造内に取りこみ、これにより吸着剤そのものに触媒作用をもたせ、この触媒吸着剤をその構成の全てもしくは一部に用いた吸着分解素子である。これにより吸着剤に触媒作用を簡単に持たせることができ、吸着剤に触媒作用を持たせることで効率よくガス成分を分解できる。また、吸着剤に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0039】
本発明の請求項7記載の発明は、吸着剤を担持した通気穴を有する通気素子の吸着剤をイオン交換によって触媒を吸着剤の構造内に取りこみ、これにより吸着剤そのものに触媒作用をもたせることで、従来からある吸着素子に触媒作用を簡単に持たせることができ、吸着剤に触媒作用を持たせることで効率よくガス成分を分解できる。また、吸着剤に対し、一定の量の触媒液を用いることで、触媒量を一定にすることができ、製造工程中での組成変化が少なくできる。
【0040】
本発明の請求項8記載の発明は、イオン交換法によってその構造内に触媒を取り込んだ触媒吸着剤を作成し、吸着剤を担持して作成した吸着素子の、通気と接触する端部に、触媒吸着剤の分散液を含浸もしくは塗布して作成した吸着分解素子であり、従来から用いられている除湿素子などの吸着素子に塗付するという工程であり簡単に作成することができる。また、本体内で加熱装置などで再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒担持面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。
【0041】
本発明の請求項9記載の発明は吸着剤を特にその細孔径、あるいは表面状態、あるいは結晶構造のうち少なくとも一つが異なる湿分を取るための吸湿用ゼオライトと臭い成分を取るための脱臭用ゼオライトを用いるといった複数の吸着剤を用いた吸着分解素子であり、脱臭用ゼオライトによって、狙ったにおいを吸着できるといった作用がある。
【0042】
なお、脱臭用ゼオライトに対して触媒成分のカチオンと脱臭用ゼオライトのもつカチオンとをイオン交換することで、脱臭用ゼオライトそのものに触媒作用をももたせ、この触媒交換済み脱臭用ゼオライトと前記の吸湿用ゼオライトを混合して特に脱臭用ゼオライトの吸ったガス成分を分解できるようにした吸着分解素子として、臭い成分をより効率よく吸着分解できる。なお、触媒交換済みの脱臭ゼオライトは、素子内に除湿ゼオライトと混合しても良いし、素子の通気端面に塗付するなどの加工でも良い。
【0043】
また、吸湿用ゼオライトを用いた吸着素子にたいし、前記の触媒脱臭ゼオライトをその通気端面に塗付した吸着分解素子では、加熱装置などで湿分を脱着するために吸着分解素子を加熱再生する時の温度が触媒を劣化させるほどの温度であるときは、加熱装置側の反対に触媒塗付面を配置することで、触媒に達するまでに加熱空気の温度を下げることで、触媒の劣化を防ぐことができる。
【0044】
本発明の請求項10記載の発明は触媒の成分を、マンガン、コバルト、銅、スズ、チタン、ニッケル、銀、金、白金、パラジウムのいずれかひとつもしくは複数からなる、単体もしくは酸化物とした吸着分解素子であり、前記の触媒の溶液から作成でき、その酸化物も、焼成による酸化によって得ることができる。これにより、各温度域や対象ガスの分解に際しては、それぞれ適当な触媒を選ぶことができる。また、その際には複数の触媒成分を選択しても良いし、複数の触媒を同時に固定化することで、新たな活性を得ることができる。
【0045】
本発明の請求項11記載の発明は吸着剤がゼオライトもしくはシリカゲルもしくは酸化アルミナもしくは活性炭もしくはシリカアルミナのいずれかひとつもしくは複数である吸着分解素子であり、無機系の吸着剤を用いることで、触媒によって吸着剤自体が劣化せず用いることができる。
【0046】
本発明の請求項12記載の発明は上記触媒つきの吸着分解素子において触媒成分付着および塗布されている部分が識別できるようにした吸着分解素子であり、本体筐体内で加熱装置と反対側のみに触媒成分を付着した吸着剤を配置したい場合など、触媒付着面を限定したいときに、その識別に用いることができる。
【0047】
