説明

哺乳類EAG1イオンチャネルタンパク質に対する新規の抗体

本発明は、哺乳類EAG1イオンチャネルの細胞外または細胞内ドメインの少なくとも1つのエピトープと特異的に結合/相互作用するのに特に有利な抗体、抗体断片またはその誘導体、およびそれらをコードする核酸分子、ならびに該核酸分子を含有するベクターに関する。本発明は、さらに該抗体、抗体断片またはその誘導体の調製のための方法、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。さらに本明細書では、該抗体、抗体断片またはその誘導体の使用および該成分を含有する診断用組成物も開示される。本発明は、EAG1発現細胞の存在について評価する方法および該細胞内でのEAG1機能を遮断する方法にも関する。本発明は、さらに該抗体または抗体断片またはその誘導体を活用して疾患を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類EAG1イオンチャネルの細胞外または細胞内ドメインの少なくとも1つのエピトープと特異的に結合/相互作用するのに特に有利な抗体、抗体断片またはその誘導体、およびこれらをコードする核酸分子、ならびに該核酸分子を含有するベクターに関する。本発明は、さらに該抗体、抗体断片またはその誘導体の調製のための方法、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。さらに本明細書では、該抗体、抗体断片またはその誘導体の使用および該成分を含有する診断用組成物も開示される。本発明は、EAG1発現細胞の存在について評価する方法および該細胞内でのEAG1機能を遮断する方法にも関する。本発明は、さらに該抗体または抗体断片またはその誘導体を活用して疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、多数の文書が引用される。これにより、製造業者の使用説明書を含むこれらの文書の開示内容は、その全体が参照により援用される。
【0003】
カリウムチャネルは細胞内に遍在する。これについての1つの理由は、チャネルがそれらの主要な役割として見られている細胞の静止電位の調節に関与することであると推定される。しかし、上記の如く異なる細胞タイプ内でチャネルが遍在すると仮定すると、それらが「ハウスキーピング(housekeeping)」機能などのより一般的な機能にも関与する可能性があると推測されている。特に、それらが癌発症に関与する可能性を示唆する細胞分裂周期へのそれらの関与を示唆する実験的証拠が提示されている(非特許文献1)。事実、eagファミリーEAG1のメンバー、およびhergが癌細胞内で優先的に発現されることが提示されている(非特許文献2、非特許文献3)。該チャネルが様々な細胞タイプ内および特に腫瘍細胞などの癌細胞を含む分裂細胞内でも発現されることから、該カリウムチャネルに関連した治療用途および/または診断用途において使用可能であると思われるツールを提供することへの医学的関心は高い。
【0004】
ヒトEAG1イオンチャネルに特異的な抗体は先行技術において既知であった。例えば、特許文献1では、EAG1イオンチャネルならびに該チャネルに特異的な抗体が記載されている。
【特許文献1】EP第1073738号明細書
【非特許文献1】ウアディ・アヒダッチ H.(Ouadid−Ahidouch H.)ら、2001年
【非特許文献2】メイヤー R.(Meyer R.)ら、1999年
【非特許文献3】ビアンキ I(Bianchi I)ら、1998年
【発明の開示】
【0005】
診断用途および/または治療用途をさらに拡張するため、哺乳類、特にヒトにおけるEAG1とEAG2を特異的に識別する一方で他の哺乳類のEAG1チャネルも認識する抗体を有することが望ましかった。
【0006】
したがって、本発明に内在する技術的課題は、異なる哺乳類種由来のEAG1と相互に関連性がある障害および/または疾患に対するさらなる特定の試験、診断、予防ならびに治療のために利用可能なかかる抗体を提供することであった。
【0007】
特許請求の範囲において特徴づけられる実施形態を提供することにより、該技術的課題に対する解決策が得られる。
【0008】
したがって、本発明は、VHおよび/またはV領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、抗体、抗体断片またはその誘導体に関し、該CDRを決定するアミノ酸配列は、(V)配列番号160〜162、166〜168、172〜174、および178〜180からなる群から選択され、かつ(VH)配列番号163〜165、169〜171、175〜177、および181〜183からなる群から選択される。
【0009】
本発明に記載の「抗体断片またはその誘導体」という用語は、抗体断片と、本発明の抗体および本発明の抗体断片の誘導体とに関する。抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片およびFv断片を含む。抗体の誘導体は、EAG1への望ましい結合能を示す限り、scFvコンストラクト、キメラ抗体またはヒト化もしくはヒト抗体を含む。
【0010】
治療目的の抗体は、場合によって脱免疫化される。脱免疫化(ヒト化)抗体の作製方法に関する例を、米国特許第6,054,297号明細書、同第5,886,152号明細書および同第5,877,293号明細書において見出すことが可能である。診断を目的として、抗体、断片またはその誘導体は優先的に標識される。適切な標識として、放射性標識および蛍光標識が含まれる。
【0011】
「相補性決定領域」という用語は、当該技術では明示的であり(例えば、ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane)、「Antibodies,a laboratory manual」、CSH Press、Cold Spring Harbour、1988年を参照)、一次的に抗原と接触する抗体の可変領域内のアミノ酸ストレッチを示す。
【0012】
上記の如く、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体は、哺乳類、特にヒトにおけるEAG1とEAG2を特異的に識別する一方で他の哺乳類のEAG1チャネルも認識する。マウスEAG2に対してはやはり識別する一方で齧歯類のEAG1に対して認識不能であるとしたら抗体調製における有効性およびより重要には安全性を試験するのに動物モデルの利用可能性が制限されることから、もし臨床シナリオ上、抗体の特性を利用する必要がある場合、このことは重大である。
【0013】
上で示しているように、抗体、抗体断片またはその誘導体の特異性は相補性決定領域のアミノ酸配列内に存在し、これは当該技術において既知の現象である。抗体の各可変ドメイン(重鎖VHおよび軽鎖V)は、4つの相対的に保持されたフレームワーク領域すなわち「FR」によって隣接される、超可変領域と呼ばれることがある3つの相補性決定領域を含む。抗体の特異性は、VH鎖のCDRなどのCDRによって決定されるかまたは主に決定されることが多い。当業者は、さらに改善された特異性および生物学的機能を有する抗体の構築においては上記CDRを有する抗体、抗体断片またはその誘導体の可変ドメインを使用可能であることを容易に理解するであろう。その限りにおいて、本発明は、上記可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、かつ有利にも添付の実施例に記載の抗体と同一の、類似のまたは改善された結合特性を実質的に有する抗体、抗体断片またはその誘導体を包含する。当業者であれば、添付の配列リストに列挙されかつ本発明の主な実施形態によって必要とされる少なくとも1つのCDRを含む抗体をはじめ、さらに特異性および/もしくは親和性を高めた、最初に同定されたモノクローナル抗体または異なる抗体を由来とするCDRを組み合わせることができる。CDR移植は当該技術で周知であり、元の特異性が保持される限り、これを用いて、本発明の抗体、断片またはその誘導体の他の特性の中でも特異的親和性を微調整してもよい。抗体、断片または誘導体が、元のマウス抗体のうちの少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは、少なくとも5つを例とする少なくとも4つ、および特に好ましくは全部で6つのCDRを含むことは有利である。本発明のさらなる選択肢として、最初に同定された異なるモノクローナル抗体由来のCDRを実体の新規抗体において組み合わせることが可能である。これらの場合、重鎖の3つのCDRが同一抗体に由来する一方、軽鎖の3つのCDR全部が異なる抗体に由来する(同一抗体に由来するすべてのものを除く)ことが好ましい。当該技術で既知の従来の技術を用い、例えば、アミノ酸欠失、挿入、置換、付加、および/または組換えおよび/または当該技術で既知の任意の他の修飾を単独でもしくは組み合わせて用いることにより、本発明の抗体またはそれらに対応する免疫グロブリン鎖をさらに修飾してもよい。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列に内在するDNA配列においてかかる修飾を導入するための方法は当業者にとって周知であり、例えば、サムブルック(Sambrook)、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989年)N.Y.を参照のこと。
【0014】
さらに、本発明の抗体は、その結合特異性および生物学的活性に関連した有利な特性を示す。特に、本発明の抗体がヒトEAG1イオンチャネルを認識するだけでなく、他の哺乳類種のEAG1イオンチャネルも認識可能であることが示されうると思われる。該種は、ラット、マウス、非ヒト霊長類を含むがこれらに限定されない。
【0015】
好ましくは、本発明のEAG1抗体は、
・会合(assembly)領域における三次元または線形エピトープへの結合
・細胞外ドメインに結合する細胞外ポアドメインにおける線形または三次元エピトープへの結合
・C末端の細胞内ドメインに対する結合
・高親和性を有する結合
といった特性の少なくとも1つを示す。
【0016】
したがって、これらの抗体は広範な実験動物ならびにヒト組織におけるEAG1の特異的検出において使用可能であるという利点を有する。このように、異なる種においてEAG1を認識する抗体の産生にかかるコストを低減することが可能である。
【0017】
本発明の抗体は、インビトロとインビボの双方において哺乳類EAG1カリウムチャネルの特異的な認識を可能にする。
【0018】
好ましくは、本発明の抗体のEAG1に対する結合は、
・K+チャネル媒介性電流を阻害する
・イオンチャネルの内在化をもたらす
・イオンチャネルのサブユニット会合を阻害する
・二次メッセンジャーの放出または活性化を低下させる
・細胞成長を低減するかまたは阻害する
・イオンチャネルのホモ/ヘテロ多量体の形成を阻害する
といった諸特性のうちの少なくとも1つを示す。
【0019】
細胞表面上の本発明の抗体に結合しているEAG1発現細胞は、補体系または細胞媒介性の細胞毒性などの免疫系機能によって最終的に攻撃される。
【0020】
上記の如く、さらに言い換えると、本発明の抗体は、その結合特異性および生物学的活性に関連する、特に異なる哺乳動物におけるEAG1イオンチャネルのエピトープに対するその認識能およびそれが細胞成長を低減する能力に関連する有利な特性を示す。本発明の抗体の医薬用途および/または診断用途にはヒトが含まれる(がこれに限定されない)ことから、本発明の一部の抗体(抗体ImAb3およびImAb4)はヒト化され(配列番号9〜40)、さらにヒトにおいて使用される場合、潜在的な負の免疫原的副作用を最小にするように開発された。
【0021】
マウスにおいて、本発明の一部を形成し、本発明のさらに好ましい実施形態をもたらす最初のモノクローナル抗体が産生された。遺伝子操作によってヒトでの免疫原性を低下させるため、マウス抗体をヒト抗体配列に適応させた。そのように設計された抗体では、サブタイプIgG1(重鎖)およびカッパ(軽鎖)を選択することで免疫活性化が最大限に惹起された。
【0022】
実験的にモノクローナル抗体を産生する場合、Eag1のポア領域(第5および第6の膜貫通セグメントの間のループ、位置369〜433;領域A)およびEag1のC末端セグメント(位置850〜920;領域B)を含有する融合タンパク質が抗原として使用された。それらの領域におけるEag1とEag2の間の類似性は、それぞれ69%と62%である。領域Aは細胞外であり、領域Bは認められたトポグラフィック(topographic)モデルの下では細胞内である。
【0023】
産生抗体におけるEag1とEag2の間の選択性については、ELISAおよびBIAcoreによって確認された。それらの中で定性化されかつサブクローニングされたのは極めて少数に過ぎなかった。これらの中の5種が維持されている。それらの中の4種が領域A内のエピトープを認識し、1種だけが領域B内のエピトープを認識する。4種の「A型」抗体全部が線形エピトープを認識し、それらの中の3種はそれらのCDRが異なる可能性があっても単一のエピトープを共有する。「B型」抗体は三次元エピトープを認識する。
【0024】
産生抗体の諸特性が、それらの結合親和性(図2)、特異性(図3)、それらが認識しかつ結合するエピトープ(図4)およびEAG1イオンチャネルの阻害(図6)と関連して特徴づけられた。イオンチャネルの内在化を誘発するための本発明の抗体の諸特性は、免疫蛍光(図5)によって検討された。さらに、細胞増殖アッセイ(図7、8a、8b)および軟寒天アッセイ(図9)では、抗体の細胞成長に対する阻害能が特徴づけられた。これらの実験結果は、抗体が想定外の生物学的特異性を確かに保有することを示した。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、該抗体、抗体断片またはその誘導体は、哺乳類EAG1イオンチャネルの細胞外または細胞内ドメインの少なくとも1つのエピトープと特異的に結合/相互作用し、かつ哺乳類EAG2イオンチャネルと結合/相互作用することはない。
【0026】
本発明に記載の「細胞外ドメイン」という用語は、当該技術では周知の用語であり、細胞外環境内に延びるEAG1チャネルの一部に関する。このドメインは、数ある中で哺乳類EAG1分子のアミノ酸374〜452を含有する。
【0027】
本発明と関連して用いられる「細胞内ドメイン」という用語は、細胞質内に延びる哺乳類EAG1チャネルの一部を意味する。同ドメインはアミノ酸872〜932を含有する。
【0028】
本発明のさらに好ましい実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0029】
例えば、マウス骨髄腫細胞と人工的に開発された修飾を伴う免疫された哺乳類由来の脾臓細胞との融合を含む、コーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、Nature 256(1975年)、495頁、ならびにガルフレ(Galfre)、Meth.Enzymol.73(1981年)、3頁に最初に記載された定着技術により、モノクローナル抗体を調製することが可能である。
【0030】
腫瘍の発生機構の発見に基づく、腫瘍細胞を標的にするために有効な戦略は、モノクローナル抗体の使用である。例えば、チロシンキナーゼHER2受容体に特異的な抗体のHerceptin(商標)は、化学療法単独の場合と比べて乳癌患者の平均生存率を約25%改善し、かつ極めて軽度の副作用を有するに過ぎない。腫瘍治療においてモノクローナル抗体を使用するための他の戦略には、Mylotarg(商標)のような免疫毒素、カリケアマイシンに抱合された組換えIgG4カッパ抗体、および例えばZevalin(商標)のような放射性同位体で標識された抗体が含まれる。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、抗体断片またはその誘導体は、Fab−断片、F(ab)’−断片、一本鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二価抗体−コンストラクト、ヒト化抗体、ヒト、合成抗体、またはこれらの化学的に修飾された誘導体、多特異的抗体、二重特異性抗体(diabody)、Fv−断片、または別タイプの組換え抗体である。
【0032】
例えば、ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane)「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor、1988年に記載の方法を用いることにより、上記エピトープに特異的な上記抗体の断片または誘導体を得ることが可能である。該抗体の誘導体がファージディスプレイ技術によって得られる場合、BIAcore系において利用される表面プラスモン共鳴を利用することでファージ抗体のEAG1のエピトープに結合する効率を増大させることが可能である(シアー(Schier)、Human Antibodies Hybridomas 7(1996年)、97−105頁;マルムボルグ(Malmborg)、J.Immunol.Methods 183(1995年)、7−13頁)。
【0033】
核酸分子、ベクターおよび宿主細胞を使用して変異EAG1抗体を作製することが可能である。抗体は重鎖および/または軽鎖の可変ドメインにおいて突然変異を受け、抗体の結合特性が変化する可能性がある。例えば、1つもしくは複数のCDR領域内で突然変異が誘発されることで、EAG1に対する抗体のKdが増減するかまたは抗体の結合特異性が変化する可能性がある。部位特異的な突然変異誘発における技術は当該技術で周知である。例えば、上記のサムブルック(Sambrook)らおよびオースベル(Ausubel)らを参照のこと。さらに、EAG1抗体の可変領域における生殖細胞系と比べて変化を受けることで知られるアミノ酸残基で突然変異が誘発される。別の態様では、核酸分子は1つもしくは複数のフレームワーク領域内で突然変異を受ける。フレームワーク領域内または定常ドメイン内で突然変異が誘発されることで、EAG抗体の半減期が増大する可能性がある。例えば、2000年2月24日に公表された国際公開第00/09560号パンフレットを参照のこと。フレームワーク領域内または定常ドメイン内で突然変異が誘発されることで、抗体の免疫原性が変化するか、別の分子との共有結合もしくは非共有結合における部位が得られるか、または補体結合などの特性が変化する可能性もある。単一の変異抗体におけるフレームワーク領域、定常ドメインおよび可変領域の各々では、突然変異が誘発されうる。あるいは、単一の変異抗体におけるフレームワーク領域、可変領域または定常ドメインの中の一箇所に限り、突然変異が誘発されうる。
【0034】
キメラ抗体の産生については、例えば国際公開第89/09622号パンフレットに記載されている。ヒト化抗体の産生のための方法については、例えばEP第A10239400号明細書および国際公開第90/07861号パンフレットに記載されている。本発明に従って利用されるべき抗体のさらなる供給源はいわゆる異種抗体である。マウスにおけるヒト抗体などの異種抗体の産生のための一般的原理については、例えば、国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレットおよび国際公開第96/33735号パンフレットに記載されている。上で考察した如く、本発明の抗体は、例えば、Fv、FabおよびF(ab)2を含む、完全抗体以外の種々の形態、ならびに一本鎖で存在しうる。例えば国際公開第88/09344号パンフレットを参照のこと。
【0035】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、抗体、抗体断片またはその誘導体は、VH鎖およびV鎖の各々における少なくとも1つのCDRを含む。
【0036】
本発明のより好ましい実施形態では、該CDRはCDR3である。
【0037】
本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体のさらに好ましい実施形態では、軽鎖(V)は配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、43および47からなる群から選択され、かつ重鎖(V)は配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44および48からなる群から選択される。
【0038】
本発明は、さらに本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体をコードする核酸分子に関する。上記の抗体、抗体断片またはその誘導体をコードする本発明の核酸分子は、例えばDNA、cDNA、RNAまたは合成的に生成されたDNAもしくはRNAあるいはこれらの核酸分子のいずれかを単独でもしくは組み合わせて含有する組換え的に生成されたキメラ核酸分子でありうる。核酸分子は、遺伝子全体またはそれらの実質的部分または断片およびその誘導体に対応するゲノムDNAでもありうる。ヌクレオチド配列は、天然のヌクレオチド配列に対応するかあるいは単一または複数のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含みうる。
