説明

吸着剤を利用した水分除去、冷熱の回収を行う、低温液化VOC回収方法におけるVOC回収率の向上方法

【課題】 本発明は、吸着剤を利用し、水分の除去に続く低温VOC凝縮による回収率が高いVOC回収方法を提供する。
【解決手段】VOC、水分を含有する空気を加圧して水分選択型吸着剤吸着塔に導入して水分を除去した後に、低温でVOCを液化回収し、VOC回収後の低温乾燥空気から冷熱を回収した後、乾燥空気を向流パージガスとして使用して、水分を吸着した水分選択型吸着剤吸着塔を減圧して水分を離脱することによるVOC回収方法において、水分吸着塔の再生工程の初期で水分吸着剤から脱着する共吸着VOCを、設置したVOC吸着塔で吸着除去し、残る時間で塔後方から向流に空気を流して吸着したVOCを脱着して、吸着工程の水分吸着塔入口に還流し、VOC回収率の向上を図る。使用するVOC吸着剤は、高シリカゼオライト、メソポーラスシリカ、活性炭を単独または併用してなるVOC吸着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤を利用した、揮発性有機化合物(以下VOC)と水分を含む排ガス中の水分除去、VOCを低温液化回収する方法に関し、特に塗料、インキ、接着剤などを取扱う施設から排出される排ガス中に含まれるVOCの分離・回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VOCを含有する排ガス処理に於いて最も頻繁に採用されている方法は、排ガスに含まれるVOCを高シリカゼオライトが充填された吸着塔に供給してVOCを吸着除去し、VOCを吸着した高シリカゼオライト吸着塔に高温熱風を供給してVOCを高温脱着させ、減容濃縮して、脱着されたVOCを触媒燃焼で酸化分解する(TSA−VOC+触媒燃焼)方法である。
【0003】
又今後普及が予想されるものとしては米国環境保護局(EPA)が提案している強誘電体(チタン酸バリウム等)の充填塔において強誘電体表面で延命放電を行い、ここにVOC含有ガスを供給して酸化分解する充填塔プラズマ(Packed Bed Plasma)処理法がある。
【0004】
しかしながら、上記の方法はVOCの処理に対し一定の性能を示しているが、(TSA−VOC+触媒燃焼)では装置の複雑さと操作の煩雑さによるコスト低減の限界があり、充填塔プラズマ処理では処理可能な対象VOC及びVOC除去率に限界があり今後のVOC排出規制に対応できない懸念がある。
【0005】
VOC含有ガスにオゾンを加えてVOCの均一気相反応による酸化分解をすることも考えられるが、低濃度VOCに対するオゾン酸化反応が遅いこと、未反応オゾンの処理が煩雑なこと、酸化剤として使用するオゾンの製造コストが高価なことから実用化には至っていない。又オゾン酸化反応の反応効率の向上のためVOCを高シリカゼオライトに吸着して除去した後、VOCを吸着した高シリカゼオライトにオゾンを添加してゼオライト中で共吸着したVOCとオゾンの酸化反応の高効率化を計ることが提案されている。この方法においてオゾン反応の高効率化は実現するが、オゾンの製造コストが高価な点については依然未解決である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−172804号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「活性炭の応用技術」(立本英機,阿部郁夫監修)圧力スイング法(PSA)によるガス分離の概要の項p.233−238、(株)テクノシステム 泉 順著 (平成12年8月)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような状況を踏まえて本発明者は、上記特許文献1に提案したように、水分選択型吸着剤を用いてVOCと水分を含有する気体から水分のみを吸着除去した後、VOCを低温液化して回収し、VOC回収後の低温空気から蓄熱式熱交換器もしくはプレートフィン式熱交換器を使用して冷熱を回収し、連続的な水分除去・VOC回収に成功した。