説明

回転制御バルブ用の抗スケーリング制御要素

回転制御バルブ用の制御要素(54)が、少なくとも1つの耳(76)によって回転シャフト(56)に取り付けられている。制御要素(54)には少なくとも2つの表面が含まれており、その第1表面(60)は流れリング(64)に対してほぼ密閉可能である。第2表面(62)は、第1表面を越えてバルブを通る流体の流れを促進してその表面におけるスケーリングすなわち異物堆積を阻止するために、第1表面から概ね退避している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の抗スケーリング制御要素は、一般に回転制御バルブに関するものであり、さらに詳しくは、スケール形成を抑制するボールバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールバルブは一般に、管の中における流体の流れを制御するために広く使用されている。これらのバルブは、鉱業に見られるような腐食性スラリーの流れを制御するために特に好都合なものである。バタフライバルブや偏心プラグバルブとは異なり、ボールバルブによれば、管の中における流れに実質的に平行である流体流路が可能になる。平行な流れはバルブ要素および下流管の衝撃腐食を減少させる。
【0003】
典型的なボールバルブには、開放位置と閉鎖位置との間で可動であるほぼ半球状あるいはボール形状の制御要素が含まれている。閉鎖位置では制御要素の湾曲表面が密閉表面に係合して、バルブ本体を通る流体の流れを阻止するかあるいは調整する。開放位置では、流体は、初めは制御要素の内側の密閉表面を流れ、次いで流れリングを通過する。しかしながら、バルブあるいは制御要素の内側形状によって、バルブのいくつかの領域を通る流れの速度が減少することがある。例えば、多くのボールバルブにおける低速流のある領域は、バルブが開放位置にあるときには、ボールの外面と流れリングとの間に位置している。
【0004】
いくつかの腐食性スラリーでは、速度の減少した流れあるいはよどみの領域におけるバルブ構成要素にスケールが形成されることがある。スケールによって、バルブの作動が結局は阻害されて、高価で時間のかかる保守を生じるか、あるいは人的に危険な作業状態さえ生じるおそれがある。場合によっては、スラリーにより、極端に硬いスケールが形成されて、著しく大きいダウンタイムあるいはバルブ交換さえもが引き起こされることがある。もし、作動しないバルブの保守や交換のために処理が中断されると、何千ドルもが失われることになる。
従って、スケール形成を助長しがちである低速流の領域が作られないボールバルブが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の制御要素の1実施形態によれば、回転制御バルブが少なくとも1つの耳で回転シャフトに取り付けられている。この制御要素には、第1表面と第2表面とが含まれており、第1表面は一般に流れリングとでもって密閉することができる。第2表面は、第1表面から一般に退避しており、第1表面を越えてバルブを通る流体の流れを促進して、第2表面におけるスケーリングすなわち異物の堆積を防止する。
【0006】
この発明の制御要素の別の実施形態では、回転制御バルブには、バルブ本体と、このバルブ本体の内部で回転してバルブ本体を通る流体の流れを制御する制御要素とが備わっている。この制御要素には、バルブ本体の流れリングに着座し流体がバルブ本体を通るのを防止する表面領域がある。この制御要素は、第1表面に対して概ね退避しており、バルブ本体を通り、かつ、第1表面を横切る第2流路を作り出し、バルブが開放位置にあるとき、第1表面に沿うスケールすなわち物質の堆積を防止する第2表面を備える。
【0007】
この発明の制御要素の特徴構成は、新規なものと確信されており、また、特に添付される特許請求の範囲とともに記載される。この発明の制御要素は、添付図面に関連した以下の説明を参照することによって最もよく理解することができ、添付図面での同一の参照符号はいくつかの図において同一の要素を特定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の制御要素のさまざまな実施形態の構造および使用は以下に詳しく論じられるが、この発明の制御要素によれば、広範囲の特定状況において具体化することのできる多くの適用可能な発明概念がもたらされる、ということを認識すべきである。この明細書で論じられた特定の実施形態は、この制御要素を構成しかつ使用する特定の方法を単に例示するものであって、この制御要素の範囲を制限するものではない。
【0009】
