説明

回路基板、接続構造体及び回路基板の接続方法

【課題】高い接続信頼性を得ることが可能な回路基板を提供する。
【解決手段】回路基板であるフレキシブル配線基板123は、配線と、配線の端部を構成する出力端子2を有する。出力端子2は、断面台形状の凸条をなし、且つ、断面における上底をw、高さをhとしたとき、w/h比が0.1以上2.0以下に規定されている。また、断面台形状の接続端子2は先端が平坦であるため、その先端面を、他の回路基板の接続端子2の表面に広い接続面積で安定に当接させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、接続構造体及び回路基板の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル等が備える回路基板においては、半導体ICのような電子部品や配線が設けられた他の回路基板を電気的に接続することが行われている。このように回路基板に他の回路基板を接続した接続構造体としては、例えば、他の回路基板の絶縁基板としてフレキシブル基板(FPC)を用いるCOF(Chip On FPC)構造や、ガラスエポキシ基板等を用いるCOB(Chip On board)構造等がある。
これらの接続構造体では、電子機器の高密度化に伴って配線幅や配線ピッチの狭小化(微細化)が進められ、それに伴って配線同士の接続部では接続抵抗や接続信頼性を確保するのが難しい状況になっている。
【0003】
ところで、回路基板の配線に、他の回路基板の配線を接続する技術としては、導電粒子が分散された接着剤樹脂組成物、例えば異方導電性ペースト(ACP)や異方導電性フィルム(ACF)を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、接合対象となる配線の接続端子間にACP又はACFからなる異方導電性接着剤を配置し、回路基板を介して異方導電性接着剤を圧着ツールで加熱加圧することで、該異方導電性接着剤を固着させ、導電粒子を介して接続端子間を導通させる技術である。
【0004】
しかし、ACPやACFを用いる接続方法では、これらに占める導電粒子の割合が面積換算で10%に満たないため、接続端子間での接続面積(導電エリア)を稼ぐべく端子長を1.0mm〜2.5mm程度確保しなければならない。このことがモジュールの外形を大きくする要因になっている。また、端子同士のピッチを狭くすると、隣り合う接続端子間で導電粒子が数珠繋ぎ(複数の導電粒子が列状に連結した状態)になる場合があり、これによる接続端子間の短絡も問題となる。このような短絡は、配線ピッチの狭小化を図る上での障害にもなる。
【0005】
そこで、特許文献2には、ベースフィルム上に設けられた配線の接続端子を凸状とし、この接続端子を、導電粒子を含まない接着剤を介して、液晶パネル側の平面端子に圧着接合することが提案されている。ここで凸状の接続端子は、具体的には断面三角状の凸条形状やピラミッド(四角錐)状、すなわち先端が先鋭な形状とされている。このような接続方法では、接続端子の先端が、平面端子に圧着されて潰れ、この状態で平面端子に直接接続されるため、導電粒子を介した接続方法に比べて接続面積(導電エリア)を広くすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−265024号公報
【特許文献2】特開平9−293751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、断面が三角状の接続端子は、平面端子と接続する際、細い先端が折れ曲がり、三角の頂点に応力が集中できない。また、端子高さのバラツキによって、平面端子に当接したときのつぶれ量が安定せず、接続信頼性を確保することが難しい。
また、断面が三角状の接続端子は、端子をエッチングで細らせて形成されるが、この際、オーバーエッチングにより三角の頂点がなくなって丸状になったり、端子全体が消失したりするリスクが高く、実現性に乏しい。
【0008】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、高い接続信頼性を得ることが可能な回路基板を提供することを目的の一つとする。また上記回路基板を用いた接続構造体及び回路基板の接続方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回路基板は、基板と、該基板上に設けられた配線と、該配線の端部を構成し、凸条形状をなす接続端子とを有し、前記接続端子は、幅方向における断面形状が台形であり、前記接続端子の少なくとも一部は、その断面における上底をw、高さをhとしたとき、w/h比が0.1以上2.0以下であることを特徴とする。