本発明の請求項13記載の発明は前記触媒付着部位の識別方法として触媒成分を含む溶液中に有機もしくは無機の顔料の両方もしくは片方を加え、度触媒と顔料を同時に添着することを特徴とした吸着分解素子であり、本体筐体内で加熱装置と反対側のみに触媒成分を付着した吸着剤を配置したい場合など、触媒付着面を限定したいときに、その識別に用いることができ、無機系の顔料を使用すれば、焼成や加熱装置の熱を受けても、変化しにくいので色がかわらず、触媒による分解も起こらないのでよい。一方で有機顔料であれば、加熱装置によって焼けたり、触媒成分によって分解され、焼失、分解により失色もしくは変色するため、その触媒の効果や、適当な温度が触媒にかけられているかの確認に用いることができる。なお、触媒の溶液に入れるだけではなく、その他に、触媒担持済みもしくは触媒カチオンと吸着剤カチオンの交換済みの吸着剤の分散液に混ぜて、塗付、含浸など行なっても、触媒担持部分を識別することができる。
【0048】
本発明の請求項15記載の発明は筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる前述の吸着分解素子を有したもので、処理ゾーンにおいては、臭い成分を吸着し、再生ゾーンにおいては吸着した臭いを触媒成分が活性化することで分解する。いったん吸着剤に吸着したにおい成分も、再生加熱によって脱着し、触媒と接触反応することで分解することができる。
【0049】
本発明の請求項16および17記載の発明は、筐体内に少なくとも送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる前述の吸着分解素子を有し、その吸着分解素子が加熱空気の通気下流側のみに触媒を担持した端面が配されているようにした空調装置であり、これによって、加熱装置から輻射熱が与えられる場合などの高温を触媒が受けて劣化してしまい、分解能力が低下していくのをなくすことが可能である。
【0050】
なお、この触媒の担持される下流側領域は、加熱空気温度を測定し、加熱空気が素子の通気穴の上流から下流に行く際に温度が低下していくが、低下した温度で触媒を劣化させない温度になる程度の下流領域にする。なお、このような判断がつきにくい場合は、再生空気の下流の通気穴端部での温度が触媒の活性温度範囲であることを確認し、もしくはそういった温度で利用できる触媒を選定し、素子の通気穴端部のみもしくは端部とその付近の面のみに、ローラーや刷毛、スプレーなどを用いて塗付すればよい。
【0051】
本発明の請求項18記載の発明は、筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされるガス吸着素子とを有し、その吸着分解素子を、その処理空気の通気下流側端面に触媒を担持した端面が配されているようにした空調装置であり、これによって吸着剤が吸着した際に発生する吸着熱によって触媒が低温ながら活性化し、再生の加熱空気があたっているときだけでなく、吸着の場合であってもガスを分解する効果が得られる。ただし、前述の課題にあるように、加熱装置からの熱で触媒が劣化しないように触媒の種類を選定し、加熱装置の配置をすることが必要である。
【0052】
本発明の請求項19記載の発明は、筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされるガス吸着素子とを有し、その加熱空気と処理空気が平行に流れる構成に配置され、その吸着分解素子を、その処理および、加熱空気の通気下流側に加熱空気が触媒を劣化させない温度に下がる下流領域範囲のみに触媒を担持した端面が配されているようにした空調装置であり、これによって請求項15および16に記載の発明の空調装置のようなメリット以外にも吸着剤が吸着した際に発生する吸着熱によって触媒が低温ながら活性化し、再生の加熱空気があたっているときだけでなく、吸着の場合であってもガスを分解する効果が得られる。
【0053】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0054】
(実施の形態1)
図1に示すようなフローチャート1により、金属触媒の溶液に吸着剤を浸し、これを必要であれば洗浄し、ろ過、乾燥後、焼成し吸着剤の表面および細孔壁に触媒を固定化する。このときの条件として、カチオン性の金属触媒の場合は、担体となる吸着剤の表面の塩基点に金属カチオンが吸着するために、アルカリ性の水溶液中で反応させるのが望ましい。また、焼成条件としてはシンタリングなどに注意して各吸着剤、触媒によって調整する。
