説明

回転塗布装置および回転塗布方法

【課題】被塗布物の目的の塗布面以外への塗布材の付着を確実に防止する。
【解決手段】ベース1に固定された軸受けハウジング2に、ベアリング4を介して中空軸3を回転自在に支持し、中空軸3の上端の吸着端3bに光学基材8の吸着面8bを真空吸着で固定して回転させ、塗布材22を塗布面8aに滴下して塗布する回転塗布装置Mにおいて、中空軸3に同軸な流体ガイド筒2aを設け、流体供給源10から流体配管11、流体供給穴2bを通じて中空軸3と流体ガイド筒2aの間隙gに流体12を供給し、流体ガイド筒2aの上端から光学基材8の吸着面8bの外縁部8cに吹き付けることで、塗布材22の飛沫の吸着面8bへの回り込みによる付着を確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、所望の液状物を対象物に均一に塗布する方法として、被塗布物に塗布材を滴下し、遠心力により被塗布物の表面に塗布膜を形成する回転塗布技術が知られている。
ところで、このような回転塗布では、被塗布物の外縁がから飛散する塗布材の飛沫が被塗布物の裏面側に回り込んで付着する場合がある。
【0003】
このように、被塗布物において、本来の塗布面とは反対側の裏面側に付着した塗布材は異物となって後工程の製品不良の一因となる懸念があり好ましくない。
そこで、この塗布材の裏面側への付着を防止すべく、被塗布物の高速回転や、塗布材の供給量の最適化等の対策が考えられるが、これらの対策だけでは、塗布材の裏面への進入および付着を確実に防ぐことは困難であった。
【0004】
なお、特許文献1には、ディスク基板に色素記録層を回転塗布によって形成するスピンコート装置において、ディスク基板の外周部に吸引口が開口するコーターカップの当該吸引口に、コーターカップの内壁面に衝突した飛沫が跳ね返ってディスク基板の塗布面に付着することを防止する円錐状の跳ね返り防止リングを配置し、回転塗布によってディスク基板の表面に形成された塗布膜の欠陥を防止しようとする技術が開示されている。
【0005】
しかし、この特許文献1の技術では、ディスク基板の塗布面側に対する飛沫の付着防止対策が開示されているのみであり、上述のような、ディスク基板の塗布面と反対側の裏面に対する飛沫の付着防止対策については言及がない。
【特許文献1】特開2006−66007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被塗布物の目的の塗布面以外への塗布材の付着を確実に防止することが可能な回転塗布技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、互いに表裏をなす第1および第2主面を備えた被塗布物の前記第1主面が載置される回転支持手段と、
前記第2主面の側に塗布材を供給する塗布材供給手段と、
前記第1主面の外縁部に流体を供給する流体供給手段と、
を含む回転塗布装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の観点は、互いに表裏をなす第1および第2主面を備えた被塗布物の前記第1主面を支持して回転させ、前記第2主面に塗布材を供給して塗布する回転塗布方法において、
前記第1主面の外縁部に流体を供給する回転塗布方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被塗布物の目的の塗布面以外への塗布材の付着を確実に防止することが可能な回転塗布技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施の形態の一態様では、被塗布物に塗布膜を均一に形成する回転塗布装置において、被塗布物が高速回転を行っている最中に、被塗布物の塗布材を塗布する塗布面と反対の裏面側に、エアブローを吹き当てる構成とした。
【0011】
この構成により、被塗布物の塗布材を塗布すべき塗布面のみに塗布膜を均一に形成し、反対側の裏面への塗布材の進入および付着を確実に防止することが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態である回転塗布方法を実施する回転塗布装置の構成の一例を示す略断面図であり、図2は、本実施の形態の回転塗布装置の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0013】
