説明

回転管状スパッタターゲット組立体

例えば、マグネトロン蒸着装置に用いられるターゲット組立体が、主張される。ターゲット組立体は、管の軸受、管の回転、電気接点、冷媒シール、及び真空シールのような機能の少なくとも1つが管自体の内部に一体化されていることを特徴としている。このような組立体は、エンドブロックが内蔵される容積を低減させることによって、真空空間をさらに有効に用いるという利点を有している。組立体の小形化によって、現在、平面ターゲット組立体のみしか使用できない小型の設備にも、用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能ターゲット管内に中心体を備えるターゲット組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、窓ガラスに薄膜を大面積プラズマ蒸着するのに、回転可能ターゲットの使用が普及している。不活性雰囲気下での金属の蒸着、さらに複合材料の蒸着(反応性ガスが不活性ガスに混合される場合)は、大型のスパッタ蒸着設備によって、工業的規模でなされている。
【0003】
このプロセスにおける重要な要素の1つは、以下の機能の全てを満たさねばならないターゲット組立体にある。
【0004】
ターゲット組立体は、磁場源を適所に保持しなければならない。ターゲット管の外側に生じた磁場が、狭い閉鎖ループ行路内に電子を封じ込め、不活性ガス原子のイオン化を増大させている。
【0005】
組立体は、ターゲット管を回転可能に支持しなければならない。
【0006】
ターゲット表面は、ターゲット管の各セグメントがプラズマに晒され、これによって、ターゲット管の外側でターゲット材料の全てが均一に侵食され得るように、磁場源の前で回転されなければならない。
【0007】
ターゲット表面は、チャンバーに対して負電位に維持されなければならない。この電位がプラズマ中の陽イオンをターゲット表面に向けて加速し、これによって、ターゲットから原子をチャンバー内に放出させている。これは、ターゲットの除電をもたらすので、この負電位を維持するために、負電流がターゲットに対して保持されなければならない。
【0008】
ターゲット組立体は、冷却されねばならない。何故なら、表面の高密度の衝撃が著しい加熱をもたらし、ターゲット組立体の損傷及び/又はターゲット材料の溶融を迅速に生じさせるからである。
【0009】
ターゲット組立体は、蒸着チャンバーの汚染を防ぎ、ガス組成を維持するために、真空気密でなければならない。
【0010】
これらの機能の各々を個別に達成するのは比較的簡単であるが、単一の組立体においてこれらの全てを組み合わせることは、それ自体で、技術的な問題を生じさせる。
【0011】
米国特許第5,096,562号に記載される組立体は、上記の機能を以下のように分割することによって、この問題を解決している。
【0012】
取り外し可能なターゲット管内において、磁石は、冷媒が貫流する静止した部分に取り付けられている。
【0013】
第1エンドブロックは、回転運動の伝達を可能にし、かつ回転冷媒シールによってターゲットへの冷媒の供給と排出を可能にするように、設計されている。
【0014】
ターゲット管の他端の第2エンドブロックは、電流の回転接続部を含んでいる。
【0015】
例えば、米国特許第5,200,049号に記載されているような片持ちで取り付けられた回転可能ターゲットは、全ての機能を、チャンバー内に延在する一端とチャンバーの外側に配置された他端を有する1つの軸受ハウジング内で、一体化している。この片持ち軸受ハウジングは、ターゲットの軸と直交する壁に取り付けられていなければならない。
【0016】
これらの設計は、大きいターゲット管の使用を実用化しているが、エンドブロック又は軸受ハウジングは、それらが、材料の蒸着には利用され得ないが、とにかく、真空排気されねばならないチャンバーのかなりの部分を、占めるという重大な欠点を有している。さらに、それらは、設備の有効な蒸着幅を減少させることになる。片持ちターゲット組立体の場合、もしマグネトロンを取り外し可能なカバー、ドア、又は蓋にその長さに沿って取り付けることが意図される場合、使用がさらに困難になる。
【0017】
