説明

回路板構造

【目的】電磁ノイズを抑えることができる回路板構造を提供する。
【解決手段】回路板構造は、誘電層と、第1金属層と、第2金属層と、第1フェライト素子とを含む。第1金属層は、誘電層の上表面上に配置され、且つ第1回路領域と、第2回路領域と、第1回路領域及び第2回路領域を接続する第1金属頚部とを有する。第2金属層は、誘電層の下表面上に配置され、且つ第3回路領域と、第4回路領域と、第3回路領域及び第4回路領域を接続する少なくとも1つの第2金属頚部とを有する。上表面上の第1及び第2金属頚部の正投影は、相互に重なり合わない。第1フェライト素子が上表面上に配置され、上表面の第1及び第2金属頚部の正投影の少なくとも1つを覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路板構造に関し、特に、フェライト素子を使用している回路板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業の高周波及び低電圧への発展傾向に従い、回路システムは、電磁ノイズ干渉の不可避な問題に直面している。回路板上の回路の動作(operation)において、高速デジタル信号を伝送する素子又はハイパワーな素子、例えば、クロック信号発生器又はパワー増幅器は、電磁ノイズの主要な発生源になる。上記素子が電磁ノイズを発生する時、電磁ノイズが電磁波形で回路板上に伝播するので、回路板上の他の素子が干渉される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日、電磁干渉(electromagnetic interference=EMI)問題は、適切な回路設計及びレイアウトにより解決され得る。即ち、回路板上の上記電磁干渉の影響は、レイアウト又は素子を変更した適切な設計により低減され得る。
【0004】
従って、本発明は、電磁ノイズを抑えることができる回路板構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提供する回路板構造は、誘電層と、第1金属層と、第2金属層と、第1フェライト素子とを含む。誘電層は、上表面及び上表面に対向する下表面を有する。第1金属層は、誘電層の上表面上に配置され、且つ第1回路領域と、第2回路領域と、第1回路領域及び第2回路領域を接続する第1金属頚部(metallic neck)とを有する。第2金属層は、誘電層の下表面上に配置され、且つ第3回路領域と、第4回路領域と、第3回路領域及び第4回路領域を接続する少なくとも1つの第2金属頚部とを有し、誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影は、相互に重なり合わない。第1フェライト素子が誘電層の上表面上に配置され、誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影の少なくとも1つを覆う(overlay)。
【0006】
本発明の一実施形態では、誘電層の上表面上の上記第1フェライト素子及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合う。
【0007】
本発明の一実施形態では、上記回路板構造が誘電層の下表面に配置される第2フェライト素子を含む。
【0008】
本発明の一実施形態では、上記誘電層の上表面上の上記第2フェライト素子と、第1フェライト素子と、第1金属頚部との正投影が相互に重なり合う。
【0009】
本発明の一実施形態では、誘電層の上表面上の上記第1フェライト素子及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合い、誘電層の上表面上の第2フェライト素子と、第1フェライト素子と、第1金属頚部との正投影が相互に重なり合う。
【0010】
本発明の一実施形態では、上記第2フェライト素子が第2金属頚部を覆う。
【0011】
本発明の一実施形態では、誘電層の上表面上の上記第2フェライト素子と、第1フェライト素子と、第2金属頚部との正投影が相互に重なり合う。
【0012】
本発明の一実施形態では、上記誘電層の材質がガラス繊維を含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、上記第1金属層の材質が銅を含む。
【0014】
本発明の一実施形態では、上記第2金属層の材質が銅を含む。
【0015】
上記に基づき、本発明の回路板構造では、誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合わない。従って、電磁ノイズの磁場が第1金属頚部及び第2金属頚部間の誘電層中に集中するよりもむしろ誘電層の外側に分布する。また、第1フェライト素子を使用して第1金属頚部を覆うことにより磁場を容易に抑制することができ、電磁ノイズの伝播を減少させ、電磁ノイズを抑制する効果を達成する。
【発明の効果】
【0016】
誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合わないという本発明の回路板構造の設計により、2つの隣接する回路領域間で伝播する電磁ノイズにより発生する磁界が第1金属頚部及び第2金属頚部間の誘電層中に集中するよりもむしろ誘電層の外側且つ第1金属頚部及び第2金属頚部寄りに位置する領域内に分布する。また、フェライト素子を使用し、金属頚部を覆うことで磁界強度を抑制することができるので、電磁ノイズの伝播を減少させ、電磁ノイズを抑制する効果を達成する。
【0017】
本発明の上記及び他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る回路板構造の図である。