さて、図1によれば、従来技術による流体制御バルブ10が描かれている。バルブ本体12には、制御シャフト16の軸の周りに回転することのできる制御要素14が内蔵されている。制御要素14の前面18は、流れリング22を用いて形成することのできる環状の座面20に摩擦係合あるいは密接係合している。流体制御バルブ10が開放位置にあるときには、流体は、上流側オリフィス26から流れリング22を通って下流側オリフィス28の中へ、矢印24で表示された方向に流れることができる。しかしながら、低速流あるいはよどみが領域30において発生することがある。その結果、制御要素14が開放位置にあるときには、領域30の中に置かれた制御要素14の前面18にスケール32が形成されやすい。スケール32は、流れリング22の環状座面20にわたる制御要素14の前面18の動きを阻害して、流体制御バルブ10を作動不能にするおそれがある。作動不能な流体制御バルブ10には、その流体制御バルブ10が補修されるかあるいは交換される間、停止される処理が必要である。予定外の保守管理のために処理を停止すると、大きい経済的損失が引き起こされるであろう。場合によっては、作動不能な流体制御バルブ10は、危険なあるいはまさに命にかかわる処理状態を引き起こすことがある。
【0010】
この発明の制御要素によれば、低速流あるいはよどみによって引き起こされたスケーリングが減少されるかあるいは取り除かれる。さて、図2に描かれたこの発明の制御要素の1実施形態に移ると、流体制御バルブ50には、制御要素54が内蔵されているバルブ本体52が備わっている。制御要素54は制御シャフト56の軸の周りに回転することができる。制御要素54の面58Aには、制御要素座面60と退避面62とがある。流体制御バルブ50が閉鎖位置にあるときには、制御要素座面60は、流れリング66の環状座面64に摩擦係合あるいは密接係合しており、流体制御バルブ50を通る流体の流れが実質的に減少されるかあるいは停止される。流体制御バルブ50が開放位置にあるときには、流体は、一次流路68に沿って、上流側オリフィス70から流れリング66を通って下流側オリフィス72の中へ一般に流れることができる。加えて、流体制御バルブ50が開放位置にあるときには、流体はさらに、二次流路74を通って、制御要素54の面58Aを越えて流れることもできる。
【0011】
制御要素54の面58Aを越える流体の流れは、スケール形成を助長する低速流あるいはよどみの領域を減少し、あるいは取り除くことができる。二次流路74を通る流体の流れは制御要素座面60および退避面62におけるスケール形成を効果的に防止し、あるいは減少する。従って、流体制御バルブ50では、従来のバルブと比較して補修までの時間が増大している。定期的なあるいは必要な補修までの時間が減少すると、処理効率が増大し、結局、操業費用が節約される。流体制御バルブ50はまた、面58Aにおけるスケール形成のために固まったり、捕獲されたりすることがほとんどない。従って、流体制御バルブ50は、従来のバルブよりも安全であり、またいっそう信頼性が高い。
【0012】
さて、図3〜図6に移ると、この発明の制御要素の1実施形態に係る制御要素54が描かれている。制御要素54は、熱処理鋼、セラミック、ポリマーなどから作ることができる。制御要素54はまた、当業者に明らかである他の材料から作ることもできる。制御要素54は、単一の材料片から成型し、機械加工してもよく、あるいは複数の材料から構成してもよい。
【0013】
図4に描かれているように、面58Aは例えば、別に構成しておき、次いで、溶接、ねじ、プレス嵌め、接着などによって制御要素54に取り付けることができる。面58Aは、摩耗しあるいは損傷した流体制御バルブ50の保守あるいは交換を促進するために、制御要素54から取り外すことのできるものであってもよい。制御要素54を通る1つ以上のねじ(図示略)により面58Aを制御要素54に取り付けてもよい。耳76が窓穴78を介して制御シャフト56と界接しており、制御シャフト56(図2に描かれている)がその軸に関して回転するときに、制御要素54が開放位置と閉鎖位置との間で動くようになっている。
【0014】
面58Aは、特定の処理あるいは用途により、制御要素54あるいは流れリング66とは異なる材料から作ることができる。例えば、制御要素54は熱処理鋼であってもよく、面58Aは、腐食性環境にいっそう耐えるように、流体制御バルブ50の作動が容易になるように、あるいは流れリング66の環状座面64と特定の密閉用界面をもたらすように、ポリマーであってもよい。
【0015】
制御要素座面60と流れリング66(図2に描かれている)の環状座面64との界面は特定の処理用途の要件に大きく左右される。流体制御バルブ50を通る流体の流れに粘着性の強いスケールが含まれている強い腐食性あるいは侵食性の流体が含有されているときには、制御要素座面60と環状座面64との間は緩い公差が望ましい。特定の用途において流体の流れを完全に停止することが必要なときには、制御要素座面60と環状座面64との間のいっそう厳しい公差を指定することができる。
