説明

回転型電気部品

【課題】摺接部分の摩耗を低減して長寿命化を図ること。
【解決手段】互いに導通した導電部71a(72a)と非導電部71b(72b)とが交互に設けられた円弧状の切換パターン7cと当該切換パターン7cとは径方向にずれた領域に形成された導電性のコモンパターン7dとを有するケース7と、切換パターン7cと摺接する摺動接点9aと、コモンパターン7dと摺接する摺動接点9bとを備え、ケース7と摺動接点9a、9bとが相対的に回転移動する回転型電気部品100において、コモンパターン7dには、切換パターン7cの非導電部71b(72b)に対応して非導電部73bが導電部73aの間に形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型電気部品に関し、特に、回転する際にパルスコードを出力して回転角度や回転方向などを検知するエンコーダなどの回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに導通した導通部と非導通部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンを、同一円周上の周方向にずらして配設したコード板と、コード板上に対向して回転可能に配設され、第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備える回転型電気部品において、コード板に、第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上に環状のコモンパターンを形成する一方、複数の摺動子をそれぞれ第1及び第2のコードパターンとコモンパターンとに跨がるように摺接させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−12701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の回転型電気部品においては、コモンパターンが環状の金属材からなり、常時、摺動子がコモンパターン上を摺動する構成を有することから、摺動子とコモンパターンとの摺接部分が摩耗する事態が早期に現れ、部品自体の長寿命化が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、摺接部分の摩耗を低減して長寿命化を図ることができる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転型電気部品は、互いに導通した導電部と非導電部とが交互に設けられた円弧状の切換パターンと当該切換パターンとは径方向にずれた領域に形成された導電性のコモンパターンとを有するコード部材と、前記切換パターンと摺接する切換摺動接点と、前記コモンパターンと摺接するコモン摺動接点とを備え、前記コード部材と前記切換摺動接点及びコモン摺動接点とが相対的に回転移動する回転型電気部品であって、前記コモンパターンには、前記切換パターンの非導電部に対応して非導電部が導電部の間に形成されることを特徴とする。
【0007】
上記回転型電気部品によれば、コモンパターンに非導電部を設けたことから、コモン摺動接点が常時、コモンパターンの導電部上を摺動しているような利用態様を回避することができるので、コモン摺動接点とコモンパターンとの摺接部分の摩耗を低減することができ、回転型電気部品の長寿命化を図ることが可能となる。
【0008】
上記回転型電気部品においては、前記コモンパターンの非導電部の形成領域が、前記切換パターンの非導電部の形成領域の角度よりも小さく形成され、前記切換摺動接点が前記切換パターンの導電部と非導電部との境界部に位置するときに前記コモン摺動接点が前記コモンパターンの導電部と接触していることが好ましい。この場合、切換摺動接点が切換パターンの導通領域に入った時点でコモン摺動接点が既にコモンパターンの導通領域に入っていることから、切換摺動接点の切換パターンにおける導電部、非導電部に対する接触状態の切換え時において、コモン摺動接点のコモンパターンにおける導電部、非導電部に対する接触状態が切り換えられる事態を防止できるので、安定したパルス信号を確実に得ることが可能となる。
【0009】
特に、上記回転型電気部品においては、前記コモンパターンの非導電部の形成領域が、前記切換パターンの非導電部の形成領域の間の角度範囲内に形成されていることが好ましい。この場合には、切換摺動接点、コモン摺動接点の一部を構成する弾性腕部の長さを略同一の長さに設計することができるので、切換摺動接点、コモン摺動接点における切換パターン、コモンパターンに対する接点荷重を略同一になるように調整し易くすることが可能となる。
【0010】
また、上記回転型電気部品において、前記切換パターンが前記コモンパターンの外周側に形成されていることが好ましい。このようにパターンの精度が要求される切換パターンを、空間的に余裕がある外周側に設けているので、切換パターンと切換摺動接点との接触で得られるパルス出力の精度を高めることが可能となる。
【0011】
さらに、上記回転型電気部品において、前記切換パターンの導電部及び前記コモンパターンの導電部は、絶縁性樹脂に埋設された金属板で構成される一方、前記切換パターンの非導電部及び前記コモンパターンの非導電部は、前記金属板に形成された切り欠き部又は開口部から露出した前記絶縁性樹脂で構成され、前記切換パターンの非導電部と前記コモンパターンの非導電部とが径方向に互いに向き合って前記絶縁性樹脂が連続して設けられることが好ましい。この場合には、例えば、コード部材にインサート成形で金属板を埋設する際、コード部材の一部を構成する溶融樹脂の流れを良好なものにすることが可能となる。
【0012】
さらに、上記回転型電気部品において、前記切換摺動接点と前記コモン摺動接点とが同一の金属板で一体に形成された摺動子片に設けられると共に、前記摺動子片が回転する摺動子受けに設けられ、前記切換パターンは、同一円周上の異なる領域に絶縁状態で配置された第1相用のコードパターンと、第2相用のコードパターンとを備え、前記切換摺動接点と前記コモン摺動接点とが前記第1相用及び第2相用のコードパターンと前記コモンパターンとを跨ぐように前記摺動子片が前記コード部材に対向配置されることが好ましい。この場合には、第1相用、第2相用のコードパターンを切換パターンに設けると共に、これらコードパターンと、コモンパターンとの間を、同一の金属板で一体に形成された摺動子片により導通または非導通とさせることができるので、簡単な構成で位相の異なる第1相、第2相の検出信号を得ることが可能となる。
【0013】
さらに、上記回転型電気部品においては、前記コード部材及び摺動子受けを中空状に設けるようにしても良い。このようにコード部材及び摺動子受けを中空状に設けた場合には、1回転の移動距離が長い中空状の回転型電気部品においても、摺接部分の摩耗を低減して長寿命化を実現することが可能となる。
【0014】