しかしながら、上記冷熱回収方法を用いたVOC液化回収方法において、水分選択型吸着剤吸着塔において、吸着剤に水分吸着と同時に、VOCが共吸着し、低温液化凝縮器に供給されることがなく、再生工程で水分が脱着する時に、VOCも脱着して、系外に排出され、VOC回収率を低下する要因となっていることが確認された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記特許文献1に提案したように、本発明者等は、水分選択型吸着剤を充填した水分吸着塔を二つ設けて、交互に吸脱着操作を行い、加えて水分吸着塔の出口に蓄熱材充填塔を設け、一方の水分吸着塔に於いて、VOC及び水分を含有する空気を加圧して水分吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤に吸着させてVOCと分離し、続いて流過する低水分濃度のVOC含有ガスを低温に冷却された蓄熱材充填塔に導入して蓄熱材と接触させて冷却し、さらに最寒冷温度になるように冷却器で冷却してVOCを液化回収し、流過する低温、低VOC濃度、低水分濃度の空気を蓄熱材充填塔に導入し蓄熱材と接触させて冷熱を回収して昇温し、続いて室温に昇温した低VOC濃度、低水分濃度の空気を減圧して他方の水分吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤から脱着させて水分吸着剤を再生する方法において、吸着工程に水分が破過する前に塔を切り替えて吸着工程と脱着工程を繰り返し行い、水分除去、冷熱回収を行うことにより連続的なVOCの低温液化回収方法の成立することを既に見いだしているが、この方法では、図1に示すように、水分選択型吸着剤吸着塔において水分除去時にVOCが水分とともに共吸着して、VOC回収のための低温凝縮器に回収されず、水分選択型吸着剤吸着塔の再生時に水分とともにVOCが脱着し、高度なVOC回収の障害になっていることが判明した。本発明に使用している水分吸着剤が分子篩型吸着剤であることから、VOCが吸着剤の結晶表面に吸着されているものと思われた。このため発明者らは図1に示すように、1塔が吸着工程、他塔が再生工程にある水分選択型吸着剤吸着塔の入口、出口、再生工程のVOC濃度の経時変化を計測した結果、VOCは再生直後の比較的短い時間に高濃度に脱着することが確認された。このため発明者らは、脱着工程出口にVOC吸着塔を設置し、高濃度VOCが流過する時間帯だけ、VOC吸着塔によりVOCを吸着除去して処理ガスを系外に放出し、吸着したVOCは残りの時間を使って、外部気体(通常は空気)をVOC吸着塔に向流に供給しVOCを脱着させ、脱着したVOCを吸着工程の水分選択型吸着剤吸着塔の入口に循環してVOCを回収することで、外部へのVOCの放出を最小とするVOCの液化回収方法を考案するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、下記の1〜4の発明を提供する:
1.少なくとも2塔式の水分吸着塔の1塔に於いて、VOC及び水分を含有する空気を加圧して水分選択型吸着剤を充填した吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤に吸着させてVOCと分離し、続いて最寒冷温度になるように流過する低水分濃度のVOC含有空気を冷却器で冷却してVOCを液化回収し、流過する低VOC濃度、低水分濃度の空気を減圧して、他方の水分吸着塔に導入して吸着剤と接触させて、先に吸着された水分を吸着剤から脱着させて水分吸着剤を再生し、吸着工程に水分が破過する前に塔を切り替えて吸着工程と脱着工程を繰り返し行う、連続的に水分除去とVOC低温液化回収方法において、VOC吸着剤を充填したVOC吸着塔を水分脱着工程出口に設置して、水分脱着工程開始後の一定時間内に水分吸着剤から水分とともに脱離するVOCを含む脱着ガスをVOC吸着塔に通過させ共存するVOCを吸着除去し、それ以外の時間にVOC吸着塔に外部気体を向流に流過して吸着したVOCを脱着し、脱着VOC含有気体を吸着工程の水分吸着塔の入口に戻して外部へのVOCの放出を最小とするVOCの液化回収方法。(請求項1)
2.請求項1において、水分選択型吸着剤吸着塔の再生工程に水分とともに流過するVOCの吸着剤として、ゼオライト窓径がVOC分子直径よりも大きく且つ、SiO/Al比が20以上の高シリカゼオライト、ミクロ孔がVOC分子直径よりも大きな活性炭、ミクロ孔がVOC分子直径よりも大きく且つ、SiO/Al比が20以上のメソポーラスシリカを単独または併用してなるVOC吸着剤を使用して、上記吸着剤を充填したVOC吸着塔を水分脱着工程の出口に設置し、水分脱着工程開始後の一定時間内に脱着ガスをVOC吸着塔に通過させて共存するVOCを吸着除去し、それ以外の時間にVOC吸着塔に外部気体を向流に流過して吸着したVOCを脱着し、脱着したVOC含有気体を吸着工程の水分選択型吸着剤吸着塔の入口に戻して外部へのVOCの放出を最小とするVOCの液化回収方法。(請求項2)
