説明

回転検出装置及び直流モータ

【課題】 エンコーダ等のセンサを設けることなく、またトルク変動を抑制しつつ、回転速度によらずにブラシ付き直流モータの回転状態を精度良く検出する。
【解決手段】 電源部5は、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧をモータ2へ印加する。これによりモータ2の回転時には交流成分を含む電流が流れる。モータ2は、3相の各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルL1と並列にコンデンサC1が接続されており、このコンデンサC1により、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスはモータ2の回転に応じて変化し、その変化はモータ電流の交流成分の振幅変化として現れる。信号処理部22は、電流検出部21にて検出されたモータ電流から交流成分を抽出し、その振幅変化に応じた回転パルスを生成する。この回転パルスに基づき、回転角検出部7がモータ2の回転角を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付きの直流モータの回転角や回転方向、回転速度などの回転状態を検出する回転検出装置、及びこの回転検出装置により回転状態を検出可能なブラシ付きの直流モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きの直流モータ(以下単に「直流モータ」という)は、車両においても従来から用いられており、例えば、車両の空調装置における温度調整用のエアミックスダンパーや吹き出し口切り替え用のモードダンパーなどの開閉角度を調整するために用いられている。このような用途で用いられる直流モータを制御するにあたっては、各ダンパーの開閉角度を精度良く調整するために、直流モータの回転角や回転方向、回転速度などの回転状態を検出し、その検出した回転状態に基づいて、各ダンパーの開閉角度が所望の角度となるように制御していた。
【0003】
直流モータの回転状態を検出する一般的方法として、ロータリエンコーダやポテンショメータ等のセンサを設け、このセンサからの検出信号に基づいて検出する方法がよく知られている。そのため、車両においても、このようなセンサを設けて回転状態を検出する方法が採用されている。
【0004】
しかし、このようにセンサを設けて回転状態を検出する方法では、センサを設置するスペースが直流モータ毎に必要になると共に、直流モータへの直流電源供給用のハーネスとは別に、センサによる検出信号を他の装置(車載ECU等)へ伝送するためのハーネスも直流モータ毎に必要となり、車両の重量増・コストアップを招く。そのため、センサやそれに伴うハーネスを削減するために、センサレス方式化の要望が高まっている。
【0005】
ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを用いることなく直流モータの回転状態を検出するセンサレス方式は種々提案されており、例えば、コンミテータとブラシが切り替わるときに発生するサージパルスを検出・計数することにより検出する方法が知られている。しかし、この方法では、モータが起動・停止する際の低回転時にはモータの起電力が小さくなってサージパルスも小さくなるため、回転速度が低くなればなるほどサージパルスを検出することが困難となって誤検出してしまう可能性が高くなる。
【0006】
また、別のセンサレス方式として、コンミテータに形成された複数のセグメント(整流子片)のうち特定の2つのセグメント間に(即ちこのセグメント間に接続されている相コイルと並列に)抵抗器を接続し、このセグメント間に流れる電流に基づいて回転パルスを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この特許文献1に開示されたセンサレス方式では、いずれか一つの相コイルに抵抗器が並列接続されることにより、ブラシを介してモータ回路(複数相の相コイルからなる電機子コイル側の回路)に直流電流が供給されると、ブラシ間に流れる電流は、モータの回転角に応じて周期的な変動を伴うように変化する。この電流の変化に基づいて回転パルスを検出することにより、上述した単なるサージパルスに基づく検出方法と比較してその検出精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−111465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、いずれか一つの相コイルに抵抗器を接続することによってモータ回路に流れる直流電流に変動が生じるようにしているため、この電流変動に伴って必然的にモータのトルク変動が生じてしまう。モータのトルク変動は、モータ自身の騒音、或いはモータにより駆動される駆動対象の騒音の発生原因になる。
【0010】
また、この特許文献1に開示された方法でも、上述したサージパルスに基づく方法と同様、回転速度が低くなればなるほど電流の変化が小さくなって誤検出の可能性が高くなるという問題は残されている。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、エンコーダ等のセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度にかかわらず直流モータの回転状態を精度良く検出することが可能な回転検出装置を提供すること、及びこの回転検出装置を用いて回転状態を検出可能な直流モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、電機子コイルが接続される複数の整流子片を有するコンミテータと、コンミテータを介して各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、を有する直流モータを備え、この直流モータの回転状態を検出する回転検出装置であって、直流モータの上記少なくとも一対のブラシ間に対し、少なくとも、直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧を印加可能に構成された電源手段と、ブラシを介して直流モータに流れるモータ電流、又は該モータ電流が流れる通電経路上の電圧である経路電圧を検出する通電検出手段と、通電検出手段により検出されたモータ電流又は経路電圧に含まれる交流成分に基づいて、回転状態としての、直流モータの回転角、回転方向、又は回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、を備えている。
【0013】
そして、直流モータは、複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間は、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている。
【0014】
このように構成された回転検出装置では、直流モータにおける一対のブラシ間に形成される電機子コイル側の回路(以下「モータ回路」ともいう)において、少なくとも一組の整流子片間(以下「特定整流子片間」ともいう)が、他の異なる組み合わせの整流子片間とは異なる値の静電容量値を持っている。
【0015】
そのため、直流モータが回転すると、その回転に伴って一対のブラシと摺接する整流子片が切り替わり、これにより一対のブラシ間に形成されるモータ回路のインピーダンスにも変化が生じる。具体的には、直流モータが180°回転する間に、モータ回路のインピーダンスは少なくとも二種類(二段階)に変化する。そのため、交流重畳電圧の印加によって直流モータに流れるモータ電流における交流成分や、そのモータ電流が流れる通電経路上の電圧(経路電圧)も、そのインピーダンスの変化に伴って変化する。
【0016】
そこで、モータ電流又は経路電圧を通電検出手段が検出し、回転状態検出手段が、その検出されたモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)又は経路電圧に含まれる交流成分(交流電圧成分)に基づいて、直流モータの回転状態、即ち回転角、回転方向、又は回転速度の少なくとも1つを検出する。
【0017】
交流成分に基づく回転状態の検出は、具体的には、例えば、交流成分の振幅の変化に基づいて行うことができる。直流モータの回転中、一対のブラシと接触する整流子片の切り替わりに伴ってモータ回路のインピーダンスが変化すると、モータ電流や経路電圧に含まれる交流成分の振幅も変化する。例えばモータ電流に含まれる交流成分の場合、インピーダンスが大きいと振幅は小さく、インピーダンスが小さくなると振幅も大きくなる。そのため、交流成分の振幅の変化に基づいて回転状態を検出することができるのである。
【0018】
直流モータのトルクは、電源手段により印加される交流重畳電圧によってモータに流れるモータ電流のうち直流電流成分により発生し、交流電流成分は直流モータのトルクに影響を与えることはない。そのため、直流モータの状態(加・減速中、定速中、停止中など)とは関係なく、常に一定の交流電圧を直流モータへ印加し、交流電流を流すことができる。
【0019】
従って、請求項1に記載の回転検出装置によれば、仮に制動時に電源手段から印加される直流電圧が0になったとしても、交流電圧を印加し続ける(交流電流を供給し続ける)ことにより、減速時〜停止時にかけても回転状態を確実に検出することができる。しかも、回転状態の検出は直流モータのモータ電流または経路電圧における交流成分に基づいて行っているため、直流電流に影響を与えることなく(即ちモータのトルクに影響を与えることなく)検出が行われる。
【0020】
そのため、エンコーダ等のセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度にかかわらず直流モータの回転状態を精度良く検出することが可能な回転検出装置を提供することが可能となる。
【0021】
なお、特定整流子片間とは異なる他の整流子片間については、静電容量値を持つように構成するか否かは任意であり、特定整流子片間とは異なる他の整流子片間については静電容量値を持たないようにしてもよいし、逆に、異なる全ての組み合わせの整流子片間において静電容量値を持つようにしてもよい。但し、少なくとも、全ての整流子片間が同じ静電容量値を持たないよう構成する必要がある。
【0022】
また、回転状態として具体的に何を検出するか、またモータ電流又は経路電圧のうち何れの交流成分を検出するかは適宜決めることができる。そのため、例えばモータ電流に含まれる交流成分に基づいて回転角を検出したい場合、例えば次のように構成することができる。即ち、ブラシを介して流れる直流モータの通電電流(モータ電流)を検出し、その検出されたモータ電流に含まれる交流電流成分を抽出して、その抽出した交流電流成分に基づいて回転角を検出する、回転角検出装置として構成することができる。
【0023】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置であって、直流モータは、少なくとも1相の相コイルに対して該相コイルの一部又は全部と並列に接続された所定の静電容量値の静電容量素子を備えている。
【0024】
即ち、請求項1に記載の回転検出装置における、少なくとも一組の整流子片間が他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つようにするという構成を、上記のように相コイルの一部又は全部と並列に静電容量素子を接続することで実現するのである。
【0025】
静電容量素子は、直流電流は流さない(流しにくい)反面、交流電流は流しやすい性質を持っている。つまり、直流的には電流がほとんど流れない(流れにくい)非常に高い抵抗を有し、交流的には電流が流れやすい低インピーダンスを有する。
【0026】
そのため、モータ回路に流れるモータ電流のうち直流電流成分は、その大部分が電機子コイルに流れ、静電容量素子には流れない、或いは無視しうる程度の値となる。つまり、直流的にみれば、静電容量素子はあたかも存在しないのと等価な状態となる。そのため、直流電流により動作する直流モータのトルクが静電容量素子の存在によって影響されることはない。
【0027】
従って、請求項2に記載の回転検出装置によれば、少なくとも1相の相コイルに対してその一部又は全部と並列に静電容量素子を接続するという簡素な構成にて、直流モータの回転に伴うモータ回路のインピーダンスの変化を確実に生じさせることができる。
【0028】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置であって、直流モータは、少なくとも2相の相コイルに対し、それぞれ静電容量値の異なる静電容量素子が接続されており、回転状態検出手段は、少なくとも、上記交流成分の変化パターンに基づいて直流モータの回転方向を検出する。
【0029】
電機子コイルを構成する各相コイルのうち少なくとも2つの相コイルに対してそれぞれ静電容量値の異なる静電容量素子を並列接続すると、直流モータの回転に伴い、モータ回路のインピーダンスが多段階(少なくとも3段階以上)に変化し、このインピーダンスの段階的な変化に伴ってモータ電流又は経路電圧の交流成分も段階的に変化する。
【0030】
そこで、その交流成分の段階的な変化のパターンから直流モータの回転方向を検出するよう構成すれば、少なくとも回転方向の検出が可能な回転検出装置を提供することができる。また、交流成分の変化に基づいて回転角や回転方向も検出することが可能であるため、回転方向に加えて更に回転角又は回転速度の何れか又は双方をも検出可能な、高性能の回転検出装置を提供することも可能能となる。
【0031】
また、回転角と回転方向を検出する構成の場合、回転方向の検出結果に基づいて回転角の検出結果を補正することもできるため、直流モータの回転方向が変わってもそれに応じて精度良く回転角を検出することができる。
【0032】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の回転検出装置であって、直流モータは、3相の相コイルからなる電機子コイルを有することを特徴とするものである。
【0033】
ブラシ付きの直流モータにおける電機子コイルの相数は多岐に渡り、駆動対象に応じて相数が適宜選定されるが、例えば上述した空調装置をはじめ、車両における各種駆動対象を駆動するための直流モータには、相数が3相のものが多用されている。3相の直流モータは、小型・軽量であることなどから、車両に限らずその需要は多い。
【0034】
そこで、このような3相直流モータの回転状態を検出するための装置として本発明の回転検出装置を適用すれば、エンコーダ等のセンサを設ける必要がないため、小型・軽量といった3相直流モータのメリットを十分に維持しつつ回転状態を精度良く検出することができるため、より効果的である。
【0035】
そして、このように直流モータの電機子コイルの相数が3相である場合は、例えば請求項5に記載のように、静電容量素子は、いずれか1相の相コイルに接続するようにするとよい。即ち、3相直流モータに対しては、いずれか2相の相コイルにそれぞれ静電容量素子を接続してもよいし、また、3相全ての相コイルにそれぞれ静電容量素子を接続してもよいが(但しその場合は少なくとも一つの静電容量素子については他の静電容量素子とは異なる静電容量値のものを用いる必要がある)、そのように複数の静電容量素子を用いると、その分、直流モータの大型化・重量増・コストアップを招く。しかも、回転中は常にブラシ間に静電容量素子のみの通電経路が存在するようになり、回転に伴って変化するインピーダンスの変化量も小さくなる。
【0036】
これに対し、請求項5記載の回転検出装置によれば、必要最小限の一つの静電容量素子を設けるだけで済むため、装置全体の小型化・軽量化・コストダウンが可能となる。しかも、回転角に応じて、ブラシ間に静電容量素子のみの通電経路が存在してインピーダンスが非常に小さくなる期間と、静電容量素子のみの通電経路が存在せず(ブラシ間の通電経路上に必ず相コイルが存在して)インピーダンスが高くなる期間とが生じるため、回転状態検出手段は交流成分に基づいて回転状態を検出し易くなる。そのため、回転状態の検出をより精度良く行うことができる。
【0037】
また、特に請求項3記載のように少なくとも回転方向を検出可能に構成された回転検出装置において、直流モータが3相の相コイルからなる電機子コイルを有する構成である場合は、例えば請求項6記載のように、静電容量素子は、いずれか2相の相コイルに対し、それぞれ静電容量値の異なるものを接続するようにするとよい。
【0038】
このように構成された回転検出装置によれば、3相直流モータの回転方向を、必要最小限の二つの静電容量素子を設けることで検出できるため、直流モータの大型化やコストアップを抑制しつつ、回転方向を精度良く検出することが可能となる。
【0039】
ここで、直流モータに対して実際に静電容量素子をどこに、どのように設けるかは種々考えられるが、サージ吸収用の部品としてよく知られているリングバリスタを備えている場合は、例えば請求項7記載のようにリングバリスタに設けることができる。
【0040】
即ち、請求項7記載の回転検出装置は、直流モータが、当該直流モータの回転軸に固定された、複数の電極を有するリングバリスタを有し、複数の整流子片は各々、リングバリスタにおける何れかの電極と接続されている。そして、静電容量素子は、リングバリスタにおいて何れか2つの電極間に固定して接続されている。
【0041】
リングバリスタの板面上において静電容量素子を具体的にどのように固定するかは種々考えられ、また例えば、リングバリスタと静電容量素子とが一体成形された静電容量素子付きリングバリスタを一つの部品として構成し、これを用いるようにしてもよい。
【0042】
このように、リングバリスタが取り付けられた直流モータに対してはそのリングバリスタに静電容量素子を固定することで、直流モータの製造工数を低減でき、延いては、回転検出装置全体の製造工数を低減することができる。
【0043】
特に、例えばリングバリスタの電極間に静電容量素子を半田付け等によって接続することにより、機械的な固定だけでなく電気的接続をも併せて行うようにすれば、静電容量素子と電機子コイルとの間の配線にかかる工数をより低減することができる。
【0044】
そして、静電容量素子としては、所定の静電容量値を有するものであれば何でも適用できるが、請求項8記載のように、静電容量素子としてコンデンサからなるものを用いれば、より簡易的な装置構成で高精度な回転状態の検出が可能となる。
【0045】
ここで、電源手段をどのように構成するかは種々考えられ、例えば、直流電圧に交流電圧流が重畳された交流重畳電圧(脈流)を生成して出力する1つの電源を構成することもできるが、例えば請求項9に記載のように構成することもできる。
【0046】