なお、上記回転型電気部品においては、前記切換パターンの導電部と前記コモンパターンの導電部とが同一の金属板で一体に形成されると共に、前記コード部材が回転可能に設けられ、前記切換摺動接点は、互いに絶縁状態とされた第1相用の第1摺動接点と、第2相用の第2摺動接点とを備え、前記第1摺動接点と第2摺動接点とは前記切換パターンの同一円周上の異なる位置に配置され、前記コモン摺動接点は、前記コモンパターンに対向配置されるようにしても良い。この場合には、切換摺動接点に第1相用、第2相用の第1、第2摺動接点を設けると共に、これらの第1、第2摺動接点と、コモン摺動接点との間を、切換パターンの導電部とコモンパターンの導電部とを構成する同一の金属板を介して導通または非導通とさせることができるので、簡単な構成で位相の異なる第1相、第2相の検出信号を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コモンパターンに非導電部を設けたことから、コモン摺動接点が常時、コモンパターンの導電部上を摺動しているような利用態様を回避することができるので、コモン摺動接点とコモンパターンとの摺接部分の摩耗を低減することができ、回転型電気部品の長寿命化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る回転型電気部品の分解斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る回転型電気部品の外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る回転型電気部品の側断面図である。
【図4】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースの平面図である。
【図5】実施の形態1に係る回転型電気部品のケースに設けられた切換パターン及びコモンパターンの平面図である。
【図6】実施の形態1に係る回転型電気部品が押圧操作された場合の側断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る回転型電気部品の分解斜視図である。
【図8】実施の形態2に係る回転型電気部品の分解斜視図である。
【図9】実施の形態2に係る回転型電気部品の外観を示す斜視図である。
【図10】実施の形態2に係る回転型電気部品の回転体の平面図である。
【図11】実施の形態2に係る回転型電気部品の回転体に設けられた切換パターン及びコモンパターンの平面図である。
【図12】実施の形態2に係る回転型電気部品の回転体に設けられた切換パターン及びコモンパターンと、基台に設けられた摺動接点との位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る回転型電気部品100の分解斜視図である。図2は、実施の形態1に係る回転型電気部品100の外観を示す斜視図である。図3は、実施の形態1に係る回転型電気部品100の側断面図である。なお、以下においては、適宜、図1に示す右上方側を「回転型電気部品100の後方側」又は単に「後方側」と呼び、左下方側を「回転型電気部品100の前方側」又は単に「前方側」と呼ぶものとする。
【0018】
図1において、ハウジングの一部を構成するケース1は、例えば、絶縁性の合成樹脂材料(以下、「絶縁性樹脂」という)等で構成される。ケース1の中央には、前後方向に貫通した中空状の貫通孔1aが設けられている。貫通孔1aの外面側で前方側が略円筒状の軸受け部2を構成する一方、後方側の外面側には有底状で前方側が開口された環状の収納部1bが設けられている。収納部1bの底面には、後方側に凹形状とされた複数(本実施の形態では3つ)のスイッチ保持部1cが設けられている。それぞれのスイッチ保持部1cは、概して円形状を有しており、収納部1bの底面において等間隔に配置されている。スイッチ保持部1cの内底面には、導電性を有する金属板からなる中央固定接点及び外部固定接点が配設されている。これらの中央固定接点及び外部固定接点は、ケース1の製造過程でインサート成形等により収納部1bに設けられる。
【0019】
これらのスイッチ保持部1cには、導電性を有する薄板金属板からなる可動接点部材3が配設される。可動接点部材3は、スイッチ保持部1cよりも僅かに小径に設けられた円環形状の周縁部と、その中央に設けられた可動舌片とを有している。可動接点部材3は、周縁部をスイッチ保持部1cの外部固定接点に接触させると共に、可動舌片を中央固定接点に対向させた状態で配設される。この可動接点部材3の前方側に例えば、ラバーなどの弾性材料で形成された付勢部材4が配設される。付勢部材4は、概して前方側に膨出形成されたドーム形状を有しており、後述する操作軸6に対する押圧操作に応じて反転し、可動接点部材3の可動舌片を中央固定接点と接触させる一方、押圧操作から解放されると、弾性復帰して操作軸6を元の状態(初期状態)に戻す。
【0020】
押圧部材5は、例えば、絶縁性樹脂で形成され、概して円環形状を有している。押圧部材5には、中央に挿通孔5aが設けられている。この挿通孔5aにケース1の軸受け部2が挿通されることにより押圧部材5が収納部1b内に保持されるものとなっている。また、押圧部材5の所定位置には、複数(本実施の形態では3つ)の孔5bが設けられている。孔5bは、それぞれ等間隔に設けられ、上述した付勢部材4の前端部を収容して保持するように構成されている。このように孔5bで付勢部材4の前端部を保持することにより、後述する操作軸6に対する押圧操作に応じて確実に付勢部材4を押圧して反転させることができるものとなっている。
【0021】
操作軸6は、例えば、絶縁性樹脂で中空状の略円筒状に形成されており、やや太径の基台部6aと、この基台部6aの前端側にやや細径の軸部6bとを有している。また、基台部6aと軸部6bの中央には前後に貫通した中空状の挿通孔6cが設けられており、この挿通孔6cがケース1の軸受け部2の外周部に回転可能に保持されるものとなっている。軸部6bの外周面には、基台部6aから前方側に軸部6bの中央近傍まで延出する複数(本実施の形態では4つ)のガイド片6dが設けられている。これらのガイド片6dは、後述する回転体8の係合溝8bと係合し、装着時における回転体8をガイドするものである。また、軸部6bの外周面には、基台部6aから僅かに前方側に延出する複数(本実施の形態では4つ)の係合片6eが設けられている。これらの係合片6eは、後述する回転体8の凹部8cと係合し、操作軸6の回転を回転体8に伝達するものである。さらに、係合片6eの前方側には、一定距離を挟んで複数(本実施の形態では4つ)の爪部6fが設けられている。これらの爪部6fは、操作軸6に取り付けられる不図示の操作つまみ等の開口部と係合し、操作つまみ等を保持するものである。
【0022】
ハウジングの一部を構成するケース7は、コード部材として機能するものであり、例えば、絶縁性樹脂で形成されており、ケース1の収納部1bと略同一の外形を有し、ケース1の前方側に重ね合わされた状態で配設される。このケース7は、中空状の略円筒状に形成され、中央に大径の挿通孔7aを有し、この挿通孔7aの外側に有底状で前方側が開口された環状の収納部7bが設けられている。収納部7bの内底面には、例えば、導電性の金属板からなる切換パターン7c及びコモンパターン7dがインサート成形等により設けられている。また、ケース7の後方側には、この切換パターン7c及びコモンパターン7dから導出された外部端子7e〜7gが導出されている。なお、これらの切換パターン7c及びコモンパターン7dの構成については後述する。