加えて、容積の大きなエンドブロック又は軸受ハウジングは、回転可能ターゲット管を小型の設備内で用いることを妨げることになる。なお、これらの小型設備では、多くの場合、平面ターゲットが用いられるが、この平面ターゲットは、回転可能ターゲット(3〜4週に一回の取換え)と比較して、より頻繁に取り替える必要がある(4〜5日に一回の取換え)という欠点を有している。結果として、既存のエンドブロック又は片持ちハウジングは、例えば、ディスプレー成膜装置のような垂直成膜装置内に取り付けることが、困難となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の一般的な目的は、先行技術の欠点をなくすことにある。本発明の第1目的は、エンドブロックのスペース要求を可能な限り小さくすることにある。従って、現在、先行技術のエンドブロックが用いられている設備において、本発明は、真空空間、特にチャンバー幅をさらに有効に使用することができる。本発明のさらに他の目的は、現在、平面マグネトロンのみが使用可能である小型の設備において、回転ターゲットの使用を可能にすることにある。従って、本発明は、ターゲットの交換率を低下させ、ターゲット材料の使用を改良し、これによって、これらの小型の設備におけるコストと時間を節約することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、請求項1に記載されるような特徴の組合せに関する。この請求項には、回転可能ターゲット管に中心体を備えるターゲット組立体が、記載されている。中心体において、先行技術ではエンドブロックに内蔵されている機能要素の少なくとも1つが、ターゲット管の内側に実装されている。これらの機能要素は、以下の要素、すなわち、
(1)ターゲット管を中心体によって回転可能に支持するための軸受システム、
(2)ターゲット管を回転させるための駆動手段、
(3)ターゲット管を中心体に電気的に接続するための電気接点、
(4)冷媒をターゲット管に供給すると共に、そこから排出するための少なくとも1つの回転可能なガス対冷媒シール、及び
(5)前記ターゲット管の外側を真空に保つことを可能にするための少なくとも1つの回転可能なガス対真空シール、
の少なくとも1つである。
【0020】
このターゲット組立体がマグネトロン蒸着装置に用いられる場合、容易に理解されるように、磁石アレーがターゲット管内に内蔵されているとよい。
【0021】
「回転可能なガス対冷媒シール」という用語は、ガス含有空間を冷媒含有空間から物理的に分離すると共に、両方の空間の間での回転運動を可能にするシールを意味している。
【0022】
同様に、回転可能なガス対真空シールは、ガス含有空間を真空含有空間から物理的に分離すると共に、両方の空間の間の回転運動を可能にするシールである。
【0023】
通常、ガスは、大気圧又はいくらか低圧(最小で1kPa)の空気である。代替的に、ガスは、大気圧又は低圧(最小で1kPa)の窒素又はアルゴンであってもよい。
【0024】
「ターゲット管の内側」又は「ターゲット管の内部」という用語は、装置のターゲット管を保持する回転可能なターゲット材料によって取り囲まれた空間を意味している。
【0025】
これらの5つの機能要素の任意の組合せも、本発明の主題であり、これによって、本発明の可能な31通りの実施形態を生じることになる。
【0026】
最も好ましく、かつ最も簡単なのは、ガス対冷媒シールとガス対真空シールの両方のみがターゲット管の内側に存在する実施形態である。
【0027】
また、良好であるのは、ガス対冷媒シールとガス対真空シール以外に、軸受システムもターゲット管の内側に存在する実施形態である。潤滑剤の汚染を避けるために、軸受を配置する最適な箇所は、ガス対冷媒シールとガス対真空シールとの間であるが、軸受がターゲット管の内側に存在する限り、他の配置箇所も排除されるものではない。
【0028】
また、良好であるのは、ガス対冷媒シール、ガス対真空シール、及び軸受システム以外に、駆動手段がターゲット管の内側に存在する実施形態である。
【0029】
本発明の他の良好な配置は、ガス対冷媒シールとガス対真空シール以外に、電源とターゲット管との間の電気接点がターゲット管の内側に内蔵されている場合である。
【0030】
本発明の他の良好な配置は、ガス対冷媒シール、ガス対真空シール、及び電気接点以外に、軸受システムがターゲット管の内側に内蔵されている場合である。
【0031】