【0010】
上記構成の回路基板によれば、接続端子が、断面台形状の凸条をなしている。これにより、断面三角形状の凸条と比較して、接続端子の高さのばらつきを抑えることができ、他の回路基板の接続端子と接続したときの接続信頼性を向上させることができる。
また、接続端子のw/h比が所定の範囲に規定されていることにより、接続端子の両側面が適度な傾斜を有している。これにより、該回路基板の接続端子形成領域を、接着剤が供給された他の回路基板の接続端子形成領域に接合して接続構造体を形成する際、接続端子が、該接続端子と他の回路基板の接続端子との間の接着剤をかき出すように作用し、接着剤が、端子間から効率良く排除される。このため、該接続端子の先端面と、他の接続端子の表面とを低い接続抵抗で接続することが可能となる。
【0011】
また、断面台形状の接続端子は先端が平坦であるため、その先端面を、他の回路基板の接続端子の表面に、広い接続面積で安定に当接させることができる。このため、接続抵抗が低く抑えられ、また、高い接続信頼性を得ることが可能となる。さらに、断面台形状の接続端子は、ウェットエッチングによる形成工程でオーバーエッチングになっても、先端に幅があるため高さ方向での急激な侵食は生じず、設定した端子高さを容易に得ることができる。このため、接続端子の形状として断面台形状を採用することにより、回路基板を歩留まり良く得ることが可能となる。
【0012】
前記接続端子の前記基板と反対側の面に、前記接続端子の延在方向に沿って複数の凹部が列設され、隣り合う前記凹部同士の間の凸部の長さをL、前記凹部同士のピッチをPとしたとき、L/P比が0.25以上1.0未満である構成としてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、該回路基板の接続端子形成領域を、接着剤が供給された他の回路基板の接続端子形成領域に接合して接続構造体を形成する際、接続端子の凸部では、該凸部が、他の回路基板の接続端子との間の接着剤をかき出すように作用し、該凸部の先端面が他の接続端子の表面に当接する。一方、接続端子の凹部では、その内側に接着剤が貯留する。この凹部内に貯留する接着剤によって、該接続端子が、他の接続端子に直接接着されるため、凸部と他の接続端子との当接状態を確実に保持することができる。
【0014】
また、接続端子におけるL/P比を所定の範囲に規定していることにより、接続端子は、一定の割合以上の凸部を有している。このため、他の接続端子との間で十分な接続面積(導電エリア)を確保することができ、接続抵抗を低く抑えつつ、該接続端子の凸部と他の接続端子との当接状態を確実に保持することが可能となる。
【0015】
本発明の接続構造体は、先に記載の回路基板よりなる第1回路基板と、第2基板と、該第2基板上に設けられた第2配線と、該第2配線の端部を構成し、前記第1回路基板の接続端子に接続される第2接続端子を有する第2回路基板とを備え、前記第2回路基板の第2接続端子形成領域に、前記第1回路基板の接続端子形成領域が、前記第2接続端子に前記接続端子を当接させた状態で、導電粒子を実質的に含まない樹脂層を介して固定されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成の接続構造体によれば、第1回路基板として先に記載の回路基板を用いているので、接続端子と第2接続端子との間の接着剤が十分に排除されており、また、接続端子が略設定した高さを有し、接続端子の先端面が第2接続端子の表面に広い導電エリアで確実に当接している。このため、この接続構造体は、接続端子間の接続抵抗が低く、また、高い接続信頼性を得ることが可能となる。
【0017】
また、第1回路基板と第2回路基板を固定する樹脂として、導電粒子を含まないものを用いているため、導電粒子による端子間の短絡の懸念がない。このため、接続端子同士及び第2接続端子同士の各ピッチのさらなる狭小化を図ることが可能となる。
【0018】
本発明の回路基板の接続方法は、先に記載の回路基板よりなる第1回路基板の接続端子を、第2基板と、該第2基板上に設けられた第2配線と、該第2配線の端部を構成する第2接続端子とを有する第2回路基板の前記第2接続端子に接続する回路基板の接続方法であって、前記第2回路基板の第2接続端子形成領域に、導電粒子を実質的に含まない接着剤を供給する第1工程と、前記第2回路基板の接着剤が供給された面に、前記第1回路基板の接続端子形成領域を、前記第2接続端子と前記接続端子とが対応するように重ね、この状態で、前記第1回路基板と前記第2回路基板とを、前記第2接続端子に前記接続端子が当接するように圧着する第2工程とを有することを特徴とする。