【図1B】第1金属頚部を覆うために第1フェライト素子が使用されていない図1Aの回路板構造の図である。
【図1C】図1Bの第1金属層及び第2金属層を示す図である。
【図1D】図1Aの線I−Iに沿った断面図である。
【図2】本発明のもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図3】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図4】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図5】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図6】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図7】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図8】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図9】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図10】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図11】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図12】本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。
【図13】幾つかの回路板構造の伝播係数及び周波数間の関係を示すグラフである。
【図14】幾つかの回路板構造の伝播係数及び周波数間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aは、本発明の実施形態に係る回路板構造の図であり、図1Bは、第1金属頚部を覆うための第1フェライト素子が使用されていない図1Aの回路板構造の図であり、図1Cは、図1Bの第1金属層及び第2金属層を示す図であり、図1Dは、図1Aの線I−Iに沿った断面図である。図1A〜図1Cを参照すると、本実施形態では、回路板構造100aは、誘電層110と、第1金属層120と、第2金属層130と、第1フェライト素子140とを含む。
【0020】
より詳細に言えば、誘電層110が上表面110a及び上表面110aに対向する下表面110bを有し、誘電層110の材質がガラス繊維を含む。
【0021】
第1金属層120が誘電層110の上表面110a上に配置され、且つ第1回路領域122と、第2回路領域124と、第1金属頚部126とを有し、第1金属頚部126が第1回路領域122と第2回路領域124を接続する。本実施形態では、第1金属層120が、例えば、電源層として提供される。第1金属層120の材質が銅を含む。
【0022】
第2金属層130が誘電層110の下表面110b上に配置され、且つ第3回路領域132と、第4回路領域134と、少なくとも1つの第2金属頚部136とを有する(図1Cでは、1つのみ模範的に表示する)。第2金属頚部136が第3回路領域132及び第4回路領域134を接続し、誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合わない。本実施形態では、第2金属層130が、例えば、接地層として提供され、且つ第2金属層130の材質が銅を含む。
【0023】
留意すべきことは、本実施形態では、第1金属層120の第1回路領域122が第2金属層130の第3回路領域132に対応し、第1金属層120の第2回路領域124が第2金属層130の第4回路領域134に対応する。本実施形態では、第1金属頚部126及び第2金属頚部136の幅が相互に異なる。誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合わず、且つそれぞれ誘電層110の相対する両側に配置される。
【0024】
図1A及び図1Dを参照すると、第1フェライト素子140が誘電層110の上表面110a上に配置され、且つ第1フェライト素子140が第1金属頚部126を覆う。ここでのフェライト材質は、高透磁率且つ低導電性を特徴とするので、第1フェライト素子140が電場に対する高いインピーダンスを有し、即ち、第1フェライト素子140が電磁場の強度を抑制することができる。
【0025】
本実施形態では、誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合わないので、第1回路領域122及び第2回路領域124間と、第3回路領域132及び第4回路領域134間とに伝播される電磁ノイズの磁場が第1金属頚部126及び第2金属頚部136間の誘電層110に集中にするよりもむしろ誘電層110の外側且つ第1金属頚部126及び第2金属頚部136寄りに分布する。
【0026】
また、第1フェライト素子140を使用することにより磁場強度を抑制することができる。従って、第1フェライト素子140が第1金属頚部126を覆う時、第1金属頚部126及び第2金属頚部136間の誘電層110における電磁ノイズを効率的に抑制することができる。
【0027】
実施例の回路板構造100aは、更に第1誘電層(図示せず)と、第2誘電層(図示せず)と、第1素子層(図示せず)と、第2素子層(図示せず)とを含むことができる。ここでの回路板構造100aは第1素子層及び第2素子層間に配置され、第1誘電層は第1素子層及び第1金属層120間に配置され、第2誘電層は第2素子層及び第2金属層130間に配置され、即ち、回路板構造100aが多層回路板構造であることができる。留意すべきことは、上記回路構造のアーキテクチャは、一例であり、本発明を限定するものではないということである。