即ち、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、電源手段は、直流モータへ直流電圧を印加する直流電源と、直流モータへ交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、を備えている。そして、直流電源からの直流電圧及び交流電圧印加手段からの交流電圧がそれぞれ直流モータに印加されることにより、直流モータに交流重畳電圧を印加可能に構成されている。
【0047】
つまり、直流電源と交流電圧印加手段とを別々に設け、それぞれから直流電圧及び交流電圧が印加されることによって、結果として、直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧が印加されるようにするのである。
【0048】
このように、直流電源と交流電圧印加手段とを別々に設けることで、各々を簡易的且つ低コストで構成できる。
次に、請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、電源手段は、直流モータへ直流電圧を印加する直流電源と、直流電源から直流モータへの直流電圧の印加を遮断する直流遮断手段と、直流モータへ交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、を備えている。更に、当該回転検出装置は、直流遮断手段を制御する直流遮断制御手段を備えている。この直流遮断制御手段は、直流モータを回転させる際は直流電源からの直流電圧を直流モータに印加させることにより直流モータに交流重畳電圧が印加されるようにし、直流モータを制動させる際は直流電源からの直流電圧の印加を遮断させる。
【0049】
このように構成された請求項10に記載の回転検出装置では、直流遮断制御手段が直流遮断手段を制御することにより、制動時には直流電源からの直流電圧の印加が遮断されることにより制動が行われる。そのため、制動時であっても交流電圧印加手段による交流電圧の印加は継続して行うことができ、これにより、定常回転時だけでなく、制動開始時から完全に停止するまでの間も、回転状態を確実に検出することができる。
【0050】
次に、請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、電源手段は、直流電圧を出力する直流電源と、直流電源からの直流電圧が入力され、該直流電圧を直流モータに印加することにより該直流モータを駆動するモータドライバと、直流電源からの直流電圧の出力を遮断する直流遮断手段と、直流モータへ交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、を備えている。更に、当該回転検出装置は、直流遮断手段を制御する直流遮断制御手段を備えている。この直流遮断制御手段は、直流モータを定常回転させる際は直流電源からの直流電圧をモータドライバに入力させることにより直流モータへの交流重畳電圧の印加が可能となるようにし、直流モータを制動させる際は直流電源からモータドライバへの直流電圧の入力を遮断させる。
【0051】
このように構成された請求項11に記載の回転検出装置では、直流電源からの直流電圧はモータドライバを介して直流モータへ印加される。なお、交流電圧印加手段による交流電圧の印加は、モータドライバを介して印加されるようにしてもよいし、モータドライバを介さずに(つまりモータドライバの動作状態とは無関係に)直流モータへ印加されるようにしてもよい。
【0052】
そして、制動時には、直流電源からモータドライバへの直流電圧の入力が遮断されてモータドライバから直流モータへの直流電圧の印加が停止されることにより制動が行われる。そのため、制動時であっても交流電圧印加手段による交流電圧の印加は継続して行うことができる。
【0053】
従って、請求項11に記載の回転検出装置によれば、請求項10に記載の回転検出装置と同様、定常回転時だけでなく、制動開始時から完全に停止するまでの間も、回転状態を確実に検出することができる。
【0054】
上記の請求項10又は請求項11に記載の回転検出装置において、直流遮断手段を具体的にどのように構成するかは種々考えられ、例えば請求項12に記載のように、直流遮断手段を半導体スイッチング素子により構成するようにしてもよい。
【0055】
次に、請求項13に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、電源手段は、直流電圧を出力する直流電源と、直流電源からの直流電圧が入力され、該直流電圧を直流モータに印加することにより該直流モータを駆動するモータドライバと、直流モータへ交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、を備えている。更に、当該回転検出装置は、モータドライバを制御するモータドライバ制御手段を備えている。このモータドライバ制御手段は、直流モータを制動させる際は、直流モータに対する直流電圧の印加極性を所定の周波数で交互に切り替えることにより制動させる。
【0056】
このように構成された回転検出装置では、直流モータを制動させる際も、直流電圧の印加は継続させる。つまり、制動時であっても直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧が直流モータに印加される。但し、定常回転時と同じように交流重畳電圧を印加し続けるのでは、当然ながら制動は行われない。
【0057】
そこで、本発明(請求項13)では、モータドライバ制御手段が、モータドライバを介して直流モータに印加される直流電圧の極性を所定の周波数にて交互に切り替えることにより、直流モータを制動させる。直流モータに印加される直流電圧の極性を切り替えるということは、即ち、直流モータの回転方向を交互に切り替えようとすることと同義である。
【0058】
交互に切り替える際の切り替え一周期内における、一方の極性(直流モータを一方の方向へ回転させるために該直流モータに印加させるべき直流電源の極性)にする時間と他方の極性(直流モータを他方の方向へ回転させるために該直流モータに印加させるべき直流電源の極性)にする時間との比率(以下「切替時間比率」ともいう)を適宜設定することで、直流モータに印加される直流電圧の平均値を、直流モータの回転を停止しうる程度にまで低くすることができる。
【0059】
従って、請求項13に記載の回転検出装置によれば、定常回転時だけでなく、制動開始時から完全に停止するまでの間も、交流重畳電圧の印加を継続させつつ(つまり直流電圧の印加を遮断する必要なく)、回転状態を確実に検出することができる。
【0060】
なお、制動時に直流電圧の印加極性を切り替える際の切替時間比率は、直流モータを制動させて最終的に停止させることができる限り、適宜設定することができる。例えば切替時間比率を50%(1:1)にすれば、直流モータに印加される直流電圧の平均値を0とすることができるため、回転中の直流モータをより迅速に停止させることができる。
【0061】
ここで、上記請求項13に記載の回転検出装置において、モータドライバ制御手段が直流電圧の印加極性を交互に切り替える際の周波数は、適宜設定することができるが、例えば請求項14に記載のように、交流電圧印加手段によって印加される交流電圧の周波数とは異なる値に設定するとよい。
【0062】
このようにすることで、通電検出手段が検出したモータ電流または経路電圧に、交流電圧印加手段からの交流電圧の成分だけでなく上記切り替えに起因して生じるノイズ成分等の不要な交流成分が含まれていたとしても、例えばフィルタを用いるなどしてその不要な交流成分を除去することができる。そのため、高い精度で回転状態を検出することができる。
【0063】
そして、請求項14に記載のように上記交互に切り替える際の周波数を交流電圧印加手段からの交流電圧の周波数とは異なる値に設定する場合、より具体的には、例えば請求項15に記載のように、上記交互に切り替える際の周波数を、交流電圧印加手段からの交流電圧の周波数よりも小さな値に設定するようにするとよい。
【0064】
このようにすることで、通電検出手段が検出したモータ電流または経路電圧に含まれる交流成分から、例えばハイパスフィルタを用いて交流電圧印加手段からの交流電圧の成分を容易に抽出することができる。
【0065】
次に、請求項16に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、電源手段は、直流電圧を出力する直流電源と、直流電源からの直流電圧が入力され、該直流電圧を直流モータに印加することにより該直流モータを駆動すると共に、上記少なくとも一対のブラシ間を短絡させることが可能に構成されたモータドライバと、 直流モータへ交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、を備えている。更に、当該回転検出装置は、モータドライバを制御するモータドライバ制御手段を備えている。このモータドライバ制御手段は、直流モータを定常回転させる際は直流電源からの直流電圧を該直流モータに印加させることにより該直流モータへ交流重畳電圧を印加させ、直流モータを制動させる際は上記少なくとも一対のブラシ間を短絡させることにより制動させる短絡制動を行わせる。
【0066】
そして、交流電圧印加手段及び通電検出手段は、直流電源から直流モータへの通電経路のうち、定常回転時及び短絡制動時の双方ともにモータ電流が流れる通電経路である共通電流経路上に設けられている。
【0067】
このように構成された請求項16に記載の回転検出装置によれば、定常回転時及び短絡制動時の双方ともにモータ電流が流れる共通電流経路上に交流電圧印加手段が設けられ(即ち共通電流経路上に交流電圧印加手段からの交流電圧が印加され)、且つ、通電検出手段についても共通電流経路上に設けられて該共通電流経路上のモータ電流又は経路電圧が検出される。そのため、短絡制動によって直流モータを制動させる構成においても、定常回転時及び制動時ともに回転状態を確実に検出することができる。
【0068】
次に、請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の回転検出装置であって、交流電圧印加手段は、共通電流経路における、直流モータの上記一対のブラシを構成する2つのブラシのうち一方のブラシからモータドライバに至る第1共通電流経路上に設けられている。これに対し、通電検出手段は、共通電流経路における、直流モータの上記一対のブラシを構成する2つのブラシのうち他方のブラシからモータドライバに至る第2共通電流経路上に設けられている。
【0069】
例えば、交流電圧印加手段と通電検出手段を隣接して設けると、交流電圧印加手段からの交流電圧がそのまま通電検出手段により検出されてしまい、モータ回路のインピーダンス変化による交流成分の変化が検出されなくなってしまう。そのため、そのように隣接して設ける場合は、両者間に例えば抵抗などのインピーダンス素子を設ける必要がある。
【0070】
これに対し、請求項17に記載の回転検出装置のように、交流電圧印加手段及び通電検出手段を、直流モータを挟んで別々に設けるようにすれば、共通電流経路上において両者間にインピーダンス素子を設ける必要はなく、装置構成の複雑化を防止することができる。
【0071】
ところで、上記請求項17に記載の回転検出装置では、第1共通電流経路上に交流電圧印加手段を設け、他方の第2共通電流経路上に通電検出手段を設けるようにしたが、例えば請求項18に記載のように、共通電流経路上において直流モータの両端(即ち、第1共通電流経路及び第2共通電流経路の双方)にそれぞれ、交流電圧印加手段及び通電検出手段を設けるようにしてもよい。この場合、印加交流制御手段が、各共通電流経路上に設けられた各交流電圧印加手段のうちいずれか一方に対して直流モータへ交流電圧を印加させるよう制御する。そして、回転状態検出手段は、各共通電流経路上に設けられた各通電検出手段のうちいずれか一方又は双方の検出結果に基づいて回転状態を検出する。
【0072】
このように構成された請求項18に記載の回転検出装置において、第1共通電流経路及び第2共通電流経路の双方に設けられた交流電圧印加手段のうちどちらを用いて交流電圧を印加させるか、或いはどちらの通電検出手段による検出結果に基づいて回転状態を検出するかについては、適宜決めることができ、例えば請求項19又は請求項20に記載のように構成することができる。
【0073】
即ち、請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の回転検出装置であって、直流モータの前記定常回転時は、印加交流制御手段は、各共通電流経路のうち直流電源の正極側に接続されている方に設けられた交流電圧印加手段に対して交流電圧を印加させ、回転状態検出手段は、各共通電流経路のうち直流電源の負極側に接続されている方に設けられた通電検出手段による検出結果に基づいて回転状態を検出する。一方、直流モータの短絡制動時は、印加交流制御手段は、定常回転時とは異なる他方の交流電圧印加手段に対して交流電圧を印加させ、回転状態検出手段も、定常回転時とは異なる他方の通電検出手段による検出結果に基づいて回転状態を検出する。
【0074】
つまり、定常回転時は、交流電圧については直流モータの高電位側(直流電源の正極側)に印加し、直流モータの低電位側(直流電源の負極側)に設けられた通電検出手段による検出結果を用いて回転状態を検出する。一方、短絡制動時には、定常回転時とは異なる側の交流電圧印加手段及び通電検出手段を用いる。
【0075】
短絡制動時には、直流モータの逆起電力によって、直流モータに流れる電流の向きは定常回転時とは逆方向となる。そのため、短絡制動時には定常回転時とは異なる側の交流電圧印加手段及び通電検出手段を用いるようにしているのであり、これにより、定常回転時及び短絡制動時の双方ともに、交流電圧は直流モータの高電位側に印加されることになり、回転状態の検出は直流モータの低電位側に設けられた通電検出手段による検出結果が用いられることになる。
【0076】
このように、構成された請求項19に記載の回転検出装置によれば、定常回転時及び短絡制動時の双方ともに直流モータの高電位側から交流電圧が印加されるため、直流モータの低電位側から交流電圧を印加する場合と比較して、回転に伴うモータ回路のインピーダンス変化による交流成分の変化を確実に発生させることができ、回転状態の検出の精度をより高めることができる。
【0077】
また、請求項20に記載の発明は、請求項18に記載の回転検出装置であって、直流モータの定常回転時は、印加交流制御手段は、各共通電流経路のうち直流電源の正極側に接続されている方に設けられた交流電圧印加手段に対して交流電圧を印加させ、回転状態検出手段は、各共通電流経路のうち直流電源の負極側に接続されている方に設けられた通電検出手段による検出結果に基づいて回転状態を検出する。そして、直流モータの短絡制動時も、印加交流制御手段は、定常回転時と同じ交流電圧印加手段に対して交流電圧を印加させ、回転状態検出手段も定常回転時と同じ通電検出手段による検出結果に基づいて回転状態を検出する。
【0078】
つまり、定常回転時と短絡制動時の双方ともに、同じ交流電圧印加手段によって交流電圧を印加し、同じ通電検出手段による検出結果に基づいて回転状態を検出するのである。そのため、請求項19とは異なり、短絡制動時には直流モータの低電位側に交流電圧が印加されることになるが、定常回転時と短絡制動時とで用いる交流電圧印加手段及び通電検出手段を切り替える必要がないため、装置構成を簡素化することができる。
【0079】
次に、請求項21に記載の発明は、請求項16〜請求項20の何れか1項に記載の回転検出装置であって、モータドライバは、複数のスイッチング素子からなるHブリッジ回路にて構成され、このHブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子はMOSFETである。
【0080】
請求項16〜請求項20の何れか1項に記載の回転検出装置のように、直流モータの制動を短絡制動にて行うよう構成されている場合、Hブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子としてMOSFETを用いることで、短絡制動時においても直流モータが完全に停止するまで確実に回転状態を検出することができる。
【0081】
次に、請求項22に記載の発明は、少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、電機子コイルが接続される複数の整流子片を有するコンミテータと、コンミテータを介して各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、を備え、複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間のみ、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されていることを特徴とする直流モータである。
【0082】
このように構成された直流モータによれば、請求項1に記載の回転検出装置を用いてその回転状態を検出することができ、その場合、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0083】
次に、請求項23に記載の発明は、請求項22に記載の直流モータであって、少なくとも1相の相コイルに対して該相コイルの一部又は全部と並列に接続された所定の静電容量値の静電容量素子を備えている。
【0084】
このように構成された直流モータによれば、請求項2に記載の回転検出装置を用いてその回転状態を検出することができ、その場合、請求項2と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1実施形態の回転角検出装置の概略構成を表す図である。
【図2】電源部を説明するための説明図であり、(a)は電源部から出力される交流重畳電圧の波形を表す図であり、(b)は電源部の概略構成を表す図である。
【図3】回転信号検出部の構成を表すブロック図である。
【図4】第1実施形態のモータが180°回転する間に生じる3種類の状態(モータ回路)を表す説明図である。
【図5】第1実施形態のモータの回転中に流れるモータ電流波形の一例を表す図である。
【図6】第1実施形態のモータの停止時のモータ電流波形の一例を表す図である。
【図7】第1実施形態のモータの停止時に生成される回転パルスSpの一例を表す図である。
【図8】第2実施形態の回転検出装置の概略構成を表す図である。
【図9】第2実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図10】第3実施形態の回転検出装置の概略構成を表す図である。
【図11】第3実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図12】第4実施形態の回転検出装置におけるPWM制動を説明するための説明図である。