【0019】
上記の接続方法によれば、第1回路基板として先に記載の回路基板を用いているので、第2回路基板の接着剤が供給された面に、第1回路基板の接続端子形成領域を重ねて圧着(接合)する際、第1回路基板の接続端子が、該接続端子と第2接続端子との間の接着剤をかき出すように作用し、接着剤が、端子間から効率良く排除される。また、第1回路基板の接続端子は、先端が平坦であり、また、略設定した高さを有するため、その先端面が第2接続端子の表面に広い導電エリアで確実に当接する。
このため、この回路基板の接続方法によって接続された接続構造体は、接続端子間の接続抵抗が低く、また、高い接続信頼性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る液晶表示装置の構造を模式的に示す概略斜視図。
【図2】図1に示す接続構造体を配線の幅方向に切った断面図。
【図3】実施形態1のフレキシブル配線基板を示す要部拡大斜視図。
【図4】実施形態1の回路基板の接続方法を説明するための図。
【図5】実施形態2のフレキシブル配線基板を示す要部拡大斜視図。
【図6】接続端子に設けられた凹部の寸法を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、回路基板、接続構造体及び回路基板の接続方法の実施の形態について詳しく説明する。
図1は本発明に係る接続構造体を適用した液晶表示装置を示す模式図である。まず、図1を用いて本発明に係る接続構造体の適用例を説明する。
液晶表示装置100は、図1に示すように、液晶パネル110と、電子部品(液晶駆動用ICチップ)121と、フレキシブル配線基板123とを有して構成されている。なお、この液晶表示装置100には、図示しないものの、偏光板、反射シート、バックライト等の付帯部材が、必要に応じて適宜設けられるものとする。また、液晶表示装置100は、電子部品121を有さない場合もある。
【0022】
液晶パネル110は、ガラスや合成樹脂からなる基板111(第2回路基板)と基板112とを備えている。基板111と基板112とは、相互に対向配置され、図示しないシール材などによって相互に貼り合わされている。基板111と基板112の間には、電気光学物質である液晶(図示せず)が封入されている。基板111の内面には、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料からなる電極111aが形成され、基板112の内面には電極111aに対向配置される電極112aが形成されている。
【0023】
電極111aは、同じ材質で一体に形成された配線111bに接続されて、基板111に設けられた基板張出部111Tの内面上に引き出されている。基板張出部111Tは、基板111の端部において基板112の外形よりも外側に張り出された部分である。配線111bの一端側に端子111bxが形成されている。
【0024】
電極112aも、同じ材質で一体に形成された配線112bに接続されて、図示しない上下導通部を介して基板111上の配線111cに導電接続されている。配線111cはITOにより形成されている。配線111cは基板張出部111T上に引き出され、その一端側に端子111cxが形成されている。基板張出部111Tの端縁近傍には入力配線111dが形成されており、その一端側は端子111dxとなっている。該端子111dxは、前記端子111bx及び111cxと対向配置されている。また、入力配線111dの他端側は、入力端子111dyとなっている。
ここで、本実施形態では、基板111及び入力配線111dが、本発明の回路基板(フレキシブル配線基板123)が実装される第2回路基板を構成し、この第2回路基板とフレキシブル配線基板123(第1回路基板)とが、本発明の接続構造体を構成する。
【0025】
基板張出部111T上の入力端子111dyの配列領域には、樹脂層6(図2参照)を介してフレキシブル配線基板123が実装されている。入力端子111dyは、フレキシブル配線基板123に設けられた、それぞれに対応する配線(図示せず)の出力端子2に導電接続されている。そして、フレキシブル配線基板123を介して外部から制御信号、映像信号、電源電位などが、入力端子111dyに供給される。入力端子111dyに供給された制御信号、映像信号、電源電位などは、電子部品121に入力され、ここで液晶駆動用の駆動信号が生成されて液晶パネル110に供給される。