3.前記の方法において、VOC吸着塔に使用するVOC吸着剤が、ハニカムに成型さることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載のVOC低温液化回収方法。(請求項3)
4.前記のVOC吸着工程と再生工程において、VOC吸着工程に於ける1サイクルの処理ガス量のうちのVOC吸着塔を流過するガス量G1VOC(mN/サイクル)、吸着圧力をPa(kPa)、吸着したVOCを外部気体で脱着して水分選択型吸着剤吸着塔に還流するVOC再生工程に於ける塔内圧力をPd(kPa)として、VOCを除去して還流するのに必要な一サイクルのパージ空気量をGp(mN/サイクル)において、Gp = K×Pd/Pa×G1VOCとして、係数Kを1.1以上とする請求項1および2、3のいずれかに記載のVOC液化回収方法。(請求項4)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水分選択型吸着剤吸着塔を用いたVOC回収法においては、水分の吸着除去工程、脱着工程に続いて、水分とともに共吸着したVOCが水分脱着工程に水分とともに脱着し、VOC回収のための低温凝縮器に回収されず、高度なVOC回収の障害になっていることを考慮し、脱着工程出口にVOC吸着塔を設置し、高濃度VOCが流過する時間帯だけ、VOCを吸着除去して処理ガスを系外に放出し、吸着したVOCは残りの時間を使って、外部気体(通常は空気)を使用して向流に供給し、脱着したVOCは吸着工程の水分選択型吸着剤吸着塔の入口に循環してVOCを回収することで、外部へのVOCの放出を最小とし、少なくとも供給したVOCの90%以上を液化回収する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来法のVOC液化回収装置の水分吸着塔入口、出口、再生工程出口、液化チラーユニット出口のVOC濃度の経時変化を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施態様の第1ステップを示す図である。
【図3】本発明の第一の実施態様の第2ステップを示す図である。
【図4】本発明のVOC液化回収装置の装置入口、出口、液化チラーユニットの出口のVOC濃度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の水分吸着、VOC液化回収方法について図面を用いて具体的に説明する。
【0014】
本発明において用いるVOC吸着剤は、ゼオライト窓径がVOC分子直径よりも大きく且つ、SiO/Al比が20以上の高シリカゼオライト、ミクロ孔がVOC分子直径よりも大きな活性炭、ミクロ孔がVOC分子直径よりも大きく且つ、SiO/Al比が20以上のメソポーラスシリカを単独または併用してなるVOC吸着剤であり、発明者らは、非特許文献1に記述している。
【0015】
図2は、本発明の方法におけるVOC回収工程の概略図である。また図2の方法を実施するシーケンステーブルを表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1に示すように、本発明方法のVOC回収工程は、4ステップから構成される。
【0018】
VOCの液化回収に於ける第1ステップの操作法を、図2を使用して説明する。
第1ステップ(水分吸着a塔‐吸着工程、水分吸着b塔―向流パージ工程、VOC吸着塔―VOC吸着工程)
VOC、水分を含有する空気が流路1、ブロワー2からバルブ3aを通じて水分/VOC選択性の高い水分吸着剤5の充填された水分吸着塔4aに、吸着圧力約110〜150kPaで供給されると、水分のみが選択的に吸着されてVOCを含有する室温、超乾燥状態の空気が塔後方から流過する。この時の塔4aの前方には水分吸着帯6が形成され、塔後方には共吸着したVOCの吸着帯7が形成され、水分吸着塔4aから流出した気体がバルブ8aを通じてプレートフィン熱交換器9に供給される。この時、プレートフィン熱交換器9の高温側では、水分吸着塔の4aから温度25℃、水分濃度100ppm、VOCとして5,000ppmのイソプロビルアルコール(IPA)を含有する気体が5mN/hの流量で供給され、一方低温側では温度−60℃、水分濃度100ppm、VOCとしてのIPAが100ppmまでに除去された低温空気が供給され、この低温空気の冷熱が回収されることから、上記室温のVOC含有乾燥空気と熱交換して、VOC含有乾燥空気は冷却される。流路10から流過した低温、VOC含有乾燥空気はチラーユニット11で最寒冷に冷却されて、流路12からVOCが液化回収される。