説明

吸音性衝撃吸収体

【課題】衝撃吸収体の使用場所によって最適な衝撃荷重が異なり、しかも吸音性が求められることがあることから、吸音性を有し、使用場所に応じて衝撃荷重を調整して製造することが容易な吸音性衝撃吸収体の提供を目的とする。
【解決手段】連続気泡体11を、独立気泡体15間に設けて吸音性衝撃吸収体10を構成した。連続気泡体11は、硬質ポリウレタンフォームからなる独立気泡体15をインサートとして、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体が好ましい。独立気泡体15は、吸音性衝撃吸収体10の厚み方向を高さ方向とするリブ形状や柱状として、吸音性衝撃吸収体10の片面10Aにおける35〜65%の部分に、埋設や積層によって設けるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性衝撃吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に用いられている衝撃吸収体として、硬質ポリウレタンフォームからなるものや、ポリオレフィン系樹脂を格子状リブとしたものや、ビーズ樹脂成形体などが一般的に用いられている。またそれ以外のものとして、軟質ポリウレタンフォームのチップと硬質ポリウレタンフォームのチップからなる混合物をバインダーで結合させた混合チップ成形体や、硬質ポリウレタンフォームを所定形状にモールド成形したものなどがある。
【0003】
また、衝撃吸収体は、使用場所などによって最適な衝撃荷重(圧縮応力)が異なっており、最適な衝撃荷重に調整して製造されたものが好ましい。
【0004】
前記硬質ポリウレタンフォームからなる衝撃吸収体においては、衝撃荷重を調整する方法として、材料自体の配合を変更する方法と、形状を変更する方法がある。しかし、配合変更による場合は、低衝撃荷重(低圧縮応力)のものが得難く、また形状変更による場合は、衝撃吸収体の形状が複雑になって、モールド発泡成形時に発泡原料がモールド(成形型)内のキャビティに完全に充満し難くなり、良好な衝撃吸収体が得られないおそれがある。しかも、硬質ポリウレタンフォームは、通常の場合独立気泡の割合が高く、内部に音が進入し難い。そのため、硬質ポリウレタンフォームからなる衝撃吸収体は、吸音性に劣っており、衝撃吸収性と吸音性の両方が求められる用途には適さなかった。
【0005】
それに対し、前記ポリオレフィン系樹脂の格子状リブからなる衝撃吸収体は、リブ間を音が通過するため、吸音性を発揮することが難しかった。また、前記ビーズ樹脂成形体からなる衝撃吸収体は、独立気泡体からなるため、吸音性を発揮することが難しく、加えて衝撃吸収性が硬質ウレタンフォームより劣るものであった。
【0006】
また、前記軟質ポリウレタンフォームのチップと硬質ポリウレタンフォームのチップからなる混合チップ成形体からなる衝撃吸収体は、軟質ポリウレタンフォーム自体が連続気泡を有し、しかもチップ間に隙間が形成されることから吸音性を発揮することができるが、衝撃荷重を調整するのが難しかった。
【特許文献1】特開2001−342284号公報
【特許文献2】特開2000−6741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、吸音性を有し、衝撃荷重を調整して製造するのが容易な吸音性衝撃吸収体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、連続気泡体が独立気泡体間に設けられていることを特徴とする吸音性衝撃吸収体に係る。
【0009】
請求項2の発明は、連続気泡体に独立気泡体が埋設又は積層されていることを特徴とする吸音性衝撃吸収体に係る。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記連続気泡体が平板状からなると共に、前記平板状の連続気泡体に前記独立気泡体が埋設又は積層されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記吸音性衝撃吸収体の片面における35〜65%の部分に前記独立気泡体を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記独立気泡体が、前記吸音性衝撃吸収体の厚み方向を高さ方向とするリブ形状とされて平行に複数設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記独立気泡体が、前記吸音性衝撃吸収体の厚み方向を高さ方向とする柱状とされて平行に複数設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか一項において、前記連続気泡体が、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなり、前記独立気泡体が硬質ポリウレタンフォームからなることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7において、前記連続気泡体が、前記独立気泡体としての硬質ポリウレタンフォームをインサートとして、前記軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1乃至3の発明によれば、連続気泡体によって吸音性が得られ、また独立気泡体によって良好な衝撃吸収性が得られる。