本実施形態では、フレキシブル配線基板123の構成、特に、出力端子2の形状に特徴がある。これについては、後に詳述する。
【0026】
基板張出部111T上には、熱硬化性樹脂からなる封止樹脂122を介して電子部品121が実装されている。電子部品121は、例えば液晶パネル110を駆動する液晶駆動用ICチップである。電子部品121の下面には、多数のバンプ電極(図示せず)が形成されており、これらのバンプ電極は、基板張出部111T上の端子111bx,111cx,111dxにそれぞれ導電接続されている。
【0027】
以上のように構成された液晶表示装置100によれば、電子部品121を介して電極111aと電極112aとの間に適宜の電圧が印加されることにより、電極111a,112aが対向配置される部分に構成される各画素毎に独立して光を変調させることができ、これによって液晶パネル110の表示領域に所望の画像を形成することができる。
【0028】
<実施形態1>
次に、液晶表示装置100に適用された、本発明の接続構造体の実施形態1について説明する。
図2は、実施形態1に係る接続構造体を出力端子の幅方向に切った断面図(図1におけるA−A線断面図)であり、図3は、図2に示す接続構造体が備えるフレキシブル配線基板123を拡大して示す要部拡大斜視図である。
【0029】
図2に示すように、接続構造体1は、第2回路基板5と、第2回路基板5に実装されたフレキシブル配線基板(回路基板、第1回路基板)123と、これら第2回路基板5とフレキシブル配線基板123との間を、入力端子(第2接続端子)111dyと出力端子(接続端子)2とが接続した状態で接続固定する樹脂層6とを備えて構成されている。
【0030】
第2回路基板5は、前述の液晶パネル110を構成するものであり、基板111及び入力配線111dとを備えている。入力配線111dの基板端側に、フレキシブル配線基板123の各出力端子2と接続される複数の入力端子111dyが形成されている。各入力端子111dyは、それぞれ帯状をなし、本実施形態では互いに並列した状態で等間隔に整列配置されている。具体的には、各入力端子111dyは、隣り合う入力端子111dy、111dy間のピッチ(中心線間の距離)が50〜80μm程度の狭ピッチとされており、フレキシブル配線基板123の出力端子2よりも厚さが薄く、出力端子2の先端面の幅(後述する「トップ幅w」)よりも幅広に形成されている。
【0031】
フレキシブル配線基板123は、第2回路基板5の第2端子形成領域(第2接続端子形成領域)S2に、その第1端子形成領域(接続端子形成領域)S1を対向させた状態で固定されている。
フレキシブル配線基板123は、柔軟性があり、大きく変形させることが可能なプリント基板である。より詳しくは、フレキシブル配線基板123は、ポリイミド膜やフォトソルダーレジスト膜等の絶縁膜からなるフィルム状の可撓性基材(基材)3上に、複数の配線が形成されてなり、各配線の一端部が出力端子2として機能する。配線及び出力端子2は、例えば可撓性基材3に設けられた銅箔がエッチング等によってパターニングされて形成されている。なお、各出力端子2には、さらにその表面に金メッキが施されていても良い。これにより、入力端子111dyとの接続抵抗を安定化することができる。
【0032】
各々の出力端子2は、それぞれ凸条の形状をなし、第2回路基板5の各入力端子111dyと対応するように等間隔に整列配置されている。そして、各出力端子2は、それぞれ、端子幅が5〜40μm程度、隣り合う出力端子2、2間のピッチ(中心線間の距離)が入力端子111dy間のピッチ(10〜80μm程度)と略等しい長さとされており、その厚さ(端子高さh)が4〜15μm程度とされている。
【0033】
また、出力端子2の断面形状、すなわち幅方向における断面形状は、図2に示すように接続側となる先端側が狭く、可撓性基材3に接する基端側が広い台形状になっている。ここで、出力端子2の端子幅は、第2回路基板5の入力端子111dyとの接続面となる側の幅、すなわち先端側の狭い幅によって定義される。本明細書中では、この先端側の狭い幅(上底の幅)を「トップ幅w」と言う。
【0034】