【0023】
回転体8は、例えば、絶縁性樹脂で形成されており、概して円環形状を有している。回転体8には、中央に大径の開口部8aが形成され、この開口部8aに操作軸6が挿通されることにより操作軸6の後端部近傍に保持されるものとなっている。回転体8は、操作軸6に保持された状態において、後方側の面を収納部7bの前面に対向させた状態で、収納部7bに配置される。回転体8の開口部8aの内周面には、複数(本実施の形態では4つ)の係合溝8bと、複数(本実施の形態では4つ)の凹部8cとが設けられている。係合溝8bは、操作軸6のガイド片6dと係合するものであり、凹部8cは、操作軸6の係合片6eと係合するものである。これらの係合により、回転体8は、操作軸6とスプライン係合するように構成されている。また、回転体8の前方側の面には、円環状に複数の凹凸形状を有するカム溝8dが形成されている。このカム溝8dには、後述する板ばね10に保持されたローラ11が弾接することにより、回転体8が回転する際のクリック感触を生起させる複数のクリックカム8eが形成されている。
【0024】
また、回転体8の後方側の面には、導電性の薄板金属板から構成され、複数の摺動接点9a、9bを有する摺動子片9が設けられている。これらの摺動子片9は、熱カシメ等により回転体8の後面の所定位置に固定される。これらの摺動子片9の摺動接点9a、9bは、弾性腕部を有し、回転型電気部品100の後方側に延出するように設けられている。そして、回転体8がケース7の収納部7bに収納された状態において、その先端部が切換パターン7c及びコモンパターン7dと接触可能に構成されている。このように、回転体8は摺動子受けを構成しており、その後面には、複数(本実施の形態では2つ)の摺動子片9が等角度間隔で取り付けられている。
【0025】
板ばね10は、弾性を有する金属板(例えば、ステンレスやリン青銅等)からなり、概して半円弧形状を有し、その内周部分を対向させるように一対備えられている。板ばね10は、その後方側の面が回転体8のカム溝8dに対向する位置に配設され、それぞれの端部で後述する取付部材12の後面に固定される。取付部材12に固定された状態において、板ばね10の中央には、中空状の挿通孔10aが設けられている。また、それぞれの板ばね10における所定位置には、ローラ保持部10bが設けられている。ローラ保持部10bは、ローラ11が有するシャフト11aを回転可能に支持することで、ローラ11を回転可能に保持するものとなっている。
【0026】
取付部材12は、金属板を打ち抜き、折り曲げて形成されており、円環状の上板部12aと、この上板部12aから後方側に向けて垂直に延出する複数(本実施の形態では4つ)の係合脚片12bと、同じく上板部12aから後方側に向けて垂直に延出する複数(本実施の形態では6つ)の位置決め片12cとを有している。係合脚片12bの先端には、組み立てられた状態の回転型電気部品100において、ケース1の後面側に折り曲げられて取付部材12を固定する爪部が設けられている。位置決め片12cは、ケース1及びケース7の外周部に設けられた係合溝部と係合して取付部材12の位置決めを行うものとなっている。また、取付部材12には、中央に中空状の挿通孔12dが設けられている。挿通孔12dは、操作軸6の軸部6bよりも僅かに大径に設けられている。
【0027】
このような構成部品を有する回転型電気部品100を組み立てると、図2に示すように、ケース1の前方側にケース7が重ね合され、これらのケース1及びケース7で構成されるハウジングに操作軸6を収容した状態でケース7の前方側から取付部材12が取り付けられる。この場合において、操作軸6は、図3に示すように、ケース1の軸受け部2に回転可能に保持されると共に、その軸部6bの後端部近傍には、回転体8が一体的に回転可能に保持された状態となっている。また、操作軸6の軸部6bの先端は、取付部材12の挿通孔12dから前方側に向けて突出した状態となっており、この突出部分に不図示の操作つまみ等が取り付け可能に構成されている。
【0028】
ケース1の収納部1bには、可動接点部材3、付勢部材4及び押圧部材5が収容される一方、ケース7の収納部7bには、回転体8、摺動子片9、板ばね10及びローラ11が収容されている。回転体8に固着された摺動子片9は、その摺動接点9a、9bをケース7の収納部7bの内底面に設けられた切換パターン7c及びコモンパターン7dに接触可能な位置に配置されている。また、ローラ11は、取付部材12の後面に固定された板ばね10により回転体8のカム溝8dに押圧された状態となっている。このように組み立てられた状態において、操作軸6及び回転体8は、ハウジング(ケース1及びケース7)に対して回転可能に保持されるものとなっている。なお、回転体8の外周部は、図3に示すように、ケース7の収納部7bの内底面に設けられた環状の突状部(段部)に支持されており、同図に示す下方側に回転体8が移動することはない。
【0029】
ここで、実施の形態1に係る回転型電気部品100のケース7に設けられる切換パターン7c及びコモンパターン7dの構成について説明する。図4は、実施の形態1に係る回転型電気部品100のケース7の平面図である。図5は、実施の形態1に係る回転型電気部品100のケース7に設けられる切換パターン7c及びコモンパターン7dの平面図である。なお、図4においては、説明の便宜上、ケース7に設けられる切換パターン7c及びコモンパターン7dに摺接する摺動子片9を示している。
【0030】
切換パターン7c及びコモンパターン7dは、コード部材であるケース7の製造過程においてインサート成形され、図4に示すように、収納部7bの内底面に埋設されている。この場合において、コモンパターン7dは、挿通孔7aの周縁部に沿って配置されると共に、その一部(図5に示す上方側の一部)から外部端子7gが導出されている。一方、切換パターン7cは、コモンパターン7dの外周側の位置に配置されている。切換パターン7cは、互いに絶縁状態で配置されたA相(第1相)用のコードパターン71と、B相(第2相)用のコードパターン72とで構成され、それぞれの一部(図5に示す上方側の一部)から外部端子7e、7fが導出されている。実施の形態1において、これらの切換パターン7c及びコモンパターン7dは、ケース7にインサート成形された導電性の金属板で構成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、導電性粒子を混ぜ込んだ樹脂材料をケース7にプリントすることで構成するようにしても良い。
【0031】
A相用のコードパターン71と、B相用のコードパターン72とは、コモンパターン7dの外周側であって、同一円周上の異なる領域に配置され、左右対称に同一形状に設けられている。図5に示すように、コードパターン71は、概して円弧形状を有しており、その円弧に沿って互いに導通した導電部71aと、非導電部71bとが交互に設けられている。同様に、コードパターン72は、概して円弧形状を有し、その円弧に沿って互いに導通した導電部72aと、非導電部72bとが交互に設けられている。非導電部71b、72bは、それぞれ等間隔に設けられ、内側(すなわち、コモンパターン7d側)に開口した切り欠き部で構成されている。より具体的には、切換パターン7cに形成されたこれらの切り欠き部から露出する絶縁性樹脂により、非導電部71b、72bが構成されるものとなっている。