VOCが液化回収により除去された低温、超乾燥空気は流路13からプレートフィン熱交換器9に供給され、乾燥空気は昇温する。昇温した乾燥空気はバルブ8bを通じて水分吸着剤5の充填された水分吸着塔4bに向流に供給される。ここで吸着塔4bは、バルブ3bを通じて真空ポンプ14で排気されるため、再生圧力約50〜80kPaの低圧で吸着された水分は脱着して水分吸着剤が再生される。このとき、脱着工程の初期に高濃度のVOCが流過することが、回収VOC損失の要因となっている。このため、本発明では、第1ステップでは、水分吸着塔4bから流過するVOCを流路15、バルブ16を通じて、VOC吸着剤17を充填したVOC吸着塔18に供給して、VOCを吸着除去して処理後の空気は流路20から系外に放出される。なおVOC吸着剤17のVOC吸着帯19が形成され前方から後方に移動する。なお水分を主成分として含有する流路は点線で、VOCを主成分として含有する流路は実線で、空気のみの流路は1点鎖線で、VOC、水分とも含有する流路は2点鎖線で表す。
【0019】
第2ステップ(水分吸着a塔−吸着工程、水分吸着b塔−向流パージ工程、VOC吸着塔向流再生VOC循環)
第2ステップの操作方法を図3で表す。水分吸着a塔−吸着工程、プレートフィン熱交による冷熱回収、水分吸着b塔−向流パージ工程は、ステップ1と同様である。しかし水分吸着塔4bから流過するVOC濃度は1,000ppm以下に低下するのでVOC吸着塔18でのVOC吸着は停止し、水分吸着塔から流過する処理ガスは、図3に示すように流路15、バルブ21から低濃度VOC含有気体として系外に放出される。VOCが吸着されたVOC吸着塔18のVOC吸着剤17は、バルブ22を開くことで流路20からパージ空気が取り込まれ、VOC吸着帯19は塔後方から前方に移動し脱着したVOCは循環流路23からブロワー1の入口に循環して再度VOC低温液化処理に供されることとなる。
【0020】
第3〜4ステップでは、第1〜2ステップと同じ操作をa塔とb塔を変更して実施する。第1〜4ステップで構成されるVOC回収率の向上を図った、本PSA−VOCのシーケンス表を表1に示す。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
第1ステップ(水分吸着a塔−吸着工程、水分吸着b塔−向流パージ工程、VOC吸着塔‐VOC吸着工程)
図2に於いてIPA5,000ppm、水分2.5vol%を含有する空気を流路1、ブロワー2からバルブ3aを通じて水分/IPA選択性の高い水分吸着剤5の充填された水分吸着塔4aに、吸着圧力約110〜150kPaで供給されると水分のみが選択的に吸着されてIPAを含有する室温(25℃)、超乾燥状態(水分濃度10ppm以下、D.P.−60℃以下)の空気が塔後方から流過し、バルブ8aを通じてプレートフィン式熱交換器9流路10を通じて供給される。水分吸着剤は候補吸着剤粉末を担持したハニカム(嵩密度0.4g/cm,プレート間ピッチ2mm、プレート厚0.2mm)である。この時、プレートフィン式熱交換器9高温側から供給されたIPA5,000ppm含有、25℃の乾燥空気は、プレートフィン式熱交換器9の低温側からのIPA除去後の−60℃の低温乾燥空気と熱交換して、高温側は25℃から−50℃に冷却され、低温側は−60℃から20℃に昇温する。流路10から流過した−50℃、IPA5,000ppm含有乾燥空気はチラーユニット11で最寒冷の−65℃に冷却されて、流路12から回収率80%程度で液化回収される。未回収のVOC1,000ppmを含有する温度−65℃、水分濃度10ppm以下(D.P.−60℃以下)の超乾燥空気は流路13からプレートフィン式熱交換器9にバルブ8bを通じて供給され、乾燥空気は20℃に昇温する。昇温した乾燥空気はバルブ8bを通じて水分吸着剤5の充填された水分吸着塔4bに向流に供給される。ここで吸着塔4bは、バルブ3bを通じて真空ポンプ14で排気されるため、再生圧力約50〜80kPaの低圧で吸着された水分は脱着して再生される。
【0022】
減圧条件下、乾燥空気を向流に流すことで吸着剤を再生する操作を向流パージと呼ぶ。吸着圧力をPa(kPa)、再生圧力をPd(kPa)として向流パージ率Kは、K = Pa/Pdで定義される。本実験結果によるとKは少なくとも1.1以上でないと出口水分濃度を10ppm以下に保つことは難しい。
【0023】
