説明

回路基板及びこれを用いた電子機器

【課題】鉛フリーはんだを用いても、ランドの大きさを変えることなく、ランドの腐食を防止し、且つ、はんだ剥離やランド剥離を抑えることができる回路基板及びこれを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】回路基板11には、ランド114に、八個のバイアホール12及び熱伝導性膜13と、四枚のはんだ材14が設けられている。各バイアホール12は、ランド114の両面を絶縁基板111を介して貫通している。各バイアホール12の径は、はんだが侵入不可な大きさに設定されている。熱伝導性膜13は、各バイアホール12の内壁に形成されている。この熱伝導性膜13は、ランド114の両面114a、114bを絶縁基板111を介して結合している。各はんだ材14は、ランド114においてリード120の挿入側面114aに全体的に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、回路基板及びこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、従来の電子機器101は、回路基板110に電子部品が実装されて構成されている。回路基板110は、例えば、ガラスエポキシ製の絶縁基板111の両面に、銅箔から成る配線パターン112、112が形成されている。配線パターン112は、ライン113とランド114とから構成されている。
【0003】
両面のライン113、113の端部には、スルーホール115が設けられている。このスルーホール115は、両面のライン113、113を接続するものである。ランド114は、スルーホール115の外周部に被覆されており、平面視でリング状に形成されている。なお、絶縁基板111の両面においてランド114以外の部分には、ソルダーレジスト116が被覆されている。
【0004】
一方、電子部品は、リード120がスルーホール115に通されてランド114にはんだ付けされている。これにより、回路基板110の両面側には、リード120とランド114との接続部分に、はんだフィレット130、130が形成されている。リード120は、このはんだフィレット130、130によって両面の配線パターン112、112に接続されている。
【0005】
以上のように構成されている電子機器101の製造において、鉛フリーはんだ(例えばSn−Ag−Cuはんだ)を使用すると、はんだが固まる際に、はんだ剥離やランド剥離が生じる。はんだ剥離は、図11の矢印Sに示すように、はんだフィレット130がランド114から剥がれる現象である。一方、ランド剥離は、矢印Tに示すようにランド114が絶縁基板111から剥がれる現象である。このような現象が生じることにより、上記の電子機器101では、電気的接続信頼性が低下したり、振動・熱サイクルなどの応力に対する接続耐久性が低下してしまう。
【0006】
これを解決するために、図12のような電子機器201が提案されている(特許文献1参照)。なお、この電子機器201では、上記の電子機器101と同じ部分に同じ符号を付している。この電子機器201には、回路基板210に補助スルーホール211が設けられている。この補助スルーホール211は、ランド114の両面を、絶縁基板111を介して貫通している。したがって、リード120のはんだ付けの際には、補助スルーホール211にはんだ131が通ることにより、はんだフィレット130がランド114に結合するため、はんだ剥離が抑えられている。また、補助スルーホール211にはんだ131が通ることにより、絶縁基板111とランド114とが結合するため、ランド剥離が抑えられている。
【特許文献1】特開2005−311049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、補助スルーホール211の径が所定の大きさよりも小さい場合には、図13に示すように、補助スルーホール211を通るはんだ131がリード120の挿入側面114aまで上がらない。このため、挿入側面114aには、図12のようなはんだフィレット130が形成されない。その結果、リード挿入側面114aが露出するため、ランド114が腐食してしまい、電気的接続信頼性が低下してしまう。なお、挿入側面114aとは、ランド114の両面側において、スルーホール115に電子部品のリード120が挿入される側の面である。
【0008】
一方、補助スルーホール211の径が所定の大きさ以上であれば、挿入側面114aにはんだフィレット130は形成される。しかし、リード120がランド114に十分はんだ付けされるように、ランド114の大きさを図10のランド114よりも大きくする必要がある。この場合には、ランド間隔が十分確保出来ずにブリッジが発生しやすくなる。
