説明

周期構造の作成方法および周期構造の作成装置

【課題】周期構造のパターニングの自由度を損なうことなく、作成作業時間の短縮化を図ることができる、生産性に優れる周期構造の作成方法および周期構造の作成装置を提供する。
【解決手段】主走査を行う主走査用偏向器5と副走査を行う副走査用偏向器6とを同時に連続的に動作させながら、パルスレーザ光源1の繰返し周波数と主走査用偏向器5の主走査周波数の関係が、整数比の関係か、整数比の関係から一定数を加減した関係になるように保って、レーザ照射スポットをレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して二次元的に走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物に一軸のパルスレーザをオーバーラップさせながら照射して、そのレーザ波長程度に微細な凹凸溝を方向性をもたせて周期的に形成する、周期構造の作成方法および作成装置に関し、特に、レーザ照射スポット径よりも大きな形成幅の周期構造の作成に好適な作成方法と作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工対象物に一軸のパルスレーザをオーバーラップ走査して、入射光の偏光成分と加工対象物の表面に沿った散乱光の偏光成分の干渉部分のアブレーションによって、自己組織的に入射光の偏光方向に直交した、入射光波長程度の間隔を持つ周期構造を作成する方法が知られており、その作成装置も市販されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
加工対象物に周期構造を作成する目的は、摺動特性の向上や切削・塑性加工特性の向上、引き離し力の低減、薄膜の密着性向上、加飾効果向上、濡れ性制御、及び生体親和性の向上などと多様である。また、加工の目的や加工対象物の寸法に応じて、求められる周期構造の形成幅や間欠比率や方向性などのパターニングも様々である(特許文献2、非特許文献2、及び非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4054330号公報
【特許文献2】特許第4263185号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「フェムト秒レーザで形成する表面周期構造」Laser Focus World、2006年10月」
【非特許文献2】「フェムト秒レーザによる表面微細加工:トライボロジスト、第55巻第2号、2010年2月15日」
【非特許文献3】「フェムト秒レーザによるモルフォ蝶型発光体の大面積・高速作成、光アライアンス、2011年4月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この周期構造の作成装置におけるレーザ光の照射方法の従来方法について、簡略全体斜視図を用いて説明する。図12は従来の装置で3本の帯かならなる形成幅Wxの間欠周期構造を作成したときの簡略全体斜視図を示す。パルスレーザ光源1が発振した直線偏光レーザを偏光板4に透過させ、1/2波長板の回転位置によって偏光を制御する。周期構造の凹凸溝はレーザの偏光方向に直交して形成されるため、例えば、摺動部品であれば、その相対的な動きの方向に対して、油膜などの流体力学的な作用が低摩擦特性に最適となる方向に凹凸溝が形成されるように偏光を設定する。ビームエキスパンダ2と集光レンズ7は、レーザ照射スポットの大きさを定めるものである。主走査方向のY軸方向にレーザ照射スポットByが一定量でオーバラップするように、主走査ステージを一定速度で動かすことで、レーザビームの相対的な走査を行って周期構造を作成していた。
【0007】
従来の周期構造の作成装置の課題は、作成作業時間の長さにある。前述の主走査で作成した周期構造の帯幅(X軸方向の幅)はレーザ照射スポットBxと等しいため、レーザ照射スポットBxよりも大きな形成幅Wxの周期構造を作成したい場合は、必要な形成幅が一回の主走査では得られなかった。そのため、従来では、レーザ照射スポットを、その1つ前のパルスによるレーザ照射スポットBy上に含まれるようにオーバーラップさせながら主走査を行って一本目の周期構造の帯を形成した後に、主走査と直交する方向にレーザ照射スポットを移動させて(副走査を行い)、再度主走査を行うことで、必要な形成幅に周期構造の帯を併設していた。この場合、副走査の移動時間とともに主走査した移動距離分を毎回、走査の開始位置に戻すためのリターン動作が必要になるため、リターン動作時間×副走査回数の時間ロスの発生が大きな問題になっていた。
【0008】