【0039】
本発明の特定の好ましい実施形態では、核酸分子はcDNA分子である。
【0040】
本発明は、本発明の核酸分子を含有するベクターにも関する。該ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスベクターでありうる。レトロウイルスベクターは、複製能力を有するかまたは複製能力に欠陥がある場合がある。後者の場合、一般に宿主/細胞を補充する場合に限ってウイルスの増殖が起こることになる。
【0041】
本発明の核酸分子を、宿主内での増殖を目的とする選択可能マーカーを含有するベクターに連結することが可能である。一般にプラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物または塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物、あるいは帯電脂質を有する複合体またはフラーレンなどの炭素に基づくクラスタに導入される。ベクターがウイルスである必要がある場合、宿主細胞への適用に先立ち、それを適切なパッケージング細胞系を用いてインビトロでパッケージングすることが可能である。
【0042】
好ましくは、本発明のベクターは、核酸分子が原核生物および/もしくは真核生物の宿主細胞における転写ならびに場合によって発現を可能にする1つまたは複数の制御配列に作動可能に連結される場合の発現ベクターである。該核酸分子の発現には、核酸分子の好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写が含まれる。真核生物細胞、好ましくは哺乳類細胞における発現を保証する調節因子は当業者に周知である。通常、それらは転写の開始を保証する調節配列および場合によって転写の終了および転写産物の安定化を保証するpoly−Aシグナルを含む。さらなる調節因子として、転写エンハンサーならびに翻訳エンハンサーが含まれる場合がある。原核生物宿主細胞における発現を可能にする考えられる調節因子には、例えば、大腸菌(E.coli)内のlac、trpもしくはtacプロモーターが含まれ、真核細胞の宿主細胞における発現を可能にする調節因子の例として、酵母内のAOXIもしくはGAL1プロモーターまたは哺乳類および他の動物細胞におけるCMV−、SV40−、RSV−プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV−エンハンサー、SV40−エンハンサーもしくはグロビンイントロンが挙げられる。調節因子などの転写の開始を担う因子以外に、ポリヌクレオチドの下流にあたるSV40−ポリ−A部位もしくはtk−ポリ−A部位などの転写終結シグナルも含まれる場合がある。これに関連し、適切な発現ベクターは、オカヤマ(Okayama)−ベルグ(Berg)のcDNA発現ベクターpcDV1(ファルマシア(Pharmacia))、pCDM8、pRc/CMV、pcDNAI、pcDNA3(インヴィトロジェン(In−vitrogene))、pSPORTI(ギブコ BRL(GIBCO BRL))などの当該技術において既知である。好ましくは、該ベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子導入もしくはターゲティングベクターである。レトロウイルス、種痘ウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターの標的細胞集団への送達において使用することが可能である。組換えウイルスベクターを構築するのに当業者にとって周知の方法を用いてもよい。例えば、サムブルック(Sambrook)、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(2001年、第3版)N.Y.およびオースベル(Ausubel)、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994年)に記載の技術を参照のこと。あるいは、標的細胞への送達のために本発明の核酸分子をリポソーム内に再構成してもよい。
【0043】
本発明は、さらに本発明のベクターを含有する宿主に関する。該宿主は、原核生物または真核生物の細胞でありうる。宿主細胞内に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれるかまたは染色体外に維持されうる。これに関連し、突然変異遺伝子を修復するかまたは相同組換えを介して突然変異遺伝子を創出することを目的とした「遺伝子ターゲティング」および/または「遺伝子置換」のために本発明の核酸分子を使用可能であることも理解されるべきであり、例えば、ムエリック(Mouellic)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87(1990年)、4712−4716頁;ジョイナー(Joyner)、Gene Targetting、A Practical Approach、Oxford University Pressを参照のこと。
【0044】
宿主細胞は、細菌、昆虫、真菌、植物、動物、哺乳類など、任意の原核細胞または真核細胞、あるいは好ましくはヒト細胞でありうる。好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属の細胞、特にサッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)種の細胞である。「原核生物」という用語は、本発明の変異ポリペプチドの発現を目的とする、ポリヌクレオチドによって形質転換されうるかまたはトランスフェクトされうるすべての細菌を含むことを意味する。原核生物宿主は、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌(S.typhimurium)、レイ菌(Serratia marcescens)および枯草菌(Bacillus subtilis)など、グラム陰性およびグラム陽性細菌を含みうる。本発明の変異ポリペプチドの突然変異形態をコードするポリヌクレオチドを使用することで、当業者に周知の技術のいずれかを用いて宿主を形質転換するかまたはトランスフェクトしてもよい。融合され作動可能に連結される遺伝子を調製し、細菌または動物細胞においてそれらを発現するための方法は、当該技術において周知である(サムブルック(Sambrook)、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(2001年、第3版))。遺伝子コンストラクトおよびそれに記載の方法を、例えば原核生物宿主において、本発明の変異抗体、抗体断片またはその誘導体を発現するのに用いてもよい。一般に、挿入された核酸分子の効率的な転写を促進するプロモーター配列を含有する発現ベクターが宿主との関連において使用される。発現ベクターは、典型的には複製起点、プロモーター、およびターミネーター、ならびに形質転換細胞の表現型選択をもたらすことが可能な特異的遺伝子を含有する。形質転換原核生物宿主を培養槽内で成長させかつ当該技術で既知の技術によって培養することで最適な細胞成長を得ることが可能である。次いで、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体を成長培地、細胞溶解物、または細胞膜画分から単離することが可能である。微生物的にまたはそれ以外により発現された本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体の単離および精製を、例えば、分取クロマトグラフィー分離や、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含む分離などの免疫学的分離を例とする任意の従来の手段によって実施しうる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、宿主は細菌、真菌、植物、両生類または動物細胞である。好ましい動物細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、3T3細胞、NSO細胞および多数の他の細胞系が含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
別の好ましい実施形態では、該動物細胞は昆虫細胞である。好ましい昆虫細胞にはSF9細胞系の細胞が含まれるがこれに限定されない。
【0047】
本発明のより好ましい実施形態では、該宿主はヒト細胞またはヒト細胞系である。該ヒト細胞にはヒト胚腎細胞(HEK293、293T、293フリースタイル)が含まれるがこれらに限定されない。さらに、該ヒト細胞系には、ヒーラ(HeLa)細胞、ヒト肝細胞の癌細胞(例えばHep G2)、A549細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0048】
いずれの細胞系が高い発現レベルを有するかについての判定を通じて、特に好ましい細胞系が選択される。
【0049】
異なる細胞系によりまたはトランスジェニック動物において発現される抗体が異なるグリコシル化状態を有することになりそうである。しかし、本明細書において提供される核酸分子によってコードされるかまたは本明細書において提供されるアミノ酸配列を含むすべての抗体は、抗体のグリコシル化状態に関係なく本発明の一部である。
【0050】
本発明は、本発明の抗体を産生するのに使用可能な本発明の1種もしくは複数種の核酸分子を含有するトランスジェニック非ヒト動物も提供する。抗体は、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターもしくは他の哺乳類の組織あるいは乳、血液または尿などの体液の中で産生され、かつそれらから回収されうる。例えば、米国特許第5,827,690号明細書、同第5,756,687号明細書、同第5,750,172号明細書、および同第5,741,957号明細書を参照のこと。上記の如く、EAG1またはその一部で免疫することにより、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物の生成が可能である。
【0051】
さらに本発明は、該抗体、抗体断片またはその誘導体の合成を可能にする条件下で本発明の宿主を培養するステップと、該抗体、抗体断片またはその誘導体を該培養物から回収するステップとを含む、抗体、抗体断片またはその誘導体を調製するための方法に関する。
【0052】
形質転換宿主を培養槽内で成長させかつ当該技術で既知の技術によって培養することで、最適な細胞成長を得ることが可能である。全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、または本発明の他の免疫グロブリン形態は、一旦発現されると、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当該技術の標準手順に従って精製可能である。スコープス(Scopes)、「Protein Purification」、Springer−Verlag、N.Y.(1982年)を参照のこと。次いで、本発明の抗体またはそれに対応する免疫グロブリン鎖を成長培地、細胞溶解物、または細胞膜画分から単離することが可能である。例えば、本発明の微生物によって発現された抗体または免疫グロブリン鎖の単離および精製を、分取クロマトグラフィー分離や、例えば本発明の抗体の定常領域に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含む分離などの免疫学的分離を例とする任意の従来の手段によって実施しうる。
【0053】
例えば薬物ターゲティングおよびイメージングの用途において、本発明の抗体を他の成分とさらに結合させることが可能であることが当業者には明らかであろう。抗体または抗原の付着部位への発現後にかかる結合を化学的に行うかあるいは結合産物を本発明の抗体または抗原にDNAレベルで設計することが可能である。次いで、適切な宿主系においてDNAが発現され、必要に応じて発現されたタンパク質が回収および再生される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、抗体、抗体断片またはその誘導体は、カリケアマイシン、アウリスタチンEまたはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)などのエフェクター、放射性同位体あるいはゲルダナマイシンおよびメイタンシンなどの毒性のある化学療法剤と結合される。好ましくは、これらの抗体抱合体は、EAG1を発現する癌細胞を例とする細胞を除去を目的に標的にする場合に有用である。さらに、本発明の抗体/抗体断片の放射性同位体などへの連結は、腫瘍治療に対する利点を提示する。化学療法や他の形態の癌治療と異なり、放射免疫治療または放射性同位体−抗体の併用投与は癌細胞を直接標的にしても周囲の正常で健全な組織への損傷は最小限である。好ましい放射性同位体として、例えばH、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iが挙げられる。
【0055】
さらに、本発明の抗体をゲルダナマイシン(マンドラー(Mandler)ら、J.Natl.Cancer Inst、92(19)、1549−51頁(2000年))およびメイタンシノイド薬DM1を例とするメイタンシン(リウ(Liu)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:8618−8623頁(1996年))およびアウリスタチンE(ドローニナ(Doronina)ら、Nat.Biotechnol.21:778−784頁(2003年))などの毒性のある化学療法剤と抱合した状態で使用することで、癌を治療することが可能である。この技術では、酸性または還元条件下でまたは特異的なプロテアーゼへの暴露時に薬剤を放出する異なるリンカーが利用される。当該技術に記載の如く、本発明の抗体は抱合可能である。
【0056】
しかし、本発明はさらに、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体、核酸分子、ベクター、宿主あるいは本発明の方法によって得られる抗体、抗体断片またはその誘導体を含む医薬組成物に関する。
【0057】
本明細書で用いられる「組成物」という用語は、本発明の少なくとも1種の化合物を含む。好ましくは、かかる組成物は医薬組成物または診断用組成物である。
【0058】
組成物は、固体、液体または気体の形態、特に粉末、錠剤、溶液またはエアロゾルの形態でありうる。該組成物は、本発明の少なくとも2種、好ましくは3種、より好ましくは4種、最も好ましくは5種の化合物または該化合物をコードする核酸分子を含有しうる。該組成物は、本発明の方法によって得られる最適化された抗体、抗体断片またはその誘導体も含有しうる。
【0059】
該医薬組成物は、場合によって医薬的に許容できる担体および/または希釈剤を含有することが好ましい。本明細書で開示の医薬組成物は、高増殖性疾患、皮膚疾患、炎症性疾患または神経変性疾患の治療にとって部分的に有用でありうる。該障害は、乾癬、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症またはパーキンソン病、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、リンパ腫、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、メラノーマ、増殖性疾患または腫瘍性疾患または他のEAGを発現または過剰発現する高増殖性疾患を含むがこれらに限定されない。
【0060】
本発明は、EAG1の発現または過剰発現に関連した疾患/障害の治療に使用されるべき本発明の化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0061】
適切な医薬担体、賦形剤および/または希釈剤の例は当該技術において周知であり、リン酸塩緩衝化生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、種々の浸潤剤、無菌溶液などを含有する。周知の従来の方法により、かかる担体を含有する組成物を調製してもよい。これらの医薬組成物を適切な用量で被験者に投与してもよい。例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、経皮、鼻腔内または気管支内投与といった異なる方法により、適切な組成物の投与を行うことが可能である。例えば、脳のような外部または内部標的部位へのバイオリスティック(biolistic)な送達により、本発明の組成物を標的部位に直接投与することも可能である。担当医および臨床的因子によって投与計画が決定されることになる。医術では周知の如く、任意の一患者への用量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、および並行投与中の他の薬剤を含む多数の因子に依存する。タンパク様医薬活性物質が1用量当たり1μg〜100mg/kg体重の量で存在しうる。しかし、特に上記の因子を考慮すると、用量がこの典型的範囲から上下することも想定される。もしレジメンが連続注入である場合、それはさらに、1分当たり、体重のキログラム当たりで1pg〜100mgの範囲内にある必要がある。
【0062】
定期評価により進行を監視してもよい。本発明の組成物は局所または全身への投与が可能である。非経口的投与用の調合物には、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体には、生理食塩水および緩衝化媒体を含む、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれる。非経口用賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース(Ringer’s dextrose)、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー、または固定油が含まれる。静脈内賦形剤には、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。例えば、抗菌薬、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの防腐剤および他の添加剤もありうる。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の使用目的によってさらなる作用物質を含有しうる。医薬組成物が、例えば追加の抗腫瘍剤、小分子阻害剤、抗癌剤または化学療法剤のようなさらなる作用物質を含有することが特に好ましい。
【0063】
本発明は、少なくとも1種の抗腫瘍剤と併用した本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体を含有する医薬組成物にも関する。該併用は、例えば異常な細胞成長を阻害する場合に有効である。
【0064】
現在、多数の抗腫瘍剤が当該技術で既知である。一実施形態では、抗腫瘍剤は、抗体または免疫調節タンパク質を含むがこれらに限定されない治療用タンパク質の群から選択される。別の実施形態では、抗腫瘍剤は、有糸分裂阻害剤、キナーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗代謝産物、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、抗生存作用物質(anti−survival agents)、生物学的応答修飾因子、抗アンドロゲンを例とする抗ホルモン、および抗血管形成剤からなる小分子阻害剤または化学療法剤の群から選択される。
【0065】
さらに、獣医目的においても本発明の医薬組成物を使用してもよい。
【0066】
さらに、本発明は、高増殖性疾患、炎症性疾患、乾癬、もしくは神経変性疾患の予防または治療を目的とした医薬組成物を調製するための、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体、核酸分子、ベクター、本発明の宿主あるいは本発明の方法によって得られる抗体、抗体断片またはその誘導体の使用に関する。
【0067】
本発明の使用の好ましい実施形態では、該神経変性疾患は、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症またはパーキンソン病である。
【0068】