【0016】
退避面62によれば、制御要素54が開放位置へ回転されたときに、流体が制御要素54の面58Aにわたって流れることができる。退避面62の形状は、特定の処理あるいは用途に応じて変えることができる。退避面62は、円形として描かれているが、楕円形であってもよく、あるいは制御要素54の面58Aを通って切削された溝であってさえよい。退避面62は、制御要素座面60に対して接線状のものであってもよく、あるいは、単一平面のほぼ内部にあってもよい。加えて、退避面62は、バルブ本体52の中心線と同軸であってもよく、その中心線からずれていてもよい。退避面62の他の形状は、流体力学の分野における当業者に明らかであろう。
【0017】
退避面62によれば適切な流れ速度が可能になり、制御要素54の回転についての約5度〜約85度の制御範囲でスケーリングを防止しあるいは減少することができる。退避面62が深すぎると、一次流路68に逆の流れ状態が生じることがある。退避面62が浅すぎると、二次流路74に沿った不十分な流れ速度によってスケール形成が引き起こされることがある。退避面62の理想的な寸法は、特定の処理あるいは用途についての所望の作動特性によって決定することができる。
【0018】
例えば、制御要素54の座面60には、面58の中心線と交差する制御シャフト56の軸における点から、およそ3.000−(0.001〜0.003)インチの球半径があってもよい。図2によれば、制御要素54が公称球半径3インチの環状座面64内で作動することを保証するために、寸法公差は最小直径の方へ寄せられている。退避面62には、面58Aの中心線と交差する制御シャフト56の軸における点から2.81インチの球半径を有していてもよい。座面60は、制御シャフト56の軸を通り、かつ、面58Aの中心線に対して垂直である平面から1.75インチに始まり、その平面から2.37インチに終わっている。
【0019】
図5に描かれたように、退避面63は、ほぼ平坦であって、制御シャフト56の軸によって画定された平面に対してほぼ平行であり、さらに面58Bの中心線に対して垂直であってもよい。ほぼ平坦な退避面63によれば、流体は管の中の流れに対して実質的に平行である通路に沿って流れることができ、それによって、バルブ構成要素および下流側の管(図示略)の衝撃侵食が減少する。退避面63は、第2流路74に沿った流体の流れが制御要素54の約5度の小さい回転角になるようなものであるのが好ましい。第2流路74を開放する回転の量は退避面63の直径あるいは幅の関数である。退避面63の直径あるいは幅によって、流れリング66の環状座面64に界接する制御要素座面60の範囲も決定される。従って、退避面63の直径あるいは幅は、流体制御バルブ50の必要な密閉特性および作動特性によって変えることができる。
【0020】
この制御要素54の別の実施形態では、強く付着するスケールにさらされたときに利点がもたらされる。先に説明したように、制御要素座面80と流れリング66(図2に描かれている)の環状座面64との界面は、特定の処理用途の要件によって変化する。流体制御バルブ50を通る流体の流れに、強く付着するスケールが含まれているときには、制御要素座面80と環状座面64との間は緩やかな公差が好ましい。これに対して、図6に描かれた実施形態では、バルブ構成要素の表面64,82,84における流れのよどみおよびスケールの堆積を抑制する流路を作り出すために、座面80の両側に配された2つの退避面82および84が使用されている。この実施形態によれば、強く付着するスケールの存在下において、制御要素座面80と環状座面64との間にいっそう厳しい公差がもたらされている。制御要素54の座面80には、面58C(図2に定義されたような)の中心線と交差する制御シャフト56の軸における点から、およそ3.000−(0.001〜0.003)インチの球半径があってもよい。さらに退避面82および84には、面58C(図2に定義されたような)の中心線と交差する制御シャフト56の軸における点から2.81インチの球半径があってもよい。
【0021】
この発明の制御要素については例示的実施形態を参照して説明してきたが、この説明は限定的な意味に解釈されることを意図するものではない。この発明の例示的実施形態のさまざまな修正および組み合わせは、この発明の制御要素の他の実施形態とともに、説明を参照する当業者にとって明らかであろう。従って、特許請求の範囲は、このような任意の修正あるいは実施形態を包含することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術に係る流体制御バルブの断面図である。