【0028】
上記構造設計は、第1金属頚部126及び第2金属頚部136の数がそれぞれ1つであると規定しているが、本発明は、第1金属頚部126及び第2金属頚部136の数量、配置、幅及び形状を限定しない。複数の回路板構造100b〜100lによる幾つかの異なる実施形態を以下に示す。
【0029】
図2は、本発明のもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図1D及び図2を参照すると、誘電層110の上表面110a上の図2の回路板構造100bの第1フェライト素子140a及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合う、即ち、第1フェライト素子140aが、誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影を全体的に覆うということを除いて、図2の回路板構造100bが図1Dの回路板構造100aに類似する。
【0030】
図3は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図1D及び図3を参照すると、図3の回路板構造100cが第2フェライト素子150を更に含むことを除いて、図3の回路板構造100cが図1Dの回路板構造100aに類似する。第2フェライト素子150が誘電層110の下表面110bに配置され、誘電層110の上表面110a上の第1フェライト素子140と、第2フェライト素子150と、第1金属頚部126との正投影が相互に重ね合わせられ、即ち、第2フェライト素子150が第2金属頚部136を覆わない。
【0031】
図4は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図3及び図4を参照すると、誘電層110の上表面110a上の図4の回路板構造100dの第1フェライト素子140a及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合う、即ち、第1フェライト素子140aが誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影を全体的に覆うということを除いて、図4の回路板構造100dが図3の回路板構造100cに類似する。
【0032】
図5は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図4及び図5を参照すると、図5の回路板構造100eの第2フェライト素子150が第2金属頚部136を覆い、誘電層110の上表面110a上の第1フェライト素子140aと、第2フェライト素子150と、第2金属頚部136との正投影が相互に重なり合い、即ち、第2フェライト素子150が誘電層110の下表面110b上の第1金属頚部126の正投影を覆わないということを除いて、図5の回路板構造100eが図4の回路板構造100dに類似する。
【0033】
図6は、本発明のもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図5及び図6を参照すると、誘電層110の上表面110a上の図6の回路板構造100fの第2フェライト素子150a及び第1フェライト素子140aの正投影が相互に重なり合う、即ち、第1フェライト素子140aが誘電層110の上表面110aにおける第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影を全体的に覆い、第2フェライト素子150aが誘電層110の下表面110b上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影を全体的に覆うということを除いて、図6の回路板構造100fが図5の回路板構造100eに類似する。
【0034】
通常、回路板構造のレイアウトは、電磁ノイズの抑制及びシグナル・インテグリティ(信号完全性)の維持の両方を考慮する必要がある。より良好なシグナル・インテグリティを有するためには、信号線の基準面(通常は、接地面)をできる限り完全に維持すべきである。この意味において、図7の回路板構造100gは、開口が設けられている次のような構造をとり、開口が第1金属頚部126の幅よりもやや広い幅を有し、下表面110b上の第1金属頚部126の正投影の位置に配置される。このように、誘電層110の下表面110bの両側における2つの第2金属頚部136a,136bを最大限の範囲に残すことができ、一方で、第1金属頚部126を覆うフェライト素子140がノイズを更に抑制することができる。
【0035】
図8は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図7及び図8を参照すると、図8の回路板構造100hが第2フェライト素子150を更に含むことを除いて、図8の回路板構造100hが図7の回路板構造100gに類似する。第2フェライト素子150が誘電層110の下表面110bに配置され、誘電層110の上表面110a上の第1フェライト素子140と、第2フェライト素子150と、第1金属頚部126との正投影が相互に重なり合い、即ち、第2フェライト素子150が第2金属頚部136a,136bを覆わない。
【0036】
回路板構造のレイアウトの要求に応じて、ある時は、単一金属層が1つより多くの金属頚部を必要とする。図9は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図9を参照すると、図9の回路板構造100iの第2金属層130(図1C)が2つの第2金属頚部136a’,136b’を有することを除いて図9の回路板構造100iが図1Dの回路板構造100aに類似し、第1フェライト素子140は第1金属頚部126のみを覆っている。
