説明

回転板位置調整装置及び方法

【課題】構造が簡易で、回転板の微小変位に対応可能な、回転板位置調整装置及び方法を提供する。
【解決手段】吸着搬送装置51と認識カメラ7と制御装置10とを備えた回転板位置調整装置50において、上記吸着搬送装置に備わり回転板2の吸着動作を行う吸着ヘッド1は、ヘッド本体101と、上記回転板を吸着する金属製の吸着パッド102と、上記ヘッド本体と上記吸着パッドとを接合し、かつ上記回転板の姿勢に上記吸着パッドが倣うように変形する接着部103とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、位置検出を行うセンサとしてのエンコーダー用の回転板を吸着保持し、かつ上記回転板が取り付けられる回転部材に対して上記回転板を微小移動して位置調整を行う、回転板位置調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造設備等では、微小のワークを保持し搬送するために、吸引穴を有し被搬送物であるワークを吸着保持する吸着ヘッドと、ワークを吸着した状態の吸着ヘッドを搬送する搬送ヘッドとが用いられている。ここで、被搬送物と、当該被搬送物に接触し吸着保持する吸着ヘッドの吸着面とが平行ではない場合にも、安定した吸着及び搬送を実現するために、従来、下記のような工夫が施されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、上記吸着ヘッドに相当する吸着ノズルは、被搬送物に接触する吸着面を有する吸着用チャックと本体との間に、可撓性を有する弾性体で構成したクッション部を設けている。該クッション部を設けることで、吸着用チャックの吸着面と被搬送物とが平行ではない場合でも、吸着用チャックの吸着面を被搬送物に押圧することでクッション部が撓み、上記吸着面を被搬送物に密着させることが可能となり、被搬送物の吸着搬送が可能となる。
【0004】
また、特許文献2では、上記吸着ヘッドに相当する吸着治具において、ホルダ部材と吸着パット部材との間に、吸着パット部材よりも高弾性の部材である独泡パット部材を設けた構成が開示されている。該構成によれば、上記吸着パット部材が被搬送物を吸着するとき、独泡パット部材が変形し、被搬送物の傾きを吸収して被搬送物と吸着パット部材の吸着面との平行度を保ち、安定した吸着保持が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−290382号公報
【特許文献2】特開2006−49485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術の構成では、吸着面を被搬送物に押圧したときに変形可能な、可撓性のクッション部や独泡パット部を設けていることから、搬送ヘッドの構造が複雑で大型化するという問題があった。
【0007】
また、位置検出を行うセンサとしてのエンコーダー用のガラス円板用の吸着搬送装置は、回転シャフトへ上記ガラス円板を高精度で装着する必要があり、吸着、搬送、及び位置調整の各工程を繰り返して行う必要がある。よって、上述した従来の吸着ヘッドに比べて、エンコーダー用ガラス円板用の吸着搬送装置における吸着ヘッドは、ガラス円板の姿勢に精度良く倣ってガラス円板の吸着及び吸着解除を行う必要がある。
【0008】
上述のようにガラス円板用の吸着ヘッドは、ガラス円板の姿勢に精度良く倣う必要があり、上述した従来の吸着ヘッドのような、可撓性のクッション部や独泡パット部を介在させた構成では、ガラス円板の微小な傾きに対応しきれず、ガラス円板の位置調整ができないという問題がある。
【0009】
さらに、エンコーダー用のガラス円板に対して樹脂材にてなる吸着面を接触させた場合、塵や埃等の異物が付着するという問題が発生する。よって、ゴム、スポンジ、MCナイロン等の樹脂材にて吸着面を作製することはできないという問題もある。