しかも独立気泡体の衝突側表面積を調整することによって、吸音性衝撃吸収体の衝撃荷重を調整することが可能である。
【0017】
請求項4の発明によれば、吸音性衝撃吸収体の片面における35〜65%の部分に独立気泡体を設けたことにより、吸音性に関しては連続気泡体により、また衝撃吸収性については独立気泡体が効果を発揮する。
【0018】
請求項5の発明によれば、独立気泡体が、吸音性衝撃吸収体の厚み方向を高さ方向とするリブ形状とされて平行に複数設けられていることにより、リブ形状からなる独立気泡体のサイズや間隔、本数等を変化させることで衝撃荷重の調整を容易に行うことができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、独立気泡体が、吸音性衝撃吸収体の厚み方向を高さ方向とする柱状とされて平行に複数設けられていることにより、柱状からなる独立気泡体のサイズや間隔、本数等を変化させることで衝撃荷重の調整を容易に行うことができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、連続気泡体が、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなり、独立気泡体が硬質ポリウレタンフォームからなることにより、軟質ポリウレタンフォームのチップ間に隙間が形成されるため、吸音性をより高めることができ、しかも硬質ポリウレタンフォームにより良好な衝撃吸収性が得られる。
【0021】
請求項8の発明によれば、連続気泡体が、独立気泡体としての硬質ポリウレタンフォームをインサートとして、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなることにより、軟質ポリウレタンフォームと硬質ポリウレタンフォームの一体化が容易かつ確実となり、しかも軟質ポリウレタンフォームのチップ間に隙間が形成されるため、吸音性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明における第1実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び1−1断面図、図2は本発明における第2実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び2−2断面図、図3は本発明における第3実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び3−3断面図、図4は本発明における第4実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び4−4断面図、図5は本発明における第5実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び5−5断面図、図6は本発明における第6実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び6−6断面図、図7は本発明における第7実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び7−7断面図である。
【0023】
図1に示す第1実施形態の吸音性衝撃吸収体10は、連続気泡体11が、独立気泡体15間に設けられた構成からなる。
【0024】