出力端子2が、このように断面台形状であることにより、樹脂層6となる接着剤が供給された第2端子形成領域S2に、第1端子形成領域S1を接合する際、入力端子111dyと出力端子2との間の接着剤が、出力端子2が接着剤中に侵入するのに伴って効率良くかき出され、入力端子111dyと出力端子2に挟まれた領域から排除される。このため、入力端子111dyと出力端子2とを低い接続抵抗で接続することができる。
【0035】
そして、本実施形態では、さらに、この出力端子2におけるトップ幅wと端子高さhの比(w/h比)を0.1〜2.0に規定している。w/h比が2.0を超える場合には、出力端子2の先端面が広い(両側面の傾斜が小さい)ため、出力端子2による端子間の接着剤を排除する効果が十分得られない。このため、入力端子111dyの表面と出力端子2の先端面との間に接着剤が残留し、入力端子111dyと出力端子2との間の接続抵抗が大きくなってしまう。
【0036】
一方、w/h比が0.1未満である出力端子2は、断面形状が三角に近く、先端が先鋭となる。このため、入力端子111dyに安定に当接させることができず、十分な接続信頼性が得られない。また、断面三角状の端子は、ウェットエッチングによる形成工程でオーバーエッチングになると、三角の頂点がなくなって丸形(丸みを帯びた形状)になったり、端子全体が消失したりするため、回路基板の歩留まりが低くなる。
【0037】
樹脂層6は、第2回路基板5の第2端子形成領域S2とフレキシブル配線基板123の第1端子形成領域S1との間を接合固定するもので、特に入力端子111dyと、これに対応する出力端子2とが接続した状態を保持固定して、フレキシブル配線基板123と第2回路基板5との間を接続するものである。
【0038】
樹脂層6は、異方導電性接着剤から導電粒子を無くしたNCP(絶縁樹脂ペースト)やNCF(絶縁樹脂フィルム)等の絶縁樹脂、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性絶縁樹脂からなるものである。このように導電粒子を含まない樹脂を用いることにより、隣り合う出力端子2間や入力端子111dy間で、導電粒子による短絡の懸念がなくなり、配線ピッチの狭小化を図る上で有利となる。
【0039】
以上のように、本実施形態の接続構造体1では、フレキシブル配線基板123の出力端子2が、断面台形状の凸条をなし、且つ、そのw/h比が所定の範囲に規定されている。これにより、樹脂層6となる接着剤が供給された第2端子形成領域S2に、第1端子形成領域S1を接合する際、出力端子2が、入力端子111dyと出力端子2との間の接着剤をかき出すように作用し、入力端子111dyと出力端子2に挟まれた領域の接着剤が確実に排除される。また、出力端子2が平坦な先端面を有し、且つ、略設定した高さを有するため、出力端子2の先端面が入力端子111dyの表面に広い導電エリアで確実に当接する。これにより、この接続構造体1は、接続端子間の接続抵抗が低く、また、高い接続信頼性を得ることが可能となる。
【0040】
また、第2回路基板5にフレキシブル配線基板123を固定する樹脂として、導電粒子を含まないものを用いているため、導電粒子による入力端子111dy、111dy間及び出力端子2、2間の短絡の懸念がない。このため、入力端子111dy、111dy同士及び出力端子2、2同士の各ピッチのさらなる狭小化を図ることが可能となる。
【0041】
[回路基板の接続方法]
次に、本実施形態の回路基板の接続方法を、図2に示す接続構造体を製造する場合を例にして説明する。
【0042】
図4は、実施形態1に係る回路基板の接続方法を説明するための縦断面図である。
実施形態1に係る回路基板の接続方法は、第2回路基板5の第2端子形成領域S2に、導電粒子を実質的に含まない接着剤を供給する第1工程と、第2回路基板5の接着剤が供給された面に、フレキシブル配線基板123の第1端子形成領域S1を、入力端子111dyと出力端子2とが対応するように重ね、この状態で、フレキシブル配線基板123と第2回路基板5とを、入力端子111dyに出力端子2が当接するように圧着する第2工程とを有する。以下、工程順に説明する。
【0043】
[1]接着剤供給工程(第1工程)
図2に示す接続構造体1を製造するには、まず、図4(a)に示すように、第2回路基板5と、フレキシブル配線基板123とを用意する。そして、入力端子111dyを上側に向けて第2回路基板5を基台(図示せず)上に載置し、第2端子形成領域S2に樹脂層6の形成材料である接着剤6aとして、NCP又はNCFを配置する。
なお、本実施形態では接着剤6a(NCP、NCF)が熱硬化性樹脂からなるものとして説明する。
