説明

周囲確認支援装置

【課題】ドライバーが車両の周囲を容易に確認することができるように支援する周囲確認支援装置を提供する。
【解決手段】車両の周囲を互いに異なる露出で撮像して、複数の画像を取得する。そして、その取得した画像内の対象物を画像認識する処理を行う。そして、各画像を比較して、各画像から対象物の画像認識の確度が良好な画像を選択し、その選択した画像を連結合成して、自車周囲合成画像を生成する。これにより、ダイナミックレンジが広く、視認性の高い画像を生成し、ドライバーによる車両周囲の確認を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラで撮像した車両周囲の画像を表示して乗員による車両周囲の確認を支援する周囲確認支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駐車場に駐車させる際に、路面に描かれた白線や他車両のない空間を認識することにより、自動的に駐車可能な駐車スペースを認識し、周囲の状況を察知した上で、駐車動作を支援する方法が知られている。
【0003】
例えば、車両の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、カメラからの画像を元に画像認識により駐車区画を検出する駐車区画検出手段と、操舵状態検出手段からの情報により車両の走行予想軌跡を算出する走行予想軌跡算出手段と、走行予想軌跡と駐車区画の情報により駐車を補助する情報を運転者に提供する報知手段を備えた駐車補助装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、近年、駐車動作時に車両と駐車区画との相対位置を容易に把握することを目的として、複数の車載カメラからの画像を合成し、車両を真上から撮像したのと同等の俯瞰画像を作成する技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、複数の車載カメラで撮像した複数の画像を合成することで、1枚の俯瞰画像を作成する際、カメラ間あるいは各車載カメラの画像内で明度およびコントラストが適切に調整できず、認識したい対象が視認性良く観測できないという問題がある。例えば、ある車載カメラでは綺麗で見やすい画像が撮像されている場合でも、別の車載カメラは太陽の方を向き、更に別の車載カメラは隣接車の影に入っているということが往々にしてある。そして、各車載カメラの向きは制御することができず固定されていることが多いため、道路のアップダウンや進行方向、天候の変化などでカメラ毎の被写体の状態が時々刻々と変わり、各車載カメラの撮像画像も時々刻々とその輝度や色バランスがバラバラに変化する。
【0006】
複数のカメラで撮像した画像を合成する技術として、例えば、特許文献2、3が知られている。特許文献2には、複数の車載カメラで撮像した画像の重複領域の輝度値平均を基準値として、階調補正を行う技術が示されている。特許文献2に示された技術では、車が移動しながら露光量の異なる画像を撮影し、撮影された複数の画像を俯瞰変換した後に合成することで、ダイナミックレンジが広く、視認性の高い画像を生成することを目的としている。
【0007】
また、複数カメラの撮像画像から、それぞれ露光量の適切な部分画像をとりだして画像を合成する技術が、特許文献3に開示されている。特許文献3に示された技術は、露光量の異なる複数の撮像装置を用いて同一の領域を撮影した複数の画像から、それぞれ露光量が適切な画像をとりだして合成画像を生成することで、見やすい合成映像を生成することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−339194号公報
【特許文献2】特許第3297040号公報
【特許文献3】特開2004−96488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示されている技術に基づき、重複部分の輝度値を用いて複数の画像を調整すると、各カメラ内の画像での駐車区画線や周囲人物など、ユーザが目視で確認したい部位のコントラストが低下したり、強い光によるハレーションが発生する場合にその影響で暗い領域での明度が更に低下したりする。特に、駐車動作中の周辺監視の目的で俯瞰映像を提供する場合、視認性が低下して周囲の人物等が見えなくなることは、大きな問題となる。
【0010】
また、特許文献3に開示されている技術には、重複画像から適正な部分画像を取り出して合成する際に、合成の境界部分において不連続になるため、やはり視認性が低下してしまう。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車載カメラで撮像した画像に基づいて乗員が車両の周囲を容易に確認することができるように支援する周囲確認支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の周囲確認支援装置は、車両の周囲を撮像した画像を表示して乗員による車両周囲の確認を支援する周囲確認支援装置であって、車両周囲の所定範囲を互いに異なる露光量で撮像する撮像部と、撮像部により撮像された互いに露光量が異なる複数の画像を画像処理して、予め設定された認識対象物の認識を行う画像認識部と、画像認識部の認識結果に基づいて画像から合成画像を生成する画像合成部と、画像合成部により合成した合成画像を表示する表示部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、照明変動の大きい屋外環境において、駐車枠線や自車周囲の歩行者など、駐車動作においてドライバーが注目すべき対象の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係わる外界認識装置のシステム構成図。
【図2】車両に搭載される撮像部の配置例を示す図。
【図3】単一の撮像部を持つ構成を示す図。
【図4】シャッタ速度制御部に制御信号を与えられない場合の構成を示す図。
【図5】複数の画像記憶部を持つ場合の構成を示す図。
【図6】全体の処理の流れを示す図。
【図7】俯瞰画像において人物がどのように写るかを示した図。
【図8】駐車支援方法の内容を説明する図。
【図9】俯瞰変換を示す図。
