説明

回転式入力装置及び電子機器

【課題】摺動部材と駆動部との間のすべりなどによる異音の発生を抑制することのできる回転式入力装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】操作者の回転操作を受けて、軸周りに回転可能な回転子13と、回転子13に固定され、回転子の回転に連動して回転するロータ15と、ロータ15と接触し、このロータ15を介して回転子13に回転力を付与する超音波モータ16と、回転子13を回転自在に支持する支持台18と、回転子13とロータ15とを固定する第1の接着層14と、超音波モータ16と支持台18とを固定する第2の接着層17と、を備える回転式入力装置10において、第1の接着層14と第2の接着層17のうち、少なくとも一方は振動吸収材料からなる基材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式入力装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯端末機やAV機器、パーソナルコンピュータ等の電子機器に採用され、回転子に回転操作することによって入力操作を行う回転式入力装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
回転式入力装置は、摺動部材の備えられた回転子と、回転子に回転力を付与する駆動部と、を備えており、駆動部が駆動すると、回転子の摺動部材と駆動部表面との間の摩擦力により回転子に駆動トルク(回転力)が伝達されて回転子が回転するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−319326号公報
【特許文献2】特開2005−128739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような回転式入力装置は、駆動部が駆動した際に、駆動部の振動による複数の部材の接触のため異音が発生するという問題があった。
具体的には、操作者の押下による振動子と相対運動部材との間の接触圧の急激な変化、温度変化、起動時や停止時の駆動トルクの変動、などにより、振動子と相対運動部材との間に生じるすべりによる異音、及び振動子の振動が回転子や駆動部に伝わり共振することにより発生する異音の発生を防ぎきれないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、摺動部材と駆動部との間のすべりなどによる異音の発生を抑制することのできる回転式入力装置及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る回転式入力装置は、
操作者の回転操作を受けて、軸周りに回転可能な回転子と、
前記回転子に固定され、前記回転子の回転に連動して回転する摺動部材と、
前記摺動部材と接触し、前記摺動部材を介して前記回転子に回転力を付与する駆動部と、
前記回転子を回転自在に支持する支持台と、
前記回転子と前記摺動部材とを固定する第1の接着層と、
前記駆動部と前記支持台とを固定する第2の接着層と、
を備える回転式入力装置において、
前記第1の接着層と前記第2の接着層のうち、少なくとも一方は振動吸収材料からなる基材を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転式入力装置において、
前記基材は、アクリルフォーム、不織布、ニトリルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、の何れかにより構成されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の回転式入力装置において、
前記駆動部は、振動子の共振を利用する振動波モータであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明に係る回転式入力装置は、
操作者の回転操作を受けて、軸周りに回転可能な回転子と、
前記回転子に固定され、前記回転子の回転に連動して回転する摺動部材と、
前記摺動部材と接触し、前記摺動部材を介して前記回転子に回転力を付与する駆動部と、
前記回転子を回転自在に支持する支持台と、
前記回転子と前記摺動部材とを固定する第1の接着層と、
前記駆動部と前記支持台とを固定する第2の接着層と、
を備える回転式入力装置において、
前記第1の接着層及び前記第2の接着層は振動吸収材料からなる基材を備え、
前記基材は、アクリルフォーム、不織布、ニトリルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、の何れかにより構成され、
前記駆動部は、振動子の共振を利用する振動波モータであり、
