説明

回路装置および回路装置の製造方法

【課題】パッド電極部における封止樹脂層の剥がれを抑制し、回路装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】この回路装置は、配線層3、金めっき層4、絶縁樹脂層5、回路素子6、導電部材7、及び封止樹脂層8を備える。配線層3は、銅からなる配線層3のパッド電極部分においてその表面に金めっき層4が形成される。この部分以外の表面は粗面加工が施される。絶縁樹脂層5は、配線層3を覆うように、パッド電極の形成領域に開口部5aを有するように形成される。回路素子6は所定の領域の絶縁樹脂層5の上に装着される。封止樹脂層8は絶縁樹脂層5の上に形成され、回路素子6およびパッド電極の開口部5aを覆うように全面に形成される。ここで、封止樹脂層8は、パッド電極部分において金めっき層4および配線層3と接するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置に関し、特にパッド電極を備える回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PDA、DVC、DSCといったポータブルエレクトロニクス機器の高機能化が加速するなか、こうした製品が市場で受け入れられるためには小型・軽量化が必須となっており、その実現のために高集積のシステムLSIが求められている。一方、これらのエレクトロニクス機器に対しては、より使い易く便利なものが求められており、機器に使用されるLSIに対し、高機能化、高性能化が要求されている。このため、LSIチップの高集積化にともないそのI/O数が増大する一方でパッケージ自体の小型化要求も強く、これらを両立させるために、半導体部品の高密度な基板実装に適合した半導体パッケージの開発が強く求められている。こうした要求に対応するため、CSP(Chip Size Package )と呼ばれるパッケージ技術が種々開発されている。
【0003】
こうしたパッケージの例として、BGA(Ball Grid Array )が知られている。BGAは、パッケージ用基板の上に半導体チップを実装し、それを樹脂モールディングした後、反対側の面に外部端子としてハンダボールをエリア状に形成したものである。
【0004】
図18は、特許文献1に記載されたBGA型の半導体装置の概略断面図である。この半導体装置(回路装置)は回路基板110の一方の面に半導体素子(回路素子)106を搭載し、他方の面に外部接続端子としてはんだボール112を接合したものである。回路基板110の一方の面には半導体素子106と金線107を介して電気的に接続される配線パターン103(パッド電極部103a)が設けられ、回路基板110の他方の面には外部接続端子を接合するランド部103bが設けられている。配線パターン103とランド部103bとの電気的接続は絶縁基板101を貫通する貫通孔111の内壁面に設けた導体部を介してなされる。ソルダーレジスト105は回路基板110の表面を保護している。回路基板110の一方の面は半導体素子106を搭載した後、封止樹脂層108により封止されている。
【0005】
図19は、図18に示した半導体装置のパッド電極部(図18のXで示した断面部分)を拡大した断面図である。半導体素子106とワイヤ接続されるパッド電極部103aは、銅からなる配線部と、その表面を覆う金めっき層104から構成されている。ソルダーレジスト105は、パッド電極部103aにおける銅配線部を被覆し、さらに金めっき層104の一部を被覆するように設けられている。ソルダーレジスト105の開口部は、半導体素子106の搭載およびワイヤ接続などがなされた後、封止樹脂層108によって半導体素子106とともに封止される。
【特許文献1】特開2005−197648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献に記載されているように、半導体素子106を封止樹脂層108によって封止した場合、パッド電極部103aにおける封止樹脂層108の密着性(剥がれの有無)が重要となる。この部分における密着性が不良であると、熱ストレスや水分の影響を受け、半導体装置(回路装置)の信頼性が著しく低下する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、パッド電極部における封止樹脂層の剥がれを抑制し、回路装置の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る回路装置は、銅からなる配線層とその表面の電気的な接続に供される部分の一部に形成された金めっき層とからなる電極と、電極の全面を被覆する封止樹脂層と、を備え、封止樹脂層は金めっき層および配線層と接するように設けられていることを特徴とする。ここで、電極とは、たとえば、パッケージ基板もしくはモジュール基板などの回路基板に設けられたパッド電極、あるいはLSIチップに代表される回路素子に設けられたパッド電極を意味する。この電極により、回路基板とLSIチップに代表される回路素子とをワイヤボンディングで接続したり、回路基板と外部の回路装置とをワイヤボンディングで接続したりする。