全ての機能要素、すなわち、ガス対冷媒シール、ガス対真空シール、電気接点、軸受システム、及び駆動システムがターゲット管の内側に内蔵される組合せは、余り、好ましくはない。何故なら、これは、(後述するように、不可能ではないが)、最も複雑な実施形態であるからである。
【0032】
以下、種々の機能要素の実施について、さらに詳細に説明する。
【0033】
軸受システムは、組立体の全体と関連する負荷を保持するのに適したどのような適当な軸受システムであってもよい。軸受システムは、中心体とターゲット管との間に取り付けられ得るが、好ましくは、中心体内に内蔵されている。この場合、中心体は、チャンバーに接続される静止部分と、ターゲット管と共に回転する回転可能な部分とを備えている。一例として、水平位置で作動されるターゲットが考えられる。ここで、全長がより長い場合、ボール軸受又はローラ軸受がより適している。全長がより短い場合、平軸受がより適している。ターゲットが垂直に取り付けられる場合、上部軸受又は下部軸受として、アキシャル軸受が好ましく、ターゲット管の上側又は下側をそれぞれ支持するのは、ラジアル軸受でも十分である。
【0034】
「駆動手段」という用語は、どのような形態の非機械的なエネルギーをも機械的な回転に変換させる装置を意味している。駆動手段は、最大で60回転/分の回転速度を可能にしなければならない。必ずしも必要ではないが、速度が調整可能であると、好ましい。
【0035】
DCカソード操作の場合、負電荷がターゲット管に連続的に送給されなければならない。これは、本発明によれば、電気接点をターゲット管の内側において中心体とターゲット管との間に設けることによって、達成される。この接点は、例えば、銅充填グラファイト又は当該技術分野において知られているこの目的のための他の材料から成る電気接続ブラシ、ブッシュ、又はスリップリングによって、確保されている。また、良好な電気接点を確実に得るために、ブラシは、バネによって付勢されていてもよい。接点がこのような技術によって得られる場合、電気的接触が乾燥状態下で得られること、すなわち、中心体とターゲット管との間の電気的接触を確実にする材料が冷媒とは接触しないことが、好ましい。逆に、電流の流れが、流体、例えば、冷媒を通して得られる電気接点も、代替的に可能である。この接続によって伝達される最大電流は、設備の大きさに依存している。典型的には、制限はされないが、最大で400Aの値である。ターゲットが交互に正と負に帯電されるAC操作、又はDC操作がパターンに応じて中断されるパルスDC操作も、包含されている。ターゲット組立体を、例えば、管素材に材料を被覆するために正に帯電されるアノードとして用いること、又は電子を周期的又は連続的に集める集電子として用いることも、明らかに、本発明に包含されている。
【0036】
組立体を許容温度レベル(典型的には、45℃未満)に保つために、冷媒は、ターゲット管の内面に連続的に供給され、かつそこから排出されるようになっている。冷媒の供給路と排出路は、ターゲット管の同一の側に配置されていてもよいし、又は供給路が一方の側に配置され、排出路が他方の側に配置されていてもよい。前者の方が好ましい。何故なら、冷媒の供給と排出が、例えば、同心管を通してなされる場合、1つの回転可能なガス対冷媒シールのみで十分だからである。もし漏れがガス対冷媒シールに生じると、冷媒は、ガス圧区域に漏れるが、装置の真空区域には漏れないことになる。
【0037】
冷媒は、好ましくは、水である。但し、熱容量、導電率、及び粘性の要求を満たす限り、他の冷媒も想定され得る。冷媒は、典型的には5バールの圧力で、かつ蒸着設備の大きさの関数であるその設備の出力定格に依存する流量で、供給されている。典型的には、当該技術分野でよく知られているリップシールが、ガス対冷媒シールとして用いられている。しかし、一例にすぎないが、機械的な面シール又はラビリンスシールのような他の形式のシールも排除されるものではない。
【0038】
チャンバー内における真空及び/又は低圧ガス組成を維持するために、ガスは、チャンバー内に漏れてはならない。中心体の静止部分と回転部分との境界部は、回転可能なガス対真空シールによって確保され、これによって、回転を可能にしながら、真空区域をガス雰囲気から分離している。漏れが生じた場合、ガスは、真空区域に漏れることになる。このシールは、組立体のリップシール式及び/又はフェロフルーイディク(ferrofluidic)シール式のいずれかに基づいているとよい。前者は、(冷媒シールの場合のように)、他の回転部分に対する高性能エラストマーの機械的な圧搾を利用している。後者の作用原理は、シャフトとそのシャフトと嵌合する磁極シューとの間の流体リングの生成に基づいている。微細に分散した磁気粒子を含む流体は、磁場によって、シャフトと磁極シューとの間に保持されている。ターゲット管が片持ちで取り付けられるときは、1つのガス対真空シールで十分であろう。ターゲット管がその両端で保持される場合、2つのガス対真空シールが好ましい。
