説明

回路基板の製造方法

【課題】絶縁膜表面の粗化処理や酸性水溶液による処理を行わなくとも、電気絶縁層となる絶縁膜と、導体層となる金属層との密着性が良好である回路基板を与えることができる回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】官能基を有する脂環式オレフィン重合体、および硬化剤を含有してなる硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された絶縁膜の表面に紫外線を照射し、次いで、その紫外線が照射された絶縁膜の表面に無電解めっき法により金属層を形成する工程を含む、回路基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に関し、さらに詳しくは、絶縁膜表面の粗化処理や酸性水溶液による処理を行わなくとも、絶縁膜と金属層との密着性が良好である回路基板を与えることができる回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、電子機器に用いられる回路基板のより高密度化が要求され、そのため回路基板の多層化が図られている。多層回路基板は、通常、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、電気絶縁層を積層し、この電気絶縁層の上に導体層を形成させ、さらにその上に電気絶縁層の積層および導体層の形成を繰り返して形成される。このような多層回路基板の導体層が高密度のパターンである場合、電気絶縁層を形成するために用いられる絶縁膜には、誘電率が低いなどの良好な電気特性と優れた密着性が求められる。従来、電気絶縁層と導体層との密着性を改良する手法としては、電気絶縁層の表面を粗化する方法が一般に用いられてきた。しかしながら、電気絶縁層の表面を粗化すると、高周波領域における表皮効果による伝送遅延といった問題が生じうることから、電気絶縁層の表面を粗化することなく、電気絶縁層と導体層との密着性を改良する技術が求められている。
【0003】
このような要求に対して、優れた電気特性を有する電気絶縁層と導体層との密着性を改良する技術が研究されている。例えば、特許文献1には、電気特性に優れたシクロオレフィンポリマー材の表面を、紫外線照射処理して、めっきすることにより、表面粗さが小さいままで、金属被覆の密着力が良好な積層体が得られることが開示されている。しかしながら、この特許文献1に記載されたような、熱可塑性のシクロオレフィンポリマー材からなる電気絶縁層は、通電に起因する発熱により高温となりうる多層回路基板において、充分に導体層を支持することができないという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、脂環式オレフィン重合体などの絶縁性重合体と硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物を用いて、未硬化又は半硬化の樹脂層を形成し、樹脂層表面に、金属に配位可能な構造を有する化合物を接触させ、硬化させて電気絶縁層を形成し、過マンガン酸塩の水溶液で酸化処理した後にめっきすることによって、電気特性に優れ、極めて平滑で導体層との密着性が優れる電気絶縁層が得られることが開示されている。しかしながら、このようなウエットプロセスによる表面処理では、処理液の管理が煩雑となる問題があり、また、環境への負荷を避ける観点から、過マンガン酸塩などの酸化剤は多量に用いることができないなどの制約がある。
【0005】
一方、特許文献3〜5には、ポリフェニレンエーテルなどの樹脂層にプラズマ処理と紫外線照射を行い、無電解めっきを行うことが記載されている。しかし、ポリフェニレンエーテルなどからなる電気絶縁層は、電気特性が充分でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−94923号公報
【特許文献2】特開2003−158373号公報
【特許文献3】特開2003−338683号公報
【特許文献4】特開2007−084463号公報
【特許文献5】特開2008−244139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、絶縁膜表面の粗化処理や酸性水溶液による処理を行わなくとも、電気絶縁層となる絶縁膜と、導体層となる金属層との密着性が良好である回路基板を与えることができる回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を硬化させてなる絶縁膜上に金属層を形成するにあたり、絶縁膜の表面に紫外線を照射してから、その表面に無電解めっき法により金属層を形成することにより、絶縁膜表面の粗化処理や酸性水溶液による処理を行わなくとも、絶縁膜と金属層との密着性が良好である回路基板が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
かくして、本発明によれば、官能基を有する脂環式オレフィン重合体、および硬化剤を含有してなる硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された絶縁膜の表面に紫外線を照射し、次いで、その紫外線が照射された絶縁膜の表面に無電解めっき法により金属層を形成する工程を含む、回路基板の製造方法が提供される。
【0010】
上記の回路基板の製造方法は、絶縁膜の表面に紫外線を照射する前に、その表面をドライプロセス処理するものであることが好ましい。
【0011】
上記の回路基板の製造方法は、ドライプロセス処理が、プラズマ処理またはコロナ処理であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁膜表面の粗化処理や酸性水溶液による処理を行わなくとも、電気絶縁層となる絶縁膜と、導体層となる金属層との密着性が良好である回路基板を与えることができる回路基板の製造方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の回路基板の製造方法は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体、および硬化剤を含有してなる硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された絶縁膜の表面に紫外線を照射し、次いで、その紫外線が照射された絶縁膜の表面に無電解めっき法により金属層を形成する工程を含むものである。
【0014】
本発明の回路基板の製造方法で用いられる絶縁膜を形成するために用いられる硬化性樹脂組成物は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含有してなるものである。ここで、本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、脂環式構造を有するオレフィン(脂環式オレフィン)由来の繰返し単位を含有し、かつ、官能基を有する重合体である。
【0015】
本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体が含有しうる脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましく、特にノルボルナン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、本発明で使用される官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、通常、熱可塑性のものである。
【0016】
官能基を有する脂環式オレフィン重合体中の脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
【0017】