【図13】第4実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図14】第5実施形態の回転検出装置の概略構成を表す図である。
【図15】第5実施形態の回転検出装置の動作例を説明するための説明図である。
【図16】第5実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図17】第6実施形態の回転検出装置の概略構成を表す図である。
【図18】第6実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図19】第5実施形態の回転検出装置における、正転時、逆転時、及び短絡制動時の交流回路の等価回路を表す図である。
【図20】第7実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図21】第8実施形態のモータの概略構成を表す図である。
【図22】第8実施形態のモータの停止時のモータ電流波形の一例を表す図である。
【図23】第8実施形態の信号処理部及び制御部を説明する図であり、(a)は信号処理部及び制御部の構成を表すブロック図であり、(b)は信号処理部から出力される回転パルスを表す図である。
【図24】第9実施形態のモータの概略構成を表す図である。
【図25】第9実施形態のモータにおける、リングバリスタに対するコンデンサの設置状態を表す図である。
【図26】他の実施対応例(スター結線された3相モータ)を表す図である。
【図27】他の実施対応例モータの変形例(Δ結線された5相モータ)を表す図である。
【図28】他の実施対応例(相コイルへのコンデンサ接続方法の別例)を表す図である。
【図29】重畳部及び検出部の他の構成例を表す図である。
【図30】重畳部を構成する交流電源から出力される交流電圧波形の別例を表す図である。
【図31】他の実施対応例(コイルが重ね巻されてなる8相モータ)を表す図である。
【図32】他の実施対応例(特定の整流子片間に静電容量をもたせる一例)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、本発明が適用された実施形態の回転角検出装置の概略構成を示す。図1に示すように、本実施形態の回転角検出装置1は、モータ2の回転角を検出するための装置であり、モータ2を回転駆動させる(トルクを発生させる)ための直流電圧に所定の周波数の交流電圧が重畳された交流重畳電圧を出力する電源部5と、モータ2に流れる電流(モータ電流)に基づいてモータ2の回転角に応じた信号(回転パルスSp)を生成し出力する回転信号検出部6と、この回転信号検出部6から出力される回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出する回転角検出部7と、を備えている。
【0087】
本実施形態の回転角検出装置1は、例えば車両の空調装置における既述の各ダンパーを駆動するモータの、回転角を検出するために用いられるものである。もちろん、車両の空調装置への適用は本発明の実施態様としてのあくまでも一例である。
【0088】
電源部5から出力されてモータ2に印加される交流重畳電圧は、図2(a)に示すように、直流電圧Vbに、振幅Vsで周波数fの交流電圧が重畳された、交直混在(脈流の一種)である。そのため、この交流重畳電圧がモータ2に印加されることにより、モータ2に流れるモータ電流も、直流電流に交流電流が重畳された電流となる。
【0089】
電源部5の内部構成は図2(b)に示す通りであり、モータ2を駆動させるための直流電圧を生成し出力する直流電源3と、モータ2の回転角を検出するための所定の周波数の交流電圧を生成し出力する交流電源4と、直流電源3から出力される直流電圧に交流電源4から出力された交流電圧を重畳させてモータ2へ印加するためのカップリングコンデンサC10と、を備えている。
【0090】
このような構成により、モータ2には、単に直流電源3から出力される直流電圧が印加されるだけではなく、直流電源3から出力される直流電圧に交流電源4から出力される交流電圧が重畳されて印加される。そのため、モータ2には、直流電源3からの直流電圧による直流電流に交流電源4からの交流電圧による交流電流が重畳された電流が流れる。つまり、直流電源3は直流電流を生成してモータ2へ供給するものであり、交流電源4は交流電流を生成してモータ2へ供給するものであるとも言える。
【0091】
なお、電源部5は、直流電源3から直流電圧を出力させずに交流電源4からの交流電圧のみを出力することも可能である。
モータ2は、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17を備え、電機子コイルとして3相の相コイルを有するブラシ付きの3相直流モータであり、各ブラシ16,17と接触する3つの整流子片11,12,13からなるコンミテータ10を備えている。そして、電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1,L2,L3が、それぞれ、図示のようにΔ結線されている。
【0092】
即ち、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1,L2,L3からなる電機子コイル及びコンミテータ10により、アーマチャが構成される。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
【0093】
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つが、各ブラシ16,17にそれぞれ接触しており、モータ2の回転によるコンミテータ10の回転に伴って、各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
【0094】
なお、本実施形態のモータ2は、図示は省略したものの、ヨークハウジングを有すると共に、ヨークハウジングの内壁側に永久磁石からなる界磁が設けられ、この界磁と対向するようにアーマチャが配置されている。
【0095】
更に、本実施形態では、モータ2において、第1相コイルL1と並列に、コンデンサC1が接続されている。そのため、電源部5を構成する各電源3,4から出力されてカップリングコンデンサC10により重畳されてなる交流重畳電圧は、各ブラシ16,17およびこれらに接触しているいずれか2つの整流子片を介して、モータ2内部の各相コイルL1,L2,L3及びコンデンサC1からなる回路(モータ回路)に印加される。そして、このように交流重畳電圧が印加されることにより、モータ回路には交流電流成分を含む電流が流れる。
【0096】
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源3からみればこのコンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源3からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れることとなる。
【0097】
一方、交流電源4からみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図1に示す状態からモータ2が時計回りに回転(即ちコンミテータ10が時計回りに回転)して、通電経路の下流側(グランド電位側)のブラシ17に第1整流子片11が接触するようになると、各ブラシ16,17間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路が形成される。即ち、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が形成される。そのため、その状態では、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは図1に示した状態とは異なり、例えば特定の周波数以上の領域では非常に小さいインピーダンスとなる。
【0098】
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1,L2,L3のみからなる回路とみなせ、故に、直流電源3からの直流電流によって回転するモータ2の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
【0099】
これに対し、交流的にみれば、モータ2の回転角に応じて各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、モータ2が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるもののインピーダンスの変化は二段階である。これについては後で図4を用いて詳しく説明する。そして、インピーダンスの変化は、モータ2に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の変化、或いはそのモータ電流が流れる通電経路上の電圧(経路電圧)に含まれる交流成分(交流電圧成分)の変化として直接現れる。
【0100】
そのため、回転角に応じて変化するインピーダンスを検出できれば、モータ2の回転角を検出することができる。また、インピーダンスの変化は、交流電流の変化として直接現れる。そこで本実施形態の回転角検出装置1では、回転信号検出部6が、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅の変化を検出する。つまり、インピーダンスの変化によって生じる交流電流成分の振幅の変化を間接的に検出する。そして、その検出した交流電流成分の振幅の変化に基づいて、後述するように回転パルスSpを生成する。
【0101】
回転信号検出部6は、モータ2の通電経路上(詳しくはグランド電位側のブラシ17からグランド電位に至る通電経路上)に設けられた電流検出部21と、この電流検出部21により検出された通電電流(モータ電流)に基づく各種信号処理を行って回転パルスSpを生成する信号処理部22とを備えている。この回転信号検出部6のより具体的な構成を図3に示す。
【0102】
図3に示すように、電流検出部21は、モータ2の通電経路上に挿入された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端の電圧が、モータ電流に応じた検出信号として信号処理部22へ取り込まれる。
【0103】
なお、モータ電流は、図5に示すように変化する。図5の詳細については後述するが、要するに、モータ電流は直流電流成分に交流電流成分が重畳した形となり、且つ、モータ2が180°回転する間に交流電流成分の振幅が二段階に変化する。
【0104】
信号処理部22は、ハイパスフィルタ(HPF)23と、増幅部24と、包絡線検波部25と、ローパスフィルタ(LPF)26と、閾値設定部27と、比較部28と、パルス生成部29と、を備えている。
【0105】
HPF23は、コンデンサC11及び抵抗R2からなる周知の構成のものである。信号処理部22に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF23によって、直流電流成分を含む所定の遮断周波数以下の帯域の信号がカットされ、交流電源4にて生成される交流電圧の周波数を含む、上記遮断周波数より高い周波数成分が抽出されて、増幅部24に入力される。そのため、検出されたモータ電流(検出信号)のうち、直流電流成分はこのHPF23によって遮断され、交流電流成分のみが増幅部24へ入力されることとなる。
【0106】
電流検出抵抗R1により検出され、HPF23によって抽出された検出信号(交流電流成分)は、増幅部24にて増幅される。
増幅部24は、オペアンプ30と、オペアンプ30の出力端子と非反転入力端子との間に接続された抵抗R3と、オペアンプ30の非反転入力端子とグランド電位との間に接続された抵抗R4とを備え、反転入力端子に入力される信号(HPF23からの検出信号)が所定の増幅率にて増幅される。
【0107】
増幅部24にて増幅された検出信号は、包絡線検波部25にて包絡線検波される。この包絡線検波部25は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R5と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC12とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、増幅部24にて増幅された検出信号が入力される。
【0108】
この包絡線検波部25により、増幅部24から入力された交流の検出信号が包絡線検波され、交流電流成分の振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。
【0109】
そして、その生成された検波信号は、LPF26にて高周波成分がカットされた上で、比較部28に入力される。LPF26は、抵抗R6及びコンデンサC13からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R6にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
【0110】
比較部28は、コンパレータ31と、コンパレータ31の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R9と、一端がコンパレータ31の非反転入力端子に接続されて他端がLPF26に接続された抵抗R7と、一端がコンパレータ31の反転入力端子に接続されて他端が閾値設定部27に接続された抵抗R8とを備えてなるものである。
【0111】
包絡線検波部25から出力された検波信号は、LPF26を介して比較部28に入力され、この比較部28において抵抗R7を介してコンパレータ31の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ31の反転入力端子には、抵抗R8を介して閾値設定部27からの閾値が入力される。これにより、コンパレータ31では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
【0112】
閾値設定部27にて設定され比較部28に入力される閾値は、本実施形態では、図5に示したモータ電流波形のうち振幅が小さい期間での検波信号よりも大きく、且つ、振幅が大きい期間での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
【0113】
そのため、振幅の小さい期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は閾値設定部27からの閾値よりも小さいため、コンパレータ31からはローレベルの信号が出力される。一方、振幅の大きい期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ31からはハイレベルの信号が出力される。
【0114】
そして、コンパレータ31から出力されたローレベル、ハイレベルの信号は、パルス生成部29にて適宜波形整形、レベル調整された上で、モータ2の回転角に応じた回転パルスSpとして回転角検出部7へ出力される。
【0115】
このように、信号処理部22では、電流検出抵抗R1にて検出されたモータ電流(検出信号)に対して低周波領域のカット、交流電流成分の増幅、包絡線検波といった各種信号処理を行った上で回転パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な回転パルスSpが生成される。
【0116】
なお、HPF23に代えて、例えば、交流電流成分の周波数を含む所定の帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを用いるようにしてもよい。LPF26についても、同様にバンドパスフィルタを用いるようにしてもよい。また、比較部28から出力される信号は、それ自体がすでに比較的安定したパルス信号となっており、これをそのまま回転角検出部7へ入力することもできる。そのため、パルス生成部29を省略することも可能である。
【0117】
回転角検出部7は、パルス生成部29から入力された回転パルスSpに基づき、例えばその回転パルスSpの立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、モータ2の回転角を検出する。そして、その検出された回転角は、図示しないモータ2の制御回路においてフィードバック信号として用いられる。
【0118】
ここで、モータ2が180°回転する間における、モータ2内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を、図4(a)に示す。図4(a)に示すように、本実施形態のモータ2のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
【0119】
状態Aは、図示の如く、直流電源3の正極側(以下「Vb側」ともいう)のブラシ16に第1整流子片11が接触し、グランド電位側(以下「GND側」ともいう)のブラシ17に第2整流子片12が接触した状態である。この状態Aでのモータ2の等価回路、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。なお、Vbとは、図2(a)で説明した通り、直流電源3から出力される直流電圧を示すものである。
【0120】
この状態Aでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路上には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Aでは、回路全体のインピーダンスが高くなり、故に、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅は小さい。
【0121】
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態であり、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Aのときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わっている。GND側(グランド電位側)のブラシ17には第2整流子片12が接触している。
【0122】
この状態Bでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路上には必ずいずれかのコイルが存在することになる。そのため、この状態Bでも回路全体のインピーダンスは高く、故に、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅は小さい。なお、この状態Bと状態Aは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。そのため、交流電流成分の振幅も同じ大きさである。