本発明の使用の別の好ましい実施形態では、該高増殖性疾患は、特に、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、リンパ腫、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、メラノーマ、増殖性疾患または腫瘍性疾患あるいは他のEAG1を発現または過剰発現する高増殖性疾患である。
【0069】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体、核酸分子、ベクター、本発明の宿主あるいは本発明の方法によって得られる抗体、抗体断片またはその誘導体、および場合によって医薬的に許容できる担体を含む診断用組成物に関する。
【0070】
本発明の診断用組成物は、試料を本発明の抗体と接触させるステップと、試料中のEAG1の存在を検出するステップとを含む、異なる細胞、組織または別の適切な試料における哺乳類EAG1カリウムチャネルの好ましくない発現または過剰発現の検出において有用である。したがって、高増殖性疾患の徴候または疾患状態を評価するために、本発明の診断用組成物を使用することが可能である。さらに、EAG1を発現する癌細胞などの悪性細胞を本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体で標的にすることが可能である。したがって、本発明の抗体に結合している細胞であれば補体系などの免疫系機能または細胞媒介性の細胞毒性によって攻撃される可能性があり、それ故、癌細胞の数が減少するかまたは同細胞は根絶される。これらの検討事項は、腫瘍の転移や再発に関する診断に等しく適用される。
【0071】
本発明の別の態様では、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体は標識基に結合される。かかる抗体は診断への応用に特に適する。本明細書で用いられる如く、「標識基」という用語は、検出可能なマーカー、例えば標識されたアビジンによって検出可能な放射性標識化されたアミノ酸またはビオチニル部分を示す。抗体などのポリペプチドおよび糖タンパク質を標識するための様々な方法は、当該技術で既知であり、本発明を実施する場合に使用されうる。適切な標識基の例として、放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えばFITC、ローダミン、ランタニドリン)、酵素群(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体における結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープが挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
特定の態様では、標識基が潜在的な立体障害を低下させるのに様々な長さのスペーサーアームによって付着されることが望ましい場合がある。
【0073】
本発明の上記の実施形態は特に重要である。本発明の抗体は、治療可能な異なる哺乳類種に対して広範な適用性を示すことから、本発明の診断用組成物も異なる哺乳類種において有用でかつ適用可能である。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、本発明の抗体または抗体断片またはその誘導体を、EAG1を自身の表面上に担持すると見られる細胞または組織と接触させるステップを含む、EAG1発現細胞の存在について評価する方法に関する。
【0075】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明の抗体または抗体断片またはその誘導体を、EAG1を自身の表面に担持すると見られる細胞または組織と接触させるステップを含む、EAG1の機能を遮断する方法に関する。
【0076】
本発明の方法の好ましい実施形態では、該接触させるステップはインビトロで行われる。
【0077】
本発明の方法の好ましい実施形態では、該接触させるステップはインビボで行われる。
【0078】
本発明は、治療を必要とする患者に本発明の抗体または抗体断片またはその誘導体の適切な用量を投与するステップを含む、高増殖性疾患、炎症性疾患、乾癬、または神経変性疾患から選択される疾患を治療する方法にも関する。
【0079】
本発明の方法の好ましい実施形態では、該神経変性疾患は、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症またはパーキンソン病である。
【0080】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、該過剰増殖疾患は、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、リンパ腫、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、ならびに増殖性疾患および腫瘍性疾患または他のEAGを発現または過剰発現する高増殖性疾患である。
【0081】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、該炎症性疾患は膵炎または肝炎である。
【0082】
本発明は、最終的に疾患を治療する方法に関し、ここで本発明の抗体は哺乳動物に投与され、該疾患はEAG1の発現の異常レベルと直接的または間接的に相関する。
【0083】
最終的に、本発明は、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体、該成分をコードする核酸分子および/または本発明のベクターを含むキットに関する。
【0084】
本明細書で開示される化合物を網羅するすべての実施形態を、単一の化合物としてまたは薬剤の調製のために組み合わせて使用してもよい。
図は以下を示す:
図1は、マウスクローンImAb1、3、4および5の軽鎖および重鎖のCDR1、2および3のCDRペプチド配列を示す。
図2は、本発明の抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3の結合特異性/選択性を示す。該抗体はEag1を選択的に認識しかつEag2抗原に結合しない。さらにBIAcore(商標)分析では、ImAb1がEag1のC末端に結合する一方、ImAb3がEag1のポアドメインを認識することが示される。
図3は、ラット海馬およびラット小脳を含むラット脳切片における抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb4による免疫組織化学(IHC)分析を示す。IHC試験は、本発明の抗−Eag1抗体のラットとの交差反応について示す。
図4は、抗−Eag1モノクローナル抗体とSPOTセルロース膜上のペプチドとの結合パターンを示す。
図5は、Eag1を過剰発現する生きているCHO K1細胞に対してCy3標識抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3を用いた免疫蛍光実験を示す。結果は、異なるエピトープを認識する本発明のCy3標識抗−Eag1抗体が生きているCHO−Eag1細胞上のEag1抗原に結合しかつ細胞内に内在化することを示す。
図6は、マウスモノクローナル抗−Eag1抗体ImAb3のハイブリドーマ上清を用いた処理によるEag1を発現する卵母細胞内でのEag1電流の阻害およびImAb3におけるEag1発現CHO細胞内でのEag1電流に対する遮断能を示す。
図7は、本発明のマウス抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3によるIPC−298メラノーマ細胞増殖の阻害を示す。該抗体はヒト癌細胞における基底細胞の成長を阻害する。
図8aおよび8bは、二次免疫毒素とともに(と組み合わせて)標識されたマウス抗−Eag1抗体ImAb4によるIPC−298メラノーマ細胞増殖の阻害を示す。結果は、抗−Eag1抗体が内在化する能力を有しかつ本発明のアームが付着した抗体がヒト癌細胞の成長を特異的に阻害することを示す。該抗体は、一次免疫毒素としての抱合に適しかつヒト癌細胞成長の阻害において有効である。
図9は、二次免疫毒素の存在下での抗−Eag1抗体ImAb4によるIPC−298メラノーマ細胞の足場非依存性細胞成長の阻害を示す。
図10aは、抗−Eag1抗体ImAb4を使用し、ヒト腫瘍細胞内でのEag1タンパク質の免疫蛍光を示す。結果は、発明の抗体がヒト癌細胞内で内因性Eag1タンパク質に対する結合能を有することを示す。図10bは、本発明の抗−Eag1抗体を使用したEag1−ELISAの実施結果を示す(該抗体はヒト癌細胞の溶解物中でのEag1タンパク質に対する結合能および検出能を有する)。
図11は、CHO K1細胞内での組換えhu−ImAb3の発現を示す。
図12は、本発明のマウス抗−EAG1抗体による数種のヒト癌細胞のコロニー形成の阻害を示す。抗−EAG1抗体ImAb3は、乳癌細胞(図12a)、卵巣癌細胞(図12b、c)、メラノーマ細胞(図12d)、膵臓癌細胞(図12e)、線維肉腫細胞(図12f)および肺扁平上皮癌細胞(図12g)の足場非依存性細胞成長を阻害する。抗−EAG1抗体iMab5は、卵巣癌細胞(図12b)の足場非依存性細胞成長を阻害する。図12cは、抗−EAG1抗体ImAb3による卵巣癌細胞のコロニー形成の用量依存的阻害を示す。
図13は、本発明のマウス抗−Eag1抗体ImAb3によるSKOV3卵巣癌細胞増殖の阻害を示す。該抗体はヒト癌細胞内での基底細胞の成長を示す。
図14は、本発明の抗−EAG1抗体ImAb3による雌SCIDマウスにおけるヒト腫瘍成長の低下を示す。該抗体は、ヒト乳癌細胞のMDA−MB−435s細胞のインビボでの成長を阻害する。
図15は、治療用モノクローナル抗−EGFR抗体エルビタックスと併用したヒト抗−EAG1抗体ImAb3によるヒト卵巣癌およびヒト膵臓癌細胞の足場非依存性細胞成長の阻害を示す(図15aおよび15b)。図15cは、ヒト卵巣癌細胞のImAb3と抗腫瘍剤タキソールとの併用治療によってこの細胞株のコロニー形成が極めて効率的に阻害されることを示す。抗−EAG1抗体ImAb3を抗腫瘍剤シスプラチンと併用した細胞治療によるヒト卵巣癌およびメラノーマ細胞のコロニー形成の阻害については図15dおよび15eに示される。
図16は、強力な抗腫瘍剤タキソールと併用した本発明のマウス抗−EAG1抗体ImAb3によるSKOV3卵巣癌細胞の増殖の阻害を示す。ヒト卵巣癌細胞に対するImAb3とタキソールとの併用治療により、ヒト癌細胞内での基底細胞の成長が各抗癌剤単独の場合よりも効率的に阻害される。
図17は、免疫毒素サポリンと抱合された本発明のマウス抗−Eag1抗体ImAb3による種々の癌細胞株の細胞増殖の阻害について示す。結果は、毒素と抱合された抗−Eag1抗体ImAb3がヒト癌細胞株の幅広いスペクトルの細胞増殖を極めて効率的に阻害することを示す。サポリンと抱合された抗−EAG1抗体ImAb3は、メラノーマ細胞(図17a)、卵巣および膵臓癌細胞(図17b)、線維肉腫細胞(図17b)、乳癌および結腸癌細胞(図17c)の細胞増殖を阻害する。
図18は、ImAb3抗体の細胞外適用によるEAG1電流の阻害を示す。同適用の0および10分の時点での代表的トレースは、ImAb3を適用するだけで電流振幅が見事に低下することを示す。10〜15分後には、電流阻害が全振幅の約35%に至る(図18a)。図18bは、ImAb3の技術的に到達可能な時間範囲および濃度においてHERG電流に対する作用が失われることを示す。
図19は、人工的に移植された、EAG1を発現する腫瘍および先に検出されなかった転移性の移植片を担持するマウスから得られる疑似カラー像(矢印)を示す。イメージングの24時間前に標識抗体100μgが静脈内注射された。図19Aは色分けされた蛍光強度を示す一方、図19Bは陽性領域においてAlexaFluor 680に対応する蛍光寿命を示す。
【0085】
実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0086】
行われた実験および得られた結果を含む以下の実施例は、単に図示目的で提供されるものであり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0087】
実施例1:EAG1抗原の調製
h1zをコードするベクターで形質転換した大腸菌(Epicurian Coli)細胞の単一のコロニーを、31℃、140rpmでクロラムフェニコール34μg/mlおよびアンピシリン100μg/mlを補充した500mlのLB培地に接種した。インキュベーションの15時間後、培養物を、必要な抗生物質を補充したLB−培地で1/10に希釈し、振とう下(140rpm)、31℃で2時間インキュベートした。IPTGの添加(最終濃度1mM)により、融合タンパク質の過剰発現を誘発した。培養物を6時間インキュベートし、次いで2100×g、4℃で20分間遠心した。ペレットをHis−再懸濁緩衝液に再懸濁し、3,500rpm、4℃で10分間遠心した。ペレットを液体窒素中で急速冷凍し、−70℃で保存した。
【0088】
冷凍した細菌細胞ペレットを、約1mg/ml以下のリゾチームを補充した50mMのトリス/HCl15ml、pH7.9、2mMのEDTA緩衝液に再懸濁し、室温で15分間振とうした。尿素を最終濃度が8Mに至るまで添加し、試料に超音波処理を施した。溶液を4℃で回転させながら一晩変性させておき、その後、14,000×gで30分間遠心した。上清を1×結合緩衝液中、6Mの尿素に調節し、0.45μmのフィルタで濾過した。100%の結合緩衝液(20mMのトリス/HCl、pH7.9、5mMのイミダゾール、500mMのNaCl、6Mの尿素)から100%の溶出緩衝液(20mMのトリス/HCl、pH7.9、1Mのイミダゾール、500mMのNaCl、6Mの尿素)への線形勾配を用いたBioCADクロマトグラフィー系を使用してアフィニティー精製を行った。250mMのNiSOで帯電させ、結合緩衝液で予備平衡化したHis−タグ樹脂ピークカラム上に上清を負荷した。適切な画分を、PBS中の3Mの尿素で3回、3回の1Mの尿素、3回のPBSおよび3回の0.5倍のPBSに対して4℃で24時間透析した。透析した融合タンパク質を凍結乾燥し、使用するまで−20Cで保存した。
【0089】
実施例2:本発明のEAG1抗体
A.抗体の調製
免疫化
マウス(8週齢)2匹を、完全アジュバント(バイオジーンズ・ゲーエムベーハー(Biogenes GmbH))中で乳化した50ngの抗原を注射することによってプライミングし、融合の120日前に腹膜内注射した。以下の日程により、あらゆる他の腹膜内および静脈内注射を行った。
【0090】
【表1】

【0091】
使用した骨髄腫細胞株はGerman Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手したSP2/0−Ag14であった。細胞を、20pg/mlのアザグアニンに耐性を示す免疫グロブリン鎖を合成しないかまたは分泌し、かつHAT培地で成長しないものとした。20Ng/mlの8−AZGを補充した標準培地(DMEM+10%ウシ胎仔血清)、組織培養フラスコ内でSP2/0細胞を定期的に維持し、HAT培地で成長可能な任意のHPRT+復帰変異体を殺した。SP2/0細胞を融合の1週間前に8−AZGを含まない標準培地で維持した。
【0092】
免疫したマウスから脾臓を無菌状態で摘出し、単一の細胞懸濁液を調製した。ポリエチレングリコール4000の存在下で脾臓リンパ球をSP2/0骨髄腫細胞株と融合した(リンパ球/SP2/0の比が10/1)。次いで、そのようにして産生した細胞を、HAT(ヒポキサンチン10−4M、アミノプテリン10−5Mおよびチミジン4×10−5M)および20%の予備選択したウシ胎仔血清を含有するDMEMに再懸濁した。次いで、フィーダー層として腹膜滲出細胞を含有する5つの96ウェルの組織培養プレート(Corning−Costar)に細胞を蒔いた。プレートを、5%の二酸化炭素を含有する湿潤大気中、37℃で2週間インキュベートした。この期間にわたり細胞にHAT培地を2回、HT培地を2回供給した。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用い、細胞成長が進んだウェルにおける特異的な免疫グロブリン含量についてスクリーニングした。
【0093】
培養上清をスクリーニングするために、間接ELISAアッセイを用いた。アッセイを、以下の如く調製した96ウェルの平底のポリスチレンマイクロタイタープレートにおいて行った。すなわち、5μg/mlの濃度で免疫原(陽性対照として)またはEag2に対応する等価な融合タンパク質(陰性対照として)を含有するpH9.6の0.1Mの炭酸塩/重炭酸塩緩衝溶液からの一定分量100μlをプレート上のウェルに添加した。プレートを、湿ったチャンバ内、4℃で一晩インキュベートした後、0.01%トリトンX−100を含有するTBSで4回洗浄し、TBS中、22%の冷水魚由来のゼラチンを用いて室温で1時間ブロッキングした。
【0094】
ハイブリドーマ上清からの一定分量100μlを適切なアッセイウェルに添加した。2つの陰性対照ウェルを、一方が新鮮培地を含有し他方が非融合SP2/0骨髄腫細胞を含有するウェルからの上清を含有する各プレート上でインキュベートした。アッセイプレートを、湿ったチャンバ内、37℃で2時間インキュベートした。次いで、それを0.01%トリトンX−100を含有するトリス緩衝化生理食塩水(TBS、50mMのトリス、pH7.8、150mMの塩化ナトリウム)で4回洗浄した。結合抗体の測定には、多数のアルカリホスファターゼ抱合体:ヤギ抗−マウスIgG(IgG産生株の検出にとって特異的なFc)およびヤギ抗マウスIgG(IgMとIgGの双方の産生株の検出にとって特異的なFab)(シグマ(Sigma)、A−2429およびA−2179)を含めた。バイオ・ラッド(Bio−Rad)製Model450マイクロプレートリーダーにおいて、パラニトロフェノールを含有する基質緩衝液を活用して結合酵素の定量を行った。
【0095】
陽性IgG産生株のウェルからの細胞を24ウェルプレートのウェルに移し、1週間培養した。安定な抗体産生株のさらなる選択を意図して、この期間経過しても依然として陽性であったウェルからの細胞にプレクローナル(preclonal)な分布を施した(フィーダー層として腹膜滲出細胞を含有する5つの96ウェルの組織培養プレートに細胞を1ウェル当たり10個の細胞の濃度で蒔いた)。ランダムな染色体の欠失が原因で目的の抗体を分泌する細胞を有するウェルの抗体産生能が徐々に低下する可能性があることから、この方法は最も安定な細胞サブポピュレーションの選択を可能にする。
【0096】
限界希釈によるクローニングを行うため、ELISA(IgG産生株)において最強の陽性シグナルを与えるウェルからの細胞を選択した。各陽性ウェルからの細胞を2つの96ウェルプレートに分布させた。8〜10日以内に全プレートでのモノクローナルな成長の検出について顕微鏡検査を行い、ELISAにより、かかるウェルからの培養上清における特異的な免疫グロブリン含量をスクリーニングした。ELISAにて最適なシグナルを生成した6つのウェルからの細胞を24ウェルプレートのウェルに移し、さらに1週間培養した。次いでアッセイ手順を繰り返し、各一次集団由来の1つの最適なクローンに第2の限界希釈クローニングを施した。第1のクローニング後に得られたすべての手順を第2のクローニング後に繰り返した。
【0097】
2回クローニングしたモノクローナル細胞株を、任意のさらなる成長刺激因子を含まない、15%のウシ胎仔血清を有する培地での成長に適応させ、3×10個の細胞/mlで凍結している90%ウシ胎仔血清、10%DMSO中で凍結させた。
【0098】
ウエスタンブロットおよびBIAcore実験において、全抗体のEag1に対する特異性について試験した。ELISAもしくはBIACore試験においてEag2を認識するかまたは心筋製剤に対して免疫染色を示す(HERGとの交差反応を示す)抗体をEag1に非特異的なものとして廃棄した。
【0099】
マウス抗体遺伝子のクローニング
免疫組織学的方法によってマウス抗体のサブタイプを同定した。すべてのハイブリドーマがサブタイプIgG2b重鎖およびカッパ軽鎖の分泌抗体を発現した。RNeasyキット(キアゲン(Qiagen))を使用して全RNAをハイブリドーマ細胞から調製した。SMART PCR cDNA Synthesis Kit(クロンテック(Clontech))を使用して全RNA1μgをcDNAに翻訳した。SMART PCR cDNA Synthesis Kit(クロンテック(Clontech))のロングディスタンス(Long distance)ポリメラーゼ連鎖反応を利用し、20サイクル間に一次cDNAを増幅した。次いで特異的プライマーおよび校正DNAポリメラーゼPwo(ロシュ(Roche))を使用したPCRによって、ハイブリドーマによって発現された軽鎖および重鎖の遺伝子を増幅した。
【0100】