前記第2の接着層は、前記駆動部のうち前記振動子が設けられる位置と異なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明に係る電子機器は、
請求項1〜4の何れか一項に記載の回転式入力装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の接着層と第2の接着層のうち、少なくとも一方は振動吸収材料からなる基材を備えているため、摺動部材と駆動部との間の接触圧に変化があった場合などに生じる摺動部材と駆動部との間のすべりによる振動を基材が吸収できることとなって、異音の発生を低減することができる。また、振動子の振動が回転子や超音波モータに伝わり共振することにより発生する異音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した本実施形態の回転式入力装置を備える携帯電話機の斜視図である。
【図2】本実施形態の携帯電話機の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の回転式入力装置の外観斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】本実施形態の回転式入力装置の分解図である。
【図6】第1接着層及び第2接着層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、図示例に限定されない。
本実施形態では、本発明に係る回転式入力装置を備える電子機器として、無線通信によって音声通話を行う携帯電話機を例示して説明することとする。
なお、以下の説明では、本実施形態の携帯電話機1において、回転式入力装置10や表示画面Gが配置された側を前側、回転式入力装置10や表示画面Gが配置された側と対向する側を後側とする。そして、表示画面Gが配置された側を上側、回転式入力装置10が配置された側を下側とし、前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を左右方向とする。
【0014】
また、本実施形態では、回転式入力装置10により携帯電話機1に各種の操作入力が行われる。例えば回転式入力装置10の回転子13を回転操作した場合、この回転操作に応じて表示画面Gに表示された画面が選択切替されたりスクロールされたりする。また、この回転操作による回転子13の回転角度に応じて回転子13に回転力が付与され、操作者に力覚が呈示される。
ここで、「力覚」とは、単なる振動による触覚ではなく、回転子を回転させるときに指にかかる重さの感覚をいう。具体的には、回転が軽いと感じたり、重いと感じたりする感覚のことをいう。より具体的には、例えば、回転子13を3〜6msec或いは1〜5度で、且つ0.05Ncm以上の力で回転させる場合に指にかかる感覚をいう。
【0015】
携帯電話機1は、例えば、図1及び図2に示すように、操作者が入力操作を行うための回転式入力装置10と、この回転式入力装置10によって操作される携帯電話機ユニット30と、携帯電話機1を統括制御するメイン制御部40と、を備えて構成される。
【0016】
まず、本実施形態の回転式入力装置10について説明する。
回転式入力装置10は、例えば、図2〜図5に示すように、操作者が手動で回転させることが可能な回転子13と、回転子13の後側に設けられ、回転子13を回転自在に支持する支持台18と、を備えており、全体が略円盤形状を成している。
【0017】
回転子13は、中央に開口部131aを有する円形状の前面部131と、前面部131の縁部から全周に亘って後方に向かって突出する周面部132と、を備えており、支持台18の前側を覆う位置に設けられることで、回転式入力装置10の前面及び周面を成している。
前面部131は、操作者が回転操作を行うための操作面となっており、操作者は、前面部131の一点を指先で押えながら或いは周面部132を摘んで、回転子13を回転させることで、携帯電話機ユニット30に対する入力操作を行う。
回転子13は、例えばアルミニウム等の放熱性のある材料、外部からの衝撃に対する耐性が強い材料によって形成されていてもよいし、樹脂などによって形成されていてもよい。
【0018】
支持台18は、ベース181と、このベース181に連結されたPCB基板182と、を備えており、回転子13の後側の開口を覆う位置に設けられることで、回転式入力装置10の後面を成している。
【0019】
ベース181は、中央が開口した略ドーナツ盤状の台座部1811と、台座部1811の周縁部から外側に向かって延出する4つの延出部1812と、を備えている。
各延出部1812には、ネジ取り付け用のネジ孔1812aと、ネジ孔1812aよりも外側の後面に後方に向かって延出する突起1812bと、が設けられている。
