説明

回転式ガス処理装置のシール構造体及びシール方法

【課題】ロータ素子の端面の大小の凹凸の存在にかかわらず、簡易な構造で、ゾーン間シールと外シールを確実に行なうことができる回転式ガス処理装置のシール構造体及びシール方法を提供する。
【解決手段】回転式ガス処理装置において、ハニカム状のロータ素子1の外周部に、ロータ素子1と一体となるように金属フレーム2を取り付け、金属フレーム2のフランジ状の端面21に段差をつけて外輪面21aと内輪面21bが表れるようにすると共に、ロータ素子1の端面と金属フレーム3の内輪面を同一面とし、ロータ素子1の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレート3に、外輪面21aと摺動接触する環状の第1シール部材31と、内輪面21b及びロータ素子の端面11と摺動接触すると共に、ロータ素子の端面11をゾーン毎に画成する第2シール部材32を付設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥空気供給装置、不活性ガス除湿機及び有機溶剤吸着装置などとして使用される回転式ガス処理装置のシール構造体及びシール方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハニカム状のロータ素子の外周部に金属フレームを付設したロータ素子回転体と、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートとを備える回転式ガス処理装置は、各ゾーン間のガス漏れを防止するゾーン間シールと、各ゾーンと外気間のガス漏れを防止する外シールを安定して行うことが所定の効率を得るために重要な課題となっている。従来、これらのシール方法については、多くの技術が提案されている。
【0003】
特開2001−276551号公報には、回転可能なロータの端面に少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンとに画成するための回転型ガス吸着機のケーシングに固定された仕切り枠に前記ロータ端面と摺動可能に取着されたシール装置において、前記仕切り枠が、不燃材料から成るシール材をロータ端面に向けて摺動可能に該仕切り枠から平行に伸びる取付板との間で挟持しており、前記取付板が、連結部を介して前記仕切り枠に固定されており、前記シール材が、内部にシリンダ孔を有しかつ該シリンダ孔内に伸びる係止部を先端部分に備えると共にその後端部が前記連結部にネジ止めされたロッド部材により該ロッド部材に沿って移動可能に保持されており、更に、前記シール材と前記連結部との間に前記ロッド部材を囲繞するスプリングを介装して該シール材をロータ端面に向けて弾性偏倚している回転型ガス吸着機におけるシール装置が開示されている。この発明によれば、ロータ端面の平面性や垂直性に関わらず、各操作ゾーン間の密封性が大きく向上し、簡単な構造であるにも拘わらず廃ガス処理効率の低下を防ぎ、ロータの寿命を延ばすことができる、と言った効果が得られる。
【0004】
特開2007−7536号公報には、回転駆動され吸着剤を担持したハニカム状ロータを有し、前記ハニカム状ロータを少なくとも脱着ゾーンと吸着ゾーンとに分割するシールとして弾性を有し前記ハニカム状ロータに接する弾性シールと前記弾性シールより耐熱性の高い材料よりなる耐熱シールを設け、前記耐熱シールはラビリンス効果によって高温のガスが前記弾性シールへ行くことを阻止するよう互いに間隔を開けた複数の板状部材よりなり、前記弾性シールは前記耐熱シールより前記脱着ゾーンの外側に設けた回転式ガス吸着濃縮装置が開示されている。この発明によれば、脱着空気が高温シールを漏れても、弾性シールによって完全に漏れを止めることができる。また、弾性シールには直接高温の脱着空気が接することがないため、弾性シールは脱着空気の熱によって劣化することはない。
【0005】
また、特開2004−160444号公報は、乾燥空気供給装置及びその処理装置に関するものであり、ヒレ状のシール部材によりゾーン間をシールする方法、固定部材である周方向部材(ケーシング)には、ロータないし円筒体の端縁にフランジを有する場合、このフランジに押圧接触される環状のパッキン部材を付設してシールする方法が開示されている。また、この発明によれば、周方向部材とロータないし円筒体の端縁との間の気密性を確保することができる。
【特許文献1】特開2001−276551号公報(請求項1、図1〜図4)
【特許文献2】特開2007−7536号公報(請求項1、図1及び図2)