【0037】
図10は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図9及び図10を参照すると、図10の回路板構造100jが第2フェライト素子150を更に含むことを除いて、図10の回路板構造100jが図9の回路板構造100iに類似する。第2フェライト素子150が誘電層110の下表面110bに配置され、誘電層110の上表面110a上の第1フェライト素子140と、第2フェライト素子150と、第1金属頚部126との正投影が相互に重なり合い、即ち、第2フェライト素子150が第2金属頚部136a’,136b’を覆わない。
【0038】
図11は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図10及び図11を参照すると、図11の回路板構造100kの第2フェライト素子150が第2金属頚部136b’を覆い、誘電層110の上表面110a上の第1フェライト素子140及び第2フェライト素子150の正投影が相互に重なり合わないということを除いて、図11の回路板構造100kが図10の回路板構造100jに類似する。
【0039】
図12は、本発明の更にもう1つの実施形態に係る回路板構造の断面図である。図11及び図12を参照すると、図12の回路板構造100lが第3フェライト素子160及び第4フェライト素子170を更に含むことを除いて、図12の回路板構造100lが図11の回路板構造100kに類似する。第3フェライト素子160が誘電層110の上表面110a上に配置され、且つ誘電層110の上表面110a上の第2金属頚部136b’の正投影を覆う。第4フェライト素子170が誘電層110の下表面110bに配置され、且つ誘電層110の下表面110b上の第1金属頚部126の正投影を覆う。誘電層110の上表面110a上の第1フェライト素子140及び第4フェライト素子170の正投影が相互に重なり合う。誘電層110の上表面110a上の第3フェライト素子160及び第2フェライト素子150の正投影が相互に重なり合う。
【0040】
留意すべきことは、上記実施形態の回路板構造100a〜100l中の第1金属頚部126及び第2金属頚部136(又は136a,136b,136a’,136b’)の幅が相互に異なるが、他の提示していない実施形態において、誘電層の表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合わず、且つ誘電層の表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影の少なくとも1つが用いられるフェライト素子により覆われれば、第1金属頚部及び第2金属頚部の幅を相互に同一とするができる。上記設計、即ち、第1金属頚部及び第2金属頚部の幅が相互に同一である設計も、本発明に許容され得るものであり、本発明の範囲内にある。
<実験結果例>
【0041】
従来の回路板構造及び本発明の幾つかの回路板構造に対して幾つかの実験をそれぞれ行っている。試験した回路板構造では、2つの隣接する回路領域間のノイズ隔離効果が、散在するパラメータ中の伝播係数(transmission coefficient)S21により示される。伝播係数が低い時は、2つの隣接する回路領域間の電磁波伝送が悪く、即ち、2つの隣接する回路領域間のノイズ隔離効果が良好であることを示す。従って、本実施形態において、試験される周波数範囲が0.6GHzと1.8GHzとの間に規定され、実験の結果、伝播係数S21が0dBと−35dBとの間に分布する。
【0042】
更に詳細に言えば、実験は、図6の回路板構造100f及び従来の回路板構造を対象に行われ、誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合い、使用されるフェライトが第1金属頚部と、第2金属頚部と、第1金属頚部及び第2金属頚部間に配置される誘電層とを囲う(enclose)ということを除いて、従来の回路板構造が図6の回路板構造に類似する。
【0043】
図13は、幾つかの状況に対応する伝播係数と周波数との関係を示している。図13を参照すると、ここでの曲線210は、フェライト素子が使用されない点を除く従来の回路板構造で試験した結果を示している。ここでの曲線220は、従来の回路板構造(フェライト素子が使用される構造)で試験した結果を示している。ここでの曲線230は、フェライト素子が使用されないことを除く本発明の回路板構造100fで試験した結果を示している。ここでの曲線240は、本発明の回路板構造100f(フェライト素子が使用される構造)で試験した結果を示している。
【0044】
図13中の曲線210,230から分かるように、誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合うか否かの2つの設計は、2つの隣接する回路領域間のノイズ隔離効果に影響を及ぼす。更に詳細に言えば、周波数が約1.2GHzである時、曲線210,230の2つの伝播係数S21が約7dBの差異を有し、即ち、フェライト素子が使用されない場合において、誘電層110の上表面110a上の第1金属接続層126及び第2金属接続層136の正投影が相互に重なり合わない実施形態の上記設計が、誘電層の上表面上の第1金属頚部及び第2金属頚部の正投影が相互に重なり合う従来の設計よりも良好なノイズ隔離効果を示している。言い換えれば、フェライト素子を使用しない本発明の回路板構造100fがフェライト素子を使用しない従来の回路板構造との比較においてより良好なノイズ隔離効果を有する。
