説明

回転機器

【課題】ディスク駆動装置などの回転機器の軸方向寸法が薄くなっても、軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点間の距離を長くすることを可能にして、軸受剛性を維持する。
【解決手段】内筒面16bと内筒面の軸方向外側の第1端部16aと第1端部とは反対側の第2端部16cとを有するスリーブ16と、少なくとも一部が内筒面に相対回転自在に収納されたシャフト22と、少なくともシャフトとスリーブとの間の隙間に介在する流体と、内筒面の軸方向の中間部に形成されてシャフトとスリーブの相対回転により流体に第1端部に向かう方向の第1の流れを生じさせる第1ポンプ部55と、内筒面の第1ポンプ部より第1端部側の領域に形成された第1ラジアル狭隙部56と、内筒面の第1端部に連設されて第1ポンプ部との間を連通する第1循環通路51と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置などの回転機器、特に薄型化したときにも軸受剛性を維持可能なディスク駆動装置などの回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に代表されるディスク駆動装置などの回転機器は、小型大容量化が進み、多くの家電機器に搭載されるようになった。そのため、使用環境が広範囲になっている。特にモバイル機器と呼ばれる携帯機器への搭載が進んでいる。モバイル機器は振動の多い環境で使用される機会が多く、当該モバイル機器に搭載されるディスク駆動装置などの回転機器は、振動の多い環境下でも安定してデータのリード/ライトができる特性が求められる。このような要求に対応するため、安定した高速回転が可能な流体動圧軸受ユニットを搭載するディスク駆動装置などの回転機器がある。流体動圧軸受ユニットの構造の一例として、ステータの一部を構成するスリーブと回転体の一部を構成するシャフトの間の空間に潤滑流体を充填したものがある。この流体動圧軸受は、潤滑流体の一部に発生させた動圧により回転体を非接触状態で支持してスムーズな高速回転を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−198555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モバイル機器は一層小型化が重要視されており、また振動や衝撃の多い環境で使用されることが多くなっている。このためディスク駆動装置などの回転機器の軸方向寸法を薄くしながら軸受剛性は向上して耐衝撃性能の低下を抑えたいという要請がある。ディスク駆動装置などの回転機器の軸方向寸法を薄く構成すると、結果として軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点間の距離が短くなるので、軸受ユニットの軸受剛性が低下する。軸受ユニットの軸受剛性が低下していると、ディスク駆動装置などの回転機器が衝撃等を受けて振動した際に記録ディスクを含む回転体の軸方向の変位が大きくなる。記録ディスクの変位が大きくなると記録ディスクと磁気ヘッドとの相対距離が不安定となり、データのリード/ライトのエラーの頻度の増大を招くおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点間の距離を長くすることを可能にして、回転機器を薄く構成しても軸受剛性を維持して、振動の多い環境下でも安定してリード/ライトを実行し得るディスク駆動装置などの回転機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回転機器は、内筒面と内筒面の軸方向外側の第1端部と第1端部とは反対側の第2端部とを有するスリーブと、少なくとも一部が内筒面に相対回転自在に収納されたシャフトと、少なくともシャフトとスリーブとの間の隙間に介在する流体と、内筒面の軸方向の中間部に形成されてシャフトとスリーブの相対回転により流体に第1端部に向かう方向の第1の流れを生じさせる第1ポンプ部と、内筒面の第1ポンプ部より第1端部側の領域に形成された第1ラジアル狭隙部と、内筒面の第1端部に連設されて第1ポンプ部との間を連通する第1循環通路と、を備えている。
【0007】
この態様によると、第1ラジアル狭隙部がシャフトとスリーブからなる軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点となる。第1ラジアル狭隙部はスリーブの内筒面の第1ポンプ部より外側に形成されるから、軸受ユニットの端部により近い位置に軸受の支持点を構成してよい。このため、軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点間の距離を長くすること可能となる。この結果、回転機器を薄く構成しても軸受剛性を維持して、振動の多い環境下でも安定してリード/ライトを実行し得るディスク駆動装置などの回転機器を提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点間の距離を長くすることが可能になり、回転機器を薄く構成しても軸受剛性を維持して、振動の多い環境下でも安定してリード/ライトを実行し得るディスク駆動装置などの回転機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の回転機器の一例であるHDDの内部構成を説明する説明図である。
【図2】本実施形態の回転機器におけるブラシレスモータの概略断面図である。
【図3】図2のブラシレスモータの要部を拡大した断面図である。
【図4】本実施形態の回転機器の第1ポンプ部及び第2ポンプ部における第1ポンピング溝及び第2ポンピング溝の形状の基本形を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、ハードディスクドライブ装置(単にHDD、回転機器という場合もある)に搭載されて記録ディスクを駆動するブラシレスモータや、CD(Compact Disc)装置、DVD(Digital Versatile Disc)装置等の光学ディスク記録再生装置(単に、回転機器ともいう)に搭載されるディスク駆動モータ等に用いられる。