【特許文献3】特開2004−160444号公報(段落番号0030、図5及び図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2001−276551号公報や特開2007−7536号公報のシール構造では、ロータ端面の大きなうねりによる凹凸に対しては、各操作ゾーン間のシール性が高いものの、ロータ端面の小さな凹凸に対しては、各操作ゾーン間のシール性が十分ではなく、またシール構造が複雑で、装置のコストアップの要因ともなっている。また、特開2004−160444号公報のヒレ状のシール構造でも、前記と同様の問題がある。また、特開2004−160444号公報のフランジに環状のパッキン部材を付設してシールする方法では、ハニカム構造体と円筒体の接合部から不可避的に生じる接着剤の隆起部がシールの障害となり、パッキン部材の損傷などを発生させるという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、ロータ素子の端面の大小の凹凸の存在にかかわらず、また、ハニカム構造体と金属フレームの接合部の接着剤の影響を受けることなく、簡易な構造で、ゾーン間シールと外シールを確実に行なうことができる回転式ガス処理装置のシール構造体及びシール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願発明は従来の課題を解決するものであって、ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体となるように金属フレームを取り付け、該金属フレームのフランジ状の端面に段差をつけて外輪面と内輪面が表れるようにすると共に、該ロータ素子の端面と該金属フレームの内輪面を同一面とし、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートに、該外輪面と摺動接触する環状の第1シール部材と、該内輪面及び該ロータ素子の端面と摺動接触すると共に、該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する第2シール部材を付設したことを特徴とする回転式ガス処理装置のシール構造体を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体的且つ金属フレームのフランジ状の端面が該ロータ素子の端面より突出するように金属フレームを付設し、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートに、該金属フレームのフランジ状の端面と摺動接触する環状の第1シール部材と、該ロータ素子の端面と摺動接触すると共に、該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する第2シール部材を付設したことを特徴とする回転式ガス処理装置のシール構造体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体となるように金属フレームを取り付け、該金属フレームのフランジ状の端面に段差をつけて外輪面と内輪面が表れるようにすると共に、該ロータ素子の端面と該金属フレームの内輪面を同一面としたロータ素子回転体と、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートとのシール方法であって、該固定プレートに形成された環状で端面が平坦面の環状の第1シール部材と該金属フレームの外輪面とを摺動接触させ、該固定プレートに形成された該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する端面が平坦面の第2シール部材と該内輪面及び該ロータ素子の端面とを摺動接触させることを特徴とする回転式ガス処理装置のシール方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体的且つ金属フレームのフランジ状の端面が該ロータ素子の端面より突出するように金属フレームを付設したロータ素子回転体と、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートとのシール方法であって、該固定プレートに形成された環状で端面が平坦面の環状の第1シール部材と該金属フレームのフランジ状の端面とを摺動接触させ、該固定プレートに形成された該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する端面が平坦面の第2シール部材と該ロータ素子の端面とを摺動接触させることを特徴とする回転式ガス処理装置のシール方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属フレームの端面の段差を構成する外輪面と内輪面に、各々摺動接触する所定幅のシール材を固定フレームに取り付けたため、ゾーン間シール及び外シール共に、ロータ素子を通過するガスのシール面からの漏れを防止することができる。