ベース181は、例えばポリカーボネート等の材料により形成されている。
【0020】
PCB基板182は、回転子13と略同一の外径を有する平板円環状を成しており、略中央の開口部182aには、ベース181の台座部1811が嵌め込まれて取り付けられている。また、PCB基板182には、ベース181の各延出部1812の後面に突設された突起1812bを取り付けるための取付孔182bが、各突起1812bに対応して4つ設けられている。そして、ベース181の台座部1811をPCB基板182の開口部182aに取り付けるとともに、ベース181の各突起1812bをPCB基板182の各取付孔182bに嵌入させることによって、PCB基板182とベース181とが一体的に連結されている。
【0021】
また、PCB基板182には、ベース181のネジ孔1812aと重なり合う位置に、ネジ孔1812aよりもやや径の大きい孔部182cが、各ネジ孔1812aに対応して4つ設けられており、PCB基板182の後方側からPCB基板182の孔部182cを介してベース181のネジ孔1812aに、ネジ19が螺合されることによって、PCB基板182とベース181とが固定されている。
また、PCB基板182の後面側には、回転子13に対する軸方向(前後方向)圧力を検知する圧力検知手段としての4つの感圧センサ20が配置されている。
【0022】
さらに、回転子13の前面部131の開口部131aの内周面には、ベアリング12が配設され、このベアリング12の中央の貫通孔12aには、回転子13の回転軸となるビス11が挿通されて設けられている。そして、回転子13の前方側から、ビス11をベアリング12の貫通孔12aに挿入し、さらに、後方に突出したビス11の後端部を、ベース181が備える台座部1811の中央の開口1811aの内周面に形成された雌ネジに螺嵌させることによって、ビス11と支持台18とが固定されている。これにより、支持台18に対して回転子13がビス11周りに回転自在に連結されている。
【0023】
回転子13の前面部131の内面(後面)には、コードホイール133固着されている。コードホイール133は、コードホイール133の中心が回転子13の中心と一致するように配置され、回転子13の回転に連動して回転する。コードホイール133の後面には、光を反射させる反射面が、A相、B相の2つの検出パターンで周方向に沿って所定のピッチで印刷されている。
【0024】
コードホイール133の内周側には、例えば高分子ポリエチレン等の材料により形成されており、平板円環状を成したロータ(摺動部材)15が配設されている。
ロータ15は、ステータ161(後述)と回転子13とにより挟まれる位置に配設され、ロータ15の中心が回転子13の中心と一致するように配置された状態で、平板円環状の第1の接着層14によって回転子13に固定されており、回転子13の回転に連動して回転する。すなわち、ロータ15の前面は、回転子13の前面部131の後面に接着された第1の接着層14の後面に接着されており、そして、ロータ15は、その後面が、ステータ161の凸部と接触している。ロータ15の後面は摩擦係数が高くなっており、その後面に接触するステータ161の振動により発生する進行波の向きと反対方向に回転するようになっている。
【0025】
第1の接着層14は、図6に示すように、薄膜状の基材141の両面に接着剤142、142が塗布されて構成されている。
基材141は、例えば、アクリルフォーム、不織布、ニトリルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、等を好適に用いることができる。第1の接着層14は、このような基材141を備えた構成であるため、振動吸収材料として、回転子13の起動時や停止時におけるロータ15とステータ161のすべりによる振動を吸収するようになっている。すなわち、第1の接着層14により振動が吸収されるため、起動時や停止時において発生する異音が抑制されるようになっている。
接着剤142は、例えば、ホットメルト接着剤、熱可塑性樹脂、エポキシ接着剤、光硬化型接着剤などの一般に使用されている低温接着剤等を用いることができる。
第1の接着層14の厚さは、装置全体の寸法に応じて適宜設定されるものであるが、本実施形態においては、第1の接着層14は、0.25mmに設定されている。
【0026】
また、回転子13と支持台18との間には空間が形成され、この空間には、コードホイール133の回転角変位を検出するフォトインタラプタ183と、回転子13に回転力を付与する駆動部としての超音波モータ16と、回転式入力装置10を統括制御する制御部21と、メイン制御部40との間で各種信号の送受信を行う入出力部22と、等が配設されている。
【0027】