官能基を有する脂環式オレフィン重合体が有する官能基は、特に限定されないが、用いる硬化剤が有する官能基と反応して結合を形成することができる官能基であることが好ましい。脂環式オレフィン重合体が有する官能基の具体例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。なお、官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、2種以上の官能基を有するものであっても良い。また、脂環式オレフィン重合体の官能基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。官能基を有する脂環式オレフィン重合体中の官能基の量は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体を構成する全繰り返し単位のモル数に対して、通常5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。
【0018】
一般に、脂環式オレフィン重合体は、脂環式オレフィンを付加重合または開環重合し、そして必要に応じて不飽和結合部分を水素化することによって、あるいは芳香族オレフィンを付加重合または開環重合し、そして該重合体の芳香環部分を水素化することによって得られる。そして、本発明で用いる官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、例えば、(1)官能基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合することによって、(2)官能基を有しない脂環式オレフィンを、官能基を有する単量体と共重合することによって、(3)官能基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化することによって、(4)官能基を有しない芳香族オレフィンを、官能基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化することによって、または(5)官能基を有しない脂環式オレフィン重合体に官能基を有する化合物を変性反応により導入することによって、もしくは(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られる官能基(例えばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の官能基を、例えば加水分解することなどにより他の官能基(例えばカルボキシル基)に変換することによって得ることができる。本発明では、前述の(1)の方法によって得られる重合体が特に好適に用いられる。
【0019】
官能基を有する単量体として用いられ得る、官能基を有する環状オレフィン化合物の具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する環状オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する環状オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのカルボン酸エステル基を有する環状オレフィン;などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0020】
官能基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0021】
(官能基を有しない)芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0022】
脂環式シクロオレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、官能基を有する脂環式オレフィン以外の、官能基を有する単量体としては、官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0023】
脂環式シクロオレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、官能基を有しない単量体としては、官能基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0024】
本発明で用いる環状オレフィン重合体の分子量は、特に限定されないが、テトロヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いる環状オレフィン重合体を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,WまたはRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基またはカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。前記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl、MoBrなどのハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、前記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族または14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物を添加する量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。また、前記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどをあげることができる。
【0026】
単量体に対するメタセシス重合触媒の割合は、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比が、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
【0027】
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解または分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されるものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用な芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
【0028】
溶媒の使用量は、溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%以下の場合は生産性が悪く、50重量%以上の場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる。
【0029】
重合反応は、単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。混合する方法は、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えても良いし、その逆でも良い。メタセシス重合触媒が主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えても良いし、その逆でも良い。また、単量体と有機金属化合物の混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えても良いし、その逆でも良い。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えても良いし、その逆でも良い。
【0030】
重合温度は特に制限はないが、一般には、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、通常1分間〜100時間であるが、特に制限はない。
【0031】
