説明

回診用X線撮影装置

【課題】FPDパネルを収納ボックスに収納していないことを操作者に知らせることができる回診用X線撮影装置を提供する。
【解決手段】収納検知部36は、ワイヤレスFPD4の収納状態を検知し、パネル表示制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29に収納状態を知らせる信号が出力する。ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていない場合、パネル表示制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29は、収納されていないことを知らせる信号を受信して、表示パネル20やスピーカー22や走行用電動モータ6に操作者DRに収納されていないことを報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フラットパネル型X線検出器を搭載した回診用X線撮影装置に係り、特に、フラットパネル型X線検出器の置き忘れを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、フラットパネル型X線検出器(以下、FPDパネルという)を搭載した回診用X線撮影装置を例に挙げて説明する(例えば、特許文献1参照)。回診用X線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、被検体の撮影画像を取得するFPDパネルと、取得された被検体の撮影画像などを表示する表示パネルと、FPDパネルを収納する収納ボックスと、X線撮影に必要な制御を行うX線撮影制御部とが走行可能な台車に搭載されている。
【0003】
この回診用X線撮影装置によるFPDパネルを用いたX線撮影について説明する。操作者は、被検体がいる病室まで台車を走行させ、被検体が寝ているベッドの脇で台車を停止させる。操作者は、収納ボックスからFPDパネルを取り出し、ベッドの上に寝ている被検体の下にFPDパネルを設置し、FPDパネルとX線撮影制御部とをケーブルで接続する。X線管の位置合わせし、表示パネルに表示される撮影条件などを確認して、操作パネルを操作して被検体にX線を照射する。FPDパネルは、被検体を透過したX線に基づいてX線検出信号を出力し、X線撮影制御部は、X線検出信号に基づいて被検体の撮影画像を作成し、表示パネルに表示する。操作者は、表示パネルに表示される被検体の撮影画像を観察したり、必要に応じて画像記録用ディスクに保管したりし終えると、X線撮影を終了する。X線撮影を終了すると、操作者は、FPDパネルを収納ボックスに収納して、次の病室まで台車を走行させる。
【0004】
このように、FPDパネルを搭載した回診用X線撮影装置では、被検体にX線を照射した後その場で被検体の撮影画像を表示パネルで観察することができる。また、FPDパネルを使用するので、被検体の撮影画像が適切でなければ何度でも撮影し直せる。
【0005】
収納ボックスは、前輪、後輪を備える台車部の後部側面に配設された板金製または強化樹脂製の筐体であり、FPDパネルがケーブル用のコネクタを上方にして挿入できる余裕のある寸法の開口部が設けられることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−43274号公報(第5−10頁、図10、図11)
【特許文献2】特開2006−296676号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置において、操作者は、被検体にX線を照射した後もFPDパネルを被検体の下に配置したまま、被検体の撮影画像が適切かどうかを確認する。操作者は、被検体の撮影画像の確認作業に気を取られるので、X線撮影を終えたときには、FPDパネルを収納ボックスに収納し忘れたまま、次の病室へ台車を走行させることがある。その結果、次の病室に台車を走行中にFPDパネルを置き忘れていることに気付いて前の病室に取りに戻ったり、次の病室で被検体をX線撮影する際にFPDパネルを置き忘れていることに気付いて前の取りに戻ったりするので、円滑に病室を巡回してX線撮影できないという問題がある。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、FPDパネルを収納ボックスに収納していないことを操作者に知らせることができる回診用X線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、走行可能な台車と、被検体にX線を照射するX線管と、被検体の撮影画像を取得するフラットパネル型X線検出器と、前記フラットパネル型X線検出器を収納する収納手段と、X線撮影に必要な制御をするX線撮影制御手段とを備える回診用X線撮影装置であって、前記フラットパネル型X線検出器の収納状態を検知して、前記X線撮影制御手段に収納状態を知らせる情報を出力する収納検知手段と、前記X線撮影制御手段から収納されていないことを知らせる情報を受信した場合に、回診用X線撮影装置の操作者に収納されていないことを報知する報知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、収納検知手段は、フラットパネル型X線検出器の収納状態を検知し、X線撮影制御手段に収納状態を知らせる情報を出力するので、X線撮影制御手段は、収納手段がフラットパネル型X線検出器を収納しているか否かを監視できる。