【0011】
図1は、本実施形態のディスク駆動装置などの回転機器の一例であるHDD100(以下、回転機器100という)の内部構成を説明する説明図である。なお、図1は、内部構成を露出させるためにカバーを取り外した状態を示している。
【0012】
ベース部材10の上面には、ブラシレスモータ114、アーム軸受部116、ボイスコイルモータ118等が載置される。ブラシレスモータ114は、記録ディスク120を載置するためのハブ20を回転軸上に支持し、例えば磁気的にデータを記録可能な記録ディスク120を回転駆動する。ブラシレスモータ114は、例えばスピンドルモータとすることができる。ブラシレスモータ114はU相、V相、W相からなる3相の駆動電流により駆動される。アーム軸受部116は、スイングアーム122を可動範囲AB内でスイング自在に支持する。ボイスコイルモータ118は外部からの制御データにしたがってスイングアーム122をスイングさせる。スイングアーム122の先端には磁気ヘッド124が取り付けられている。ディスク駆動装置などの回転機器100が稼働状態にある場合、磁気ヘッド124はスイングアーム122のスイングに伴って記録ディスク120の表面を僅かな隙間を介して可動範囲AB内を移動し、データをリード/ライトする。なお、図1において、点Aは記録ディスク120の最外周の記録トラックの位置に対応する点であり、点Bは記録ディスク120の最内周の記録トラックの位置に対応する点である。スイングアーム122は、ディスク駆動装置などの回転機器100が停止状態にある場合には記録ディスク120の脇に設けられる待避位置に移動してもよい。
【0013】
なお、本実施形態において、記録ディスク120、スイングアーム122、磁気ヘッド124、ボイスコイルモータ118等のデータをリード/ライトする構造を全て含むものを回転機器と表現する場合もあるし、ディスク駆動装置又はHDDと表現する場合もある。また、記録ディスク120を回転駆動する部分のみを回転機器と表現する場合もある。
【0014】
図2は、本実施形態の回転機器100におけるブラシレスモータのシャフト22の軸方向に沿う概略断面図である。図3は、図2のブラシレスモータの要部を拡大した断面図である。回転機器100は、固定体S、回転体Rを含む。固定体Sは、ベース部材10、ステータコア12、ハウジング14、スリーブ16を含む。回転体Rは、ハブ20、シャフト22、フランジ26を含む。また、ベース部材10は、円筒部10aを含み、ハウジング14は、底部14b、円筒部14c、スリーブ16は、内筒面16b、第1端部16a、第2端部16cを含み、ステータコア12には、コイル18が巻きつけられている。また、ハブ20は、中心孔20a、第1円筒部20b、第2円筒部20c、ハブ外延部20dを含む。シャフト22は、段部、先端部、外筒面22cを含む。なお、以下の説明では、全体として、便宜上説明図に示された下方を下と、上方を上と表現する。
【0015】
ベース部材10は、中心部分の孔と、当該中心部分の孔を囲むように設けられた円筒部10aとを有する。また、ベース部材10は、中心部分の孔によってハウジング14を保持するとともに、ハウジング14を環囲する円筒部10aの外周側にステータコア12を固着する。ベース部材10は、アルミダイキャストを切削加工するか、アルミ板またはニッケルメッキを施した鉄板をプレス加工して形成される。
【0016】
ステータコア12は、ケイ素鋼板等の磁性材を積層した後に、表面に電着塗装や粉体塗装等による絶縁コーティングを施して形成される。また、ステータコア12は、外方向に突出する複数の突極(図示せず)を有するリング状であり、各突極にはコイル18が巻回されている。突極数は、例えばディスク駆動装置などの回転機器100が3相駆動であれば9極とされる。コイル18の巻き線端末は、ベース部材10の底面に配設されたFPC(フレキシブル基板)上に半田付けされている。引き出された線端末は解けないように接着剤で固定される。この固定は、超音波洗浄時等に線端末が共振し大きな振幅で振動し断線することを防止するためになされる。所定の駆動回路によりFPCを通じて3相の略正弦波状の電流がコイル18に通電されると、コイル18はステータコア12の突極に回転磁界を発生する。そして、マグネット24の駆動用磁極と、当該回転磁界との相互作用により回転駆動力が生じて、回転体Rが回転する。
【0017】
図2の回転機器100は、有底カップ状のハウジング14をさらに備え、スリーブ16の少なくとも一部を収納するようにしている。ハウジング14は、円筒部10aの内周面に接着または圧入により固着される。また、ハウジング14は、スリーブ16を環囲する円筒部14cと、円筒部14cの下側の端部を密閉する底部14bとを結合した略カップ状をなす。このような形状のハウジング14の底部14bは、スリーブ16の第2端部16cと軸方向に対向する。なお、底部14bと円筒部14cとは一体に形成されてもよいし、底部14bと円筒部14cとを別々の部材で形成して両者を固着してもよい。ハウジング14は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレスのほか、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によって形成されてもよい。ハウジング14をプラスチック材料で形成する場合は、ディスク駆動装置などの回転機器100の静電気除去性能を確保するため、ハウジング14の固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料に例えばカーボン繊維等を含ませて構成することが望ましい。
【0018】