フォトインタラプタ183は、LED等の発光素子1831と、フォトIC等の受光素子1832と、から構成される反射型フォトインタラプタであり、PCB基板182の前面上のコードホイール133に対向する位置に搭載され、制御部21と接続している。
受光素子1832は、少なくとも2つの受光面を有し、互いに90度の位相差を有するA相、B相の検出信号を出力するようになっている。
フォトインタラプタ183は、発光素子1831がコードホイール133に向けて発した光の反射光を受光素子1832で受光してカウントすることで、回転子13の回転量及び回転方向を検出し、当該検出結果を制御部21に出力する。制御部21は、フォトインタラプタ183からの検出結果を、入出力部22を介してメイン制御部40に出力し、そして、メイン制御部40において、当該検出結果に基づいて、回転子13の回転角度が特定される。
なお、フォトインタラプタ183は、コードホイール133と共に回転検出部を構成する。
【0028】
超音波モータ16は、例えば、振動子としての圧電素子162と、リング状のステータ(振動体)161と、等から構成され、制御部21からの制御信号に従って駆動して、回転子13を軸周りに回転させる。
【0029】
ステータ161は、ベース181が備える台座部1811の前面に形成されたリング状の凹部1811bに嵌入され、平板円環状の第2の接着層17によってベース181に固定されている。
ここで、第2の接着層17は、超音波モータ16のうち圧電素子162が設けられる位置よりも内側の位置に設けられているため、圧電素子162の振動を妨げることなく(超音波モータ16の駆動トルクを落とすことなく)、回転子13とロータ15との間のすべりによる振動を吸収できるようになっている。
第2の接着層17は、図6に示すように、薄膜状の基材171の両面に接着剤172、172が塗布されて構成されている。なお、第2の接着層17の材質や厚さ等の構成については、第1の接着層14と同様であるため、その説明を省略する。
【0030】
ステータ161の前部には、周方向に沿って配設された複数の凸部が備わり、ステータ161の後面には、電圧(駆動信号)の印加に応じて振動エネルギーを発生させる複数の圧電素子162が、ステータ161の周方向に沿って配置されている。
また、ステータ161の前面には、ロータ15が接触するように配置される。
【0031】
圧電素子162は、制御部21と接続しており、制御部21から圧電素子162に所定の駆動信号に基づく駆動電圧が印加されると、圧電素子162の超音波振動によってステータ161全体が振動して進行波がロータ15に伝達され、ロータ15が回転する。そして、このロータ15の回転力が回転子13に伝達されることによって、回転子13が回転するようになっている。さらに、圧電素子162に印加する駆動電圧の駆動周波数を制御することによって、圧電素子162の超音波振動による回転子13の回転力の大きさや回転方向を自在に設定できるようになっている。
【0032】
感圧センサ20は、PCB基板182の後面の上側、下側、左側及び右側の4箇所それぞれに固着され、制御部21と接続されている。この4つの感圧センサ20は、回転子13の軸周りにおいて等間隔に配置されている。
各感圧センサ20は、回転子13が軸方向(前後方向)に押圧されたことを検知し、当該検知結果を制御部21に出力する。
制御部21は、感圧センサ20からの検知結果を、入出力部22を介してメイン制御部40に出力する。そして、メイン制御部40において、当該検知結果に基づいて、回転子13の押圧された位置が特定され、当該回転子13の押圧された位置における押圧力が算出される。
なお、感圧センサ20としては、例えば、抵抗膜式、拡散式、成膜式、静電容量式、機械式等の感圧センサを用いることができる。
また、本実施形態では4つの感圧センサ20を備えた構成について説明したが、感圧センサ20の数は、4つに限ることはなく、2つ以上であれば任意である。
【0033】
また、上述の回転子13、コードホイール133、ロータ15は、回転中心軸がそれぞれ同軸となる位置に配設されており、支持台18に固定された回転軸としてのビス11周りに回転されるようになっている。
【0034】
制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、(何れも図示省略。)等を備えて構成されている。
制御部21は、入出力部22を介してメイン制御部40と接続しており、回転式入力装置10を構成する各部から入力された信号を、メイン制御部40に出力すると共に、メイン制御部40から入力される制御信号に従って、回転式入力装置10を構成する各部の動作を集中制御する。
【0035】