本発明に言う連続気泡体とは、ASTM D 2856に準拠して求められる独立気泡率が30%未満の構成物を言う。さらには、独立気泡率が10%以下のものが、前記連続気泡体11としてより好ましい。前記連続気泡体11は、適宜の連続気泡体とされるが、特には、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体が、吸音性などの点から好ましい。より好ましくは、独立気泡体15をインサートとして、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体である。前記チップ成形体からなる連続気泡体11は、具体的には、独立気泡体15を、前記吸音性衝撃吸収体10の形状に応じて形成されたモールドのキャビティに所要本数セットし、次いで、軟質ウレタンフォームのチップとバインダーの混合物をキャビティ内に充填し、閉型して加熱等によってバインダーを硬化させることにより得られ、またこれによって吸音性衝撃吸収体10が得られる。前記チップは平均粒径3〜15mmのものが好ましい。平均粒径が3mmより小さくなると、チップ間隔が狭くなりすぎて音が進入し難くなり、それによって吸音性が低下する。それに対して、平均粒径が15mmより大になるとチップ間隔が大きくなりすぎて音がチップ間を通過し易くなり、この場合も吸音性が低下する。バインダーは、公知のチップ成形品の成形に使用されているものを用いることができる。例えば、湿分硬化型のウレタンプレポリマーあるいはクルード・メチレンジフェニルジイソシアネート(クルード・MDI)等を用いることができる。連続気泡体11の厚みは、適宜決定されるが、5mm以上が好ましい。5mm未満の場合、吸音性衝撃吸収体10が吸音性を発揮し難くなる。なお、前記連続気泡体11における厚みの上限は特に制限されるものではなく、前記吸音性衝撃吸収体10の使用場所等に応じて決定される。また、チップ成形体からなる連続気泡体11の密度は、40〜400kg/mが好ましい。40kg/m未満の場合、チップ成形体を成形する際に、モールド内へのチップの充填不良を生じてチップ成形体に欠肉を生じるおそれがあり、それに対して400kg/mを超えると、独立気泡体15をインサートとして連続気泡体11をチップモールド成形によって成形しようとする際に、独立気泡体15が変形するおそれがある。
【0025】
本発明に言う独立気泡体とは、ASTM D 2856に準拠して求められる独立気泡率が、30%以上の構成物をいう。さらには、独立気泡率が50%以上のものが、前記独立気泡体15としてより好ましい。前記独立気泡体15は、適宜の独立気泡体が用いられるが、特には硬質ポリウレタンフォームが、衝撃吸収性などの点から好ましい。この第1実施形態における独立気泡体15は、硬質ポリウレタンフォームのリブ形状からなる。リブ形状は、前記吸音性衝撃吸収体10の厚み方向をリブの高さ方向とするものからなる。また、リブ形状からなる独立気泡体15は、前記吸音性衝撃吸収体10の両面10A,10Bを貫通し、かつ複数本平行に設けられている。さらに、この第1実施形態では、前記吸音性衝撃吸収体10の両面10A,10Bにおいて、前記連続気泡体11と前記独立気泡体15が面一とされている。また、前記独立気泡体15は、前記吸音性衝撃吸収体10の片面10Aにおける35〜65%の部分に設けられるのが好ましい。35%未満の場合、前記吸音性衝撃吸収体10において独立気泡体15の部分が少なくなって、独立気泡体15による衝撃吸収性が悪くなり、それに対して65%より大の場合、前記連続気泡体11の部分が少なくなって良好な吸音性を得ることができなくなる。前記35〜65%の範囲で、独立気泡体15の割合を変化させることにより、吸音性を損なうこと無く前記吸音性衝撃吸収体10の衝撃荷重(圧縮応力)を調整することができる。なお、独立気泡体15として用いる硬質ウレタンフォームは、密度35〜100kg/mのものが好ましい。
【0026】
図2に示す第2実施形態の吸音性衝撃吸収体20は、平板状の連続気泡体21に、吸音性衝撃吸収体20の片面20A側からリブ形状の独立気泡体25が埋設され、吸音性衝撃吸収体20の反対側の面20Bでは、前記連続気泡体21の表面よりも内側に前記独立気泡体25が位置している。前記連続気泡体21は、前記独立気泡体25をインサートとして軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなる。独立気泡体25は、第1実施形態と同様に硬質ポリウレタンフォームからなる。
【0027】
図3に示す第3実施形態の吸音性衝撃吸収体30は、片面30Aにおいて連続気泡体31の表面から独立気泡体35が外方へ突出しており、その他は第1実施形態の吸音性衝撃吸収体10と同様の構成である。前記独立気泡体35は、前記吸音性衝撃吸収体30の片面30Aにおける35〜65%の部分に設けられるのが好ましい。なお、この実施形態のように、前記片面30Aが凹凸形状からなる場合には、片面30Aの投影面積に対して35〜65%の範囲で前記独立気泡体35が設けられる。符号30Bは、前記片面30Aとは反対側の面である。
【0028】
図4に示す第4実施形態の吸音性衝撃吸収体40は、片面40Aにおいて連続気泡体41の表面から独立気泡体45が外方へ突出しており、その他は第2実施形態の吸音性衝撃吸収体20と同様である。符号40Bは、前記片面40Aとは反対側の面である。