得られる環状オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物またはジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。ジエン化合物は、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、または1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。添加するビニル化合物またはジエン化合物の量は求める分子量により、単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
【0032】
本発明で用いる環状オレフィン重合体を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
【0033】
本発明で用いる環状オレフィン重合体として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929、特開平7−149823、特開平11−209460、特開平11−158256、特開平11−193323、特開平11−209460などに記載される、例えばビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、メタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
【0034】
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、前記重合溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、前記重合溶媒の中でも、水素添加反応で反応しない点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、エーテル系溶剤が特に好ましく、テトラヒドロフランが最も好ましい。
【0035】
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
【0036】
水素添加反応の時間は、水素添加率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素添加することができる。
【0037】
反応に用いた触媒は除去しても良い。除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
【0038】
本発明で用いられる硬化剤は、加熱により官能基を有する脂環式オレフィン重合体に架橋構造を形成させるものであれば特に限定されず、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化剤を用いることができるが、用いる官能基を有する脂環式オレフィン重合体の官能基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を硬化剤として用いることが好ましい。例えば、官能基を有する脂環式オレフィン重合体として、カルボキシル基やカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合に好適に用いられる硬化剤としては、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。また、これらの化合物と過酸化物とを併用して硬化剤として用いても良い。
【0039】
硬化剤として用いられ得る多価エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、リン含有エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;などの分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0040】
硬化剤として用いられ得る多価イソシアナート化合物としては、炭素数6〜24の、ジイソシアナート類およびトリイソシアナート類が好ましい。ジイソシアナート類の例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート類の例としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナートなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0041】
硬化剤として用いられ得る多価アミン化合物としては、2個以上のアミノ基を有する炭素数4〜30の脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物などが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン化合物としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0042】
硬化剤として用いられ得る多価ヒドラジド化合物の例としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0043】
硬化剤として用いられ得るアジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィノキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0044】
官能基を有する脂環式オレフィン重合体として、カルボキシル基やカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合においては、前述の硬化剤の中でも、官能基との反応性が緩やかであり、硬化性樹脂組成物の扱いが容易となる観点から多価エポキシ化合物が好ましく用いられ、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式の多価エポキシ化合物が特に好ましく用いられる。
【0045】
硬化性樹脂組成物における硬化剤の使用量は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部の範囲である。このような範囲の使用量で硬化剤を用いることにより、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度および電気特性が良好となる。
【0046】
硬化性樹脂組成物の硬化を促進させるために、硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤や硬化助剤を配合しても良い。硬化促進剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化促進剤を用いれば良いが、硬化剤として多価エポキシ化合物を用いる場合には、第3級アミン系化合物や三弗化ホウ素錯化合物などが硬化促進剤として好適に用いられる。なかでも、第3級アミン系化合物を使用すると、得られる絶縁膜の絶縁抵抗性、耐熱性、耐薬品性が向上する。
【0047】
第3級アミン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミドなどの鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類などの化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
【0048】
置換イミダゾール化合物の具体例としては、例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、環構造含有の置換基を有するイミダゾールが官能基を有する脂環式オレフィン重合体との相溶性の観点から好ましく、特に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0049】
これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、官能基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
【0050】