フラットパネル型X線検出器が収納されていない場合、報知手段は、X線撮影制御手段から収納されていないことを知らせる情報を受信して、操作者に収納されていないことを報知するので、操作者はフラットパネル型X線検出器が収納されていないことを知ることができる。したがって、操作者は、収納手段にフラットパネル型X線検出器を収納することにより、フラットパネル型X線検出器の置き忘れを回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【0011】
この発明において、前記台車の走行状態を検知して、前記X線撮影制御手段に走行状態を知らせる情報を出力する走行検知手段を備え、前記X線撮影制御手段から走行していることを知らせる情報と、収納されていないことを知らせる情報とを受信した場合に、前記報知手段が前記操作者に収納されていないことを報知することが好ましい。これにより、走行検知手段は、台車の走行状態を検知し、X線撮影制御手段に走行状態を知らせる情報を出力し、報知手段は、X線撮影制御手段から走行していることを知らせる情報と、収納されていないことを知らせる情報とを受信して、操作者にフラットパネル型X線検出器が収納されていないことを報知するので、操作者は、台車を走行させるのと同時にフラットパネル型X線検出器が収納手段に収納されていないことを知ることができる。その結果、フラットパネル型X線検出器の置き忘れを迅速に回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【0012】
この発明において、前記台車の待機状態を検知して、前記X線撮影制御手段に待機状態を知らせる情報を出力する待機検知手段を備え、一定時間に亘って待機していることを知らせる情報と、収納されていないことを知らせる情報とをX線撮影制御手段から受信した場合に、前記報知手段が前記操作者に収納されていないことを報知することが好ましい。これにより、待機検知手段は、台車の待機状態を検知し、X線撮影制御手段に待機状態知らせる情報を出力し、報知手段は、X線撮影制御手段から一定時間に亘って待機していることを知らせる情報と、収納されていないことを知らせる信号とを受信して、操作者にフラットパネル型X線検出器が収納されていないことを報知するので、操作者は、収納手段がフラットパネル型X線検出器を収納されていないことを知ることができる。その結果、フラットパネル型X線検出器の置き忘れを走行前に回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【0013】
この発明において、前記報知手段は音声出力手段又は画像表示手段の少なくともいずれか一方であることが好ましい。これにより、操作者は聴覚的又は視覚的に収納されていないことを知ることができる。
【0014】
この発明において、前記報知手段は前記台車の走行を制限する走行制限手段であることが好ましい。これにより、台車の走行速度を通常状態よりも低速に制限されるので、操作者は台車の走行速度から収納されていないことを知ることができる。
【0015】
この発明において、前記報知手段は前記音声出力手段又は前記画像表示手段の少なくともいずれか一方と前記走行制限手段とを組み合わせたものであることが好ましい。例えば、これにより、音声又は画像の少なくともいずれか一方で収納されていないことを操作者に知らせた後に、走行制限によって収納されていないことを操作者に知らせることができるので、段階的に操作者に収納されていないことを知らせることができる。
【0016】
この発明において、前記フラットパネル型X線検出器は、前記X線撮影制御手段に無線で被検体の撮影画像データを送信することが好ましい。X線撮影制御手段に無線で被検体の撮影画像データを送信する、いわゆるワイヤレスタイプのフラットパネル型X線検出器は、被検体の下に置き忘れられることが多いと予測される。このワイヤレスタイプのフラットパネル型X線検出器においても、操作者は、フラットパネル型X線検出器が収納手段に収納されていないことを知ることができる。その結果、このワイヤレスタイプのフラットパネル型X線検出器の置き忘れを回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る回診用X線撮影装置によれば、フラットパネル型X線検出器の収納状態が検知され、X線撮影制御手段に収納状態を知らせる情報が出力され、フラットパネル型X線検出器が収納手段に収納されていない場合、報知手段は、X線撮影制御手段から収納されていないことを知らせる情報を受信して、操作者に収納されていないことを報知するので、操作者はフラットパネル型X線検出器が収納手段に収納されていないことを知ることができる。その結果、フラットパネル型X線検出器の置き忘れを回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の全体構成を説明する概略図である。