スリーブ16は、ハウジング14の内周面に接着または圧入により固着され、ベース部材10の中心部分の孔と同軸に固定されている。また、スリーブ16は、シャフト22を収納することによってシャフト22を支承する環状の円筒部16bと、円筒部16bのハブ20側の第1端部16aと、円筒部16bの第1端部16aと反対側の第2端部16cを結合した形状である。また、円筒部16bの内部に内筒面16bが形成されており、内筒面16bがシャフト22の外筒面22cを囲む。スリーブ16の内筒面16bとシャフト22の外筒面22cとの間にはラジアル空間部が形成されている。
【0019】
スリーブ16は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレス等で形成できる。この他、スリーブ16は、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によって形成してもよい。スリーブ16をプラスチック材料で形成する場合は、ディスク駆動装置などの回転機器100の静電気除去性能を確保するため、スリーブ16の固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料に例えばカーボン繊維等を含ませて構成することが望ましい。スリーブ16の第1端部16a及び第2端部16cと円筒部16bとは一体に形成されてもよいし、第1端部16aと第2端部16cと円筒部16bとを別々の部材で形成して両者を固着してもよい。
【0020】
ハブ20は、中心部分に設けられた中心孔20aと、中心孔20aを囲むように設けられた第1円筒部20bと、第1円筒部20bの外側に配設される第2円筒部20cと、第2円筒部20cの下端にハブ20の半径方向に外延されたハブ外延部20dとを含んで構成される。ハブ20は、略カップ状の形状を有する。ハブ20は、軟磁性を有する。例えばSUS430F等の鉄鋼材料が用いられる。ハブ20は、鉄鋼板をプレス加工や切削加工などにより加工されて、略カップ状の所定の形状に形成される。例えば、大同特殊鋼株式会社が供給する商品名DHS1のステンレスはアウトガスが少なく、加工容易である点でハブ20の材料として好ましい。また、同様に商品名DHS2のステンレスはさらに耐食性が良好な点でハブ20の材料としてより好ましい。なお、ハブ20は非磁性のアルミニウム製の部材と磁性を有する鉄製の部材とを組み合わせて構成してもよい。回転機器100が軽量化される点で好ましい。
【0021】
ハブ20の第2円筒部20cの内周面にマグネット24が固着される。ここで、マグネット24は、ベース部材10に固着されたステータコア12に対向するように、シャフト22と同心の環状部に固着される。このような構成によって、ハブ20は、シャフト22と一体的に回転して、図示しない記録ディスク120を駆動させる。記録ディスク120は、その中心孔が第2円筒部20cの外周面に係合してハブ外延部20dに載置される。
【0022】
シャフト22は、ハブ20の中心孔20aに固着される。ここで、シャフト22の上端部には段部が設けてあり、組み立ての際、中心孔20aにシャフト22が圧入される。その結果、ハブ20は段部により軸方向の移動を規制されるとともに、所定の直角度でシャフト22と一体化される。そして、シャフト22の先端部側は、円筒部16bの内筒面16bに収納される。なお、シャフト22は例えばステンレス材により形成することができる。
【0023】
図2の実施形態の回転機器100では、フランジ26は、略円盤状の所定の形状に形成される。フランジ26は、中心部分に設けられた中心孔にシャフト22のベース部材10側の端に締まり嵌めや接着により固着される。
【0024】
図2の実施形態の回転機器100では、底部14bと第2端部16cの軸方向の空間に形成したフランジ収納領域65を形成している。フランジ26は、フランジ収納領域65において回転可能に収納されている。フランジ26は、シャフト22と一体に回転する。
【0025】
衝撃によって、回転体Rと固定体Sとが相対的に移動すると、フランジ26は、第2端部16cの下面と接触する。この結果、フランジ26は、回転体Rが固定体Sから抜けることを防止する機能をさらに有する。
【0026】
フランジ26は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレス等で形成できる。フランジ26は、例えば、板状の金属材料にプレス加工等を施すことにより容易かつ安価に形成できる。また、プレス加工等では、フランジ26が小型で薄くなっても良好な寸法精度で作成できる。その結果、ディスク駆動装置などの回転機器100の小型化や軽量化に寄与できる。フランジ26は、シャフト22を形成する材料と実質同等の線膨張係数を有する材料から形成することができる。温度が変化してもフランジ26とシャフト22の固着する隙間の変化が抑えられる点で好ましい。
【0027】
フランジ26は、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によって形成してもよい。フランジ26をプラスチック材料で形成する場合は、ディスク駆動装置などの回転機器100の静電気除去性能を確保するため、フランジ26の固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料に例えばカーボン繊維等を含ませて構成することが望ましい。
【0028】
マグネット24は、第2円筒部20cの内周に固着されて、ステータコア12の外周に狭い隙間を介して対向するように設けられる。また、マグネット24は、Nd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)系の材料で形成され、表面には電着塗装やスプレー塗装が施され、内周側は12極に着磁されている。
【0029】
次に、回転機器100の構成におけるラジアル方向の軸受について説明する。