重鎖遺伝子を増幅するため、プライマーP1およびP2を使用した。P1はSMART PCR Synthesis Kitによって生成される全cDNAの5’プライム配列に特異的である。P2はマウスIgG2bの定常領域の3’プライム領域に特異的なプライマーである。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P6:TCA TTT ACC CGG AGA CCG G(配列番号50)
【0101】
軽鎖遺伝子を増幅するため、プライマーP1およびP3を使用した。P1はSMART PCR Synthesis Kitによって生成される全cDNAの5’プライム配列に特異的である。P3はマウスカッパ軽鎖の定常領域の3’プライム領域に特異的なプライマーである。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P4:CTA ACA CTC ATT CCT GTT GAA GCT C(配列番号51)
【0102】
第1の鎖反応cDNA100μlのうちの1μl、Pwo(ロシュ(Roche))用1×PCR緩衝液、200μMの各ヌクレオチド(dNTP、ロシュ(Roche))、各プライマー0.6μM、2.5UのPwo校正ポリメラーゼ(ロシュ(Roche))、最終容量50μlを、以下のようにサーマルサイクラーでインキュベートした。
94℃ 3分
94℃ 25秒
65℃ 30秒
72℃ 軽鎖に対して40秒および重鎖に対して60秒
10サイクル

94℃ 25秒
65℃ 30秒
72℃ 軽鎖に対して40秒+2秒/サイクルおよび重鎖に対して60秒+4秒/サイクル
20サイクル

72℃ 5分
【0103】
1%アガロースゲル上でPCR産物を分析した。軽鎖においては750bpの1本のバンドおよび重鎖においては1600bpのバンドを認めた。PCR産物をQIAquick PCR精製キット(キアゲン(Qiagen))によって精製し、ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK、ロシュ(Roche))を使用してリン酸化した。10pモルのDNA二本鎖(5μgの軽鎖DNAまたは10μgの重鎖DNA)を、100μMのATPを含む、50mMのトリスHCl、10mMのMgCl、0.1mMのEDTA、5mMのDTT、0.1mMのスペルミジン、ph8.2、および50UのPNKで、37℃で30分間インキュベートした。リン酸化したDNAを、ゲル溶出によりアガロースゲルから精製し、制限酵素EcoRV(ロシュ(Roche))で切断して子牛腸アルカリホスファターゼ(ロシュ(Roche))で脱リン酸化したpBluescript II KS+ベクターにライゲートした。クローニングしたDNAの配列を、T3およびT7プライマー(セクラブ・ゲーエムベーハー(Seqlab GmbH)、Goettingen)を使用したDNAシークエンシングによって決定した。
【0104】
マウス軽鎖ImAb4のDNA配列を配列番号1に示す
マウス軽鎖ImAb4のタンパク質配列を配列番号2に示す
【0105】
抗体の分泌に必要なシグナルペプチドなどのタンパク質ドメインおよび抗体のその標的に対する特異的な結合に必要な相補性決定領域(CDR)を同定した。チョチア(Chothia)(チョチア C.(Chothia C.)、ノボトニ J.(Novotny J.))、ブルッコレリ R.(Bruccoleri R.)、カープラス M.(Karplus M.) Journal of Molecular Biology、186(3):651−63頁、1985年)に準じ、抗体配列の相補性決定領域(CDR)および定常領域を規定した。
シグナルペプチド 1.〜19.アミノ酸
LC−CDR1 43.〜58.アミノ酸
LC−CDR2 74.〜80.アミノ酸
LC−CDR3 113.〜121.アミノ酸
定常領域: 122.〜238.アミノ酸
【0106】
マウス重鎖ImAb4のDNA配列を配列番号3に示す
重鎖ImAb4のタンパク質配列を配列番号4に示す
【0107】
抗体の分泌に必要なシグナルペプチドなどのタンパク質ドメインおよび抗体のその標的に対する特異的な結合に必要な相補性決定領域(CDR)を同定した。チョチア(Chothia)(チョチア C.(Chothia C.)、ノボトニ J.(Novotny J.))、ブルッコレリ R.(Bruccoleri R.)、カープラス M.(Karplus M.) Journal of Molecular Biology、186(3):651−63頁、1985年)に準じ、抗体配列の相補性決定領域(CDR)および定常領域を規定した。
シグナルペプチド 1.〜18.アミノ酸
HC−CDR1 44.〜54.アミノ酸
HC−CDR2 69.〜84.アミノ酸
HC−CDR3 117.〜126.アミノ酸
定常領域: 127.〜473.アミノ酸
【0108】
軽鎖クローンImAb3:
マウス軽鎖ImAb3のDNA配列を配列番号5に示す
マウス軽鎖ImAb3のタンパク質配列を配列番号6に示す
【0109】
抗体の分泌に必要なシグナルペプチドなどのタンパク質ドメインおよび抗体のその標的に対する特異的な結合に必要な相補性決定領域(CDR)を同定した。チョチア(Chothia)(チョチア C.(Chothia C.)、ノボトニ J.(Novotny J.))、ブルッコレリ R.(Bruccoleri R.)、カープラス M.(Karplus M.) Journal of Molecular Biology、186(3):651−63頁、1985年)に準じ、抗体配列の相補性決定領域(CDR)および定常領域を規定した。
シグナルペプチド 1.〜20.アミノ酸
LC−CDR1 44.〜60.アミノ酸
LC−CDR2 76.〜82.アミノ酸
LC−CDR3 115.〜122.アミノ酸
定常領域: 123.〜239.アミノ酸
【0110】
マウス重鎖ImAb3のDNA配列を配列番号7に示す
マウス重鎖ImAb3のタンパク質配列を配列番号8に示す
【0111】
抗体の分泌に必要なシグナルペプチドなどのタンパク質ドメインおよび抗体のその標的への特異的結合に必要な相補性決定領域(CDR)を同定した。チョチア(Chothia)(チョチア C.(Chothia C.)、ノボトニ J.(Novotny J.))、ブルッコレリ R.(Bruccoleri R.)、カープラス M.(Karplus M.) Journal of Molecular Biology、186(3):651−63頁、1985年)に準じ、抗体配列の相補性決定領域(CDR)および定常領域を規定した。
シグナルペプチド 1.〜19.アミノ酸
HC−CDR1 45.〜54.アミノ酸
HC−CDR2 69.〜87.アミノ酸
HC−CDR3 120.〜129.アミノ酸
定常領域 130.〜476.アミノ酸
【0112】
キメラ抗体の産生:
マウス抗体の定常領域をヒト定常領域によって置き換えた。マウス抗体の場合と同じアプローチを用い、ヒトボランティアの血球からヒト軽鎖カッパおよび重鎖IgG1をクローニングしたが、特異的ヒトプライマーは以下の通りである。
【0113】
ヒト重鎖遺伝子を増幅するため、以下のプライマーを使用した。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P16:TCA TTT ACC CGG AGA CAG GGA GAG GC(配列番号52)
【0114】
ヒト軽鎖遺伝子を増幅するため、以下のプライマーを使用した。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P15:CTA ACA CTC ACC CCT GTT GAA G(配列番号54)
【0115】
マウス可変領域をヒト定常領域と融合するため、以下のPCRを行った。まずヒト定常領域を、マウスおよびヒト配列を含むキメラ3’プライマー(プライマーP7)の使用によってマウス可変領域の3’末端と融合した。鋳型としての両DNA断片および各DNA断片に対する1つの特異的プライマーを使用した最終PCRにより、ヒト定常領域とマウス可変領域の双方を融合した。
【0116】
キメラ抗体ImAb3:
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P111:CGT CCG AAG ATC ATA AGA TTG CTT GC(配列番号53)
のプライマーを使用してマウス軽鎖ImAb3の可変領域(409bp)を増幅した。
【0117】
P15:CTA ACA CTC ACC CCT GTT GAA G(配列番号54)
P113:GCA ATC TTA TGA TCT TCG GAC GTT CGG CGG AGG GAC CAA GGT G(配列番号55)
を使用してヒト軽鎖定常領域(376bp)を増幅した。
【0118】
それにより、マウス軽鎖可変領域を有する重なり配列を導入した。
【0119】
PCRにより両断片を融合し、キメラDNA断片(762bp)を生成した。
P9:ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号56)
P15:CTA ACA CTC ACC CCT GTT GAA G(配列番号54)
【0120】
DNA断片の両末端に特有の制限部位(NotIおよびXhoI)を導入するため、
P216:ATC AGC GGC CGC ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号57)
P217:ATC ACT CGA GCT AAC ACT CAC CCC TGT TGA AG(配列番号58)
のプライマーを使用して再びPCR(Pwo、ロシュ(Roche))を行った。
【0121】
DNA産物をリン酸化し、EcoRVで切断したpBuescript II KS+にクローニングした。DNAを配列決定し、制限酵素NotIおよびXhoIによって切断し、真核生物発現ベクターpBudCE4.1(インヴィトロジェン(Invitrogen)、V532−20)にライゲートした。
【0122】
PCRによりマウス重鎖ImAb3の可変領域をヒトIgG1の定常領域と融合した。まず、マウス重鎖ImAb3の可変領域(488bp)を
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P119:GAC ATC GAA GTA CCA CCT ACT ACC(配列番号59)
のプライマーで増幅した。
【0123】
P121:TCA TTT ACC CGG AGA CAG GGA GAG GC(配列番号60)
P122:GGT AGT AGG TGG TAC TTC GAT GTC TGG GGC CAG GGA ACC CTG GTC ACC(配列番号61)
を使用してヒト重鎖定常領域(1048bp)を増幅した。
【0124】
PCRにより両断片を融合し、再びPCRにより特有の制限部位(5’プライムでHindIIIおよび3’プライムでXbaI)を導入した。
P220:ATC AAA GCT TAC AAC GCA GAG TAC GCG GGG GCG TAT G
P221:ATC ATC TAG ATC ATT TAC CCG GAG ACA GGG AGA GGC TCT TC
【0125】
最終断片(1513bp)を、EcoRVで切断したpBluescript II KS+に平滑末端でクローニングし、配列決定し、HindIIIおよびEcoRVでの消化後、pBud CE4.1にクローニングした。
【0126】
キメラ軽鎖ImAb3のDNA配列を配列番号9に示す
キメラ軽鎖ImAb3のタンパク質配列を配列番号10に示す
キメラ重鎖ImAb3のDNA配列を配列番号11に示す
キメラ重鎖ImAb3のタンパク質配列を配列番号12に示す
【0127】
キメラ抗体ImAb4:
ヒト重鎖遺伝子を増幅するため、以下のプライマーを使用した。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P16:TCA TTT ACC CGG AGA CAG GGA GAG GC(配列番号52)
【0128】
軽鎖遺伝子を増幅するため、以下のプライマーを使用した。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P15:CTA ACA CTC ACC CCT GTT GAA G(配列番号54)
【0129】
特異的プライマーによりヒト定常領域を増幅し、以下のPCRによりマウス可変領域と融合した。
【0130】
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P118:CGT CGG AGG AAC ATG TGT ACT TTG AGA GC(配列番号64)
のプライマーを使用してマウス軽鎖ImAb4の可変領域(432bp)を増幅した。
【0131】
P15:CTA ACA CTC ACC CCT GTT GAA G(配列番号54)
P114:CAA AGT ACA CAT GTT CCT CCG ACG TTC GGC GGA GGG ACC AAG GTG(配列番号65)
を使用してヒト軽鎖定常領域(377bp)を増幅した。
【0132】
それにより、マウス軽鎖可変領域を有する重なり配列を導入した。
【0133】
PCRにより両断片を融合した。
P9:ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号56)
P15:CTA ACA CTC ACC CCT GTT GAA G(配列番号54)
【0134】
P116:ATC AGC GGC CGC ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号66)
P117:ATC ACT CGA GCT AAC ACT CAC CCC TGT TGA AG(配列番号67)
のプライマーを使用したPCRにより、DNA断片(785bp)の両末端で特有の制限部位を導入した。
【0135】
DNA断片をpBluescript II KS+(EcoRV消化)にクローニングし、配列決定した。
【0136】
NotIおよびXhoIでの消化後、DNAをpBud CE4.1にクローニングした。
P8:GTA ACA ACG CAG AGT ACG CGG G(配列番号49)
P120:GTA GTT CAA AGT ATT TCC GTA GTT ACC(配列番号68)
のプライマーを使用してマウス重鎖ImAb4の可変領域(455bp)を増幅した。
【0137】
P121:TCA TTT ACC CGG AGA CAG GGA GAG GC(配列番号60)
P123:GGT AAC TAC GGA AAT ACT TTG AAC TAC TGG GGC CAG GGA ACC CTG GTC ACC(配列番号69)
を使用してヒト重鎖定常領域(1054bp)を増幅した。
【0138】
PCRにより両断片を融合し、特有の制限部位(5’プライムでHindIIIおよび3’プライムでXbaI)を導入した。
P248:aaa gct tAC AAC GCA GAG TAC GCG GGG(配列番号70)
P249:ATC TAG ATC ATT TAC CCG GAG ACA GGG AGA G(配列番号71)
【0139】
最終断片(1489bp)を、EcoRVで切断したpBluescript II KS+に平滑末端でクローニングし、配列決定し、HindIIIおよびXbaIでの消化後、pBud CE4.1にクローニングした。
【0140】
キメラ軽鎖ImAb4のDNA配列を配列番号13に示す
キメラ軽鎖ImAb4のタンパク質配列を配列番号14に示す
キメラ重鎖ImAb4のDNA配列を配列番号15に示す
キメラ重鎖ImAb4のタンパク質配列を配列番号16に示す
【0141】
ヒト化:
最も近いヒト可変フレームワークへの適応:
タンパク質レベルで、キメラ抗体の可変領域とヒト抗体の可変領域とを比較した(Genbank)。コンセンサスのヒトゲノム内の最も近いヒト対応部分を同定した。DNAレベルでの点突然変異の導入により、マウス可変領域の配列を相補性決定領域の外部でヒト配列に変化させた。

LC−ImAb3からヒトB3へ
HC−ImAb3からヒトVH3−72へ

LC−ImAb4からヒトA17へ
HC−ImAb4からヒトVH4−59へ
【0142】
特異的なDNAプライマーを使用し、QuikChange Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン(Stratagene)、カタログ#200518)を使用して点突然変異を導入した。以下のプライマーをその相補性プライマーと併用し、単一の突然変異を導入した。
【0143】
キメラ抗体ImAb3の最も近いヒト配列への適応
軽鎖ImAb3ヒトB3用プライマーの一覧
P61:GGG GAC ATT GTG ATG ACA CAG TCT CCA GAC TCC CTG GCT GTG TCA G(配列番号72)
P71:GTG TCA GCA GGA GAG AGG GCC ACT ATA AAC TGC AAA TCC AGT CAG(配列番号73)
P72:GAC ATT GTG ATG TCA CAG CCT CCA TCC TCC CTG GCT GTG(配列番号74)
P73:GGG GTC CCT GAT CGC TTC TCA GGC AGT GGA TCT GGG ACA(配列番号75)
P74:CTC ACC ATC AGC AGT CTG CAG GCT GAA GAC GTG GCA GTT TAT TAC TGC(配列番号76)
P91:AGA CTC CCT GGC TGT GTC ACT AGG AGA GAG GGC CAC TAT AAA CTG C(配列番号77)
P92:ACC AGC AGA AAC CAG GGC AGC CTC CTA AAC TGC TGA TCT AC(配列番号78)
【0144】
重鎖ImAb3ヒトVH3−72用プライマーの一覧
P63:CAC CAT CTC CAG AGA TGA TTC CAA AAA CAG CCT CTA TCT TCA AAT GAA C(配列番号79)
P75:GGT ATC CAG TGT GAG GTG CAG CTG GTG GAG TCT GGA GGA(配列番号80)
P76:CTG AGA CTC TCC TGT GCA GCT TCT GGG TTC ACC TTC ACT(配列番号81)
P77:CGC CAG CCT CCA GGA AAG GGA CTT GAG TGG GTG GGT TTT ATT AGA AAC(配列番号82)
P78:TAT CTT CAA ATG AAC AGC CTG AAA ACT GAG GAC AGT GCC ACT TAT TAC TG(配列番号83)
P93:ACA TGA GCT GGG TCC GCC AGG CTC CAG GAA AGG GAC TTG AG(配列番号84)
P94:CCT GAA AAC TGA GGA CAC TGC CGT TTA TTA CTG TGC AAG AGA TTT CG(配列番号85)
【0145】
LC−ImAb3−humB3のDNA配列を配列番号17に示す
LC−ImAb3−humB3のタンパク質配列を配列番号18に示す
HC−ImAb3−humVH3−72のDNA配列を配列番号19に示す
HC−ImAb3−humVH3−72のタンパク質配列を配列番号20に示す
【0146】
キメラ抗体ImAb4のclosetヒト配列への適応
軽鎖ImAb4ヒトA17用プライマーの一覧
P67:GTG ATG TTG TGA TGA CCC AAA GTC CAC TCT CCC TGC CTG TCA G(配列番号86)
P82:CTC TCC CTG CCT GTC ACT CTT GGA CAA CCA GCC TCC ATC TCT TGC(配列番号87)
P83:AAG CCA GGC CAG TCT CCA AGG CGC CTG ATC TAC AAA GTT TCC(配列番号88)
P84:GGA GGC TGA GGA TGT GGG AGT TTA TTA CTG CTC TCA AAG TAC AC(配列番号89)
P97:ACA CCT ATT TAC ATT GGT TCC AGC AGA GGC CAG GCC AGT CTC CAA GGC(配列番号90)
P98:GAG TGG AGG CTG AGG ATG TGG GAG TTT ATT ACT GCT CTC AAA GTA CAC ATG(配列番号91)
【0147】
重鎖ImAb4ヒトVH4−59用プライマーの一覧
P65:CAT CTC TCA AAA GTC GAG TCT CTA TCA GTG TAG ACA CAT CCA AGA ACC(配列番号92)
P79:GCC TGG TGA AAC CTT CTG AGA CTC TGT CCC TCA CCT GCA C(配列番号93)
P80:AAC TGG ATC CGG CAG CCT CCA GGA AAA GGA CTG GAG TGG ATG GGC(配列番号94)
P81:TCC AAG AAC CAG TTC TCC CTG AAG TTG AGT TCT GTG ACT ACT GAG(配列番号95)