【図2】実施例1のX線撮影時の概要を説明する図である。
【図3】実施例1の制御ブロック図である。
【図4】実施例1のフラットパネルX線検出器を説明する概略図である。
【図5】実施例1の収納ボックスを説明する側面図である。
【図6】実施例1の収納状態の検知を説明する図である。
【図7】実施例1の報知処理を説明するブロック図である。
【図8】実施例1の報知処理を説明するフローチャートである。
【図9】実施例2の報知処理を説明するフローチャートである。
【実施例1】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る回診用X線撮影装置の全体構成を説明する概略図であり、図2は、実施例1におけるX線撮影の実行時の概要を説明する図である。図3は、実施例1の制御ブロックである。
【0020】
本実施例に係る回診用X線撮影装置1(以下、装置1と呼ぶ)は、図1に示すように、4輪タイプで後輪駆動型の移動式の台車2と、被検体PにX線を照射するX線管3と、被検体Pの撮影画像を取得するワイヤレスタイプのフラットパネル型X線検出器(ワイヤレスFPD)4と、台車2の後輪5を駆動させる走行用電動モータ6と、キャスタ式の前輪7と、台車2を電動移動させる運転を行う長棒状の台車運転ハンドル8と、台車走行およびX線撮影に必要なエネルギーを供給するバッテリー14と、ワイヤレスFPD4などを収納する収納ボックス9と、X線撮影や台車2の移動に必要な制御をするX線撮影制御部10と、X線撮影や台車2の移動に必要な情報を画像として表示する表示パネル20と、X線撮影や台車2の移動に必要な操作を行う操作パネル21と、X線撮影や台車の移動に必要な情報を音声で報知するスピーカー22とが搭載されている。なお、収納ボックス9は本発明の収納手段に相当し、X線撮影制御部10は本発明のX線撮影制御手段に相当する。走行用電動モータ6と表示パネル20とスピーカー22とは本発明の報知手段に相当し、走行用電動モータ6は本発明の走行制限手段に相当し、表示パネル20は本発明の画像表示手段に相当し、スピーカー22は本発明の音声出力手段に相当する。
【0021】
台車2は、後輪5が駆動することによって走行する。後輪5は、台車2の後部の左右に配設され、バッテリー14から必要な電力の供給を受けた走行用電動モータ6が後輪5に連結された図示しない車軸を回転させることによって、駆動する。後輪5の駆動に伴って前輪7も回転する。
【0022】
X線管3は、台車2の正面寄り中央に立設された垂直支柱11に昇降可能に配設される水平アーム12の先端に取り付けられる。被検体PのX線撮影を行う時は、図2に示すように、水平アーム12をX線管3ごと台車2の正面側に向ける構成とされる。
【0023】
X線撮影制御部10は、図3に示すように、操作パネル21による操作に従ってX線管3がバッテリー14から必要なエネルギーの供給を受けながら被検体PにX線を照射する際に、管電圧や管電流やX線照射時間などの制御を行うX線照射制御部23と、ワイヤレスFPD4の図示されないゲート駆動回路などを駆動制御するFPD制御部24と、ワイヤレスFPD4から出力される被検体PのX線検出信号に基づいて被検体Pの撮影画像を取得するX線画像取得部25と、X線画像取得部25で取得された撮影画像やX線撮影用または台車運転用の操作用メニューなどを記憶する表示メモリ26と、表示メモリ26に記憶されている撮影画像や操作用メニューを表示パネル20に表示させる表示パネル制御部27と、スピーカー22にX線撮影や台車の運転に必要な音声を出力させる音声出力制御部28と、走行用電動モータ6に必要な電力を供給するバッテリー14の出力を調整したり、ブレーキ機構45を作動させたりする台車運転制御部29とを備える。
【0024】
図4を参照して、ワイヤレスFPD4について説明する。図4(a)は、ワイヤレスFPD4の外観斜視図であり、(b)は模式的な回路図である。
【0025】
ワイヤレスFPD4は、図4(b)に示すように、X線検出面13に多数のX線検出素子15が2次元マトリックス状に配列されたフラットパネル型X線検出器である。ワイヤレスFPD4は、X線透過像をX線検出素子15でX線強度に応じた電気信号であるX線検出信号に変換して検出し、X線検出信号を無線で装置1側の画像取得部25に送信して、被検体Pの撮影画像を取得する。ワイヤレスFPD4は、図4(a)に示すように、各X線検出素子15を駆動するゲート駆動回路16やマルチプレクサ17AやA/D変換器17Bなどに必要な電力を供給する充電式のバッテリー18が配設されている。バッテリー18は、台車2に搭載されたバッテリー14と電気的に接続される充電用端子19(以下、端子19と呼ぶ)を有し、バッテリー14から供給された必要な電力を受給して蓄電する。
【0026】
また、ワイヤレスFPD4は、図4(a)に示すように、X線検出信号をX線画像取得部25に無線送信する送信機47と、FPD制御部24からゲート駆動回路16を駆動させる信号を受信する受信機48を有する。また、図示しないが、FPD制御部24には、ゲート駆動回路16を駆動させる信号を送信する無線送信部が配設され、X線画像取得部25には、X線検出信号を受信する無線受信部が配設される。