【0123】
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A,Bのときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わっている。Vb側のブラシ16には第3整流子片13が接触している。
【0124】
この状態Cでは、第2相コイルL2及び第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。これにより、回路全体のインピーダンスは低くなり、故に、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅は大きくなる。
【0125】
このように、モータ2が180°回転する間には、各ブラシ16,17と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴って各ブラシ16,17間のモータ回路は状態A,B,Cの三種類に切り替わる。しかし、状態Aと状態Bは、既述の通り、回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は二種類段階である。
【0126】
なお、モータ2の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化するが、この切り替わり期間はモータ2が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
【0127】
状態Cから更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Cのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。GND側のブラシ17には第1整流子片11が接触している。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
【0128】
この状態A’から更に回転が進むと、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。Vb側のブラシ16には第2整流子片12が接触している。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
【0129】
この状態B’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態B’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。GND側のブラシ17には第3整流子片13が接触している。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
【0130】
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
【0131】
つまり、モータ2は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態A、B、A’、B’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、状態C、C’も同じインピーダンスであり、その値は状態A等のインピーダンスよりも非常に低い。
【0132】
そのため、モータ電流は、図5に示すように、状態A、B、A’、B’のときは交流電流成分の振幅が小さく、状態C、C’のときは交流電流成分の振幅が大きくなる。
しかも、本実施形態では、モータ2の回転角によって変化するインピーダンスの差が大きくなるよう構成されている。即ち、図4(a)で説明したように、状態A、B、A’、B’のインピーダンスは、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの経路が生じないために高いインピーダンスとなるのに対し、状態C,C’のインピーダンスは、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの経路が生じて非常に低いインピーダンスとなる。
【0133】
このように、状態A,B、A’、B’のときのインピーダンスと状態C、C’のときのインピーダンスに大きな差があるため、モータ電流中の交流電流成分の振幅も、状態A、B,A’、B’のときと状態C、C’のときとで、図5に示すように大きな差が生じるのである。なお、図5は、状態A、B,A’、B’のときのインピーダンスが状態C、C’のときのインピーダンスの約4倍の場合の波形を例示している。
【0134】
そのため、信号処理部22における閾値設定部27で生成すべき閾値を、より高い自由度・範囲内で設定することができる。そして例えば、閾値を、状態Aのときの検波信号と状態Cのときの検波信号の中間値付近の値に設定すれば、比較部28による比較がより正確に行われ、パルス生成部29は回転角に応じた正確な回転パルスSpを確実に生成することができる。
【0135】
ところで、交流電源4から出力される交流電圧の周波数は、本実施形態では、状態A,B、A’、B’のモータ回路における共振周波数をf1、状態C、C’のモータ回路における共振周波数をf2としたとき、これら各共振周波数とはいずれも異なる周波数に設定されている。より具体的には、これら各周波数f1,f2のいずれよりも大きい所定の周波数の交流電流が交流電源4から供給されるように構成されている。
【0136】
図4(b)に、図4(a)に示した各状態におけるインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、状態A,B,A’,B’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この状態A,B,A’,B’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、共振周波数f1で小さなピーク値が生じるものの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
【0137】
これに対し、状態C,C’の場合、各相コイルL1,L2,L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数f2を中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、状態A,B,A’,B’と状態C,C’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数f3を除き、インピーダンスが異なる。特に、共振周波数f1を中心とする所定帯域や、周波数f3よりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。そのうち特に、周波数f3よりもある程度高い周波数以上の領域では、例えば周囲温度の変化によってコンデンサC1の静電容量値が変化して共振周波数f1,f2が変化しても、インピーダンス比の変化が少ないため、回路設計上の観点からも、交流電源4の交流電圧の周波数として使用しやすい領域である。
【0138】
そのため、本実施形態では、交流電源4の交流電圧の周波数を、周波数f3よりも高い所定の周波数としている。
続いて、回転中のモータ2が停止する際のモータ電流波形の一例を、図6に示す。なお、図6では、インピーダンスが大きくて交流電流成分の振幅の小さい期間(状態A、B、A’B’となる期間)については交流電流成分の波形が非常に小さいため図示を省略している。後述する図7においても同様である。
【0139】
図6に示す例では、回転中のモータ2に制動をかけて停止させる停止制御(制動制御)の際、モータ2への直流電源3からの直流電圧の印加(直流電流の電源供給)を停止させる。一方、交流電源4からの交流電圧(交流電流)については、モータ2の駆動に関与するものではなく、あくまでもモータ2の回転角を検出する目的で供給されるものであるため、回転中か停止制御時かにかかわらず、モータ2の回転が制御されている間は常時モータ2へ供給される。
【0140】
そのため、停止制御開始後(直流電源3からの直流電圧印加電源停止後)のモータ電流は、図示の如く、誘導起電力によって生じる電流に交流電源4からの交流電流が重畳したものとなる。このうち、誘導起電力による電流の大きさは、モータ2の回転速度が低くなるほど小さくなるため、この誘導起電力による電流は徐々に小さくなり、モータ2が停止したときにはこの電流もゼロになる。
【0141】
一方、交流電流は、上記のように回転角検出のために常に交流電源4から供給されるものであるため、図6に示すように、モータ2の回転速度に関係なく、回転角に応じた(モータ回路のインピーダンスの変化に応じた)振幅の交流電流が流れる。そのため、モータ2の回転速度に関係なく、モータ2の回転角を検出することができるのである。
【0142】
図6に示した停止制御時における、信号処理部22にて生成される回転パルスSpの例を、図7に示す。図7の上側の波形は、増幅部24にて増幅された後の検出信号であり、下側の波形が、パルス生成部29にて生成される回転パルスSpである。本例では、交流電流成分の振幅が小振幅から大振幅に変化するタイミング毎に、所定時間幅の回転パルスSpが生成される。
【0143】
そして、本実施形態では、回転パルスSpはモータ2が180°回転する毎に生成される。そのため、この回転パルスSpが生成される毎にモータ2が180°回転したものとして、モータ2の回転角を検出することができる。
【0144】
なお、本実施形態の回転角検出装置1は、回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出するよう構成されたものであるが、回転パルスSpの間隔(例えば立ち上がりエッジの間隔)に基づいてモータ2の回転速度も検出できるよう構成してもよい。或いは、回転角ではなく回転速度を検出する回転速度検出装置として構成してもよい。モータ2が何度回転する毎に回転パルスSpが出力されるかは予めわかっているため、その回転パルスSpが出力される間隔(周期)がわかれば、モータ2の回転速度を検出することができる。
【0145】
以上説明したように、本実施形態の回転角検出装置1では、モータ2を駆動させるための電源としての直流電源3とは別に、回転角検出用のために交流電源4が設けられ、モータ2が回転される際は、直流電源3からの直流電圧に交流電源4空の交流電圧が重畳された交流重畳電圧がモータ2へ印加され、これによりモータ2には交流成分を含むモータ電流が流れる。
【0146】
また、モータ2においては、3相の各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルL1と並列に回転角検出用のコンデンサC1が接続されている。そして、信号処理部22にて、電流検出部21にて検出されたモータ電流から交流電流成分のみを抽出し、その交流電流成分の振幅の変化に応じた回転パルスSpを生成する。コンデンサC1が接続されていることにより、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは、モータ2の回転角に応じて変化し、その変化は交流電流成分の振幅の大きさの変化として現れる。そのため、交流電流成分の振幅の変化に基づいて、回転パルスSpの生成、延いては回転角の検出を行うことができるのである。
【0147】
従って、本実施形態の回転角検出装置1によれば、仮にモータ2の停止制御時に直流電源3らの直流電圧の印加(直流電流の供給)が停止されたが0Vになったとしても、交流電圧が印加(交流電流が供給)され続けることにより、減速時〜停止時にかけても回転角を確実に検出することができる。しかも、回転角の検出は、モータ電流に含まれる交流電流成分に基づいて行っており、モータ駆動用の直流電流に影響を与えることなく検出が行われている。そのため、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
【0148】
また、交流電源4からモータ2に印加される交流電圧の周波数が、モータ2の回転中に各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の共振周波数f1,f2よりも大きい所定の周波数に設定されている。これにより、仮に周囲温度が変化してコンデンサC1の静電容量値がその温度特性に伴って変化したとしても、モータ回路全体のインピーダンスは大きく変化することはない。そのため、コンデンサC1の温度特性の影響を受けずに安定した回転角の検出が可能となる。
【0149】
なお、交流電源4が生成する交流電圧の周波数を上記のように各共振周波数f1,f2とは異なるものにするのは必須ではなく、上記とは逆に、各共振周波数f1,f2のいずれかと同じ周波数の交流電流を生成するようにしてもよい。このようにすれば、回転に伴って変化するインピーダンスの比が大きくなるため、交流電流成分の振幅の変化も大きくなる。
【0150】
また、本実施形態では、モータ2の回転に伴って生じるモータ回路のインピーダンスの変化を、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅の変化として検出している。しかもその振幅の変化は、検出信号がHPF23、増幅部24、包絡線検波部25、及びLPF26によって信号処理された上で、コンパレータ31等からなる比較部28により検出される。そのため、簡易的な構成でありながら、ノイズや外乱の影響を抑制して高精度に振幅の変化を検出でき、延いては高精度に回転角を検出することができる。
【0151】
また、モータ2に接続されるコンデンサC1は、必要最小限の1つだけ(1つの相電機子コイルに対して接続されるだけ)である。しかも、1つのコンデンサC1を接続することにより、回転角に応じて、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が存在してインピーダンスが非常に小さくなる期間(状態C、C’)と、コンデンサC1のみの通電経路が存在せず(通電経路上に必ずいずれかの相電機子コイルが存在して)インピーダンスが高くなる期間(状態A、B、A’、B’)とが生じ、両期間のインピーダンスの差は大きくなるため、両期間の交流電流成分の振幅差も大きくなる。
【0152】
そのため、モータ2の大型化・コストアップ(延いては装置全体の大型化・コストアップ)を抑えつつ、回転角の検出をより高精度に行うことができる。
また、既述の特許文献1に開示された方法では、直流電流の変化を検出していることから、ブラシやコンミテータの経年劣化によって、波形に歪みが生じるなど、検出精度の悪化が生じる可能性が高い。これに対し、本実施形態の回転角検出装置1は、交流電流成分の振幅変化に基づいて回転角を検出するものであり、その振幅変化はモータ回路のインピーダンスに依存するため、ブラシやコンミテータの経年劣化の影響を抑制することが可能となる。
【0153】
ここで、本実施形態において、電源部5は本発明の電源手段に相当し、電流検出部21は本発明の通電検出手段に相当する。また、信号処理部22及び回転角検出部7により、本発明の回転状態検出手段が構成される。
【0154】
[第2実施形態]
図8に、本実施形態の回転検出装置40の概略構成を示す。図8に示すように、本実施形態の回転検出装置40は、モータ2と、このモータ2へ電源を供給する電源部33と、モータ2に流れるモータ電流を検出する電流検出部21と、この電流検出部21により検出されたモータ電流に基づいて回転パルスSpを生成する信号処理部43と、電源部33及び信号処理部43を制御する制御部41と、を備えている。
【0155】
電源部33は、直流電源3、交流電源4、及びカップリングコンデンサC10を備えている点では第1実施形態の電源部5(図2(b)参照)と同じであるが、本実施形態の電源部33は、更に、直流電源3からモータ2へ至る通電経路上に、直流電源スイッチ34が設けられている。この直流電源スイッチ34は、制御部41からの直流印加制御信号Sdcにより制御(ON・OFF)され、ONされているときには直流電源3からの直流電圧がモータ2に印加され、OFFされているときには直流電源3からモータ2への直流電圧の印加が遮断される。
【0156】
尚、本実施形態では、直流印加制御信号Sdcとしてハイ(H)レベル又はロー(L)レベルの信号が出力され、直流印加制御信号SdcがHレベルのときは直流電源スイッチ34はONし、直流印加制御信号SdcがLレベルのときは直流電源スイッチ34はOFFする。
【0157】
また、電源部33は、モータ2に対して交流電圧を印加するための重畳部35を備えている。具体的には、重畳部35は、図2(b)に示した電源部5における交流電源4とカップリングコンデンサC10からなる構成に対し、さらにその交流電源4とカップリングコンデンサC10の間に交流電源スイッチ36が設けられた構成となっている。交流電源スイッチ36は、制御部41からの交流重畳制御信号Sacにより制御(ON・OFF)され、ONされているときには交流電源4からの交流電圧がモータ2に印加され、OFFされているときには交流電源4からモータ2への交流電圧の印加が遮断される。
【0158】
尚、本実施形態では、交流重畳制御信号Sacとしてハイ(H)レベル又はロー(L)レベルの信号が出力され、交流重畳制御信号SacがHレベルのときは交流電源スイッチ36はONし、交流重畳制御信号SacがLレベルのときは交流電源スイッチ36はOFFする。
【0159】
尚、各スイッチ34,36の具体的構成は種々考えられ、例えばMOSFETなどの半導体スイッチング素子にて構成してもよいし、また例えば、リレー等により構成してもよい。
【0160】
電流検出部21は、図3に示した第1実施形態の電流検出部21と同じであるため、第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
信号処理部43も、閾値設定部44を除く構成については図3に示した第1実施形態の信号処理部22と同じであるため、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0161】
そして、本実施形態の信号処理部43が備える閾値設定部44は、制御部41からの閾値信号Sthに応じて閾値が可変設定されるよう構成されている。
制御部41は、直流電源スイッチ34及び交流電源スイッチ36を制御(ON・OFF)することにより、モータ2の回転を制御する。即ち、モータ2を回転させる際(例えば起動〜定常回転時)は、各スイッチ34,36を共にONさせることにより、直流電圧及び交流電圧を共にモータ2に印加させる。これにより、モータ2の回転時には、直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧がモータ2に印加されることとなる。