特に、外シールがシール位置が異なる2段シールとなるため、装置の気密性が一層高まる。また、本発明によれば、金属フレームの端面とロータ素子の端面に、各々摺動接触するシール材を取り付けたため、ロータ素子を通過するガスのシール面からの漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の第1の実施の形態における回転式ガス処理装置のシール構造体及びシール方法を図1〜図4を参照して説明する。図1は本例の回転式ガス処理装置のシール構造体(以下、単に「シール構造体」とも言う。)の一部の断面図、図2は本例のシール構造体の分解斜視図、図3は本例のシール構造体で使用する固定プレートの一部の拡大断面図、図4は本例のシール構造体で使用するロータ素子回転体の分解斜視図をそれぞれ示す。
【0014】
シール構造体10は、ハニカム状のロータ素子1の外周部に、ロータ素子1と一体となるように金属フレーム2を取り付け、金属フレーム2のフランジ状の端面21に段差をつけて外輪面21aと内輪面21bが表れるようにすると共に、ロータ素子1の端面11と金属フレーム2の内輪面21bを同一面とし、ロータ素子1の端面11を少なくとも吸着ゾーン35と再生ゾーン33に画成する固定プレート3に、外輪面21aと摺動接触する環状の第1シール部材31と、内輪面21b及びロータ素子1の端面11と摺動接触すると共に、ロータ素子1の端面11をゾーン毎に画成する第2シール部材32を付設したものである。
【0015】
本例のロータ素子回転体2Aは、ハニカム状のロータ素子1の外周部に、ロータ素子1と一体となるように金属フレーム2を取り付けたものである。図4に示すように、ハニカム状のロータ素子1は、円柱形状物であり、中心には連結棒5が通される貫通孔5aが、両端面側には円柱形状物を周方向に3分割すると共に、端面から軸方向の中心側に向けて所定幅、所定深さの3つの非貫通溝13がそれぞれ形成されている。非貫通溝13には、端面側金属フレーム22、24の板状スポーク25が嵌合する。非貫通溝13は、本例の3つに限定されず、4つ以上でもよい。非貫通溝13が2つであると、端面側金属フレーム22、24の円筒形状が維持できず偏心し易くなり、また多過ぎると、有効なハニカム内の処理領域が減少することになる。非貫通溝13の深さ(軸方向長さ)は、端面側金属フレーム22、24を取り付けた際、端面側金属フレーム22、24のボスの基端部26a、26bが互いに嵌合するために十分な寸法である。非貫通溝13で形成される3分割の領域は、吸着ゾーンや再生ゾーンのゾーン分割領域とは無関係のものである。ロータ素子1には、例えばゼオライトなどの吸着剤が担持される。
【0016】
端面側金属フレーム22、24は、円筒状物の端面をフランジ形状とし、該フランジ形状に段差をつけて環状で所定幅の平坦面である外輪面21aと、環状で所定幅の平坦面である外輪面21aより小径の内輪面21bが表れるようにし、外輪面21aと内輪面21bをシール部材の当接面としたものである。外輪面21aと内輪面21bは回転軸方向に垂直な面である。また、内径が最小の小円筒部28、すなわち円筒状本体部の内部は、3つの板状スポーク25とボス26により3等分された部屋が形成されている。小円筒部28の外周部には、周方向に所定のピッチで摩擦部材281が付設されている。この摩擦部材281はこの部分に巻きつけられる無端ベルトとの係合を向上させるものである。従って、無端ベルトと同じ例えばゴム材が使用できる。
【0017】
端面側金属フレーム24のボス26の基端側26aと端面側金属フレーム22のボス26の基端側26bは互いに差し込みにより嵌合する。すなわち、端面側金属フレーム24のボス26の基端側26aの内径は端面側金属フレーム22のボス26の基端側26bの外径と略同じかやや大きいものである。これにより、ロータ素子回転体2Aの骨格を簡易な方法で形成することができる。なお、ロータ素子1と端面側金属フレーム24の接合には、接着剤を使用してもよいが、ロータ素子1の端面11と端面側金属フレーム22、24の内輪面21bの境界部及びロータ素子1の端面11と板状スポーク25の境界部には接着剤が漏れないようにする。
【0018】
ロータ素子1の外周の中央部は、金属フレーム2のひとつである筒状金属フレーム23Aが付設される。筒状金属フレーム23Aは半円筒部材23を組み合わせたものであり、半円筒部材23と端面側金属フレーム22、24とはビス孔231を使用したビス止めとし、半円筒部材23とロータ素子1とは好適には接着剤接合である。これにより、ロータ素子1、端面側金属フレーム22、24及び円筒部材23が一体化されロータ素子回転体2Aを形成できる。ロータ素子回転体2Aは一端が回転駆動手段に巻かれ、他端が端面側金属フレーム24の摩擦部材281の位置に巻かれた無端ベルトにより、所定の回転速度で回転するようになっている。