【0029】
なお、前記第1乃至第4実施形態においては、独立気泡体15〜45が連続気泡体11〜41の両端まで設けられているが、連続気泡体11〜41の両端まで設けられないもの、すなわち連続気泡体11〜41の外周が枠形状に残っているものでもよい。
【0030】
図5に示す第5実施形態の吸音性衝撃吸収体50は、独立気泡体55が、吸音性衝撃吸収体50の厚み方向を高さ方向とする柱状とされて平板状の連続気泡体51に、複数個互いに平行に埋設されている。前記連続気泡体51は、軟質ポリウレタンフォームのチップ成形体からなり、硬質ポリウレタンフォームからなる独立気泡体55をインサートとして形成された平板状のものである。前記独立気泡体55は連続気泡体51内を貫通し、吸音性衝撃吸収体50の片面50A及び反対側の面50Bで連続気泡体51と面一とされている。前記独立気泡体55の柱状は、筒状に限られず、三角柱あるいは四角柱等の角柱や、他の断面形状からなるものであってもよい。
【0031】
図6に示す第6実施形態の吸音性衝撃吸収体60は、片面60Aにおいて連続気泡体61の表面から独立気泡体65が外方へ突出しており、その他は第5実施形態の吸音性衝撃吸収体50と同様である。符号60Bは、前記片面60Aとは反対側の面である。
【0032】
図7に示す第7実施形態の吸音性衝撃吸収体70は、片面70Aにおいて、平板状の連続気泡体71にリブ状の硬質ポリウレタンフォームからなる独立気泡体75が互いに平行に複数積層されている。前記連続気泡体71は軟質ポリウレタンフォームのチップ成形体からなる。符号70Bは、前記片面70Aとは反対側の面である。
【0033】
前記第1〜第7実施形態の吸音性衝撃吸収体10〜70は、前記片面10A〜70Aにおける前記独立気泡体15〜75の面積割合を変化させることにより、衝撃荷重(圧縮応力)を調整することができる。具体的には、衝突面が所定の面積(例えば100cm)からなる衝突子を所定のスピード(例えば5.0m/s)で独立気泡体に衝突させた際の衝撃荷重(圧縮応力)が50Nとなる独立気泡体を用いて吸音性衝撃吸収体10〜70を構成する場合において、吸音性衝撃吸収体10〜70の衝撃荷重を30Nに調整するには、前記片面10A〜70Aにおいて前記独立気泡体15〜75を均一(例えば等間隔等)に位置させると共に、前記片面10A〜70Aの60%に前記独立気泡体15〜75を設けることにより、衝突子と衝突する独立気泡体15〜75の表面の面積を、衝突子に対する面積の60%とすればよい。このように面積を調整すれば、理論上、50N×0.6(60%)=30N、の衝撃荷重が得られる。
【実施例】
【0034】
本発明の実施例について具体的に示す。JIS K 6400:1997付属書図1にしたがい、圧縮面の面積が100cmからなる圧縮板により50mm/minのスピードで硬質ポリウレタンフォームを圧縮し、75%まで圧縮した時の圧縮−荷重(応力)曲線において、圧縮量に対して荷重(応力)が一定となる時の荷重(応力)が2750N/cmの硬質ポリウレタンフォーム(密度50kg/m)からなる独立気泡体Aと、圧縮量に対して荷重(応力)が一定となる時の荷重(応力)が4900N/cmの硬質ポリウレタンフォーム(密度70kg/m)からなる独立気泡体Bを、それぞれ幅10mm、厚み30mm、長さ300mmに裁断した。裁断した独立気泡体A,Bを用いて、以下の実施例1〜3及び比較例1〜4を作成した。
【0035】
実施例1は、300×300×35mmのキャビティを備え、前記キャビティの底面に幅10mm、深さ20mm(キャビティの深さ35mmの一部に含まれる)、長さ300mmのリブセット用溝が6mm間隔で平行に18本形成されたモールド(成形型)を用い、前記リブセット用溝に前記独立気泡体Aをセットしてキャビティ内に18本の独立気泡体Aを平行に配置し、平均粒径5mmの軟質ポリウレタンフォームのチップに湿熱硬化型のバインダー(イノアックコーポレーション製、品名:KF−1)を重量比20:80で混合させたチップ混合物を、チップ成形体が平均密度60kg/mとなるようにキャビティに180g投入し、蒸気を吹き付けてバインダーを硬化させることにより、図4と略同様の構成(独立気泡体の本数については図4と異なる)からなる厚み35mmの吸音性衝撃吸収体を製造した。得られた実施例1の吸音性衝撃吸収体は、連続気泡体(チップ成形体)の厚みが15mmであって、独立気泡体Aが連続気泡体の表面から20mm突出し、かつ片面の65%に独立気泡体Aが配設され、それにより圧縮板に対する独立気泡体Aの接触面積が65%とされている。
【0036】