【0162】
そして、モータ2を制動させて最終的に停止させる際は、交流電源スイッチ36はONさせたまま、直流電源スイッチ34をOFFさせる。つまり、制動のために直流電源3からの直流電圧の印加は遮断するものの、モータ2が完全に停止するまで回転角D及び回転速度Nの検出を継続すべく、交流電源4からの交流電圧の印加は継続させる。
【0163】
また、制御部41は、モータ2を回転させる際、信号処理部43内の閾値設定部44に閾値信号Sthを出力することにより、閾値設定部44から出力される閾値を設定する。更に、制御部41は、信号処理部43からの回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角D及び回転速度Nを検出する回転検出部42を備えている。
【0164】
本実施形態の制御部41は、主としてマイクロコンピュータにより構成され、マイクロコンピュータが後述する図9のモータ駆動制御処理を含む各種プログラムを実行することにより、モータ2の回転制御やモータ2の回転角Dや回転速度Nの検出などが行われる。
【0165】
図9に基づき、制御部41が実行するモータ駆動制御処理について説明する。制御部41は、このモータ駆動制御処理を開始すると、まずS110にて、目標回転角Do及び閾値データを取得する。この目標回転角Do及び閾値データは、例えば、予めメモリ等に格納された固定値であってもよいし、外部から制御部41へ入力されるものであってもよい。
【0166】
目標回転角Doは、ここでは制動を開始するタイミング(角度)であって、最終的に停止したときの目標とすべき角度を示すものではない。これは、制動をかけてもモータ2がすぐに停止するとは限らず、制動を開始した後もモータ2が完全に停止するまでは惰性で回転を続けるためである。
【0167】
そのため、目標回転角Doとして、最終的に停止したときの角度を設定する場合は、制動開始から完全に停止するまでの惰性回転量を考慮した値に設定する必要がある。
目標回転角Doと閾値データを取得すると、S115にて、閾値の設定を行う。即ち、取得した閾値データに応じた閾値信号Sthを閾値設定部44に出力する。これにより、閾値設定部44では、閾値データに対応した閾値が設定される。
【0168】
そして、S120にて、交流電源スイッチ36へHレベルの交流重畳制御信号Sacを出力することにより交流電源スイッチ36をONさせて、モータ電流が流れる通電経路上に交流成分を重畳する。即ち、交流電源4からの交流電圧をモータ2へ印加する。
【0169】
更に、S125にて、直流電源スイッチ34へHレベルの直流印加制御信号Sdcを出力することにより直流電源スイッチ34をONさせて、モータ2へ直流電圧を印加する。これにより、直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧が電源部33からモータ2へ印加され、モータ2が回転を開始する。
【0170】
そして、S130にて、回転パルスSpが検出された否か、即ち信号処理部43から回転パルスSpが入力されたか否かを判断し、回転パルスSpが検出された場合(S130:YES)、S135にて、その回転パルスSpに基づいて回転角D及び回転速度Nを算出する。これらの算出は具体的には制御部41における回転検出部42にて行われる。
【0171】
なお、回転角Dは、回転パルスSpをカウントすることによりそのカウント値に基づいて算出される。また、回転角度Nは、回転パルスSpの出力間隔(周期)に基づいて算出される。そのため、回転速度Nの算出は少なくとも二つめの回転パルスSpが出力されるまで待つ必要がある。
【0172】
S135にて回転角D及び回転速度Nを算出した後は、S140にて、現時点での回転角Dが目標回転角Doに等しいか否かを判断する。そして、回転角Dが目標回転角Doに到達するまではS130〜S140の処理を繰り返すが、回転角Dが目標回転角Doに到達すると(S140:YES)、モータ2を制動させるべく、S145にて、直流電源スイッチ34へLレベルの直流印加制御信号Sdcを出力することにより直流電源スイッチ34をOFFさせて、モータ2への直流電圧の印加を遮断する。これにより、モータ2の制動が開始される。但し、制動開始後も交流電源4からの交流電圧の印加は引き続き継続する。
【0173】
S145による制動開始後、S150にて、そのS145による制動開始から(即ち直流電圧の印加を遮断してから)y秒経過したか否かを判断する。このy秒は、制動開始からモータ2が完全に停止するまでの必要十分な時間である。つまり、S150の判断処理は、モータ2が完全に停止したか否かを判断する処理であるとも言える。
【0174】
S150にて、制動開始からまだy秒経過していない場合は、S155に進み、S130と同様に回転パルスSpが検出されたか否かを判断する。そして、回転パルスSpが検出された場合は(S155:YES)、S160にて、S135と同様に回転角D及び回転速度Nの算出を行い、再びS150に戻る。
【0175】
そして、S145の直流電圧遮断による制動開始からy秒経過すると(S150:YES)、S165にて、交流電源スイッチ36へLレベルの交流重畳制御信号Sacを出力することにより交流電源スイッチ36をOFFさせ、モータ2への交流電圧の印加(交流成分の重畳)を停止して、このモータ駆動制御処理を終了する。
【0176】
なお、S145の直流電圧遮断による制動開始後も、回転パルスSpが検出される度にS160にて回転角Dを算出するようにしたが、回転パルスSpのカウントのみ行って、y秒経過した後にそれまでの回転パルスSpのカウント総数に基づいて最終的な回転角Dを算出するようにしてもよい。
【0177】
このように構成された本実施形態の回転検出装置40によれば、直流電源スイッチ34及び交流電源スイッチ36を個別に制御可能とすることで、モータ2の起動から停止までの制御を容易に行うことができる。
【0178】
そして、モータ2の制動は直流電源3からの直流電圧の印加が遮断されることにより行われ、重畳部35による交流電圧の重畳はモータ2が完全に停止するまで継続されるため、モータ2が完全に停止するまで、その回転角D及び回転速度Nを確実に検出することができる。
【0179】
ここで、本実施形態において、直流電源スイッチ34は本発明の直流遮断手段に相当し、重畳部35は本発明の交流電圧印加手段に相当し、制御部41は本発明(請求項10)の直流遮断制御手段に相当する。
【0180】
なお、本実施形態において、制御部41をマイクロコンピュータにて構成することはあくまでも一例であり、制御部41は、所望の目的(モータ2の回転制御、及びモータ2の回転角Dや回転速度Nの検出)を達成できる限り、種々の構成を採りうる。このことは、後述する他の各実施形態における各制御部についても同様である。
【0181】
また、本実施形態では、制御部41が、回転角Dに加えて回転速度Nも算出するようにしたが、回転角Dのみ、或いは回転速度Nのみを算出するよう構成してもよい。
更に、本実施形態では、信号処理部43内の閾値設定部44が、閾値を一定値に固定できる場合は、図3に示した第1実施形態の信号処理部22における閾値設定部27のように、閾値が予め固定された構成としてもよい。その場合、図9のモータ駆動制御処理におけるS115の処理(閾値設定)は不要となる。
【0182】
[第3実施形態]
図10に、本実施形態の回転角検出装置50の概略構成を示す。図10に示すように、本実施形態の回転角検出装置50は、図8に示した第2実施形態の回転検出装置40と比較して、主として、電源部33からモータ2への電源供給がモータドライバ51を介して行われることが異なっており、その他の構成については基本的には第2実施形態の回転検出装置40と同じである。そのため、第2実施形態の回転検出装置40と同じ構成要素には第2実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0183】
モータドライバ51は、4つのスイッチからなる周知のHブリッジ回路(いわゆるフルブリッジ)にて構成されたものである。
即ち、モータドライバ51は、バイポーラトランジスタからなるスイッチT1、スイッチT2、スイッチT3、及びスイッチT4を備え、このうちハイサイド側の各スイッチT1,T2のコレクタは電源部33に接続され、ローサイド側の各スイッチT3,T4のエミッタは電流検出部21を介してグランド電位に接続されている。また、ハイサイド側のスイッチT1のエミッタはローサイド側のスイッチT3のコレクタに接続されると共に、その接続点(即ちHブリッジ回路の一方の中点)はモータ2における一方のブラシ16に接続されている。同様に、ハイサイド側における他方のスイッチT2のエミッタはローサイド側における他方のスイッチT4のコレクタに接続されると共に、その接続点(ブリッジ回路の他方の中点)はモータ2における他方のブラシ17に接続されている。
【0184】
そして、各スイッチT1〜T4のベースには、それぞれ、制御部52からモータドライバ制御信号ST1〜ST4が入力され、各スイッチT1〜T4は、それぞれ自身のベースに入力されるモータドライバ制御信号によってON・OFFされる。具体的には、モータドライバ制御信号がHレベルのときにONされ、Lレベルの時にOFFされる。
【0185】
次に、図11を用いて、本実施形態の制御部52が実行するモータ駆動制御処理について説明する。制御部52は、図11のモータ駆動制御処理を開始すると、まずS210にて、目標回転角Do、閾値データ、及び回転方向を取得する。
【0186】
そして、S215で閾値設定(図9のS115と同様)を行い、S220で交流成分の重畳(図9のS120と同様)を行って、S225にて、回転方向を判断する。この判断はS210にて取得した回転方向に基づくものであり、その取得した回転方向が正転であればS230に進み、逆転であればS235に進む。
【0187】
取得した回転方向が正転であることによりS230に進んだ場合は、モータドライバ正転制御を行う。即ち、モータドライバ51を構成する4つのスイッチT1〜T4のうち、スイッチT1及びスイッチT4をONさせて、他の2つのスイッチT2,T3をOFFさせる。そして、S240にて直流電圧の印加(図9のS125と同様)を行うことにより、電源部33からの、直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧が、モータドライバ51を介してモータ2へ印加され、モータ2が正転を開始する。正転時には、図10に示したように、モータ2において、一方のブラシ16から他方のブラシ17へモータ電流が流れることになる。
【0188】
一方、S210にて取得した回転方向が逆転であることによりS235に進んだ場合は、モータドライバ逆転制御を行う。即ち、モータドライバ51を構成する4つのスイッチT1〜T4のうち、スイッチT2及びスイッチT3をONさせて、他の2つのスイッチT1,T4をOFFさせる。そして、S240にて直流電圧の印加を行うことにより、モータドライバ51を介してモータ2に交流重畳電圧が印加され、モータ2が逆転を開始する。逆転時には、図10に示したように、モータ2において、他方のブラシ17から一方のブラシ16へモータ電流が流れることになる。
【0189】
そして、S245にて、回転パルスSpが検出された否かを判断し(図9のS130と同様)、回転パルスSpが検出された場合(S245:YES)、S250にて、その回転パルスSpに基づいて回転角Dを算出する。この回転角Dの算出は、具体的には制御部52における回転角検出部53にて行われ、その算出方法は図9のS135での算出方法と同じである。
【0190】
その後、S255〜S275までの各処理は、S275における算出対象に回転速度Nが含まれていないことを除き、図9のS140〜S160までの各処理と同じである。なお、本実施形態において回転速度Nを算出していないのはあくまでも一例に過ぎず、本実施形態においても第1実施形態と同様に回転角D及び回転速度Nの双方を算出するようにしてもよいし、回転角Dではなく回転速度Nのみを算出するようにしてもよい。
【0191】
そして、S260の直流電圧遮断による制動開始からy秒経過すると(S265:YES)、S280にて、モータドライバ停止制御を行う。つまり、モータドライバ51を構成する4つのスイッチT1〜T4を全てOFFさせる。
【0192】
そして、S285にて、図9のS165と同様、交流電源スイッチ36をOFFさせてモータ2への交流電圧の印加(交流成分の重畳)を停止し、このモータ駆動制御処理を終了する。
【0193】
このように、本実施形態の回転角検出装置50は、モータドライバ51を備えていることによりモータ2の正転又は逆転を制御することができる。そして、正転時及び逆転時のいずれにおいても、電流検出部21にはモータ電流が流れ、直流電圧遮断による制動開始後も重畳部35からの交流電圧の印加は継続される。そのため、正転時及び逆転時の双方で、定常回転時だけでなく制動開始時から完全に停止するまでの間も、回転状態を確実に検出することができる。
【0194】
[第4実施形態]
次に、本実施形態の回転角検出装置について説明する。本実施形態の回転角検出装置は、そのハード構成自体は、図10に示した第3実施形態の回転角検出装置50と同じである。つまり、モータ2はモータドライバ51によって駆動され、そのモータドライバ51は制御部52からの各モータドライバ制御信号ST1〜ST4によって制御される。
【0195】
そして、本実施形態の回転角検出装置が第3実施形態の回転角検出装置50と異なるのは、モータ2を制動させる際の制動方法である。即ち、上述した第3実施形態では、第2実施形態と同様に直流電源3からの直流電圧を遮断することにより制動させるようにしたが、本実施形態では、モータ2に対して印加される直流電源3からの直流電圧の印加極性を所定のデューティ比Sw[%](制動時PWMduty;既述の切替時間比率に相当)にて交互に切り替えることにより制動させる、PWM制動を行う。
【0196】
具体的には、図12に示すように、スイッチT1及びスイッチT4をONさせてスイッチT2及びスイッチT3をOFFさせることによりモータ2における一方のブラシ16が高電位となる期間(つまりモータ2が正転しようとする期間)と、スイッチT2及びスイッチT3をONさせてスイッチT1及びスイッチT4をOFFさせることによりモータ2における他方のブラシ17が高電位となる期間(つまりモータ2が逆転しようとする期間)とを、上記デューティ比にて交互に切り替えるのである。
【0197】
本実施形態では、モータ2に印加される直流電圧の平均値が0となるよう、上記デューティ比Swを50[%]としている。このように、デューティ比50%でモータ2に印加される直流電源の極性を切り替える(回転方向を切り替える)ことにより、モータ2には特定方向への回転トルクが与えられず、回転中のモータ2に制動がかかって停止することになる。
【0198】
なお、デューティ比Swを50[%]としたのはあくまでも一例であり、デューティ比Swは、モータ2の回転を停止し得る程度の範囲の値を適宜設定することができる。
また、モータ2に印加される直流電源3からの直流電圧の印加極性を上記デューティ比)Swにて切り替える際における、その切り替えの周波数(以下「PWM周波数」という)は、適宜設定することができるが、重畳部35から印加される交流電圧の周波数(即ち交流電源4から出力される交流電圧の周波数)とは異なる周波数とする必要がある。より具体的には、交流電圧の周波数の方がPWM周波数よりも高い値となるようにするとよい。
【0199】
PWM制動時に電流検出部21によって検出されるモータ電流波形は、図12に示すように、直流電圧の印加極性の切り替えによって乱れた電流波形となり、その乱れた波形上に、重畳部35からの交流電圧による交流成分が重畳している。
【0200】
そこで、交流電圧の周波数をPWM周波数よりも高く設定すれば、信号処理部43の入力段にあるHPF32にて、PWM周波数の成分を除去して重畳部35からの交流電圧による交流成分のみを容易に取り出すことができる。そのようにして重畳部35による交流成分を取り出せれば、その後包絡線検波部25によって包絡線検波を行い、その包絡線検波後の検波信号に基づいて回転パルスSpを生成することができる。
【0201】
次に、図13を用いて、本実施形態のモータ駆動制御処理について説明する。図13のモータ駆動制御処理が開始されると、制御部はまず、S310にて、目標回転角Do、閾値データ、回転方向、制動時PWMdutySw、及びPWM周波数Sfを取得する。
【0202】
その後、S315〜S355までの処理、即ちモータ2の回転角Dが目標回転角Doに到達するまでの処理は、図11に示した第3実施形態のモータ駆動制御処理におけるS215〜S255までの処理と同じである。
【0203】
そして、モータ2の回転角Dが目標回転角Doに到達すると(S355:YES)、S360にて、モータドライバPWM制動制御を行う。即ち、デューティ比Sw[%]、PWM周波数Sfにて、上述したPWM制動(正転・逆転の切り替え)を行うのである。
【0204】
そして、S360にて、S355によるPWM制動制御の開始からy秒経過したか否かを判断し、y秒経過するまでは回転パルスSpが検出される毎に回転角Dを算出するが、y秒経過した場合は(S365:YES)、S380にて直流電源スイッチ34をOFFさせて直流電圧の印加を遮断する。更に、S385にて、図11のS280と同様にモータドライバ停止制御を行い、続くS390にて、交流電源スイッチ36をOFFさせてモータ2への交流電圧の印加(交流成分の重畳)を停止し、このモータ駆動制御処理を終了する。
【0205】
このように、本実施形態では、制動時に直流電圧の印加を遮断せず、PWM制動を行うことによって、モータ2に印加される直流電圧の平均値を0(或いはモータ2が回転しない程度の小さな値)とすることにより、モータ2を制動・停止させることができる。
【0206】
そして、そのPWM制御時においても、制動開始からモータ2が完全に停止するまでの間、モータ2への交流重畳電圧の印加は継続されるため、完全に停止するまで回転状態を確実に検出することができる。
【0207】
[第5実施形態]
図14に、本実施形態の回転角検出装置60の概略構成を示す。なお、図14の回転角検出装置60において、図10に示した第3実施形態の回転角検出装置50と同じ構成要素には図10と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0208】
本実施形態の回転角検出装置60は、直流電源3からの直流電圧をモータドライバ61を介してモータ2に印加するという点では、図10に示した第3実施形態の回転角検出装置50と共通している。しかし、第3実施形態ではPWM制動によってモータ2の制動を行うようにしたのに対し、本実施形態の回転角検出装置60では、短絡制動によりモータ2を制動させる。
【0209】