【0055】
そして、フローチャート1では示していないが、素子の基材上に触媒担持吸着剤を担持する。その構成は図2に示したようになり、素子基材2上に吸着剤3と触媒4とをバインダ5を介して固定化した吸着分解素子6が得られる。図3の従来素子7の概念図のものと比較して、吸着剤、触媒ともにその表面はバインダに覆われず、広くなるため、ガス分解効率が向上した素子が得られる。
【0056】
なお、このときの触媒溶液としてはマンガン、コバルト、銅、スズ、チタン、ニッケル、銀、金、白金、パラジウムの溶液が望ましく、この触媒材料の化合物としての水酸化物や炭酸塩、硝酸塩などから水溶液とするのが望ましい。
【0057】
なお、吸着剤としてはゼオライトもしくはシリカゲルもしくは酸化アルミナもしくは活性炭もしくはシリカアルミナのいずれかひとつもしくは複数であり、無機の吸着剤を用いることで、触媒によって吸着剤自体が劣化することが無いので望ましい。
【0058】
なお、この触媒溶液に微量の無機もしくは有機もしくはその両方の顔料を加えておくことで、その触媒担持が出来た吸着剤がどこに存在しているかがわかり、触媒付着部位を特定できるので、顔料を混合するのが望ましい(図示せず)。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態1では、素子の基材上に触媒担持吸着剤を担持したが、その吸着剤全てが触媒担持したものでなくとも良い。とくに、選択的ににおい成分を吸着しやすいゼオライト(脱臭ゼオライト)のような吸着剤上に触媒を担持し、一方で水分をとくに吸着しやすいゼオライト(吸湿ゼオライト)をともに素子上に担持することで、臭い成分をとくに吸着分解することができる素子を提供できる(図示せず)。なお、吸着剤の吸湿用ゼオライトは、有効細孔径が0.10nmから0.60nmのもので水分子の吸着が有利に進み、さらに好ましくは0.20nmから0.35nmのものがのぞましい。また、脱臭用としては特に脱臭ゼオライトを用いることができ、脱臭用ゼオライトではとくに疎水性に表面を加工されたハイシリカゼオライトが望ましく、有効細孔径が0.35nm以上で有機分子を取り込むのに十分な細孔径を持ったゼオライトを用いることで、吸湿用の吸着剤に比べて、脱臭能力が向上する。なお、使用者が望む吸着ガスがある場合は、そのガスにあった脱臭剤を選択するべきである。
【0060】
また、複数の吸着剤を混合して担持するのではなく、前述のような例では、吸湿ゼオライトを基材上に担持した吸湿素子の、触媒担持の脱臭ゼオライトは、素子の通気端部にのみ付着するように、塗付しても良い(図示せず)。こうすることで、脱臭ゼオライトによる吸湿ゼオライトの吸湿の妨害が防ぐことができる。また、この場合触媒担持脱臭ゼオライを塗付するためにコロイダルシリカもしくは珪酸ソーダもしくは珪酸リチウムを接着成分として、触媒担持脱臭ゼオライトに対し固形分重量比で5〜20%の量混合した分散液で塗付するのが望ましい。また、この触媒担持脱臭ゼオライトを塗付する際に顔料を加えて触媒担持ゼオライトの塗付部分を区別してわかりやすくすると、触媒担持ゼオライトの塗付が均一に行えるか確認できるため望ましい。
【0061】
(実施の形態3)
実施の形態1および2ではフローチャート1に従って素子を作成したが、図3に示すフローチャート8に従って吸着分解素子を作成し、これを金属触媒の液に浸して吸着分解素子を作成しても良い。なお、このときの触媒、吸着剤、顔料については実施の形態1に記載のものと同様のものであることが同様の理由で望ましい。
【0062】
そして図5のように、それによって得られた吸着分解素子9をギアなどの回転手段10で回転させる。これにより、吸着分解素子9は、回転によって処理ゾーンと再生ゾーンを交互にとおる。処理ゾーンではファン11などにより処理空気12が吸着分解素子9を通り、吸着分解素子9が処理空気12中の水分を吸着する。再生ゾーンでは、ヒーターなどの加熱手段13をとおって吹き出る再生空気14によって吸着分解素子9の吸着剤に吸着した水分が脱着し、脱着水分15は熱交換器16によって冷却され、飽和して水滴17となって回収される。こうして、吸着再生を繰り返す除湿空調機とできる。そして、処理空気12中の水分と共に空気中の臭い成分を吸着分解素子9が吸着し、再生ゾーンでは再生空気14に温められ、活性化した触媒が吸着した臭い成分を分解する。また、吸着剤から脱着した臭い成分も、触媒に接触することで分解できる。