硬化助剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化助剤を用いれば良いが、その具体例としては、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノールなどのオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどのビニル系硬化助剤などが挙げられる。これらの硬化助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、用いる硬化剤100重量部に対して、通常1〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲である。
【0051】
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や(前述したもの以外の)その他の熱可塑性樹脂を配合することができる。ゴム質重合体は、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であって、通常のゴム状重合体および熱可塑性エラストマーが含まれる。硬化性樹脂組成物にゴム質重合体や熱可塑性樹脂を配合することにより、得られる多層プリント回路基板用フィルムの柔軟性を改良することができる。用いるゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、適宜選択すれば良いが、通常5〜200である。ゴム状重合体の具体例としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エテレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;エポキシ化ポリブタジエンなどの変性ジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、好ましくは、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などであり、具体的には、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報などに記載されているものを挙げることができる。
【0052】
硬化性樹脂組成物に配合しうるその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
【0053】
ゴム状重合体やその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、多層プリント回路基板用フィルムの絶縁材料としての特性を損なわせないためには、官能基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、30重量部以下の配合量とすることが好ましい。
【0054】
本発明で用いられる硬化性樹脂組成物には、絶縁膜の難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される難燃剤を配合しても良い。硬化性樹脂組成物に難燃剤を配合する場合の配合量は、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましく、60重量部以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明で用いられる硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、無機充填剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分が配合される。任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すれば良い。
【0056】
本発明の回路基板の製造方法では、以上のような硬化性樹脂組成物を硬化してなる絶縁膜を用いる。本発明で用いる絶縁膜は、以上のような脂環式オレフィン重合体を含む硬化性樹脂組成物のみからなるものであっても良いが、少なくとも、金属層が形成される表面が硬化性樹脂組成物を硬化してなるものであれば良く、他の材料との複合体であっても良い。そのような複合体のなかでも、脂環式オレフィン重合体を含む硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された層/その他の電気絶縁性材料からなる層(基材)の2層の構成を有する絶縁膜や、脂環式オレフィン重合体を含む硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された層/その他の電気絶縁性材料(基材)/脂環式オレフィン重合体を含む硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された層の3層の構成を有する絶縁膜が好適に用いられる。
【0057】
本発明の回路基板の製造方法で用いられる絶縁膜は、これに限られるものではないが、通常、導電性回路を表面に有する内層基板上に形成される。内層基板の具体例として、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂や、BTレジンから形成されたプリント配線基板などが挙げられる。内層基板の厚みは、通常50μm〜2mm、好ましくは60μm〜1.6mm、より好ましくは100μm〜1mmである。
【0058】
内層基板上に絶縁膜を形成する方法としては、上述の硬化性樹脂組成物を溶液または分散液(これらをワニスともいう)とし、それを内層基板上に塗布した後、溶媒を除去乾燥して硬化性組成物の塗布層を形成した後、該組成物を硬化させる方法が一般に採られている。しかし、本発明においては、硬化性樹脂組成物をフィルム状(またはシート)状に成形し、必要に応じて基材と重ね合わせて複合体とし、それを加熱圧着等により内層基板上に重ね合わせた後に、硬化性樹脂組成物の層を硬化することによって絶縁膜を形成することが好ましい。
【0059】
硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形する方法は特に限定されないが、本発明においては溶液キャスト法や溶融キャスト法で成形するのが好ましい。溶液キャスト法では、硬化性樹脂組成物の溶液または分散液を支持体に塗布した後に、溶媒を乾燥除去する。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物を溶解または分散させるために使用する有機溶剤としては、後に加熱して揮発させる便宜から、沸点が好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃のものである。かかる有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;アニソールなどのエーテル化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
これら溶媒のなかでも、微細配線への埋め込み性に優れ、気泡等を生じさせないものとして、芳香族炭化水素系溶媒や脂環式炭化水素系溶媒のごとき非極性溶媒と、ケトン系溶媒のごとき極性溶媒とを混合した混合溶媒が好ましい。これらの非極性溶媒と極性溶媒の混合比は適宜選択できるが、重量比で、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の範囲である。
【0062】
溶媒の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、硬化性樹脂組成物の溶液又は分散液の固形分濃度が、通常5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは15〜60重量%になる範囲である。
【0063】