【0044】
[2]端子接続工程(第2工程)
次に、第2回路基板5の第2端子形成領域S2に対してフレキシブル配線基板123の第1端子形成領域S1を位置合わせし、図4(b)に示すように複数の入力端子111dyに対してそれぞれに対応する出力端子2が当接するように、フレキシブル配線基板123を第2回路基板5上に配置する。その際、出力端子2の接続面(先端側の面)全体が入力端子111dyの接続面上に載るように、フレキシブル配線基板123を配置する。
【0045】
次いで、フレキシブル配線基板123を図示しない加圧装置によって加圧し、第2回路基板5に対してフレキシブル配線基板123を圧着させる。この過程で、フレキシブル配線基板123の出力端子2は接着剤6a中を下降し、第2回路基板5の入力端子111dyに当接する。
【0046】
ここで、フレキシブル配線基板123では、出力端子2が断面台形状をなし、そのトップ幅wと端子高さhの比(w/h)が所定の範囲に規定されていることによって、出力端子2の両側面が適度に傾斜している。このため、出力端子2が接着剤6a中を下降する際、入力端子111dyと出力端子2との間に存在していた接着剤6aが出力端子2によって効率良くかき出され、外側に排出される。その結果、入力端子111dyの表面と出力端子2の先端面との間に接着剤がほとんど残留せず、入力端子111dyに出力端子2を確実に当接させることができる。
なお、圧着によって第2回路基板5とフレキシブル配線基板123との間からはみ出た接着剤6a(熱硬化性樹脂)については、取り除いておく。
【0047】
その後、接着剤6aが硬化する適宜な温度で加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させて樹脂層6とする。
以上の工程により、図1に示した本実施形態の接続構造体1が得られる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、フレキシブル配線基板123の出力端子2が、断面台形状の凸条をなし、且つ、そのw/h比が所定の範囲に規定されている。これにより、第2回路基板111の接着剤6aが供給された面に、フレキシブル配線基板123の第1端子形成領域S1を重ねて圧着(接合)する際、出力端子2が、該出力端子2と入力端子111dyとの間の接着剤をかき出すように作用し、接着剤が、入力端子111dyと出力端子2に挟まれた領域から効率良く排除される。また、出力端子2は、先端が平坦であり、また、略設定した高さを有するため、その先端面を入力端子111dyの表面に広い導電エリアで確実に当接させることができる。
以上により、この回路基板の接続方法によって接続された接続構造体1は、入力端子111dyと出力端子2との間の接続抵抗が低く、また、高い接続信頼性を得ることが可能となる。
【0049】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る回路基板、接続構造体及び回路基板の接続方法について説明する。
図5は、実施形態2に係る接続構造体が備えるフレキシブル配線基板を示す要部拡大斜視図であり、図6は、図5に示すフレキシブル配線基板の接続端子に設けられた凹部の寸法を説明するための図であり、接続端子を延在方向に切った模式的な断面図である。
なお、実施形態2においては、実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、実施形態2の接続構造体1は、フレキシブル配線基板123が備える各出力端子2の先端面に、複数の凹部2aが設けられている以外は、実施形態1と同様の構成とされている。
複数の凹部2aは、出力端子2の延在方向に沿って略等しいピッチで列設され、それぞれ、先端面側と両側とが開放しており、延在方向における長さが略等しい長さとされている。
そして、本実施形態では、図6に示すように、隣り合う凹部2a間の凸部2bの長さをL、凹部同士のピッチをPとしたとき、L/P比が0.25以上1.0未満に規定されている。
【0051】
この実施形態2においても、実施形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
また、実施形態2の接続構造体では、特に、フレキシブル配線基板123の各出力端子2に、凹部2aが設けられている。これにより、出力端子2の凸部2bの面積が小さくなるため、前述の端子接続工程で、フレキシブル配線基板123の第1端子形成領域S1を、接着剤が供給された第2回路基板5の第2端子形成領域S2に接合する際、出力端子2の凸部2bによる接着剤6aをかき分ける作用を高めることができ、出力端子2を円滑に接着剤6a中に進入させることができ、凸部2bの先端面を入力端子111dyの表面に接着剤を介さずに当接させることができる。