【0009】
この態様によれば、電極における封止樹脂層は、金めっき層と接するだけでなく、金めっき層よりも密着性の高い配線層とも接して設けられるで、従来のように金めっき層のみと接する場合に比べて、電極における封止樹脂層の密着強度が向上する。この結果、熱ストレスや水分の影響を受けず、回路装置の信頼性が向上する。
【0010】
上記構成において、回路素子とパッド電極の金めっき層が形成された部分とを電気的に接続する導電部材をさらに備え、導電部材は、金めっき層を介して配線層と電気的に接続していることが好ましい。この場合、パッド電極表面に金めっき層を設けているため、銅からなる配線層の場合に生じるパッド電極表面の劣化を抑制することができる。このため、パッド電極での封止樹脂層の密着強度を向上させつつ、さらに回路装置における回路素子と配線層との接続不良を抑制することができる。この結果、回路装置の信頼性をさらに向上させることができる。
【0011】
また本発明の他の態様に係る別の回路装置は、基板と、基板の上に形成された銅からなる配線層と、基板および配線層の上に形成され、電極の形成領域に開口部を有する絶縁樹脂層と、開口部内に設けられた配線層の表面の電気的な接続に供される部分に形成された金めっき層と、基板に設けられた回路素子と、回路素子と配線層とを金めっき層を介して電気的に接続する導電部材と、絶縁樹脂層の上に形成され、回路素子および電極の形成領域を封止する封止樹脂層と、を備え、封止樹脂層は、金めっき層および配線層と接するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、電極の形成領域を封止する封止樹脂層は金めっき層と接するだけでなく、金めっき層よりも密着性の高い配線層とも接して設けられるので、従来のように金めっき層のみと接する場合に比べて、電極の形成領域を封止する封止樹脂層の密着性が向上する。この結果、熱ストレスや水分の影響を受けず、回路装置の信頼性が向上する。
【0013】
上記構成において、回路素子が半導体素子であってもよい。半導体素子とは、IC、LSIなどをいう。この場合、導電部材を用いて半導体素子がワイヤボンディング接続されていてもよい。また、導電部材を用いて半導体素子がフリップチップ接続されていてもよい。また、回路素子が受動素子であってもよい。受動素子とは、たとえば、抵抗、キャパシタなどである。
【0014】
上記構成において、封止樹脂層と接する配線層の表面は粗面加工が施されていることが好ましい。このようにすることで、配線層と封止樹脂層との界面における密着性のさらなる向上が図られ、電極における封止樹脂層の剥がれを効果的に抑制することができる。
【0015】
上記構成において、封止樹脂層が配線層と接する領域は、金めっき層と接する領域の周囲に設けられていてもよい。この場合、金めっき層の周囲が粗面加工が施された配線層により囲われるので、封止樹脂層のパッド電極からの剥離をより効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、回路装置の製造方法である。当該回路装置の製造方法は、基板の主面上に配線層を形成する工程と、配線基板の主面全体に導電層を形成する工程と、電極形成領域に電極よりも大きさが広い開口を備える第1の絶縁層を配線基板の主面全体に形成する工程と、開口に露出した導電層を除去し、配線層を露出させる工程と、導電層をめっき用の配線として用いて、露出した配線層の上に金メッキ層を形成する工程と、第1の絶縁層および導電層を除去する工程と、金メッキ層とその近傍の配線層が露出するような開口を備える第2の絶縁層を配線基板の主面全体に形成する工程と、金メッキ層に回路素子を電気的に接続する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この態様によれば、配線層の上に形成された導電層がバスラインとして使用され、金めっき層の形成後に導電層が除去されるため、めっき用のバスラインがノイズ源となることが回避される。
【0018】
また、金めっき層の形成後にめっき用の導電層が除去されるため、配線等のレイアウトに制約が生じにくいので、回路装置の高密度化を図ることができる。
【0019】