【0027】
図5を参照して、ワイヤレスFPD4を収納する収納ボックス9について説明する。
【0028】
収納ボックス9は、台車2の後部側面に配設され、ワイヤレスFPD4を取り出し可能に収納している。収納ボックス9の後部側面は、収納ボックス9が取り出し易いように傾けられている。収納ボックス9の内側には、FPD支持部31が配設され、FPD支持部31は、収納されたワイヤレスFPD4を保持している。FPD支持部31には、フォトセンサ32が配設されている。フォトセンサ32は、発光ダイオードなどの発光素子33と、フォトトランジスタなどの受光素子34であり、発光素子33と受光素子34とは、ワイヤレスFPD4を保持する溝部を挟んで対向位置に配設されている。なお、FPD支持部31には、ワイヤレスFPD4を収納した状態で図4(a)に示す端子19に当接して、バッテリー14からワイヤレスFPD4側の図示しない充電用バッテリーに必要な電力を供給する図示しない充電用端子が配設されている。
【0029】
図6を参照して、ワイヤレスFPD4の収納ボックス9への収納について説明する。(a)は、ワイヤレスFPD4が収納されていない状態であり、(b)は、収納されている状態である。
【0030】
操作者DRが収納ボックス9からワイヤレスFPD4を取り出して、被検体Pの下に配置している間、収納ボックス9のFPD支持部31には、図6(a)に示すように、ワイヤレスFPD4が保持されていない。ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されないとき、発光素子33と受光素子34とのは遮蔽物が存在しないので、発光素子33から照射された光が当たる。
【0031】
操作者DRが収納ボックス9にワイヤレスFPD4を収納している間、収納ボックス9のFPD支持部31には、図6(b)に示すように、ワイヤレスFPD4が保持されている。ワイヤレスFPD4が保持されているとき、発光素子33から照射された光は、ワイヤレスFPD4によって遮られるので、受光素子34には発光素子33から照射された光が当たらない。
【0032】
図3に戻って、X線撮影制御部10に必要な情報を検知する手段について説明する。
【0033】
走行検知部43は、台車2の走行状態を検知する。台車2が走行するとき、操作者DRは、台車運転制御部29によってブレーキ機構45を解除する。ブレーキ機構45が解除されたとき、走行検知部43は台車2が走行していることを検知して、表示パネル制御部27と音声出力制御部28と台車運転制御部29に走行していることを知らせる信号を出力する。なお、走行検知部43は本発明の走行検知手段に相当する。
【0034】
待機時間検知部44は、台車2の待機状態を検知する。操作者DRが操作パネル21によってX線撮影や画像確認に必要な操作したときから、一定時間に亘って次の操作をしないとき、待機時間検知部44は、台車2が待機状態であることを検知して、表示パネル制御部27と音声出力制御部28と台車運転制御部29に一定時間に亘って待機していることを知らせる信号を出力する。なお、待機時間検知部44は本発明の待機検知手段に相当する。
【0035】
収納検知部36は、ワイヤレスFPD4の収納状態、すなわちワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知して、収納状態を知らせる情報を表示パネル制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29に出力する。なお、収納検知部36は本発明の収納検知手段に相当する。
【0036】
図7を参照して、収納検知部36がワイヤレスFPD4の収納状態を検知して、報知部38が操作者DRに収納されていないことを報知する構成について説明する。なお、ここでは図3に示す表示パネル制御部27と音声出力制御部28と台車運転制御部29とを総称してX線撮影制御部10と呼び、表示パネル20とスピーカー22と走行用電動モータ6とを総称して報知部38と呼ぶ。
【0037】
受光素子34に発光素子33から照射される光が当たると、受光素子34は電流を流す。X線撮影制御部10と受光素子34との間には収納検知部36が接続されている。収納検知部36は、ワイヤレスFPD4の収納状態、すなわち、発光素子33から受光素子34に照射される光がワイヤレスFPD4によって遮られるか否かを検知する。例えば、収納検知部36は、受光素子34とともにコンパレータ回路を構成し、発光素子33から照射された光がワイヤレスFPD4によって遮られるときはX線撮影制御部10に出力する信号をOFFし、発光素子33から照射された光がそのまま受光素子34に当たるときはX線撮影制御部に出力する信号をONする。ON信号を受信したX線撮影制御部10は、収納されていないことを知らせる信号を報知部38に出力する。信号を受信した報知部38は、操作者DRにワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていないことを報知する。OFF信号を受信した場合、ワイヤレスFPD4は収納ボックス9に収納されているので、X線撮影制御部10は報知部38に信号を出力せず、報知部38も作動しない。