走査手順として、主走査を行って一本目の周期構造の帯を形成した後に、主走査と直交する方向にレーザ照射スポットを移動させて(副走査を行い)、先の主走査と反対方向にレーザ照射スポットをオーバーラップ走査することで、走査の開始位置に戻すためのリターン時間を解消する方法が考えれれる。この場合、主走査のリターンロスは解消されるが副走査に要する時間ロスは依然として残る。また、主走査方向にレーザ照射スポットの強度分布や偏光が対称でなければ、周期構造の凹凸溝の傾きや凹凸溝のピッチなどが同じ形状にならず、交互に作成した周期構造の帯の様相が異なるものになってしまうという問題があった。すなわち、理想的な強度分布や偏光分布をもつレーザビームであることがこの走査手順の必要条件となるため、実際には加工品質を保つためには一方向にオーバーラップ走査する必要があった。
【0009】
作成作業時間を短縮する方法としては、光学的にレーザ集光スポットを分割して同時照射することが考えられる。図12の例では3光路に分割して同時照射すれば、副走査に要する時間ロスも主走査のリターンロスも解消できる。しかし、光学系を固定することで
周期構造の形成幅や間欠比や方向性などのパターニングの自由度は小さくなる。加工対象物の寸法や用途に応じて、求められる周期構造の形成幅や間欠比などのパターニングは様々であるため、パターニングの自由度は大きいことが望まれる。
【0010】
以上のように、周期構造の作成技術は様々な加工対象物に方向性を持たせた微細な凹凸溝を形成することで、表面機能を付与する表面改質技術であるが、レーザ集光スポットを一方向にオーバーラップ走査した軌跡をもって、パターニングを行うために、作成作業時間の短縮が重要な課題であった。本発明は、上記の課題に鑑みて、パターニングの自由度を損なうことなく、周期構造の作成作業時間の短縮化を図ることができ、生産性に優れる周期構造の作成方法および周期構造の作成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、主走査と副走査を同時に連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が、整数比の関係か、整数比の関係から一定数を加減した関係になるように保って、レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むように、オーバーラップ位置を制御して二次元的に走査することで達成される。
【0012】
そこで、本発明の周期構造の作成方法は、加工対象物に一軸のパルスレーザをオーバーラップさせながら照射して、そのレーザ波長程度に微細な凹凸溝を方向性をもたせて周期的に形成する、周期構造の作成方法であって、主走査を行う主走査用偏向器と副走査を行う副走査用偏向器とを、連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の関係を一定に保つことで、レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して、二次元的に走査するものである。
【0013】
また、本発明の周期構造の作成装置は、加工対象物に一軸のパルスレーザをオーバーラップさせながら照射して、そのレーザ波長程度に微細な凹凸溝を方向性をもたせて周期的に形成する、周期構造の作成装置であって、パルスレーザ光源と、主走査を行う主走査用偏向器と、副走査を行う副走査用偏向器と、パルスレーザ光源と主走査用偏向器との同期動作を制御する制御手段とを備え、主走査を行う主走査用偏向器と副走査を行う副走査用偏向器とを、連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の関係を一定に保つことで、レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して、二次元的に走査するものである。
【0014】
主走査と副走査を同時に連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数REPと主走査周波数Fxの関係を整数比の関係に保って、REP:Fx=N:Mで(NとMは整数)レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して二次元的に走査すれば、副走査に平行なREP*M/Fx本の周期構造の帯を1度の副走査で作成できる。これにより、主走査と副走査の移動ロスを解消できる。
【0015】
また、主走査と副走査を同時に連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数REPと主走査周波数Fxの関係を整数比の関係から一定数Pを加減した関係に保って、Fx=(REP*M/N)±Pでレーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して、副走査の速度Vyで二次元的に走査すれば、Vy/Pの周期長のうねりをもった、REP*M/Fx本の周期構造の帯を1度の副走査で作成できる。これによって、主走査と副走査の移動ロスを解消したうえで、周期構造の形成位置に所定の周期性を与えることができる。
【0016】