【0010】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたもので、構造が簡易で、回転板の微小変位に対応可能な、回転板位置調整装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における回転板位置調整装置は、回転板を吸着し搬送する吸着搬送装置と、上記吸着搬送装置にて回転部材に設けられ回転装置にて回転される上記回転板を撮像する認識カメラと、上記吸着搬送装置及び上記認識カメラと電気的に接続され上記回転部材と上記回転板との相対的な位置調整動作の制御を行う制御装置とを備えた回転板位置調整装置において、上記吸着搬送装置に備わり上記回転板の吸着動作を行う吸着ヘッドは、ヘッド本体と、上記回転板に接触し、吸着して保持する金属製の吸着パッドと、上記ヘッド本体と上記吸着パッドとの間に設けられて上記ヘッド本体と上記吸着パッドとを接合し、かつ上記回転板の姿勢に上記吸着パッドが倣うように変形する接着部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様における回転板位置調整装置によれば、吸着搬送装置に備わり回転板を吸着する吸着ヘッドにおいて、回転板に接触し吸着する吸着パッドは、金属製であり、塵や埃等の異物が付着するという問題は生じない。さらに、上記吸着パッドは、接着部を介してヘッド本体に取り付けられ、上記接着部は、吸着パッドが回転板の姿勢に倣うように変形可能である。このように、吸着搬送装置における吸着ヘッドは、構造が極めて簡易であり小型化が可能であり、かつ回転板の微小変位に対応可能であり、被搬送物である回転板に損傷を与えることがない。よって、回転部材に対して回転板を正確かつ確実に載置することができ、例えばエンコーダーの精度向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における回転板位置調整装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す吸着ヘッドの先端部分を示す拡大図である。
【図3】図1に示す吸着ヘッドにて吸着保持される回転板の斜視図である。
【図4A】図1に示す円板載置部材に載置された回転板を回転させる動作を説明するための図である。
【図4B】図4Aに示すA方向から回転板を見た状態において、回転板の円板中心マークの移動を説明するための図である。
【図5】回転板の円板中心マークの移動に基づいて回転板の位置調整動作を説明するための図である。
【図6】吸着ヘッドと円板載置部材とが平行ではない位置関係において、吸着ヘッドが回転板の吸着を解除した状態を示す図である。
【図7】吸着ヘッドと円板載置部材とが平行ではない位置関係において、吸着ヘッドが回転板を吸着した状態を示す図である。
【図8】図7に示すA部の拡大図である。
【図9】吸着ヘッドと円板載置部材とが平行ではない位置関係において、図1に示す吸着ヘッドの吸着パッドが回転板を吸着した状態を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態における回転板位置調整方法の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態である回転板位置調整装置、及び該回転板位置調整装置において実行される回転板位置調整方法について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0015】
また、本実施形態では、回転板位置調整装置として、位置検出を行うセンサとしてのエンコーダー用の回転板を吸着保持して、モーターへの上記回転板の取り付け位置調整を行うエンコーダー用の回転板位置調整装置を例に採り説明を行う。しかしながら本発明は、これに限定されず、一般的に、被搬送物を吸着保持する吸着ヘッド、及び該吸着ヘッドを備え上記被搬送物を支持する支持体に対して上記被搬送物の位置決めを行う位置調整装置に適用可能である。
【0016】
実施の形態1.
図1から図3を参照して、本実施形態におけるエンコーダー用の回転板位置調整装置50について説明する。
エンコーダー用の回転板位置調整装置50は、基本的構成部分として、吸着搬送装置51と、認識カメラ7と、制御装置10とを備え、本実施形態ではさらに、回転装置52をも備えている。このようなエンコーダー用の回転板位置調整装置50は、位置検出を行うセンサとしてのエンコーダーに設けられ、上記被搬送物の一例に相当する回転板を、当該エンコーダー用のモーターに取り付ける際の位置調整を行うための装置である。ここで上記回転板は、ロータリーエンコーダーを構成するためのスリットを形成した円板であり、本実施形態では、ガラス円板から作製されている。勿論、回転板は、ガラス製に限定されるものではない。
【0017】