P95:GGA ACT GGA TCC GGC AGC CTC CAG GAA AGG GAC TGG AGT GGA TGG GCT AC(配列番号96)
P96:GTT GAG TTC TGT GAC TGC TGC GGA CAC AGC CGT ATA TTA CTG TGC AAG ATT TGG(配列番号97)
P99:TCC CTC ACC TGC ACT GTC TCT GGC TAC TCA ATC(配列番号98)
P100:ACA AAC TGG AGT GGA TCG GCT ACA TAA GCT ACA G(配列番号99)
P101:TCA AAA GTC GAG TCA CTA TCA GTG TAG ACA CAT CCA AG(配列番号100)
【0148】
LC−ImAb4−humA17のDNA配列を配列番号21に示す
LC−ImAb4−humA17のタンパク質配列を配列番号22に示す
HC−ImAb4−humVH4−59のDNA配列を配列番号23に示す
HC−ImAb4−humVH4−59のタンパク質配列を配列番号24に示す
【0149】
ヒト可変フレームワークへの適応:
相同性が低下した、マウス1抗体当たり2つのさらなるヒト化抗体を産生した。それらの開始配列は事前にヒト化した抗体のImAb3およびImAb4である。

LC−ImAb3−humB3からヒトA3へ
HC−ImAb3−humVH3−72からヒトVH3−23へ

LC−ImAb3−humB3からヒトA17へ
HC−ImAb3−humVH3−23からヒトVH2−26へ

LC−ImAb4−humA17からヒトA5−1へ
HC−ImAb4−humVH4−59からヒトVH1−3へ

LC−ImAb4−humA17からヒトO1へ
HC−ImAb4−humVH4−59からヒトVH4−31へ
【0150】
ImAb3抗体用
軽鎖ImAb3ヒトA3用プライマーの一覧
P146:GAC ACA GTC TCC ACT CTC CCT GCC TGT GAC ACT AGG AGA GAG GGC CAC(配列番号101)
P151:CTC TCA CCA TCA GCA GAG TGG AGG CTG AAG ACG TGG C(配列番号102)
P152:AGG CTG AAG ACG TGG GAG TTT ATT ACT GCA AGC(配列番号103)
P155:CAG AAA CCA GGG CAG TCT CCT CAA CTG CTG ATC TAC TGG GC(配列番号104)
P205:CTT GGC TTG GTA CCT GCA GAA ACC AGG GC(配列番号105)
P206:GAC ACC AGG AGA GCC GGC CTC TAT AAG CTG CAA ATC CAG TC(配列番号106)
P207:CTT GGC TTG GTA CCT GCA GAA ACC AGG GC(配列番号107)
P242:GGA CAG ATT TCA CTC TCA AAA TCA GCA GAG TGG AGG CTG(配列番号108)
【0151】
LC−ImAb3−humA3のDNA配列を配列番号25に示す
LC−ImAb3−humA3のタンパク質配列を配列番号26に示す
【0152】
重鎖ImAb3ヒトVH3−23用プライマーの一覧
P168:TGT GAG GTG CAG CTG TTG GAG TCT GGA GGA GGC(配列番号109)
P169:GAC TTG AGT GGG TGA GTT TTA TTA GAA ACA AAG C(配列番号110)
P170:CAT CTC CAG AGA TAA TTC CAA AAA CAC CCT CTA TCT TCA AAT G(配列番号111)
P171:AAT GAA CAG CCT GAG AGC TGA GGA CAC TGC CG(配列番号112)
P231:GTT TAT TAC TGT GCA AAg GAT TTt GGT AGT AGG(配列番号113)
【0153】
HC−ImAb3−humVH3_23のDNA配列を配列番号27に示す
HC−ImAb3−humVH3_23のタンパク質配列を配列番号28に示す
【0154】
軽鎖ImAb3ヒトA17用プライマーの一覧
P145:ACC TGT GGG GAC GTT GTG ATG ACA CAG TCT CC(配列番号114)
P146:GAC ACA GTC TCC ACT CTC CCT GCC TGT GAC ACT AGG AGA GAG GGC CAC(配列番号115)
P148:CTA CTT GGC TTG GTT CCA GCA GAG ACC AGG GCA GCC TCC(配列番号116)
P151:CTC TCA CCA TCA GCA GAG TGG AGG CTG AAG ACG TGG C(配列番号117)
P152:AGG CTG AAG ACG TGG GAG TTT ATT ACT GCA AGC(配列番号118)
P202:CTG TGA CAC TAG GAC AGC CGG CCT CTA TAA GCT GCA AAT CCA GTC AGA G(配列番号119)
P203:AGA CCA GGG CAG TCT CCT AGA CTG CGG ATC TAC TGG GCA TCC(配列番号120)
P204:CAG ATT TCA CTC TCA AAA TCA GCA GAG TGG AGG C(配列番号204)
【0155】
LC−ImAb3−humA17のDNA配列を配列番号29に示す
LC−ImAb3−humA17のタンパク質配列を配列番号30に示す
【0156】
重鎖ImAb3ヒトVH2−26用プライマーの一覧
P173:AAT GGT ATC CAG TGT CAG GTG ACG CTGA AGG AGT CTG GAG GAG GC(配列番号122)
P175:GAC CAG TCT TGG TAA AGC CTA CGG AGA CTC TGA GAC TCT CCT G(配列番号123)
P176:CTA CGG AGA CTC TGA CAC TCA CCT GTA CAG TTT CTG GGT TCA CCT TC(配列番号124)
P177:TAC ATG AGC TGG ATC CGC CAG CCT CCA GGA AAG GGA CTT G(配列番号125)
P178:GCC TCC AGG AAA GGC ACT TGA GTG GCT GGC TTT TAT TAG AAA CAA AGC(配列番号126)
P179:TGT GAA GGG TCG GCT CAC CAT CTC CAA AGA TAC TTC CAA AAA CAG CCT C(配列番号127)
P181:CGT TCT TAC AAT GAC CAA CAT GGA TCC TGT GGA CAC TGC CGT TTA TTA C(配列番号128)
P182:GTG GAC ACT GCC ACT TAT TAC TGT GCA AG(配列番号129)
P246:CAA AGA TAC TTC CAA ATC CCA GGT(配列番号130)
P276:CTG GAC CAG TCT TGG TAA AGC CTA CGG AGA CTC TGA GAC TCT CCT G(配列番号131)
【0157】
HC−ImAb3−humVH2_26のDNA配列を配列番号31に示す
HC−ImAb3−humVH2_26のタンパク質配列を配列番号32に示す
【0158】
ImAb4抗体用
軽鎖ImAb4ヒトA5−1用プライマーの一覧
P160:CCT GCT TCC AGC AGT GAA ATT GTG ATG ACC CAA AGT CC(配列番号132)
P162:GTC CAC TCT CCC TGT CTA TCA CTC(配列番号133)
P164:TAT TTA CAT TGG TTC CTG CAG AAG GCA GGC CAG TCT CCA AGG C(配列番号134)
P167:GTG GAG GCT GAG GAT TTC GGA GTT TAT TAC TGC(配列番号135)
P198:ATT GTG ATG ACC CAA ACT CCA CTC TCC CTG TC(配列番号136)
P199:TCT ATC ACT CCT GGA GAA CAA GCC TCC ATC TCT TGC(配列番号137)
P200:TTC CTG CAG AAG GCA CGC CCG GTT CCA AGG CGC CTG ATC(配列番号138)
P201:CCA CGC CCG GTT TCA ACG CTC CTG ATC TAC AAA GTT TCC(配列番号139)
【0159】
LC−ImAb4−humA5−1のDNA配列を配列番号33に示す
LC−ImAb4−humA5−1のタンパク質配列を配列番号34に示す
【0160】
重鎖ImAb4ヒトVH1−3用プライマーの一覧
P183:GGT ATC CTG TCT CAA GTG CAG CTT CAG G(配列番号140)
P186:TCA AGT GCA GCT TGT GCA GTC GGG ACC TGG CCT GG(配列番号141)
P187:CTT GTG CAG TCG GGA GCT GAA(配列番号142)
P189:GCG TCT GTG AAA GTC AGC TGC AAG GCC TCT GGC TAC TCA ATC(配列番号143)
P190:GCC TGG AAC TGG GTC CGG CAG GCT CCA GGA CAG AGA C(配列番号144)
P191:GCA GCC TCC AGG ACA GAG ACT GGA GTG GAT CG(配列番号145)
P192:AGA GAC TGG AGT GGA TGG GCT ACA TAA GCT AC(配列番号146)
P193:GTC GAG TCA CTA TCA CTA GAG ACA CAT CCA AGA ACC(配列番号147)
P194:ATC ACT AGA GAC ACA TCC GCG AGC ACG GCC TAC ATG GAG TTG AG(配列番号148)
P195:AAG AAC CAG TTC TAC ATG GAG TTG AGT TCT CTG(配列番号149)
P196:GAA GTT GAG TTC TCT GAG ATC TGA GGA CAC AGC CGT ATA TT(配列番号150)
P197:TGA GAT CTG AGG ACA TGG CCG TAT ATT ACT G(配列番号151)
P244:CTG GCC TGG TGA AAC CTG GTG CGT CTG TGA AAC TCA CCT GCA CTG TCT CTG(配列番号152)
【0161】
HC−ImAb4−humVH1−3のDNA配列を配列番号35に示す
HC−ImAb4−humVH1−3のタンパク質配列を配列番号36に示す
【0162】
軽鎖ImAb4ヒトO1用プライマーの一覧
P156:CTT CCA GCA GTG ATA TTG TGA TGA CCC AAA CTC CAC TCT CCC TGC C(配列番号153)
P157:CTG CCT GTC ACT CCT GGA GAA CCA GCC TCC ATC TCT TGC(配列番号154)
P158:CCT ATT TAC ATT GGT ACC TGC AGA AGC CAG GCC AGT CTC C(配列番号155)
P159:CAG GCC AGT CTC CAC AGC TCC TGA TCT ACA AAG TTT CC(配列番号156)
【0163】
LC−ImAb4−humO1のDNA配列を配列番号37に示す
LC−ImAb4−humO1のタンパク質配列を配列番号38に示す
【0164】
重鎖ImAb4ヒトVH4−31用プライマーの一覧
P183:GGT ATC CTG TCT CAA GTG CAG CTT CAG G(配列番号157)
P184:GTG AAA CCT TCT CAG ACT CTG TCC CTC(配列番号158)
P185:TGG ATC CGG CAG CAT CCA GGA AAG GG(配列番号159)
【0165】
HC−ImAb4−humVH4−31のDNA配列を配列番号39に示す
HC−ImAb4−humVH4−31のタンパク質配列を配列番号40に示す
【0166】
重鎖ImAb1用プライマー
P22:CCC ACT ACC TCC ACC TCC AGA GCC TCC CCC TCC TGC AGA GAC AGT GAC CAG AGT C(配列番号262)
P18:AGT GAT GAG CAC TGA ACA CAG A(配列番号263)
【0167】
重鎖ImAb1のDNA配列、V
HC ImAb1 VのDNA配列を配列番号42に示す。
重鎖ImAb1のタンパク質配列、V
HC ImAb1 Vのタンパク質配列を配列番号44に示す。
【0168】
シグナルペプチド: 1〜19
可変鎖: 20〜133
CDR1 45〜54
CDR2 69〜84
CDR3 117〜122
【0169】
軽鎖ImAb1用プライマー
P25:TCT GGA GGT GGA GGT AGT GGG GGA GGA GGT TCA GAC ATC AAG ATG ACC CAG TCT C(配列番号260)
P28:GGC CTA ATC GGC CCG TTT TAT TTC CAG CTT GGT C(配列番号261)
【0170】
軽鎖ImAb1のDNA配列、V
該軽鎖のDNA配列を配列番号41に示す
軽鎖ImAb1のタンパク質配列、V
該軽鎖のタンパク質配列を配列番号43に示す
【0171】
シグナルペプチド: 1〜17
可変カッパ鎖: 18〜128
CDR1 46〜56
CDR2 72〜78
CDR3 111〜119
【0172】
重鎖ImAb5用プライマー
P21:GAC CTG TCA CCA TGA AGT TGT G(配列番号266)
P24:CCC ACT ACC TCC ACC TCC AGA GCC TCC CCC TCC TGA GGA GAC GGT GAC CGT GG(配列番号267)
【0173】
重鎖ImAb5のDNA配列、V
該重鎖のDNA配列を配列番号46に示す。
重鎖ImAb5のタンパク質配列、V
該重鎖のタンパク質配列を配列番号48に示す。
【0174】
シグナルペプチド: 1〜19
可変鎖: 20〜140
CDR1 45〜54
CDR2 69〜87
CDR3 120〜129
【0175】
軽鎖ImAb5用プライマー
P26:TCT GGA GGT GGA GGT AGT GGG GGA GGA GGT TCA GAC ATT GTG ATG TCA CAG TCT CC(配列番号264)
P29:GGC CTA ATC GGC CCG TTT GAT TTC CAG CTT GGT G(配列番号265)
【0176】
軽鎖ImAb5のDNA配列、V
該軽鎖のDNA配列を配列番号45に示す。
軽鎖ImAb5のタンパク質配列、V
該軽鎖のタンパク質配列を配列番号47に示す。
【0177】
シグナルペプチド: 1〜20
可変カッパ鎖: 21〜133
CDR1 44〜60
CDR2 76〜82
CDR3 115〜122
【0178】
変異抗体のDNAコンストラクトに対して完全に配列決定を行い、それらをPvuI消化によって遊離させた。フェノール/クロロホルムで抽出しかつエタノール沈殿させたアガロースゲルからDNAを精製した。DNAをCHO細胞にトランスフェクトし、アフィニティー精製により抗体を上清から精製した。
【0179】
B.抗体の特異性(他のファミリーメンバー;異種との交差反応についての試験)
i.他のファミリーメンバーとの交差反応
本発明の抗−Eag1抗体と、最も相同性の高いEagファミリーメンバーEag2との交差反応を分析するため、BIAcore(商標)結合分析を行った。BIAcoreチップをEag1のC末端(アミノ酸694〜962)、H5領域(アミノ酸374〜452)またはEag2(単一のコンストラクト内での融合に相当する領域)でコーティングした。流速20μl/分の10μg/mlの抗体を使用し、抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3との相互作用を分析した。図2に示す結果は、本発明の両方の抗−Eag1抗体がEag1抗原に対して選択的であり、Eag2と交差反応を示さないことを示す。さらに同結果は、ImAb1がEag1抗原のC末端に特異的に結合する一方、ImAb3がEag1のポアドメインを特異的に認識することを示す。
【0180】
ii.異種との交差反応
さらに、ラットの小脳および海馬の脳切片に関する免疫組織化学的試験によって本発明の抗−Eag1抗体の交差反応を分析した。IHCにおいて、出生21日後のスプラーグドーリー(Sprague Dawley)ラット2匹に、ケタミンHCl(Ketaset;100mg/ml;フォートドッジ・ラボラトリーズ(Fort Dodge Laboratories,Inc.)、米国)とキシラジン(ロンパン(Rompun);20mg/ml;マイル(Mile,Inc.)、米国)の混合物を0.1ml/100g体重で麻酔した。動物に対し、0.12Mのリン酸塩緩衝液(pH7.2)中、4%のp−ホルムアルデヒドからなる固定液を経心腔的に潅流させた。灌流後、脳を摘出し、4℃でさらに1時間固定し、PBSで3回すすぎ、4℃で一晩保存した。ビブラトーム(vibratome)(ライカ(Leica)、Vienna、オーストリア)を使用し、冷PBS中で冠状および矢状切片(40〜50μm)を切断した。切片を、PBS中、10%正常ヤギ血清とともに1時間、次いでPBS中、抗−Eag1抗体ImAb1(4μg/ml)およびImAb4(2μg/ml)とともに4℃で一晩インキュベートし、アビジン/ビオチン−ペルオキシダーゼ系(ベクタステイン(Vectastain)キット、ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、Burlingame、カリフォルニア州)を使用して処理した。3’−3−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(DAB;ペルオキシダーゼ用DAB基質キット、ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories))を使用して抗体結合を画像化した。一次抗体を省略するかまたは一次抗体と対応する融合タンパク質(10μg/ml最終濃度)との4℃で24時間の予備インキュベーションを行い、次いで上記の手順に従うことによって制御を行った。ツァイス(Zeiss)製Axiophot顕微鏡で切片を分析した。図3に示した結果は、本発明の抗−Eag1抗体がヒトEag1を認識するだけでなく、ラットなどの他の哺乳類種と交差反応することを示す。
【0181】
実施例3:エピトープのマッピング
76種の重なりペプチド(各々が13merの長さ;2つシフトさせたアミノ酸;免疫原の組換えタンパク質と同じaaの範囲)を合成し、ワットマン(Whatman)製の50のセルロース支持体(カスタム合成したSPOT膜、ジェリニ・エージー(Jerini AG))と共有結合させた。
【0182】
ペプチド配列は、1.MHHHHHHSSGMGD、2.HHHHHSSGMGDYE、3.HHHSSGMGDYEIF、4.HSSGMGDYEIFDE、5.SGMGDYEIFDEDT、6.MGDYEIFDEDTKT、7.DYEIFDEDTKTIR、8.EIFDEDTKTIRNN、9.FDEDTKTIRNNSW、10.EDTKTIRNNSWLY、11.TKTIRNNSWLYQL、12.TIRNNSWLYQLAM、13.RNNSWLYQLAMDI、14.NSWLYQLAMDIGT、15.WLYQLAMDIGTPY、16.YQLAMDIGTPYQF、17.LAMDIGTPYQFNG、18.MDIGTPYQFNGSG、19.IGTPYQFNGSGSG、20.TPYQFNGSGSGKW、21.YQFNGSGSGKWEG、22.FNGSGSGKWEGGP、23.GSGSGKWEGGPSK、24.GSGKWEGGPSKNS、25.GKWEGGPSKNSVY、26.WEGGPSKNSVYIS、27.GGPSKNSVYISSL、28.PSKNSVYISSLYF、29.KNSVYISSLYFTM、30.SVYISSLYFTMTS、31.YISSLYFTMTSLT、32.SSLYFTMTSLTSV、33.LYFTMTSLTSVGF、34.FTMTSLTSVGFGN、35.MTSLTSVGFGNIA、36.SLTSVGFGNIAPS、37.TSVGFGNIAPSTD、38.VGFGNIAPSTDEI、39.FGNIAPSTDIEKI、40.NIAPSTDIEKIFL、41.APSTDIEKIFLES、42.STDIEKIFLESPQ、43.DIEKIFLESPKDR、44.EKIFLESPKDRSP、45.IFLESPKDRSPIL、46.LESPKDRSPILAE、47.SPQDRSPILAEVK、48.QDRSPILAEVKHS、49.RSPILAEVKHSFY、50.PILAEVKHSFYPI、51.LAEVKHSFYPIPE、52.EVKHSFYPIPEQT、53.KHSFYPIPEQTLQ、54.SFYPIPEQTLQAT、55.YPIPEQTLQATVL、56.IPEQTLQATVLEV、57.EQTLQATVLEVRH、58.TLQATVLEVRHEL、59.QATVLEVRHELKE、60.TVLEVRHELKEDI、61.LEVRHELKEDIKA、62.VRHELKEDIKALN、63.HELKEDIKALNAK、64.LKEDIKALNAKMT、65.EDIKALNAKMTNI、66.IKALNAKMTNIEK、67.ALNAKMTNIEKQL、68.NAKMTNIEKQLSE、69.KMTNIEKQLSEIL、70.TNIEKQLSEILRI、71.IEKQLSEILRILT、72.KQLSEILRILTSL、73.LSEILRILTSLEH、74.EILRILTSLEHHH、75.LRILTSLEHHHHH、76.RILTSLEHHHHHHであった。