【0009】
本件発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、鉛フリーはんだを用いても、ランドの大きさを変えることなく、ランドの腐食を防止し、且つ、はんだ剥離やランド剥離を抑えることができる回路基板及びこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本件発明の請求項1に記載の回路基板では、両面にラインが形成される絶縁基板に、両面のラインを接続するためのスルーホールが設けられ、このスルーホールの外周部には、このスルーホールに通された電子部品のリードをはんだ付けするためのランドが被覆されている回路基板において、前記ランドの両面を前記絶縁基板を介して貫通するバイアホールを設け、このバイアホールの径は、はんだが侵入不可な大きさに設定されている一方、このバイアホールの内壁に、前記ランドの両面を前記絶縁基板を介して結合する熱伝導性膜を形成し、さらに、前記ランドの両面側で前記リードの挿入側面となる方に、はんだフィレットを形成するためのはんだ材を全体的に設けたことを特徴としている。
【0011】
かかる構成において、鉛フリーはんだを用いて請求項1に記載の回路基板に電子部品を実装する際には、まず、スルーホールに電子部品のリードを通す。次に、ランドにおいてリードの挿入側面と反対側の面からリードのはんだ付けを行う。このとき、はんだ熱が、バイアホールの熱伝導性膜を介して挿入側面に伝えられてはんだ材が溶ける。したがって、ランドに補助スルーホールを設けなくても、挿入側面にはんだフィレットが形成される。
【0012】
また、バイアホール内の熱伝導性膜は、ランドの両面と絶縁基板とを結合しているので、ランドと絶縁基板との面接触力が高まる。また、はんだフィレットは熱伝導性膜と結合することにより絶縁基板と結合する。したがって、ランドに補助スルーホールを設けなくても、ランドとはんだフィレットとの面接触力が高まる。
【0013】
また、本件発明の請求項2に記載の回路基板は、請求項1に記載の回路基板において、前記はんだ材を、前記リードの挿入側面で、少なくとも一つの前記バイアホールを覆うように設けたことを特徴としている。
【0014】
かかる構成において、請求項2に記載の回路基板は、はんだ材がバイアホールから離れて設けられている回路基板に比べて、はんだ材に熱が伝わりやすくなるので、はんだフィレットがはやく形成される。
【0015】
また、本件発明の請求項3に記載の回路基板は、請求項1または請求項2に記載の回路基板において、前記バイアホールを、前記スルーホールを間において対向するように設けたことを特徴としている。
【0016】
かかる構成において、請求項3に記載の回路基板は、スルーホールの片側にバイアホールが設けられている回路基板と比べて、はんだ材全体に熱がはやく伝えられるので、はんだフィレットがはやく形成される。
【0017】
また、本件発明の請求項4に記載の回路基板は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回路基板において、前記バイアホールを、前記ランドの両面側で、外周端上と内側部分とに設けたことを特徴としている。
【0018】
かかる構成において、請求項4に記載の回路基板は、バイアホールがランドの内側部分にのみ設けられている回路基板に比べて、はんだ材に伝わる熱量が多くなるので、はんだフィレットがはやく形成される。
【0019】
また、本件発明の請求項5に記載の回路基板は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の回路基板において、前記ランドの両面と前記ラインとの接続部分にティアドロップをそれぞれ形成し、前記バイアホールは、双方のティアドロップと前記ランドとの接続部分に前記絶縁基板を介して貫通するように設けられ、前記熱伝導性膜は、当該バイアホールの内壁に、前記絶縁基板を介して前記ランドの両面と双方のティアドロップとに結合するように形成したことを特徴としている。
【0020】
かかる構成において、請求項5に記載の回路基板は、熱伝導性膜が形成されたバイアホールがティアドロップとランドとにまたがって設けられていない回路基板と比べて、ティアドロップとランドとの接続力が高まる。
【0021】
また、本件発明の請求項6に記載の電子機器は、回路基板に電子部品が実装されて構成される電子機器において、前記回路基板に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の回路基板を用いたことを特徴としている。
【0022】
かかる構成において、請求項6に記載の電子機器は、ランドに補助スルーホールを設けなくても、リードの挿入側面にはんだフィレットが形成される。
【0023】