【図10】駐車支援時の自車周囲状況を示す図。
【図11】カメラから得られる画像例を示す図。
【図12】カメラから得られる画像例を示す図。
【図13】露光量により、駐車枠の見え方が異なることを示す図。
【図14】異なる露光量の画像と、その重みマップを示す図。
【図15】駐車枠の認識結果を示す図。
【図16】シャッタ速度を変更する方式を示す図。
【図17】異なるシャッタ速度を変更する方式を示す図。
【図18】第1実施の形態における重みマップの生成方法を示す図。
【図19】物理的なシャッタ制御に代えて画像認識の明度補正パラメタを用いる構成図。
【図20】駐車枠の認識結果を示す図。
【図21】異なる露光時間の画像と、その重みマップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施の形態)
次に、第1実施の形態に係わる周囲確認支援装置について図面を用いて説明する。
例えば駐車動作において乗員であるドライバーが注目する対象物は、場面や目的に応じて変わるが、本実施の形態では、地面に描かれた駐車枠を一例として挙げて説明をする。なお、対象物として、駐車枠以外にも、自車両周辺を移動する歩行者や他車両、壁や柱・輪留め・停車車両といった立体的な構造物、落下物や側溝などの危険物など、様々なものが存在する。
【0016】
ドライバーは、駐車の目的地である駐車スペース内に自車両を確実に走行させ、かつ位置や向きを微調整するために、駐車スペースの外周を構成する駐車枠に注目をする(例えば図8、図10を参照)。駐車枠20は、通常、アスファルトやコンクリート路面等の地面に描かれた路面標示としての白線や黄色線からなり、例えば図10に示すように、前線21、左右側線22、後線23によって形成される。
【0017】
照明の強い環境下で、白いコンクリート路面に明るい黄色線で駐車枠20が描かれており、さらに近辺に黒い油汚れがあるような環境を考えると、通常、このような環境で撮影された画像は、画像全体のコントラスト自体は高いが、白飛びしやすい路面と枠線とはコントラストが低下し視認性が悪い。
【0018】
この場合は、カメラの絞り径を狭くし、露光時間を短く(露光量を少なく)することで路面と枠線とのコントラストを高めることができるが、それ以外の部分では画像が暗くなってしまう。このように、従来技術を用いて画質を改善しようとする場合、常に必要な対象の視認性が改善できないという問題がある。
【0019】
本実施の形態における周囲確認支援装置では、互いに露光量が異なるように取得した複数の画像に対して、それぞれ駐車枠の認識処理を行い、認識が成功した領域は人間にとってもその露光量における視認性が高いと判断して、画像合成の際に優先的に用いるようにしている。
【0020】
<周囲確認支援装置の構成の説明(基本部)>
図1は、本実施の形態における周囲確認支援装置の構成を説明する図である。
周囲確認支援装置1は、複数の撮像部101〜104と、これら撮像部101〜104の露出を制御するためのシャッタ速度制御部111〜114と、撮像部101〜104により撮像した画像を記憶する画像記憶部121と、画像記憶部121に記憶されている画像から対象物の認識処理を行う画像認識部131と、画像記憶部121に記憶されている画像と画像認識部131から得られる画像認識の結果に基づいて画像を合成する画像合成部141と、画像合成部141から得られる合成画像を表示する表示部151を備えている。
【0021】
撮像部101〜104は、自車周囲の所定範囲を撮像してその画像を画像記憶部121に入力するもので、例えば、CCDとレンズを有するカメラによって構成される。各撮像部101〜104は、それぞれにおいて互いに異なる露光量で撮像する。
【0022】
図2は、車両に搭載される撮像部の配置例を示す図である。図2に示すように、撮像部101は、車両10の左部に配置されて、車両10の左側方を撮像する左サイドカメラを構成し、撮像部102は、車両10の右部に配置されて、車両10の右側方を撮像する右サイドカメラを構成している。
【0023】
そして、撮像部103は、車両10の後部に配置されて、車両10の後方を撮像するリヤカメラを構成し、撮像部104は、車両10の前部に配置されて、車両10の前方を撮像するフロントカメラを構成している。
【0024】
撮像部101〜104は、例えば図10に示すような駐車スペースに車両10を駐車させる際に、自車周囲5メートル程度の範囲を撮像できるように車両10に取り付けられている。従って、例えば撮像部101、102によって図11、図12に示すような画像が得られる。また、車両10には、照明として、自車周辺を照らすためのライトがドアミラー部に内蔵されて搭載されている(いずれも図示せず)。なお、前述した5メートルという距離は一例であり、自車両の大きさや稼働環境により変えても良い。例えば、大型油圧ショベルなどの建設機械において周囲の人物の視認性をあげる目的で本発明を利用する場合には、より広い範囲を撮像するのが適している。
【0025】
画像記憶部121は、撮像部101〜104から得られた各画像と、画像が得られた時刻、露光時間とをセットとして記憶する。また、画像認識部131に対して各撮像部101〜104で撮像された最新の画像を提供する。さらに、画像合成部141の要求に応じて、過去に記憶された画像を含め、任意の記憶されている画像を提供する。画像記憶部121の記憶形態としては、例えばRAMなどのメモリと通信用インタフェース、制御用のマイコンで構成されている、もしくは独立したモジュールではなく、計算機上のプログラムとして構成されていてもよい。
【0026】
画像認識部131では、撮像部101〜104から得られた、ある時刻、ある露光量の画像に対して駐車枠20を認識する画像認識処理を実行する。撮像部101〜104のうち、同一の撮像部から得られた、異なる露光量の画像に対する駐車枠認識の結果が異なる場合、画像認識処理によって認識された駐車枠20の確度に基づき、どの露光量の画像の領域が認識に適しているか、すなわち視認性が高いかを算出する。なお、確度とは、画像認識部131による認識対象物の認識の正確さを表すものである。
【0027】