上記態様の回路装置の製造方法の第1の絶縁層および導電層を除去する工程において、露出した前記配線層の表面が粗面加工されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パッド電極部における封止樹脂層の剥がれを抑制し、回路装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具現化した実施形態について図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るパッド電極を備えた回路装置の概略断面図である。また、図2は、図1に示した回路装置のパッド電極部(図1のXで示した断面部分)を拡大した断面図である。図1および図2に基づいて第1実施形態の回路装置について説明する。なお、図2は、後述する図3のA−A’線上の断面図に当たる。
【0023】
この第1実施形態での回路装置は、金属基板1、絶縁層2、配線層3(パッド電極3a)、金めっき層4、絶縁樹脂層5、回路素子6、導電部材7、及び封止樹脂層8を備えている。
【0024】
金属基板1は、たとえば、約1.5mmの厚みを有する銅(Cu)基板を用いる。なお、この金属基板1と後述する絶縁層2から構成される部分が、本発明の「基板」の一例である。
【0025】
絶縁層2はエポキシ樹脂を主成分とする膜が採用され、その厚さは、たとえば、約80μmである。回路装置の放熱性向上の観点から、絶縁層2は高熱伝導性を有することが望ましい。このため、絶縁層2は、銀、ビスマス、銅、アルミニウム、マグネシウム、錫、亜鉛およびこれらの合金などやシリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどを高熱伝導性フィラーとして含有することが好ましい。
【0026】
ここで、第1実施形態では、後述する回路素子6の下方に位置する絶縁層2の領域に、約70μmの直径(ビア径)を有するとともに、絶縁層2を厚み方向に貫通する4つのビアホール2aが所定の間隔を隔てて形成されている。このビアホール2a内には、後述する配線層3を構成する部材が埋め込まれている。配線層3はこのビアホール2aを介して金属基板1の上面に接触している。このビアホール2a内に埋め込まれた配線層3は、回路素子6からの熱を金属基板1に伝達して放熱する機能を有する。
【0027】
配線層3には、たとえば、銅やアルミニウムなどの金属が採用され、その厚さは、たとえば、約20μmである。配線層3は、一部にパッド電極3aを含み所定の配線パターンに加工されている。配線層3のパッド電極3a部分においては、その表面に後述する金めっき層4が形成されている。この部分以外の表面は粗面加工が施されている。この粗面加工による配線層3の算術平均粗さRaは、約0.2μm〜約10μmが好ましい。ここでは、粗化によってRaが約0.38μmとなった銅配線を採用した。なお、粗化する前の銅配線のRaは約0.25μmである。
【0028】
金めっき層4は電解Au/Niめっき膜が採用され、その膜厚は、たとえば、約0.5μmである。金めっき層4は、配線層3のパッド電極3a部分においてその表面の一部を覆うように形成されている。なお、このパッド電極3aが、本発明の「電極」の一例である。ここで、金めっき層4のRaは約0.11μmである。金めっき層4の表面は、銅からなる配線層3の表面に比べて表面粗さ(算術平均粗さRa)が小さいため、後述する封止樹脂層8との間のアンカー効果が小さく、銅からなる配線層3に比べ金めっき層4の方が、密着強度が小さい。
【0029】
絶縁樹脂層5にはエポキシ樹脂などからなるソルダーレジスト膜が採用され、その膜厚は、たとえば、約30μmである。絶縁樹脂層5は、絶縁層2および配線層3の上に形成され、かつ、配線層3のパッド電極3aを含む形成領域に対応した開口部5aを有する。この絶縁樹脂層5は配線層3の保護膜として機能する。また、絶縁樹脂層5は表面が粗化された配線層3の上に形成されるため、その界面は良好な密着性を有する。
【0030】
回路素子6は、たとえば、ICチップやLSIチップなどの半導体素子や、キャパシタ、抵抗などの受動素子である。ここでは、その上面にパッド電極(図示せず)を備えるLSIチップを採用している。回路素子6は所定の領域の絶縁樹脂層5の上に装着されている。
【0031】
導電部材7は、金線などが採用され、配線層3のパッド電極3aと回路素子6とを金めっき層4を介して電気的にワイヤボンディング接続している。
【0032】
封止樹脂層8は、絶縁樹脂層5、回路素子6および絶縁樹脂層5の開口部5aを覆うように全面に形成されている。また、開口部5a部分においては、封止樹脂層8は金めっき層4、絶縁層2および配線層3と接するように設けられている。この封止樹脂層8は、回路素子6を外界からの影響から保護している。封止樹脂層8の材料は、たとえば、エポキシ樹脂などの熱硬化性の絶縁性の樹脂である。なお、封止樹脂層8中には熱伝導性を高めるためのフィラーが添加されていてもよい。