また、この電子機器は、バイアホールの内壁に形成されている熱伝導性膜が、ランドの両面と絶縁基板とを結合しているため、ランドと絶縁基板との面接触力が高まる。また、はんだフィレットはバイアホールを介して絶縁基板と結合するため、ランドに補助スルーホールを設けなくても、ランドとはんだフィレットとの面接触力が高まる。
【発明の効果】
【0024】
本件発明の請求項1に記載の回路基板では、ランドにバイアホールを設け、電子部品のリードの挿入側面にはんだ材を設けた。これにより、リードのはんだ付けの際には、はんだ熱によってはんだ材が溶ける。したがって、ランドに補助スルーホールを設けなくても、挿入側面にはんだフィレットが形成される。よって、請求項1に記載の回路基板は、鉛フリーはんだを用いても、ランドの大きさを変えることなくランドの腐食を防止できる。
【0025】
さらに、請求項1に記載の回路基板では、バイアホールの内壁に、ランドの両面と絶縁基板とを結合する熱伝導性膜を形成した。したがって、ランドに補助スルーホールを設けなくても、ランドと絶縁基板の面接触力が高まる。よって、請求項1に記載の回路基板は、ランド剥離を防止できる。
【0026】
さらに、請求項1に記載の回路基板では、はんだフィレットがバイアホールの熱伝導性膜と結合して絶縁基板と結合する。したがって、ランドに従来のような径の大きい補助スルーホールを設けなくても、ランドとはんだフィレットとの面接触力が高まる。よって、請求項1に記載の回路基板は、はんだ剥離を防止できる。
【0027】
また、本件発明の請求項2に記載の回路基板では、少なくとも一つのバイアホールを覆うようにはんだ材を設けた。これにより、請求項2に記載の回路基板は、はんだ材がバイアホールから離れて設けられている回路基板に比べて、はんだ材に熱が伝わりやすくなるので、はんだフィレットがはやく形成される。したがって、リードが回路基板にはやく固定される。よって、請求項2に記載の回路基板は、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。
【0028】
また、本件発明の請求項3に記載の回路基板では、バイアホールを、スルーホールを間において対向するように設けた。これにより、請求項3の回路基板は、スルーホールの片側にバイアホールが設けられている回路基板と比べて、はんだ材全体に熱がはやく伝わるので、はんだフィレットがはやく形成される。したがって、リードが回路基板にはやく固定される。よって、請求項3に記載の回路基板は、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。
【0029】
また、本件発明の請求項4に記載の回路基板では、前記バイアホールを、前記ランドの外周端上と、前記ランドの内側部分とに設けた。これにより、請求項4の回路基板は、バイアホールがランドの内側部分にのみ設けられている回路基板に比べて、はんだ材に伝わる熱量が多くなるので、はんだフィレットがはやく形成される。したがって、リードが回路基板にはやく固定される。よって、請求項4に記載の回路基板は、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。
【0030】
また、本件発明の請求項5に記載の回路基板は、ランドの両面とラインとの接続部分にティアドロップをそれぞれ形成し、双方の接続部分にバイアホールを設け、熱伝導性膜を絶縁基板を介してランドの両面と双方のティアドロップとに結合するように形成した。これにより、請求項5に記載の回路基板は、熱伝導性膜が形成されたバイアホールがティアドロップとランドとの接続部分に設けられていない回路基板と比べて、ティアドロップとランドとの接続力が高まる。よって、請求項5に記載の回路基板は、ランドとラインの接続部分の断線防止性を高めることができる。
【0031】
また、本件発明の請求項6に記載の電子機器では、回路基板に本件発明の請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の回路基板を用いた。これにより、ランドに補助スルーホールを設けなくても、リードの挿入側面にはんだフィレットが形成される。よって、請求項6に記載の電子機器は、鉛フリーはんだを用いても、ランドの大きさを変えることなくランドの腐食を防止できる。
【0032】
さらに、請求項6に記載の電子機器は、ランドと絶縁基板との面接触力が高まるので、ランド剥離を防止できる。さらに、請求項6に記載の電子機器は、ランドとはんだフィレットとの面接触力が高まるので、はんだ剥離を防止できる。また、請求項6に記載の電子機器は、本件発明の請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の回路基板が有する効果も併せて得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0034】