画像合成部141は、画像認識部131で算出された画像領域の視認性の高さ(確度)を基準に、互いに露光量が異なる複数の画像を合成する。まず、撮像部101〜104でそれぞれ得られた互いに露光量が異なる複数の画像について、各撮像部101〜104ごとに画像を合成して、各撮像部101〜104ごとに1つずつの合成画像を生成する。そして、次に、各撮像部101〜104ごとに作成された視認性の高い4つの合成画像を連結合成することで、視認性の高い自車周囲合成画像(例えば図20を参照)を生成する。
【0028】
なお、ある撮像部から得られた一つの画像の全ての領域が単一の露光量であるときに視認性が高いとは限らない。図13は、車両の左側方を撮像した画像の例を示した図であり、露光量E1で撮像した画像I1、露光量E2で撮像した画像I2、露光量E3で撮像した画像I3を示している。
【0029】
例えば、露光量E1で撮像した画像I1は、画像左側領域において視認性が高く、画像右側領域において視認性が低い。また、露光量E2で撮像した画像I2は、画像右側領域において視認性が高く、画像左側領域において視認性が低い。
【0030】
このような場合には、画像I1の左側領域と、画像I2の右側領域とを合成した合成画像である画像I3が画像合成部141によって生成される。従って、合成画像I3の中の認識対象物である駐車枠20の視認性を高くすることができる。
【0031】
そして、画像合成部141は、各撮像部101〜104ごとに作成された各合成画像を連結合成して、車両10を真上から撮像したのと同等の俯瞰画像である自車周囲合成画像を生成する。
【0032】
表示部151は、画像合成部141で生成した自車周囲合成画像を、ユーザであるドライバーに提示するための装置である。例えば、カーナビゲーションのモニタや、ルームミラーに内蔵されたモニタ、フロントガラスに投影できるようにしたプロジェクタ装置等、ドライバー等のユーザに映像情報を提示できるものである。本構成では、まず各撮像部101〜104の領域において、それぞれ複数の露光量の画像を合成し、その後に各撮像部101〜104の合成画像を連結合成することで、各撮像部101〜104の視認性が高くなるように最適化できるという効果がある。
【0033】
また、前述の構成に加えて、拡張部として車両情報提供部161、露光量情報保持部を有していてもよい。これらの車両情報提供部161と露光量情報保持部は、画像認識部131および画像合成部141の処理を改善するために用いられる。
【0034】
車両情報提供部161では、車速、車輪速、舵角、車輪角、自車位置測位システムなどの車両10に搭載されたセンサの情報より、撮像されたそれぞれの画像における相対的な自車位置を算出し、画像記憶部121で画像を記憶する際の情報に付加する。
【0035】
複数の異なる露光量の画像を、同一の撮像部で撮像する場合、各画像の撮像タイミングが異なるため、自車や周囲物体が移動していると、撮像対象物が画像中を移動し、正しく画像合成を行うことができない。
【0036】
このため、相対的な自車位置を元に各画像間での見かけの移動量が算出でき、画像合成部141において、複数画像を位置合わせすることができる。また、サイドブレーキによるブレーキランプ点灯情報が得られる場合には、自車が停止していることが明らかであり、複数画像を位置あわせする必要がないことが分かるため、ブレーキランプ点灯情報も画像記憶部121で画像を記憶する際の情報に付加しておき、画像合成部141での合成処理に利用できる。
【0037】
さらに、ヘッドランプ点灯情報、ワイパ稼働情報が得られる場合には、外部の照明状態が暗く、撮像されている画像が暈けている可能性が高く、複数画像を合成する際に明確な特徴点が出にくいことが分かるため、これも画像記憶部121で画像を記憶する際の情報に付加しておくことで、画像合成部141での合成処理に利用できる。
【0038】
露光量情報保持部は、各撮像部101〜104で撮像する画像における露光量の情報を保存する。時系列で保存された各撮像部101〜104の露光量と、画像認識部131における認識可否により、今後露光量をどのように変更すればよいかを決定することで、画像認識部131は最適な露光量の組み合わせを決定し、シャッタ速度制御部111〜114によりシャッタ速度を制御して、各撮像部101〜104の露光量を指定することができる。露光量情報保持部は、画像記憶部121内に設けてもよい。
【0039】
<処理の流れ (基本部)>
次に、本実施の形態において、前述した装置構成に対応する処理の流れを説明する。
まず、撮像部101〜104は、シャッタ速度制御部111〜114の指定に従って、異なるタイミングで複数の異なる露出での車両周辺の画像を撮像する。得られた画像と撮像時のパラメタは、画像記憶部121に記憶される。
【0040】
撮像時のパラメタには、撮像時のシャッタ速度と撮像時間、および車両情報が含まれている。車両情報とは、車速、車輪速、舵角、車輪角、自車位置測位システムによる自車位置、ヘッドランプ点灯情報、ワイパ稼働情報などの車両内部のネットワークにより車両10の複数の装置間で受け渡される情報のことであり、車車間通信と路車間通信により自車両と送受信される情報も含むものである。
【0041】
次に、画像記憶部121に記憶された画像は、画像認識部131に送られ、駐車枠認識処理が実行される。この駐車枠認識の処理は、駐車枠20を形成する線分の認識と、線分の組み合わせが駐車枠20として適切か否かの判定、という2段階で構成される。例えば、線分の認識は、画像に対して縦方向および横方向のSobelフィルタを適用し、適当な閾値で二値化することによって画像中のエッジ点を抽出し、抽出されたエッジ点の座標群にHough変換を適用することで、直線状に並んでいるエッジ点群を抽出することができる。
【0042】
また、駐車枠20として適切か否かの判定は、例えば普通乗用車のための駐車枠20を認識する場合には、車両幅相当の2m〜4mの間隔(並列の駐車枠)、もしくは車両長さ相当の4m〜6mの間隔(縦列の駐車枠)で、ほぼ平行な2本の駐車枠線22、22が路面に描かれていることを検出できた場合に、その挟まれた領域を、車両10を停めることができる駐車枠20として確定すればよい。
【0043】
この駐車枠認識は、異なる複数の露光量の画像に対して行われるが、自車周囲の環境に対してシャッタ速度制御が不適切な画像に対しては、前述の画像中のエッジ点が抽出されない。