【0019】
固定プレート3Aは、通常、回転式ガス処理装置のケーシングに固定され、ロータ素子1の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成するものであって、外輪面21aと摺動接触する環状で且つ平坦面の第1シール部材31と、内輪面21b及びロータ素子1の端面11と摺動接触すると共に、ロータ素子1の端面をゾーン毎に画成する平坦面の第2シール部材32を有する。なお、第1シール部材31と第2シール部材32を併せて、単に「シール部材」と言うこともある。
【0020】
第1シール部材31の環形状は、外輪面21の環形状と同一とすればよい。すなわち、第1シール部材31の内周の径は、外輪面21の内周の径と同一とし、第1シール部材31の外周の径は、外輪面21の外周の径と同一若しくはそれ以上とすればよい。これにより、外輪面21を第1シール部材31で覆うことができ、完全にシールすることができる。なお、第1シール部材31の外周形状は円形に限定されず、矩形状など円形以外の他の形状であってもよい。外輪面21が第1シール部材31で覆われていれば第1シール部材31の効果が得られるからである。
【0021】
第2シール部材32は、ロータ素子1の端面をゾーン毎に画成する仕切り機能とシール機能を有する。すなわち、第2シール部材32の側面視、すなわち回転軸方向から見る形状は、外周が円形状であって、その円形状内に、中心の小円形の貫通穴と、各ゾーンを形成する扇状の貫通穴を有する。具体的には、ゾーン間を区画する所定幅の矩形断面のゾーン間仕切り部321と、ゾーンと外気をシールする内輪部32の形状と同じ形状の大環状部323と、中心穴周りの小環状部322とからなる。ゾーン間仕切り部321、大環状部323及び小環状部322は高さが同じ面一である。大環状部323は内輪部32と摺動接触するのみで、ロータ素子1とは摺動接触しない。これにより、ゾーンと外気を確実にシールできる。
【0022】
ゾーン間仕切り部321の幅寸法wは、ロータ素子1の大きさにより一概に決定できないが、概ね10〜30mmである。wがこの範囲にあれば、ロータ素子に大小の凹凸が存在してもゾーン間シールを確実に行なうことができる。wが小さ過ぎるとゾーン間シールが不十分となり、大き過ぎるとゾーンを狭め有効処理領域が減少する。
【0023】
大環状部323の幅寸法wは、内輪部32の幅寸法と同じであるため内輪部32の幅寸法に影響されるが、概ね10〜30mmである。wがこの範囲にあれば、外シールを確実に行なうことができる。wが小さ過ぎると外シールが不十分となり、大き過ぎるとゾーンを狭めるか、あるいは装置が大きくなるだけで無駄が多くなる。
【0024】
固定プレート3Aは、例えば、中央に連結棒5が通る貫通孔が形成されたSUSなどの金属プレート3の一方の面に、シール部が形成されたものである。シール部としては、金属プレート3側に、フロロフレックス(登録商標)等の発泡フッ素系ゴム、シリコーンフォームなどを付設し(内層部)、更にその上の摺動接触部側に、耐熱シートを貼付したもの(摺動接触部)が挙げられる。フロロフレックスはふっ素ゴムを発泡させた独立気泡のシート状フォームであり、耐熱性、圧縮復元特性に優れ、加熱時の脱ガス成分が少なく、クリーンな環境が要求される装置が稼動する室内に乾燥空気を供給する場合に好適である。金属プレート3にシール部材を形成する方法としては、例えば段差のある所定形状の一体構造の内層部を金属プレート3に貼付し、その後第1シール部材31及び第2シール部材32に相当する位置にそれぞれ外層部を形成する方法、あるいは所定幅と所定厚みの環状の第1シール部材31と、第1シール部材31より厚みのある各ゾーンに画成された所定形状の第2シール部材32を別々に金属プレート3に貼付する方法等が挙げられる。
【0025】
耐熱シートとしては、200℃以上の温度に耐える耐熱性を有するものであり、例えばPTFEの樹脂シートが挙げられる。第1シール部材31及び第2シール部材32の摺動接触部に耐熱シートを使用すれば、再生ゾーンに300℃以上の高温の脱着空気が流れてもシール部分で滑らかな摺動を実現でき、摺動時に発生する粒子を低減することができる。
【0026】
第1シール部材31及び第2シール部材32は、耐熱性及び耐磨耗性を有すると共に、所定硬さを有する。耐熱性は少なくとも200℃の使用温度に十分に耐え得る特性である。
【0027】