【図2】この発明の制御要素の1実施形態に係る流体制御バルブの断面図である。
【図3】この発明の制御要素の1実施形態に係る流体制御バルブの制御要素の一部断面平面図である。
【図4】この発明の制御要素の1実施形態に係る流体制御バルブの制御要素の断面立面図である。
【図5】この発明の1実施形態に係る流体制御バルブの制御要素の断面立面図である。
【図6】この発明の制御要素の別の実施形態に係る流体制御バルブの制御要素の一部断面平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御シャフトに取り付けることのできる少なくとも1つの耳と、
前記耳に取り付けられ、第1表面および第2表面を有し、第1表面がバルブ座面と略密閉可能であり、第2表面が第1表面から略退避している面と、を備える
回転制御バルブ用制御要素。
【請求項2】
前記第2表面が略球状であり、かつ、前記第1表面と略同心である、請求項1に記載の制御要素。
【請求項3】
前記第2表面が略単一面内にある、請求項1に記載の制御要素。
【請求項4】
前記耳および前記面が単一片から形成されている、請求項1に記載の制御要素。
【請求項5】
前記面が前記耳に取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載の制御要素。
【請求項6】
前記第1表面がポリマーである、請求項1に記載の制御要素。
【請求項7】
前記シャフトの軸に対して回転可能な第2の耳をさらに備える、請求項1に記載の制御要素。
【請求項8】
前記耳の端面が前記シャフトの軸に対して実質的に垂直である、請求項6に記載の制御要素。
【請求項9】
前記第1表面から略退避する第3表面を含み、前記第2表面の直径が前記第1表面の直径よりも小さく、かつ、該第3表面の直径がバルブ座面と略密閉可能な隆起環状表面を形成している前記第1表面の直径よりも大きい、請求項1に記載の制御要素。
【請求項10】
面に取り付けられた一対の耳と、
回転制御バルブ内部に密閉可能表面を形成す前記面の周縁周りの環状表面と、
制御要素が開放位置にあるときに、前記環状表面を越える流体の流れを促進するための前記面上にある退避面と、
を備えてなる回転制御バルブ用制御要素。
【請求項11】
前記退避面が前記面上に凸状部を有するくぼみである、請求項10に記載の制御要素。
【請求項12】
前記退避面が、略単一面内にある請求項10に記載の制御要素。
【請求項13】
第2退避面を含み、前記第1退避面の直径が前記環状表面の直径よりも小さく、かつ、第2退避面の直径が隆起密閉可能表面を形成している前記環状表面の直径よりも大きい、請求項10に記載の制御要素。
【請求項14】
バルブ本体と、
前記バルブ本体を通る流体の流れを制御するためにバルブ本体の内部で回転可能であり、バルブ本体と略密閉可能であってバルブ本体を通る流体の流れを略阻止する第1表面、および、前記第1表面から略退避し、バルブ本体を通る二次流路を作り出す第2表面を有している制御要素と、
を備えてなる回転制御バルブ。
【請求項15】
前記二次流路が前記制御要素の輪郭に略一致している、請求項14に記載の回転制御バルブ。
【請求項16】
流体は、前記制御要素が約5度を越えて回転されたときに、二次流路に沿って流れる、請求項14に記載の回転制御バルブ。
【請求項17】
前記第2表面が略球状である、請求項14に記載の回転制御バルブ。
【請求項18】
前記第2表面が略単一面内にある、請求項14に記載の回転制御バルブ。
【請求項19】
二次流路が前記第2表面に略一致している、請求項14に記載の回転制御バルブ。
【請求項20】
前記第1表面から略退避した第3表面を含み、前記第2表面の直径が第1表面の直径よりも小さく、かつ、第3表面の直径がバルブ座面と略密閉可能な隆起環状表面を形成している前記第1表面の直径よりも大きい、請求項14に記載の回転制御バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−521524(P2006−521524A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508625(P2006−508625)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/002047
【国際公開番号】WO2004/094880
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(591055436)フィッシャー コントロールズ インターナショナル リミテッド ライアビリティー カンパニー (183)
【Fターム(参考)】