説明

周辺監視装置

【課題】道具を利用して移動する道具利用者と歩行者とを区別して認識することができる周辺監視装置を提供する。
【解決手段】周辺監視装置1は、レーザーレーダーセンサ2、カメラセンサ3及びECU4を備えている。センサ2,3では、車両10周辺の物体11の形状を認識する。ECU4では、形状認識結果に基づいて人候補の有無を判定し、その人候補の動作を算出し、そして、算出した動作に基づいて遊具利用動作の有無を判定し、遊具利用動作がありと判定された場合には、人候補を、遊具を利用して移動する遊具利用者H2として検出する。周辺監視装置1によれば、道具利用者H2を歩行者H1と区別して検出し認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両周辺を監視するための周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の周辺監視装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この周辺監視装置では、車両周辺の対象物を人か自動車等か区別して認識し、認識した対象物の種類に応じて危険度を演算する。
【特許文献1】特開2003−81039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、道具を利用して移動する道具利用者(以下、単に「道具利用者」ともいう)と、歩行者とでは、同じ人でも移動時の特徴が異なる。そのため、例えば車両の運転支援等を行う場合においては、これらを区別できることが望ましい。よって、上述したような周辺監視装置では、道具利用者と歩行者とを区別して認識できることが求められている。
【0004】
そこで、本発明は、道具を利用して移動する道具利用者と歩行者とを区別して認識することができる周辺監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る周辺監視装置は、車両周辺を監視するための周辺監視装置であって、人を認識する人認識手段と、人認識手段で認識した人についての所定動作の有無を判定する動作判定手段と、動作判定手段による判定結果に基づいて、人認識手段で認識した人を、道具を利用して移動する道具利用者として検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この本発明の周辺監視装置では、人認識手段で認識した人を、動作判定手段による判定結果に基づいて道具利用者として検出することから、道具利用者を歩行者と区別して検出し認識することができる。なお、ここでの「歩行者」は、道具を利用せずに移動している人を意味し、歩行及び走行する人等を含むものである。
【0007】
ここで、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、動作判定手段は、姿勢変化及び移動方向変化の有無を、前記所定動作の有無として判定する構成が挙げられる。
【0008】
また、人認識手段で認識した人についての体の向き及び移動方向を認識する移動状態認識手段をさらに備え、検出手段は、移動状態認識手段による認識結果に基づいて、検出した道具利用者を道具に応じて分類することが好ましい。これにより、例えば、体の向きと移動方向とが一致する道具(例えばローラスケート等)を利用する場合と、一致しない道具(例えばスケートボード等)を利用する場合とで道具利用者を分類することができる。よって、利用する道具に応じて道具利用者を細分化して検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、道具を利用して移動する道具利用者と歩行者とを区別して認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る周辺監視装置を示す概略構成図であり、図2は、図1の周辺監視装置の処理手順を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の周辺監視装置1は、自動車等の車両10に搭載され、当該車両10周辺を監視するためのものである。ここでの周辺監視装置1は、例えば自動運転やクルーズコントロール(全車速を含む)等の運転制御の対象障害物として、車道12上を走行する車両10周辺の物体11を監視する。
【0012】
この周辺監視装置1は、車両10前部に取り付けられたレーザーレーダーセンサ2と、車両の周辺を撮影するカメラセンサ3と、例えばCPUやROM等を含むコンピュータを主体として構成されたECU(Electronic Control Unit)4と、を備えている。この周辺監視装置1では、センサ2,3により物体11の形状を認識し(図2のS1)、その形状認識結果に基づきECU4にて以下の処理を実行する。
【0013】
すなわち、センサ2,3による物体11の形状認識結果に基づいて、人と推定される候補(以下、単に「人候補」という)の有無を判定する(S2)。人候補が無い場合には、そのまま処理を終了する一方、人候補がある場合には、その人候補の動作を算出する(S3)。ここでは、人候補の動作として、人候補の形状の時間変化及び移動方向を算出している。