【0183】
上記ペプチドの各々を配列番号184〜259で列挙する配列において示す。
【0184】
膜をエタノールですすぎ、TBSで3回洗浄し、TBS中、3%BSAで、振とう下、室温で一晩ブロッキングした。次いで、膜を等容量のT−TBSで10分、1回洗浄し、所望の一次抗−Eag1抗体とともに振とう下で3時間インキュベートした。ImAb1〜5を(PBS中、1mg/mlのストック溶液から)1:2000に希釈した。次いで、一次抗体を廃棄し、膜をTBSTで10分、3回洗浄した。
【0185】
次いで、膜を適切な容量のHRPと抱合した二次抗体溶液とともに振とう下で2時間インキュベートした。抗−マウスHRP抗体を、ブロッキング用緩衝液で1:5000に希釈し、等容量のT−TBSで10分、3回洗浄し、検出試薬のECL溶液とともに軽い振とう下で1分間インキュベートし、発現させた。
【0186】
膜上に出現した多数の暗スポットは、各スポットが76種のうちの1種のペプチドに相当する場合の陽性シグナルを示した。
・スポット3〜8で結合されたImAb4
・同等な挙動を示し、スポット21〜24(強いシグナル)およびスポット3〜7(弱いシグナル)に結合されたImAb3およびImAb2
・スポット21〜24に結合されたImAb5(図4)
【0187】
これらの各ペプチドをEag1のポアドメイン領域内に局在化させる。
・ペプチド21〜24(ポアドメイン;図4)に弱く結合されたImAb1。しかし、ImAb1がEag1のCADドメイン部分を含有する融合タンパク質に対して産生されたことから、この抗体は主にCADドメイン領域を認識するはずである。それに対応するエピトープの不連続な(3−D)性質に起因し、これが観察されなかったということは大いにありうる。
【0188】
表1にあらゆる結果についてまとめる。それらに対応する抗体がEAG1の一部分のみを含有する同融合タンパク質を使用して産生されたことから、ImAb2、3および5の間でエピトープに類似性があることは意外なことではなかった。ImAb1で得られる結果のみが意外であり、これは上で考察した如く、おそらくはエピトープの三次元の性質に起因するものであった。
【0189】
実施例4:本発明の抗−EAG1抗体の内在化に関する測定
本発明の抗−Eag1抗体の内在化特性を分析するため、CHO細胞をカバースリップ上で成長させ、標準培地(ハム(Ham’s)F12、10%FCS)で、Cy3(100μg)で直接標識した抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb4とともに一晩インキュベートした(37℃、5%CO)。その後、培養物を約2μg/mlのヘキスト33342とともに10分間インキュベートした。洗浄後、標準の蛍光顕微鏡(ツァイス(Zeiss) Axiophot)における63倍水浸対物を使用して細胞をインビボで観察した。図5に示した結果は、本発明の両方の抗−Eag1抗体が抗原を発現する生体細胞上のEag1抗原に結合しかつ24時間以内に細胞内に内在化されることを示す。細胞外コアドメインを認識するImAb4ならびにEag1抗原のC末端で細胞内エピトープに結合するImAb1がいずれもEag1発現細胞内に内在化されることが示される。
【0190】
実施例5:本発明の抗−EAG1抗体の遮断特性に関する測定
本発明の抗−Eag1抗体の機能特性を分析するため、2電極の電圧クランプ実験による分析を行った。したがって、ストゥマー W.(Stuehmer W.)、1992年、Methods in Enzymology 207に記載の如く、卵母細胞の調製および電気生理学的記録を行った。卵母細胞にEag1をコードする合成mRNAを注射し、48時間インキュベートし、安定なトレースが記録されるまでNFR(115mM NaCl、1.8 CaCl、2.5 KCl、10 ヘペス(Hepes) pH7.2)にて記録した。次いで、ImAb1またはImAb3を産生する10%の対応するハイブリドーマ上清をチャンバに添加し、電流振幅をさらに監視した。図6(左)に示した結果は、マウスモノクローナル抗−Eag1抗体ImAb3のハイブリドーマ上清がEag1を発現する卵母細胞内でEag1電流に対する遮断能を有することを示す。ImAb1のハイブリドーマ上清を使用してもEag1電流の阻害が全く検出されなかった。
【0191】
さらに、40mMのKClの存在下で100μgのImAb3とともに3時間インキュベートした、Eag1を安定的に発現するCHO細胞を使用して2電極の電圧クランプ実験を行った。次いで、細胞を記録し、EPC9増幅器の自動能力補正を使用し、細胞表面における全電流振幅を正規化した。図6(右)に示した結果は、本発明の抗−Eag1抗体がEag1を過剰発現するCHO細胞内でEag1電流を阻害することを示す。
【0192】
実施例6:本発明の抗−EAG1抗体によるIPC−298細胞増殖の阻害
本発明の抗体における癌細胞の増殖に対する阻害能を測定するため、インビトロで実験を行った。1000 IPC−298細胞を、96−ウェルプレート上の60μl/ウェルの10%FCSを含有する培地(DMEM4500mg/mlグルコース)に一晩播種した。細胞を、40mMのKClを有するFCSを含有する培地で、5%CO中、37℃で1時間希釈した、5μg/mlの抗−Eag1モノクローナル抗体のImAb1およびImAb3とともに4通りに予備インキュベートした。40mMのKClによる細胞の処理によってイオンチャネルEag1の開いた高次構造が保証され、その場合、モノクローナル抗−EAG1抗体のその対応するエピトープへの結合が加速される可能性がある。1時間のインキュベーション後、上清を取り除き、5μg/mlの抗−Eag1抗体ImAb1およびImAb3を有する100μl/ウェルのFCSを含有する培地と交換した。次いで、細胞を5%CO中、37℃で7日間インキュベートした。増殖および細胞生存度を評価するため、10μl/ウェルのAlamarBlue(商標)(バイオソース(BIOSOURCE))を添加し、暗所、37℃でインキュベートした。30分ごとに590nmでの分光蛍光光度計を使用して吸光度を測定した。図7に示した結果は、本発明の抗体がヒト癌細胞の成長を阻害することを示す。
【0193】
実施例7:二次免疫毒素で標識した本発明の抗−EAG1抗体によるIPC−298細胞増殖の阻害
抗−Eag1モノクローナル抗体の一次免疫毒素としての抱合に対する特異的な適応性および有効性を評価するため、サポリンに抱合した二次抗体、宿根草(Saponaria officinalis)の植物種由来のリボソーム不活化タンパク質と併用し、抗−Eag1抗体の存在下でインビトロでの細胞増殖アッセイを行った。二次免疫毒素は抗−Eag1抗体に結合し、一次抗体とともに細胞内に内在化される。一旦免疫毒素が内在化されると、サポリンは、ターゲティング物質から遊離し、リボソームを不活化し、これによりタンパク質の阻害および最終的には細胞死が引き起こされる。
【0194】
アッセイ(図8a)において、3000 IPC−298細胞を、96−ウェルプレート上の60μl/ウェルのFCSを含有する培地に一晩播種した。100ng/ウェル(1ng/μl)のMab−ZAPを、40μlのFCSを含有する培地内の10ng/μlのマウスモノクローナル抗−Eag1抗体ImAb1またはImAb4と37℃で1時間混合し、次いで4通りに細胞に直接添加した。対照としてMab−ZAPをマウスモノクローナル対照抗体とともに添加するか、あるいはIgG−SAPを単独使用するかまたはImAb1と併用した。次いで、5%CO中、37℃で72時間にわたり細胞を成長させておいた。増殖および細胞生存度を評価するため、テトラゾリウム塩MTSおよび電子共役用試薬(electron coupling reagent)フェナジンメトサルフェート(PMS)を含有する20μl/ウェルのCellTiter96(登録商標) AQueous One Solution試薬(プロメガ(Promega))を添加し、色の生成のために37℃でインキュベートし、1〜4時間インキュベートした。ELISAプレートリーダーを使用し、490nmの吸光量によってホルマザン生成物の量を測定した。
【0195】
図8bに示すアッセイにおいて、3000 IPC−298細胞を、96−ウェルプレート上の60μl/ウェルのFCSを含有する培地に一晩播種した。アフィニティー精製したヤギ抗−マウスIgGとサポリンの化学抱合体である100ng/ウェル(1ng/μl)のMab−ZAP(アドバンスド・ターゲティング・システム(Advanced Targeting System))を、40μlのFCSを含有する培地内の異なる濃度のマウスモノクローナル抗−Eag1抗体ImAb4(10ng/μl、5ng/μl、1ng/μl、0.5ng/μl、0.1ng/μl)とともに37℃で1時間予備インキュベートし、次いで4通りに細胞に直接添加した。対照としてサポリンに抱合した免疫前ヤギIgG抗体(IgG−SAP、アドバンスド・ターゲティング・システム(Advanced Targeting System)を単独使用するかまたはImAb4と併用した。次いで、5%CO中、37℃で72時間にわたり細胞を成長させておいた。増殖および細胞生存度を評価するため、10μl/ウェルのAlamarBlue(商標)(バイオソース(BIOSOURCE))を添加し、暗所、37℃でインキュベートした。30分ごとに590nmでの分光蛍光光度計を使用して吸光度を測定した。
【0196】
図8aおよびbに示した結果は、本発明の抗体が細胞内に内在化され、二次免疫毒素で標識した(「ピギーバックした(piggybacked)」)本発明の抗−Eag1モノクローナル抗体がヒト癌細胞の成長を阻害することを示す。細胞成長阻害の効力は、一次抗体と二次免疫毒素の関係に左右される。つまり、この結果はアームが付着した(armed)本発明の抗−Eag1抗体がヒト癌細胞の成長を阻害するツールを提供することを示す。
【0197】
実施例8:二次免疫毒素で標識した本発明の抗−EAG1抗体による癌細胞の足場非依存性成長の阻害
免疫毒素で標識した本発明の抗体における足場非依存性細胞成長に対する阻害能について検討するため、軟寒天アッセイを行った。アフィニティー精製したヤギ抗−マウスIgGとサポリンの化学抱合体である100pgのMab−ZAP(アドバンスド・ターゲティング・システム(Advanced Targeting System))を、20mMのKClを含有するOptiMEM(ギブコ(Gibco))内の2.5ng抗−Eag1抗体ImAb4とともに4℃で30分間予備インキュベートした。比較のためにMab−ZAPを2.5ngの対照IgGとともに予備インキュベートした。30分の予備インキュベーション後、20mMのKClを含有するOptiMEM内の2000 IPC−298細胞を添加し、さらに37℃で30分間インキュベートした。免疫毒素で標識した抗−EAG1抗体とともに予備インキュベートしたIPC−298細胞を、0.5%FCSを有するOptiMEMを含有する50μl/ウェルの0.25%ディフコ(Difco)のノーブル寒天に再懸濁し、0.5%FCSを有するOptiMEMを含有する50μl/ウェルの0.5%アガロース下層上に4通りに蒔いた。さらに、0.5%FCSを有するOptiMEMを含有する50μl/ウェルの0.25%供給寒天(feeding agar)を蒔いた。10日間でコロニーの形成を可能にし、それらを50μlのMTT(PBS中1mg/ml)で1.5時間染色した。エプソン(Epson)製スキャナーを使用してウェルを走査し、シオン(Scion)製画像ソフトウェアを使用してコロニーを計数した。図9に示した結果は、二次免疫毒素で標識した(「ピギーバックした」)抗−Eag1抗体ImAb4が足場非依存性腫瘍細胞の成長を阻害することを示す。
【0198】
実施例9:診断用物質としての本発明の抗−EAG1抗体の使用
免疫蛍光による試料中でのEag1抗原の検出
ヒト腫瘍細胞内でのEag1抗原の検出において、免疫蛍光染色プロトコルを確立した。ガラスチャンバスライド(ファルコン(Falcon))を、10%FCSを含有する300μlの培地で37℃で30分間予備コーティングした。40000 MCF7乳癌細胞/ウェルおよび40000 IPC−298メラノーマ細胞/ウェルを予備コーティングしたガラスチャンバスライド上に播種し、5% CO中、37℃で24時間培養した。チャンバを取り出した後、スライドをPBSで洗浄し、細胞を(1MのNaOHでpH7.5に調節したPBS中)4%パラホルムアルデヒドで25℃で10分間固定した。スライドを風乾し、PBSで3分間再水和した(3回)。細胞を、PBS中、0.5%トリトン−X100によって25℃で10分間透過させ、スライドをPBSで3分間洗浄し(3回)、各ウェルを100μlのブロッキング用緩衝液(PBS中、5%FCS、2.5%BSA)で25℃で1時間ブロッキングした。40μlのブロッキング用緩衝液/ウェルで希釈した2μg/mlの抗−EAG1抗体ImAb4を25℃で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、50μlのアレクサ(Alexa)の546ヤギ抗−マウスIgG(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes);希釈緩衝液で1:200に希釈)を検出抗体として25℃で1時間インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し(3回)、50μlのDAPI(ロシュ(Roche);PBSで1:1000に希釈)を各ウェルに添加し、25℃で5分間インキュベートした。Fluoromount G(サザン・バイオテクノロジー・アソシエイツ(Southern Biotechnology Associates)で処理したHOでスライドを洗浄し、暗所、4℃で保存した。蛍光顕微鏡を573nmで使用し、抗−EAG1抗原のImAb4による染色について分析した。
【0199】
図10aにおける免疫蛍光は、本発明の抗−Eag1抗体ImAb4がヒト癌細胞内の内因性Eag1抗原に結合することを示す。結果は、本発明の抗−Eag1抗体が優先的に(有糸分裂のある特定のステージで)分裂するヒト癌細胞に結合することを示し、抗−Eag1抗体ImAb4が増殖するヒト癌細胞内の抗−Eag1抗原を検出するための診断ツールを提供することを示している。
【0200】
実施例10:本発明の抗−EAG1抗体の診断物質としての使用
A.ELISAによる試料中のEag1抗原の検出
試料中のEag1抗原の検出のための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を開発した。アッセイでは、96−ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートのウェルにEag1抗原に特異的な2つのマウスモノクローナル抗体の混合物を数時間吸着させた。固定化抗体は、試験試料中に存在しうるEag1抗原のいずれかに対する捕捉抗体としての働きをした。ウェルをすすぎ、アルブミンなどのブロッキング剤で処理することで分析物の非特異的吸収を防止した。
【0201】
続いてウェルを、Eag1抗原を含有すると見られるヒト腫瘍細胞の溶解物またはヒトEag1抗原を安定的に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の溶解物または非トランスフェクトCHO K1細胞の溶解物で処理した。試料を洗い流した後、ウェルを第2のウサギポリクローナル抗−Eag1抗体とともにインキュベートした。過剰な二次抗体を洗い流した後、検出抗体としての働きをする西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)に抱合したヤギ抗−ウサギ抗体とともにウェルをインキュベートした。すすいだ後、ウェルを適切な色原性基質で処理し、ELISAプレートリーダーを使用して色の生成について測定した。結果は、このELISAアッセイが試験試料中でのEag1抗原の検出に対して高度に特異的でかつ極めて感度の高いアッセイを提供することを示す。
【0202】
Eag1の検出用試料(細胞溶解物)を以下のように調製した。細胞(CHO K1、CHO Eag1クローン1、IPC−298メラノーマおよびPC3前立腺癌細胞)を培養皿(10cm、Nunc)に播種した。10%FCSまたは7%FCS(PC3細胞)(シグマ(Sigma))を補充したそれらに対応する培地(CHO細胞用のDMEM F12培地、IPC−298細胞用のDMEM 4500mg/mlのグルコース、PC3細胞用のハムF12培地)を使用し、細胞を5%CO中、37℃で24時間培養した。培地を取り出し、750μlの溶解緩衝液(150mM NaCl、50mM ヘペス(Hepes) pH7.5)、10%グリセリン、5mMのEDTA pH8.0、1%トリトン−X100、20mMのピロリン酸ナトリウム、10μg/mlのアプロチニン、1mMのPMSF、2mMのオルトバナジン酸ナトリウム、100mMのNaF)で細胞を溶解した。遠心分離(4℃、13000rpm、10分)によって溶解物を除去した。製造業者の使用説明書に従って使用タンパク質測定キット(ピアース(Pierce))を使用してタンパク質濃度を測定した。
【0203】
ヒト腫瘍細胞溶解物中でのEag1の検出のためのサンドイッチELISAを以下のように行った。PBS中の濃度が1μg/mlずつの、100μlの捕捉抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb4をELISAマイクロタイタープレート(ヌンク・マキシソープ(Nunc Maxisorp))上にコーティングした。4℃で一晩インキュベーション後、プレートを緩やかに撹拌しながら150μlのブロッキング用緩衝液(PBS中0.5%BSA)で、4℃で4〜6時間処理した。PBS(洗浄用緩衝液)中の0.05% Tween20を使用してプレートを洗浄した(3回)。プレートを、細胞溶解物(100μgのタンパク質濃度)とともに4℃で一晩インキュベートし、洗浄用緩衝液で洗浄し(3回)、次いで希釈緩衝液(0.5% BSA、0.05% Tween20、PBS中5mM EDTA)で1:1000に希釈したウサギポリクローナル抗−EAG1検出抗体(iOnGen)100μl/ウェルとともに25℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、HRPに抱合したヤギ−抗ウサギIgG(希釈緩衝液中0.2μg/ml)100μlとともに25℃で30分間インキュベートし、上記の如く洗浄し、次いで適切な色原性基質で処理し、ELISAプレートリーダーを使用して色の生成について測定した(図10b)。
【0204】
B.IHCにおけるEAG抗原の検出
本発明のEAG1抗体におけるパラフィン包埋組織内でのEAG1タンパク質に対する染色能を検討するため、免疫組織化学により組織レジスタ(register)のクリニクム・カッセル(Klinikum Kassel)から入手した組織を分析した。固定組織の使用は、クリニクム・カッセル(Klinikum Kassel)での審議会によって承認された。組織を4%中性緩衝化ホルマリン中で16〜20時間固定し、次いでパラフィン包埋した。ミクロトームで選択した組織ブロックを2〜4μmの薄片に切断し、シラン処理したスライドガラス(シグマ(Sigma))上に載せ、60℃で30分間および38℃で一晩乾燥させた。
【0205】