吸着搬送装置51は、吸着ヘッド1と、負圧源6と、Zステージ8と、X,Yステージ9とを備える。吸着ヘッド1は、上述の回転板2を吸着保持するための負圧空気を発生させる負圧源6に接続されるとともに、Zステージ8に設置されている。Zステージ8は、回転板2の厚み方向、ここでは垂直方向であるZ方向に沿って吸着ヘッド1を移動させる装置である。このようなZステージ8は、上記Z方向に対して互いに直交するX方向及びY方向に移動可能なX,Yステージ9に設置されている。よって、吸着ヘッド1は、X,Yステージ9によって、X方向及びY方向に可動であり、Zステージ8によってZ方向に可動である。
【0018】
本実施形態のエンコーダー用回転板位置調整装置50において特徴的構成部分の一つである吸着ヘッド1における先端部分は、図2に示すように、ヘッド本体101と、吸着パッド102と、接着部103とを有する。ヘッド本体101は、中空形状の例えば円筒形状であり、中空部分101aは、上記負圧源6と連通している。吸着パッド102は、中空の例えば円筒形状でその吸着面102aが図3に示す回転板2の吸着搬送面2aに接触する部材であり、吸着搬送面2aへの異物付着を防止するため、金属製、例えばステンレス鋼製にて作製される。尚、吸着パッド102の中空部分102bは、ヘッド本体101の中空部分101aを介して負圧源6と連通している。よって、回転板2は、吸着パッド102の吸着面102aに吸着され保持可能である。
【0019】
接着部103は、ヘッド本体101と吸着パッド102との間に設けられて、ヘッド本体101と吸着パッド102とを接合し、かつ回転板2の姿勢に吸着パッド102が倣うように変形可能な部分である。さらに詳しく説明すると、本実施形態では一例として、ヘッド本体101と吸着パッド102との間隔は、約0.5mmに設定され、この隙間を、紫外線照射により硬化するUV接着剤で充填して接着部103を形成している。接着部103に用いるUV接着剤の硬化後の硬度は、ゴム硬度で40度から50度のものを用いる。接着部103がこの程度のゴム硬度を有することで、接着部103は、可撓性を有する弾性部材として作用し、回転板2の傾きを吸収することができ、回転板2の姿勢に吸着パッド102を倣わせることができる。
【0020】
吸着ヘッド1を上述のように構成することで、吸着ヘッド1は、構造が極めて簡易であって小型化が可能であり、かつ回転板2の傾き、つまり微小変位に対応することができるという効果が得られる。
【0021】
次に、回転装置52は、上記回転板2を回転させる装置であり、把持機構13及び駆動部14を有する。詳しく説明すると、本実施形態では、把持機構13は、モーター4の本体から突出するモーターシャフト5を把持する。ここで、モーターシャフト5は、上記支持体あるいは回転部材の一例に相当し、モーター4は、モーターシャフト5を上記Z方向に平行とした状態にて配置されている。一方、モーターシャフト5の非突出側には、円板載置部材3が取り付けられる。該円板載置部材3には、上述の吸着搬送装置51によって回転板2が載置される。モーターシャフト5に円板載置部材3が取り付けられた状態において、駆動部14は、モーターシャフト5を把持している把持機構を回転する。該回転により、モーターシャフト5とともに円板載置部材3が回転する。
【0022】
認識カメラ7は、吸着搬送装置51の吸着ヘッド1を退避させた状態で、円板載置部材3に載置された回転板2を、上記Z方向において回転板2の上方から撮像するカメラである。
【0023】
制御装置10は、モーターシャフト5つまり円板載置部材3と回転板2との相対的な位置調整動作の制御を行う装置であり、画像認識処理部11と位置制御部12とを有する。尚、制御装置10は、実際にはコンピュータにて構成可能であり、該コンピュータにおいて機能的に画像認識処理部11及び位置制御部12が存在するものである。
【0024】
画像認識処理部11は、認識カメラ7と電気的に接続され、認識カメラ7から得た回転板2の位置データを処理する。位置制御部12は、吸着搬送装置51と電気的に接続され、認識カメラ7から得た回転板2の位置データを元に、X、Yステージ9及びZステージ8の位置制御を行う。制御装置10による、モーターシャフト5つまり円板載置部材3と回転板2との相対的な、具体的な位置調整動作制御については、以下の動作説明にて行う。
【0025】