第1の実施の形態:
図1は、本件発明の第1の実施の形態を示す回路基板11の要部の平面図である。なお、本実施の形態において従来の回路基板110(図10参照)と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。本実施の形態の回路基板11には、ランド114に、八個のバイアホール12及び熱伝導性膜13と、四枚のはんだ材14が設けられている。
【0035】
八個のバイアホール12は、ランド114の両面側の周縁部で等間隔に配置されている。各バイアホール12は、図2に示すように、ランド114の両面114a、114bを絶縁基板111を介して貫通している。各バイアホール12の径は、はんだが侵入不可な大きさに設定されている。
【0036】
熱伝導性膜13は、図1にも示すように、各バイアホール12の内壁に形成されている。この熱伝導性膜13は、ランド114の両面114a、114bを絶縁基板111を介して結合している。本実施の形態では、熱伝導性膜13として銅箔が用いられている。この熱伝導性膜13は、配線パターン112の形成時に、ライン113やランド114と一緒に形成される。
【0037】
四枚のはんだ材14は、図1に示すように、ランド114においてリード120の挿入側面(図1では上面)114aに全体的に印刷して設けられている。これを具体的に説明する。各はんだ材14は扇形に形成されている。各はんだ材14は、スルーホール115と所定の間隔をあけて、斜め方向に位置するバイアホール12を覆うように設けられている。なお、各はんだ材14の設置位置をこのようにした理由は、はんだ材14を印刷する前のマスキング作業をしやすくするためである。
【0038】
以上のように構成されている回路基板11において、鉛フリーはんだを用いた電子部品の実装方法を説明する。図2に示すように、まず、スルーホール115に上方から電子部品のリード120を通す。次に、ランド114においてリード120の挿入側面114aと反対側の面114bからリード120のはんだ付けを行う。このときに、はんだに加えられる熱(はんだ熱)が、バイアホール12内の熱伝導性膜13を介して挿入側面114aに伝えられる。これにより、挿入側面114aに印刷されているはんだ材14が溶ける。その結果、図3に示すように、ランド114の両面114a、114bにはんだフィレット130、130が形成される。このフィレット130、130によってリード120が回路基板11に固定されて電子機器1が出来上がる。
【0039】
このように本実施の形態では、ランド114に、従来のような径の大きい補助スルーホール211(図12参照)を設けなくても、はんだフィレット130は形成されるため、ランド114を大きくする必要がない。よって、本実施の形態の回路基板11及び電子機器1は、鉛フリーはんだを用いても、ランド114の大きさを変えることなくランド114の腐食を防止できる。
【0040】
また、熱伝導性膜13は、ランド114の両面114a、114bと絶縁基板111とを結合している。したがって、ランド114に補助スルーホールを設けなくても、ランド114と絶縁基板111との面接触力が高まる。よって、本実施の形態の回路基板11及び電子機器1は、ランド剥離を防止できる。
【0041】
また、はんだ付け作業後には、はんだフィレット130は熱伝導性膜13と結合する。これにより、はんだフィレット130は熱伝導性膜13を介して絶縁基板111と結合する。したがって、ランド114に補助スルーホールを設けなくても、ランド114とはんだフィレット130との面接触力が高まる。よって、本実施の形態の回路基板11及び電子機器1は、はんだ剥離を防止できる。
【0042】
また、本実施の形態の回路基板11では、はんだ材14をバイアホール12を覆うように設けた。これにより、この回路基板11は、はんだ材がバイアホールから離れて設けられている回路基板に比べて、はんだ材14に熱が伝わりやすくなるので、はんだフィレット130がはやく形成される。したがって、リード120が回路基板11にはやく固定される。よって、本実施の形態の回路基板11及び電子機器1は、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。
【0043】
また、本実施の形態の回路基板11では、バイアホール12を、スルーホール115を間において対向するように設けた。これにより、この回路基板11は、スルーホール115の片側にバイアホールが設けられている回路基板と比べて、はんだ材14全体に熱がはやく伝わるので、はんだフィレット130がはやく形成される。したがって、リード120が回路基板11にはやく固定される。よって、本実施の形態の回路基板11及び電子機器1は、電子部品の実装作業の作業効率をさらに高めることができる。