【0044】
例えば、明るい照明環境下において、シャッタ速度が遅く、長時間の露光を行った場合には、画像が白飛びし、隣接画素の輝度値の差がなくなるために、Sobelフィルタ適用後の画像でエッジ点が抽出されず、駐車枠20が認識されない。
【0045】
ある露出の映像で認識がされない画像領域がある場合、当該領域には駐車枠20が存在しないか、あるいは露出調整が不適切なために認識可能な画質ではなかったことを意味している。
【0046】
また、画像認識部131では、エッジ点がどの程度はっきりと検出できたか、Hough変換を施した際に直線性がどの程度正確だったか、などを基準として、駐車枠認識の確度を算出する。
【0047】
具体的な算出例は後述するが、この確度が高いほど明らかに駐車枠認識が成功であることを示すように指標を設定する。前述したように、明らかに画像認識によって対象が認識できる領域は、人間にとっても視認性が高いと考えることができる。このように、画像認識部131からは、ある露出の画像中から検出できた駐車枠20が存在する位置と、検出された駐車枠20の確度が出力として得られる。
【0048】
また、画像認識部131では、事前に設定されている複数段階のシャッタ速度のうちの異なる1つの露出で撮像するように、シャッタ速度制御部111〜114に信号を送る。なお、車両情報提供部161が存在する場合には、ヘッドランプ点灯信号やワイパ稼働状況をチェックし、周囲環境が暗い場合には、よりシャッタ速度を遅くし、明るい映像が得られるようシャッタ速度制御部111〜114に信号を送る。
【0049】
そして、車両情報提供部161からの車速情報が高速である場合には、画像がブレることが考えられるため、よりシャッタ速度を早くし、ブレのないシャープな映像を得られるように、シャッタ速度制御部111〜114に信号を送る。
【0050】
画像合成部141では、画像認識部131で認識できた駐車枠20が存在する画像領域と、その認識の確度、すなわち視認性の高さを基準に、異なる露光量の画像を合成する。この合成では、まず、画像間の移動量を考慮して位置合わせを行った画像間での、各画像の各領域をどの程度の重みをつけて用いるかを表す、重みマップを作成する。
【0051】
次に、この重みマップに従って、複数画像の各画素の輝度値および色情報(色相、彩度)を混合して合成画像を作成する。このとき、視認性の悪い画像では色情報が欠落することが多いため、輝度値情報のみを混合の対象にして、色情報は彩度が高い画像の値を使っても良い。
【0052】
図18は、重みマップの例を示した図である。重みマップM1、M2は各画像I1、I2の各部位がどの程度認識しやすい映像であるかを示しており、他の露出の画像に比べて、図中の白い部分は視認性が高く、黒い部分は視認性が低いことを表した濃淡画像である。この重みマップM1、M2と画像I1、I2の積和をとることで、出力画像I3を得る。
【0053】
例えば、同一の撮像部によって、近い時刻で撮像された、露光量が少ない状態で撮影した画像I1と、露光量が多い状態で撮影した画像I2を考える。画像I1および画像I2には、それぞれ3本の駐車枠線が映っているが、画像I1においては画像左側にある駐車枠線L1、L2のみが、画像I2においては画像右側にある駐車枠線L2、L3のみが検出されている。
【0054】
この検出された駐車枠線の領域に応じて、検出の確度と検出領域からの距離に応じて、画像合成マップC1を生成する。検出の確度の算出方法については後述する。画像合成マップC1において、領域A1は画像I1を100%使用する領域、領域A2は画像I1を51〜99%使用して残りを画像I2を使用する領域、領域A3は画像I1と画像I2をそれぞれ50%ずつ使用する領域、領域A4は画像I2を51〜99%使用して残りを画像I1を使用する領域、領域A5は画像I2を100%使用する領域として、画像合成を行う際に各画像をどの割合で使用するかを連続的に変化するように定義したものである。この画像合成マップC1に応じて、入力画像I1、I2に重みをつけて加算し、合成することで出力画像I3を生成する。
【0055】
それぞれの撮像装置から得られた4枚の合成画像に対し、ひずみ補正を行い、各撮像部101〜104の相対関係を考慮して連結合成することで、俯瞰変換を行い、視認性の高い自車周囲合成画像を生成する。俯瞰変換とは、図9に示すように、撮像部101〜104によって得られた映像をもとに、画像中の全ての点が路面Gにあることを仮定し、仮想的なカメラ視点105から見下ろしたかのように変換する、画像変換方法の一種である。この自車周囲合成画像の生成方法に関しては、公知の技術であるため、ここでは特に説明しない。
【0056】
シャッタ速度制御部111〜114では、画像認識部131からの信号に応じてシャッタ速度を調整するように撮像部101〜104を制御し撮像する信号を送る。画像合成部141では、画像認識部131から得られるそれぞれの露出でのマスク画像と、画像記憶部121から得られる対応する露出でのカメラ画像とから、マスク画像の重みに応じて画像を合成し、表示部151に送る。
【0057】
なお、合成する際、自車が移動していると位置ずれが起こり、合成画像がぼけたり、2重写しになったりするため、俯瞰画像に対して自車移動量を補正した上で合成する。自車移動量は車輪速センサや車速センサ、測位センサなどのほか、画像からオプティカルフローを算出することで求めることができる。表示部151は、例えば液晶モニタやウィンドウガラスへの投光表示部であり、画像合成部141から得られた画像を表示する。なお、図6は、上述した処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
<駐車枠の確度算出方法の詳細>
駐車枠の確度は、画質情報の確度Rimgと、認識対象の構造情報の確度Rstrの和として定義できる。
【0059】
画質情報の確度Rimgは、駐車枠線の近傍の画像領域のコントラストと鮮鋭度から定義できる。駐車枠線の近傍の画像領域とは、例えば駐車枠線の場合、駐車枠線が幅W、長さLとすると、枠線と同程度の幅の路面を両側に含むように、駐車枠線の中心軸を中心とした幅3W、長さLの領域として定義できる。
【0060】