具体的には、制御部21は、回転検出部としてのフォトインタラプタ183と接続しており、入出力部22を介してメイン制御部40から入力される制御信号に従って、フォトインタラプタ183の発光素子1831に光を発光するよう指示し、フォトインタラプタ183の受光素子1832から入力される検出結果(検出信号)を、入出力部22を介してメイン制御部40に出力する。これにより、メイン制御部40において、回転子13の回転角度が特定される。
また、制御部21は、超音波モータ16と接続しており、入出力部22を介してメイン制御部40から入力される制御信号に従って、超音波モータ16の圧電素子162に所定の駆動信号を出力する。これにより、回転子13が軸周りに回転する。
また、制御部21は、感圧センサ20と接続しており、感圧センサ20から入力される検知結果(検知信号)を、入出力部22を介してメイン制御部40に出力する。これにより、メイン制御部40において、回転子13の押圧された位置と、回転子13が押圧された際の押圧力と、が特定される。
【0036】
入出力部22は、メイン制御部40と接続され、回転式入力装置10を構成する各部から入力された信号をメイン制御部40に出力する一方、メイン制御部40から入力される制御信号を制御部21に出力する。
具体的には、入出力部22は、フォトインタラプタ183から出力される回転量や回転方向に基づいて、制御部21において検出された回転子13の回転位置(回転角度)を示す信号を、携帯電話機ユニット30側に送信する。また、入出力部22は、PCB基板182の後側に配設された4つの各感圧センサ20から出力される検出値に基づいて、制御部21において検出された回転子13の回転操作における押圧力及び押圧位置を示す信号を、携帯電話機ユニット30側に送信する。
なお、フォトインタラプタ183や各感圧センサ20から出力される信号を、A/D変換せずに、アナログ信号のまま携帯電話機ユニット30側に送信するように構成されていても良い。
【0037】
次に、本実施形態に係る携帯電話機ユニット30について説明する。
携帯電話機ユニット30は、図2に示すように、アンテナ(図示省略)を備え、外部機器との間で無線信号を送受信する通信部31と、操作者が第三者と通話を行う通話部32と、表示画面G上に各種画面を表示させる表示部33と、携帯電話機1全体を統括制御するメイン制御部40と、を備えて構成される。
なお、外部機器との間で無線信号による通話機能を実現するための通信部31や通話部32は、公知の技術を用いるため、詳しい説明は省略する。
【0038】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示画面Gを備えて構成され、メイン制御部40からの指示にしたがって、表示画面Gに各種画面を表示させる。
表示画面Gに表示された各種画面は、操作者による回転子13の回転操作に応じて切替えられる。例えば、表示画面Gに複数のサムネイル画面が表示されている場合、操作者により回転子13の前面部131が回転操作されると、当該回転操作に応じて、表示画面Gに表示されたサムネイル画面が順次切り替え選択される。
【0039】
メイン制御部40は、メインCPU401、RAM402、ROM403等を備えて構成され、回転式入力装置10の制御部21と接続されている。メイン制御部40は、回転式入力装置10から送られてくる入力操作信号に基づいて、携帯電話機ユニット30の各部を制御する。
【0040】
メインCPU401は、携帯電話機ユニット30および回転式入力装置10の各部から入力された入力信号に応じて、ROM403に格納された処理プログラム等を読み出してRAMに展開して実行し、各部に制御信号を出力することにより、回転式入力装置全体の制御を行う。
【0041】
RAM402は、メインCPU401により実行される各種プログラムを展開するプログラム格納領域や、入力データやこれらの処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等を格納するデータ格納領域を備え、CPUのワークエリアとして用いられる。
【0042】
ROM403は、処理プログラムやデータ等を予め記憶しており、例えば、回転検出プログラム、力覚呈示プログラム、(何れも図示せず)等の各種処理プログラムを格納している。
【0043】
回転検出プログラムは、例えば、メインCPU401に、回転子13の回転位置(回転角度)を検出する機能を実現させるプログラムである。具体的には、メインCPU401は、回転検出プログラムを実行することにより、操作者が回転子13に対して回転操作を行った場合に、回転子13の回転量及び回転方向をフォトインタラプタ183により検出し、当該検出結果に基づいて、回転子13の回転角度を特定する。
【0044】