【0038】
回診用X線撮影装置1によるX線撮影の動作を説明する。
【0039】
操作者DRは、図1に示すように、ワイヤレスFPD4を収納ボックス9に収納し、台車2を走行させる。そして、被検体Pがいる病室まで台車2を走行させ、被検体Pが寝ているベッドBの脇で台車2を停止させる。操作者DRは、図2に示すように、収納ボックス9からワイヤレスFPD4を取り出し、ベッドBの上に寝ている被検体Pの下にワイヤレスFPD4を設置し、水平アーム12をX線管3ごと台車の正面側に向け、必要に応じてX線管3を昇降させる。X線管3の位置合わせ終了後、操作者DRは、表示パネル20に表示される撮影条件などを確認して、操作パネル21を操作して被検体PにX線を照射する。
【0040】
ワイヤレスFPD4は、図4(a)に示す受信機48を介してFPD制御部24から出力されるゲート駆動信号などを受信し、検出素子15に発生した電荷を読み出す。そして、被検体Pを透過したX線に基づいてX線検出信号を出力し、図4(a)に示す送信機47を介してX線検出信号をX線画像取得部25に送信する。X線画像取得部25は、X線検出信号に基づいて被検体Pの撮影画像を作成し、表示パネル20に表示する。操作者DRは、図2に示すように、ワイヤレスFPD4を被検体Pの下に配置しまたま、表示パネル20に表示される被検体Pの撮影画像を観察し、撮影画像が適切な画像であるか否かを確認する。適切な画像でなければ、撮影条件を変更したり、X線管3の位置を変更したりして、再びX線撮影する。適切な画像を取得できれば、必要に応じて図示しない画像記録用ディスクに保管して、X線撮影を終了する。
【0041】
次に、図8を参照して、本実施例の装置1において、収納されていないことを報知する場合について説明する。なお、図8は、本実施例の報知処理について説明するフローチャートである。
【0042】
収納検知部36は、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知する(ステップST1)。X線撮影終了後、操作者DRが被検体Pの下からワイヤレスFPD4を取り出し、収納ボックス9に収納した場合、収納検知部36はワイヤレスFPD4が収納されていることを検知するので、後述する報知処理は行われない。他方、ワイヤレスFPD4が被検体Pの下に配置されたままの状態である場合、収納検知部36は、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていないことを検知する。
【0043】
走行検知部43は、台車2が走行しているか否かを検知する(ステップST2)。このステップでは、操作者DRは、X線撮影終了後、ワイヤレスFPD4を収納ボックス9に収納していないことに気付いていない。この状態で、後輪5のブレーキ機構45を解除して、次の病室へ台車2を走行させると、走行検知部43は、ブレーキ機構45が解除されたことをもって台車2が走行していることを検知して、表示パネル制御部27に走行していることを知らせる信号を出力する。
【0044】
表示パネル制御部27は、表示パネル20にワイヤレスFPD4が収納されていないことを報知させる(ステップST3)。表示パネル制御部27は、ワイヤレスFPD4が収納されていないことを知らせる信号と台車2が走行していることを知らせる信号とを受信すると、表示パネル20上でワイヤレスFPD4が収納されていないことを操作者DRに報知する。
【0045】
収納検知部36は、表示パネル20上に上記報知を表示させた後に、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知する(ステップST4)。操作者DRが報知されていることに気付かない場合、収納検知部36はステップST3と同様にワイヤレスFPD4が収納されていないことを知らせる信号を表示パネル制御部27に出力して、継続して表示パネル20に上記報知を表示させる。同時に、収納検知部36は、台車運転制御部29にも収納されていないことを知らせる信号を出力する。
【0046】
台車運転制御部29は、台車2の走行を制限する(ステップST5)。台車運転制御部29は、バッテリー14から走行用電動モータ6に出力される電圧を通常の半分に変更して、台車2を低速で走行させる。
【0047】
収納されていないことを知らせる報知を解除する(ステップST6)。ステップST4において、操作者DRがワイヤレスFPD4を収納ボックス9に収納していないことを知らせる報知に気付き、被検体Pの下からワイヤレスFPD4を回収して、収納ボックス9に収納すると、報知が解除される。
【0048】
収納検知部36は、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知する(ステップST7)。操作者DRが、台車2が通常の速度で走行しないことに気付かない場合、収納検知部36は、表示パネル制御部27および台車運転制御部29に収納されていないことを知らせる信号を出力し続ける。
【0049】
