説明

回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布方法及び装置

【課題】塗布速度が速く、塗布精度が正確で、個々の半田付け部への塗布量が安定な、回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布方法を提供する。
【解決手段】コーティング剤18を貯留するタンク22の底板に、回路基板14の多数の半田付け部16と1対1で対応するように多数のノズル28を設ける。各ノズル28から、個々の半田付け部16に適する塗布量となるようにシリンダー36で計量されたコーティング剤18を、ピストン42を下降させることにより同時に吐出させて、多数の半田付け部16に同時にコーティング剤18を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に部品のリード等を半田付けした部分に、半田のマイグレーション防止等のためにコーティング剤を塗布する方法と、それに用いる塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板の半田付け部にコーティング剤を塗布する方法としては、定量ポンプノズル方式と、カーテンコート方式が公知である。
【0003】
定量ポンプノズル方式は、図5(A)に示すように、タンク兼定量ポンプ10からノズル12へコーティング剤を定量供給すると共に、ノズル12をX−Yロボットにより回路基板14の半田付け部16の配列ラインに沿って定速移動させ、コーティング剤18を線状に塗布する方式である。
【0004】
カーテンコート方式は、図5(B)に示すように、コーティング剤18を帯状に吐出できるスリットダイ20を用いて、コーティング剤18を面状に塗布する方式である。それ以外は上記方式と同様である(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−194392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の塗布方法には次のような問題がある。すなわち、定量ポンプノズル方式は、線状塗布のため、個々の半田付け部への塗布精度が正確で、塗布量も比較的安定しているが、塗布速度が遅いという問題がある。一方、カーテンコート方式は、面状塗布のため、塗布速度は速いが、コーティング剤の飛び散り等のため塗布精度を向上させることが難しく、個々の半田付け部への塗布量が安定しないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、塗布速度が速く、塗布精度が正確で、個々の半田付け部への塗布量が安定な、回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布方法と、それに用いる塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布方法は、回路基板の多数の半田付け部と1対1で対応するように多数のノズルを設け、各ノズルから個々の半田付け部に適する塗布量となるように計量されたコーティング剤を同時に吐出して、多数の半田付け部に同時にコーティング剤を塗布することを特徴とするものである。
【0009】
また、上記塗布方法に用いる本発明に係るコーティング剤塗布装置は、
回路基板の半田付け部に塗布するコーティング剤を貯留するタンクと、
このタンクの底板に回路基板の多数の半田付け部と1対1で対応するように設けられた多数のノズルと、
前記タンク内の底板上に設置され、前記多数のノズルと1対1で対応する多数の導通孔を有するシャッターと、
このシャッター上に設置され、前記多数のノズルと1対1で対応する多数のシリンダーを有するシリンダープレートと、
このシリンダープレートの多数のシリンダーに下端部が挿入され、上端部をピストンホルダーによって一括して上下動可能に保持された多数のピストンとを備え、
前記シリンダープレートはタンク内で移動できないように設置され、前記シャッターは各導通孔が対応するシリンダーとノズルを導通する位置と導通しない位置を往復移動できるように設置されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る上記塗布装置は、前記シャッターの、各導通孔からシャッターの往復移動距離だけ離れた位置に、各シリンダーへコーティング剤を供給するコモンレールが形成されており、このコモンレールには、シリンダープレートのシリンダー形成領域以外の領域に形成された開口を通してタンク内のコーティング剤が供給されるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路基板の多数の半田付け部にコーティング剤を同時に塗布することができるので、コーティング剤塗布に要する時間を大幅に短縮することができる。また、ノズルと回路基板の相対位置を動かさないで塗布を行うので、塗布精度が正確になるだけでなく、コーティング剤中へのエア噛み込み、コーティング剤が塗布されない不濡れ、あるいは塗りズレなどの不良が発生するおそれがなくなる。さらに、個々の半田付け部にシリンダーで計量されたコーティング剤を塗布するので、個々の半田付け部への塗布量が一定となり、バラツキのない安定した塗布状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布方法に用いる塗布装置の一実施形態を示す。この塗布装置は、コーティング剤を貯留するタンク22を備えている。タンク22には、入口配管24Aからコーティング剤が流入し、余分なコーティング剤は出口配管24Bから流出して、常に新鮮なコーティング剤が貯留されるようになっている。タンク22には密閉カバー26が被せられ、コーティング剤の劣化を防止するようになっている。
【0013】
タンク22の底板には、多数のノズル28が設けられている。これらのノズル28は、回路基板14の多数の半田付け部16と1対1で対応している。なお30は回路基板14に半田付けされた部品のリード等である。
【0014】
タンク22内の底板上にはシャッター32が設置され、シャッター32上にはシリンダープレート34が設置されている。シリンダープレート34には、前記多数のノズル28と1対1で対応するように多数のシリンダー36が形成されている。シリンダー36はシリンダープレート34を上下方向に貫通する孔で構成されている。またシャッター32には、各シリンダー36とノズル28を導通させるための多数の導通孔38が形成されている。シャッター32はタンク22の底板とシリンダープレート34との間で一方向に(紙面左右方向に)往復移動可能であるが、シリンダープレート34はタンク22内で移動できないように(シリンダー36とノズル28の位置がずれないように)設置されている。
【0015】