【0033】
図3は、図1に示した回路装置のパッド電極部(図1のXで示した断面部分)を拡大した平面図である。封止樹脂層8と配線層3が接する面(領域8a)は、導電部材7との接続領域8bと、絶縁樹脂層5で覆われた配線パターン部との間に位置している。
【0034】
(製造方法)
(第1実施形態による回路装置の第1の製造プロセス)
図4および図5は、図1に示した第1実施形態による回路装置の第1の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図1、図4、及び図5を参照して、第1実施形態による回路装置の第1の製造プロセスについて説明する。
【0035】
まず、図4(A)に示すように、金属基板1上に、約80μmの厚みを有する絶縁層2と約3μmの厚みを有する銅箔3zからなる積層膜を圧着する。
【0036】
図4(B)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、ビアホール2a(図1参照)の形成領域に位置する銅箔3zを除去する。これにより、絶縁層2のビアホール2aの形成領域が露出される。
【0037】
図4(C)に示すように、銅箔3zの上方から炭酸ガスレーザまたはUVレーザを照射することによって、絶縁層2の露出した表面から金属基板1の表面に達するまでの領域を除去する。これにより、絶縁層2にその表面の直径が約70μmで、絶縁層2を貫通するビアホール2aを形成する。
【0038】
図4(D)に示すように、無電解めっき法を用いて、銅箔3zの表面およびビアホール2aの内面上に銅を約0.5μmの厚みでめっきする。続いて、電解めっき法を用いて、銅箔3zの表面およびビアホール2aの内部に銅をめっきする。なお、本実施形態では、めっき液中に抑制剤および促進剤を添加することによって、抑制剤を銅箔3zの表面上に吸着させるとともに、促進剤をビアホール2aの内面上に吸着させる。これにより、ビアホール2aの内面上の銅めっきの厚みを大きくすることができるので、ビアホール2a内に銅を埋め込むことができる。その結果、図4(D)に示したように、絶縁層2上に約20μmの厚みを有する配線層3が形成されるとともに、ビアホール2a内に配線層3が埋め込まれる。
【0039】
図4(E)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、配線層3をパターニングする。これにより、所定の配線パターン(パッド電極3aなど)を有する配線層3が形成される。
【0040】
次に、図5(A)に示すように、選択めっき法を用いて、所定領域(パッド電極3aの領域)における配線層3の表面に金めっき層(電解Au/Niめっき膜)4を形成する。金めっき層4の形成領域は、先の図3に示した領域である。
【0041】
図5(B)に示すように、銅からなる配線層3の表面をウェット処理などにより粗化する。たとえば、酸系薬液を用いた表面処理を行うと、その表面は微小な凹凸を有する粗面となる。これにより、配線層3の表面が微小な凹凸を有して粗面化される。この粗面化による配線層3の算術平均粗さRaは前述のように、約0.38μmである。配線層3の表面のRaは、触針式表面形状測定器で計測することができる。なお、この酸系薬液によるウェット処理では、金めっき層4の表面は粗面化されない。金めっき層4のRaは約0.11μmである。
【0042】
図5(C)に示すように、絶縁層2および配線層3を覆い、配線層3のパッド電極3aの形成領域に対応した開口部5aを有するように絶縁樹脂層5を形成する。絶縁樹脂層5の膜厚は、たとえば、約30μmである。また、絶縁樹脂層5は、表面が粗化された配線層3の上に形成されるため良好な密着性を有する。
【0043】
図5(D)に示すように、絶縁樹脂層5の上に回路素子6を装着する。なお、回路素子6としては、その上面にパッド電極(図示せず)を備えたLSIチップである。続いて、導電部材7を用いて、配線層3のパッド電極と回路素子6とを金めっき層4を介してワイヤボンディング接続する。これにより、回路素子6と配線層3が電気的に接続される。
【0044】
最後に、図1に示したように、絶縁樹脂層5の上において、回路素子6およびパッド電極3aの開口部5aを覆うように封止樹脂層8を形成する。この際、パッド電極3a部分においては、封止樹脂層8は金めっき層4および配線層3の両方と接するように設けられる。先に示したように、銅からなる配線層3の表面は、金めっき層4の表面に比べて表面粗さ(算術平均粗さRa)が大きい。このため、封止樹脂層8との間でアンカー効果がより作用し、金めっき層4よりも密着性が高い。
【0045】
これらの工程により、第1実施形態の回路装置を得ることができる。
【0046】