力覚呈示プログラムは、例えば、メインCPU401に、回転子13を操作する操作者に力覚を呈示する機能を実現させるプログラムである。具体的には、メインCPU401は、回転検出プログラムの実行によって回転子13の回転位置(回転角度)が検出された場合、力覚呈示プログラムを実行することにより、超音波モータ16により回転子13に回転力を付与して、当該回転子13を操作する操作者に力覚を呈示する。
【0045】
なお、本実施形態における回転式入力装置10は、上述のフォトインタラプタ183、超音波モータ16、感圧センサ20、制御部21、入出力部22、メイン制御部40によって構成されている。
【0046】
また、制御部21は、超音波モータ16と接続しており、入出力部22を介してメイン制御部40から入力される制御信号に従って、超音波モータ16の圧電素子162に所定の駆動信号を出力する。これにより、回転子13が軸周りに回転する。
【0047】
次に、本実施形態の携帯電話機1及び回転式入力装置10の作用について説明する。
まず、操作者が回転式入力装置10の回転子13を回転操作することで、携帯電話機1に各種の入力操作が行われ、表示部33の表示画面Gに表示された画面が選択切替される。
また、回転操作による回転子13の回転角度に応じて回転子13に回転力が付与され、操作者に力覚が呈示される。
このとき、操作者の回転子13に対する押圧や、温度変化や、起動時や停止時の駆動トルク(付加される回転力)の変動、などに起因して、ロータ15と超音波モータ16との間の接触圧に変化が生じる。具体的には、操作者が回転子13に対して押圧を加えた場合や、起動時や停止時の駆動トルク(付加される回転力)が変動する場合、回転子13に加わる前後方向の力と、回転子13の回転方向の慣性力が一定にならず、ロータ15と超音波モータ16との間にすべりが生じる。
本実施形態の携帯電話機1及び回転式入力装置10は、振動吸収材料からなる基材141、171を備えた第1の接着層14と第2の接着層17により、上記ロータ15と超音波モータ16とのすべりなどに因る振動を吸収する。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、第1の接着層14と第2の接着層17が振動吸収材料からなる基材141、171を備えているため、ロータ15と超音波モータ16との間のすべりが生じた場合に当該すべりに起因した振動を吸収でき、異音の発生を低減することができる。また、圧電素子162の振動が回転子13や超音波モータ16に伝わり共振することにより発生する異音の発生を低減することができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、第1の接着層14、及び第2の接着層17の両者とも、振動吸収材料からなる基材141、171を備えた構成を例示して説明したが、第1の接着層14、第2の接着層17のうちどうちらか一方のみが振動吸収材料からなる基材を備えた構成であっても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、回転子13に回転力を付与する駆動部として超音波モータ16を例示したが、駆動部は、共振を利用する振動波モータであれば如何なる構成であっても良い。例えば、リニア型、回転型、定在波型、進行波型、等の振動波モータを用いることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、本発明に係る回転式入力装置を備える電子機器として携帯電話機を例示したが、本発明の回転式入力装置は携帯電話機に限られることなく、回転式入力装置による入力操作を行うことができる限り如何なる電子機器にも適用することができる。例えば、携帯型オーディオプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistance)等の他の携帯型端末装置や、テレビジョン受像機等のAV機器、パーソナルコンピュータ等に本発明の回転式入力装置を適用しても良い。また、回転式入力装置は、電子機器に予め組み込まれていても良く、また、単体の外付け装置として電子機器に接続して使用することとしても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、回転検出部として、円環状のコードホイール133とフォトインタラプタ183とから成る光学式の回転検出部を例示したが、回転検出部は回転子13の回転角度を検出するものであれば如何なる構成を用いても良い。例えば、メカ式(接点式)、磁気式、電極の静電容量変化によって位置検出を行う静電式の回転検出部等を用いることができる。また、回転子13の回転量及び回転方向に加え、絶対位置を検出可能なアブソリュート型のロータリー・エンコーダを用いても良い。
【0053】
[実施例]