ラジアル方向の軸受は、シャフト22の外筒面22cと、スリーブ16の内筒面16bと、両者の間隙に充填されたオイル等の潤滑流体28とを含んで構成される。外筒面22cと、内筒面16bと、両者の間隙において、潤滑流体28に第1端部16aに向かう方向の第1の流れを生じさせる第1ポンプ部55と、第1ポンプ部55より第1端部16aに近い側の領域に形成された第1ラジアル狭隙部56が配置される。
【0030】
また、図2の実施形態の回転機器100では、外筒面22cと、内筒面16bと、両者の間隙において、第1ポンプ部55の下側に潤滑流体28に第2端部16cに向かう方向の第2の流れを生じさせる第2ポンプ部57と、第2ポンプ部57より第2端部16cに近い側の領域に形成された第2ラジアル狭隙部58をさらに配置している。
【0031】
次に第1ポンプ部55と第2ポンプ部57について説明する。なお、第1ポンプ部55と第2ポンプ部57の形状は、基本的には同じとすることができるので、ポンプ部としてまとめて説明する場合がある。
【0032】
ポンプ部は、例えばシャフトに翼となる出っ張り部を多数設け、これを回転するような構成も考えられる。しかし、小さな空間に構成するシャフトに出っ張り部を多数設けるためには多大な手間がかかる。これに対応して、第1ポンプ部55は、シャフト22の外筒面22cと内筒面16bの少なくともいずれかに設けた縞状の第1ポンピング溝61を備えて構成できる。同様にして、第2ポンプ部57は、外筒面22cと内筒面16bの少なくともいずれかに設けた縞状の第2ポンピング溝62を備えて構成できる。
【0033】
ポンプ部は、対向する外筒面22cと内筒面16bとの少なくとも一方に潤滑流体28にそれぞれ端部に方向の流れを生じさせる動圧を発生させるための、第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62を有する。なお、第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62の形状は、基本的には同じとすることができるので、ポンピング溝としてまとめて説明する場合がある。また、図2の実施形態の回転機器100では、潤滑流体28に動圧を発生させる動圧溝は半径方向に対向面に第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62を有しているが、軸方向に対向する面には動圧溝は設けていない。
【0034】
図4は、本実施形態の回転機器100のスリーブ16の内筒面16bに形成した第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62の形状の基本形を説明する説明図である。なお、図4において、ハッチングした領域は半径方向外側に向かって凹んだポンピング溝を示している。図4に示すように、第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62は、スリーブ16の周方向Zに沿って複数の凹んだポンピング溝を繰り返し配列して構成している。つまり第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62は、回転軸に対して傾斜した凹んだ複数のポンピング溝を回転方向に沿って繰り返し配列した縞模様状に構成している。第1ポンピング溝61と第2ポンピング溝62は回転軸に対して反対方向に傾斜している。
【0035】
相対的に外筒面22cが内筒面16bに対して周方向Z(図4において左方向)に移動することにより、内筒面16bと外筒面22cとの間に介在している潤滑流体28も周方向Zに移動しようとする。この際、潤滑流体28は、第1ポンピング溝61に沿って図4において上向きに第1の流れを生じる。同様にして潤滑流体28は、第2ポンピング溝62に沿って図4において下向きに第2の流れを生じる。
【0036】
なお、ポンピング溝の形状は、溝の数と、溝深さと、溝幅と、溝の軸方向長さと、溝の回転軸に対する傾斜角度と、ポンプ部の直径の直径と、潤滑流体28の粘度とをパラメータとして実験により定めることができる。
【0037】
第1ポンピング溝61や第2ポンピング溝62は、外筒面22cや内筒面16bの均された表面に、例えば切削や転造などの機械的加工やエッチングなどの化学的加工や放電を利用した電気的加工によって形成することがでる。例えば、切削用のバイトをピエゾ素子で駆動して溝を形成する方法は、溝幅や溝深さの精度が高く加工上のバリやかえりが少ない点で好ましい。
【0038】
次に第1ラジアル狭隙部56と第2ラジアル狭隙部58について説明する。なお、第1ラジアル狭隙部56と第2ラジアル狭隙部58の形状は、基本的には同じとすることができるので、ラジアル狭隙部としてまとめて説明する場合がある。
【0039】
ラジアル狭隙部は、外筒面22cと内筒面16bとの狭い隙間で対向する領域に構成される。シャフト22がスリーブ16に対して回転すると、第1ポンプ部55は潤滑流体28を第1端部16aの方向へ押し出す。第1ラジアル狭隙部56は、押し出された潤滑流体28の圧力に応じて外周面22cと内筒面16bとの間に第1のラジアル方向の離反力を生じる。同様に第2ポンプ部57は潤滑流体28を第2端部16cの方向へ押し出す。第2ラジアル狭隙部58は、押し出された潤滑流体28の圧力に応じて外周面22cと内筒面16bとの間に第2のラジアル方向の離反力を生じる。この結果、外筒面22cは、内筒面16bの中でこれらの隙間が周方向に等しくなるように支持される。つまり、シャフト22とスリーブ16が相対回転すると、ラジアル狭隙部において、シャフト22はスリーブ16に対してラジアル方向に所定の間隙を有して非接触で支持される。第1ラジアル狭隙部56と第2ラジアル狭隙部58はスリーブの両端部に近い領域に構成されるから、軸受ユニットのラジアル方向の軸受の支持点間の距離を長く構成しうる。この結果、ディスク駆動装置などの回転機器を薄く構成した場合でも、軸受ユニットの軸受剛性の低下を抑えうる。この結果、ディスク駆動装置などの回転機器が衝撃等を受けて振動した際のデータのリードライトエラーの頻度の増大を抑え得る。