【0032】
一方、コモンパターン7dは、概して円環形状を有しており、その周方向に沿って互いに導通した導電部73aと、非導電部73bとが交互に設けられている。非導電部73bは、等間隔に設けられ、外側(すなわち、切換パターン7c側)に開口した切り欠き部で構成されている。より具体的には、非導電部71b、72bと同様に、コモンパターン7dに形成された切り欠き部から露出する絶縁性樹脂により、非導電部73bが構成されるものとなっている。また、非導電部73bは、切換パターン7cの非導電部71b、72bに対応する位置に設けられている。すなわち、コモンパターン7dの非導電部73bと、切換パターン7cの非導電部71b、72bとは、開口した部分を互いに向き合わせた状態で配置されている。この場合において、コモンパターン7dの非導電部73bの形成領域は、切換パターン7cの非導電部71b、72bの形成領域の角度よりも小さく形成されており、特に、切換パターン7cの非導電部71b、72bの形成領域の間の角度範囲内に形成されている(図5における点線部分Aを参照)。
【0033】
また、金属板で構成される導電部71a、72a、73aと、絶縁性樹脂で構成される非導電部71b、72b、73bとは面一となるように形成されている。なお、図5においては、便宜上、ケース7を構成する絶縁性樹脂が配置される切り欠き部に対応する部分に、非導電部71b、72b、73bの符号を付与している。
【0034】
図4に示すように、摺動子片9が有する摺動接点9a、9bは、それぞれ切換パターン7c、コモンパターン7dに摺接する位置に配置されている。より具体的には、摺動接点9aは、切換パターン7cを構成するコードパターン71における導電部71a、非導電部71b、並びに、コードパターン72における導電部72a、非導電部72bに摺接する位置に配置されている。一方、摺動接点9bは、コモンパターン7dにおける導電部73a、非導電部73bに摺接する位置に配置されている。すなわち、摺動接点9aは、切換パターン7cに摺接する切換摺動接点として機能し、摺動接点9bは、コモンパターン7dに摺接するコモン摺動接点として機能する。摺動接点9a、9bは、略同一の長さに設けられており、切換パターン7c及びコモンパターン7dとの関係において、摺動接点9aの摺接部が切換パターン7cの導電部71a(72a)と、非導電部71b(72b)との境界部に位置する時点で、摺動接点9bの摺接部がコモンパターン7dの導電部73aに既に接触した状態となるように設計されている。
【0035】
このような構成を有し、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、操作軸6に対する回転操作及び押圧操作を受け付ける。操作軸6に対して押圧操作が行われた場合には、付勢部材4の付勢力に抗して押圧部材5が、操作軸6の軸方向(回転型電気部品100の後方側)に押圧される。この場合、付勢部材4は、押圧部材5の押圧により反転し、その後方側に配置される可動接点部材3の可動舌片をスイッチ保持部1cの中央固定接点に接触させる。図6は、操作軸6に対して押圧操作が行われた場合の回転型電気部品100の側断面図である。図6に示すように、可動接点部材3の可動舌片がスイッチ保持部1cの中央固定接点に接触することにより、押圧操作が検出され、検出信号が外部出力されるものとなっている。
【0036】
一方、操作軸6に対して回転操作が行われると、これに伴って操作軸6に取り付けられた回転体8が回転し、その後面に固定された摺動子片9も一緒に回転する。この場合、摺動子片9は、その摺動接点9a、9bを、それぞれ切換パターン7c、コモンパターン7d上を摺動させながら回転する。摺動接点9aは、切換パターン7cを構成するコードパターン71における導電部71a、非導電部71b上を摺動すると共に、同じく切換パターン7cを構成するコードパターン72における導電部72a、非導電部72b上を摺動する。一方、摺動接点9bは、コモンパターン7dにおける導電部73a、非導電部73b上を摺動する。すなわち、摺動接点9a、9bは、それぞれ金属板で構成される導電領域と、絶縁性樹脂で構成される非導電領域とを交互に摺動するものとなっている。
【0037】
このように実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、コモンパターン7dに絶縁性樹脂からなる非導電部73bを設けたことから、摺動接点9bが常時、コモンパターン7dの導電領域上を摺動しているような利用態様を回避することができるので、摺動接点9bのコモンパターン7dとの摺接部分の摩耗を低減することができ、回転型電気部品の長寿命化を図ることができるものとなっている。
【0038】
また、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、コモンパターン7dの非導電部73bの形成領域を、切換パターン7cの非導電部71b、72bの形成領域の角度よりも小さく形成すると共に、摺動子片9を、摺動接点9aの摺接部が切換パターン7cの導電部71a(72a)と、非導電部71b(72b)との境界部に位置する時点で、摺動接点9bの摺接部がコモンパターン7dの導電部73aに既に接触した状態となるように構成している。これにより、摺動接点9aが切換パターン7cの導通領域(導電部71a、72a)に入るよりも先に摺動接点9bをコモンパターン7dの導通領域(導電部73a)に入るように構成することができる。この場合、摺動接点9aが切換パターン7cの導通領域に入った時点で摺動接点9bが既にコモンパターン7dの導通領域に入っていることから、摺動接点9aの切換パターン7cにおける導電部71a(72a)、非導電部71b(72b)に対する接触状態の切換え時において、摺動接点9bのコモンパターン7dにおける導電部73a、非導電部73bに対する接触状態が切り換えられる事態を防止できる。これにより、安定したパルス信号を確実に得ることができるものとなっている。
【0039】
特に、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、コモンパターン7dの非導電部73bの形成領域を、切換パターン7cの非導電部71b、72bの形成領域に含まれるように構成している。言い換えると、コモンパターン7dの非導電部73bの形成領域が、切換パターン7cの非導電部71b、72bの形成領域の間の角度範囲内に形成されるように構成している。これにより、摺動子片9が有する摺動接点9a、9bの一部を構成する弾性腕部の長さを略同一の長さに設計することができるので、摺動接点9a、9bにおける切換パターン7c、コモンパターン7dに対する接点荷重を同一になるように調整し易くできるものとなっている。
【0040】