ここでIPAのような親水性のVOCの吸着では図1の従来法で示したように、VOCが水分吸着剤5に共吸着して、脱着工程の初期に水分とともに脱着し、VOC回収率低下の要因となっている。このため、本発明では、第1ステップでは、水分吸着塔4bから流過するVOCを200秒間、流路15、バルブ16を通じて、VOC吸着剤17を充填したVOC吸着塔18に供給して、VOCを吸着除去して処理後の空気は流路20から系外に放出される。なおVOC吸着剤17のVOC吸着帯19が形成され前方から後方に移動する。このときの水分吸着工程の入口IPA濃度、出口IPA濃度、チラーユニット出口のIPA濃度、脱着工程の水分吸着塔出口濃度の経時変化を図4に示す。図1と比較することにより、脱着工程で流過したVOCはVOC吸着剤17により除去されるため、処理後のガスは流路20から系外に放出してかまわない。
【0024】
第2ステップ(水分吸着a塔−吸着工程、水分吸着b塔−向流パージ工程、VOC吸着塔−向流再生VOC循環)
水分吸着塔4aの水分吸着剤5の水分吸着、プレートフィン式熱交換器での高温、高濃度IPA含有空気と低温、低濃度IPA含有空気の熱交換、チラーユニットでのIPAの液化回収、水分吸着塔4bの水分吸着剤5の再生は、ステップ1と同一である。ここで水分吸着剤4bからの共吸着IPAの脱着が終了しているため、IPAが吸着されたVOC吸着塔18のVOC吸着剤17は、バルブ22を開くことで流路20からパージ空気が取り込まれ、VOC吸着帯19は塔後方から前方に移動し脱着したIPAは、流路21から流過し、循環流路23からブロワー1の入口に循環して再度IPA低温液化処理に供されることとなる。このため、ステップ1で吸着されたIPAは1,600秒間、IPAを含有しない外部空気を使用して向流にパージされて除去され、水分吸着塔入口に還流される。
【0025】
ここで第1〜2ステップと同じ操作をa塔とb塔を変更して、第3〜4ステップで実施する。
【実施例1】
【0026】
水分吸着剤として最も性能の高いゼオライトK−Aをハニカムに成型して用いて、VOC吸着塔にVOC吸着剤としてUSYハニカム吸着剤(SiO/Al比100のパウダーをライナー間ピッチ2mm、ライナー厚み0.1mm、山−山間ピッチ1.6mm、嵩密度0.45g/cm)を使用し、水分吸着剤再生工程の初期で水分吸着塔から流過するVOCをVOC吸着塔で除去する時のVOC処理ガス量と再生パージガス量、VOC吸着塔の再生圧力変更時のIPA回収率の関係を調べた。結果を表2−1と表2−2に示す。
【0027】
【表2−1】

【0028】
【表2−2】

【0029】
VOC吸着塔を設置しない場合のIPA回収率は84%にとどまるが、VOC吸着塔の設置によってIPAの回収率は95%以上に達成している。ただし吸着したVOCの脱着が定常的に維持されるためには、再生パージ用空気量Gpと、VOC処理のためにVOC吸着塔を流過するガス量G1VOCとして、Gp = K×Pd/Pa×G1VOCとして、の式における係数Kが1.1を超えることが必要なことがわかる。このため再生パージ用空気量の増大とVOC吸着塔の真空減圧脱着が有効なことがわかる。
【実施例2】
【0030】
次に、水分吸着剤として最も性能の高いゼオライトK−Aをハニカムに成型して用いて、VOC吸着塔にVOC吸着剤として(1)USY(超安定Y型ゼオライト)、SiO/Al比100、(2)シリカライト、SiO/Al比200、(3)USM(超安定モルデナイト) 、SiO/Al比100、(4)β、SiO/Al比100、(5)メソポーラスシリカ、SiO/Al比∞について、各原料のパウダーをライナー間ピッチ2mm、ライナー厚み0.1mm、山−山間ピッチ1.6mm、かさ密度0.45g/cmのハニカムに成型し、実施例1のRUN1と同一条件でVOC回収及びVOC循環を行った時の回収VOCの種類とVOC吸着剤の関係を調べた。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
分子直径の小さなIPAではシリカライトを用いる場合に最も高いVOC回収率が得られる。ゼオライト系の吸着剤はすべて良好な性能を示すが、メソポーラスシリカの一種であるMCM−41では、吸着剤窓径が大きすぎるためか、かえってIPAの回収率は低下している。分子直径が0.5nmに近いトルエンでは、シリカライトによる吸着量が低下し、それ以外の窓径が0.6nmを超える吸着剤ではMCM−41を含めて良好な性能を示す。ヘプタコサフルオロトリブチルアミンは分子直径が1nmを超えており、ゼオライト系はすべて吸着性能を示さず、メソポーラスシリカに属するMCM−41のみが良好な性能を示す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