画像領域のコントラストとは、その領域内に含まれる最小輝度値Ymin、最大輝度値Ymaxの比、すなわちYmax/Yminとして定義できる。注目対象である駐車枠線と路面とがどの程度の対比で認識できるかを表す指標であり、画像の視認性が悪い場合に小さい値をとる。鮮鋭度とは、枠線領域と路面との境界に垂直な直線を考え、この直線上で輝度値の二次微分をとったときの極値間の距離の逆数である。境界がぼやけていて視認性が悪い画像の場合、この数値は小さな値になる。
【0061】
また、認識対象の構造情報の確度Rstrは、枠線の直線性および平行性、直角性に対する歪みといった、画像から得られた見かけの形状に対する評価指標として定義できる。枠線の直線性に対する歪みとは、前述したエッジ点群の座標に対してHough変換等で近似直線を算出し、その近似直線から各エッジ点までの距離の二乗和として定義できる。
【0062】
枠線の平行性に対する歪みとは、例えば2本の線分で駐車枠が構成されている場合、各線分の近似直線のなす角度をθ(0≦θ≦90[deg])とするとcosθとして定義できる。また、枠線の直角に対する歪みとは、例えば2本の線分で駐車枠が構成されている場合、各枠線の駐車枠入り口側の端点同士を結んだ線を仮定し、この線と各枠線の近似直線のなす角度をθ(0≦θ≦90[deg])とするとcosθとして定義できる。なお、4本の線分で駐車枠が構成されている場合には、同様に各枠線の近似直線のなす角度の余弦として定義できる。これらの値はいずれも歪みが大きい場合に小さくなる。
【0063】
このように、画質情報の確度Rimgと、認識対象の構造情報の確度Rstrは、歪みが大きく視認性が悪い場合に小さい値をとり、逆に歪みが少なく視認性が良い場合に大きい値をとる。
【0064】
<合成方法の詳細>
画像合成方法の詳細について図14を用いて説明する。同一の撮像部で異なる時刻に撮影した4枚の画像701〜704に対して駐車枠認識を行うことを考える。ただし、画像701は、時刻T1、ある露光量E1において撮像した画像、画像702は、画像701の撮像時刻とは異なる時刻T2、露光量E2において撮像した画像である。そして、画像703は、画像701、702とは異なる時刻T3、露光量E3において撮像した画像、画像704は、画像701〜703とは異なる時刻T4、露光量E4において撮像した画像である。
【0065】
画像認識部131では、画像701〜704に対して、それぞれ駐車枠線認識処理を行い、その認識結果の領域と駐車枠の確度とを画像合成部141に送る。例えば、図15では画像701で2つの駐車枠P11、P12、画像702で1つの駐車枠P21が認識されており、その際の駐車枠認識の確度をR11、R12、R21とする(R11<R21)。
【0066】
自車が静止している場合、P11とP21は画像中のほぼ同一位置にあるため、同一の駐車枠であることが明らかであるが、駐車枠P21の確度R21が大きいため、この画像領域では画像702の視認性が高いことが分かる。
【0067】
このとき画像701、702に対する重みマップをそれぞれ711、712とすると、711中の駐車枠P11に相当する領域の重みはR11/(R11+R21)、712中の駐車枠P21に相当する領域の重みR21/(R11+R21)と定義できる。すなわち、この領域では露光量E1、露光量E2ともに適切ではあったが、より視認性の良い画像は画像702であったことになる。
【0068】
一方、画像701の駐車枠P12に相当する駐車枠が画像702で認識されていないことから、この領域では露光量E1のみ適切であり、露光量E2が不適切であったことが分かる。このため、重みマップ711中の駐車枠P12に相当する領域の重みは1、重みマップ712中の駐車枠P12に相当する領域の重みは0とする。
【0069】
画像701、702のいずれからも駐車枠が認識されなかった領域の重みは、重みが決定された領域からの距離に応じて重みを伝搬させて決めることができる。すなわち、図15において、画像701中の点Pの重みは、駐車枠P11の領域からの距離がL1、駐車枠P12の領域からの距離がL2であるため、決定された重みからの距離の比に応じて重みを変化させ、{R11/(R11+R21)}×{L2/(L1+L2)}+{R21/(R11+R21)}×{L1/(L1+L2)}と定義できる。この重みの伝搬は、距離の二乗に比例させたり、シグモイド関数など適当な単調関数で変換してもよい。
【0070】
また、画像認識部131は、時系列に対する合成画像明度安定化の機能を持っていても良い。
【0071】
この機能がない場合、駐車枠認識が不安定で、フレーム毎に検出・非検出を繰り返す場合、重みマップをそのたびに変更すると、出力される画像の明度がめまぐるしく変わり、見にくくなってしまうおそれがある。このような問題に対応するためには、合成画像の明度安定化を行うために、重みマップを露出量毎に保持しておき、急激に重みが変わらないようにすればよい。
【0072】
すなわち、時刻t−1の露出量E1、E2のそれぞれの重みマップをW(t−1、E1)、W(t−1、E2)とし、前記のように算出した時刻tの露出量E1、E2のそれぞれの重みがW(t、E1)、W(t、E2)の場合、画像合成の際に使用する時刻tの重みマップをW’(t、E1)=α×W(t、E1)+(1−α)×W(t−1、E1)、W’(t、E2)=α×W(t、E2)+(1−α)×W(t−1、E2)とすることで、重みマップの急激な変化をさけることができる。ここでαは新しい画像から算出される重みを反映させる度合いを表しており、実験的に決められる適当な係数である。または、カルマンフィルタを用いてW’を安定化させてもよい。
【0073】
なお、自車が移動している場合には、画像から見かけの自車移動を算出し、画像を回転や並進移動などアフィン変換して位置合わせすることにより、自車が静止している状態と同様に考えることができる。この見かけの移動量は、例えば、オプティカルフロー法やSIFT(Scale Invariant Feature Transform)による特徴点追跡により、画像の動きを算出することで算出できる。
【0074】
そして、次に、各撮像部ごとに作成された視認性の高い4つの画像を連結合成することで、視認性の高い自車周囲画像を生成する。
【0075】