実施例2は、300×300×35mmのキャビティを備え、前記キャビティの底面に幅10mm、深さ20mm(キャビティの深さ35mmの一部に含まれる)、長さ300mmのリブセット用溝が15mm間隔で平行に12本形成されたモールドを用い、前記リブセット用溝に前記独立気泡体Bをセットしてキャビティ内に12本の独立気泡体Bを平行に配置し、前記チップ混合物を、チップ成形体が平均密度60kg/mとなるようにキャビティに185g投入し、蒸気を吹き付けてバインダーを硬化させることにより、図4と略同様の構成(独立気泡体の本数については図4と異なる)からなる厚み35mmの吸音性衝撃吸収体を製造した。得られた実施例2の吸音性衝撃吸収体は、連続気泡体(チップ成形体)の厚みが15mmであって、独立気泡体Bが連続気泡体の表面から20mm突出し、かつ片面の35%に独立気泡体Bが配設され、それにより圧縮板に対する独立気泡体Bの接触面積が35%とされている。
【0037】
実施例3は、300×300×35mmのキャビティを備え、前記キャビティの底面に幅10mm、深さ20mm(キャビティの深さ35mmの一部に含まれる)、長さ300mmのリブセット用溝が10mm間隔で平行に15本形成されたモールドを用い、前記リブセット用溝に前記独立気泡体Bをセットしてキャビティ内に15本の独立気泡体Bを平行に配置し、前記チップ混合物を、チップ成形体が平均密度60kg/mとなるようにキャビティに182g投入し、蒸気を吹き付けてバインダーを硬化させることにより、図4と略同様の構成(独立気泡体の本数については図4と異なる)からなる厚み35mmの吸音性衝撃吸収体を製造した。得られた実施例3の吸音性衝撃吸収体は、連続気泡体(チップ成形体)の厚みが15mmであって、独立気泡体Bが連続気泡体の表面から20mm突出し、かつ片面の50%に独立気泡体Bが配設され、それにより圧縮板に対する独立気泡体Bの接触面積が50%とされている。
【0038】
なお、比較のために比較例1〜4の吸音性衝撃吸収体を製造した。比較例1は、300×300×35mmのキャビティを備えるモールドを用い、前記キャビティの底面に前記独立気泡体Aを27本、高さ20mm、厚み1mm、長さ300mmのフッ素樹脂製スペーサを介して平行に立設し、前記チップ混合物を、チップ成形体が平均密度60kg/mとなるようにキャビティに174g投入し、蒸気を吹き付けてバインダーを硬化させることにより、図4と略同様の構成(独立気泡体の本数については図4と異なる)からなる厚み35mmの吸音性衝撃吸収体を製造した。なお、スペーサは、独立気泡体A間についてはそれぞれ一枚配置し、両端の独立気泡体Aとキャビティ面間についてはそれぞれ2枚重ねて配置した。また、スペーサは最終的に吸音性衝撃吸収体から除去した。得られた比較例1の吸音性衝撃吸収体は、連続気泡体(チップ成形体)の厚みが15mmであって、独立気泡体Aが連続気泡体の表面から20mm突出し、かつ片面の95%に独立気泡体Aが配設され、それにより圧縮板に対する独立気泡体Aの接触面積が95%とされている。
【0039】
比較例2は、300×300×35mmのキャビティを備え、前記キャビティの底面に幅10mm、深さ20mm(キャビティの深さ35mmの一部に含まれる)、長さ300mmのリブセット用溝が40mm間隔で平行に6本形成されたモールドを用い、前記リブセット用溝に前記独立気泡体Bをセットしてキャビティ内に6本の独立気泡体Bを平行に配置し、前記チップ混合物を、チップ成形体が平均密度60kg/mとなるようにキャビティに187g投入し、蒸気を吹き付けてバインダーを硬化させることにより、図4と略同様の構成(独立気泡体の本数については図4と異なる)からなる厚み35mmの吸音性衝撃吸収体を製造した。得られた比較例2の吸音性衝撃吸収体は、連続気泡体(チップ成形体)の厚みが15mmであって、独立気泡体Bが連続気泡体の表面から20mm突出し、かつ片面の15%に独立気泡体Bが配設され、それにより圧縮板に対する独立気泡体Bの接触面積が15%とされている。
【0040】
比較例3は、独立気泡体Aを300×300×30mmとして連続気泡体を設けないものとし、比較例4は、同様に独立気泡体Bを300×300×30mmとして連続気泡体を設けないものとした。
【0041】