本実施の形態におけるシール構造体10は、ロータ素子回転体2Aの両端に、固定プレート3Aを嵌め込み、中心の貫通孔27に連結棒5を通して両端をボルト6締めして形成される(図1及び図2参照)。ロータ素子回転体2Aと固定プレート3Aは圧縮荷重が0.01〜0.2MPaとなるように締め付けられる。これにより、ロータ素子回転体2Aの円滑な回転と確実なシールを発現することができる。
【0028】
シール構造体10のシール方法は、ロータ素子回転体2Aと固定プレート3Aとのシールであって、固定プレート3Aに形成された環状で端面が平坦面の第1シール部材31と金属フレーム2の外輪面21aとを摺動接触させ、固定プレート3Aに形成されたロータ素子1の端面11をゾーン毎に画成する端面が平坦面の第2シール部材32と内輪面21b及びロータ素子1の端面11とを摺動接触させる方法である。
【0029】
シール構造体10及びそのシール方法によれば、ロータ素子の端面の大小の凹凸の存在にかかわらず、また、ハニカム構造体と金属フレームの接合部の段差などの影響を受けることなく、簡易な構造で、ゾーン間シールと外シールを確実に行なうことができる。特に、外シールがシール位置が異なる2段シールとなるため、装置の気密性が一層高まる。
【0030】
回転式ガス処理装置は、シール構造体10の他、被処理ガス供給手段、被処理ガス供給配管、処理ガス流出配管、再生ガス供給配管、再生ガス流出配管、ケーシング、ロータ素子回転体回転手段など公知の機器類が設置される。なお、本例の回転式ガス処理装置が不活性ガス除湿機の場合、各ゾーンは除湿ゾーン、再生ゾーン及び冷却ゾーンである。
【0031】
除湿機などの回転式ガス処理装置は、公知の方法で使用される。すなわち、除湿ゾーン35には送風機から供給される被処理空気が通過し、水分や有機物質が除去されて、除湿ゾーン出口から乾燥空気が得られる。また、冷却ゾーン34には再生空気が供給され、当該ゾーンのロータ素子部を冷却する。また、冷却ゾーン34を出た再生空気は加熱後、再生ゾーン33に供給され、当該ゾーンのロータ素子部の水分と有機物質を除去した後、当該ゾーンから排出する。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態におけるシール構造体を図5〜図7を参照して説明する。図5〜図7において、同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図5〜図7のシール構造体10aにおいて、図1〜図4のシール構造体10と異なる点は、端面側金属フレーム24のフランジの端面形状を段差の無い外輪面のみとしたものである。
【0033】
すなわち、シール構造体10aは、ハニカム状のロータ素子1の外周部に、ロータ素子1と一体的且つ円筒状金属フレーム2aの端面21がロータ素子1の端面11より突出するように円筒状金属フレーム2aを付設し、ロータ素子1の端面11を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレート3Bに、円筒状金属フレーム2aの端面21と摺動接触する環状の第1シール部材31と、ロータ素子1の端面11と摺動接触すると共に、該ロータ素子1の端面11をゾーン毎に画成する第2シール部材32を付設したものである。
【0034】
本例のロータ素子回転体2Bにおいて、ハニカム状のロータ素子1は、ロータ素子回転体2Aのものと同じである。
【0035】
端面側金属フレーム22a、24aは、円筒状物の端面(フランジ面)21を第1シール部材31の当接面としたものである。円筒状物の端面21は回転軸方向に垂直な面である。また、板状スポーク25の幅寸法(軸方向の長さ)は円筒状物28aの幅寸法より小であり、且つ円筒状物の軸方向の端面21が、板状スポーク25の外側端251より突出するように円筒状物28aと板状スポーク25は接合している。そして、円筒状物28aの内部は、3つの板状スポーク25と貫通穴27が形成されたボス26により3等分された部屋が形成されている。
【0036】
端面側金属フレーム24aのボス26の基端側26aと端面側金属フレーム22aのボス26の基端側26bが互いに嵌合することはシール構造体10と同様である。また、ロータ素子1の外周の中央部に付設される筒状金属フレームの形状や構造もシール構造体10のものと同様である。
【0037】
固定プレート3Bは、通常、回転式ガス処理装置のケーシングに固定され、ロータ素子1の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成するものであって、円筒状金属フレーム2aの端面21と摺動接触する環状で且つ平坦面の第1シール部材31と、ロータ素子1の端面11と摺動接触すると共に、ロータ素子1の端面をゾーン毎に画成する平坦面の第2シール部材32を有している。