一方、出力端子2の凹部2aでは、その内側に接着剤6aが貯留する。この凹部2a内に貯留する接着剤6aによって、出力端子2が入力端子111dyに直接接着される。このため、接着剤6aによって、凸部2bと入力端子111dyとの当接状態を確実に保持されるため、より優れた接続信頼性を得ることが可能となる。
【0052】
また、出力端子2におけるL/P比を所定の範囲に規定していることにより、出力端子2は、一定の割合以上(先端面側から見た平面視での割合が25%以上)の凸部2bを有している。このため、入力端子111dyと出力端子2との間で十分な接続面積(導電エリア)を確保することができ、接続抵抗を低く抑えつつ、出力端子2の凸部2bと入力端子111dyとの当接状態を確実に保持することが可能となる。
【0053】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能である。
例えば、本実施形態では、第1回路基板がフレキシブル配線基板である場合を例にして説明したが、第1回路基板はリジッド回路基板であっても構わない。リジッド回路基板のベース材料としては、例えばガラスやシリコン等の無機材料が用いられる。
【0054】
また、本発明の接続構造体が適用される電子部品は、液晶表示装置に限るものではなく、有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)や、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display 及び Surface-Conduction Electron-Emitter Display 等)など、各種の電気光学装置や各種の電子モジュールに適用可能である。
【実施例】
【0055】
次に、具体的実施例について説明する。
【0056】
1.回路基板の接続
(実験例1)
まず、フレキシブル配線基板と第2回路基板とを用意した。ここで、フレキシブル配線基板は、可撓性基材上に銅よりなる配線が形成されたものであり、ここでは、接続端子におけるw/h比が0.1、L/P比が1.0、0.5、0.25の3種類を使用した。なお、L/P比が0.5、0.25のフレキシブル配線基板は、接続端子に凹部が設けられているもの、L/P比が1.0のフレキシブル配線基板は、接続端子に凹部が設けられていないものである。また、第2回路基板は、ガラス基板上にITOよりなる第2配線が形成されたものである。
【0057】
次に、第2回路基板を、その第2接続端子を上側にして基台上に載置し、その上に熱硬化性樹脂からなる接着剤を供給した。
次に、第2回路基板の第2接続端子形成領域に、フレキシブル配線基板の接続端子形成領域を、第2接続端子と、それに対応する接続端子との位置が合うように重ね、この状態でフレキシブル配線基板を加圧して第2回路基板に圧着させた。
そして、第2回路基板とフレキシブル配線基板との間からはみ出た熱硬化性樹脂を除去し、第2回路基板とフレキシブル基板との間の熱硬化性樹脂を加熱硬化させた。
以上の工程により、3種類の接続構造体を得た。
【0058】
(実験例2)
フレキシブル配線基板における接続端子のw/h比を1.0に変えた以外は、実験例1と同様にして、3種類の接続構造体を得た。
【0059】
(実験例3)
フレキシブル配線基板における接続端子のw/h比を2.0に変えた以外は、実験例1と同様にして、3種類の接続構造体を得た。
【0060】
(比較実験例1)
フレキシブル配線基板における接続端子のw/h比を2.75に変えた以外は、実験例1と同様にして、3種類の接続構造体を得た。
【0061】
(実験例4〜実験例6)
第2回路基板に供給する接着剤として、実験例1の接着剤よりも硬化収縮率の小さい熱硬化性樹脂からなる接着剤を用いた以外は、実験例1〜実験例3と同様にして、9種類の接続構造体を得た。
【0062】
(比較実験例2)
第2回路基板に供給する接着剤として、実験例1の接着剤よりも硬化収縮率の小さい熱硬化性樹脂からなる接着剤を用いた以外は、比較実験例1と同様にして、3種類の接続構造体を得た。
【0063】
2.評価
各実験例および各比較実験例で得られた接続構造体(サンプル数:620個)について、それぞれ、次のようにして接続信頼性を評価した。