継続して収納されていないことを報知する(ステップST8)。操作者DRが表示パネル20の表示および台車2の低速走行によって、収納されていないことに気付くまで、表示パネル制御部27は、収納されていないことを報知し、台車運転制御部29は台車2を通常よりも低速で走行させ続ける。
【0050】
収納さていないことを知らせる報知を解除する(ステップST9)。操作者DRは、通常の運転操作をしているにも関わらず、台車2が通常の速度で走行しないことに異常を感じ、収納されていないことを知らせる報知に気付き、被検体Pの下からワイヤレスFPD4を回収し、収納ボックス9に収納すると、報知が解除される。なお、ステップST3からステップST9までの処理を総称して処理Aと呼ぶ。
【0051】
実施例1記載の発明によれば、収納検知部36は、ワイヤレスFPD4の収納状態を検知し、パネル表示制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29に収納状態を知らせる信号が出力するので、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを監視できる。ワイヤレスFPD4が収納されていない場合、パネル表示制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29は、収納されていないことを知らせる信号を受信して、表示パネル20やスピーカー22や走行用電動モータ6に収納されていないことを報知させるので、操作者DRは収納されていないことを知ることができる。したがって、操作者DRは、被検体Pの下からワイヤレスFPD4を回収し、収納ボックス9に収納すれば、ワイヤレスFPD4の置き忘れを回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【0052】
実施例1記載の発明によれば、走行検知部43は、台車2の走行状態を検知し、パネル表示制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29は、走行していることを知らせる情報と収納されていないことを知らせる情報とに基づいて、操作者DRにワイヤレスFPD4が収納されていないことを報知するので、操作者DRは、台車2を走行させるのと同時にワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていないことを知ることができる。その結果、フラットパネル型X線検出器の置き忘れを迅速に回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【0053】
実施例1記載の発明によれば、表示パネル20によって収納されていないことを操作者DRに知らせた後に、台車2を通常よりも低速に走行させることによって収納されていないことを操作者DRに知らせることができるので、段階的に操作者DRに収納されていないことを知らせることができる。
【実施例2】
【0054】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
【0055】
実施例2では、操作者DRが操作パネル21によってX線撮影や画像確認に必要な操作をした後、所定時間を経過しても次の操作がされない場合で、かつワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていない場合について説明する。実施例2の回診用X線撮影装置の構成は、実施例1の装置1と同じであるので、同じ符号を用い、重複記載を避けるため説明を省略する。なお、図9は、本実施例の報知処理について説明するフローチャートである。
【0056】
収納検知部36は、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知する(ステップST11)。X線撮影終了後、操作者DRが被検体Pの下からワイヤレスFPD4を取り出し、収納ボックス9に収納した場合、収納検知部36はワイヤレスFPD4が収納されていることを検知するので、後述する報知処理は行われない。他方、ワイヤレスFPD4が被検体Pの下に配置されたままの状態である場合、収納検知部36は、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていないことを検知して、表示パネル制御部27に収納されていないことを知らせる信号を出力する。
【0057】
走行検知部43は、台車2が走行しているか否かを検知する(ステップST12)。台車2が走行している場合の処理は、実施例1のステップST3からステップST9までの処理Aと同じであるので重複記載を避けるため説明を省略する。
【0058】
待機時間検知部44は、操作者DRが操作パネル21を操作していない時間が一定時間を経過しているか否かを検知する(ステップST13)。一定時間内に操作者DRが操作パネル21を操作した場合、X線画像を確認中であり、X線画像が適切でなければ再びX線撮影される可能性があるので、後述する報知処理は行われない。他方、一定時間が経過しても操作者DRが操作パネル21を操作していない場合、待機時間検知部44は、装置1が一定時間に亘って待機していることを知らせる信号を表示パネル制御部27に出力する(ステップST14)。