キシレン槽内で5分間を2回、アセトン中で5分間を2回、最後に蒸留水中で5分間インキュベートすることにより、切片を脱パラフィン化した。pH6.0、10mMのクエン酸塩緩衝液中の切片に対し、電子レンジ250Wで30分間、加熱前処理した後、蒸留水で洗浄した。内因性ペルオキシダーゼを、メタノール中0.3%Hの新たに調製した溶液中でのインキュベーションによって室温で20分間ブロッキングしてから、蒸留水で5分間洗浄した。ヘマトキシリンによる対比染色およびマウンティングとは別に、製造業者のEnVision+−染色手順(ダコ・サイトメーション(DAKO Cytomation)、ChemMateウサギ/マウス)についての手続きを進めるTecan−Immunostainer Genesis RSP 200(ソフトウェア:Gemini 3.40)を使用し、以下のステップを一晩実施した。スライドをPBS/0.05% TWEEN pH7.4で2回、7分間すすぎ、抗体eag−1(U3による提供)とともに4時間インキュベートした(抗体希釈剤(ダコ(DAKO))で1:200に希釈)。1スライド当たり100μlのPBS/0.05% TWEEN pH7.4の状態で反応を停止した。1400μlのPBS/0.05% TWEEN pH7.4中で7分間洗浄後、スライドを二次抗体/ペルオキシダーゼ抱合体とともにインキュベートした(30分、150μl/スライド、ダコ(DAKO)製HRP/ウサギ−マウスChemMate)。上記の如く洗浄後、120μl/スライドのDAB溶液(ダコ(DAKO);基質緩衝液で1:50に希釈)で10分間、染色反応を行った。100μlのPBS/0.05%TWEEN pH7.4の状態で反応を20分間停止してから、1400μlのPBS/0.05% TWEEN pH7.4で7分間洗浄し、次いでスライドをPBS/0.05% TWEEN pH7.4で2時間ごとに全部で3回洗浄した。最後に、スライドを水ですすぎ、ハリス(Harris)のヘマトキシリンで対比染色し、スライドガラスでカバーした。IgG2b分子の非特異的結合を除外するため、対照切片を、eag−1抗体の代わりにIgG2b陰性対照(ダコ(DAKO))とともにインキュベートした。
【0206】
C.患者における癌のステージング
本発明の使用を通して項目A.およびB.の下で示されかつ考察された結果に基づき、被験者においてEAG1抗原の発現レベルに基づいて癌をステージングすることが可能である。所定のタイプの癌において、疾患の進行における様々なステージおよび/または癌の治療上の処置における様々な時点にあるものと診断された被験者から血液または生検の試料を採取した。存在する抗原の量を特異的に測定する方法を用い、試料中に存在するEAG1抗原のレベルを測定した。かかる方法には、項目A.およびB.の下で記載された方法などのELISAまたはIHC法が含まれる。進行または治療の各ステージにおいて統計的に有意な結果をもたらす試料集団を使用し、各ステージの特徴を示していると考えうるEAG1抗原の発現レベルの範囲を指定した。試験中の被験者における癌の進行をステージングするかまたは被験者の治療経過に対する応答を特徴づけるため、被験者から血液または生検の試料を採取し、試料中に存在するEAG1抗原のレベルを測定した。そのようにして得た抗原の発現レベルを用いて値が減少する濃度範囲を同定した。そのようにして同定した範囲は診断した患者の様々な集団内で同定した進行のステージまたは治療のステージと相関し、それにより試験中の被験者におけるステージが得られる。
【0207】
実施例11:腫瘍治療のための本発明のEAG1抗体および抗体抱合体の使用
A.本発明のEAG1抗体を用いたヒトの治療
本発明の抗−EAG1抗体を用いたヒト患者の標的腫瘍治療において、特定の時間かけてかかるヒト患者に本発明の有効量のEAG1抗体を注射する。治療の間の数周期間、ヒト患者を監視し、それらの腫瘍が進行するか否か、特に腫瘍の成長および転移について測定する。
【0208】
本発明のEAG1抗体で治療した腫瘍患者における腫瘍の成長および転移のレベルは、対照抗体で治療された腫瘍患者における腫瘍の成長および腫瘍の転移のレベルよりも低い。使用されうる対照抗体は、試験される抗−EAG1抗体と同じアイソタイプの抗体を含み、さらにEag1腫瘍抗原に対する結合能を有しない場合がある。
【0209】
B.本発明のEAG1抗体抱合体を用いた治療
本発明のEAG1抗体抱合体を用いた標的腫瘍治療において、特定の時間かけて腫瘍を呈するヒト患者または動物に本発明の有効量のEAG1抗体抱合体を注射する。例えば、投与したEAG1抗体抱合体は、メイタンシン−EAG1抗体抱合体(もしくはMMEA−EAG1抗体抱合体)または放射性同位体−EAG1抗体抱合体である。治療の間の数周期間、ヒト患者または動物を監視し、それらの腫瘍が進行するか否か、特に腫瘍の成長および転移について測定する。
【0210】
腫瘍を呈しかつメイタンシン−EAG1抗体もしくは放射性同位体−EAG1抗体の抱合体を用いた治療を受診するヒト患者または動物における腫瘍の成長および転移のレベルは、腫瘍を呈しかつ対照メイタンシン−抗体もしくは対照放射性同位体−抗体などの対照抗体抱合体を用いた治療を受診する対照患者または動物と比較した場合により低い。使用されうる対照メイタンシン−抗体は、本発明のEAG1抗体と同じアイソタイプの抗体に連結したメイタンシンを含有する抱合体を含むが、より詳細にはEAG1腫瘍抗原に対する結合能を有しない。使用されうる対照放射性同位体−抗体は、本発明のEAG1抗体と同じアイソタイプの抗体に連結した放射性同位体を含有する抱合体を含むが、より詳細にはEAG1腫瘍抗原に対する結合能を有しない。
【0211】
実施例12:組換えヒト化抗−EAG1抗体HU−ImAb3の産生
hu−ImAb3の産生および精製において、ヒト化抗−EAG1抗体hu−ImAb3を発現するCHOK1モノクローナル細胞株を産生している。したがって、300000 CHOK1細胞/ウェルを、10%FCSを含有するDMEM/F12培地内の6−ウェル培養皿に24時間播種した。トランスフェクションにおいて、1μgの各ベクターKK56humpTracer(hu−ImAb3軽鎖)および1μgのLK56humpcDNA3(hu−ImAb3重鎖)を、全体容量500μlのOpti−MEM(ギブコ(Gibco)、カタログ番号31985−047)で10μlのリポフェクタミン2000トランスフェクション試薬(インヴィトロジェン(Invitrogen)、カタログ番号11668−019)とともに室温で20分間インキュベートした。
【0212】
CHOK1細胞をOpti−MEMで2回洗浄し、1.5mlのOpti−MEMを各ウェルに添加した。トランスフェクション混合物を各ウェルに慎重に添加し、5%CO中、37℃で4時間インキュベートした。次いで、トランスフェクション培地を除去し、10%FCSを含有する2mlのDMEM/F12培地を細胞に添加した。5%CO中、37℃で24時間インキュベーションした後、トランスフェクトした細胞を15cmのプレート上に3つの異なる希釈係数で蒔き、Zeozin(0.5mg/ml)およびG418(1mg/ml)を用いて選択した。2日ごとに(抗生物質を含有する)培地を変更した。単一の12−ウェルプレート上の20μlの細胞をピペットで採取することによって単一のクローンを採取した。
【0213】
モノクローナル細胞株を培養し、さらに細胞が2つの6−ウェル上に蒔かれうるまで選択した。各々の場合、さらなる培養のために一方のウェルを使用する一方、hu−ImAb3の発現を試験するためにもう一方を使用した。
【0214】
したがって、2.5×10細胞を10cmのディッシュ上に蒔いた。24時間後、培地を除去し、5%の低IgGを含有する5mlのDMEM/F12を添加し、各モノクローナル細胞株を5%CO中、37℃で48時間インキュベートした。2mlの上清を除去し、遠心し、40μlのタンパク質A/G−セファローズとともに免疫沈降する(1:1)のに使用した。免疫沈降物を洗浄し、10%SDSページで分析した。二次抗−ヒトペルオキシダーゼと抱合した抗体検出系を使用してhu−ImAb3の発現を検出した(図11)。
【0215】
hu−ImAb3の産生において、INTEGRA CELLine 1000系を使用してモノクローナル細胞株CHOhu−ImAb3クローン5を培養した。
【0216】
したがって、4×10個の細胞を、最終容量15mlにおいて10%の低IgG FCSを補充したDMEM/F12で12mlのCytodexマイクロキャリアビーズとともにインキュベートした。25mlのDMEM/F12をCELLine 1000の栄養−区画(nutrition−compartment)に添加し、膜を湿らせた。CHOhu−ImAb3 cl.5の細胞を細胞の区画にピペットし、約10分ごとに軽い振とう下で90分間インキュベートすることで細胞のビーズへの付着を可能にした。10%FCSを補充した500mlのDMEM/F12を栄養−区画に充填した。7日後、細胞を取り出し、栄養−区画内の培地を変更した。遠心分離後、細胞およびビーズを再懸濁し、細胞−区画に再び移した。hu−ImAb3を含有する遠心した上清を新規チューブに移し、−20℃の状態を保った。4日ごとに細胞上清を収集した。
【0217】
hu−ImAb3抗体の精製において、細胞上清を遠心し、無菌濾過した。Aekta Explorer系(プロテインA−セファローズ(rProteinA−Sepharose)FF;結合緩衝液:20mM NaPO pH8.8;溶出緩衝液:0.1M グリシン;0.15M NaCl pH3.3)を使用して抗体を精製した。
【0218】
抗体を透析し(PBS)、無菌濾過し、エンドトキシン試験を行い、かつBCAの試験によって濃度を測定した。
【0219】
実施例13:コロニー形成アッセイ(軟寒天アッセイ)
本発明の抗−EAG1抗体における足場非依存性細胞成長に対する阻害能を検討するため、軟寒天アッセイを行った。軟寒天コロニー形成アッセイは、形質転換細胞のみが軟寒天で成長可能である際にかかる形質転換細胞について試験するための標準インビトロアッセイである。
【0220】
(細胞株に依存する)0.1%〜0.5%FCSを含有するIMDM培地(ギブコ(Gibco))で、(細胞株に依存する)750〜1000個の細胞を15μg/mlの指定の抗体とともに75分間予備インキュベートした。次いで、(細胞株に依存する)0.1%〜0.5%FCSを含有する0.25%〜0.3%ディフコ(Difco)のノーブル寒天で細胞を再懸濁した。細胞懸濁液を、96−ウェルプレート内、20%FCSを含有する0.5%〜0.6%アガロース下層上に3通りに蒔いた。7〜12日間でのコロニーの形成を可能にし、次いで50μlのMTT(PBS中0.5mg/ml)で8〜12時間染色した。図12a〜iは、本発明の抗−EAG1抗体を用いて実施したこれらの実験結果を示す。これらの結果は、本発明のマウスImAb3が、NCI−ADR乳癌細胞(図12a)、SKOV3卵巣癌細胞(図12b、c)、HT144メラノーマ細胞(図12d)、BX−PC3膵臓癌細胞(図12e)、HT1080線維肉腫細胞(図12f)およびSKMes1肺扁平上皮癌細胞(図12g)の足場非依存性細胞成長を阻害することを示す。さらに、図12bは、抗−EAG1抗体ImAb5もSKOV3卵巣癌細胞のコロニー形成を低下させることを示す。ソフトウェアSAW Version 4.0を含むScanalyzer HTSカメラシステム(レムナテック(LemnaTec)、Wuerselen)を使用してコロニーの数と大きさを分析した。
【0221】
実施例14:本発明のマウス抗−EAG1抗体ImAb3によるSKOV3細胞増殖の阻害
本発明の抗−EAG−抗体の癌細胞増殖に対する阻害能を測定するため、インビトロでの実験を行った。1000 SKOV3細胞を、10%FCSを補充した100μl/ウェルの培地(DMEM 4500mg/ml グルコース)、96−ウェルプレート上に播種した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、0.5%FCSを含有する60μl/ウェルの培地で24時間インキュベートした。次いで、細胞を、40μl/ウェルに希釈した15μg/mlの抗−Eag1モノクローナル抗体ImAb3またはそれに対応する対照抗体(マウスIgG2b)で4通りに処理した。細胞を5%CO中、37℃で3日間インキュベートした。増殖および細胞生存度を評価するため、テトラゾリウム塩MTSおよび電子共役用試薬フェナジンメトサルフェート(PMS)を含有する20μlのCellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution試薬(プロメガ(Promega))を各ウェルに添加し、37℃で10分から3時間以内の範囲の様々な時間インキュベートした。ELISAプレートリーダーを使用し、590nmの吸光量によってホルマザン生成物の量を測定した。図13に示した結果は、本発明の抗体がヒト癌細胞の増殖および/または生存度を阻害することを示す。
【0222】
実施例15:抗−EAG抗体ImAb3は雌SCIDマウスにおけるヒト乳癌の成長を阻害する
本発明の抗−EAG1抗体がSCIDマウスにおけるヒト乳癌細胞の腫瘍成長を阻害するか否かを判定するため、10個のMDA−MB−435細胞を雌SCIDマウスに皮下移植した。動物の背部で腫瘍が成長した。腫瘍が測定可能である場合すなわち移植の約7日後に治療を開始した。1回目の治療に先立ち、治療群にわたる腫瘍体積(平均、中央値および標準偏差)の測定を開始する場合の均一性を確保するため、マウスを無作為化して統計試験を行った。無作為化後、MDA−MB−435細胞を最初に移植した、1群当たり12匹中10匹のマウスを実際の試験に使用した。1つの群はモノクローナルマウスの抗−EAG1抗体ImAb3の投与を受け、第2の群は対照として賦形剤PBSの投与を受けた。無作為化した日に治療を開始し、抗−EAG1抗体ImAb3の負荷用量として58mg/kg、次いで週1回、20mg/kgを腹膜腔内注射した。対照群は、同じ治療スケジュールで賦形剤PBSの投与を受けた。動物を96日間(13週間)治療した。
【0223】
試験期間中、週2回、腫瘍の測定値および動物の体重を得た。個々の腫瘍体積の和を群内のマウス数で除することにより、群の平均腫瘍体積を算出した。図14にまとめたデータは、抗−Eag1抗体ImAb3の投与によって免疫不全マウスにおけるヒト乳癌成長の低下がもたらされたことを示す。
【0224】
実施例16:第2の治療用モノクローナル抗体または抗腫瘍剤と併用したヒト抗−EAG1抗体ImAb3による足場非依存性細胞成長の阻害
高増殖性疾患の抗体または他の抗腫瘍剤を用いた単独治療は、一方では薬剤への耐性の発現、もう一方では細胞における抗体との非反応をもたらすと思われる抗原性における変化などの問題によって阻止される可能性が高い。これらの問題は、本発明の抗−EAG1抗体と、受容体チロシンキナーゼに特異的な抗体などの別の治療抗体、または他の抗腫瘍剤との併用によって回避可能であると思われる。該併用治療は2種類の抗癌剤と結合し、それぞれが異なる作用機構を介して作動することで高増殖性疾患を予防または治療するための細胞毒性応答をもたらすことから、それもまた有利である。
【0225】
驚くべきことに、抗−EAG1抗体ImAb3と抗−EGFR抗体エルビタックス(Erbitux)(セツキシマブ;メルク(Merck))との併用治療により、ヒト癌細胞における足場非依存性成長の低下が新規のモノクローナル抗体またはEGFR抗体の単独使用と比べて大きくなる結果になることが判明した。
【0226】
卵巣癌細胞の足場非依存性細胞成長の阻害に対するエルビタックスと併用したImAb3の有効性を試験するため、1000 SKOV3細胞を、0.5%FCSを含有するIMDM培地で7.5μg/mlのImAb3または対照抗体(マウスIgG2b)とともに75分間予備インキュベートした。この予備インキュベーション後、7.5μg/mlのエルビタックスを添加し、細胞を0.25%ディフコ(Difco)のノーブル寒天(0.5%FCS)に再懸濁した。次いで、96−ウェルプレート内、20%FCSを含有する0.5%ディフコ(Difco)のノーブル寒天下層上に細胞を3通りに蒔いた。
【0227】
膵臓癌細胞の足場非依存性細胞成長の阻害に対するエルビタックスと併用したImAb3の有効性を試験するため、1500 BxPC3細胞を、0.5%FCSを含有するIMDM培地で15μg/mlのImAb3または対照抗体とともに75分間予備インキュベートした。この予備インキュベーションステップ後、15μg/mlのエルビタックスを添加し、細胞を、0.25%ディフコ(Difco)のノーブル寒天(0.5%FCS)に再懸濁し、96−ウェルプレート内、20%FCSを含有する0.5%寒天下層上に3通りに蒔いた。
【0228】
37℃、5%COでのインキュベーションの8日後、50μlのMTT(PBS中0.5mg/ml)でコロニーを一晩染色した。ソフトウェアSAW Version4.0を含むScanalyzer HTSカメラシステム(レムナテック(LemnaTec))を使用してコロニーの数と大きさについて分析した。図15aおよび15bは、抗−EAG1抗体ImAb3と抗−EGFR抗体エルビタックスとの併用治療によって卵巣(SKOV3)および膵臓(BxPC3)腫瘍細胞の成長が効率的に阻害されることを示す。
【0229】
さらに、足場非依存性細胞成長の阻害に対する化学療法剤のタキソールまたはシスプラチンと併用したImAb3の有効性を試験した。したがって、1000 SKOV3細胞を、0.5%FCSを含有するIMDM培地で5.5μg/ml(タキソールと併用する場合)または7.5μg/ml(シスプラチンと併用する場合)のImAb3または対照抗体(マウスIgG2b)とともに75分間予備インキュベートした。ImAb3または対照抗体との細胞の予備インキュベーション後、化学療法剤のタキソール(3nM)またはシスプラチン(500nM)を添加し、細胞を、0.25%ディフコ(Difco)のノーブル寒天(0.5%FCS)に再懸濁した。細胞を96−ウェルプレート内、20%FCSを含有する0.5%ディフコ(Difco)のノーブル寒天下層上に3通りに蒔き、8日間インキュベートした。
【0230】
ヒトメラノーマ細胞の足場非依存性細胞成長に対するImAb3とシスプラチンの併用効果を分析するため、1000 HT144細胞を、0.5%FCSを含有するIMDM培地で30μg/mlの抗−EAG1抗体ImAb3または対照抗体(マウスIgG2b)とともに75分間予備インキュベートした。次いで、500nMのシスプラチンを添加し、細胞を、0.3%ディフコ(Difco)のノーブル寒天(0.5%FCS)に再懸濁し、96−ウェルプレート内、20%FCSを含有する0.6%ディフコ(Difco)のノーブル寒天下層上に3通りに蒔き、8日間インキュベートした。
【0231】
図15cは、SKOV3卵巣癌細胞に対する抗−EAG1抗体ImAb3と抗腫瘍剤タキソールとの併用治療の結果、ヒト癌細胞の足場非依存性成長における低下が新規のモノクローナル抗体またはタキソールの単独使用よりも大きくなることを示す。さらに図15dおよび15eにヒト卵巣癌およびメラノーマ細胞に対する抗−EAG1抗体ImAb3と化学療法剤シスプラチンの併用による治療の結果、ヒト癌細胞の足場非依存性成長における低下が新規のモノクローナル抗体またはシスプラチンの単独使用よりも大きくなることを示す。ソフトウェアSAW Version4.0を含むScanalyzer HTSカメラシステム(レムナテック(LemnaTec))を使用してコロニーの数と大きさについて分析した。
【0232】
実施例17:抗腫瘍剤タキソールと併用した本発明のマウス抗−EAG1抗体ImAb3によるSKOV3細胞増殖の阻害
細胞増殖に対する本発明の抗−EAG1抗体と強力な抗腫瘍剤タキソールとの併用治療の効果を測定するため、両方の抗癌剤を併用してインビトロでの細胞増殖アッセイを行った。
【0233】
したがって、750 SKOV3細胞を、10%FCSを補充した100μl/ウェルの培地(DMEM 4500mg/mlのグルコース)、96−ウェルプレート上に一晩播種した。細胞をPBSで洗浄し、0.5%FCSを含有する60μl/ウェルの培地で24時間飢餓状態にした。細胞を、図16に示す如く20μl/ウェルに希釈した、30μg/mlの抗−Eag1モノクローナル抗体ImAb3、PBSまたは1nMのタキソールで、5%CO中、37℃で1時間、4通りに処理した。この予備インキュベーションステップ後、図16に示す如く、1nMのタキソール、30μg/mlのImAb3またはDMSOを20μl/ウェルで添加し、次いで細胞を5%CO中、37℃で3日間インキュベートした。増殖および細胞生存度を評価するため、テトラゾリウム塩MTSおよび電子共役用試薬フェナジンメトサルフェート(PMS)を含有する20μlのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution試薬(プロメガ(Promega))を各ウェルに添加し、37℃で10分から3時間以内の範囲の様々な時間インキュベートした。ELISAプレートリーダーを使用して590nmの吸光量によってホルマザン生成物の量を測定した。図16に示した結果は、抗−EAG1抗体ImAb3と強力な抗腫瘍剤タキソールとの併用治療によってヒト卵巣癌細胞の成長が効率的に阻害されることを示す。さらに、治療順序(細胞のタキソールとそれに続くImAb3との予備インキュベーションまたはImAb3とそれに続くタキソールとの予備インキュベーション)がImAb3とタキソールとの併用治療によるSKOV3細胞の細胞増殖に対する阻害作用に何も影響を与えないことを示す。
【0234】
実施例18:免疫毒素サポリンに抱合した本発明のヒト抗−EAG1抗体によるヒト癌細胞増殖の阻害