また、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、ケース7の収納部7bにおいてコモンパターン7dの外周側に切換パターン7cを設けている。このようにパターンの精度が要求される切換パターン7cを、空間的に余裕がある外周側に設けているので、切換パターン7cと摺動接点9aとの接触で得られるパルス出力の精度を高めることができるものとなっている。
【0041】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100において、切換パターン7cの導電部71a、72a、並びに、コモンパターン7dの導電部73aは、絶縁性の樹脂材料に埋設された金属板で構成され、切換パターン7cの非導電部71b、72b、並びに、コモンパターン7dの非導電部73bは、金属板に形成された切り欠き部から露出した絶縁性樹脂で構成されている。そして、切換パターン7cの非導電部71b、72bと、コモンパターン7dの非導電部73bとを、互いに向き合うように設けている。これにより、ケース7にインサート成形で金属板を埋設する際、ケース7の一部を構成する溶融樹脂の流れを良好なものにできるものとなっている。
【0042】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、ケース7の収納部7bに、切換パターン7cとしてA相用のコードパターン71と、B相用のコードパターン72とを同一円周上の異なる領域に絶縁状態となるように設け、摺動接点9a、摺動接点9bがこれらのコードパターン71、72と、コモンパターン7dとに跨って対向配置されるように摺動子片9を配設している。これにより、A相用、B相用のコードパターン71、72を有する切換パターン7cと、コモンパターン7dとの間を、同一の金属板で一体に形成された摺動子片9により導通または非導通とさせることができるので、簡単な構成で位相の異なるA相、B相の検出信号を外部端子7e〜7gから得ることができるものとなっている。
【0043】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、操作軸6が中空状に設けられ、この操作軸6の軸部6bの周囲に配置されるケース7の収納部7bに切換パターン7c及びコモンパターン7dが設けられている。これにより、1回転の移動距離が長い中空状の回転型電気部品100においても、摺接部分の摩耗を低減して長寿命化を実現することができるものとなっている。
【0044】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、ケース7の収納部7bに設けられた切換パターン7c及びコモンパターン7dが固定され、これに摺接する摺動接点9a、9bを有する摺動子片9が操作軸6の回転に伴って回転するものとなっている。実施の形態2に係る回転型電気部品においては、摺動接点が固定され、これに摺接される切換パターン及びコモンパターンが操作軸の回転に伴って回転する点で実施の形態1に係る回転型電気部品100と異なる。
【0045】
図7及び図8は、本発明の実施の形態2に係る回転型電気部品200の分解斜視図である。図9は、実施の形態2に係る回転型電気部品200の外観を示す斜視図である。なお、以下においては、適宜、図7に示す右上方側を「回転電気部品200の後方側」又は単に「後方側」と呼び、左下方側を「回転電気部品200の前方側」又は単に「前方側」と呼ぶものとする。図8においては、実施の形態2に係る回転型電気部品200を後方側から示している。
【0046】
図7及び図8に示すように、実施の形態2に係る回転型電気部品200は、概して、貫通孔211を有する金属製の軸受け部材210と、この軸受け部材210の貫通孔211に回転可能に挿通される操作軸220と、切換パターン231及びコモンパターン232が形成され、操作軸220と共に回転するコード部材としての回転体230と、操作軸220を回転体230に連結する連結部材240と、回転体230の切換パターン231及びコモンパターン232に摺接する摺動接点251(251a、251b)、252が設けられると共に、プッシュスイッチの一部を構成する固定接点253が設けられた基台250と、固定接点253と共にプッシュスイッチの一部を構成する可動接点260と、軸受け部材210を基台250に取り付ける取付部材270とを含んで構成されている。
【0047】
軸受け部材210は、例えば、亜鉛ダイキャストで構成され、貫通孔211を有する筒状部212と、この筒状部212の後方側に設けられる矩形状のフランジ部213とを有している。フランジ部213の後方側の面には、貫通孔211の周囲に概して環状(円環状)の内面を有する凹部214が形成されている。また、フランジ部213の四隅のうち、対向する一対の隅部には、基台250の前面に設けられた係合穴と係合する係合片215が設けられている。さらに、フランジ部213の後面の所定位置には、一対の突出片216が設けられている。この突出片216は、回転体230の前面に設けられた凹凸部236と係脱してクリック感触を生起させる突出部217が設けられた板ばね218を固定するためのものである。板ばね218は、例えば、りん青銅で構成され、概して円環形状を有すると共に、突出部217を有する部分が後方側に僅かに折り曲げられた形状を有している。
【0048】
操作軸220は、例えば、絶縁性樹脂で成形され、その中央に大径部221が形成されると共に、その後方側端部に係合部222が形成されている。係合部222には、対向する一対の平面部222aが形成され、後述する連結部材240の係合孔243と係合するものとなっている。操作軸220における係合部222よりも前方側の位置には、軸受け部材210からの操作軸220の抜け止めのためのOリング280が固定される溝部223が形成されている。また、操作軸220の前方側端部には、不図示の操作つまみを固定するための固定面224が設けられている。
【0049】
回転体230は、例えば、絶縁性樹脂で成形され、概して円筒形状を有する円筒形状部233と、この円筒形状部233の後端部に設けられた円盤形状部234とを有している。円筒形状部233及び円盤形状部234の中央には、連結部材240の外形に対応した貫通孔235が設けられている。円盤形状部234の前面には、板ばね218の突出部217が係脱可能な凹凸部236が設けられている。上述した切換パターン231及びコモンパターン232は、円盤形状部234の後面に設けられている。なお、これらの切換パターン231及びコモンパターン232の構成については後述する。
【0050】
連結部材240は、例えば、絶縁性樹脂で成形され、概して円筒形状を有する円筒形状部241と、円筒形状部241の周面から外側に突出する一対の突出片242とを有している。回転体230の貫通孔235は、これらの円筒形状部241及び突出片242に対応した形状を有している。円筒形状部241の中央には、操作軸220の係合部222と係合可能な係合孔243が設けられている。操作軸220に行われた回転操作は、係合部222と係合孔243との圧入等による係合によって連結部材240に伝達され、突出片242と貫通孔235との係合によって回転体230に伝達されるものとなっている。
【0051】