【0063】
(実施の形態4)
実施の形態3では吸着分解素子9を金属触媒の液に吸着素子を含浸することによって作成した。しかしながら、加熱手段13から、その輻射熱を含め、与えられる熱が高温の場合、高温とは熱が触媒に影響を及ぼす温度、例えば触媒を肥大化させその表面積を減らしたりもしくは金属の酸化状態を変化させるような温度であるが、そういった場合触媒は劣化し、その効果が薄まってしまう場合がある。
【0064】
この問題を改善するため、素子全てを含浸するのではなく、図6および図7のように吸着素子18の通気方向19に対してその一部の触媒含浸部20を触媒溶液21に浸すことによって、素子の一部に触媒機能を付与しても良い。そして、素子の通気方面に対して片方のみを触媒処理し、触媒処理面22を再生空気14が通過する下流側に配する構成にするのが望ましい(図8)。また、加熱手段13からの距離によって、その通気温度は変化するため、触媒が劣化しないだけの素子の通気方向深さを決定するのが望ましい。
【0065】
(実施の形態5)
実施の形態4ではフローチャート8に従って、吸着素子を触媒溶液にその一部を含浸し、触媒の劣化を防ぐようにしたが、通気温度の測定ができず、どの程度触媒担持部位を作るか判定しにくい場合もある。そのような場合は、再生空気の下流の通気穴端部での温度が触媒の活性温度範囲であることを確認し、もしくはその温度範囲で活性化する触媒を選定し、図8にしめすように吸着素子23の通気穴24の端部25のみもしくは端部25とその付近の通気面のみに、ローラーや刷毛、スプレーなどを用いて塗付してもよい。
【0066】
(実施の形態6)
実施の形態5では触媒溶液を吸着素子の端面に塗付したが、もちろん、実施の形態2のような脱臭ゼオライト上に触媒を担持したものを、上述のように吸着素子23の通気穴24の端部25のみもしくは端部25とその付近の通気面のみに、ローラーや刷毛、スプレーなどを用いて塗付してもよい。
【0067】
(実施の形態7)
実施の形態1乃至6では触媒を吸着剤の細孔壁および表面に固定化する方法を用いたが、吸着剤もしくは吸着素子を触媒溶液に含浸することで、図10に示すように吸着剤カチオン(Na+)26と触媒カチオン(M+)27とをイオン交換法によってイオン交換することで吸着剤に触媒効果を付与してもよく、そのための吸着剤としてはゼオライト、シリカ、シリカアルミナ、イオン交換樹脂、酸化処理活性炭が望ましい。
【0068】
(実施の形態8)
実施の形態3および4では、図5および図8のように処理空気12と再生空気14は反対向きであったが、図11に示すように、処理空気28と再生空気29が同方向の流れであっても良い。また、実施の形態2や4から6で述べたような通気方向の片面を触媒処理した吸着分解素子30を触媒処理面31が加熱装置32と反対側になるように配置することによって、処理空気28が通る処理ゾーンでは、吸着分解素子30が空気中の水分を吸着することによって、吸着熱を発生し処理空気が温められる。そのため、通過した臭い成分を吸着熱で活性化した触媒が分解することができる。また、再生空気29が通る再生ゾーンでも、吸着剤が吸着した臭いが脱着し、再生空気29によって活性化した触媒が脱着した匂いを分解することができる。
【0069】
(実施の形態9)
実施の形態3および4では空調装置の吸着分解素子は回転し、処理ゾーンと再生ゾーンを交互に入れ替わる構成であったが、吸着分解素子が、処理ゾーンの通風路と再生ゾーンの通風路を交換機などを介して移動して入れ替わる構成であっても良い。
【0070】
(実施の形態10)
実施の形態1乃至8において、吸着剤もしくは吸着素子への触媒の固定化と吸着剤のカチオンと触媒カチオンの交換による吸着剤に触媒効果を付与した触媒吸着剤とを別々に述べているが、吸着剤表面への固定化と吸着剤へのイオン交換が起こっても良い。ただし、その場合、イオン交換、固定化ともに各条件で触媒の添着状態が変化するため反応条件を管理する必要がある。その条件しては、触媒溶液への浸漬時間、触媒溶液の濃度、触媒溶液の温度、触媒溶液のpHなどがある。