パルスレーザ光源の繰返し周波数REPと主走査周波数Fxの周波数比を保ったまま、REPとFXの位相差を制御することで、主走査方向のレーザ照射スポットを瞬時に移動させることができる。この位相差制御によって、さらに多彩なパターニングが可能になる。特に、間欠周期構造の場合は、位相差を制御することで、主走査にも副走査にも間欠となる周期構造を1度の副走査で作成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、主走査と副走査を同時に連続的に動作させながらオーバーラップ位置を制御して二次元的に走査することで、レーザ照射スポット径よりも大きな形成幅の周期構造でも、1回の副走査動作で作成することができるため、従来の周期構造の作成方法に比べて、周期構造の作成作業時間の大幅な短縮を図ることができ、生産性に優れたものとなる。しかも、周期構造のパターニングの自由度を損なうこがない。
【0018】
パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の周波数差や位相差を制御することで、任意の本数の帯を併設したり、その帯の形成位置にうねりを与えて、周期構造の形成位置に任意の周期性を持たせたり、主走査にも副走査にも間欠となる周期構造を、1回の副走査動作の間にで作成できため、従来の周期構造の作成方法に比べて多彩なパターニングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す第1の周期構造の作成装置の簡略全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示す第2の周期構造の作成装置の簡略全体斜視図である。
【図3】周期構造を示す簡略平面図である。
【図4】周期構造の形成メカニズムについて説明する概略図である。
【図5】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、3本の平行な帯の周期構造を作成した状態の平面図である。
【図6】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、3本の周期的な帯から成る周期構造を作成した状態の平面図である。
【図7】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、周期構造を離散的に複数の領域に周期的に作成した状態の平面図である。
【図8】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、広範囲に均一な周期構造を作成した状態の平面図である。
【図9】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、蛇行する3本の帯の周期構造を作成した状態の平面図である。
【図10】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、蛇行する3本の帯の交わらない周期構造を作成した状態の平面図である。
【図11】前記図1又は図2に示す周期構造の作成装置にて、主走査にも副走査にも間欠となる周期構造を作成した状態の平面図である。
【図12】従来の周期構造の作成装置の簡略全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
【0021】
図1に本発明にかかる周期構造の作成装置の第1の実施例の簡略全体斜視図を示す。この周期構造の作成装置は、レーザアブレーションで凹部22を選択的に除去することで、図3に示すような微小の凹部22と微小の凸部23とが交互に所定ピッチで配設されてなる周期構造10を形成するものである。例えば、オーバーラップ走査するパルスレーザの波長が1064nmであれば、凹部22から隣接の凹部22間のピッチも1ミクロンで、凹部22と凸部23の高低差が0.3ミクロンの形状寸法が周期構造の典型値となる。加工対象物8としては、炭素鋼、銅、アルミニウム、白金、超硬合金などの各種金属や、シリコンウエハや炭化ケイ素などの半導体やセラミックスなどの材料を対象とする。
【0022】
図1の周期構造の作成装置は、パルスレーザ光源1と、主走査を行う主走査用偏向器5と、副走査を行う副走査用偏向器6と、パルスレーザ光源1に対して整数比の関係か、整数比の関係から一定数を加減した関係になるように、主走査用偏向器5の走査周波数を同期制御する制御手段20を備える。なお、制御手段20は分周器と逓倍器と位相調整器からなる。この図1の周期構造の作成装置における主走査方向は矢印X方向とし、副走査方向は主走査方向と直交する矢印Y方向とする。ビームエキスパンダ2と集光用fθレンズ7はレーザ照射スポットの大きさを定めるものである。
【0023】
微細な形状寸法の周期構造をシャープに形成するためには、加工時の熱影響が小さいことが望ましい。よって、パルスレーザ光源1のパルス幅は、ピコ秒又はフェムト秒オーダの短パルスが好ましい。この実施形態のパルスレーザ光源には、パルス幅が250fs、中心波長λが800nm、繰り返し周波数REPが2kHzのフェムト秒レーザを使用した。
【0024】