本実施例においては、下記の3つのパターンにおける異音の有無を評価し、表1に示した。また、このとき、第1の接着層14及び第2の接着層17としては表1に示す材質を用いて形成した。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
パターンI:第1の接着層14にのみ振動吸収材を設けた場合
パターンII:第2の接着層17にのみ振動吸収材を設けた場合
パターンIII:第1の接着層14及び第2の接着層17両方に振動吸収材を設けた場合
【0054】
【表1】

(評価)
◎:大変効果あり
○:効果あり
△:少し効果あり
×:効果なし
【0055】
(結果)
表1の実施例より、アクリルフォーム、不織布、ニトリルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴムの何れかを振動吸収材料として用いた場合に効果があることがわかる。また、第1の接着層14と、第2の接着層17とのどちらか一方が、これらの材質からなる振動吸収材料を備えた構成であれば、異音を抑制することが可能であることがわかる。
また、表1の比較例より、スポンジのような内部に空気を含んだ材質や、硬質ゴムは適さないことがわかる。
【0056】
従って、上記実施例の材質を振動吸収材料として用いた場合には、振動が吸収されるため、回転子13及び支持台18に振動が伝わらず異音が抑制される。
【符号の説明】
【0057】
1 携帯電話機(電子機器)
10 回転式入力装置
13 回転子
131 前面部
131a 開口部
132 周面部
133 コードホイール
14 第1の接着層
141 基材
142 接着剤
15 ロータ(摺動部材)
16 超音波モータ(駆動部)
161 ステータ
162 圧電素子
17 第2の接着層
171 基材
172 接着剤
18 支持台
183 フォトインタラプタ
20 感圧センサ
21 制御部
22 入出力部
30 携帯電話機ユニット
40 メイン制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の回転操作を受けて、軸周りに回転可能な回転子と、
前記回転子に固定され、前記回転子の回転に連動して回転する摺動部材と、
前記摺動部材と接触し、前記摺動部材を介して前記回転子に回転力を付与する駆動部と、
前記回転子を回転自在に支持する支持台と、
前記回転子と前記摺動部材とを固定する第1の接着層と、
前記駆動部と前記支持台とを固定する第2の接着層と、
を備える回転式入力装置において、
前記第1の接着層と前記第2の接着層のうち、少なくとも一方は振動吸収材料からなる基材を備えていることを特徴とする回転式入力装置。
【請求項2】
前記基材は、アクリルフォーム、不織布、ニトリルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、の何れかにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の回転式入力装置。
【請求項3】
前記駆動部は、振動子の共振を利用する振動波モータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式入力装置。
【請求項4】
操作者の回転操作を受けて、軸周りに回転可能な回転子と、
前記回転子に固定され、前記回転子の回転に連動して回転する摺動部材と、
前記摺動部材と接触し、前記摺動部材を介して前記回転子に回転力を付与する駆動部と、
前記回転子を回転自在に支持する支持台と、
前記回転子と前記摺動部材とを固定する第1の接着層と、
前記駆動部と前記支持台とを固定する第2の接着層と、
を備える回転式入力装置において、
前記第1の接着層及び前記第2の接着層は振動吸収材料からなる基材を備え、
前記基材は、アクリルフォーム、不織布、ニトリルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、の何れかにより構成され、
前記駆動部は、振動子の共振を利用する振動波モータであり、
前記第2の接着層は、前記駆動部のうち前記振動子が設けられる位置と異なる位置に設けられていることを特徴とする回転式入力装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の回転式入力装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−257815(P2010−257815A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107599(P2009−107599)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【出願人】(506428469)株式会社プロテックデザイン (10)
【Fターム(参考)】