以上のように構成された本実施形態のエンコーダー用の回転板位置調整装置50における、モーターシャフト5つまり円板載置部材3に対する回転板2の位置調整方法について、図10を参照して以下に説明する。尚、この位置調整方法は、上述した制御装置10にて、より詳しくは上記画像認識処理部11及び上記位置制御部12にて実行されるものである。
【0026】
(1)まず、吸着搬送装置51は、回転板供給部(不図示)から回転板2を吸着ヘッド1で吸着保持する。一方、回転装置52の上方には、搬送装置(不図示)にてモーター4が搬入され、把持機構13側にモーターシャフト5を配向して設置面15に設置される。さらに、モーターシャフト5の非突出側には、円板載置部材3が取り付けられる。尚、上記設置面15は、吸着ヘッド1における吸着パッド102の、回転板2と接触する吸着面102aと平行に設定された面である。
【0027】
(2)次に、上述のように設置された円板載置部材3の載置面3aに、吸着搬送装置51を用いて、吸着ヘッド1に吸着されている回転板2を載置する(図10のステップ1)。
【0028】
(3)次に、上記載置面3aへの回転板2の載置後、吸着パッド102の真空吸着を解除する。そして、X,Yステージ9を駆動して吸着ヘッド1を、載置面3a上の回転板2の認識カメラ7による撮像の邪魔にならない場所へ、回転板2の上方から退避させる。
【0029】
(4)次に、図4Aに示すように、認識カメラ7は、回転板2を撮像する。そして、認識カメラ7から得られた撮像情報を元に、制御装置10の画像認識処理部11は、回転板2の中心にある円板中心マーク201(図3)の位置を求める。このときの状態を図4Bに示す。また、図4Bにおいて、認識カメラ7にて撮像された円板中心マーク201の位置について「211」の符号を付す。
【0030】
(5)次に、把持機構13でモーターシャフト5を把持し、把持機構13を駆動部14にて、モーターシャフト5を例えば時計回り方向に120度回転させる。上述のように、モーターシャフト5の非突出側には円板載置部材3が直結されており、モーターシャフト5を回転させることで、円板載置部材3は連動して回転し、円板載置部材3に載置されている回転板2もともに120度回転する。
【0031】
(6)上記回転後、認識カメラ7にて、回転板2を再度撮像する。そして、認識カメラ7から得られた撮像情報を元に、画像認識処理部11は、円板中心マーク201の位置を求める。尚、図4Bにおいて、この第2回目の撮像において得られた円板中心マーク201の位置について「212」の符号を付す。
【0032】
(7)第2回目の撮像後、更に、時計回り方向に120度、回転板2を回転させ、回転後の回転板2を再々度撮像し、円板中心マーク201の位置を再び求める。尚、図4Bにおいて、この第3回目の撮像において得られた円板中心マーク201の位置について「213」の符号を付す。
【0033】
(8)上述した(4)から(7)の動作にて得られた、円板中心マーク201の「211」から「213」の3つの位置情報から、制御装置10は、マーク位置211、212、213の3点を通る円214を求め、さらに、円214の中心点215の位置、及び円214の半径216を求める。この半径216が、回転板2の中心である円板中心マーク201と、モーターシャフト5の回転中心つまり上記中心点215とのズレ量、換言すると、円板載置部材3への回転板2の設置誤差に相当する。尚、上記(3)から当該(8)までの動作が図10のステップ2に相当する。
【0034】
ここで、上記ズレ量が許容範囲内に収まっている場合には、調整動作を終了する(図10のステップ3)。実際には、この時点では許容範囲内に収まっていることは希であるので、通常では、以下のステップへ移行する。
【0035】
(9)次に、図5に示すように、計算より求めたモーターシャフト5の回転中心点215の位置に、回転板2の中心である円板中心マーク201を移動させる。即ち、まず、吸着ヘッド1を回転板2の上方に再び移動させ、Zステージ8を下降し、吸着ヘッド1の吸着パッド102を回転板2に接触させる。
【0036】
(10) 上記接触後、吸着ヘッド1の吸着を開始し、回転板2を吸着し吸着パッド102に保持する。
【0037】
(11) 吸着保持後、制御装置10は、上述のように求めた上記ズレ量に従い位置制御部12にてX、Yステージ9の移動を制御し、回転板2の中心である円板中心マーク201を、モーターシャフト5の回転中心である中心点215へ半径216分、移動させる