モータドライバ61は、4つのスイッチからなる周知のHブリッジ回路(いわゆるフルブリッジ)にて構成されたものである。
即ち、モータドライバ61は、MOSFETからなるスイッチMOS1、スイッチMOS2、スイッチMOS3、及びスイッチMOS4を備え、このうちハイサイド側の各スイッチMOS1,MOS2のドレインは直流電源スイッチ34を介して直流電源3に接続され、ローサイド側の各スイッチMOS3,MOS4のソースはグランド電位に接続されている。また、ハイサイド側のスイッチMOS1のソースはローサイド側のスイッチMOS3のドレインに接続されると共に、その接続点(即ちHブリッジ回路の一方の中点J)はモータ2における一方のブラシ16に接続されている。同様に、ハイサイド側における他方のスイッチMOS2のソースはローサイド側における他方のスイッチMOS4のドレインに接続されると共に、その接続点(ブリッジ回路の他方の中点K)はモータ2における他方のブラシ17に接続されている。
【0210】
そして、各スイッチMOS1〜MOS4のゲートには、それぞれ、制御部62からモータドライバ制御信号SM1〜SM4が入力され、各スイッチMOS1〜MOS4は、それぞれ自身のベースに入力されるモータドライバ制御信号によってON・OFFされる。具体的には、モータドライバ制御信号がHレベルのときにONされ、Lレベルの時にOFFされる。
【0211】
そして、本実施形態において行われる短絡制動とは、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうちローサイド側の2つのスイッチMOS3,MOS4をONさせることで、モータ2の端子間(各ブラシ16,17間)を、これら各スイッチMOS3,MOS4を介して短絡させることにより、モータ2を制動させるものである。回転中のモータ2の各ブラシ16,17間を各スイッチMOS3,MOS4を介して短絡させると、その短絡時に発生するモータ2の逆起電力によるエネルギーが、ローサイド側の各スイッチMOS3,MOS4、及びモータ2によって消費され、これによりモータ2が制動されてやがて停止することになる。
【0212】
短絡制動によってモータ2を制動させる場合に、図10に示した第3実施形態の回転角検出装置50のように、重畳部35がモータドライバの上流側に設けられ、電流検出部21がモータドライバの下流側に設けられていると、短絡制動が行われる期間中は、モータ2には重畳部35からの交流電圧が印加されず、且つモータ2に流れるモータ電流が電流検出部21に流れないことになる。
【0213】
そこで本実施形態では、直流電源3からモータ2への通電経路のうち、起動〜定常回転時及び短絡制動時の双方ともにモータ電流が流れる共通電流経路上に、重畳部35及び検出部64が設けられている。
【0214】
より具体的には、図14に示すように、モータドライバ61の一方の中点Jからモータ2の一方のブラシ16に至る第1共通電流経路上に、重畳部35が設けられ、モータドライバ61の他方の中点Kからモータ2の他方のブラシ17に至る第2共通電流経路上に、検出部64が設けられている。
【0215】
検出部64は、第2共通電流経路とグランド電位との間に接続された抵抗R10により構成され、この抵抗R10の両端の電圧、即ちグランド電位を基準とした第2共通電流経路上の電圧が、信号処理部43へ入力される。つまり、本実施形態では、直流電源3からモータ2への通電経路上の電圧が検出部64により検出され、信号処理部43は、その検出された電圧に含まれる交流成分に基づき、回転パルスSpを生成する。
【0216】
図15に、本実施形態のモータ2に流れるモータ電流波形と、信号処理部43におけるHPF23からの出力波形、包絡線検波部25からの出力波形(検波信号)、及び回転パルスSpの一例を示す。
【0217】
本実施形態では、上記説明した通り、起動〜停止までの全期間中に常にモータ電流が流れる共通電流経路上に、重畳部35及び検出部64が設けられている。そのため、図15に示すように、起動〜定常回転時〜停止の全期間において、モータ電流には重畳部35からの交流電圧による交流成分が含まれる。そのため、その全期間において、検出部64から入力された検出信号に基づいて回転パルスSpを生成することができる。
【0218】
次に、図16を用いて、本実施形態の制御部62が実行するモータ駆動制御処理について説明する。図16のモータ駆動制御処理において、S410〜S455までの処理、即ち起動から目標回転角Doに到達するまでの処理は、図11に示した第3実施形態のモータ駆動制御処理におけるS210〜S255の処理と同じである。但し、第3実施形態のモータドライバ51はバイポーラトランジスタからなる4つのスイッチT1〜T4により構成されているのに対して、本実施形態のモータドライバ61はMOSFETからなる4つのスイッチMOS1〜MOS4により構成されている。
【0219】
そのため、本実施形態のモータ駆動制御処理では、モータドライバ正転制御の際は(S430)、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、スイッチMOS1及びスイッチMOS4をONさせて、他の2つのスイッチMOS2,MOS3をOFFさせる。一方、モータドライバ逆転制御の際は(S435)、4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、スイッチMOS2及びスイッチMOS3をONさせて、他の2つのスイッチMOS1,MOS4をOFFさせる。
【0220】
そして、モータ2の回転角Dが目標回転角Doに到達すると(S455:YES)、S460にて、モータドライバ短絡制動制御を行う。即ち、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、ローサイド側の2つのスイッチMOS3,MOS4を共にONさせることで、該各スイッチMOS3,MOS4を介してモータ2に短絡電流が流れるようにする。
【0221】
これにより、モータ2への直流電源3からの直流電圧印加が停止されると共に、モータ2の逆起電力によるエネルギーがその短絡経路において消費され、やがてモータ2は徐々に停止に近づいていく。
【0222】
そして、S460のモータドライバ短絡制動制御の開始からy秒経過するまでは、回転パルスSpに基づく回転角Dの算出を継続し(S470〜S475)、y秒経過したときに(S465:YES)、直流電圧の印加を遮断し(S480)、モータドライバ61の各スイッチMOS1〜MOS4を全てOFFさせるモータドライバ停止制御を行って(S490)、重畳部35による交流成分の重畳を停止させる(S490)。
【0223】
このように、本実施形態では、モータ2の制動を短絡制動により行うようにしている。モータドライバ61におけるローサイド側の2つのスイッチMOS3,MOS4をONさせて短絡制動をさせると、直流電源3からモータ2に至る通電経路において、定常回転時にはモータ電流が流れるものの短絡制動時にはモータ電流が流れない経路が生じる。
【0224】
そこで本実施形態では、起動〜定常回転時〜制動時〜停止までの全期間でモータ電流が流れる共通電流経路に重畳部35から交流電圧を印加(重畳)し、且つ、検出部64についても共通電流経路上に設けられて該共通電流経路上の電圧を検出するようにしている。そのため、本実施形態のように短絡制動によってモータ2を制動させるよう構成された回転角検出装置60においても、起動〜定常回転時〜制動時〜停止までの全期間でモータ2の回転角を確実に検出することができる。
【0225】
[第6実施形態]
図17に、本実施形態の回転角検出装置70の概略構成を示す。なお、図17の回転角検出装置70において、図14に示した第5実施形態の回転角検出装置60と同じ構成要素には図14と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0226】
本実施形態の回転角検出装置70が図14(第5実施形態)の回転角検出装置60と異なるのは、各共通電流経路に対する重畳部及び検出部の接続方法である。図17から明らかなように、本実施形態では、モータドライバ71における一方の中点Jとモータ2における一方のブラシ16との間の第1共通電流経路上に、第1重畳部35a及び第1検出部63aが設けられている。また、モータドライバ71における他方の中点Kとモータ2における他方のブラシ17との間の第2共通電流経路上に、第2重畳部35b及び第2検出部63bが設けられている。
【0227】
各共通電流経路上に設けられた第1重畳部35a及び第2重畳部35bは、いずれも、図8に示した重畳部35と同じ構成である。また、各共通電流経路上に設けられた第1検出部63a及び第2検出部63bは、いずれも、図14に示した検出部64と同じ構成である。
【0228】
このような構成により、制御部72からは、第1重畳部35aが有する交流電源スイッチ36(図8参照)をON・OFFするための交流重畳制御信号Sac1が第1重畳部35aに出力されると共に、第2重畳部35bが有する交流電源スイッチ36をON・OFFするための交流重畳制御信号Sac2が第2重畳部35bに出力される
また、第1検出部63aによる検出結果に基づいて第1回転パルスSp1を生成する第1信号処理部43aと、第2検出部63bによる検出結果に基づいて第2回転パルスSp2を生成する第2信号処理部43bとを備えている。各信号処理部43a、43bはいずれも、図8に示した信号処理部43と同じ構成である。
【0229】
そのため、制御部72からは、第1信号処理部43aが有する閾値設定部44(図8参照)に対して閾値を設定させるための第1閾値信号Sth1が第1信号処理部43aに出力されると共に、第2信号処理部43bが有する閾値設定部44に対して閾値を設定させるための第2閾値信号Sth2が第2信号処理部43bに出力される。
【0230】
このように構成された回転角検出装置70において、モータ2を正転させる際は、起動〜定常回転時は、第1重畳部35aにて交流電圧を印加させ、第2信号処理部43bが、第2検出部63bによる検出結果に基づいて第2回転パルスSp2を生成する。
【0231】
そして、正転中のモータ2を短絡制動させると、既述の通り、モータ2には定常回転時とは逆方向に逆起電力による電流が流れる。そこで短絡制動時には、第1重畳部35aに代えて第2重畳部35bによって交流電圧を印加させ、第2信号処理部43bに代えて第1信号処理部43aが、第1検出部63aによる検出結果に基づいて第1回転パルスSp1を生成する。
【0232】
一方、モータ2を逆転させる際は、起動〜定常回転時は、第2重畳部35bにて交流電圧を印加させ、第1信号処理部43が、第1検出部63aによる検出結果に基づいて第1回転パルスSp1を生成する。
【0233】
そして、逆転中のモータ2を短絡制動させると、既述の通り、モータ2には定常回転時とは逆方向に逆起電力による電流が流れる。そこで短絡制動時には、第2重畳部35bに代えて第1重畳部35aによって交流電圧を印加させ、第1信号処理部43aに代えて第2信号処理部43bが、第2検出部63bによる検出結果に基づいて第2回転パルスSp2を生成する。
【0234】
つまり、起動〜定常回転時には、各共通電流経路のうち直流電源3の正極側に接続されている方に設けられた重畳部により交流電圧が印加され、各共通電流経路のうち直流電源3の負極側に接続されている方に設けられた検出部による検出結果に基づいて回転角Dが検出される。一方、短絡制動時は、起動〜定常回転時とは異なる他方の重畳部により交流電圧が印加され、起動〜定常回転時とは異なる他方の検出部による検出結果に基づいて回転角Dが検出される。
【0235】
図18を用いて、本実施形態の制御部72が実行するモータ駆動制御処理について説明する。制御部72は、このモータ駆動制御処理を開始すると、S510にて目標回転角Do、閾値データ、回転方向を取得する。このうち閾値データは、第1信号処理部43a内の閾値設定部44と第2信号処理部43b内の閾値設定部44のそれぞれに対応したものである。
【0236】
そして、S515にて、閾値設定を行う。即ち、第1信号処理部43aに対して第1閾値信号Sth1を出力すると共に、第2信号処理部43bに対して第2閾値信号Sth2を出力する。
【0237】
そして、S520にて回転方向を判断し、正転であれば、S525にて、第1重畳部35aにて交流成分を重畳させる。つまり、第1重畳部35a内の交流電源4からの交流電圧が重畳されることになる。そして、S530にてモータドライバ正転制御を行う。
【0238】
S535〜S555の各処理は、基本的には図16のS440〜S460の各処理と同じである。但し、S540における検出対象の回転パルスは、第2信号処理部43bからの第2回転パルスSp2である。
【0239】
S555にてモータドライバ短絡制動制御が開始されると、続くS560にて、重畳部の切り替え、及び検出対象の回転パルスの切り替えが行われる。即ち、第1重畳部35aに代えて第2重畳部35bにより交流電圧を重畳させると共に、検出対象の回転パルスを第1回転パルスSp1に切り替えて、次のS565に進む。
【0240】
S565〜S575の各処理は、基本的には、図16におけるS465〜S475の各処理と同じである。但し、S570における検出対象の回転パルスは、第1信号処理部43aからの第1回転パルスSp1である。また、S565にて短絡制動制御開始からy秒経過したと判断された場合にはS635に進む。なお、S635〜645の各処理は、図16におけるS480〜S490の各処理と同じである。
【0241】
一方、S520の回転方向判断において逆転と判断された場合は、S580にて、第2重畳部35bにて交流成分を重畳させる。つまり、第2重畳部35b内の交流電源4からの交流電圧が重畳されることになる。そして、S585にてモータドライバ逆転制御を行う。
【0242】
S590〜S610の各処理は、基本的には図16のS440〜S460の各処理と同じである。但し、S595における検出対象の回転パルスは、第1信号処理部43aからの第1回転パルスSp1である。
【0243】
S610にてモータドライバ短絡制動制御が開始されると、続くS615にて、重畳部の切り替え、及び検出対象の回転パルスの切り替えが行われる。即ち、第2重畳部35bに代えて第1重畳部35aにより交流電圧を重畳させると共に、検出対象の回転パルスを第2回転パルスSp2に切り替えて、次のS620に進む。
【0244】
S620〜S630の各処理は、基本的には、図16におけるS465〜S475の各処理と同じである。但し、S625における検出対象の回転パルスは、第2信号処理部43bからの第2回転パルスSp2である。
【0245】
このように、正転時と逆転時で重畳部及び検出部を切り替え、更には起動〜定常回転時と短絡制動時でも重畳部及び検出部を切り替えるようにしているのは、図14に示した第5実施形態の回転角検出装置60のように重畳部35及び検出部64を1つずつ設けた構成の場合、正転時、逆転時、及び短絡制動時のぞれぞれで交流回路のインピーダンス(重畳部35からみたインピーダンス)が異なるからである。
【0246】
図14の回転角検出装置60における、正転時、逆転時、及び短絡制動時の交流回路の等価回路を、図19に示す。図14の回転角検出装置60では、正転時には、モータドライバ61においてスイッチMOS1及びスイッチMOS4がONされるため、正転時における交流回路の等価回路は、図19(a)に示すようになる。なお、図19において、Zvは直流電源3の交流インピーダンスであり、Zmはモータ2の交流インピーダンスであり、Zoは各スイッチMOS1〜MOS4の交流インピーダンス(ON抵抗)であり、Zsは、検出部63及び信号処理部43の交流インピーダンスである。
【0247】
逆転時には、モータドライバ61においてスイッチMOS2及びスイッチMOS3がONされるため、逆転時における交流回路の等価回路は、図19(b)に示すようになる。更に、短絡制動時には、モータドライバ61においてスイッチMOS3及びスイッチMOS4がONされるため、逆転時における交流回路の等価回路は、図19(c)に示すようになる。
【0248】
このように、図14の回転角検出装置60では、正転時、逆転時、短絡制動時のそれぞれで交流回路の等価回路が異なり、故に、検出部にかかる交流電圧もそれぞれ異なる値となる。つまり、検出部による検出結果に含まれる交流成分の振幅レベルが、正転時、逆転時、及び短絡制動時の各々で変化する。
【0249】
そのため、図14の回転角検出装置60では、正転時、逆転時、及び短絡制動時のいずれにおいても回転パルスSpが正確に生成されるよう、増幅部24の増幅率や閾値設定部27にて設定される閾値を設定する必要がある。
【0250】
そこで、本実施形態では、モータ2の両端(各共通電流経路)に重畳部を別々に設けると共に、検出部及び信号処理部についてもモータ2の両端(各共通電流経路)に設け、正転時、逆転時、短絡制動時のいずれにおいても、交流電圧の重畳はモータ2の両端のうち高電位側から行い、モータ2の両端のうち低電位側の検出部による検出結果に基づいて回転パルスを生成するようにしているのである。
【0251】
このようにすることで、正転時、逆転時、短絡制動時のいずれも、増幅部24の増幅率や閾値設定部27にて設定される閾値を共通化することができる。
従って、本実施形態の回転角検出装置70によれば、しかも、正転させるか逆転させるかにかかわらず、定常回転時及び短絡制動時の双方ともにモータ2の高電位側から交流電圧が印加されるため、モータ2の低電位側から交流電圧を印加する場合と比較して、回転に伴う交流成分の変化を確実に発生させることができ、回転状態の検出の精度をより高めることができる。
【0252】
[第7実施形態]
上記第6実施形態では、正転時、逆転時、短絡制動のいずれにおいても、モータ2の高電位側から交流電圧を印加してモータ2の低電位側の検出部による検出結果に基づいて回転パルスを生成するようにしたが、これとは別に、正転時及び逆転時のそれぞれにつき、起動〜定常回転時には上記第6実施形態と同様にするものの、定常回転から短絡制動時に移行する際には定常回転時と同じ重畳部、検出部を用いるようにしてもよい。
【0253】
このような構成の回転角検出装置を第7実施形態とし、そのモータ駆動制御処理について、図20を用いて説明する。
図20に示す本実施形態のモータ駆動制御処理は、図18に示した第6実施形態のモータ駆動制御処理と比較して一部が異なるだけであるため、ここではその相違点について説明する。
【0254】
まず、S710〜S720の各処理は、図18のS510〜S520の各処理と同じである。そして、S720による回転方向の判断の結果、正転であった場合は、第6実施形態(図18)ではモータ2の両端のうち高電位側に設けられた第1重畳部35aにより交流電圧を印加させるようにしたのに対し(図18;S525)、本実施形態では、モータ2の両端のうち低電位側に設けられた第2重畳部35bにより交流電圧を印加させる(S725)。
【0255】