【0014】
続いて、算出した動作に基づいて動作判定を実行し、かかる動作判定に基づいて、人候補を歩行者H1、遊具利用者H2又は不明として検出して認識する。
【0015】
具体的には、算出した動作に基づいて歩行動作の有無を判定し、歩行動作がありと判定された場合には、人候補を通常の歩行者H1として検出する(S4→S5)。ここでの歩行動作としては、例えば、歩行している足の動き、及び歩行している上下の揺れ等の動作が挙げられる。その結果、歩行者H1の動きに応じるように車両10の運転制御のパラメータが修正されると共に、歩行者H1の動きに合わせてブレーキアクチュエータ17が制御される。
【0016】
また、算出した動作に基づいて、遊具を利用している状態の動作である遊具利用動作(所定動作)の有無を判定し、遊具利用動作がありと判定された場合には、人候補を、遊具を利用して移動する遊具利用者H2として検出する(S4→S6)。詳言すると、遊具利用動作として、例えば数秒程度の短時間の間ほぼ同一姿勢で、且つほぼ一定方向に進行しているか否かを判定することで、人候補を、ローラーを備えたローラー遊具(ローラースケート、スケートボード及びキックボード等)を利用する遊具利用者(以下、「ローラ遊具利用者」という)H2として検出する。その結果、ローラー遊具利用者H2の動きに応じるように車両10の運転制御のパラメータが修正されると共に、ローラー遊具利用者H2の動きに合わせてブレーキアクチュエータ17が制御される。
【0017】
さらにまた、算出した動作に基づいて静止(動きがほぼ無い)状態か否かを判定し、静止状態と判定された場合には、人候補を不明として検出し、そのまま処理が終了する(S4→S7)。ここでは、算出した動作に基づき上記歩行動作及び上記遊具利用動作が無いと判定された場合においても、人候補を不明として検出する。
【0018】
ところで、従来、周辺監視装置では、外観上において歩行者と変わらないローラー遊具利用者H2を区別して認識することは困難であることから、ローラー遊具利用者H2が歩行者と誤認識され、運転制御の際に推定した移動速度や移動態様等が誤ったものとなるおそれがある。
【0019】
これに対し、本実施形態では、上述したように、認識した人候補の動作を算出し、この動作に基づいて歩行者H1又は遊具利用者H2として人候補を検出している。よって、遊具利用者H2を歩行者と区別して認識することが可能となる。その結果、歩行者の動作と遊具利用者の動作のそれぞれに合わせた運転制御を実現でき、車両10と人との接触回避効果をより一層高めることができる。
【0020】
特に、車道12と歩道13との間にこれらを分離する植込14が配設され、遊具利用者H2がローラースケート等のローラー遊具15を装備していると(図1参照)、この植込14のためにローラー遊具15をカメラセンサ3で直接認識するのが困難であることから、ローラー遊具利用者H2が歩行者H1として認識されたり、不明として認識されたりする場合が多い。この点、本実施形態では、上述したように、短時間の間ほぼ同一姿勢で、且つほぼ一定方向に進行しているか否かを判定し、人候補をローラー遊具利用者H2として検出するため、歩行者H1とローラー遊具利用者H2とを精度よく区別して認識することができる。これは、ローラー遊具利用者H2にあっては、通常、短時間では滑走しているために姿勢変化がほとんどない状態であると共に、一定方向へ移動するためである。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明においては、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0022】
図3は、本発明の第2実施形態に係る周辺監視装置の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の周辺監視装置では、ECU4において、上記第1実施形態の処理に加えて次の処理が実行される。

すなわち、認識した人候補をローラー遊具利用者H2として検出した場合、センサ2,3による形状認識結果に基づいて、ローラー遊具利用者H2の移動ベクトル(移動方向)を算出して認識する(図3のS11→S12)。また、センサ2,3による形状認識結果に基づいて、ローラー遊具利用者H2の体の向きを算出して認識する(S13)。そして、これら移動ベクトル及び体の向きの相関関係を判定し、かかる相関関係に基づいて利用するローラー遊具15ごとにローラー遊具利用者H2を分類する。
【0023】
具体的には、移動ベクトルと体の向きとがほぼ直交すると判定した場合、ローラー遊具利用者H2をスケートボード等の利用者として検出する(S14→S15)。一方、移動ベクトルと体の向きとがほぼ一致すると判定した場合、ローラー遊具利用者H2をローラースケート等の利用者として検出する(S14→S16)。他方、移動ベクトルと体の向きとの相関が無い(直交及び一致しない)場合、ローラー遊具利用者H2を不明として検出する(S14→S17)。
【0024】
そして、分類したローラー遊具15に応じて、ローラー遊具利用者H2のその後の移動方向が予測される。これにより、かかる予測結果に基づいて、車両10の運転制御のパラメータが修正されると共にブレーキアクチュエータ17が制御される。