【0059】
表示パネル制御部27は、表示パネル20にワイヤレスFPD4が収納されていないことを報知させる(ステップST15)。表示パネル制御部27は、ワイヤレスFPD4が収納されていないことを知らせる信号と装置1が一定時間待機していることを知らせる信号とを受信すると、表示パネル20上でワイヤレスFPD4が収納されていないことを操作者DRに報知する。
【0060】
収納検知部36は、表示パネル20上に上記報知を表示させた後に、ワイヤレスFPD4が収納されているか否かを検知する(ステップST16)。操作者DRが報知されていることに気付かない場合、収納検知部36はステップST15と同様にワイヤレスFPD4が収納されていないことを知らせる信号を表示パネル制御部27に出力して、継続して表示パネル20上に上記報知を表示させる。同時に、収納検知部36は、台車運転制御部29にも収納されていないことを知らせる信号を出力する。
【0061】
台車運転制御部29は、台車2の走行を制限する(ステップST17)。台車運転制御部29は、バッテリー14から走行用電動モータ6に出力される電圧を通常の半分に変更して、操作者DRが台車2の走行を開始するときに、台車2を低速で走行させる。
【0062】
収納されていないことを知らせる報知を解除する(ステップST18)。ステップST16において、操作者DRが収納されていないことを知らせる報知に気付き、被検体Pの下からワイヤレスFPD4を回収し、収納ボックス9に収納すると、報知が解除される。
【0063】
収納検知部36は、ワイヤレスFPD4が収納されているか否かを検知する(ステップST19)。操作者DRが台車2が通常の速度で走行しないことに気付かない場合、収納検知部36は、表示パネル制御部27および台車運転制御部29に収納されていない信号を出力し続ける。
【0064】
継続して収納されていないことを報知する(ステップST20)。操作者DRが表示パネル20の表示および台車2の低速走行によって、収納されていないことに気付くまで、表示パネル制御部27は、表示パネル20上で収納されていないことを操作者DRに報知する。台車運転制御部29は、台車2を通常よりも低速で走行させ続ける。
【0065】
収納さていないことを知らせる報知を解除する(ステップST21)。操作者DRは、通常の運転操作をしているにも関わらず、台車2が通常の速度で走行しないことに異常を感じ、収納されていないことを知らせる報知に気付き、被検体Pの下からワイヤレスFPD4を回収し、収納ボックス9に収納すると、報知が解除される。
【0066】
実施例2記載の発明によれば、パネル表示制御部27や音声出力制御部28や台車運転制御部29は、台車2が待機中であるか否かと、収納ボックス9がワイヤレスFPD4を収納しているか否かを監視することができる。したがって、待機状態が一定時間に亘って継続しており、かつ収納されていない状態を検知して、操作者DRに収納されていないことを報知できる。その結果、一定時間に亘って撮影操作などをせずに待機している状態が継続した場合は、走行前であっても操作者DRに収納されていないことを報知できるので、操作者DRは収納されていないことを走行前に知ることができる。以上により、ワイヤレスFPD4の置き忘れを走行前に回避し、円滑に病室を巡回してX線撮影できる。
【0067】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0068】
(1)上述した各実施例では、表示パネル20による表示と走行用電動モータ6による走行制限を組み合わせた報知処理を説明してきたが、これに限定されず、表示パネル20による表示や走行用電動モータ6による走行制限のみであっても構わない。また、スピーカー22による音声出力のみであっても構わないし、スピーカーによる音声出力を表示パネル20による表示や走行用電動モータ6による走行制限と組み合わせた報知処理でも構わない。
【0069】
(2)上述した各実施例では、送信機47と受信機48を有するワイヤレスタイプのフラットパネル型X線検出器(ワイヤレスFPD)4を説明してきたが、これに限定されず、有線でゲート駆動信号やX線検出信号を送受信するタイプのものであっても構わない。
【0070】
(3)上述した各実施例では、フォトセンサ32として、発光素子33と受光素子34とがFPD支持部31の溝部を挟んで対向配置される透過型のフォトセンサを説明してきたが、これに限定されず、FPD支持部31の片面に発光素子33と受光素子34とが配設される反射型のフォトセンサであっても構わない。
【0071】
(4)上述した各実施例では、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知する手段として、フォトセンサ32を説明してきたが、これに限定されず、FPD支持部31にリミットスイッチを配設し、ワイヤレスFPD4の出し入れに伴うリミットスイッチのON・OFFによって収納されているか否かを検知しても構わない。
【0072】