【産業上の利用可能性】
【0071】
除湿空調機に用いられる吸湿フィルタに触媒による分解機能を持たせることで、空気を除湿しながら同時に臭い分解を行うことができる機器として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1の吸着分解素子の製造のフローチャート
【図2】本発明の実施の形態1の吸着分解素子の断面の概念図
【図3】本発明の実施の形態1の従来の吸着分解素子の断面の概念図
【図4】本発明の実施の形態3の吸着分解素子の製造のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態3の吸着分解素子を使った除湿空調機の概略図
【図6】本発明の実施の形態4の吸着素子の概略図
【図7】本発明の実施の形態4の吸着素子の触媒溶液への含浸の概念図
【図8】本発明の実施の形態4の吸着分解素子を使った除湿空調機の概略図
【図9】本発明の実施の形態5の吸着分解素子の端面部の説明図
【図10】本発明の実施の形態6の吸着剤中のカチオンと触媒カチオンとのイオン交換の概念図
【図11】本発明の実施の形態8の吸着分解素子を使った除湿空調機の概略図
【図12】従来の吸着素子を使った除湿空調機の概略図
【図13】従来の触媒を担持した吸着素子の断面の概略図
【符号の説明】
【0073】
1 フローチャート
2 素子基材
3 吸着剤
4 触媒
5 バインダ
6 吸着分解素子
7 従来素子
8 フローチャート
9 吸着分解素子
10 回転手段
11 ファン
12 処理空気
13 加熱手段
14 再生空気
15 脱着水分
16 熱交換器
17 水滴
18 吸着素子
19 通気方向
20 触媒含浸部
21 触媒溶液
22 触媒処理面
23 吸着素子
24 通気穴
25 端部
26 吸着剤カチオン(Na+
27 触媒カチオン(M+
28 処理空気
29 再生空気
30 吸着分解素子
31 触媒処理面
32 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔壁を備えた吸着剤に複数もしくは単一の触媒成分溶液をしみこませてその細孔壁の一部に固定し、乾燥、焼成して活性成分を担持した触媒担持吸着剤で全てもしくは一部を構成したことを特徴とする吸着分解素子。
【請求項2】
吸着剤を担持した通気穴を有する吸着素子の一部もしくは全てを、複数もしくは単一の触媒成分溶液に含浸し、触媒成分を吸着素子の吸着剤にしみこませてその細孔壁の一部に固定し、乾燥、焼成して活性成分を担持した請求項1記載の吸着分解素子。
【請求項3】
吸着剤を担持した通気穴を有する吸着素子の通気に接触する端部に、触媒成分溶液を塗布し、触媒成分をしみこませてその細孔壁の一部に固定し、乾燥、焼成して活性成分を担持した請求項1記載の吸着分解素子。
【請求項4】
吸着剤に複数もしくは単一の触媒成分溶液をしみこませてその細孔壁の一部に固定し、乾燥、焼成して活性成分を担持した触媒担持吸着剤を、吸着剤を担持した通気穴を有する吸着素子の通気に接触する部位に塗布したことを特徴とする請求項1記載の吸着分解素子。
【請求項5】
吸着剤としてその細孔径、あるいは表面状態、あるいは結晶構造のうち少なくとも一つが異なる湿分を取るための吸湿用ゼオライトと臭い成分を取るための脱臭用ゼオライトとを用い、脱臭用ゼオライトを触媒成分の溶液に浸漬し、ゼオライト粒子表面上もしくは細孔の一部に触媒を固定し、乾燥、焼成することで触媒担持脱臭ゼオライトとし、少なくともこの触媒担持脱臭用ゼオライトと前記の吸湿用ゼオライトとで構成されることを特徴とする請求項1または4に記載の吸着分解素子。
【請求項6】
イオン交換法によって触媒をその構造内に取り込んだ触媒吸着剤で全てもしくは一部を構成した吸着分解素子。
【請求項7】
吸着剤を担持した通気穴を有する通気素子に担持されている吸着剤の一部もしくは全てを、イオン交換法によって触媒をその構造内に取り込んだ触媒吸着剤で全てもしくは一部を構成した請求項6記載の吸着分解素子。
【請求項8】
イオン交換法によって触媒をその構造内に取り込んだ触媒吸着剤を、吸着剤を担持した通気穴を有する吸着素子の通気に接触する端部に塗布したことを特徴とする請求項6記載の吸着分解素子。
【請求項9】