基台250は、例えば、絶縁性樹脂で成形され、概して平板形状を有している。実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、2つの部材を重ね合わせて基台250を構成する場合について示しているが、これに限定されるものではない。基台250の前面には、概して円形状を有する凹部254が設けられ、更に凹部254の中央には、凹部254よりも小径の円形状を有する凹部255が設けられている。この凹部255の内底面には、上述した固定接点253を構成する中央固定接点253aと、この中央固定接点253aの外周に配置される複数の外周固定接点253bとが設けられている。基台250の側面には、これらの中央固定接点253a、外周固定接点253bに接続された外部端子253c、253dが導出されている。この凹部255の外周側であって、凹部254の所定位置には、上述した摺動接点251(251a、251b)、252が設けられている。なお、これらの摺動接点251a、251b、252の構成については後述する。基台250の側面には、これらの摺動接点251a、251b、252に接続された外部端子251c、251d、252aが導出されている。これらの摺動接点251a、251b、252、並びに、固定接点253は、互いに絶縁状態となるように、基台250の製造過程でインサート成形により基台250の所定位置に埋設されている。
【0052】
可動接点260は、導電性を有する金属材料で構成され、概して前方側に膨出形成された円盤形状を有している。可動接点260は、基台250の凹部255に配設され、その周縁部近傍が外周固定接点253bに接触すると共に、その中央部が中央固定接点253aと対向するように配置されている。可動接点260は、操作軸220に対して押圧操作が行われた場合に連結部材240を介して押圧され、一定以上の押圧力に応じて反転し、その中央部を中央固定接点253aと接触させる一方、押圧操作から解放されると、弾性復帰して操作軸220を元の状態(初期状態)に戻す。この可動接点260の前方側には、シール部材290が配設されている。このシール部材290は、可動接点260を基台250の凹部255内に固定する一方、固定接点253に埃などが侵入するのを防止する役割を果たすものである。
【0053】
取付部材270は、例えば、金属製の板状材料に打ち抜き加工を施すと共に、曲げ加工を施すことで形成される。取付部材270の前面部271には、軸受け部材210の筒状部212を前方側に露出させる開口部272が形成されている。取付部材270の側面部273は、前面部271の側端部から後方側に延出して設けられている。各側面部273には、その両端部に基台250の後面側で折り曲げられる一対の取付片274が設けられている。また、取付片274の中央には、回転型電気部品200が実装される基板への半田付け固定に使用される固定片275が設けられている。
【0054】
このような構成部品を有する回転型電気部品200を組み立てると、図9に示すように、軸受け部材210が基台250に重ねられた状態で取付部材270により取り付けられる。この場合において、軸受け部材210の筒状部212は、取付部材270の開口部272から前方側に突出した状態とされている。操作軸220の先端は、この筒状部212の貫通孔211から前方側に向けて突出した状態となっており、この操作軸220の固定面224に不図示の操作つまみ等が取り付け可能に構成されている。このように組み立てられた状態において、操作軸220は、基台250に対して回転可能に保持されるものとなっている。基台250の凹部254には、回転体230の円盤形状部234が収容されている。回転体230は、基台250に設けられた摺動接点251a、251b、252が、その後面に設けられた切換パターン231及びコモンパターン232に摺接可能な位置に配設されている。
【0055】
ここで、実施の形態2に係る回転型電気部品200の回転体230に設けられる切換パターン231及びコモンパターン232の構成について説明する。図10は、実施の形態2に係る回転型電気部品200の回転体230の平面図である。図11は、実施の形態2に係る回転型電気部品200の回転体230に設けられた切換パターン231及びコモンパターン232の平面図である。図12は、実施の形態2に係る回転型電気部品200の回転体230に設けられた切換パターン231及びコモンパターン232と、基台250に設けられた摺動接点251a、251b、252との位置関係を説明するための図である。なお、図10〜図12においては、回転型電気部品200の後方側から示している。
【0056】
切換パターン231及びコモンパターン232は、回転体230の製造過程においてインサート成形され、図10に示すように、円盤形状部234の後面に埋設されている。この場合において、コモンパターン232は、円盤形状部234の内周側の領域に設けられ、このコモンパターン232の外周側の領域に連続して切換パターン231が設けられている。図10においては、説明の便宜上、切換パターン231と、コモンパターン232との境界位置に一点鎖線を示している。実施の形態2において、これらの切換パターン231及びコモンパターン232は、回転体230にインサート成形された一枚の導電性の金属板で一体に構成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、導電性粒子を混ぜ込んだ樹脂材料を回転体230にプリントすることで構成するようにしても良い。
【0057】
切換パターン231は、概して円環形状を有しており、その周方向に沿って互いに導通した導電部231aと、非導電部231bとが交互に設けられている。非導電部231bは、等間隔に設けられた開口部で構成されている。より具体的には、切換パターン231に形成された開口部から露出する絶縁性樹脂により、非導電部231bが構成されるものとなっている。同様に、コモンパターン232は、概して円環形状を有しており、その周方向に沿って互いに導通した導電部232aと、非導電部232bとが交互に設けられている。非導電部232bは、等間隔に設けられた開口部で構成されている。より具体的には、コモンパターン232に形成された開口部から露出する絶縁性樹脂により、非導電部232bが構成されるものとなっている。ここで、同一の金属板で構成される導電部231a、232aと、絶縁性樹脂で構成される非導電部231b、232bとは面一となるように形成されている。なお、図11においては、説明の便宜上、回転体230を構成する絶縁性樹脂が配置される開口部に対応する部分に、非導電部231b、232bの符号を付与している。
【0058】
コモンパターン232の非導電部232bは、切換パターン231の非導電部231bに対応する位置に設けられている。これらの非導電部232bと、非導電部231bとは、連続した開口部で構成されている。この場合において、コモンパターン232の非導電部232bの形成領域(開口部の形成領域)は、切換パターン231の非導電部231bの形成領域(開口部の形成領域)の角度よりも小さく形成されており、特に、切換パターン231の非導電部231bの形成領域の間の角度範囲内に形成されている(図10における点線部分Bを参照)。