各接続構造体について、初期の接続抵抗Ro、及び、高温高湿度条件下で放置した後の接続抵抗Raをそれぞれ測定した。そして、初期の接続抵抗Roに対する接続抵抗変化の割合(Ra−Ro)×100/Roを求め、その平均値を以下の基準に従い評価した。
【0064】
○:接続抵抗変化の割合が±10%以内の場合。
△:接続抵抗変化の割合が±12%以内の場合。
×:接続抵抗変化の割合が±15%を超える場合。
【0065】
なお、実験例2,5については、温度サイクル後及び高温条件下で放置した後の接続抵抗もそれぞれ測定し、同様にして初期の接続抵抗Roに対する抵抗変化の割合を評価した。
評価結果を表1〜表3に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表1、2に示すように、フレキシブル配線基板における接続端子のw/h比が0.1以上2.0以下の接続構造体(実験例1〜実験例3)は、w/h比が2.75の接続構造体(比較実験例1)に比べて、いずれも高温高湿度条件下放置後の抵抗変化が小さく、良好な接続信頼性を得ることができた。
また、表3に示すように、特に、接続端子に凹部が設けられた接続構造体(L/P比が0.25以上1.0未満)は、比較的硬化収縮率の小さい接着剤を使用した場合でも抵抗変化を小さく抑えることができ、接続信頼性により優れることがわかった。
【符号の説明】
【0070】
1…接続構造体、2…出力端子(接続端子)、2a…凹部、2b…凸部、3…可撓性基材(基板)、5…第2回路基板、6…樹脂層、6a…接着剤、111…基板(第2基板)、111d…入力配線(第2配線)、111dy…入力端子(第2接続端子)、123…フレキシブル配線基板(回路基板、第1回路基板)、h…端子高さ(断面における高さ)、w…トップ幅(断面における上底)、L…凸部の長さ、P…隣り合う各凹部同士のピッチ、S1…第1端子形成領域(接続端子形成領域)、S2…第2端子形成領域(第2接続端子形成領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に設けられた配線と、該配線の端部を構成し、凸条形状をなす接続端子とを有し、
前記接続端子は、幅方向における断面形状が台形であり、前記接続端子の少なくとも一部は、その断面における上底をw、高さをhとしたとき、w/h比が0.1以上2.0以下であることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記接続端子の前記基板と反対側の面に、前記接続端子の延在方向に沿って複数の凹部が列設され、
隣り合う前記凹部間の凸部の長さをL、前記凹部同士のピッチをPとしたとき、L/P比が0.25以上1.0未満である、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記請求項1又は前記請求項2に記載の回路基板よりなる第1回路基板と、
第2基板と、該第2基板上に設けられた第2配線と、該第2配線の端部を構成し、前記第1回路基板の接続端子に接続される第2接続端子を有する第2回路基板とを備え、
前記第2回路基板の第2接続端子形成領域に、前記第1回路基板の接続端子形成領域が、前記第2接続端子に前記接続端子を当接させた状態で、導電粒子を実質的に含まない樹脂層を介して固定されていることを特徴とする接続構造体。
【請求項4】
前記請求項1又は前記請求項2に記載の回路基板よりなる第1回路基板の接続端子を、第2基板と、該第2基板上に設けられた第2配線と、該第2配線の端部を構成する第2接続端子とを有する第2回路基板の前記第2接続端子に接続する回路基板の接続方法であって、
前記第2回路基板の第2接続端子形成領域に、導電粒子を実質的に含まない接着剤を供給する第1工程と、
前記第2回路基板の接着剤が供給された面に、前記第1回路基板の接続端子形成領域を、前記第2接続端子と前記接続端子とを位置合わせして重ね、この状態で、前記第1回路基板と前記第2回路基板とを、前記第2接続端子に前記接続端子が当接するように圧着する第2工程とを有することを特徴とする回路基板の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199262(P2012−199262A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60460(P2011−60460)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】