各光偏向器5、6には、ガルバノスキャナを用いた。ガルバノスキャナとは、モータ回転軸の先端に取り付けたミラーを用いて、レーザ光を高速かつ高精度に走査する偏向装置である。ガルバノスキャナにはアナログタイプとデジタルタイプのものがあるが、本発明においては、いずれのタイプも用いることができる。
【0025】
パルスレーザ光源1が発振した直線偏光レーザを偏光板4に透過させ、1/2波長板の回転位置によって偏光を制御する。周期構造の凹凸溝はレーザの偏光方向に直交して形成されるため、例えば摺動部品であれば、その相対的な動きの方向に対して油膜などの流体力学的な作用が低摩擦特性に最適となる方向に凹凸溝が形成されるように、偏光を設定する。ミラー3は光路を90度折り返すために用いた。
【0026】
ここで、図4にて加工対象物8に周期構造10が形成される原理を説明する。レーザ31を加工対象物8の表面に照射すると、入射光のP偏光成分33と、表面散乱光のP偏光成分35との干渉が起こり定在波37が生じる。なお、34は入射光のS偏光成分、36は表面散乱光のS偏光成分である。このとき、入射光のフルエンスを加工閾値の近傍に設定しておけば、入射光のP偏光成分33と表面に沿った散乱光のP偏光成分35の干渉部分だけがアブレーションで除去される。一旦アブレーションが始まり表面粗さが増加すると、次のレーザ照射時には表面散乱光の強度が増加し、さらに除去量が増加するとともに、1波長λ離れた位置でも干渉が起こり、周期構造10が自己組織化に形成されてゆく。このとき、同一位置に照射するレーザが10〜300ショットになるように、レーザ照射スポットをオーバーラップさせながら一定速度で走査させることで、周期構造を一方向に拡張して作成することができる。
【0027】
本発明では、主走査を行う主走査用偏向器5と副走査を行う副走査用偏向器6とを同時に連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比の関係か、整数比の関係から一定数を加減した関係になるように保って、レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して二次元的に走査する。
【0028】
前記のように構成された周期構造の作成装置にて、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比の関係のとき、パルスレーザ光源の繰返し周波数Repと主走査周波数Fxの関係を3:1の整数比に設定した場合、Fxの走査周波数は666.666Hz(Fx=2000/3=666.666Hz)と決まる。この走査周波数でWxの形成幅が得られるように振り幅を設定して、sin波駆動する主走査と同時に、一定速度で副走査を行えば、図5のように、3本の平行な周期構造の帯10a、10b、10cを1度の副走査で併設して作成できる。
【0029】
図5におけるレーザ照射スポットの軌跡について説明する。この例では、9bは9aのレーザ照射スポットの一つ前のレーザ照射スポットであり、9cは9bのレーザ照射スポットの一つ前のレーザ照射スポットである。つまり、9cは9aのレーザ照射スポットの2つ前のレーザ照射スポットである。10aは9aのレーザ照射スポット系列のビーム軌跡上に形成される第1の周期構造の帯であり、10bは9bのレーザ照射スポット系列のビーム軌跡上に形成される第2の周期構造の帯であり、10cは9cのレーザ照射スポット系列のビーム軌跡上に形成される第3の周期構造の帯である。なお、偏光に応じて周期構造の凹凸溝の方向は任意に制御できる。
【0030】
前記のように構成された周期構造の作成装置にて、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が、整数比3:1の関係から一定数P(例えばPを0.1Hz)を加算すれば、Fxの走査周波数は666.766Hz(Fx=2000/3+0.1=666.766Hz)となる。副走査の走査速度Vyを1mm/sとして、この走査周波数でWxの形成幅が得られるように振り幅を設定して、sin波駆動する主走査と同時に一定速度で副走査を行えば、図6のように1度の副走査で、3本の周期構造の帯10a、10b、10cの位相差を保ったままVy/Pの周期長10mmでうねりをもたせることができる。このとき、レーザ照射スポット径Bxよりも周期構造の形成幅Wxが大きければ、加工対象物の加工前の表面を部分的に残した間欠周期構造8aの作成が可能になる。
【0031】
前記の図6のパルスレーザ光源と主走査と副走査の関係を保ったまま、レーザ照射エネルギだけを調整して、複数系列のレーザ照射スポットの軌跡が重なる位置にだけ周期構造を作成することで、図7のような離散的な複数の領域に間欠な周期構造のパターニングを一度の副走査で得ることができる。
【0032】
離散的な複数の領域に間欠な周期構造のパターニングは、摺動面の低摩擦化に対して特に効果が大きいことが知られている(特許文献2)。
【0033】
レーザ照射スポットを主走査と副走査に分散させて、その両方にオーバラップさせながら走査することで、加工形態が均一で、主走査にも副走査にも連続する周期構造を作成することができる。