【0044】
第2の実施の形態:
図4は、本件発明の第2の実施の形態を示す回路基板21の要部の平面図である。なお、本実施の形態において第1の実施の形態の回路基板11と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0045】
本実施の形態の回路基板21の配線パターン22は、ランド114の両面に二本のライン113が接続して形成されている。ランド114と各ライン113との接続部分には、ティアドロップ23が形成されている。各ティアドロップ23の形状は半円状である。本実施の形態では、各ティアドロップ23に銅箔が用いられており、配線パターン22の形成時にライン113やランド114と一緒に形成される。さらに、ランド114には、八個のバイアホール12及び熱伝導性膜13と、四枚のはんだ材14が設けられている。
【0046】
八個のバイアホール12は、第一の実施の形態と同様に、ランド114の両面側の周縁部に配置されている。八個のバイアホール12の内、上下に位置する二個のバイアホール12は、図5に示すように、ランド114の両面114a、114bとティアドロップ23との接続部分を絶縁基板111を介して貫通している。なお、それ以外の六個のバイアホール12は、第1の実施の形態のバイアホール12と同じ位置に設けられている。
【0047】
また、上下のバイアホール12内に形成されている熱伝導性膜13は、絶縁基板111を介してランド114の両面114a、114bと双方のティアドロップ23、23とを結合している。また、この二つの熱伝導性膜13は、他の熱伝導性膜13と同様に、配線パターン22の形成時に、ライン113やランド114、ティアドロップ23と一緒に形成される。
【0048】
以上のように構成されている回路基板21において、鉛フリーはんだを用いた電子部品の実装方法を説明する。図5に示すように、まず、スルーホール115に上方から電子部品のリード120を通す。次に、ランド114においてリード120の挿入側面114aと反対側の面114bからリード120のはんだ付けを行う。このときに、はんだに加えられる熱(はんだ熱)が、バイアホール12内の熱伝導性膜13を介して挿入側面114aに伝えられる。これにより、挿入側面114aに印刷されているはんだ材14が溶ける。
【0049】
その結果、図6に示すように、ランド114の両面114a、114bにはんだフィレット130、130が形成される。このフィレット130、130によってリード120が回路基板21に固定されて電子機器2が出来上がる。
【0050】
このように本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、ランド114に従来のような径の大きい補助スルーホール211(図12参照)を設けなくても、はんだフィレット130は形成されるので、ランド114を大きくする必要がない。よって、本実施の形態の回路基板21及び電子機器2は、ランド114の腐食を防止できる。
【0051】
また、上下のバイアホール12以外の六個のバイアホール12内に形成されている熱伝導性膜13は、第1の実施の形態と同様に、ランド114の両面114a、114bと絶縁基板111とを結合している。よって、本実施の形態の回路基板21及び電子機器2は、ランド剥離を防止できる。
【0052】
また、上下のバイアホール12内の熱伝導性膜13は、ランド114の両面114a、114bと、双方の面にそれぞれ接続しているティアドロップ23、23と、絶縁基板111とを結合している。したがって、本実施の形態の回路基板21は、ティアドロップとランドとの接続部分にバイアホールが設けられていない第1の実施の形態の回路基板11と比べて、ティアドロップ23、23とランド114との接続力が高まる。よって、本実施の形態の回路基板21及び電子機器2は、ランド114とライン113との接続部分の断線防止性を高めることができる。
【0053】
また、はんだ付け作業後には、第1の実施の形態と同様に、はんだフィレット130が熱伝導性膜13を介して絶縁基板111と結合する。したがって、ランド114に補助スルーホールを設けなくても、ランド114とはんだフィレット130との面接触力が高まる。よって、本実施の形態の回路基板21及び電子機器2は、はんだ剥離を防止できる。
【0054】
また、本実施の形態の回路基板21では、第1の実施の形態の回路基板11と同様に、はんだ材14がバイアホール12を覆うようにしたので、はんだ材がバイアホールから離れている回路基板に比べて、はんだフィレット130がはやく形成される。したがって、リード120が回路基板21にはやく固定される。よって、本実施の形態の回路基板21及び電子機器2は、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。