なお、本実施の形態では、周囲確認支援装置1が複数の撮像部101〜104を有する構成の場合を例に説明したが、カメラ数が変わっても問題はない。すなわち、例えば左側方と後方の2カメラの構成や、後方のみの1カメラの構成であっても、前述したとおりの手段で、視認性の高い画像を提供することが容易に類推できる。図3は、1カメラの場合の構成を示す図である。
【0076】
<車両情報提供部の処理>
車両情報提供部161の役割は、自車の移動量と、周囲環境をセンサ情報から取得して、より適切な画像合成を行うための情報提供をすることである。
【0077】
自車の移動量を計算するために、車両10に搭載されたセンサから、車速、車輪速、舵角、車輪角といった情報を取得する。これらのセンサ情報からの自車移動量の算出方法は、一般的なデッドレコニング法もしくは自律航法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0078】
また、自車位置測位システムにより地球に対する絶対的な自車位置が得られる場合、その時系列情報の差分をとることにより、自車の移動量を計算できる。この自車の移動量を画像記憶部121に記憶させておくことで、画像間の位置合わせ精度を向上させる効果が期待できる。
【0079】
周囲環境を認識するために、サイドブレーキによるブレーキランプ点灯情報が得られる場合には、自車の移動量を0として画像記憶部121に記憶させ、画像間の位置が変化ないことを明らかにすることで、認識対象の同定処理の確実性を増す効果が期待できる。
【0080】
さらに、ヘッドランプ点灯情報、ワイパ稼働情報が得られる場合には、夜間や雨天などの原因で外部の照明状態が暗い状態であることを画像記憶部121に記憶させる。撮像されている画像がぼけている可能性が高く、複数画像を合成する際に明確な特徴点が出にくいことから、ぼけている画像に対してエッジ抽出できるよう画像認識部131の二値化閾値などのパラメタを変更することで、認識性能を向上させる効果が期待できる。また、自車前方路面の局所領域がヘッドランプに照らされて駐車枠線の誤認識がでるため当該領域のエッジを無視する処理を画像認識部131に行わせることでも、認識性能を向上させる効果が期待できる。
【0081】
<露光量情報保持部の処理>
露光量情報保持部の役割は、過去の各撮像部101〜104で撮像する画像における露光量を保存し、今後各撮像部がどのような露光量で画像を撮像すればよいかを計画し、シャッタ速度制御部111〜114に露光量を指定することである。
【0082】
各露光量の画像を撮像したとき、各画像における認識結果がどのように得られているかを記憶することで、現在の複数のシャッタ制御のうち、いずれが適切かを判断することができる。例えば、あるシャッタ速度S1と、それより長いシャッタ速度S2の2種類のシャッタ速度を交互に繰り返しているカメラを考える。
【0083】
図16の区間aのように、シャッタ速度S1とS2の両方で何らかの認識結果が得られているが、S1の場合により適切な認識結果が得られている場合、よりシャッタ時間が短い方が適切に認識できることになるため、適当な変化係数ΔSを用いて、S1’=S1−ΔS、S2’=S2−ΔS、と両方のシャッタ時間をより短くするように調整する。
【0084】
シャッタ速度S1とS2の間に最適なシャッタ速度の平均値が挟まれるように調整することで、ダイナミックレンジの高い映像に対して認識対象を検出できる。なお、シャッタ速度S1では認識結果が得られているが、シャッタ速度S2では全く認識結果が得られていない場合、例えばΔS=S2−S1とすると、図17のようになり、認識結果が得られているシャッタ速度での撮像を行いながら、それより短いシャッタ速度の映像と長いシャッタ速度の映像を交互に撮影し、適するシャッタ速度を探索することができ、シャッタ速度の探索が安定化する効果がある。また、シャッタ速度S1およびS2の両方で全く認識結果が得られていない場合、シャッタ速度の設定が大きくずれている可能性と画像中に認識対象物が存在しない可能性の両方があるため、そのような場合には標準的なシャッタ速度にリセットすればよい。
【0085】
なお、ここまで物理的にシャッタ速度を変更する構成で記載してきたが、例えば、ガンマ変換の係数や、二値化、エッジ検出の際の閾値を変更する構成にしても構わない。すなわち、露出量の多い映像が入力されたと仮定した際の閾値と、露出量の少ない映像が入力されたと仮定した際のガンマ変換の係数や閾値を順次変更しながら処理を実行してもよい。例えば、図19に示すように、明度補正パラメタ保持部510を設けて、画像認識部131の画像認識において、画像の露光量を補正するための複数のパラメタを保持する構成としてもよい。
【0086】
図4は、図3の変形例を示すブロック図である。図4に示す周囲確認支援装置1は、シャッタ速度制御110への制御を行うことができない構成となっている。図3との相違点に関して主に説明する。シャッタ速度制御110は、図3の構成と異なり、画像認識部131からの信号がないため、事前に規定された複数のシャッタ速度を撮像部100に送るとともに、画像認識部131に送る。
【0087】
図5は、図3の他の変形例を示すブロック図である。図5に示す周囲確認支援装置1は、撮像部100、シャッタ速度制御部110、画像記憶部121をそれぞれ2つ備える構成を有している。図3との相違点に関して主に説明する。2つの撮像部100で同一対象を撮像している場合、画像認識部131では各シャッタ速度制御部110にそれぞれ異なるシャッタ速度の制御信号を出力することで、同一時刻で複数の異なる露出の映像を得ることができる。なお、複数の撮像部100を完全に同一の空間に置くことはできないため、俯瞰変換などの画像視点変換を用いることで複数の撮像部100を同一箇所に置くのと同じ効果を出すことができる。このように1台の撮像部の構成に対しても、複数の撮像部の構成に対しても、本発明を適用することができる。
【0088】
(第2実施の形態)
次に、第2実施の形態について図20、図21を用いて以下に説明する。なお、第1実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0089】
本実施の形態において特徴的なことは、まず、複数の撮像部で撮像した画像を連結合成して自車周囲合成画像を生成し、次に、互いに露光量が異なる複数の自車周囲合成画像に対して画像認識を行い、認識結果に応じて複数の露光量の画像を合成する点である。