【0034】
前記のように構成された周期構造の作成装置にて、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係を、形成幅Wxからレーザ照射スポットBxを除した値以上にとる。Wxが30mmでBxが4mmなら、例えば、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係を15:2の整数比として、Fxの走査周波数を266.666Hzと決めて、この走査周波数でWxの形成幅が得られるように振り幅を設定して、sin波駆動する主走査と同時に、一定速度で副走査を行えば、図8のように、15本の平行な周期構造の帯10aから10oを1度の副走査で併設して作成できる。
【0035】
前記のように構成された周期構造の作成装置にて、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比3:1の関係から一定数P(例えば、Pを0.03Hzとする)を加算して、Fxの走査周波数を666.696Hz(Fx=2000/3+0.03=666.696Hz)とする。副走査の走査速度Vyを1mm/sとして、この走査周波数でWxの形成幅が得られるように振り幅を設定して、デューティ比50%で三角波駆動する主走査と同時に一定速度で副走査を行う。その後、副走査の途中で、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比3:1の関係から一定数P(例えば、Pを0.03Hzとする)を減算して、Fxの走査周波数を666.636Hz(Fx=2000/3−0.03=666.636Hz)に切り替える。この制御を周期的に交互に繰り返すことで、図9に示すように、9aと9bと9cのレーザ照射スポットの3つの系列の周期構造の帯10a、10b、10cがお互いに交わらず蛇行する周期構造を作成することができる。
【0036】
前記のように構成された周期構造の作成装置にて、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比3:1の関係から一定数P(例えば、Pを0.03Hzとする)を加算して、Fxの走査周波数を666.696Hz(Fx=2000/3+0.03=666.696Hz)とする。副走査の走査速度Vyを1mm/sとして、この走査周波数でWxの形成幅が得られるように振り幅を設定して、デューティ比50%で三角波駆動する主走査と同時に一定速度で副走査を行う。その後、副走査の途中で、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比3:1の関係から一定数P(例えば、Pを0.03Hzとする)を減算して、Fxの走査周波数を666.636Hz(Fx=2000/3−0.03=666.636Hz)に切り替える。この制御を周期的に交互に繰り返す。このとき、さらに、レーザの遮光を制御することによって、図10に示すように、9aと9bと9cのレーザ照射スポットの3つの系列の周期構造の帯10a、10b、10cがお互いに交わらず蛇行する周期構造を間欠的に作成できる。
【0037】
前記のように構成された周期構造の作成装置にて、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の関係が整数比3:1の関係として、Fxの走査周波数を666.666Hzとする。この走査周波数でWxの形成幅が得られるように振り幅を設定して、デューティ比50%で三角波駆動する主走査と同時に一定速度で副走査を行う。その後、副走査の途中で、パルスレーザ光源の繰返しパルスと主走査間の位相差をパルスレーザ光源の繰返しパルスの半周期分だけ遅らせる。さらに、副走査の途中で、パルスレーザ光源の繰返しパルスと主走査間の位相差をパルスレーザ光源の繰返しパルスの半周期分だけ進めて最初の位相に戻す。この制御を周期的に交互に繰り返すことで、図11に示すように、離散的な複数の領域に間欠な周期構造の市松模様のパターニングを、一度の副走査で得ることができる。
【0038】
前記図5〜図11に示すような形状の周期構造は、副走査の途中で変更して組み合わせ、又は、レーザ照射のON/OFF制御と併用することができる。すなわち、走査方法を、副走査の途中で変更して組み合わせ、又は、レーザ照射のON/OFF制御と併用することによって、図示のものや図例以外の種々の形状のものを作成できる種々の形状(模様)や種々の大きさ周期構造を、短時間に高精度に形成することができる。
【0039】