硬化性樹脂組成物の溶媒中への分散又は溶解方法に格別な制限はなく、例えば、硬化性樹脂組成物を構成する各成分と有機溶剤とを常法に従って混合すればよく、例えば、マグネチックスターラー、高速ホモジナイザー、ディスパージョン、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロールなどを使用して混合することができる。混合温度は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体と硬化剤との反応が起こる温度以下であり、かつ、有機溶剤の沸点以下であることが好ましい。
【0064】
次に、調製したワニスを、通常、基材に含浸および/または塗布した後、または支持体に塗布した後、ワニスを構成する有機溶剤を乾燥により除去することにより、硬化性樹脂組成物の層を有するフィルムを得る(溶液キャスト法)。通常、得られたフィルムは、内層基板上に積層し、必要に応じて支持体を剥離し、次いで、当該フィルムの硬化性樹脂組成物の層を硬化して、内層基板上に絶縁膜を形成し、回路基板を得る。この絶縁膜は、回路基板の電気絶縁層として機能し、この上に更に導体層を形成して回路基板を多層化することができる。このとき内層基板上に形成された絶縁膜は所謂層間絶縁層となる。
【0065】
硬化性樹脂組成物のワニスを、含浸および/または塗布するために用いられる基材の具体例としては、不織布、織布、樹脂フィルムなどが挙げられる。また、その材料である有機高分子としては、ポリアクリレート、アラミド、含フッ素アラミド、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ナイロンなどが挙げられ、特にアラミド、含フッ素アラミド、液晶ポリマーが難燃性と電気特性の観点から好ましい。また、基材は、上述したワニスを含浸または塗布することができる成形体であり、膜厚は、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下であり、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。これらの基材は、線膨張係数が10ppm/K以下であることが好ましい。
【0066】
不織布としては、アラミド不織布、含フッ素アラミド織布、液晶ポリマー不織布、ポリエチレンテレフタレート不織布、ポリカーボネート不織布、ナイロン不織布などが挙げられる。これらの不織布うち、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布が好ましい。織布としてはアラミド織布、液晶ポリマー織布、ポリエチレンテレフタラート織布、ポリカーボネート織布、ナイロン織布などが挙げられる。これらの織布うち、アラミド織布、含フッ素アラミド織布、液晶ポリマー織布が好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、含フッ素アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素化ポリイミドフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、線膨張係数などの観点からポリイミドフィルム、フッ素化ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、フッ素化アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルムが好ましい。
【0067】
支持体として用いられうる樹脂フィルムは、通常、熱可塑性樹脂フィルムであり、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、およびナイロンフィルム;などが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、積層後の剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。支持体として用いられうる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、および銀箔;などが挙げられる。導電性が良好である点から、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1〜200μm、好ましくは2〜150μm、より好ましくは3〜100μmである。
【0068】
基材に樹脂組成物のワニスを含浸および/または塗布する方法、もしくは支持体に樹脂組成物のワニスを塗布する方法としては、浸漬、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコートなどの方法が挙げられる。
【0069】
有機溶剤除去のための乾燥の条件は、有機溶剤の種類により適宜選択される。加熱温度は、通常30〜200℃、好ましくは40〜180℃であり、加熱時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
【0070】
以上のようにして得られるフィルムの厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1.0〜80μmである。
【0071】
前述したような硬化性樹脂組成物の層を含むフィルムを用いて、内層基板上に絶縁膜を形成させる場合は、当該フィルムを、内層基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)して、内層基板表面の導体層と樹脂成形体層との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させる方法が挙げられる。この加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために真空下で行うのが好ましい。加熱圧着操作の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、雰囲気の気圧を、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paに減圧下で行う。
【0072】
本発明で用いる絶縁膜を得るためには、例えば以上のように形成される前述の硬化性樹脂組成物からなるフィルムを硬化させればよく、硬化性樹脂組成物の硬化は、通常、硬化性樹脂組成物を加熱することにより行われる。硬化させる条件は硬化剤の種類に応じて適宜選択されるが、温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃であり、時間は、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンを用いて行えばよい。
【0073】
また、絶縁膜の平坦性を向上させる目的や、絶縁膜の厚みを増す目的で、硬化性樹脂組成物の層を含むフィルムを2以上接して貼り合わせて絶縁膜を形成してもよい。
【0074】
本発明の回路基板の製造方法は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体、および硬化剤を含有してなる硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された絶縁膜を回路基板の絶縁膜として用いること特徴の一つとするものである。この絶縁膜は、吸水性が極めて小さい上に、誘電率が低く、電気特性に優れるため、本発明で得られる回路基板は、信号の伝送損失が小さく、耐マイグレーション性などの信頼性に優れたものとなる。
【0075】
本発明の回路基板の製造方法は、以上のようにして得られる絶縁膜の表面に紫外線を照射し、次いで、その紫外線が照射された絶縁膜の表面に無電解めっき法により金属層を形成することにより、回路基板を得るものである。
【0076】
本発明で行う絶縁膜の表面への紫外線の照射は、例えば100〜400nm、好ましくは180〜400nmの波長の紫外線を、絶縁膜の表面に照射して行えばよい。ここで紫外線照射の雰囲気は大気下などの酸素が存在する雰囲気であっても、不活性ガス(例えば窒素)を充填することによる酸素が存在しない雰囲気であってもよいが、絶縁膜と金属層との密着性により優れる回路基板を得る観点からは、大気下などの酸素が存在する雰囲気であることが好ましい。照射する紫外線の強度は、特に限定されないが1〜500mw/cmであることが好ましい。また、紫外線の照射時間も特に限定されないが、通常10秒〜30分の範囲であり、さらに、絶縁膜の表面と紫外線の光源との距離も特に限定されず、通常100μm〜30cmの範囲で設定すればよい。本発明の回路基板の製造方法では、このように無電解めっき法により金属層を形成する前の絶縁膜の表面に紫外線を照射することにより、絶縁膜と金属層との密着性が良好である回路基板が得られる。