【0055】
また、本実施の形態の回路基板21では、バイアホール12を、スルーホール115を間にして対向させた。これにより、この回路基板11は、スルーホール115の片側にバイアホールが設けられている回路基板と比べて、はんだ材14の全てに熱がはやく伝わるので、はんだフィレット130がはやく形成される。したがって、リード120が回路基板21にはやく固定される。よって、本実施の形態の回路基板21及び電子機器2は、電子部品の実装作業の作業効率をさらに高めることができる。
【0056】
第3の実施の形態:
図7は、本件発明の第3の実施の形態を示す回路基板31の要部の平面図である。なお、本実施の形態において第1の実施の形態の回路基板11と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0057】
本実施の形態の回路基板31は、ランド114に、10個のバイアホール12及び熱伝導性膜13と、四枚のはんだ材14が設けられている。
【0058】
10個のバイアホール12は、ランド114の両面側において、外周端上に6個、内側部分に4個設けられている。外周端上の6個のバイアホール12は、スルーホール115を間において上下左右に対向して配置されている。内側部分の4個のバイアホール12は、スルーホール115を間において上下左右に対向して配置されている。図8に示すように、各バイアホール12は、ランド114の両面114a、114bを絶縁基板111を介して貫通している。
【0059】
以上のように構成されている回路基板31において、鉛フリーはんだを用いた電子部品の実装方法を説明する。図8に示すように、まず、スルーホール115に上方から電子部品のリード120を通す。次に、ランド114においてリード120の挿入側面114aと反対側の面114bからリード120のはんだ付けを行う。このときに、はんだに加えられる熱(はんだ熱)が、バイアホール12内の熱伝導性膜13を介して挿入側面114aに伝えられる。これにより、挿入側面114aにあるはんだ材14が溶ける。
【0060】
その結果、図9に示すように、ランド114の両面114a、114bにはんだフィレット130、130が形成される。このフィレット130、130によってリード120が回路基板31に固定されて電子機器3が出来上がる。
【0061】
このように本実施の形態では、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様に、ランド114に、従来のような径の大きい補助スルーホール211(図12参照)を設けなくても、はんだフィレット130は形成されるので、ランド114を大きくする必要がない。よって、本実施の形態の回路基板31及び電子機器3は、ランド114の腐食を防止できる。
【0062】
また、各バイアホール12内の熱伝導性膜13は、ランド114の両面114a、114bと絶縁基板111とを結合している。よって、本実施の形態の回路基板31及び電子機器3は、ランド剥離を防止できる。
【0063】
また、はんだ付け作業後には、はんだフィレット130は熱伝導性膜13を介して絶縁基板111と結合するので、ランド114に補助スルーホールを設けなくても、ランド114とはんだフィレット130との面接触力が高まる。よって、本実施の形態の回路基板31及び電子機器3は、はんだ剥離を防止できる。
【0064】
また、本実施の形態では、10個のバイアホール12を、ランド114の外周端上と、内側部分とに設けた。その結果、第1の実施の形態や第2の実施の形態に比べて、バイアホール12の設置数が多くなる。これに伴い、はんだ付け作業時においてはんだ材14に伝わる熱量が多くなるので、はんだフィレット130がはやく形成される。したがって、リード120が回路基板31にはやく固定される。よって、本実施の形態の回路基板31及び電子機器3は、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。
【0065】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0066】