このように、VOCガスを含む各種排気ガスから水分を吸着除去しVOCを回収することができ、水分吸着塔再生工程に流過するVOCを塔後方部に設置したVOC吸着塔で吸着し、水分吸着塔入口へ再循環することで外部に排出するVOCを最小に抑制する。また、回収されたVOCは殆ど劣化しておらず、VOCを低コスト、高効率に回収し、完全再利用することができる。VOCを取扱い広範な産業分野に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
流路 1、10、12、15
ブロワー 2、
バルブ 3a、3b、8a、8b、16
水分吸着塔 4a、4b
水分吸着剤 5
水分吸着帯 6
VOC吸着帯 7
プレートフィン式熱交換器 9
チラーユニット 11
真空ポンプ 14
VOC吸着剤 17、
VOC吸着塔 18、
VOC吸着帯 19、
流路 20
【0035】
図3の付番は、図2と同一番号は同一のものを示す。
流路 21、
バルブ 22、
循環流路 23

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2塔式の水分吸着塔の1塔に於いて、VOC及び水分を含有する空気を加圧して水分選択型吸着剤を充填した吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤に吸着させてVOCと分離し、続いて最寒冷温度になるように流過する低水分濃度のVOC含有空気を冷却器で冷却してVOCを液化回収し、流過する低VOC濃度、低水分濃度の空気を減圧して、他方の水分吸着塔に導入して吸着剤と接触させて、先に吸着された水分を吸着剤から脱着させて水分吸着剤を再生し、吸着工程に水分が破過する前に塔を切り替えて吸着工程と脱着工程を繰り返し行う、連続的に水分除去とVOC低温液化回収方法において、VOC吸着剤を充填したVOC吸着塔を水分脱着工程出口に設置して、水分脱着工程開始後の一定時間内に水分吸着剤から水分とともに脱離するVOCを含む脱着ガスをVOC吸着塔に通過させ共存するVOCを吸着除去し、それ以外の時間にVOC吸着塔に外部気体を向流に流過して吸着したVOCを脱着し、脱着VOC含有気体を吸着工程の水分吸着塔の入口に戻して外部へのVOCの放出を最小とするVOCの液化回収方法。
【請求項2】
請求項1において、水分選択型吸着剤吸着塔の再生工程に水分とともに流過するVOCの吸着剤として、ゼオライト窓径がVOC分子直径よりも大きく且つ、SiO/Al比が20以上の高シリカゼオライト、ミクロ孔がVOC分子直径よりも大きな活性炭、ミクロ孔がVOC分子直径よりも大きく且つ、SiO/Al比が20以上のメソポーラスシリカを単独または併用してなるVOC吸着剤を使用して、上記吸着剤を充填したVOC吸着塔を水分脱着工程の出口に設置し、水分脱着工程開始後の一定時間内に脱着ガスをVOC吸着塔に通過させて共存するVOCを吸着除去し、それ以外の時間にVOC吸着塔に外部気体を向流に流過して吸着したVOCを脱着し、脱着したVOC含有気体を吸着工程の水分選択型吸着剤吸着塔の入口に戻して外部へのVOCの放出を最小とするVOCの液化回収方法。
【請求項3】
前記の方法において、水分脱着工程の出口に設置するVOC吸着塔に使用するVOC吸着剤が、ハニカムに成型されることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載のVOC低温液化回収方法。
【請求項4】
前記のVOC吸着工程と再生工程において、VOC吸着工程に於ける1サイクルの処理ガス量のうちのVOC吸着塔を流過するガス量G1VOC(mN/サイクル)、吸着圧力をPa(kPa)、吸着したVOCを外部気体で脱着して水分選択型吸着剤吸着塔に還流するVOC再生工程に於ける塔内圧力をPd(kPa)として、VOCを除去して還流するのに必要な一サイクルのパージ空気量をGp(mN/サイクル)において、Gp = K×Pd/Pa×G1VOCとして、係数Kを1.1以上とする請求項1および2、3のいずれかに記載のVOC液化回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−17930(P2013−17930A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151691(P2011−151691)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(506233117)吸着技術工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】