【0077】
本発明の回路基板の製造方法では、以上のような絶縁膜の表面への紫外線照射の前後に、好ましくは紫外線照射の前に、その表面をドライプロセス処理することが好ましい。このドライプロセス処理は、液体を絶縁膜の表面に接触させること無く、絶縁膜を表面改質させる処理であって、紫外線照射以外の処理である。このドライプロセス処理の具体例としては、プラズマ処理(大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、フレームプラズマ処理)、コロナ処理、電子線照射処理が挙げられ、これらの中でも、絶縁膜と金属層との密着性、特に加湿条件下での密着性を良好とする観点から、プラズマ処理、コロナ処理が好ましい。
【0078】
ドライプロセス処理として採用し得る大気圧プラズマ処理は、大気圧下でアルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、水素、窒素、空気などの単体または混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、励起不活性ガスを、絶縁膜の表面に吹き付けることにより行われる。具体的には、通常、電極間に3〜5kHz、2〜3000Vの交流電圧を印加して励起不活性ガスを発生する。
【0079】
ドライプロセス処理として採用し得る低圧プラズマ処理は、減圧(通常0.1〜5Torr)下で200〜1000Wの出力でアルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、水素、窒素、空気などの単体または混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスを、絶縁膜の表面に吹き付けることにより行われる。
【0080】
ドライプロセス処理として採用し得るフレームプラズマ処理は、天然ガスやプロパンガス等を燃焼させた時に生ずる火炎内のイオン化したプラズマ火炎を絶縁膜の表面に吹き付けることにより行われる。
【0081】
ドライプロセス処理として採用し得るコロナ処理は、絶縁膜の表面にコロナ放電処理を施す処理である。コロナ処理は、例えば公知のコロナ放電処理機を用い、発生させたコロナ雰囲気の下に基材を通過させることにより行われる。ここでコロナ処理の雰囲気は大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で調整された雰囲気下であってもよい。コロナ処理の条件は通常10W・分/m 以上、好ましくは30〜300W・分/mである。
【0082】
電子線照射処理は、絶縁膜の表面に、電子線加速器により発生させた電子線を照射することにより行われる。電子線照射処理の雰囲気は大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で調整された雰囲気下であってもよい。
【0083】
本発明の回路基板の製造方法では、絶縁膜の表面への紫外線照射やドライプロセス処理の前後に、好ましくはこれらの前に、絶縁膜の表面を水酸化ナトリウム水溶液などにより脱脂処理してもよい。また、同様に水洗処理を適宜行ってもよい。
【0084】
以上のようにして得られる金属層を形成する前の絶縁膜の表面は、回路基板での高周波領域における表皮効果による伝送遅延を防止する観点から、粗化処理されないことが好ましい。金属層を形成する前の絶縁膜の表面粗さ(算術平均粗さ Ra)は、0.3μm未満であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.01μmである。
【0085】
本発明の回路基板の製造方法では、以上のようにして得られる少なくとも紫外線が照射された絶縁膜の表面に、無電解めっき法により金属層を形成する。この金属層の材料は、導電性を有する金属材料であれば特に限定されず、一般に回路形成用の材料として用いられる材料を用いることができる。好適な材料としては、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、タングステンなどの金属材料が挙げられ、なかでも銅が特に好適に用いられる。
【0086】
無電解めっき法では、通常、まず、絶縁膜の表面上に、還元触媒として働く銀、パラジウム、亜鉛、コバルト、金、白金、イリジウム、ルテニウム、オスミニウムなどの触媒核を吸着させる。次いで、その触媒核を吸着させた絶縁膜の表面に、無電解めっき液を接触させることにより、金属層を形成させることができる。無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、例えば公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いれば良く、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは適宜選択すれば良い。無電解めっき液の例としては、次亜リン酸アンモニウムまたは次亜リン酸、水素化ホウ素アンモニウムやヒドラジン、ホルマリンなどを還元剤とする無電解銅めっき液、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液、ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液、無電解パラジウムめっき液、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液、無電解金めっき液、無電解銀めっき液、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液などが挙げられる。なお、無電解めっき法により形成した金属層には、防錆剤と接触させるなどの防錆処理を行うことが好ましい。
【0087】
また、絶縁膜の表面に金属層を形成するにあたり、無電解めっき法により形成した金属層上に、電解めっき法を適用して金属層を成長させることが好ましい。この場合に用いる電解めっき液としては、公知の電解めっき液を用いれば良く、例えば、硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅めっき液、電解ニッケルめっき液などを用いることができる。また、電解めっき液には、必要に応じて錯化剤、光沢剤、安定剤、緩衝剤などの添加剤を含むことができる。
【0088】
本発明の回路基板の製造方法は、以上のようにして、表面に金属層が形成された絶縁膜を得る工程を含むものである。このようにして得られる回路基板は、過マンガン酸塩の水溶液などの酸化性水溶液による粗化処理なしでも、電気特性や、絶縁膜と金属層との密着性に優れる。
【0089】
絶縁膜上に形成された金属層を導電性回路とする方法は、導電性回路を形成する範囲に一面に導電性材料の層を形成してから、回路パターンを形成するために不要な導電性材料を除去する方法(サブトラクティブ法)と、回路パターンを有するように導電性材料の層を形成する方法(アディティブ法)とに大別されるが、本発明では、いずれの方法も採用することができる。
【0090】
サブトラクティブ法を適用する場合の例としては、絶縁膜の全面に前述の手法により金属層を形成し、次いで、その金属層の回路パターンとして残したい部分にエッチングレジスト液を塗布してレジスト膜を形成した後、エッチング液に浸漬することにより不要な導電性材料を除去し、その後、レジスト膜を剥離する方法が挙げられる。また、アディティブ法を適用する場合の例としては、絶縁膜の回路パターンを形成するにあたり金属層が不要な部分にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、次いで、部分的にレジスト膜が形成された絶縁膜上に前述の手法により金属層を形成し、その後、レジスト膜を剥離する方法が挙げられる。