【0038】
(12) 次に、回転板2の移動後、吸着ヘッド1の吸着を解除し、認識カメラ7による撮像動作の邪魔にならない場所へ、吸着ヘッド1を退避させる。
【0039】
(13) 上記退避後、上述の(4)から(11)までの動作を再び実行する(図10のステップ4)。
【0040】
(14) このような位置調整動作を、回転板2の円板中心マーク201とモーターシャフト5の回転中心点215とのズレ量が所定量、例えば5μm以内、の範囲に収まるまで繰り返し行う。そして、上記ズレ量が所定値以下になった時点で、回転板2を円板載置部材3に接着固定する。
【0041】
以上説明した動作により、円板載置部材3への回転板2の位置調整及び固定が行われるが、吸着ヘッド1における吸着パッド102の、回転板2と接触する吸着面102aと、円板載置部材3とが平行な位置関係にあるときには、上記接着部103を有しない従来の吸着ヘッドを用いても上記位置調整動作は可能である。
【0042】
しかしながら、実際には図6に示すように、例えば、モーターシャフト5がモーター4の本体に対して傾斜している、あるいはモーターシャフト5に対して円板載置部材3が傾斜して取り付けられている等の原因により、吸着パッド102の吸着面102aと、円板載置部材3とが平行でない場合が発生する。このような状況にて、上記接着部103を有しない従来の吸着ヘッドを用いた場合には、以下に説明するような問題が発生する。
【0043】
即ち、吸着パッド102の吸着面102aと、円板載置部材3とが平行でない場合には、吸着パッド102に回転板2が吸着されている状態では、図7に示すように、回転板2と円板載置部材3との間に隙間が生じる。このような状況下において、上述の(4)から(11)に記載の位置調整動作を行い、図7に示すような位置にて回転板2の吸着を解除したときには、図8に示すように、吸着状態における回転板2の円板中心マーク201は、回転板2が円板載置部材3に載置されたときには、位置217から位置218に移動する。本来、吸着パッド102の吸着面102aと、円板載置部材3とが平行であるならば、回転板2が円板載置部材3に載置されたときには、円板中心マーク201は、位置217の鉛直下における位置219に位置する。
【0044】
ここで、図8を参照して、吸着パッド102に吸着されている回転板2と、円板載置部材3の載置面3aとのなす角度をθとし、回転板2と載置面3aとの接点220から回転板2の円板中心マーク201までの回転板2の直径方向における距離をrとしたとき、上記直径方向において、本来の位置219と位置218とのズレ量は、r(1−cosθ)となる。例えば、上記距離rが5mmであり、円板中心マーク201を通過するZ方向の軸において、回転板2と載置面3aとの隙間が5μmであった場合、上述の位置調整動作における上記(3)にて吸着を解除するときや、上記(10)にて吸着を行うときに、円板中心マーク201は、3μm程度、位置ズレしてしまうことになる。
【0045】
したがって、従来の吸着ヘッドを用いた場合には、回転板2におけるこのような位置ズレの発生に起因して、回転板2の円板中心マーク201とモーターシャフト5の回転中心点215とを一致させるのに長時間を要したり、両者の位置調整ができなかったりするという問題が発生する。
【0046】
これに対して、本実施形態のエンコーダー用回転板位置調整装置50に備わる吸着ヘッド1では、接着部103を有することから、図9に示すように、接着部103の弾性により、傾斜している回転板2に吸着パッド102の吸着面102aを倣わせることができる。よって、上記(3)の動作における吸着解除、及び上記(10)の動作における吸着保持を行うときでも、回転板2の上記位置ズレ(微小移動)を抑制することができる。したがって、回転板2の円板中心マーク201とモーターシャフト5の回転中心点215との位置合わせを安定して行うことが可能となる。
【0047】
このような効果は、接着部103におけるゴム硬度が40度から50度であることに起因して得られる。即ち、ゴム硬度が40度未満の接着部では、回転板2を吸着したとき、接着部が変形した状態のまま、吸着ヘッドが回転板2を搬送してしまう。よって、次工程で、吸着ヘッド1が回転板2の吸着を解除したときに、位置ズレが発生することとなる。