以上説明した第1実施形態の回路装置によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
【0047】
(1)パッド電極3aにおける封止樹脂層8は、金めっき層4と接するだけでなく、金めっき層4よりも密着性の高い配線層3とも接して設けたので、従来のように金めっき層のみと接する場合に比べて、パッド電極3aにおける封止樹脂層8の密着強度が向上する。この結果、熱ストレスや水分の影響を受けず、回路装置の信頼性が向上する。
【0048】
(2)パッド電極3a表面に金めっき層4を設けたため、銅からなる配線層3の場合に生じるパッド電極表面の劣化を抑制することができる。このため、パッド電極3aでの封止樹脂層8の密着強度を向上させつつ、さらに回路装置における回路素子6と配線層3との接続不良を抑制できる。この結果、回路装置の信頼性をさらに向上させることができるようになる。
【0049】
(3)封止樹脂層8と接する配線層3の表面に対して粗面加工を施したので、配線層3と封止樹脂層8との界面における密着性のさらなる向上が図られ、パッド電極3aにおける封止樹脂層8の剥がれを効果的に抑制することができる。
【0050】
(第1実施形態による回路装置の第2の製造プロセス)
第1実施形態による回路装置の第2の製造プロセスについて説明する。第2の製造プロセスの基本的な工程に関して、上述した第1の製造プロセスと同様な工程については説明を適宜省略し、第1の製造プロセスと異なる点を中心に説明を行う。図6および図8は、図1に示した第1実施形態による回路装置の第2の製造プロセスを説明するためのパッド形成領域の平面図である。図7および図9は、それぞれ、図6および図8のA−A’線上の断面図である。なお、図7〜9では、第1実施形態の回路装置におけるパッド電極部の要部が図示されている。
【0051】
第2の製造プロセスは、図4(A)〜図4(E)までは第1の製造プロセスと共通である。
【0052】
図4(E)で示した工程の後、図6(A)および図7(A)に示すように、絶縁層2および配線層3の上に、無電解めっき法によりフラッシュ銅からなる導電層100を形成する。導電層100の厚さは、たとえば1μmである。配線層3の先端部分に、マッチ棒の頭部分のように、円状に広がったパッド形成領域が形成されている。なお、パッド形成領域は円状に限定されるものではなく、たとえば矩形状でもよい。
【0053】
次に、図6(B)および図7(B)に示すように、金に対する耐性を有するレジスト120を導電層100の上に積層した後、露光および現像を行うことにより、パッド形成領域に開口Rを設ける。これにより、開口Rに導電層100が露出する。
【0054】
次に、図6(C)および図7(C)に示すように、硫酸と過酸化水素の混合液を用いてエッチングを行うことにより、開口R内の導電層100を除去する。これにより、開口R内に、配線層3、およびその周りの絶縁層2が露出する。
【0055】
次に、図6(D)および図7(D)に示すように、レジスト120の下面に設けられた導電層100をバスラインとして用い、電解めっき法により開口R内に露出した配線層3の上に金めっき層(電解Au/Niめっき膜)4を形成する。
【0056】
次に、図8(A)および図9(A)に示すように、レジスト120を剥離した後、硫酸と過酸化水素の混合液を用いてエッチングを行うことにより、導電層100を除去する。また、エッチングにより、第1の製造プロセスで説明したように、配線層3の表面が粗化される。
【0057】
次に、図8(B)および図9(B)に示すように、絶縁樹脂層(フォトソルダーレジスト)5を積層した後、露光および現像を行うことにより、パッド形成領域に開口R’を設ける。開口R’は、金めっき層4で被覆されていない配線層3の一部が露出するように開口Rに比べて開口領域が広い。これにより、開口R’部分に、金めっき層4、および金めっき層4に近接し、粗面加工が施された配線層3が露出する。粗面加工が施された配線層3に絶縁樹脂層5の下面が接するため、アンカー効果により配線層3と絶縁樹脂層5との密着性が向上する。
【0058】
以上の工程により、第1の製造プロセスの図5(C)に相当する構造が得られる。この後、第1の製造プロセスと同様な工程を適用することにより、第1実施形態による回路装置を製造することができる。
【0059】
この第2の製造プロセスによれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
【0060】