【0039】
以上、少なくとも1つがターゲット管の内側に内蔵されねばならない機能要素について、個別に説明した。現在では、種々の機能要素の組合せが、1つのパッケージに一体化され得るものである。例えば、軸受も内蔵されるガス対真空シールを得ることが可能である。あるいは、外部液体から絶縁された電気ブラシが、ガス対冷媒シールとしても利用され得る。これらの組合せが、請求項1に提示されるような要件を満たすことは、明らかである。しかし、ガス対冷媒シールとガス対真空シールの1つの組合せ、すなわち、冷媒対真空シールは、好ましくない。何故なら、これは、シールが完全でないときに、問題を生じることが知られているからである。このような欠陥は、真空システム内への冷媒の漏れを生じさせ、その結果、真空機器の高価な取換え又は高価な休止時間をもたらすことがある。
【0040】
従属請求項において、本発明の種々の実施形態が、規定されている。以下、これらの実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0041】
駆動手段として、電気モータを用いることが可能である(請求項2)。このモータは、好ましくは、固定軸回転ドラム式である(請求項3)。何故なら、これは、モータの取付けを簡単にするからである。
【0042】
電気モータの代替として、流体回転モータも可能である(請求項4)。さらに好ましいのは、この流体モータ用の推進材として、循環冷媒を使用し、これによって、構成概念をさらに簡素化することである(請求項5)。
【0043】
上記の説明は、ターゲット組立体それ自体に重点を置いたが、この組立体は、スパッタ装置の壁に固定されることも必要である(独立請求項6及び7)。スパッタ装置の全体が、例えば、真空チャンバーのアクセス・ドア又は蓋に取り付けられることも排除されるものではない。装置への固定は、連結手段によってなされている。これらの連結手段は、扱い易さと相対的な小型化に関して、先行技術のエンドブロックとは異なっている。実際、中心体と連結手段との間の連結は、運動部分を含んでいない。すなわち、連結手段は、チャンバーに固定された中心体の静止部分を維持するにすぎず、かつターゲット表面を帯電させるための電気、冷媒、及び(必要に応じて)駆動手段用の電気が貫流する静止部分をもたらすにすぎない。これらの貫通部が2つの連結手段のどちらに組み込まれるかは、勿論、いかに中心体の内側の機能要素が有機的に機能化されるかによって、影響されることになる。
【0044】
制限はされないが、一例として、表面を帯電する電気は、冷媒が供給されるのと同じ側において供給され、その一方、(必要に応じて)、駆動手段を励磁する電気は、他の側において供給されてもよい。
【0045】
全ての供給用貫通部が、例えば、中心体に対する第1連結手段に配置され得るように、中心体が構成された場合、第2連結手段の役割は、中心体自体を保持することに、制限されている。このように制限された場合(請求項7)、この第2連結手段は、第1連結手段の機械的強度がターゲット組立体をその場に維持するのに十分である場合、完全に省略されてもよい。
【0046】
また、中心体は、互いに機械的に離脱可能な第1及び第2中心体に分離させることも可能である(請求項8)。この場合、2つの中心体は、ターゲット管の両端において、互いに個別に挿入されるとよい。機能要素は、それらの少なくとも1つがターゲット管の内側に内蔵される限り、最も好都合な方法で、両方の中心体に分配され得るものである。第1及び第2中心体は、機械的に互いに連結されていてもよい(請求項9)。これは、例えば、連結手段として、磁石アレーを用いることによって実現される。これらの実施形態も、本発明に含まれる。また、第1及び第2中心体を連結するための連結手段は、マグネトロン装置内に設けられていなければならない(請求項10)。ターゲット組立体の片側がターゲット管を保持する場合も、包含されている(請求項11)。
【0047】