【0059】
図12に示すように、基台250に設けられた摺動接点251a、251bと、摺動接点252とは、平行に並んで延出するように配置されている。摺動接点251a、251bは、切換パターン231の同一円周上の異なる位置に摺接する位置に配置されており、摺動接点252は、摺動接点251a、251bのそれぞれの近傍でコモンパターン232に摺接する位置に一対配置されている。より具体的には、摺動接点251a、251bは、切換パターン231における導電部231a、非導電部231bに摺接する位置に配置されている。一方、摺動接点252は、コモンパターン232における導電部232a、非導電部232bに摺接する位置に配置されている。この場合において、摺動接点251a、251bにおける切換パターン231に接触する部分は、摺動接点252におけるコモンパターン232に接触する部分よりも僅かに延伸方向にずれた位置に配置されている。この場合、摺動接点251a、251bと、摺動接点252とは、切換パターン231及びコモンパターン232との関係において、摺動接点251a、251bの摺接部が切換パターン231の導電部231aと、非導電部231bとの境界部に位置する時点で、少なくとも一方の摺動接点252の摺接部がコモンパターン232の導電部232aに既に接触した状態となるように設計されている。実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、摺動接点251a及び摺動接点252と、摺動接点251b及び摺動接点252とにより、異なる2つの位相(A相、B相)の検出信号を得ることができるものとなっている。すなわち、摺動接点251aは、第1相用の第1摺動接点として機能し、摺動接点251bは、第2相用の第2摺動接点として機能する。
【0060】
このような構成を有し、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、操作軸220に対する回転操作及び押圧操作を受け付ける。操作軸220に対して押圧操作が行われた場合には、可動接点260の付勢力に抗して連結部材240が、操作軸220の軸方向に押圧される。この場合、可動接点260は、連結部材240の押圧により反転し、その後方側に配置される固定接点253の中央固定接点253aに接触する。このように、可動接点260の中央固定接点253aに接触することにより、押圧操作が検出され、検出信号が外部出力されるものとなっている。
【0061】
一方、操作軸220に対して回転操作が行われると、これに伴って操作軸220に係合した連結部材240が回転し、この連結部材240に係合した回転体230が回転する。この場合、回転体230は、その後面に設けられた切換パターン231及びコモンパターン232に、基台250に設けられた摺動接点251a、251b、252を摺接させながら回転する。より具体的には、切換パターン231における導電部231a、非導電部231bに摺動接点251a、251bを摺接させながら回転すると共に、コモンパターン232における導電部232a、非導電部232bに摺動接点252を摺接させながら回転する。すなわち、摺動接点251a、251b、252は、それぞれ金属板で構成される導電領域と、絶縁性樹脂で構成される非導電領域とを交互に摺動するものとなっている。
【0062】
このように実施の形態2に係る回転型電気部品200においても、実施の形態1に係る回転型電気部品100と同様に、コモンパターン232に絶縁性樹脂からなる非導電部232bを設けたことから、摺動接点252が常時、コモンパターン232の導電領域に摺接するような利用態様を回避することができるので、摺動接点252のコモンパターン232との摺接部分の摩耗を低減することができ、回転型電気部品の長寿命化を図ることができるものとなっている。
【0063】
また、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、コモンパターン232の非導電部232bの形成領域を、切換パターン231の非導電部231bの形成領域の角度よりも小さく形成すると共に、摺動接点251a、251bの摺接部が切換パターン231の導電部231aと、非導電部231bとの境界部に位置する時点で、摺動接点252の摺接部がコモンパターン232の導電部232aに既に接触した状態となるように構成している。これにより、摺動接点251a、251bが切換パターン231の導通領域(導電部231a)に入るよりも先に摺動接点252をコモンパターン232の導通領域(導電部232a)に入るように構成することができる。この場合、摺動接点251a、251bが切換パターン231の導通領域に入った時点で摺動接点252が既にコモンパターン232の導通領域に入っていることから、摺動接点251a、251bの切換パターン231における導電部231a、非導電部231bに対する接触状態の切換え時において、摺動接点252のコモンパターン232における導電部232a、非導電部232bに対する接触状態が切り換えられる事態を防止できる。これにより、安定したパルス信号を確実に得ることができるものとなっている。
【0064】
特に、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、コモンパターン232の非導電部232bの形成領域を、切換パターン231の非導電部231bの形成領域に含まれるように構成している。言い換えると、コモンパターン232の非導電部232bの形成領域を、切換パターン231の非導電部231bの間の角度範囲内に形成している。これにより、摺動接点251a、251b、252の一部を構成する弾性腕部の長さを略同一の長さに設計することができるので、摺動接点251a、251b、252における切換パターン231、コモンパターン232に対する接点荷重を同一になるように調整し易くできるものとなっている。
【0065】
また、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、回転体230の円盤形状部234の後面においてコモンパターン232の外周側に切換パターン231を設けている。このようにパターンの精度が要求される切換パターン231を空間的に余裕が存在する外周側に設けているので、切換パターン231と摺動接点251a、251bとの接触で得られるパルス出力の精度を高めることができるものとなっている。
【0066】
さらに、実施の形態2に係る回転型電気部品200において、切換パターン231の導電部231a、並びに、コモンパターン232の導電部232aは、絶縁性の樹脂材料で埋設された金属板で構成され、切換パターン231の非導電部231b、並びに、コモンパターン232の非導電部232bは、金属板に形成された切り欠き部(開口部)から露出した絶縁性樹脂で構成されている。そして、切換パターン231の非導電部231bと、コモンパターン232の非導電部232bとを連続して設けている。これにより、回転体230にインサート成形で金属板を埋設する際、回転体230の一部を構成する溶融樹脂の流れを良好なものにできるものとなっている。
【0067】