本実施の形態の回転塗布装置Mは、回転塗布装置Mの筐体に支持されるベース1に固定された軸受けハウジング2と、この軸受けハウジング2に対して複数のベアリング4を介して回転自在に同軸に支持された中空軸3(回転支持手段)を備えている。
【0014】
中空軸3の回転振れは、ベアリング4によって規正され、中空軸3は、振動等を生じることなく、高速回転が可能となっている。
中空軸3は、中央部に軸方向に吸着貫通穴3aが貫通して穿設され、この中空軸3の上端部の平坦な吸着端3bに対して、光学基材8(被塗布物)の吸着面8b(第1主面)が吸着貫通穴3aを利用した真空吸着等の方法で着脱自在に固定される。
【0015】
中空軸3の下端部には、プーリー3cが設けられている。
ベース1の下面側には、プーリー5を備えたモータ6が設けられている。このモータ6のプーリー5と、中空軸3の下端部に設けられたプーリー3cとの間には、ベルト7が架設されており、モータ6のトルクによって中空軸3が所望の速さで回転駆動される。モータ6による中空軸3の回転速度は可変である。
【0016】
中空軸3の上方には、塗布材供給部20に接続された塗布ノズル21(塗布材供給手段)の先端部が下向きに配置され、塗布材供給部20から供給される所望の塗布材22が、塗布ノズル21の先端から光学基材8の吸着面8bと反対側の塗布面8a(第2主面)に滴下供給される構成となっている。
【0017】
本実施の形態の場合、軸受けハウジング2の上面側には、中空軸3と所定の間隙gをなして同軸となるように流体ガイド筒2a(流体供給手段)が設けられている。
流体ガイド筒2aの上端部は、中空軸3の上端部よりも僅かに低く設定され、中空軸3と流体ガイド筒2aとの間隙gは、中空軸3の上端部に載置される光学基材8の吸着面8bの外縁部8cに臨む位置に全周にわたって開口している。
【0018】
この流体ガイド筒2aの側面には、流体供給穴2bが開口され、この流体供給穴2bには、流体配管11を介して流体供給源10(流体供給手段)が接続されている。
この流体供給源10は、たとえば圧搾空気等の流体12を、流体配管11および流体供給穴2bを通じて中空軸3と流体ガイド筒2aの間隙gに供給し、間隙gに供給される流体12は、流体ガイド筒2aの上部開口端の間隙gから光学基材8の外縁部8cに吸着面8bの側から全周にわたって吹き付けられる。
【0019】
すなわち、中空軸3と流体ガイド筒2aの間の間隙gは、光学基材8の外縁部8cに下側の吸着面8bの側から吹き付けられる流体12の通路となっている。
以下、本実施の形態の回転塗布装置Mの作用を説明する。
【0020】
まず、静止した中空軸3の上部の吸着端3bに光学基材8の吸着面8bを下側にして配置し、中空軸3の下端側から吸着貫通穴3aよりエアを吸引し光学基材8を真空吸着で固定する。この際、光学基材8の中心軸と中空軸3の軸は一致するように配置する。
【0021】
次に、モータ6により、中空軸3を所定の回転数で駆動し、中空ステージ軸3の吸着端3bに固定された光学基材8を回転させる。本実施の形態の場合、この中空軸3(すなわち光学基材8)の回転中は、流体供給源10から、流体配管11および流体供給穴2bを通じて間隙gに気体等の流体12の供給を行い、回転中の光学基材8の吸着面8bの外縁部8cに流体12の吹き付けによるエアブロー等を継続的に行う。
【0022】
この状態で、光学基材8の上部の塗布ノズル21から塗布材22を、当該光学基材8の塗布面8aの中央部に滴下する。
光学基材8の回転による遠心力で塗布面8aの塗布材22は広がり、光学基材8の塗布面8aの全体に均一に分散して塗られる。このとき、余剰の塗布材22は、光学基材8の外縁部8cから外部に飛散するが、本実施の形態の場合には、光学基材8の下部の吸着面8bの外縁部8cに開口する間隙gからのエアブロー等の流体12の吹き付けにより、塗布材22の飛沫は、流体12の流れに乗って光学基材8から遠ざかる方向に排除され、塗布材22の飛沫等の吸着面8bへの回り込みが確実に防止される。
【0023】
これにより、塗布材22の飛沫等が光学基材8の塗布面8aと反対側の吸着面8bに付着することを確実に防止できる。
この結果、塗布材22の飛沫が光学基材8の吸着面8bの側に回り込んで付着し、好ましくない異物となって、後工程等で光学基材8の製品不良の原因となることが防止され、光学基材8の製品歩留りを向上させることができる。
【0024】