【0090】
図20を用いて説明する。まず、各撮像部101〜104において互いに露光量が異なる複数の画像を撮像し、これら複数の画像に対してひずみ補正を行い、各撮像部101〜104の相対関係を考慮して連結合成する。例えば、シャッタ速度を高速にして撮像した露光量が少ない4枚の画像を連結合成して画像701を生成すると共に、シャッタ速度を低速にして撮像した露光量が多い4枚の画像を練結合して画像702を生成する。
【0091】
画像701、画像702は、各撮像部101〜104間の露出量がほぼ合っている画像になっている。この画像701、702に対して、駐車枠認識を行い、その結果に応じて異なる露出の画像を生成する点は、前述した各カメラ映像における画像合成方法と同様である。
【0092】
図21に示すように、連結された自車周囲の画像に対して重みマップ711〜714を定義し、入力画像701〜704に重みをつけて加算することにより、出力画像715を得ることができる。
【0093】
このように本構成では、まず各撮像部101〜104で撮像した画像を連結合成して自車周囲合成画像を生成する。そして、その後に、互いに露光量が異なる複数の自車周囲合成画像を合成する。従って、局所的な最適化に陥らず、全体的に連結された画像の見かけを滑らかに自然な状態になるように最適化できるという効果がある。
【0094】
(第3実施形態)
次に、第3実施の形態について以下に説明する。
本実施の形態では、注目対象が自車の周囲を移動する移動体(歩行者)である場合について説明する。
【0095】
さて、前進と後退を繰り返し、かつ大きい操舵角で急旋回を行う駐車動作は、自車周囲の死角が多く、旋回時の内輪差も大きくなることから、事故を誘発しやすく、全周囲の壁や歩行者に注意を払う必要がある。このような駐車動作を安全に行うために、ドライバーが特に注意すべき対象は、自車周囲を移動する歩行者(以下、移動体という)である。
【0096】
一般に、駐車枠の白線と路面とのコントラストよりも、移動体と路面とのコントラストの方が低く、従来技術のように、単純にある領域範囲のコントラストを基準に画像を合成すると、ドライバーが注意すべき対象のコントラストが悪い画像が生成される問題がある。注目対象が静止しているものであれば、上述の第1実施の形態によって、この問題を解決することもできるが、対象が移動している場合にはそのまま適用できない。
【0097】
本実施の形態では、複数の露光量で取得した画像に対して、それぞれの画像に対して認識処理を行い、移動体を追跡し、認識が成功しなかった場合でも移動位置を予測するようにし、その予測位置の明度とコントラストを適切に調整することで、視認性が高い画像を生成することができる。なお、カメラ配置と装置構成自体は第1実施の形態と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0098】
<処理の流れ (基本部)>
本実施の形態における処理の流れについて、第1の実施例と異なる部分を中心に説明する。まず、撮像部101〜104は、シャッタ速度制御部111〜114の指定に従って、異なるタイミングで複数の異なる露出での車両周辺の画像を撮像し、得られた画像と撮像時のパラメタとを画像記憶部121に送られて記憶される。
【0099】
次に、画像記憶部121に記憶された画像は、画像認識部131に送られ、移動体認識の処理が試行される。この移動体認識は、自車が静止している場合には背景差分法を用い、適切な閾値で二値化を行うことにより、変化があった領域を移動体領域として抽出することができる。自車が動いている場合には、オプティカルフロー法を用いて画像の動きベクトルを検出し、その動きベクトルを方向と大きさに基づいてセグメンテーションを行うことにより、路面領域と移動体領域を分離して求めることができる。
【0100】
この移動体認識は異なる複数の露光量の画像に対して行われるが、自車周囲の環境に対してシャッタ速度制御が不適切な画像に対しては、輝度値が明側もしくは暗側に飽和しているため、差分もしくは動きベクトルが抽出されない。ある露出の映像で認識がされない画像領域がある場合、当該領域は移動体がいないか、あるいは露出調整が不適切なために認識可能な画質ではなかったことを意味している。
【0101】
また、画像認識部131では、移動体領域内部のコントラストや、抽出された移動体形状などを基準として、移動体認識の確度を算出する。画像認識部131からは、ある露出の画像中から検出できた移動体が存在する位置と、検出された移動体の確度が出力として得られる。
【0102】
画像合成部141では、画像認識部131で認識できた移動体が存在する画像領域と、その認識の確度、すなわち視認性の高さを基準に、異なる露光量の画像を合成する。シャッタ速度制御部111では、画像認識部131からの信号に応じてシャッタ速度を調整するよう撮像部101〜104を制御し撮像する信号を送る。画像合成部141では、画像認識部131からの結果に基づき画像を合成し、表示部151に送り、合成画像が表示される。
【0103】
<移動体認識の確度算出方法の詳細>
移動体認識の確度は、画質情報の確度Rimgと、認識対象の形状情報の確度Rstrの和として定義できる。
【0104】
画質情報の確度Rimgは、移動体領域の内部および近傍のコントラストとテクスチャの複雑さから定義できる。移動体領域の内部および近傍のコントラストとは、例えば移動体領域を1割程度膨張させた領域を考え、この領域内に含まれる最小輝度値Ymin、最大輝度値Ymaxの比、すなわちYmax/Yminとして定義できる。テクスチャの複雑さとは、移動体領域内部のエネルギー、エントロピー、相関、局所一様性、モーメントなどを同時正規行列から計算したり、移動体領域の画素の輝度値の平均、分散、ヒストグラムの対称性(歪度)、ヒストグラムの尖鋭性を用いて、より複雑であれば値が大きくなるように定義する。これらは一般的な画像処理手法であるため、ここでは詳細の説明を省く。
【0105】
認識対象の形状情報の確度Rstrは、認識された人物形状から定義できる。例えば、図7に示すように、車両10の後方に足を閉じて立っている人物32は(図7(a)を参照)、俯瞰画像38上では足元位置を基準として扇形の形状35として観測される(図7(b)を参照)。