【0038】
第1シール部材31の環形状は、シール構造体10のものと同様である。第2シール部材32は、ロータ素子1の端面をゾーン毎に画成する仕切り機能とシール機能を有する。すなわち、第2シール部材32の側面視、すなわち回転軸方向から見る形状は、外周が円形状であって、その円形状内に、中心の小円形の貫通穴と、各ゾーンを形成する扇状の貫通穴を有する。具体的には、ゾーン間を区画する所定幅の矩形断面のゾーン間仕切り部321と、ロータ素子1の外周縁部に摺動接触する大環状部323と、中心穴周りの小環状部322とからなる。これにより、ゾーンと外気を確実にシールできる。
なお、大環状部323は省略することができる。この場合、ゾーン間仕切り部321の先端部が円筒状金属フレーム2aの内周面に当接するようにする。
【0039】
ゾーン間仕切り部321の幅寸法wは、シール構造体10のものと同様である。また、大環状部323の幅寸法wは、小さくてもよく、概ね10〜30mmである。wが大き過ぎるとロータ素子の有効処理領域が減少する。
【0040】
固定プレート3B及び金属プレート3aの構造、シール部の材料、構造あるいは特性、耐熱シート、シール構造体10aの組み付け方法は、シール構造体10のものと同様である。
【0041】
シール構造体10aのシール方法は、ロータ素子回転体2Bと固定プレート3Bのシールであって、固定プレート3Bに形成された環状で端面が平坦面21の第1シール部材31と金属フレーム2aの端面21とを摺動接触させ、固定フレーム3Bに形成されたロータ素子1の端面11をゾーン毎に画成する端面が平坦面の第2シール部材32とロータ素子1の端面11とを摺動接触させるものである。
【0042】
シール構造体10a及びそのシール方法によれば、ロータ素子の端面の大小の凹凸の存在にかかわらず、また、ハニカム構造体と金属フレームの接合部の段差などの影響を受けることなく、簡易な構造で、ゾーン間シールと外シールを確実に行なうことができる。
【0043】
本発明のシール構造体において、ロータ素子回転体2Aは、上記形態に限定されず、例えば端面側金属フレーム22、24と円筒部材23の一体化物にロータ素子を組み付けるもの、板状スポークに代えて棒状のスポークを使用したもの、軸部や板状スポークが省略されたものなど種々の形態のものが使用できる。端面側金属フレーム22、24と円筒部材23の一体化物の一例としては、端面側金属フレーム22、24と円筒部材23の一体化物において端面側金属フレーム22、24の軸部や板状スポークが省略された中空部材が挙げられる。この場合、中空部材の中空部にロータ素子を嵌め込み、中空部材とロータ素子を接着剤などで接合すればよい。
【0044】
本発明において、回転式ガス処理装置が、ロータ素子回転体を直列に2個接続し、前段のロータ素子回転体の処理ガス流出側と後段のロータ素子回転体の被処理ガス供給側を接続する中間シールを用いる場合、中間シール構造体は、本発明のシール構造体と同様の形状及び構造であればよい。すなわち、中間シール構造体で用いる金属プレートの他方の面にも前記同様の第1シール部材と第2シール部材が形成されたもの、すなわち金属プレートの両面にシール部材が形成されたものが使用できる。
【0045】
図1のシール構造体の変形例を図7に示す。図7において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図7において、図1と異なる点は内輪面21bを外輪面21aより外側に突出させ、更に固定プレート3Aの第1シール部材31を第2シール部材32より金属プレート3とは反対側に突出させて、金属フレーム2の形状に対応させたものである。この変形例においても、図1のシール構造体と同様の効果を奏する。
【0046】
本発明は、前記第1シール部材と第2シール部材を独立の部材としたことを特徴とする請求項1又は2記載の回転式ガス処理装置のシール構造体を提供するものである。
【0047】
また、本発明は、前記第1シール部材と第2シール部材の摺動接触部には、耐熱性の樹脂シートを付設したことを特徴とする請求項1又は2記載の回転式ガス処理装置のシール構造体を提供するものである。
【0048】
また、本発明は、前記第1シール部材と第2シール部材を独立の部材としたことを特徴とする請求項3又は4記載の回転式ガス処理装置のシール方法を提供するものである。
【0049】
また、本発明は、前記第1シール部材と第2シール部材の摺動接触部には、耐熱性の樹脂シートを付設したことを特徴とする請求項3又は4記載の回転式ガス処理装置のシール方法を提供するものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