一方、ゴム硬度が50度を超える接着部では、回転板2の傾斜に吸着パッドが追従できず、従来の吸着ヘッドと同様に、回転板2と吸着パッドとの間に隙間が発生する。よって、回転板2を吸着するときに位置ズレが発生することになる。
したがって、接着部103におけるゴム硬度は、40度から50度の間であるのが好ましい。
【0048】
上述のように本実施形態のエンコーダー用回転板位置調整装置50によれば、回転板2を吸着保持する吸着パッド102の吸着面102aと、回転板2とが平行になっていない場合でも、吸着パッド102を回転板2に押圧することで、接着部103が撓み、吸着面102aを回転板2に沿わせることができ、かつ、この状態で吸着パッド102は、回転板2を吸着、保持することができる。よって、回転板2が傾斜していることに起因して発生する回転板2の位置ズレを抑制することができ、回転板2の安定した位置調整を実現することができる。これにより、従来に比べて調整時間が短くて済むとともに、接着剤の硬化収縮で起こる微小変位量で、これまで接着固定後に位置ズレし不良となっていたものが解消できる。したがって、検出精度の高いエンコーダーを提供することが可能となる。
【0049】
尚、上述の実施形態では、回転板2を載置する円板載置部材3を移動させず回転板2を上記位置ズレ量に従い移動させて、円板載置部材3と回転板2との位置調整を行っている。しかしながら、これとは逆に、回転板2を移動させずに円板載置部材3側を上記位置ズレ量に従い移動させて位置調整動作を行っても良く、上述と同様の効果を得ることができる。即ち、回転板位置調整方法では、円板載置部材3及び回転板2を相対的に位置補正すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 吸着ヘッド、2 回転板、3 円板載置部材、4 モーター、7 認識カメラ、10 制御装置、
50 エンコーダー用回転板位置調整装置、51 吸着搬送装置、52 回転装置、
101 ヘッド本体、102 吸着パッド、103 接着部、
201 円板中心マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転板を吸着し搬送する吸着搬送装置と、上記吸着搬送装置にて回転部材に設けられ回転装置にて回転される上記回転板を撮像する認識カメラと、上記吸着搬送装置及び上記認識カメラと電気的に接続され上記回転部材と上記回転板との相対的な位置調整動作の制御を行う制御装置とを備えた回転板位置調整装置において、
上記吸着搬送装置に備わり上記回転板の吸着動作を行う吸着ヘッドは、
ヘッド本体と、
上記回転板に接触し、吸着して保持する金属製の吸着パッドと、
上記ヘッド本体と上記吸着パッドとの間に設けられて上記ヘッド本体と上記吸着パッドとを接合し、かつ上記回転板の姿勢に上記吸着パッドが倣うように変形する接着部と、を備えたことを特徴とする回転板位置調整装置。
【請求項2】
上記接着部は、40度から50度のゴム硬度を有する接着剤である、請求項1記載の回転板位置調整装置。
【請求項3】
上記接着部は、UV硬化型の接着剤である、請求項1又は2記載の回転板位置調整装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転板位置調整装置に備わる制御装置にて実行される回転板位置調整方法であって、
上記回転板位置調整装置に備わる吸着ヘッドにて回転部材へ回転板を載置した後、上記回転部材を回転させる度に上記回転板の中心マークを撮像することで得られる上記中心マークの軌跡から、上記回転部材の部材中心と上記回転板の板中心との位置ズレ量を求める第1ステップと、
上記位置ズレ量が許容範囲内か否かを判断し、上記許容範囲内であれば調整動作を終了する第2ステップと、
上記位置ズレ量が許容範囲内でなければ、上記吸着ヘッドにて上記回転板を吸着して上記位置ズレ量に従い上記回転板及び上記回転部材を相対的に位置補正して再び上記回転板を上記回転部材に載置して上記第1ステップへ移行する第3ステップと、
を備えたことを特徴とする回転板位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−177874(P2011−177874A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47326(P2010−47326)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】