例えば、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、四枚のはんだ材14の全てが、バイアホール12を覆うようにした。しかし、少なくとも一枚のはんだ材14がバイアホール12を覆うようにすれば良い。この場合でも、はんだ材がバイアホールから離れて設けられている回路基板に比べて、リード120が回路基板11にはやく固定されるので、電子部品の実装作業の作業効率を高めることができる。また、ランド114の形状は、実施の形態のように環状に限定する必要はない。また、バイアホール12の配置数や配置位置についても、実施の形態に限定する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように本件発明の回路基板や電子機器は、鉛フリーはんだを用いても、ランドの大きさを変えることなく、ランドの腐食を防止し、且つ、はんだ剥離やランド剥離を抑えることができる。したがって、本件発明の回路基板や電子機器を、回路基板や電子機器の技術分野で十分に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本件発明の第1の実施の形態を示す回路基板の要部の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】同実施の形態を示す電子機器の断面図である。
【図4】本件発明の第2の実施の形態を示す回路基板の要部の正面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】同実施の形態の電子機器の断面図である。
【図7】本件発明の第3の実施の形態を示す回路基板の要部の正面図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】同実施の形態の電子機器の断面図である。
【図10】従来の電子機器の断面図である。
【図11】図10の電子機器においてはんだ剥離とランド剥離を示す断面図である。
【図12】補助スルーホールが設けられた従来の電子機器の断面図である。
【図13】図12の電子機器の問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 電子機器
2 電子機器
3 電子機器
11 回路基板
12 バイアホール
13 熱伝導性膜
21 回路基板
23 ティアドロップ
31 回路基板
111 絶縁基板
113 ライン
114 ランド
114a リードの挿入側面
115 スルーホール
120 電子部品のリード
130 はんだフィレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面にラインが形成される絶縁基板に、両面のラインを接続するためのスルーホールが設けられ、このスルーホールの外周部には、このスルーホールに通された電子部品のリードをはんだ付けするためのランドが被覆されている回路基板において、
前記ランドの両面を前記絶縁基板を介して貫通するバイアホールを設け、このバイアホールの径は、はんだが侵入不可な大きさに設定されている一方、このバイアホールの内壁に、前記ランドの両面を前記絶縁基板を介して結合する熱伝導性膜を形成し、さらに、前記ランドの両面側で前記リードの挿入側面となる方に、はんだフィレットを形成するためのはんだ材を全体的に設けたことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記はんだ材を、前記リードの挿入側面で、少なくとも一つの前記バイアホールを覆うように設けたことを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記バイアホールを、前記スルーホールを間において対向するように設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記バイアホールを、前記ランドの両面側で、外周端上と内側部分とに設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記ランドの両面と前記ラインとの接続部分にティアドロップをそれぞれ形成し、前記バイアホールは、双方のティアドロップと前記ランドとの接続部分に前記絶縁基板を介して貫通するように設けられ、前記熱伝導性膜は、当該バイアホールの内壁に、前記絶縁基板を介して前記ランドの両面と双方のティアドロップとに結合するように形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項6】
回路基板に電子部品が実装されて構成される電子機器において、
前記回路基板に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の回路基板を用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−176915(P2009−176915A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13445(P2008−13445)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】