(4)選択めっき法でパッド形成領域に金めっき層4を形成する場合には、パッド形成領域に接続するめっき用のバスラインを形成しておく必要がある。ダイシングによる個片化により、このめっき用のバスラインは切断されるが、ダイシングラインからパッド形成領域に至るめっき用のバスラインは部分的に残存してしまう。残存したバスラインがアンテナの役割を果たすことにより、ノイズが発生する可能性がある。しかし、第2の製造プロセスによれば、配線層3の上に形成されたフラッシュ銅からなる導電層100がバスラインとして使用され、金めっき層4の形成後に導電層100が除去されるため、めっき用のバスラインがノイズ源となることが回避される。
【0061】
(5)選択めっき法でパッド形成領域に金めっき層4を形成する場合には、パッド形成領域に接続するめっき用のバスラインを形成しておく必要がある。このため、配線等のレイアウトに制約が生じたり、高密度化の妨げになる可能性がある。しかし、第2の製造プロセスによれば、金めっき層4の形成後にめっき用の導電層100が除去されるため、配線等のレイアウトに制約が生じにくく、高密度化の妨げにもなりにくい。
【0062】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る回路装置のパッド電極部の断面図である。図11は、図10に示した回路装置のパッド電極部の平面図である。なお、図10は、図11のA−A’線上の断面図である。第2実施形態に係る回路装置が先の第1実施形態と異なる箇所は、封止樹脂層8が配線層3と接する領域8aが、金めっき層4と接する接続領域8bの周囲に設けられていることである。それ以外については、先の第1実施形態と同様である。
【0063】
この第2実施形態の回路装置によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
【0064】
(6)金めっき層4の周囲が粗面加工が施された配線層3により囲われるため、封止樹脂層8のパッド電極3aからの剥離をより効果的に抑制することができる。この結果、信頼性の向上した回路装置が提供される。
【0065】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態に係る回路装置のパッド電極部の断面図である。図113は、図12に示した回路装置のパッド電極部の平面図である。なお、図12は、図13のA−A’線上の断面図である。第3実施形態に係る回路装置が第1実施形態と異なる箇所は、封止樹脂層8が配線層3と接する領域8aが、金めっき層4と接する接続領域8bの周囲に設けられており、かつ、配線層3の末端部分が、絶縁樹脂層5と金めっき層4との間の絶縁樹脂層5を被覆していることである。それ以外については、先の第1実施形態と同様である。
【0066】
この第3実施形態の回路装置によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
【0067】
(7)金めっき層4の周囲が粗面加工が施されたより大面積の配線層3により囲われるため、封止樹脂層8のパッド電極3aからの剥離をより効果的に抑制することができる。この結果、信頼性の向上した回路装置が提供される。
【0068】
(第4実施形態)
上記実施の形態では、回路素子6と配線層3のパッド電極とが金めっき層4を介してワイヤボンディング接続されているが、回路素子6の電極形成面が配線層3のパッド電極と対向し、回路素子6がはんだ等を用いてフリップチップ接続されていてもよい。また、上述したように、回路素子6は、抵抗、キャパシタなどの受動素子であってもよい。さらに、基板には、一例として配線層が2層のビルドアップ基板を用いているが、これに限定されない。
【0069】
図14は、第4実施形態の回路装置の構造を示す平面図である。なお、図14では、封止樹脂層が省略されている。図15は、図14のA−A’線上の断面図である。図16は、第4実施形態の回路装置の配線層および金めっき層のパターンを示す図である。また、図17は、第4実施形態の回路装置の絶縁層の開口パターンを示す図である。図17では、絶縁層に隠れて視認できない部分が点線で示されている。
【0070】
第4実施形態の回路装置は、LSIなどの回路素子6a、6b、および抵抗、キャパシタなどの回路素子6cを含む。図16に示すように、絶縁層2の上に配線層3がパターニングされている。回路装置の中央部分に、フリップチップ接続用として金メッキ層4を有するフリップチップパッド200が設けられている。フリップチップパッド200の周囲に、ワイヤボンディング接続用として金メッキ層4を有するワイヤボンディングパッド210が設けられている。また、ワイヤボンディングパッド210の周囲に、回路素子6cの実装用として金メッキ層4を有する受動素子パッド220が設けられている。なお、フリップチップパッド200、ワイヤボンディングパッド210および受動素子パッド220周辺の詳細な構造は、第1〜第3実施形態で示したいずれの構造であってもよい。
【0071】