その後のS730〜S755の各処理は、基本的には図18のS530〜S555の各処理と同じである。但し、本実施形態では、正転時には第2重畳部35bにて交流電圧を印加することから(S725)、正転時における回転角Dの算出は、第1信号処理部43aからの第1回転パルスSp1に基づいて行われる(S740〜S745)。
【0256】
そして、正転時においてS755のモータドライバ短絡制動制御が開始された場合、第6実施形態では、交流電圧を印加する重畳部を切り替えると共に検出対象の回転パルスも切り替えたが(図18;S560)、本実施形態ではそのような切り替えは行わず、短絡制動開始後も定常回転時と同じ重畳部にて交流電圧を印加させる。なお、S760〜S770の各処理は、図18のS565〜S575の各処理と同じである。
【0257】
一方、S720において逆転であった場合も、第6実施形態とは異なり、モータ2の両端のうち低電位側に設けられた第1重畳部35aにより交流電圧を印加させる(S775)。
【0258】
その後のS780〜S805の各処理は、基本的には図18のS585〜S610の各処理と同じである。但し、本実施形態では、逆転時には第1重畳部35aにて交流電圧を印加することから(S775)、逆転時における回転角Dの算出は、第2信号処理部43bからの第2回転パルスSp2に基づいて行われる(S790〜S795)。
【0259】
そして、逆転時においてS805のモータドライバ短絡制動制御が開始された場合、第6実施形態では、交流電圧を印加する重畳部を切り替えると共に検出対象の回転パルスも切り替えたが(図18;S615)、本実施形態ではそのような切り替えは行わず、短絡制動開始後も定常回転時と同じ重畳部にて交流電圧を印加させる。なお、S810〜S835の各処理は、図18のS620〜S645の各処理と同じである。
【0260】
[第8実施形態]
図21に、本実施形態の回転検出装置を構成するモータ80の構成を示す。本実施形態の回転検出装置は、図示は省略したものの、基本的には第1実施形態の回転角検出装置1(図1)と同様の構成をとっており、第1実施形態の回転角検出装置1と異なるのは、主として、モータ2に代えて図21のモータ80が用いられること、信号処理部22内において検波信号との比較対象である閾値が二種類設定されると共に比較部を2つ備え、これら各比較部によって検波信号が各閾値とそれぞれ比較されること、その二種類の閾値との比較結果に基づいて2種類の回転パルスが生成されること、及びその2種類の回転パルスに基づき、回転検出部82がモータ80の回転角D、回転方向、及び回転速度Nを検出することである。
【0261】
図21に示すように、本実施形態のモータ80は、第1実施形態のモータ2と比較して、第2相コイルL2に対してもこれと並列にコンデンサC2が接続されている。その他の構成は第1実施形態のモータ2と同じである。コンデンサC2の静電容量値はコンデンサC1とは異なるものである。
【0262】
そのため、モータ80が180°回転する間、各ブラシ16,17と接触する整流子片が切り替わる毎、即ち各ブラシ16,17間のモータ回路が変化する毎に、そのモータ回路のインピーダンスはそれぞれ異なる値に変化する。つまり、第1実施形態では、図4(a)に示したように、180°回転する間にモータ回路は状態A〜Cの3種類に変化するもののインピーダンスの変化は状態A,Bの高インピーダンスと状態Cの低インピーダンスの二段階種類であったのに対し、本実施形態では、モータ回路が3種類に変化する毎に、インピーダンスもそれぞれ異なる値(3種類の値)となる。即ち、モータ回路が変化する毎にインピーダンスも段階的に変化するのである。
【0263】
そのため、モータ80に流れるモータ電流の交流電流成分は、モータ80が同一方向に回転している限り、その振幅が、小振幅、中振幅、大振幅の3種類段階に順次変化する。この振幅変化の例を図22に示す。図22は、モータ80の停止制御時のモータ電流のうち、交流電流成分のみを示したものである。
【0264】
本実施形態では静電容量値の異なる2つのコンデンサC1,C2をそれぞれ接続していることから、モータ80に流れる電流の交流電流成分は、図22に示すように、モータが同一方向に回転している限り、60°回転する毎にその振幅が変化する。そのため、その振幅変化に基づき、60°毎に回転角Dを検出することができる。
【0265】
そこで本実施形態の回転検出装置を構成する信号処理部81は、図23(a)に示すように、2つの閾値設定部85,86と、2つの比較部83,84を備え、各比較部83,84からそれぞれ第1回転パルスSp11、第2回転パルスSp12が出力されるよう構成されている。
【0266】
即ち、図23(a)に示す信号処理部81は、HPF23、増幅部24、包絡線検波部25、及びLPF26を備えている点では、図3に示した第1実施形態の信号処理部22と同じである。そして、本実施形態の信号処理部81は、LPF26から出力された検波信号が、第1比較部83及び第2比較部84に入力される。
【0267】
第1比較部83では、入力された検波信号と第1閾値設定部85にて設定されている第1閾値との比較が行われ、第1実施形態の比較部28と同様に、比較結果に応じた回転パルス(第1回転パルスSp11)が出力される。
【0268】
第2比較部84では、入力された検波信号と第2閾値設定部86にて設定されている第2閾値との比較が行われ、比較結果に応じた回転パルス(第2回転パルスSp12)が出力される。
【0269】
第1閾値及び第2閾値は、次のように設定されている。即ち、検出信号に含まれる交流電流成分が小振幅のときの包絡線検波部25による包絡線検波後の検波信号を小検波信号、交流電流成分が中振幅のときの包絡線検波部25による包絡線検波後の検波信号を中検波信号、交流電流成分が大振幅のときの包絡線検波部25による包絡線検波後の検波信号を大検波信号としたとき、第1閾値は、小検波信号より大きく中検波信号より小さい所定の値であり、第2閾値は、中検波信号より大きく大検波信号より小さい所定の値である。
【0270】
そのため、包絡線検波部25からの検波信号に対して第1比較部83にて第1閾値との比較を行った結果、例えば検波信号が第1閾値より小さければ、小検波信号と判断できる。検波信号が第1閾値より大きかった場合は、中検波信号又は大検波信号の何れかであることが推定される。この場合、第2比較部84による第2閾値との比較の結果、検波信号が第2閾値より小さければ中検波信号と判断でき、検波信号が第2閾値よりも大きければ大検波信号と判断できる。
【0271】
逆に言えば、検波信号に対してそれが小検波信号、中検波信号、又は大検波信号のいずれであるかを判断できるように、第1閾値及び第2閾値をそれぞれ設定することで、整流子片の切り替わり毎(モータ回路の切り替わり毎)に、その切り替わりを検出して各回転パルスSp11,Sp12を生成することができる。そのため、第1実施形態に比べて分解能の高い回転角検出が実現される。図23(b)は、各回転パルスSp11,Sp12の一例である。
【0272】
また、本実施形態では、180°回転する間の整流子片の切り替わり毎に、交流電流成分の振幅が小・中・大の3段階種類にそれぞれ変化するため、その変化パターンの仕方に基づいてモータ80の回転方向を検出することができる。
【0273】
図22は、モータ80の停止制御時に、モータ2が停止する直前に時刻t1で逆転してしまった場合の波形を示している。
仮に、時刻t1で逆転が生じずにそのまま停止したとすると、交流電流成分の振幅は、時刻t1のときの中振幅状態から変化しないか、或いは、変化するとしたら次は大振幅に変化するはずである。
【0274】
これに対し、時刻t1で逆転が生じると、図22に示すように、中振幅の状態から再び小振幅に戻り、更にその小振幅の状態から大振幅へと変化する。つまり、逆転により、振幅の変化のパターン順序が、正転時の変化パターン順序(小振幅→中振幅→大振幅→小振幅→・・・)とは逆になるのである。なお、図22の例では大振幅の期間における時刻t2でモータ80が完全に停止するため、停止後の交流電流成分の振幅は大振幅のままとなる。
【0275】
そのため、本実施形態では、振幅がどのように変化するかによって、モータ80の回転方向をも検出することができるのである。例えば図22の時刻t1以降においては、振幅が中振幅から小振幅へと変化している。そのため、この中振幅から小振幅への変化に基づいて、モータ80の回転方向が変わったことを検出できる。
【0276】
そこで本実施形態の回転検出部82は、信号処理部81にて生成された第1回転パルスSp11及び第2回転パルスSp12に基づき、モータ80の回転角D、回転速度N、及び回転方向を検出するよう構成されている。なお、回転速度Nの検出は、第1回転パルスSp11又は第2回転パルスSp12の出力間隔(周期)に基づいて検出することができる。
【0277】
以上説明した本実施形態によれば、モータ80において、静電容量値の異なる2つのコンデンサC1,C2が第1相コイルL1と第2相コイルL2にそれぞれ並列接続されており、これにより、回転に伴って各ブラシ16,17と接触する整流子片が切り替わる毎に交流電流成分の振幅もそれぞれ異なる大きさに変化するため、高い分解能で回転角を検出することができ、しかも、回転角D及び回転速度Nに加えて回転方向をも検出することができる。そのためモータ80の停止付近で起こりやすい逆転も正確に検出でき、回転方向も考慮されたより精度の高い回転角Dの検出が可能となる。
【0278】
[第9実施形態]
本実施形態は、第1実施形態の回転角検出装置1を構成するモータ2について、コンデンサC1の具体的設置状態の一例を示すものである。
【0279】
図24に、本実施形態のモータ90の概略構成を示す。図24に示すように、モータ90は、ヨークハウジング91の内部においてその内壁に永久磁石からなる界磁92,93が固定されている。そして、ヨークハウジング91の内部には、その界磁92,93と対向するように、アーマチャ94が配置されている。アーマチャ94は、3つの相電機子コイルからなるものである。
【0280】
そして、アーマチャ94に固設されたシャフト95(回転軸)の一端側には、コンミテータ10を構成する各整流子片11,12,13が設けられており、このコンミテータ10と接触するように2つのブラシ16,17が配置されている。
【0281】
更に、シャフト95の一端側には、このシャフト95と同軸状に、リング円板状のリングバリスタ100が設けられている。このリングバリスタ100は、直流モータにおけるサージ吸収用として多用されている一般的なものであり、その一方の板面(コンミテータ10側とは反対側)に、図25に示すように、3つの電極101,102,103が形成されている。そして、本実施形態では更に、その3つの電極101,102,103が形成された板面上に、コンデンサC1が設置されている。
【0282】
具体的には、図25に示すように、リングバリスタ100に形成された3つの電極101,102,103のうち、第1電極101は、第1相コイルL1と第2相コイルL2の接続点と電気的に接続されている。即ち、この第1電極101は第1整流子片11とも電気的に接続されていることになる。第2電極102は、第2相コイルL2と第3相コイルL3の接続点と電気的に接続されている。即ち、この第2電極102は第2整流子片12とも電気的に接続されていることになる。第3電極103は、第3相コイルL3と第1相コイルL1の接続点と電気的に接続されている。即ち、この第3電極103は第3整流子片13とも電気的に接続されていることになる。
【0283】
そして、本実施形態では、このように構成されたリングバリスタ100(図25の左側。加工前。)に対し、第1電極101と第3電極103との境界部にコンデンサC1が設置されることにより、コンデンサC1と第1相コイルL1との並列接続が実現される(図25の右側。加工後。)。なお、リングバリスタ100の各電極101,103に対するコンデンサC1の接続は、例えば半田付けにより行えばよく、これによりコンデンサC1のリングバリスタ100に対する固定も同時に行える。
【0284】
このように、リングバリスタ100が取り付けられたモータ90に対して、そのリングバリスタ100の板面上にコンデンサC1を設置(固定)するようにすることで、モータ90の製造工数を低減でき、延いては、回転角検出装置全体の製造工数を低減することができる。
【0285】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0286】
例えば、上記実施形態では、直流モータとして、3つの相コイルL1,L2,L3のうち1つの相コイルにのみコンデンサC1を接続した例(第1実施形態等)、及び、2つの相コイルにそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサC1,C2を接続した例(第8実施形態)を示したが、例えば、3つの相コイルの各々に、容量の異なるコンデンサを接続するようにしてもよい。このようにしても、分解能の高い回転角の検出及び回転方向の検出が可能である。
【0287】
なお、3つの相コイルの各々にコンデンサを接続する場合、いずれか2つのコンデンサは同じ静電容量値のものとすることもできる。但しその場合、回転角や回転速度の検出は可能であるものの、回転方向の検出はできなくなる。
【0288】
また、上記実施形態では、モータにおける各相コイルL1,L2,L3がΔ結線されている構成を例示したが、Δ結線に限らず、例えば図26に示すモータ110のように、電機子コイルとしての各相コイルL11,L12,L13がスター結線されたモータであっても、本発明を適用できる。スター結線の場合も、図26に示すように、いずれか1つの相コイル(図26では第1相コイルL11)と並列にコンデンサC11を接続することにより、回転に伴って交流電流成分の振幅変化が生じるため、これを検出することで回転パルスSpの生成、さらには回転角や回転速度の検出を行うことができる。
【0289】
なお、図26において、コンデンサC11に加えてもう一つのコンデンサを他の各相コイルL12,L13のいずれかに並列接続するようにしてもよいし、全ての相コイルL11,L12,L13にそれぞれコンデンサを並列接続してもよい。但しその場合、コンデンサの静電容量値は少なくとも二種類にする必要がある。また、例えば、2つの整流子片の間にコンデンサを接続するようにしてもよい。
【0290】
また、上記第9実施形態では、リングバリスタ100の板面上に半田付け等によってコンデンサC1を接続する例について説明したが、リングバリスタ100に対するコンデンサC1の設置は種々の方法を採用することができる。例えば、リングバリスタ100とコンデンサC1とが一体成形されたコンデンサ付きリングバリスタを一つの部品として構成し、これを用いるようにしてもよい。このようにすれば、モータ組立時の工数がより低減され、延いては回転角検出装置全体の工数がより低減される。また、必ずしもリングバリスタ100の各電極101,103とコンデンサC1の各電極とが直接接触するようにコンデンサC1を固定する必要はなく、リングバリスタ100は単にコンデンサC1の固定用土台として用い、コンデンサC1と電機子コイルとの電気的接続は別途行うようにしてもよい。
【0291】
また、上記各実施形態では、電機子コイルの相数が3相の3相直流モータを例に挙げて説明したが、本発明の適用は、3相のモータに限定されるものではなく、4相以上のモータであっても適用可能である。
【0292】
4相以上のモータに対する本発明の適用例として、図27に、5相の直流モータの場合を示す。図27に示すモータ120は、5つの整流子片121,122,123,124,125からなるコンミテータを有し、隣接する各整流子片にそれぞれ、電機子コイルとしての各相コイルL21,L22,L23,L24,L25がそれぞれ接続(Δ結線)されている。なお、各相コイルのインダクタンスはいずれも同じである。
【0293】
そして、各相コイルL21,L22,L23,L24,L25のうち2つの相コイル(第1相コイルL21、第2相コイルL22)に、それぞれコンデンサC21,C22が並列接続されている。このような5相のモータ120についても、回転角や回転速度の検出を行うことができる。
【0294】
なお、4相以上のモータにおいて、何れか一つの相コイルにのみコンデンサを並列接続すれば、少なくとも回転角や回転速度の検出は可能となる。また、4相以上のモータにおいても、少なくとも2つの相コイルにそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサを接続すれば、第8実施形態と同様、回転に伴うインピーダンスの段階的変化の変化パターン(延いては交流電流成分の変化パターン)に基づいて回転方向の検出も可能となる。
【0295】
また、上記第1実施形態では、第1相コイルL1全体に対して完全に並列となるようにコンデンサC1を接続したが、例えば図28に示すモータ130のように、第1相コイルの一部に中間タップをたててそこにコンデンサC30の一端を接続することにより、コンデンサC30を第1相コイルL1の一部に対して並列となるように接続してもよい。このような接続方法は、他の実施形態についても同様に適用できる。
【0296】
また、上記第1実施形態では、モータ2へ直流電圧及び交流電圧を印加(即ち直流電流及び交流電流を供給)する電源部5として、直流電源3と交流電源4とを別々に設け、各電源3,4からの電圧(電流)をカップリングコンデンサC10を介して重畳させてモータ2へ印加(供給)するようにしたが、このような電源部5の構成はあくまでも一例であり、例えば、直流電流と交流電流とが重畳された交直混在の電流(脈流)を生成して供給する1つの電源装置を用いても良く、結果として交流電流及び直流電流をモータ2へ供給できる限り、電源部5の具体的構成は特に限定されない。
【0297】
また、上記第5実施形態(図14参照)の回転角検出装置60における重畳部35及び検出部64は、それぞれ、図29に例示するように構成してもよい。即ち、図29に示した重畳部141は、モータ2の一方のブラシ16からモータドライバ61の一方の中点Jに至る第1共通電流経路上における、カップリングコンデンサC10の接続点よりもモータドライバ61側に、抵抗R11が設けられている。このように抵抗R11を設けることで、モータドライバ61における上記中点Jとグランド電位との間のスイッチMOS3がONされても、交流電圧の印加部位をグランド電位から分離させることができ、交流電圧を効果的に印加(重畳)させることができる。
【0298】
また、検出部142は、共通電流経路上に抵抗R12を設け、この抵抗R12におけるモータ2側に接続された一端の電位を信号処理部143へ出力する構成となっている。この場合、検出部142は、共通電流経路に流れるモータ電流を検出して信号処理部143へ出力することとなる。
【0299】
なお勿論、図29に示した重畳部141や検出部142も、あくまでも1つの例に過ぎない。