(5)上述した各実施例では、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されているか否かを検知する手段として、フォトセンサ32やリミットスイッチなどのセンサを説明してきたが、これに限定されず、ワイヤレスFPD4の送信機47および受信機48とX線撮影制御部10のFPD制御部24およびX線画像取得部25との間の無線通信状態を検知して、収納されているか否かを判定しても構わない。すなわち、台車2がワイヤレスFPD4から一定の距離を離れて、無線通信できなくなるときに、ワイヤレスFPD4が収納ボックス9に収納されていないと判定する。
【0073】
(6)上述した各実施例では、報知処理の一例を挙げたに過ぎず、これに限定されず、走行制限をした後にパネル表示したり、走行制限とパネル表示と音声出力を同時にしたり、表示内容や音量や台車2の走行速度を段階的に制限するなど報知方法を変えたりしても構わない。また、走行制限は、台車2の速度を落とすことに限定されず、台車2を完全に停止させることでも構わない。
【0074】
(7)上述した各実施例では、常に収納状態を検知していたが、これに限定されず、収納状態を検知するときと検知しないときとを選択できるように構成しても構わない。収納状態を検知する必要がない場合、例えばワイヤレスFPD4を撮影位置に配置した後で台車2を移動させたい場合などには、収納検知部38をOFFできるように構成すればよい。
【符号の説明】
【0075】
1 … 回診用X線撮影装置
2 … 台車
4 … ワイヤレスFPD
6 … 走行用電動モータ
9 … 収納ボックス9
14 … バッテリー
20 … 表示パネル
22 … スピーカー
27 … 画像表示制御部
28 … 音声出力制御部
29 … 台車運転制御部
36 … 収納検知部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な台車と、被検体にX線を照射するX線管と、被検体の撮影画像を取得するフラットパネル型X線検出器と、前記フラットパネル型X線検出器を収納する収納手段と、X線撮影に必要な制御をするX線撮影制御手段とを備える回診用X線撮影装置であって、前記フラットパネル型X線検出器の収納状態を検知して、前記X線撮影制御手段に収納状態を知らせる情報を出力する収納検知手段と、前記X線撮影制御手段から収納されていないことを知らせる情報を受信した場合に、回診用X線撮影装置の操作者に収納されていないことを報知する報知手段とを備えることを特徴とする回診用X線撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の回診用X線撮影装置において、前記台車の走行状態を検知して、前記X線撮影制御手段に走行状態を知らせる情報を出力する走行検知手段を備え、前記X線撮影制御手段から走行していることを知らせる情報と、収納されていないことを知らせる情報とを受信した場合に、前記報知手段が前記操作者に収納されていないことを報知することを特徴とする回診用X線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の回診用X線撮影装置において、前記台車の待機状態を検知して、前記X線撮影制御手段に待機状態を知らせる情報を出力する待機検知手段を備え、一定時間に亘って待機していることを知らせる情報と、収納されていないことを知らせる情報とをX線撮影制御手段から受信した場合に、前記報知手段が前記操作者に収納されていないことを報知することを特徴とする回診用X線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の回診用X線撮影装置において、前記報知手段は音声出力手段又は画像表示手段の少なくともいずれか一方であることを特徴とする回診用X線撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の回診用X線撮影装置において、前記報知手段は前記台車の走行を制限する走行制限手段であることを特徴とする回診用X線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載の回診用X線撮影装置において、前記報知手段は前記音声出力手段又は前記画像表示手段の少なくともいずれか一方と前記走行制限手段とを組み合わせたものであることを特徴とする回診用X線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれかに記載の回診用X線撮影装置において、前記フラットパネル型X線検出器は、前記X線撮影制御手段に無線で被検体の撮影画像データを送信することを特徴とする回診用X線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120813(P2011−120813A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282724(P2009−282724)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】