図17に示すように、フリップチップパッド200、ワイヤボンディングパッド210および受動素子パッド220およびその周囲の配線層3が露出するように、絶縁樹脂層5に開口が設けられている。
【0072】
図14および図15に戻り、第4実施形態の回路装置では、回路素子6aがフリップチップパッド用の金メッキ層4にはんだバンプ250を介してフリップチップ接続されている。回路素子6bは、回路素子6aの上に搭載され、ワイヤボンディングパッド用の金メッキ層4と金線などの導電部材7を介してワイヤボンディング接続されている。また、回路素子6aおよび回路素子6bの周囲に設けられた受動素子パッド用の金メッキ層4に、抵抗、キャパシタなどの回路素子6cがはんだ260を介して実装されている。
【0073】
絶縁層2の下面側には、所定パターンの配線層270が設けられている。配線層270は、ビア280を介して配線層3と電気的に接続されている。配線層270の電極形成領域に、金めっき層(電解Au/Niめっき膜)290が形成されている。さらに、金めっき層290にはんだバンプ292が形成されている。また、絶縁層2および配線層270の下面側には、はんだバンプ292が露出するように、絶縁樹脂層(フォトソルダーレジスト)294が形成されている。
【0074】
この第4実施形態の回路装置によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
【0075】
(8)フリップチップ接続用のパッド電極、ワイヤボンディング接続用のパッド電極、および受動素子用のパッド電極について、上記(1)〜(3)の効果を享受することができる。
【0076】
(9)上記効果の結果として、LSI等の回路素子がスタックされたマルチチップモジュールにおいて、回路装置の信頼性を向上させることができる。
【0077】
なお、第1〜第3実施形態では、単層構造の配線層3を有する金属基板における例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、2層構造以上の構造を有する配線層においてその最上層にパッド電極を備えていれば適用可能である。たとえば、ISB(Integrated System Board;登録商標)とよばれるパッケージ構造を上記実施形態に適用してもよい。ISBとは、半導体ベアチップを中心とする電子回路のパッケージングにおいて、銅による配線パターンを持ちながら回路部品を支持するためのコア(基材)を使用しない独自のコアレスシステム・イン・パッケージである。たとえば、特開2002−110717号公報に開示されたような4層のISB構造を上記実施形態に適用することが好適である。
【0078】
また、上記実施形態では、ウェット処理による粗化の例を示したが、本発明はこれに限らず、配線層3の表面をプラズマ処理などにより粗化してもよい。この場合、たとえば、アルゴンガスを用いたプラズマ照射による表面処理を行うと、その表面は微小な凹凸を有する粗面となる。なお、このプラズマ処理では、金めっき層4の表面は粗面化されない。
【0079】
さらに、上記実施形態において、封止樹脂層8に接する配線層3、絶縁層2および絶縁樹脂層5の面をさらにプラズマ処理面としてもよい。このようにすることで、封止樹脂層8の下面全体がプラズマ処理面と接するため、アンカー効果が働く面積が増加し、封止樹脂層8の密着性がさらに改善される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回路装置の概略断面構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した回路装置のパッド電極部を拡大した断面図である。
【図3】図1に示した回路装置のパッド電極部を拡大した平面図である。
【図4】図4(A)〜(E)は、第1実施形態の回路装置の第1の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図5】図5(A)〜(D)は、第1実施形態の回路装置の第1の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図6】図6(A)〜(D)は、第1実施形態の回路装置の第2の製造プロセスを説明するための要部平面図である。
【図7】図7(A)〜(D)は、第1実施形態の回路装置の第2の製造プロセスを説明するための要部断面図である。図7(A)〜(D)は、それぞれ、図6(A)〜(D)のA−A’線上の断面図である。
【図8】図8(A)〜(B)は、第1実施形態の回路装置の第2の製造プロセスを説明するための要部平面図である。
【図9】図9(A)〜(B)は、第1実施形態の回路装置の第2の製造プロセスを説明するための要部断面図である。図9(A)〜(B)は、それぞれ、図8(A)〜(B)のA−A’線上の断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る回路装置の概略断面構造を示す断面図である。