実施例1〜3及び比較例1〜4に対して、圧縮面の面積100cmからなる前記圧縮板をヘッドスピード50mm/minにして圧縮−荷重曲線を測定し、圧縮量に対して荷重が一定(圧縮−荷重曲線において平坦)になる時の荷重を確認した。図8は実施例及び比較例の圧縮−荷重曲線である。また、JIS A 1405 垂直入射吸音率法にて、500〜4000Hzの吸音率を測定した。結果を表1に示す。なお、表1において、衝撃荷重の理論値は、前記のように、圧縮板(衝突子)の面積に対する独立気泡体の圧縮面積(衝突面積)の割合から計算した値である。また、圧縮板に対する面積は、吸音性衝撃吸収体の片面における独立気泡体の割合に相当する。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1〜3は、圧縮板(衝突子)に対する硬質ポリウレタンフォーム(独立気泡体)の占める割合、すなわち吸音性衝撃吸収体の片面における硬質ポリウレタンフォーム(独立気泡体)の占める割合が35〜65%の間で、吸音性及び衝撃吸収性に優れていることがわかる。比較例1は、圧縮板(衝突子)に対する硬質ポリウレタンフォーム(独立気泡体)の占める割合が95%であることから、衝撃吸収性には優れるが、吸音性に劣ることがわかる。比較例2は、圧縮板(衝突子)に対する硬質ポリウレタンフォーム(独立気泡体)の占める割合が15%であることから、吸音性には優れるが、衝撃吸収性に劣ることがわかる。特に、比較例2では、荷重値が極端に低いため、この値で衝撃吸収性を満足するには、長いストロークが必要であり、底突きの可能性が高い。また、長いストロークは設計上の制限にもなる。比較例3及び4はいずれも吸音性に劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び1−1断面図である。
【図2】第2実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び2−2断面図である。
【図3】第3実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び3−3断面図である。
【図4】第4実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び4−4断面図である。
【図5】第5実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び5−5断面図である。
【図6】第6実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び6−6断面図である。
【図7】第7実施形態に係る吸音性衝撃吸収体の斜視図及び7−7断面図である。
【図8】実施例及び比較例の圧縮−荷重曲線である。
【符号の説明】
【0045】
10、20,30,40,50,60,70 吸音性衝撃吸収体
11,21,31,41,51,61,71 連続気泡体
15,25,35,45,55,65,75 独立気泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡体が独立気泡体間に設けられていることを特徴とする吸音性衝撃吸収体。
【請求項2】
連続気泡体に独立気泡体が埋設又は積層されていることを特徴とする吸音性衝撃吸収体。
【請求項3】
前記連続気泡体が平板状からなると共に、前記平板状の連続気泡体に前記独立気泡体が埋設又は積層されていることを特徴とする請求項2に記載の吸音性衝撃吸収体。
【請求項4】
前記吸音性衝撃吸収体の片面における35〜65%の部分に前記独立気泡体を設けたことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸音性衝撃吸収体。
【請求項5】
前記独立気泡体が、前記吸音性衝撃吸収体の厚み方向を高さ方向とするリブ形状とされて平行に複数設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の吸音性衝撃吸収体。
【請求項6】
前記独立気泡体が、前記吸音性衝撃吸収体の厚み方向を高さ方向とする柱状とされて平行に複数設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の吸音性衝撃吸収体。
【請求項7】
前記連続気泡体が、軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなり、前記独立気泡体が硬質ポリウレタンフォームからなることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の吸音性衝撃吸収体。
【請求項8】
前記連続気泡体が、前記独立気泡体としての硬質ポリウレタンフォームをインサートとして、前記軟質ポリウレタンフォームのチップをバインダーで結合したチップ成形体からなることを特徴とする請求項7に記載の吸音性衝撃吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−23423(P2006−23423A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200111(P2004−200111)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】