以下、添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0048】
図において、同一の参照番号は、種々の断面における同一の部品を示すのに用いられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
回転可能なターゲット組立体の動作原理は、当該技術分野において一般的に知られているので、ここでは、好ましい第1実施形態が図1に示されている本発明の詳細な説明に、重点を置くこととする。
【0050】
この実施形態では、請求項1に列挙されるような機能要素の全てが、ターゲット管の内側に内蔵されている。駆動手段は、電気モータである。冷媒の供給と排出、及び表面の帯電は、第1連結手段を介してなされている。電気モータを駆動する電気は、第2連結手段を介して送給されている。
【0051】
図2は、保持管100と回転管200とを示している。回転管200は、ターゲット材料自体、例えば、アルミニウム管から作製されているとよい。あるいは、ターゲット材料が回転管の外側に蒸着されていてもよい。ターゲット材料は、プラズマトーチ溶射、電解析出、又は当該技術分野で知られている他の技術によって、回転管200に成膜されるとよい。回転管の全長は、波線002間の長さを増減することによって、任意に選択され得る。回転管200の両端から、インサート210,220を、回転管200内に滑り込ませることができ、これによって、保持管100と共に中心体を形成している。便宜上、第1連結手段010と連結された側を回転管の第1側と呼び、その反対側を第2側と呼ぶこととする。
【0052】
保持管100(図3)は、内管114が6つのリブ112を介して外管110に接続された押出ジュラルミン二重壁管から構成されている。これが主保持構造体であり、この構造体に他の部分が接続されるようになっている。磁石ホルダー120が、保持構造体110の外側に取り付けられている。多数の永久磁石122は、このホルダー120に配置されている。適切な磁気配置は、国際特許出願第99/54911号に記載されている。ターゲット組立体は、二重壁管の中心管114の内側に組み込まれた4つの軸受130,132,134及び136(図2)によって、回転可能に支持されている。駆動手段、ここでは、回転軸電気モータ140が、円筒ハウジング142の内側に取り付けられ、この円筒ハウジング142は、ターゲット組立体の外側で円形蓋144によって蓋をされている。ターゲット管を回転可能に支持するための軸としても作用する貫通片146が、モータへの電力リード線148を配線するのに用いられている。モータハウジングの他の側において、モータ軸が円形の嵌合片150内に嵌入されている。このモータ軸154は、インサート220の閉鎖片222に固定されている。この閉鎖片222は、ターゲット管の電位にあるインサート片221からモータを電気的に絶縁するために、電気的絶縁材料から作製されている。加えて、始動と停止の衝撃を吸収するための機械的コネクタ152と、この設計の機械的な安定性を増大させる軸受156が、嵌合片150と閉鎖片222との間に取り付けられている。また、絶縁ブッシュ224が、モータ140と第2連結手段020とをターゲット電位から絶縁するために、第2インサート220と貫通片146との間に導入されている。絶縁板022をチャンバー壁999と第2連結片020との間に導入することによって、付加的な電気的絶縁が得られることになる。ターゲット管をターゲット電源に電気的に接続するための電気接点は、第1インサート210内に内蔵されている。インサート片211は、軸方向管状片160を中心として回転するようになっている。電力は、第1連結手段010と第1インサート210を介して、ターゲット管の残部に送られている。これは、第1連結手段010がターゲット管のより高い電位にあることを意味している。従って、絶縁体012は、第1連結手段010と真空チャンバー壁999との間に導入されることになる。電気接点は、回転ブッシュ166に対してバネ付勢される静止ブラシ164によって、確実に得られるものである。十分な電流容量の電気的経路が第1連結手段010とターゲット管200の表面との間に形成され得るように、種々の部品に用いられる材料は、導体であるべきことが明らかである。印加電圧が負の場合、ターゲット管200は、例えば、陽イオンをその表面に向けて加速させるためのカソードとして作用している。印加電圧が正の場合、ターゲット管200は、例えば、電子を集めるアノードとして作用している。