【0040】
第1ラジアル狭隙部56と第2ラジアル狭隙部58における外筒面22cと内筒面16bの表面に凸凹を設けるようにすることも考えられる。しかし、凸凹を設けるようにすると加工の手間がかかり、寸法精度が低くなる可能性がある。これに対応して、シャフト22の外筒面22cとスリーブ16の内筒面16bのうち第1ラジアル狭隙部56が形成された領域は均されているように構成できる。同様にしてシャフト22の外筒面22cとスリーブ16の内筒面16bのうち第2ラジアル狭隙部58が形成された領域は均されているように構成できる。つまり、第1ラジアル狭隙部56と第2ラジアル狭隙部58における外筒面22cと内筒面16bの表面は平坦に均されており、軸方向及び周方向に均一な隙間に形成してもよい。シャフト22やスリーブ16の加工の手間が軽減され、これらの寸法精度の低下を抑えられる。
【0041】
ラジアル狭隙部の形状は、シャフト22の直径の直径と、ポンプ部の直径隙間、ラジアル狭隙部の軸方向長さと、潤滑流体28の粘度とをパラメータとして実験により定めることができる。
【0042】
発明者らは、ポンプ部のポンピング溝とラジアル狭隙部の形状の具体的な例として、シャフト22の直径=2〜5mm、ポンプ部の直径隙間=2〜20μm、ポンピング溝の数=6〜40、ポンピング溝の深さ=2〜30μm、ポンピング溝の幅=0.1〜2.0mm、ポンピングの軸方向長さ=1〜5mm、ポンピング溝の回転軸に対する傾斜角度=10〜60度、ラジアル狭隙部の直径隙間=2〜20mm、軸方向長さ=0.2〜3.0mm、25℃における潤滑流体28の粘度=5〜30cstとした場合にラジアル方向の離反力と駆動電流の低減のバランスが良好となり十分な軸受剛性の確保ができることを実験により確認した。
【0043】
次に第1スラスト狭隙部63について説明する。
回転体Rを滑り軸受を用いて軸方向に支持する構成も考えられる。滑り軸受は摩耗の影響により寿命が短くなることがある。これに対応して、第1端部16aに形成された第1スラスト狭隙部63をさらに備えて構成してもよい。第1スラスト狭隙部63に介在する潤滑流体28の圧力により回転体Rを軸方向に非接触で支持することが可能になる。
【0044】
図2の実施形態の回転機器100では、ハブ20の下面にシャフト22の半径方向外側に張り出して第1スラスト部20fをさらに備える。第1スラスト部20fは、シャフト22と一体に第1端部16aに対して相対回転する。第1スラスト狭隙部63は、第1スラスト部20fと第1端部16aとの軸方向に対向する領域に形成することができる。
【0045】
第1端部16aと第1スラスト部20fとは軸方向に隙間を形成して潤滑流体28が介在している。回転体Rが回転して、第1ポンプ部55の作用により潤滑流体28の圧力が高まると、第1端部16aと第1スラスト部20fの隙間に介在している潤滑流体28の圧力も高くなる。このため、第1端部16aと第1スラスト部20fとの間に第1のスラスト方向の離反力が生じる。この結果、第1スラスト狭隙部63において回転体Rは固定体Sから非接触で軸方向に支持される。
【0046】
次に第2スラスト狭隙部64について説明する。
回転体Rの固定体Sに対する軸方向の位置を定めるために、回転体Rに対して、第1のスラスト方向の離反力とは反対向きの別の力を作用させて、力が平衡するようにすることが一般的である。このため、回転体Rに吸引力を作用させるようにマグネットを別に備える構成も考えられる。この構成はマグネットのコスト上昇や回転機器の大型化を招く点で不利である。これに対応して、図2の実施形態の回転機器100は、第2端部16cの内筒面16bから半径方向外側の領域に形成された第2スラスト狭隙部64をさらに備えている。
【0047】
図2の実施形態の回転機器100は、シャフト22の半径方向外側に張り出してシャフト22に実質的に固着された第2スラスト部26aをさらに備える。第2スラスト狭隙部64は、第2スラスト部26aと第2端部16cとの軸方向に対向する領域に形成することができる。回転機器100において第2スラスト部26aは、フランジ26の第2端部16cと対向する部分に一体に形成されている。フランジ26については後で詳述する。
【0048】
第2端部16cと第2スラスト部26aとは軸方向に隙間を形成して潤滑流体28が介在している。回転体Rが回転して、第2ポンプ部57の作用により潤滑流体28の圧力が高まると、第2端部16cと第2スラスト部26aの隙間に介在している潤滑流体28の圧力も高くなる。このため、第2端部16cと第2スラスト部26aとの間に第2のスラスト方向の離反力が生じる。この結果、第2スラスト狭隙部64において回転体Rは固定体Sから非接触で軸方向に支持される。
【0049】
回転体Rは固定体Sに対して、第1のスラスト方向の離反力と第2のスラスト方向の離反力は反対向きに作用し、これらの離反力が平衡する位置で安定する。つまり、回転体Rは固定体Sに対して軸方向に安定した剛性を確保することができる。この結果、コスト上昇や回転機器の大型化が抑えられる。
【0050】
次に第1スラスト狭隙部63と第2スラスト狭隙部64の形状について説明する。なお、第1スラスト狭隙部63と第2スラスト狭隙部64の形状は、基本的には同じとすることができるので、スラスト狭隙部としてまとめて説明する場合がある。
【0051】
第1スラスト狭隙部63における第1端部16aと第1スラスト部20fの表面に凸凹を設けるようにすることも考えられる。しかし、凸凹を設けるようにすると加工の手間がかかり、寸法精度が低くなる可能性がある。これに対応して、第1端部16aと第1スラスト部20fのうち第1スラスト狭隙部を形成する領域は均されているように構成してもよい。同様にして第2端部16cと第2スラスト部26aのうち第2スラスト狭隙部64を形成する領域は均されているように構成してもよい。第1スラスト狭隙部63における第1端部16aと第1スラスト部20fと第2スラスト狭隙部64における第2端部16cと第2スラスト部26aの表面は平坦に均されており、半径方向と周方向に均一な隙間に形成してもよい。つまり第1スラスト狭隙部63や第2スラスト狭隙部64に動圧発生のための溝を設けずに構成してもよい。この結果、第1端部16a、第1スラスト部20f、第2端部16c、第2スラスト部26aなどを構成する部材の加工の手間が軽減され、これらの寸法精度の低下を抑えられる。