【0091】
以上のように、本発明の回路基板の製造方法で得られる回路基板(多層回路基板)は、内層基板の片面のみに絶縁膜と金属層を形成したものであっても良いし、内層基板の両面に絶縁膜と金属層を形成したものであっても良い。また、内層基板に形成された絶縁膜と金属層との上に、さらに、絶縁膜と金属層とを形成したものであっても良い。
【0092】
本発明により得られる回路基板の用途は特に限定されないが、例えば、コンピューターや携帯電話などの電子機器における、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品用基板として好適に使用できる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0094】
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn):トルエンまたはテトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)重合体の水素化率:水素化率は、水素化前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(3)重合体のカルボン酸無水物基含有率:重合体中の総単量体単位数に対するカルボン酸無水物基のモル数の割合をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(4)フィルムを構成する各層の厚さ:硬化性樹脂組成物により形成された層を硬化する前の絶縁膜を切断して、その断面を研磨した後、その断面を光学顕微鏡で観察して測定した。
(5)絶縁膜の表面粗さ(算術平均粗さ Ra):試料(積層体)の表面を、表面形状測定装置(NT−1100:WYKO社製)を用いて、表面粗さ(算術平均粗さ Ra)を測定した。
(6)絶縁膜と金属層との密着性:試料(積層体)における絶縁膜と銅めっき層との引き剥がし強さをJIS C6481−1996に準拠して測定し、その結果に基づいて下記の基準で判定した。
◎:引き剥がし強さの平均が8N/cm以上
○:引き剥がし強さの平均が6N/cm以上8N/cm未満
△:引き剥がし強さの平均が4N/cm以上6N/cm未満
×:引き剥がし強さの平均が4N/cm未満

(7)加速試験後の絶縁膜と金属層との密着性:試料(積層体)をもちいて、加速試験(タバイエスペック社製 HASTチャンバー EHS−221MD、130℃、85%RH、100時間放置)を行った。加速試験後の試料について絶縁膜と銅めっき層との引き剥がし強さをJIS C6481−1996に準拠して測定し、その結果に基づいて下記の基準で判定した。
◎:引き剥がし強さの平均が8N/cm以上
○:引き剥がし強さの平均が6N/cm以上8N/cm未満
△:引き剥がし強さの平均が4N/cm以上6N/cm未満
×:引き剥がし強さの平均が4N/cm未満
【0095】
〔合成例〕
9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(以下、「ETCD」と略記する)70モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(以下、「NDCA」と略記する)30モル部、1−ヘキセン1.1モル部、キシレン540モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.009部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液100部を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素化反応を行って、重合体水素添加物(1)の溶液を得た。得られた重合体水素添加物(1)の重量平均分子量は、63,000、数平均分子量は28,000、分子量分布は2.3であった。また、水素添加率は99.9%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。重合体水素添加物(1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
【0096】
〔実施例1〕
合成例1で得た重合体水素添加物(1)の溶液400部(重合体水素添加物の量として100部)、硬化剤として水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名YX8000、ジャパンエポキシレジン社製)36部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール1部、老化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン1部、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部、および柔軟性改良のための成分として液状ポリブタジエン(商品名Ricon152、サートマージャパン社製)10部を、固形分濃度が30%になるように、遊星攪拌機を用いてキシレンと混合させて硬化性樹脂組成物のワニスを得た。縦300mm×横300mmの大きさで厚さが100μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンナフタレートフィルム(支持体)上に、YD型のドクターブレードを用いて塗工した。次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、硬化性樹脂組成物の厚みが30μmの支持体付きのフィルムを得た。
【0097】
一方、ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚さが18μmの銅が貼られた、厚さ0.8mm、縦150mm×横150mmの両面銅張り基板の表面に、有機酸を用いてマイクロエッチング処理を行い、表面に導体層を有する内層基板を得た。
【0098】
上記で得られた支持体付きのフィルム2枚を支持体ごと縦150mm×横150mmの大きさに切断し、これらのフィルムを、フィルムの硬化性樹脂組成物と基板とが直接接するように、基板の両面に重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度105℃、圧力0.9MPaで60秒間加熱圧着した。次いで支持体を剥がし、硬化性樹脂組成物付き基板を窒素雰囲気下、160℃で30分間放置し、硬化性樹脂組成物の層を硬化させて絶縁膜とし、内層基板と絶縁膜との積層体を得た。
【0099】
この積層体の絶縁膜の表面を、バッチコロナ処理機(春日電機製CORONA GENERATOR CT−0212)で出力0.75kW、搬送速度1m/分、放電隙間3mm、処理回数2回の条件でコロナ処理した。次いで、高出力低圧水銀灯を備えた小型紫外線表面処理装置(セン特殊光源製 UVE200J、主波長:253.7nm、副波長:184.9nm)を用いて、水銀ランプから積層体までの距離を5cmに調整し、コロナ処理した絶縁膜の表面に5分間紫外線照射を行った。この積層体の絶縁膜の表面粗さRaを測定したところ、0.07μmであった。
【0100】
次いで、この積層体を、NaOHが50g/Lとなるように調整した45℃のアルカリ脱脂水溶液に2分浸漬した。さらに、次いで、この積層体を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、コンディショニング剤(商品名CC−231、ローム&ハース社製)が100ml/Lとなるよう調整した溶液に45℃で1分間浸漬した。この後、積層体を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、塩化パラジウムが0.3g/Lとなるよう調整した水溶液に45℃で2分間浸漬した。次いで、この積層体を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、次亜リン酸ナトリウムが0.27mol/Lとなるよう調整した水溶液に60℃で30秒浸漬し、めっき触媒を還元処理した。このようにして絶縁膜表面にめっき触媒を吸着させ、めっき前処理を施した積層体を得た。