このように、本実施の形態の回転塗布装置Mによれば、光学基材8等の被塗布物に塗布膜を均一に形成する回転塗布装置Mにおいて、光学基材8が高速回転を行っている最中に、光学基材8の塗布材22を塗布すべき塗布面8aの裏側の吸着面8bに、エアブロー等の流体12の流れを吹き当てる事により、光学基材8の塗布面8aの全体に、塗布材22の塗布膜を均一に形成できるとともに、塗布材22の吸着面8bへの進入および付着を防止できる。
【0025】
以上説明したように、本発明の上述の実施の形態によれば、被塗布物に塗布膜を均一に形成する回転塗布装置において、被塗布物が高速回転を行っている最中に、被塗布物の塗布材を塗布する塗布面の反対側の、被塗布物を吸着固定している裏面の外縁部にエアブロー等の流体を吹き当てる事により、被塗布物の塗布材を塗布する面全体に、塗布膜を均一に形成し、塗布材の裏面への進入や付着を防ぐことができる。
【0026】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、流体12としては、空気等の気体に限らず、液体でもよい。
[付記1]
被塗布物を吸着固定する手段と、被塗布物に塗布材を滴下する手段と、前記被塗布物を回転させる手段とを有するスピンナー塗布装置に於いて、前記被塗布物の吸着された面の外縁部にブローを行う手段を有することを特徴とするスピンナー塗布装置。
[付記2]
吸着固定された被塗布物に塗布材を滴下し、前記被塗布物の回転中に、前記被塗布物の吸着された面の外縁部にブローを行うことを特徴とするスピンナー塗布方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態である回転塗布方法を実施する回転塗布装置の構成の一例を示す略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である回転塗布装置の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ベース
2 軸受けハウジング
2a 流体ガイド筒
2b 流体供給穴
3 中空軸
3a 吸着貫通穴
3b 吸着端
3c プーリー
4 ベアリング
5 プーリー
6 モータ
7 ベルト
8 光学基材
8a 塗布面
8b 吸着面
8c 外縁部
10 流体供給源
11 流体配管
12 流体
20 塗布材供給部
21 塗布ノズル
22 塗布材
M 回転塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに表裏をなす第1および第2主面を備えた被塗布物の前記第1主面が載置される回転支持手段と、
前記第2主面の側に塗布材を供給する塗布材供給手段と、
前記第1主面の外縁部に流体を供給する流体供給手段と、
を含むことを特徴とする回転塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転塗布装置において、
前記回転支持手段は、一端に前記被塗布物の前記第1主面を吸着する中空軸からなり、
前記流体供給手段は、前記中空軸と同軸に設けられ、当該中空軸との間の間隙が前記被塗布物の前記第1主面の前記外縁部に開口する筒体と、
前記筒体の前記間隙に前記流体を供給する流体供給源と、
を含むことを特徴とする回転塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の回転塗布装置において、
前記被塗布物は、光学基材からなることを特徴とする回転塗布装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3記載のいずれか1項に記載の回転塗布装置において、
前記流体は空気であることを特徴とする回転塗布装置。
【請求項5】
互いに表裏をなす第1および第2主面を備えた被塗布物の前記第1主面を支持して回転させ、前記第2主面に塗布材を供給して塗布する回転塗布方法において、
前記第1主面の外縁部に流体を供給することを特徴とする回転塗布方法。
【請求項6】
請求項5記載の回転塗布方法において、
前記流体は空気であることを特徴とする回転塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−274000(P2009−274000A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126635(P2008−126635)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】