本発明の抗−Eag1抗体における一次免疫毒素としての抱合への特異的な適応性および有効性を評価するため、宿根草の植物種由来のリボソーム不活化タンパク質であるサポリンに抱合した本発明の抗−EAG1抗体を用いてインビトロでの細胞増殖アッセイを行った。
【0235】
ジスルフィド連結を介した抗−Eag1抗体ImAb3とサポリンとの抱合(ImAb3−SAP)および抱合型抗体ImAb3−SAPの精製がアドバンスド・ターゲティング・システムズ(Advanced Targeting Systems)(San Diego、カリフォルニア州、米国)によって行われた。
【0236】
サポリンと抱合した抗−EAG1抗体のImAb3−SAPにおける癌細胞増殖に対する阻害能を試験するため、癌細胞1000個/ウェルを10%FCSを補充した100μlの培地(細胞株に依存)、96−ウェルプレート上に播種した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、10%FCSを含有する60μl/ウェルの培地で24時間インキュベートした。細胞を、40μl/ウェルに希釈した1μg/mlのサポリンと抱合した抗−Eag1モノクローナル抗体のImAb3−SAPまたは対照IgG−SAPで4通りに処理した。次いで、細胞を5%CO中、37℃で3日間インキュベートした。増殖および細胞生存度を評価するため、テトラゾリウム塩MTSおよび電子共役用試薬フェナジンメトサルフェート(PMS)を含有する20μl/ウェルのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution試薬(プロメガ(Promega))を各ウェルに添加し、37℃で10分から3時間以内の範囲の様々な時間インキュベートした。ELISAプレートリーダーを使用して590nmの吸光量によってホルマザン生成物の量を測定した。
【0237】
これらの結果は、サポリンと抱合したImAb3−SAPが、メラノーマ細胞株HT144、RPMI7951、C8161およびSkMel2(図17a)、卵巣癌細胞株SKOV3およびIGROV1、膵臓癌細胞株BxPC3および線維肉腫細胞株HT1080(図17b)、ならびに乳癌細胞株T47D、NCI−ADRおよび結腸癌細胞株SW480(図17c)における細胞増殖を効率的に阻害することを示す。したがって、本発明の抗−EAG1抗体は、一次免疫毒素としての抱合に適し、ヒト癌細胞の成長を阻害するための極めて効率的な作用物質であることが示された。
【0238】
実施例19:本発明の抗体によるEAG1電流の機能的阻害
抗体の有効な親和性および特異性を特徴づけるため、パッチクランプ技術に関する細胞全体の配置においてトランスフェクトしたHEK293細胞内のImAb3によるEag1電流の阻害を試験した。図示の(図18a)パルスプロトコル(保持電位−80mVから+40mVへの脱分極)によって電流を誘導した。一旦安定電流レベルが得られると、抗体を300nM(約45μg/ml)の濃度で槽チャンバに加えた。対照として、本発明者らは同一濃度で電流振幅に全く作用を示さない関連抗体ImAb4を使用した。抗体とImAb3に対するエピトープの配列を内在させる過剰なペプチドとのインキュベーションにより、ImAb3の作用を完全に失わせた。抗体およびペプチドを室温で1時間インキュベートし(1:1はペプチドが約50倍のモル数分過剰であることを示す)、混合物を抗体単独について記載の如く使用した。ImAb4に対するエピトープ配列を有するペプチドの使用は、ImAb3の作用に影響しなかった。
【0239】
この阻害の特異性を試験するため、トランスフェクトしたHEK293細胞においてImAb3のHERG電流に対する作用についても試験した。保持電位−80mVから+40mVへの脱分極によって電流を誘導した。HERGは、通常は極めて高速な不活性化、および膜の再分極時のテール電流における電流振幅の測定を可能にするゆるやかな不活性化を示す。ImAb3(N=6)の添加は、添加抗体の非存在下でも観察される電流停止の特定範囲にわたる電流振幅に作用しなかった(図18b)。
【0240】
実施例20:移植した腫瘍細胞の本発明の近赤外標識抗体を使用した局在化
図19は、AlexaFluo 680で標識した特異的な抗−Eag1抗体の静脈内注射後における、マウスが担持しEag1を発現する腫瘍上での近赤外蛍光強度(A)および寿命(B)を示す疑似カラー像を示す。陽性リンパ節(矢印)は臨床的に明瞭ではなかった。寿命の測定値から、シグナルの特異性について判定可能になる。各場合において着色領域のみを走査した。
【0241】
MDA−MB−435S細胞(10)を雌SCIDマウスの脇腹に皮下移植した。抗体ImAb4(500μg)をAlexaFluo 680抗マウス二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。100μgの産生標識抗体をマウスの尾静脈に注射した。その24時間後、マウスを麻酔し、eXplore Optix2系(ジェネラル・エレクトリック(General Electric Co))を使用して走査した。全身への低解像度走査後、陽性シグナルを有する領域を高解像度(より長い暴露時間)で走査した。検視によって陽性シグナルの位置を確認した。抗体の操作を回避するため、一本鎖抗体とDsRed2の間のキメラタンパク質ならびにポリリシン配列を担持する一本鎖抗体を産生することで近赤外色素(例えばCy5.5)による高効率の標識化を可能にしている。
【0242】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】マウスクローンImAb1、3、4および5の軽鎖および重鎖のCDR1、2および3のCDRペプチド配列を示す。
【図2】本発明の抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3の結合特異性/選択性を示す。該抗体はEag1を選択的に認識しかつEag2抗原に結合しない。さらにBIAcore(商標)分析では、ImAb1がEag1のC末端に結合する一方、ImAb3がEag1のポアドメインを認識することが示される。
【図3】ラット海馬およびラット小脳を含むラット脳切片における抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb4による免疫組織化学(IHC)分析を示す。IHC試験は、本発明の抗−Eag1抗体のラットとの交差反応について示す。
【図4】抗−Eag1モノクローナル抗体とSPOTセルロース膜上のペプチドとの結合パターン。
【図5】Eag1を過剰発現する生きているCHO K1細胞に対してCy3標識抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3を用いた免疫蛍光実験を示す。結果は、異なるエピトープを認識する本発明のCy3標識抗−Eag1抗体が生きているCHO−Eag1細胞上のEag1抗原に結合しかつ細胞内に内在化することを示す。
【図6】マウスモノクローナル抗−Eag1抗体ImAb3のハイブリドーマ上清を用いた処理によるEag1を発現する卵母細胞内でのEag1電流の阻害およびImAb3におけるEag1発現CHO細胞内でのEag1電流に対する遮断能を示す。
【図7】本発明のマウス抗−Eag1抗体のImAb1およびImAb3によるIPC−298メラノーマ細胞増殖の阻害を示す。該抗体はヒト癌細胞における基底細胞の成長を阻害する。
【図8a】および
【図8b】図8aおよび8bは、二次免疫毒素とともに(と組み合わせて)標識されたマウス抗−Eag1抗体ImAb4によるIPC−298メラノーマ細胞増殖の阻害を示す。結果は、抗−Eag1抗体が内在化する能力を有しかつ本発明のアームが付着した抗体がヒト癌細胞の成長を特異的に阻害することを示す。該抗体は、一次免疫毒素としての抱合に適しかつヒト癌細胞成長の阻害において有効である。
【図9】二次免疫毒素の存在下での抗−Eag1抗体ImAb4によるIPC−298メラノーマ細胞の足場非依存性細胞成長の阻害を示す。
【図10a】図10aは、抗−Eag1抗体ImAb4を使用し、ヒト腫瘍細胞内でのEag1タンパク質の免疫蛍光を示す。結果は、発明の抗体がヒト癌細胞内で内因性Eag1タンパク質に対する結合能を有することを示す。
【図10b】図10bは、本発明の抗−Eag1抗体を使用したEag1−ELISAの実施結果を示す(該抗体はヒト癌細胞の溶解物中でのEag1タンパク質に対する結合能および検出能を有する)。
【図11】CHO K1細胞内での組換えhu−ImAb3の発現を示す。
【図12】本発明のマウス抗−EAG1抗体による数種のヒト癌細胞のコロニー形成の阻害を示す。抗−EAG1抗体ImAb3は、乳癌細胞(図12a)、卵巣癌細胞(図12b、c)、メラノーマ細胞(図12d)、膵臓癌細胞(図12e)、線維肉腫細胞(図12f)および肺扁平上皮癌細胞(図12g)の足場非依存性細胞成長を阻害する。抗−EAG1抗体iMab5は、卵巣癌細胞(図12b)の足場非依存性細胞成長を阻害する。図12cは、抗−EAG1抗体ImAb3による卵巣癌細胞のコロニー形成の用量依存的阻害を示す。
【図13】本発明のマウス抗−Eag1抗体ImAb3によるSKOV3卵巣癌細胞増殖の阻害を示す。該抗体はヒト癌細胞内での基底細胞の成長を示す。
【図14】本発明の抗−EAG1抗体ImAb3による雌SCIDマウスにおけるヒト腫瘍成長の低下を示す。該抗体は、ヒト乳癌細胞のMDA−MB−435s細胞のインビボでの成長を阻害する。
【図15】治療用モノクローナル抗−EGFR抗体エルビタックスと併用したヒト抗−EAG1抗体ImAb3によるヒト卵巣癌およびヒト膵臓癌細胞の足場非依存性細胞成長の阻害を示す(図15aおよび15b)。図15cは、ヒト卵巣癌細胞のImAb3と抗腫瘍剤タキソールとの併用治療によってこの細胞株のコロニー形成が極めて効率的に阻害されることを示す。抗−EAG1抗体ImAb3を抗腫瘍剤シスプラチンと併用した細胞治療によるヒト卵巣癌およびメラノーマ細胞のコロニー形成の阻害については図15dおよび15eに示される。
【図16】強力な抗腫瘍剤タキソールと併用した本発明のマウス抗−EAG1抗体ImAb3によるSKOV3卵巣癌細胞の増殖の阻害を示す。ヒト卵巣癌細胞に対するImAb3とタキソールとの併用治療により、ヒト癌細胞内での基底細胞の成長が各抗癌剤単独の場合よりも効率的に阻害される。
【図17】免疫毒素サポリンと抱合された本発明のマウス抗−Eag1抗体ImAb3による種々の癌細胞株の細胞増殖の阻害について示す。結果は、毒素と抱合された抗−Eag1抗体ImAb3がヒト癌細胞株の幅広いスペクトルの細胞増殖を極めて効率的に阻害することを示す。サポリンと抱合された抗−EAG1抗体ImAb3は、メラノーマ細胞(図17a)、卵巣および膵臓癌細胞(図17b)、線維肉腫細胞(図17b)、乳癌および結腸癌細胞(図17c)の細胞増殖を阻害する。
【図18】ImAb3抗体の細胞外適用によるEAG1電流の阻害を示す。同適用の0および10分の時点での代表的トレースは、ImAb3を適用するだけで電流振幅が見事に低下することを示す。10〜15分後には、電流阻害が全振幅の約35%に至る(図18a)。図18bは、ImAb3の技術的に到達可能な時間範囲および濃度においてHERG電流に対する作用が失われることを示す。
【図19】人工的に移植された、EAG1を発現する腫瘍および先に検出されなかった転移性の移植片を担持するマウスから得られる疑似カラー像(矢印)を示す。イメージングの24時間前に標識抗体100μgが静脈内注射された。図19Aは色分けされた蛍光強度を示す一方、図19Bは陽性領域においてAlexaFluor 680に対応する蛍光寿命を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
および/またはV領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、抗体、抗体断片またはその誘導体であって、前記CDRを決定するアミノ酸配列が、(V)配列番号160〜162、166〜168、172〜174、および178〜180からなる群から選択され、かつ(V)配列番号163〜165、169〜171、175〜177、および181〜183からなる群から選択される、抗体、抗体断片またはその誘導体。
【請求項2】
前記抗体、抗体断片またはその誘導体が、哺乳類EAG1イオンチャネルの細胞外または細胞内ドメインの少なくとも1つのエピトープと特異的に結合/相互作用し、かつ哺乳類EAG2イオンチャネルと結合/相互作用しない、請求項1に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体断片またはその誘導体が、Fab−断片、F(ab)’−断片、一本鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二価抗体−コンストラクト、ヒト化抗体、ヒト抗体、合成抗体、その化学的に修飾された誘導体、多特異的抗体、二重特異性抗体(diabody)、またはFv−断片あるいは別タイプの組換え抗体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体断片またはその誘導体。
【請求項5】
前記V鎖および前記V鎖の各々のうちの少なくとも1つのCDRを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体。
【請求項6】
前記CDRがCDR3である請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体。
【請求項7】
前記軽鎖(V)が配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、43および47からなる群から選択され、かつ前記重鎖(V)が配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44および48からなる群から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体。
【請求項8】
前記抗体、断片またはその誘導体がラベル基に結合される請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体をコードする核酸分子。
【請求項10】
請求項9の核酸分子を含有するベクター。
【請求項11】
前記核酸分子が、原核生物および/または真核細胞の宿主細胞における前記転写および場合によって発現を可能にする1つまたは複数の制御配列に作動可能に連結される発現ベクターである請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項10または11に記載のベクターを含む宿主。
【請求項13】
細菌、真菌、植物、両生類または動物細胞である、請求項12に記載の宿主。
【請求項14】
ヒト細胞またはヒト細胞系である請求項13に記載の宿主。
【請求項15】
抗体、抗体断片またはその誘導体の合成を可能にする条件下で請求項12〜14のいずれか一項に記載の宿主を培養するステップと、前記培養物から前記抗体、抗体断片またはその誘導体を回収するステップとを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体の調製のための方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に定義された抗体、抗体断片またはその誘導体、請求項9に記載の核酸分子、請求項10または11に記載のベクター、請求項12〜14のいずれか一項に記載の宿主あるいは請求項15に定義された方法によって得られる抗体、抗体断片またはその誘導体を含む医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の抗腫瘍剤をさらに含有する請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
高増殖性疾患、炎症性疾患、乾癬、または神経変性疾患の予防または治療のための医薬組成物の調製を目的とする、請求項1〜8のいずれか一項に定義された抗体、抗体断片またはその誘導体、請求項9に記載の核酸分子、請求項10または11に記載のベクター、請求項12〜14のいずれか一項に記載の宿主あるいは請求項15に定義された方法によって得られる抗体、抗体断片またはその誘導体の使用。
【請求項19】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症またはパーキンソン病である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記高増殖性疾患が、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、リンパ腫、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、メラノーマ、増殖性疾患または腫瘍性疾患あるいは他のEAGを発現または過剰発現する高増殖性疾患である請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記炎症性疾患が膵炎または肝炎である請求項18に記載の使用。
【請求項22】
請求項1〜8のいずれか一項に定義された抗体、抗体断片またはその誘導体、請求項9に記載の核酸分子、請求項10または11に記載のベクター、請求項12〜14のいずれか一項に記載の宿主あるいは請求項15で定義された方法によって得られる抗体、抗体断片またはその誘導体、および場合によって医薬的に許容できる担体を含む診断用組成物。
【請求項23】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片またはその誘導体を自身の表面上にEAG1を担持すると見られる細胞または組織と接触させるステップを含む、EAG1発現細胞の存在について評価する方法。
【請求項24】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片またはその誘導体を自身の表面上にEAG1を担持すると見られる細胞または組織と接触させるステップを含む、EAG1の機能を遮断する方法。
【請求項25】
前記接触させるステップがインビトロで行われる請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記接触させるステップがインビボで行われる請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片またはその誘導体の適切な用量を治療を必要とする患者に投与するステップを含む、高増殖性疾患、炎症性疾患、乾癬、または神経変性疾患から選択される疾患を治療する方法。
【請求項28】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症またはパーキンソン病である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記高増殖性疾患が、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、リンパ腫、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、メラノーマ、増殖性疾患または腫瘍性疾患あるいは他のEAGを発現または過剰発現する高増殖性疾患である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記炎症性疾患が膵炎または肝炎である請求項27に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片またはその誘導体、請求項9に記載の核酸分子および/あるいは請求項10または11に記載のベクターを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図12e】
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【図12f】
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【図12g】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図15d】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−520186(P2008−520186A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533961(P2007−533961)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010671
【国際公開番号】WO2006/037604
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【出願人】(507107992)ウー3・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】U3 PHARMA AG
【Fターム(参考)】