【0052】
スラスト狭隙部の形状は、スラスト狭隙部の内径及び外形と、スラスト狭隙部の軸方向隙間と、潤滑流体28の粘度とをパラメータとして実験により定めることができる。
【0053】
発明者らは、スラスト狭隙部の形状の具体的な例として、スラスト狭隙部の内径=2.5〜6.5mm、スラスト狭隙部の外形=3.5〜9.5mm、スラスト狭隙部の軸方向隙間=5〜40μm、25℃における潤滑流体28の粘度=5〜30cstとした場合にスラスト方向の離反力と駆動電流の低減のバランスが良好となり所望する軸受剛性を確保ができることを実験により確認した。
【0054】
次に第1循環通路51と第2循環通路52について説明する、なお、第1循環通路51と第2循環通路52の形状は、基本的には同じとすることができるので、循環通路としてまとめて説明する場合がある。
【0055】
第1循環通路51と第2循環通路52は、スリーブ16に孔を形成して構成してもよい。また、少なくとも第1循環通路51または第2循環通路52の一部はスリーブ16とハウジング14の間に形成してもよい。図2の実施形態の回転機器100では、スリーブ16の外周面には、軸方向に延在する溝16dと溝16eが形成されている。溝16dと溝16eは、円筒部14c内にスリーブ16を嵌合させた際、スリーブ16とハウジング14の間にスリーブ16の両端面側の第1端部16aと第2端部16cとを連結する通路となる。つまり、第1循環通路51と第2循環通路52とはそれぞれ独立して設けることができる。また、第1循環通路51と第2循環通路52とは一部がつながるように構成してもよい。スリーブ16に溝を付す加工は、スリーブ16に軸方向に孔を形成する場合より加工の手間が少ない点で好ましい。
【0056】
図2の実施形態の回転機器100では、スリーブ16の中間部には半径方向に延在する通路16fが形成されている。通路16fは溝16dと連結して第1循環通路51を構成する。また、通路16fは溝16eと連結して第2循環通路52を構成する。つまり、第1循環通路51と第2循環通路52とは一部が通路16fを共用して構成している。これにより通路を加工する手間が少なくなる。
【0057】
第1ポンプ部55の上部から押し出された潤滑流体28は、第1ラジアル狭隙部56と第1スラスト狭隙部63を通過した後に第1循環通路51を経て第1ポンプ部55の下部に吸い込まれて循環する。同様に第2ポンプ部57の下部から押し出された潤滑流体28は、第2ラジアル狭隙部58と第2スラスト狭隙部64を通過した後に第2循環通路52を経て第2ポンプ部57の上部に吸い込まれて循環する。潤滑流体28が循環することでラジアル狭隙部やスラスト狭隙部で生じるラジアル方向の離反力とスラスト方向の離反力の安定に寄与する。
【0058】
溝16dと溝16eと通路16fの形状は、溝と通路の断面形状と溝と通路の数と潤滑流体28の粘度とをパラメータとして実験により定めることができる。
【0059】
発明者らは、溝16dと溝16eと通路16fの形状の具体的な例として、以下のような構成により、所望する軸受剛性を確保できることを実験により確認した。溝16dと溝16eの断面形状を凹んだ円弧状又は矩形状として溝の開口幅=0.2〜0.8mm、溝の深さ=0.1〜0.8mm、溝数は各1条、通路16fの形状の直径0.3〜2.0mm、25℃における潤滑流体28の粘度=5〜30cst。
【0060】
図2の回転機器100では、流体は液体の潤滑流体28として、第1ポンプ部55、第1ラジアル狭隙部56、第1スラスト狭隙部63、第1循環通路51、第2ポンプ部57、第2ラジアル狭隙部58、第2スラスト狭隙部64、第2循環通路52を形成する空間、ハウジング14とフランジ26との間の空間等を含む潤滑流体保持部に充填されている。潤滑流体保持部には外気と接する開放端を設けるのが一般的である。しかし、その開放端から潤滑流体28が漏れ出すことがある。これに対応して、少なくとも第1循環通路51または第2循環通路52のいずれかに連接して流体と外気との気液界面をその途中に形成するようにされたキャピラリーシール部TSをさらに備えるように構成してもよい。
【0061】
キャピラリーシール部TSは例えば、第1スラスト狭隙部63の軸方向外側(図2において上側)に設けることも考えられるが、この場合は回転機器100が厚くなる可能性がある。これに対応してキャピラリーシール部TSはスリーブ16を環囲して軸方向に重複する位置に形成して構成してもよい。この結果、回転機器100が厚くなることを防止しうる。
【0062】
図2の回転機器100では、キャピラリーシール部TSは、ハウジング14の外周面14eとハブ20の第1円筒部20bの内周面20eとによって構成されている。外周面14eは、上面側から下面側へ向かうにしたがって小径となるような傾斜面を有する。一方、これに対向する内周面20eも、上面側から下面側に向かうにしたがって小径となるような傾斜面を有する。このような構成によって、外周面14eおよび内周面20eは、それらの隙間が上面側から下面側に向かうにしたがって拡がるような、キャピラリーシール部TSを形成する。ここで、キャピラリーシール部TSの途中に、潤滑流体28と外気との境界面(気液界面)が位置するように、潤滑流体28の充填量が設定されているので、毛細管現象により潤滑流体28は、このキャピラリーシール部TSによりシールされる。その結果、潤滑流体28の外部への漏出が防止されている。
【0063】