また、上記各実施形態では、交流電源4として、図2(a)で説明したように振幅Vsの正弦波状の電圧を出力するものを例に挙げて説明したが、交流電源4が出力する交流は正弦波交流に限らないのはいうまでもなく、種々の波形の交流電圧を出力することができる。
【0300】
具体例として、例えば図30(a)の上段に示すような方形波電圧を出力するようにしてもよい。交流電源4からこのような方形波電圧が出力されると、モータ2に流れる電流には、図30(a)の下段に示すような交流電流成分が含まれることになる。
【0301】
また、交流電圧として正弦波電圧を出力した場合にモータ電流に含まれる交流成分と、方形波電圧を出力した場合にモータ電流に含まれる交流成分は、双方の電圧を同一振幅のものとした場合、図30(b)に示すように、ピーク値が大きく異なる。即ち、正弦波電圧を出力した場合のモータ電流に含まれる交流成分のピーク値よりも、方形波電圧を出力した場合のモータ電流に含まれる交流成分のピーク値の方が大きい。
【0302】
そのため、同一振幅の交流電圧を出力する場合、正弦波よりも方形波の方が、回転角等の検出が容易に行える。
一方、ノイズの観点からみると、方形波電圧は高調波成分を多く含んでいるのに対し、正弦波電圧に含まれる高調波成分は少ない。そのため、ノイズの発生を抑えることを優先したい場合は、正弦波電圧の方が好ましい。
【0303】
また、本発明は、図31に例示するように、多スロットの直流モータに対しても適用することができる。図31のモータ150は、一対のブラシ98,99を備え、8つの整流子片96a〜96hからなるコンミテータ96を備えている。また、隣接する整流子片間にそれぞれコイル97が重ね巻きされた構成となっている。
【0304】
そして、8つの整流子片間96a〜96hのうち、特定の2つの整流子片96b,96f間にコンデンサC1が接続されている。そのため、その特定の2つの整流子片96b、96fに一対のブラシ98,99が接触すると、インピーダンスが低下して交流電流が流れやすくなる。
【0305】
また、上記各実施形態では、モータ回路のインピーダンス変化を生じさせるために、モータを構成する複数の相コイルのうち少なくとも1相の相コイルに対して該相コイルの一部又は全部にコンデンサを接続するようにしたが、このようにコンデンサを接続するのはあくまでも一例であり、複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間が、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成できる限り、種々の構成のモータを用いることができる。
【0306】
一例として、ある特定の隣接する2つの整流子片間にのみ誘電体を挟むことでその2つの整流子片間のみ静電容量値を持たせるようにした例を、図32に示す。図32は、モータを構成するコンミテータ160のみを抜粋して表したものであり、同図(a)はコンミテータ160の平面図、同図(b)はコンミテータ160の斜視図である。
【0307】
図32に示すコンミテータ160は、3つの整流子片161,162,163からなるものであるが、これら3つの整流子片のうち、特定の2つの整流子片162,163の間には、誘電体164が挿入されている。
【0308】
コンミテータをこのように構成することによっても、回転に伴ってモータ回路のインピーダンスが変化するモータを実現することができる。
また、上記実施形態では、モータドライバとして、4つのスイッチング素子からなるHブリッジ回路(フルブリッジ)を示したが、Hブリッジ回路以外の回路にてモータドライバを構成してもよい。
【符号の説明】
【0309】
1,50,60,70…回転角検出装置、2,80,90,110,120,130,150…モータ、3…直流電源、4…交流電源、5,33…電源部、6…回転信号検出部、7,53…回転角検出部、10,96,160…コンミテータ、11,96a〜96h,121,161,162,163…整流子片、11…第1整流子片、12…第2整流子片、13…第3整流子片、16,17,98,99…ブラシ、21…電流検出部、22,43,81,143…信号処理部、23…HPF、24…増幅部、25…包絡線検波部、26…LPF、27…閾値設定部、28…比較部、29…パルス生成部、30…オペアンプ、31…コンパレータ、34…直流電源スイッチ、35,141…重畳部、35a…第1重畳部、35b…第2重畳部、36…交流電源スイッチ、40…回転検出装置、41,52,62,72,…制御部、42,82…回転検出部、43a…第1信号処理部、43b…第2信号処理部、44…閾値設定部、51,61,71…モータドライバ、63a…第1検出部、63b…第2検出部、64,142…検出部、83…第1比較部、84…第2比較部、85…第1閾値設定部、86…第2閾値設定部、91…ヨークハウジング、92,93…界磁、94…アーマチャ、95…シャフト、97…コイル、100…リングバリスタ、101…第1電極、102…第2電極、103…第3電極、164…誘電体、C1,C2,C11,C12,C13,C21,C30…コンデンサ、C10…カップリングコンデンサ、D1,D2…ダイオード、L1,L11,L21…第1相コイル、L2,L12,L22…第2相コイル、L3,L13,L23…第3相コイル、R1…電流検出抵抗、R2〜R12…抵抗、T1〜T4,MOS1〜MOS4…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、
前記電機子コイルが接続される複数の整流子片を有するコンミテータと、
前記コンミテータを介して前記各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、
を有する直流モータを備え、
前記直流モータの回転状態を検出する回転検出装置であって、
前記直流モータの前記少なくとも一対のブラシ間に対し、少なくとも、直流電圧に交流電圧が重畳された交流重畳電圧を印加可能に構成された電源手段と、
前記ブラシを介して前記直流モータに流れるモータ電流、又は該モータ電流が流れる通電経路上の電圧である経路電圧を検出する通電検出手段と、
前記通電検出手段により検出された前記モータ電流又は前記経路電圧に含まれる交流成分に基づいて、前記回転状態としての、前記直流モータの回転角、回転方向、又は回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、
を備え、
前記直流モータは、前記複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間は、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、少なくとも1相の前記相コイルに対して該相コイルの一部又は全部と並列に接続された所定の静電容量値の静電容量素子を備えている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、少なくとも2相の前記相コイルに対し、それぞれ静電容量値の異なる前記静電容量素子が接続されており、
前記回転状態検出手段は、少なくとも、前記交流成分の変化パターンに基づいて前記直流モータの回転方向を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、3相の前記相コイルからなる前記電機子コイルを有する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項5】
請求項2に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、3相の前記相コイルからなる前記電機子コイルを有し、
前記静電容量素子は、いずれか1相の前記相コイルに接続されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項6】
請求項3に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、3相の前記相コイルからなる前記電機子コイルを有し、
前記静電容量素子は、いずれか2相の前記相コイルに対し、それぞれ静電容量値の異なるものが接続されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、当該直流モータの回転軸に固定された、複数の電極を有するリングバリスタを有し、
前記複数の整流子片は各々、前記リングバリスタにおける何れかの前記電極と接続されており、
前記静電容量素子は、前記リングバリスタにおいて何れか2つの前記電極間に固定して接続されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項8】
請求項2〜請求項7の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記静電容量素子はコンデンサからなる
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記電源手段は、
前記直流モータへ前記直流電圧を印加する直流電源と、
前記直流モータへ前記交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、
を備え、
前記直流電源からの直流電圧及び前記交流電圧印加手段からの交流電圧がそれぞれ前記直流モータに印加されることにより、前記直流モータに前記交流重畳電圧を印加可能に構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記電源手段は、
前記直流モータへ前記直流電圧を印加する直流電源と、
前記直流電源から前記直流モータへの前記直流電圧の印加を遮断する直流遮断手段と、
前記直流モータへ前記交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、
を備え、
更に、前記直流遮断手段を制御するものであって、前記直流モータを回転させる際は前記直流電源からの直流電圧を前記直流モータに印加させることにより前記直流モータに前記交流重畳電圧が印加されるようにし、前記直流モータを制動させる際は前記直流電源からの直流電圧の印加を遮断させる、直流遮断制御手段を備えている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記電源手段は、
前記直流電圧を出力する直流電源と、
前記直流電源からの直流電圧が入力され、該直流電圧を前記直流モータに印加することにより該直流モータを駆動するモータドライバと、
前記直流電源からの前記直流電圧の出力を遮断する直流遮断手段と、
前記直流モータへ前記交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、
を備え、
更に、前記直流遮断手段を制御するものであって、前記直流モータを定常回転させる際は前記直流電源からの直流電圧を前記モータドライバに入力させることにより前記直流モータへの前記交流重畳電圧の印加が可能となるようにし、前記直流モータを制動させる際は前記直流電源から前記モータドライバへの直流電圧の入力を遮断させる、直流遮断制御手段を備えている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の回転検出装置であって、
前記直流遮断手段は半導体スイッチング素子により構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記電源手段は、
前記直流電圧を出力する直流電源と、
前記直流電源からの直流電圧が入力され、該直流電圧を前記直流モータに印加することにより該直流モータを駆動するモータドライバと、
前記直流モータへ前記交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、
を備え、
更に、前記モータドライバを制御するものであって、前記直流モータを制動させる際は、前記直流モータに対する前記直流電圧の印加極性を所定の周波数で交互に切り替えることにより制動させるモータドライバ制御手段を備えている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の回転検出装置であって、
前記交互に切り替える際の周波数は、前記交流電圧の周波数とは異なる値に設定されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の回転検出装置であって、
前記交互に切り替える際の周波数は、前記交流電圧の周波数よりも小さな値に設定されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項16】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記電源手段は、
前記直流電圧を出力する直流電源と、
前記直流電源からの直流電圧が入力され、該直流電圧を前記直流モータに印加することにより該直流モータを駆動すると共に、前記少なくとも一対のブラシ間を短絡させることが可能に構成されたモータドライバと、
前記直流モータへ前記交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、
を備え、
更に、
前記モータドライバを制御するものであって、前記直流モータを定常回転させる際は前記直流電源からの直流電圧を該直流モータに印加させることにより該直流モータへ前記交流重畳電圧を印加させ、前記直流モータを制動させる際は前記少なくとも一対のブラシ間を短絡させることにより制動させる短絡制動を行わせる、モータドライバ制御手段を備え、
前記交流電圧印加手段及び前記通電検出手段は、前記直流電源から前記直流モータへの通電経路のうち、前記定常回転時及び前記短絡制動時の双方ともに前記モータ電流が流れる通電経路である共通電流経路上に設けられている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項17】
請求項16に記載の回転検出装置であって、
前記交流電圧印加手段は、前記共通電流経路における、前記直流モータの前記一対のブラシを構成する2つのブラシのうち一方のブラシから前記モータドライバに至る第1共通電流経路上に設けられ、
前記通電検出手段は、前記共通電流経路における、前記直流モータの前記一対のブラシを構成する2つのブラシのうち他方のブラシから前記モータドライバに至る第2共通電流経路上に設けられている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項18】
請求項16に記載の回転検出装置であって、
前記交流電圧印加手段は、前記共通電流経路における、前記直流モータの前記一対のブラシを構成する2つのブラシのうち一方のブラシから前記モータドライバに至る第1共通電流経路上、及び他方のブラシから前記モータドライバに至る第2共通電流経路上の双方に設けられ、
前記通電検出手段も、前記第1共通電流経路上及び前記第2共通電流経路上の双方に設けられ、
前記各共通電流経路上に設けられた前記各交流電圧印加手段のうちいずれか一方に対して前記直流モータへ前記交流電圧を印加させる印加交流制御手段を備え、
前記回転状態検出手段は、前記各共通電流経路上に設けられた前記各通電検出手段のうちいずれか一方又は双方の検出結果に基づいて前記回転状態を検出する
【請求項19】
請求項18に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータの前記定常回転時は、
前記印加交流制御手段は、前記各共通電流経路のうち前記直流電源の正極側に接続されている方に設けられた前記交流電圧印加手段に対して前記交流電圧を印加させ、前記回転状態検出手段は、前記各共通電流経路のうち前記直流電源の負極側に接続されている方に設けられた前記通電検出手段による検出結果に基づいて前記回転状態を検出し、
前記直流モータの前記短絡制動時は、
前記印加交流制御手段は、前記定常回転時とは異なる他方の前記交流電圧印加手段に対して前記交流電圧を印加させ、前記回転状態検出手段は、前記定常回転時とは異なる他方の前記通電検出手段による検出結果に基づいて前記回転状態を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項20】
請求項18に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータの前記定常回転時は、
前記印加交流制御手段は、前記各共通電流経路のうち前記直流電源の正極側に接続されている方に設けられた前記交流電圧印加手段に対して前記交流電圧を印加させ、前記回転状態検出手段は、前記各共通電流経路のうち前記直流電源の負極側に接続されている方に設けられた前記通電検出手段による検出結果に基づいて前記回転状態を検出し、
前記直流モータの前記短絡制動時も、
前記印加交流制御手段は、前記定常回転時と同じ前記交流電圧印加手段に対して前記交流電圧を印加させ、前記回転状態検出手段は、前記定常回転時と同じ前記通電検出手段による検出結果に基づいて前記回転状態を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項21】
請求項16〜請求項20の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
モータドライバは、複数のスイッチング素子からなるHブリッジ回路にて構成され、
前記Hブリッジ回路を構成する前記複数のスイッチング素子はMOSFETである
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項22】
少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、
前記電機子コイルが接続される複数の整流子片を有するコンミテータと、
前記コンミテータを介して前記各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、
を備え、
前記複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間のみ、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている
ことを特徴とする直流モータ。
【請求項23】
請求項22に記載の直流モータであって、
少なくとも1相の前記相コイルに対して該相コイルの一部又は全部と並列に接続された所定の静電容量値の静電容量素子を備えている
ことを特徴とする直流モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−63347(P2010−63347A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141437(P2009−141437)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】