【0025】
以上、本実施形態によれば、ローラースケート等を利用する場合とスケートボード等を利用する場合とでローラー遊具利用者H2を分類し、利用するローラー遊具15に応じてローラー遊具利用者H2を細分化して検出することができる。つまり、ローラー遊具15を一括りに認識せずに個別具体的に認識でき、その種類に応じてローラー遊具利用者H2を識別可能となる。ここでは、ローラー遊具15を装備した人の中でも、スケートボード等とローラースケート等とを区別することができる。これにより、遊具利用者H2の動作を一層精度よく予測することが可能となる。
【0026】
ここで、図4に示すように、ローラー遊具利用者H2が利用するローラー遊具15がスケートボード16の場合、人の向きが車道12側又は車道12と反対側となるため、一般的な周辺監視装置によれば、ローラー遊具利用者H2が車道に進行すると誤推定してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、スケートボード等とローラースケート等とを区別できるため、仮にローラー遊具利用者H2が車道12側を向いていても、車道12側に進行しないという適切な推定が可能となると共に、倒れる等の不測の事態を考慮して運転制御を行うことができる。
【0027】
なお、「スケートボード等」は、例えばスケートボードのように使用時の移動ベクトルと体の向きとがほぼ直交するローラー遊具を意図し、「ローラースケート等」は、例えばローラースケート、自転車又はキックボード等のように使用時の移動ベクトルと体の向きとがほぼ一致するローラー遊具を意図している。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、上記実施形態では、遊具を利用する遊具利用者H2を検出したが、遊具でなくとも、車両以外の移動のために用いる器具としての道具(例えば、車いす等)を利用している道具利用者を検出してもよい。なお、本発明の適用可能な遊具は、上述したローラー遊具15に限定されず、種々のものに適用しても勿論よい。
【0030】
また、上記実施形態では、短時間の間ほぼ同一姿勢で且つほぼ一定方向に進行しているか否かを判定することで、所定動作である遊具利用動作の有無を判定したが、これに限定されるものではなく、利用する道具に応じた所定動作の有無を判定すればよい。
【0031】
ちなみに、以上において、センサ2,3と人候補の有無を判定するECU4とが人認識手段を構成し、遊具利用動作の有無を判定するECU4が動作判定手段を構成し、道具利用者H2を検出するECU4が検出手段を構成し、センサ2,3と移動ベクトル及び体の向きを算出するECU4とが、移動状態認識手段を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る周辺監視装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の周辺監視装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る周辺監視装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る周辺監視装置においてスケートボードを利用するローラー遊具利用者を認識する場合を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1…周辺監視装置、2…レーザーレーダーセンサ(人認識手段)、3…カメラセンサ(人認識手段)、4…ECU(人認識手段,動作判定手段,検出手段,移動状態認識手段)、10…車両、H2…道具利用者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を監視するための周辺監視装置であって、
人を認識する人認識手段と、
前記人認識手段で認識した前記人についての所定動作の有無を判定する動作判定手段と、
前記動作判定手段による判定結果に基づいて、前記人認識手段で認識した前記人を、道具を利用して移動する道具利用者として検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする周辺監視装置。
【請求項2】
前記動作判定手段は、姿勢変化及び移動方向変化の有無を、前記所定動作の有無として判定することを特徴とする請求項1記載の周辺監視装置。
【請求項3】
前記人認識手段で認識した前記人についての体の向き及び移動方向を認識する移動状態認識手段をさらに備え、
前記検出手段は、前記移動状態認識手段による認識結果に基づいて、検出した前記道具利用者を前記道具に応じて分類することを特徴とする請求項1又は2記載の周辺監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−97488(P2010−97488A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268859(P2008−268859)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】