乾燥空気供給装置、不活性ガス除湿機及び有機溶剤吸着装置などとして使用される回転式ガス処理装置に本発明のシール構造体を使用すれば、ゾーン間シールと外シールを異なる位置のシール材で安定したシールができ、ガスの処理効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施の形態例のシール構造体の一部の断面図である。
【図2】本例のシール構造体の分解斜視図である。
【図3】本例のシール構造体で使用する固定プレートの一部の拡大断面図である。
【図4】本例のシール構造体で使用するロータ素子回転体の分解斜視図である。
【図5】第2の実施の形態例のシール構造体の一部の断面図である。
【図6】本例のシール構造体の分解斜視図である。
【図7】図1のシール構造体の変形例である。
【符号の説明】
【0052】
1 ハニカム状のロータ素子
2、2a 金属フレーム
2A ロータ素子回転体
3 固定プレート
5 連結棒
5a 貫通孔
10、10a シール構造体
13 非貫通溝
21a 外輪面
21b 内輪面
22、24 端面側金属フレーム
25 板状スポーク
26a、26b ボスの基端部
33 再生ゾーン
35 吸着ゾーン
281 摩擦部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体となるように金属フレームを取り付け、該金属フレームのフランジ状の端面に段差をつけて外輪面と内輪面が表れるようにすると共に、該ロータ素子の端面と該金属フレームの内輪面を同一面とし、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートに、該外輪面と摺動接触する環状の第1シール部材と、該内輪面及び該ロータ素子の端面と摺動接触すると共に、該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する第2シール部材を付設したことを特徴とする回転式ガス処理装置のシール構造体。
【請求項2】
ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体的且つ金属フレームのフランジ状の端面が該ロータ素子の端面より突出するように金属フレームを付設し、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートに、該金属フレームのフランジ状の端面と摺動接触する環状の第1シール部材と、該ロータ素子の端面と摺動接触すると共に、該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する第2シール部材を付設したことを特徴とする回転式ガス処理装置のシール構造体。
【請求項3】
ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体となるように金属フレームを取り付け、該金属フレームのフランジ状の端面に段差をつけて外輪面と内輪面が表れるようにすると共に、該ロータ素子の端面と該金属フレームの内輪面を同一面としたロータ素子回転体と、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートとのシール方法であって、該固定プレートに形成された環状で端面が平坦面の第1シール部材と該金属フレームの外輪面とを摺動接触させ、該固定プレートに形成された該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する端面が平坦面の第2シール部材と該内輪面及び該ロータ素子の端面とを摺動接触させることを特徴とする回転式ガス処理装置のシール方法。
【請求項4】
ハニカム状のロータ素子の外周部に、該ロータ素子と一体的且つ金属フレームのフランジ状の端面が該ロータ素子の端面より突出するように金属フレームを付設したロータ素子回転体と、該ロータ素子の端面を少なくとも吸着ゾーンと再生ゾーンに画成する固定プレートとのシール方法であって、該固定プレートに形成された環状で端面が平坦面の第1シール部材と該金属フレームのフランジ状の端面とを摺動接触させ、該固定プレートに形成された該ロータ素子の端面をゾーン毎に画成する端面が平坦面の第2シール部材と該ロータ素子の端面とを摺動接触させることを特徴とする回転式ガス処理装置のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−202081(P2009−202081A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45758(P2008−45758)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】