吸着剤として、その細孔径、表面状態、結晶構造のうち少なくとも一つが異なる湿分を取るための吸湿用のゼオライトと臭い成分を取るための脱臭用のゼオライトとを用い、イオン交換法によってゼオライトのもつ第1カチオンと触媒がイオン化した第2カチオンとを交換して触媒脱臭ゼオライトとし、少なくともイオン交換した触媒脱臭用ゼオライトと前記の吸湿用ゼオライトとで構成されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の吸着分解素子。
【請求項10】
触媒の成分が、マンガン、コバルト、銅、スズ、チタン、ニッケル、銀、金、白金、パラジウムのいずれかひとつもしくは複数からなり、その形態が単体もしくは酸化物であることを特徴とした請求項1乃至9のいずれかに記載の吸着分解素子。
【請求項11】
吸着剤がゼオライトもしくはシリカゲルもしくは酸化アルミナもしくは活性炭もしくはシリカアルミナのいずれかひとつもしくは複数であることを特徴とした請求項1乃至10のいずれかに記載の吸着分解素子。
【請求項12】
触媒成分が付着および塗布されている部分が識別できるようにした請求項1乃至11記載の吸着分解素子。
【請求項13】
識別方法として触媒成分を含む溶液中に有機もしくは無機の顔料の両方もしくは片方を加え、触媒と顔料を同時に吸着剤もしくは吸着素子に添着することを特徴とした請求項12記載の吸着分解素子。
【請求項14】
請求項1乃至13記載の吸着分解素子の製造方法。
【請求項15】
本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置と、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる請求項1乃至13のいずれかに記載の吸着分解素子を配した空調装置。
【請求項16】
本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置とを備え、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる請求項1乃至13のいずれかに記載の吸着分解素子を有し、前記吸着分解素子に対し、その再生空気の通気下流側に、加熱空気が触媒を劣化させない温度に下がる下流領域範囲のみに触媒を担持した端面が配されるようにを配したことを特徴とする空調装置。
【請求項17】
本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置とを備え、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる請求項1乃至13のいずれかに記載の吸着分解素子を有し、その再生空気の通気下流側の端面にのみ触媒を担持していることを特徴とした空調装置。
【請求項18】
本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置とを備え、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる請求項1乃至13のいずれかに記載の吸着分解素子を有し、その処理空気の通気下流側の端面にのみ触媒を担持していることを特徴とした空調装置。
【請求項19】
本体筐体内に少なくとも吸着分解素子に水分を含んだ空気を送るための送風機と吸着分解素子が含んだ水分を放出するための再生用の加熱装置とを備え、回転もしくは入れ替え交換して外部からの処理空気と加熱装置からの再生空気に交互にさらされる請求項1乃至13のいずれかに記載の吸着分解素子を有し、その加熱空気と処理空気が平行に流れる構成であり、前記吸着分解素子に対してその処理および加熱空気の通気下流側に加熱空気が触媒を劣化させない温度に下がる下流領域範囲のみに触媒を担持した端面が配されるようにを配したことを特徴とする空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−93504(P2008−93504A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274922(P2006−274922)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】