また、前述のごとく、キャピラリーシール部TSは、外側の傾斜面である内周面20eが上面側から下面側に向かうにしたがって小径となるように設定されている。そのため、回転体Rの回転にともない、潤滑流体28には、それが充填された部分の内部方向に移動させる方向の遠心力が作用するので外部への漏出がより確実に防止される。
【0064】
また、本実施形態においては、潤滑流体28の欠乏抑制のために、キャピラリーシール部TSの開放端側である内周面20eの周方向に撥油剤を塗布した塗布部20g、と外周面14eの周方向に撥油剤を塗布した塗布部14fとを設けてもよい。撥油剤は、例えばテフロン(登録商標)樹脂を溶剤で溶かしたものとすることができる。塗布部20g、塗布部14fで溶剤を気化させることによりテフロン(登録商標)膜を形成する。そして、このテフロン(登録商標)膜により、潤滑流体28の気液界面から一旦飛散した潤滑流体28が塗布部20g、塗布部14fにはじかれて、潤滑流体28の溜まり領域に戻るようにできる。その結果、潤滑流体28の減少を容易に抑えることができる。なお、塗布部20g、塗布部14fの位置は気液界面より開放側であればよくその位置は適宜設定できる。このように、ディスク駆動装置などの回転機器100の潤滑流体28の漏れ防止性能を向上することで、ディスク駆動装置などの回転機器100の駆動時の負荷を軽減し、駆動電流の過剰な消費を回避しつつ、軸受剛性の維持に対する信頼性が向上できる。
【0065】
シャフトとスリーブはそれぞれ別の材料から形成することも考えられる。シャフトとスリーブの線膨張係数に大きな差がある場合は、温度変化に対して外筒面22cと内筒面16bの隙間は大きく変化する。この隙間が大きくなると軸受のラジアル剛性が低下して、回転の不具合を生じる頻度が高くなる。また、この隙間が小さくなると、軸受の負荷による損失が増えて回転機器を駆動する電力が増大することがある。これに対応して、シャフトとスリーブは線膨張係数が実質的に等しい材料から形成して構成してもよい。この結果、温度変化に対する外筒面22cと内筒面16bの隙間の変化が抑えられる。
【0066】
以上のように構成された回転機器100の動作について説明する。
記録ディスク120を回転させるために、3相の駆動電流がコイル18に供給される。その駆動電流がコイル18を流れることにより、9本の突極に沿って駆動磁束が発生する。この駆動磁束によって円筒状マグネット24にトルクが与えられ、ハブ20およびそれに嵌合された記録ディスク120が回転する。同時にボイスコイルモータ118がスイングアーム122を揺動させることによって、磁気ヘッド124が記録ディスク120上の揺動範囲を行き来する。磁気ヘッド124は記録ディスク120に記録された磁気データを電気信号に変換して制御基板(不図示)へ伝え、また制御基板から電気信号の形で送られてくるデータを記録ディスク120上に磁気データとして書き込む。
【0067】
図2の実施の形態では、第1端部16a及び第2端部16cはスリーブ16と一体で構成するものとして説明したが、それぞれ別部材を組み合わせて構成しても同様の効果を得ることができる。
【0068】
図2の実施の形態では、略同一形状のポンプ部を二つ備えて潤滑流体28に互いに逆方向の流れを生じさせるように構成するものとして説明したが、ポンプ部の形状や数が異なる構成であっても同様の効果を得ることができる。例えば、形状の異なるポンプ部を2以上備える構成やポンプ部を1つだけ備える構成も同様の効果を得ることができる。
【0069】
図2の実施の形態では、ポンピング溝は直線的な形状の縞模様で構成するものとして説明したが、曲線的や途中が折れ曲がるような形状の縞模様で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0070】
図2の実施の形態では、ラジアル狭隙部やスラスト狭隙部を構成する領域の面は一様に均されているものとして説明したが、これらの面は凹凸を有する部分を含んで構成しても同様の効果を得ることができる。
【0071】
図2の実施の形態では、スリーブ16とハウジング14部材とは別体で構成するものとして説明したが、一体として構成しても同様の効果を得ることができる。
【0072】
図2の実施の形態では、フランジ26シャフト22とは別体で構成するものとして説明したが、一体として構成しても同様の効果を得ることができる。
【0073】
図2の実施の形態では、流体は液体である潤滑流体で構成するものとして説明したが、例えば空気などの気体として構成しても同様の効果を得ることができる。
【0074】
図2の実施の形態では、第1循環通路51と第2循環通路52はスリーブ16の外周面に形成した溝を含んで構成するものとして説明したが、ハウジング14の内周面に形成した溝を含んで構成しても同様の効果を得ることができる。
【0075】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得られる。
【符号の説明】
【0076】
100 回転機器、 10 ベース部材、 120 記録ディスク、 10a 円筒部、 12 ステータコア、 14 ハウジング、 14b 底部、 14c 円筒部、 14e 外周面、 14f 塗布部、 16 スリーブ、 16a 第1端部、 16b 内筒面、 16c 第2端部、 16d 溝、 16e 溝、 16f 通路、 18 コイル、 20 ハブ、 20a 中心孔、 20b 第1円筒部、 20c 第2円筒部、 20d ハブ外延部、 20e 内周面、 20f 第1スラスト部、 20g 塗布部、 22 シャフト、 22c 外筒面、 24 マグネット、 26 フランジ、 26a 第2スラスト部、 28 潤滑流体、 51 第1循環通路、 52 第2循環通路、 55 第1ポンプ部、 56 第1ラジアル狭隙部、 57 第2ポンプ部、 58 第2ラジアル狭隙部、 61 第1ポンピング溝、 62 第2ポンピング溝、 63 第1スラスト狭隙部、 64 第2スラスト狭隙部、 65 フランジ収納部、 71 第1スラスト部材、 72 第2スラスト部材、 R 回転体、 S 固定体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒面と前記内筒面の軸方向外側の第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを有するスリーブと、