さらに、シャッター32には、各導通孔38からシャッター32の往復移動ストローク(シリンダー36の配列ピッチの半分の距離)だけ離れた位置に、上向きに開口するコモンレール40が形成されている。このコモンレール40は、シリンダープレート34のシリンダー形成領域以外の領域に形成された開口(図示省略)を通してタンク22内のコーティング剤溜まりと連通している。これにより、タンク22内のコーティング剤は、シリンダープレート34の開口を通してコモンレール40に供給され、コモンレール40からシリンダー36に供給されるようになる(詳細は後述)。
【0016】
シリンダープレート34の各シリンダー36にはそれぞれ、ピストン42の下端部が挿入されている。各ピストン42は密閉カバー26を貫通しており、各ピストン42の上端部は密閉カバー26の外でピストンホルダー44によって一括して保持されている。つまり、全てのピストン42はピストンホルダー44を上下させることにより、一括して上下動するようになっている。
【0017】
次に、以上のように構成された塗布装置により、回路基板の半田付け部にコーティング剤を塗布する方法を図2及び図3を参照して説明する。まず図2(A)に示すように、タンク22内には入口配管24Aからコーティング剤18が供給され、余分なコーティング剤18は出口配管24Bから排出されて、タンク22内のコーティング剤18の量は一定に保たれている。
【0018】
図2(A)の初期状態では、ピストン42が下降位置にあり、シリンダー36内にはコーティング剤は入っていない。またシャッター32は、コモンレール40がシリンダー36と一致する位置(シリンダー36とノズル28の導通を遮断する位置)にある。コモンレール40には、タンク22内のコーティング剤18が、シリンダープレート34の図示しない開口を通して供給されている。タンク22の下には、各半田付け部16が対応するノズル28の真下に位置するように、回路基板14が位置決めされる。
【0019】
この状態から、図2(B)に示すように全ピストン42を所定の上昇位置まで上昇させる。これによりコモンレール40内のコーティング剤18がシリンダー36内に吸入される(供給される)。シリンダー36の容積は、ピストン42が所定の上昇位置まで上昇したときに、シリンダー36内に吸入されるコーティング剤の量が1回分の塗布量となるように設定されている。
【0020】
次に、シャッター32を紙面で左方へ所定の距離だけ移動させる。すると図3(A)に示すように、シリンダー36とノズル28が、シャッター32の導通孔38を介して導通した状態となる。
【0021】
この状態で全ピストン42を下降させれば、図3(B)に示すように、各シリンダー36で計量されたコーティング剤18がノズル28から同時に吐出され、各半田付け部16に同時に塗布される。
【0022】
従来の塗布方法は、図4(B)に示すように、回路基板14に対してノズル12(又はスリットダイ20)を移動させながらコーティング剤18を塗布する方式であるため、半田付け部16(半田フィレット)のノズル進行方向下り斜面にコーティング剤が塗布されない不濡れfが発生したり、塗布されたコーティング剤18がエアを噛み込むエア噛み込みeが発生したりしやすいという問題があった。これに対し本発明の塗布方法は、図4(A)に示すように、ノズル28を移動させずに半田フィレットの頂部からコーティング剤18を塗布する方式であるため、コーティング剤18が濡れ広がりやすく、かつシリンダーにより計量された規定量のコーティング剤を塗布する方式であるため、多数の半田付け部16に、位置、量ともに、均一で安定した塗布を行うことができる。
【0023】
なお、上記の塗布装置では、ピストン42を上昇させたり、下降させたりするときに、シリンダープレート34が浮き上がることのないように(シャッター32から離れないように)、シリンダープレート34に図示しないスプリング等により上から押圧力を加えておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布装置の一実施形態を示す断面図。
【図2】(A)は図1の塗布装置を用いたコーティング剤塗布方法の初期段階を示す断面図、(B)は次の段階を示す断面図。
【図3】(A)は図2(B)の次の段階を示す断面図、(B)は最終段階を示す断面図。
【図4】(A)は本発明の塗布方法の説明図、(B)は従来の塗布方法の説明図。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ従来の塗布方法を示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
14:回路基板
16:半田付け部
18:コーティング剤
22:タンク
24A、24B:配管
26:密閉カバー
28:ノズル
32:シャッター
34:シリンダープレート
36:シリンダー
38:導通孔
40:コモンレール
42:ピストン
44:ピストンホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の複数の半田付け部と1対1で対応するように複数のノズルを設け、各ノズルから個々の半田付け部に適する塗布量となるように計量されたコーティング剤を同時に吐出して、複数の半田付け部に同時にコーティング剤を塗布することを特徴とする回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布方法。
【請求項2】
回路基板の半田付け部に塗布するコーティング剤を貯留するタンクと、
このタンクの底板に回路基板の複数の半田付け部と1対1で対応するように設けられた複数のノズルと、
前記タンク内の底板上に設置され、前記複数のノズルと1対1で対応する複数の導通孔を有するシャッターと、
このシャッター上に設置され、前記複数のノズルと1対1で対応する複数のシリンダーを有するシリンダープレートと、
このシリンダープレートの複数のシリンダーに下端部が挿入され、上端部をピストンホルダーによって一括して上下動可能に保持された複数のピストンとを備え、
前記シリンダープレートはタンク内で移動できないように設置され、前記シャッターは各導通孔が対応するシリンダーとノズルを導通する位置と導通しない位置を往復移動できるように設置されていることを特徴とする回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布装置。
【請求項3】
シャッターには、各導通孔からシャッターの往復移動距離だけ離れた位置に、各シリンダーへコーティング剤を供給するコモンレールが形成されており、このコモンレールにはシリンダープレートのシリンダー形成領域以外の領域に形成された開口を通してタンク内のコーティング剤が供給されるようになっていることを特徴とする請求項2記載の回路基板半田付け部へのコーティング剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−220992(P2007−220992A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41330(P2006−41330)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】