【0106】
特に、足元位置は地表平面上にあり、画像上の大きさから実空間での大きさに換算することができる。このような形状・大きさが一般的な人物の大きさのモデルと一致していれば高くなるよう定義すればよい。
【0107】
例えば足の大きさは、画像と実空間との変換パラメタをβ[cm/pixel]とし、画像上で足の大きさがw[pixel]として観測されている場合、実空間での足の大きさf[cm]は、f=β×w、であり、標準的には25cm、かつ一般的に20≦f≦30の範囲にあると仮定すると、足の大きさに関する形状情報の確度Rfoot=5−|β×w−25|、かつ|β×w−25|>5のときRfoot=0とする。
【0108】
このように、画質情報の確度Rimgと、認識対象の構造情報の確度Rstrは、視認性が良い場合に大きい値をとる。このように、移動体認識の確度を定義および算出することができる。
【0109】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 周囲確認支援装置
10 車両
20 駐車枠
100〜104 撮像部
110〜114 シャッタ速度制御部
121 画像記憶部
131 画像認識部
141 画像合成部
151 表示部
161 車両情報提供部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮像した画像を表示して乗員による車両周囲の確認を支援する周囲確認支援装置であって、
車両周囲の所定範囲を互いに異なる露光量で撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された互いに露光量が異なる複数の画像を画像処理して、予め設定された認識対象物の認識を行う画像認識部と、
該画像認識部の認識結果に基づいて前記画像から合成画像を生成する画像合成部と、
該画像合成部により合成した合成画像を表示する表示部と、を有することを特徴とする周囲確認支援装置。
【請求項2】
前記画像合成部は、前記画像認識部によって前記認識対象物が認識された複数の画像を互いに比較して、該複数の画像からそれぞれ前記認識対象物の確度が高い画像領域を抽出し、該抽出した画像領域を用いて合成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の周囲確認支援装置。
【請求項3】
前記画像合成部は、前記画像合成を行う際に使用する各画像領域の割合を定義した重みマップを、前記認識対象物の確度と前記認識対象物の検出領域からの距離に応じて作成し、該重みマップに従って前記合成画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の周囲確認支援装置。
【請求項4】
前記画像合成部は、前記重みマップに従って前記複数の画像の各画素の輝度値と色情報を混合して前記合成画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の周囲確認支援装置。
【請求項5】
前記撮像部で撮像された画像における相対的な自車位置を所定の車両情報に基づいて算出する車両情報提供部を有し、
前記画像合成部は、前記車両情報提供部により算出された自車位置の情報を用いて前記合成画像を生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。
【請求項6】
前記車両情報とは、車速、車輪速、舵角、車輪角、ブレーキランプ点灯情報、ヘッドランプ点灯情報、ワイパ稼働情報、自車位置測位システムによる自車位置情報のうち、少なくとも1つを含むものであることを特徴とする請求項5に記載の周囲確認支援装置。
【請求項7】
前記画像認識部の認識結果に基づいて前記撮像部のシャッタ速度を制御するシャッタ速度制御部を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。
【請求項8】
前記撮像部で撮像する画像の露光量の情報を保存する露光量情報保持部を有し、
前記シャッタ速度制御部は、前記露光量情報保持部に保存された前記露光量の情報と、前記画像認識部の認識結果に基づいて、前記撮像部のシャッタ速度を制御することを特徴とする請求項7に記載の周囲確認支援装置。
【請求項9】
前記撮像部を複数有し、各撮像部において互いに露光量が異なる複数の画像を得ることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。
【請求項10】
同一の撮像部で複数回撮像することによって互いに露光量が異なる複数の画像を得ることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。
【請求項11】
前記画像認識部による認識結果に基づいて移動体を追跡し、該画像認識部による認識が成功しなかった場合でも前記移動体の移動位置を予測する対象追跡部を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。
【請求項12】
前記対象追跡部は、前記画像認識部で認識された移動体をそれぞれ時系列順に追跡して前記移動体の移動を予測することを特徴とする請求項11に記載の周囲確認支援装置。
【請求項13】
前記互いに露光量が異なる複数の画像は、同一の撮像部で複数回撮像し、該撮像した画像を累積することによって生成されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。
【請求項14】
前記互いに露光量が異なる複数の画像は、複数の撮像部で撮像されて生成されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の周囲確認支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−77772(P2011−77772A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226373(P2009−226373)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】