【図11】図6に示した回路装置のパッド電極部を拡大した断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る回路装置の概略断面構造を示す断面図である。
【図13】図12に示した回路装置のパッド電極部を拡大した断面図である。
【図14】第4実施形態の回路装置の構造を示す平面図である。
【図15】図14のA−A’線上の断面図である。
【図16】第4実施形態の回路装置の配線層および金めっき層のパターンを示す図である。
【図17】第4実施形態の回路装置の絶縁層の開口パターンを示す図である。
【図18】従来のBGA型の半導体装置の概略断面構造を示す断面図である。
【図19】図18に示した半導体装置のパッド電極部を拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・金属基板、2・・・絶縁層、3・・・配線層、4・・・金めっき層、5・・・絶縁樹脂層、6・・・回路素子、7・・・導電部材、8・・・封止樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅からなる配線層とその表面の電気的な接続に供される部分の一部に形成された金めっき層とからなる電極と、
前記電極の全面を被覆する封止樹脂層と、
を備え、
前記封止樹脂層は前記金めっき層および前記配線層と接するように設けられている回路装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上に形成された銅からなる配線層と、
前記基板および前記配線層の上に形成され、電極の形成領域に開口部を有する絶縁樹脂層と、
前記開口部内に設けられた配線層の表面の電気的な接続に供される部分に形成された金めっき層と、
前記基板に設けられた回路素子と、
前記回路素子と前記配線層とを前記金めっき層を介して電気的に接続する導電部材と、
前記絶縁樹脂層の上に形成され、前記回路素子および前記電極の形成領域を封止する封止樹脂層と、
を備え、
前記封止樹脂層は、前記金めっき層および前記配線層と接するように設けられている回路装置。
【請求項3】
前記回路素子が半導体素子であることを特徴とする請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記導電部材を用いて前記半導体素子がワイヤボンディング接続されていることを特徴とする請求項3に記載の回路装置。
【請求項5】
前記導電部材を用いて前記半導体素子がフリップチップ接続されていることを特徴とする請求項3に記載の回路装置。
【請求項6】
前記回路素子が受動素子であることを特徴とする請求項2に記載の回路装置。
【請求項7】
前記封止樹脂層と接する配線層の表面は粗面加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項8】
前記封止樹脂層が前記配線層と接する領域は、前記金めっき層と接する領域の周囲に設けられている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項9】
配線基板の主面上に配線層を形成する工程と、
前記配線基板の主面全体に導電層を形成する工程と、
電極形成領域に電極よりも大きさが広い開口を備える第1の絶縁層を前記配線基板の主面全体に形成する工程と、
前記開口に露出した前記導電層を除去し、前記配線層を露出させる工程と、
前記導電層をめっき用の配線として用いて、露出した前記配線層の上に金めっき層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層および前記導電層を除去する工程と、
前記金めっき層とその近傍の配線層が露出するような開口を備える第2の絶縁層を前記配線基板の主面全体に形成する工程と、
前記金めっき層に回路素子を電気的に接続する工程と、
を備えることを特徴とする回路素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1の絶縁層および前記導電層を除去する工程において、露出した前記配線層の表面が粗面加工されることを特徴とする請求項9に記載の回路装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−318098(P2007−318098A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107649(P2007−107649)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】