さらに、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、操作軸220の回転に応じて回転する回転体230に、同一の金属板で一体に形成された切換パターン231の導電部231a及びコモンパターン232の導電部232aを設ける一方、切換パターン231、コモンパターン232にそれぞれ摺接する摺動接点251a、251b、252を基台250に絶縁状態で固定して設けている。そして、摺動接点251a、251bをそれぞれA相用、B相用の摺動接点251a、251bとして利用している。この場合には、摺動接点251にA相用、B相用の摺動接点251a、251bを設けると共に、これらの摺動接点251a、251bと、摺動接点252との間を、切換パターン231の導電部231aとコモンパターン232の導電部232aとを構成する同一の金属板を介して導通または非導通とさせることができるので、簡単な構成で位相の異なるA相、B相の検出信号を外部端子251c、251d、252a側から得ることが可能となる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0069】
例えば、実施の形態1においては、切換パターン7cは、コモンパターン7dの外周側に配置された場合について説明しているが、これらの配置についてはこれに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、切換パターン7cをコモンパターン7dの内周側に配置するようにしても良い。このように構成しても、切換パターン7cとコモンパターン7dとを径方向にずれた領域に形成することが可能である。但し、上述したようなパルス出力の精度の向上、並びに、外部端子7e〜7gの導出を考慮すると、実施の形態1で説明したように、切換パターン7cを、コモンパターン7dの外周側に配置することは実施の形態として好ましい。
【符号の説明】
【0070】
100 回転型電気部品
1 ケース
1a 貫通孔
1b 収納部
1c スイッチ保持部
2 軸受け部
3 可動接点部材
4 付勢部材
5 押圧部材
5a 挿通孔
5b 孔
6 操作軸
6a 基台部
6b 軸部
6c 挿通孔
6d ガイド片
6e 係合片
6f 爪部
7 ケース(コード部材)
7a 挿通孔
7b 収納部
7c 切換パターン
7d コモンパターン
7e〜7g 外部端子
71 コードパターン
71a 導電部
71b 非導電部
72 コードパターン
72a 導電部
72b 非導電部
73a 導電部
73b 非導電部
8 回転体(摺動子受け)
8a 開口部
8b 係合溝
8c 凹部
8d カム溝
8e クリックカム
9 摺動子片
9a、9b 摺動接点
10 板ばね
10a 挿通孔
10b ローラ保持部
11 ローラ
11a シャフト
12 取付部材
12a 上板部
12b 係合脚片
12c 位置決め片
12d 挿通孔
200 回転型電気部品
210 軸受け部材
211 貫通孔
220 操作軸
230 回転体(コード部材)
231 切換パターン
231a 導電部
231b 非導電部
232 コモンパターン
232a 導電部
232b 非導電部
240 連結部材
250 基台
251a、251b、252 摺動接点
260 可動接点
270 取付部材
280 Oリング
290 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに導通した導電部と非導電部とが交互に設けられた円弧状の切換パターンと当該切換パターンとは径方向にずれた領域に形成された導電性のコモンパターンとを有するコード部材と、前記切換パターンと摺接する切換摺動接点と、前記コモンパターンと摺接するコモン摺動接点とを備え、前記コード部材と前記切換摺動接点及びコモン摺動接点とが相対的に回転移動する回転型電気部品であって、前記コモンパターンには、前記切換パターンの非導電部に対応して非導電部が導電部の間に形成されることを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
前記コモンパターンの非導電部の形成領域が、前記切換パターンの非導電部の形成領域の角度よりも小さく形成され、前記切換摺動接点が前記切換パターンの導電部と非導電部との境界部に位置するときに前記コモン摺動接点が前記コモンパターンの導電部と接触していることを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記コモンパターンの非導電部の形成領域が、前記切換パターンの非導電部の形成領域の間の角度範囲内に形成されていることを特徴とする請求項2記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記切換パターンが前記コモンパターンの外周側に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記切換パターンの導電部及び前記コモンパターンの導電部は、絶縁性樹脂に埋設された金属板で構成される一方、前記切換パターンの非導電部及び前記コモンパターンの非導電部は、前記金属板に形成された切り欠き部又は開口部から露出した前記絶縁性樹脂で構成され、前記切換パターンの非導電部と前記コモンパターンの非導電部とが径方向に互いに向き合って前記絶縁性樹脂が連続して設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項6】
前記切換摺動接点と前記コモン摺動接点とが同一の金属板で一体に形成された摺動子片に設けられると共に、前記摺動子片が回転する摺動子受けに設けられ、前記切換パターンは、同一円周上の異なる領域に絶縁状態で配置された第1相用のコードパターンと、第2相用のコードパターンとを備え、前記切換摺動接点と前記コモン摺動接点とが前記第1相用及び第2相用のコードパターンと前記コモンパターンとを跨ぐように前記摺動子片が前記コード部材に対向配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項7】
前記コード部材及び摺動子受けを中空状に設けたことを特徴とする請求項6記載の回転型電気部品。
【請求項8】
前記切換パターンの導電部と前記コモンパターンの導電部とが同一の金属板で一体に形成されると共に、前記コード部材が回転可能に設けられ、前記切換摺動接点は、互いに絶縁状態とされた第1相用の第1摺動接点と、第2相用の第2摺動接点とを備え、前記第1摺動接点と第2摺動接点とは前記切換パターンの同一円周上の異なる位置に配置され、前記コモン摺動接点は、前記コモンパターンに対向配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の回転型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−267439(P2010−267439A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116496(P2009−116496)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】