【0101】
次いで、めっき前処理を施した積層体を、硫酸銅5水和物が0.016mol/L、硫酸ニッケル6水和物が0.0048mol/L、クエン酸3ナトリウム2水和物が0.052mol/L、ホウ酸が0.5mol/L、次亜リン酸ナトリウムが0.27mol/L、ポリエチレングリコール(分子量1000)が1g/Lとなるように調整した水溶液に45℃で5分間浸漬して無電解めっき処理することにより、絶縁膜上に金属層(銅の層)を形成させた。
【0102】
次いで、無電解めっきを施した積層体を、硫酸銅100g/リットル、硫酸50g/リットル、36%塩酸1.4ml/リットル、EVF−1A(上村工業社製)1ml/リットル、EVF−B(上村工業社製)10ml/リットル、EVF−R(上村工業社製)2ml/リットルとなるように調整した水溶液(電解液)に空気を吹き込みながら、温度23℃で、積層体を陰極側、含リン銅版を陽極側に浸漬・設置し、直流電源装置で通電し、電解銅めっきを施し、無電解めっき処理により形成された金属層上に厚さ12μmの電解銅めっき膜を形成した。次いで、電解めっきを施した積層体を、170℃で60分間アニール処理をし、最外側にめっきによる金属層を有する積層体を得た。得られた積層体は、絶縁膜と金属層との密着性を評価するための試験に用いた。その結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
〔実施例2〕
コロナ処理の代わりに、大気圧プラズマ処理装置(ADMASTER II−300dM:イー・スクエア社製)で出力1.8kW、窒素流量200L/分、クリーンドライエア流量200L/分、搬送速度0.5m/分、処理回数1回の条件でプラズマ処理したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体を得た。これについて、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0105】
〔実施例3〕
液状ポリブタジエンを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体を得た。これについて、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例4〕
縦300mm×横300mmの大きさで厚さが100μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンナフタレートフィルム(支持体)上に、縦250mm×横250mmの大きさで厚さが9μmのフッ素化アラミドフィルムを設置し、次いで実施例1で得られたワニスを、YD型のドクターブレード(隙間寸法130μm)を用いてフッ素化アラミドフィルムに塗工した。次いで、ワニスが塗工されたフッ素化アラミドフィルムを、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥することにより、第1の硬化性樹脂組成物の層を形成させた。得られたフッ素化ポリアミドフィルムと硬化性樹脂組成物層との積層体から支持体を剥がし、この第1外層付フィルムの先の塗工面とは反対の面に同様の手法でワニスを塗工し、同様の条件で乾燥させることにより、第2の硬化性樹脂組成物の層を形成させて、支持体(ポリエチレンナフタレートフィルム)/第2の硬化性樹脂組成物の層/フッ素化アラミドフィルム(基材)/第1の硬化性樹脂組成物の層がこの順で積層されてなる、実施例4の支持体付きのフィルムを得た。この支持体付きのフィルム第1の硬化性樹脂組成物の層および第2の硬化性樹脂組成物の層の厚さは、それぞれ10μmであった。
【0107】
実施例1の支持体付きのフィルムの代わりに、上記の方法で作製した実施例4の支持体付きのフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層体を得た。これについて、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例5〕
液状ポリブタジエンを混合しなかったことと、コロナ処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の積層体を得た。これについて、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0109】
〔比較例1〕
紫外線照射処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。これについて、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0110】
〔比較例2〕
硬化剤として液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「JER807」、ジャパンエポキシレジン社製)21部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 EXA−4700)13部、メチルエチルケトン10部、およびシクロヘキサノン10部を、遊星攪拌機を用いて攪拌し、加熱溶解させた。そこへ、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のメチルエチルケトンワニス(商品名「フェノライトLA−7050」、DIC社製)26部、およびフェノキシ樹脂ワニス(商品名「FX293」、東都化成社製)20部を添加しすることにより、ワニスを得た。以降の操作については、このワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の積層体を得た。これについて、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0111】
表1から明らかなように、官能基を有する脂環式オレフィン重合体を硬化して得られる絶縁膜の表面に紫外線を照射し、次いで、その紫外線が照射された絶縁膜の表面に無電解めっき法により金属層を形成すれば、絶縁膜と金属層との密着性に優れる回路基板が得られるといえる(実施例1〜5)。なかでも、紫外線を照射する前に、ドライプロセス処理(コロナ処理またはプラズマ処理)を行った絶縁膜を用いた場合では、加速試験後でも絶縁膜と金属層との密着性に優れる回路基板が得られた(実施例1〜4)。一方、官能基を有する脂環式オレフィン重合体を硬化して得られる絶縁膜を用いた場合であっても、その表面に紫外線を照射しなかった場合は、絶縁膜と金属層との密着性に劣っていた(比較例1)。また、絶縁膜を形成するための硬化性樹脂組成物として、官能基を有する脂環式オレフィン重合体以外の重合体を含むものを用いた場合は、紫外線を照射しても、絶縁膜と金属層との密着性に劣っていた(比較例2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基を有する脂環式オレフィン重合体、および硬化剤を含有してなる硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成された絶縁膜の表面に紫外線を照射し、次いで、その紫外線が照射された絶縁膜の表面に無電解めっき法により金属層を形成する工程を含む、回路基板の製造方法。
【請求項2】
絶縁膜の表面に紫外線を照射する前に、その表面をドライプロセス処理する請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
ドライプロセス処理が、プラズマ処理またはコロナ処理である請求項2に記載の回路基板の製造方法。

【公開番号】特開2010−245064(P2010−245064A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88537(P2009−88537)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】