図2に本発明にかかる周期構造の作成装置の第2の実施例の簡略全体斜視図を示す。図2に示す周期構造の作成装置でも、パルスレーザ光源1と、主走査を行う主走査用偏向器5と、副走査を行う副走査用偏向器6と、パルスレーザ光源1に対して整数比の関係か、整数比の関係から一定数を加減した関係になるように、主走査用偏向器5の走査周波数を同期制御する制御手段20を備える。図1と異なるのは、主走査用偏向器5にポリゴンミラーを用いた点である。ガルバノスキャナよりもより高速域の追随性能が望めて速度リップルが小さいため、レーザー照射スポットの位置精度が向上して、より安定した加工が行える。また、副走査用偏向器6に加工対象物8が連続移動が可能なベルトコンベア用いることで、ロールツーロールのフィルム状の加工対象物にも、周期構造のパターニングの自由度を損なうことなく、継ぎ目のない連続する周期構造や間欠周期構造など、多彩なパターニングが可能で、作成作業時間の短縮化も図ることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数との整数比として、実施形態のものに限る必要がなく、種々変更することができる。また、実施形態では、主走査の駆動波形にsin波と三角波を用いたが、これに限る必要がなく種々変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 パルスレーザ光源
2 ビームエキスパンダ
3 ミラー
4 偏向器
5 主走査用偏向器
6 副走査用偏向器
7 集光レンズ
8 加工対象物
9 レーザ照射スポット
10 周期構造
20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に一軸のパルスレーザをオーバーラップさせながら照射して、そのレーザ波長程度に微細な凹凸溝を方向性をもたせて周期的に形成する、周期構造の作成方法であって、主走査を行う主走査用偏向器と副走査を行う副走査用偏向器とを、連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の関係を一定に保つことで、レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して、二次元的に走査することを特徴とする周期構造の作成方法。
【請求項2】
パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の関係が、整数比の関係になるように、パルスレーザ光源の繰返し周波数又は主走査用偏向器の走査周波数を定めることを特徴とする、請求項1に記載の周期構造の作成方法。
【請求項3】
パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の関係が、整数比の関係から一定数を加減した関係になるように、パルスレーザ光源の繰返し周波数又は主走査用偏向器の走査周波数を定めることを特徴とする、請求項1に記載の周期構造の作成方法。
【請求項4】
複数系列のレーザ照射スポットに主走査方向のうねりを与えながら、複数系列のレーザ照射スポットの軌跡が重なる位置にだけ周期構造が形成されるように、レーザエネルギを調整して、離散的な複数の領域に間欠な周期構造を作成することを特徴とする、請求項3に記載の周期構造の作成方法。
【請求項5】
パルスレーザ光源の繰返し周波数か主走査用偏向器の走査周波数のいずれか、又は両方を、副走査の途中で変更することを特徴とする、請求項1に記載の周期構造の作成方法。
【請求項6】
パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査周波数の周波数比を保ったまま、両者の位相差を制御することで、レーザ照射スポットを主走査方向にシフトさせることをことを特徴とする、請求項1に記載の周期構造の作成方法。
【請求項7】
前記請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の周期構造の作成方法における走査方法を、副走査の途中で変更して組み合わせ、又は、レーザ照射のON/OFF制御と併用することを特徴とする周期構造の作成方法。
【請求項8】
加工対象物に一軸のパルスレーザをオーバーラップさせながら照射して、そのレーザ波長程度に微細な凹凸溝を方向性をもたせて周期的に形成する、周期構造の作成装置であって、パルスレーザ光源と、主走査を行う主走査用偏向器と、副走査を行う副走査用偏向器と、パルスレーザ光源と主走査用偏向器との同期動作を制御する制御手段とを備え、主走査を行う主走査用偏向器と副走査を行う副走査用偏向器とを、連続的に動作させながら、パルスレーザ光源の繰返し周波数と主走査用偏向器の走査周波数の関係を一定に保つことで、レーザ照射スポットがレーザ照射済みスポットの一部を含むようにオーバーラップ位置を制御して、二次元的に走査することを特徴とする周期構造の作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71148(P2013−71148A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211409(P2011−211409)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000110859)キヤノンマシナリー株式会社 (179)
【Fターム(参考)】