【0045】
また、実験データに示されるようにフェライト又はフェライト素子を使用することにより回路板構造の電磁ノイズの抑制を更に改善することができる。周波数が約1.2GHzである時、曲線210,220の2つの伝播係数S21が約1dBの差異を有し、曲線230,240の2つの伝播係数S21が約9dBの差異を有する。特に、曲線220,240の2つの伝播係数S21が約13dBの差異を有し、第1フェライト素子140a及び第2フェライト素子150aを使用することに関連して誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合わないという上記設計がより良好な電磁ノイズ隔離効果を示すことを示唆している。
【0046】
要するに、上記実験結果から、誘電層110の上表面110a上の第1金属頚部126及び第2金属頚部136の正投影が相互に重なり合わないという本発明の回路板構造100fの設計がより良好なノイズ隔離効果を示すことが結論とされる。同時に、第1金属頚部126及び第2金属頚部136を覆う第1フェライト素子140a及び第2フェライト素子150aを使用することによって、回路板構造100fが磁界強度を効率的に抑制し、電磁ノイズ伝播能力を減少させ、電磁ノイズ抑制をもたらす。
【0047】
電磁ノイズを抑制する効果は、フェライト素子により金属頚部を覆う領域にも依存する。図14は、幾つかの回路板構造の伝播係数と周波数との関係を示している。ここでの曲線310は、第1フェライト素子140aを使用しない回路板構造100aを示している。ここでの曲線320は、使用するフェライト素子140が第1金属頚部126を覆う回路板構造100aを示しており、曲線330は、本発明の回路板構造100cを示しており、曲線340は、本発明の回路板構造100fを示している。
【0048】
図14中の実験データから分かるように、曲線340が曲線310,320,330と比較して最も小さな伝播係数S21を示しており、即ち、フェライト素子により覆われる第1金属頚部126及び第2金属頚部136の領域が大きいほど、フェライト素子により磁界強度を抑制する効果が顕著となる。言い換えれば、電磁ノイズ伝播を低減するフェライト素子の能力が強力であるほど、電磁ノイズの抑制効果が上がる。
【0049】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【符号の説明】
【0050】
100a〜100l 回路板構造
110 誘電層
110a 上表面
110b 下表面
120 第1金属層
122 第1回路領域
124 第2回路領域
126 第1金属頚部
130 第2金属層
132 第3回路領域
134 第4回路領域
136,136a,136b,136a’,136b’ 第2金属頚部
140,140a 第1フェライト素子
150,150a 第2フェライト素子
160 第3フェライト素子
170 第4フェライト素子
210,220,230,240,310,320,330,340 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上表面及び前記上表面に対向する下表面を有する誘電層と、
前記誘電層の前記上表面上に配置され、且つ第1回路領域と、第2回路領域と、前記第1回路領域及び前記第2回路領域を接続する第1金属頚部とを有する第1金属層と、
前記誘電層の前記下表面上に配置され、且つ第3回路領域と、第4回路領域と、前記第3回路領域及び前記第4回路領域を接続する少なくとも1つの第2金属頚部とを有し、前記誘電層の前記上表面上の前記第1金属頚部及び前記第2金属頚部の正投影が相互に重なり合わない第2金属層と、
前記誘電層の前記上表面上に配置され、前記誘電層の前記上表面上の前記第1金属頚部及び前記第2金属頚部の正投影の少なくとも1つを覆う第1フェライト素子と、
を含む回路板構造。
【請求項2】
前記誘電層の前記上表面上の前記第1フェライト素子及び前記第2金属頚部の正投影が相互に重なり合う請求項1記載の回路板構造。
【請求項3】
前記誘電層の前記下表面に配置される第2フェライト素子を更に含む請求項1記載の回路板構造。
【請求項4】
前記誘電層の前記上表面上の前記第2フェライト素子と、前記第1フェライト素子と、前記第1金属頚部との正投影が相互に重なり合う請求項3記載の回路板構造。
【請求項5】
前記誘電層の前記上表面上の前記第1フェライト素子及び前記第2金属頚部の正投影が相互に重なり合い、前記誘電層の前記上表面上の前記第2フェライト素子と、前記第1フェライト素子と、前記第1金属頚部との正投影が相互に重なり合う請求項3記載の回路板構造。
【請求項6】
前記第2フェライト素子が前記第2金属頚部を覆う請求項3記載の回路板構造。
【請求項7】
前記誘電層の前記上表面上の前記第2フェライト素子と、前記第1フェライト素子と、前記第2金属頚部との正投影が相互に重なり合う請求項6記載の回路板構造。
【請求項8】
前記誘電層の材質がガラス繊維を含む請求項1記載の回路板構造。
【請求項9】
前記第1金属層の材質が銅を含む請求項1記載の回路板構造。
【請求項10】
前記第2金属層の材質が銅を含む請求項1記載の回路板構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−183052(P2010−183052A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−146674(P2009−146674)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(396008783)大同股▲ふん▼有限公司 (76)
【Fターム(参考)】