少なくとも一部が前記内筒面に相対回転自在に収納されるシャフトと、
少なくとも前記シャフトと前記スリーブとの間の隙間に介在する流体と、
前記内筒面の軸方向の中間部に形成されて前記シャフトと前記スリーブの相対回転により前記流体に前記第1端部に向かう方向の第1の流れを生じさせる第1ポンプ部と、
前記内筒面の前記第1ポンプ部より前記第1端部側の領域に形成される第1ラジアル狭隙部と、
前記内筒面の前記第1端部に連設されて前記第1ポンプ部との間を連通する第1循環通路と、
を備えることを特徴とする回転機器。
【請求項2】
前記シャフトの外筒面と前記内筒面のうち前記第1ラジアル狭隙部が形成されている領域は均されていることを特徴とする請求項1に記載した回転機器。
【請求項3】
前記第1端部の前記内筒部から半径方向外側の領域に形成される第1スラスト狭隙部を備えることを特徴とする請求項1から2に記載した回転機器。
【請求項4】
前記第1ポンプ部は、前記シャフトの外筒面と前記内筒面の少なくともいずれかに設けた縞状の第1ポンピング溝を備えることを特徴とする請求項1から3に記載した回転機器。
【請求項5】
前記シャフトの半径方向外側に張り出して前記シャフトに実質的に固着された第1スラスト部材を備え、前記第1スラスト狭隙部は、前記第1スラスト部材と前記第1端部との軸方向に対向する領域に形成されることを特徴とする請求項1から4に記載した回転機器。
【請求項6】
前記第1端部と前記第1スラスト部材のうち前記第1スラスト狭隙部を形成する領域は均されていることを特徴とする請求項5に記載した回転機器。
【請求項7】
前記スリーブの少なくとも一部を収納するハウジングをさらに備えることを特徴とする請求項1から6に記載した回転機器。
【請求項8】
少なくとも前記第1循環通路の一部は前記スリーブと前記ハウジングの間に形成されていることを特徴とする請求項1から7に記載した回転機器。
【請求項9】
前記内筒面の軸方向の中間部に形成されて前記シャフトと前記スリーブの相対回転により前記流体に前記第2端部に向かう方向の第2の流れを生じさせる第2ポンプ部と
前記内筒面の前記第2ポンプ部より前記第2端部側の領域に形成される第2ラジアル狭隙部と
前記内筒面の前記第2端部に連設されて前記第2ポンプ部との間を連通する第2循環通路と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から8に記載した回転機器。
【請求項10】
前記内筒面の軸方向の中間部に形成されて前記シャフトと前記スリーブの相対回転により前記流体に前記第2端部に向かう方向の第2の流れを生じさせる第2ポンプ部と
前記内筒面の前記第2ポンプ部より前記第2端部側の領域に形成される第2ラジアル狭隙部と
前記内筒面の前記第2端部に連設されて前記第2ポンプ部との間を連通する第2循環通路と、を備え、少なくとも前記第2循環通路の一部は前記スリーブと前記ハウジングの間に形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載した回転機器。
【請求項11】
前記シャフトの外筒面と前記内筒面のうち前記第2ラジアル狭隙部が形成されている領域は均されていることを特徴とする請求項9又は10に記載した回転機器。
【請求項12】
前記第2端部の前記内筒部から半径方向外側の領域に形成された第2スラスト狭隙部をさらに備えることを特徴とする請求項9から11に記載した回転機器。
【請求項13】
前記第2ポンプ部は、前記シャフトの外筒面と前記内筒面の少なくともいずれかに設けた縞状の第2ポンピング溝を備えることを特徴とする請求項9から12に記載した回転機器。
【請求項14】
前記シャフトの半径方向外側に張り出して前記シャフトに実質的に固着された第2スラスト部材をさらに備え、前記第2スラスト狭隙部は、前記第2スラスト部材と前記第2端部との軸方向に対向する領域に形成されていることを特徴とする請求項9から13に記載した回転機器。
【請求項15】
前記第2端部と前記第2スラスト部材のうち前記第2スラスト狭隙部を形成する領域は均されていることを特徴とする請求項14に記載した回転機器。
【請求項16】
前記ハウジングの底部と前記第2端部との間にスラスト収納領域を形成し、前記第2スラスト部は前記スラスト収納領域に配設されたことを特徴とする請求項9から15に記載した回転機器。
【請求項17】
前記第1循環通路と前記第2循環通路とは一部がつながっていることを特徴とする請求項9から16に記載した回転機器。
【請求項18】
前記流体は液体からなり、少なくとも前記第1循環通路または前記第2循環通路のいずれかに連接して前記流体と外気との気液界面をその途中に形成するようにされたキャピラリーシール部をさらに備えることを特徴とする請求項9から17に記載した回転機器。
【請求項19】
前記キャピラリーシール部は前記スリーブを環囲して軸方向に重複する位置に形成されていることを特徴とする請求項18に記載した回転機器。
【請求項20】
前記シャフトと前記スリーブは線膨張係数が実質的に等しい材料から形成されていることを特徴とする請求項1から19に記載した回転機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163502(P2011−163502A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29168(P2010−29168)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(508100033)アルファナテクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】