【0053】
冷媒は、第1連結手段010を通して供給されている。一連の矢印004は、冷媒の進路を示している。図4は、第1インサート210に対する第1連結片010の断面を示している。冷媒は、第1連結手段の中央の穴014を通って、軸方向管状片160に同軸に取り付けられた管168に送給されるようになっている。ターゲット組立体内を進行する冷えた冷媒は、保持管100の内管114と外管110との間に取り付けられたセパレータ172によって、ターゲット組立体から戻る暖かい冷媒から分離されることになる。中心送給管168は、保持内管114内に冷媒を直接的に送給し、この内管114において、冷媒は、ターゲット管の第2端に向かってさらに案内されることになる。この第2端において、流れは反転し、冷媒は、ターゲット管の第1端に向かって押し出され、これによって、熱い外側ターゲット管200を冷却するようになっている。第1端において、流れは再び反転し、出口穴169を通って、管168と軸方向管状片160との間の円筒状の同軸間隙内に導かれることになる。この設計は、リップシールである1つの水シール170しか必要としない。暖かい冷媒は、入口穴014の側方の穴016(図4)内に通されることになる。
【0054】
真空又は低圧ガス組成を確保するために、真空シールが必要である。この好ましい実施形態において、これは、2対の軸受134,136及び130,132間に真空シール135,131を導入することによって、達成されるものである。実際には、真空シール及び軸受は、予め組み立てられた状態で得ることができる組立体の一部である。
【0055】
図5は、駆動手段が流体モータによって置き換えられた好ましい第2実施形態を示している。この特別の実施形態は、他の機能要素(軸受システム、電気接点、回転可能な冷媒シール、及び回転可能な真空シール)に関しては、第1実施形態と同じなので、流体モータのみに着目して、図5について説明する。このモータは、冷媒そのものによって、駆動されるようになっている。すなわち、冷媒の流れは、送給穴312を通って、流体モータ310内に案内されている。モータ内において、流れの運動エネルギーが、回転運動に変換されることになる。冷媒は、出口孔322を通って流出すると、ターゲット管200をさらに冷却するために、そのターゲット管の内側に案内されるようになっている。回転するモータの外側ハウジングは、インサート片221に取り付けられ、その一方、モータ軸318は、機械的コネクタ316内に固定されている。この機械コネクタ316は、始動と停止の衝撃を吸収すると共に、モータ軸を中心軸320に固定するのを容易にするものである。中心軸320は、第2連結手段020に固定して取り付けられている。モータの機能は、タービンにおけるような傾斜した案内羽根、軌道モータの原理、逆スクリューポンプ原理、又は当該技術分野に知られている他の原理に基づくことができる。しかし、操作の原理は、本発明の範囲を制限するものではない。
【0056】
他の実施形態が、図6に示されている。ここでは、軸受システム、ガス対真空シール、及びガス対冷媒シールは、ターゲット管内に内蔵されているが、他の機能要素は、ターゲット管の外側に実装されている。ターゲット管602は、2つの連結手段668,670によって保持され、これらの連結手段668,670は、スパッタ装置の壁672を介して外部に接続されている。ターゲット管602上には、スパッタ材料604が成膜されている。磁石アレー606は、連結手段668に固着された静止保持管662に取り付けられている。冷媒は、溝664と、保持管662に対し同軸の管660を通して送給されるようになっている。用いられる冷媒は、外管662と内管660との間の空間内に集められた後、溝666を通して排出されることになる。運動は、ウォーム622とギア624の伝達を介して、シャフト620によって、ターゲット管602に与えられている。ギア624は、インサート674とそれに接続されたターゲット管602を回転させるものである。電力は、送電ケーブル638を介して供給され、この送電ケーブル638は、バネ634によって付勢されたコネクタ片630を介して、グラファイトブラシ632に電気的に接続されている。連結手段670は、絶縁片636,626によって、電源から電気的に絶縁されている。2つのインサート674,676は、ターゲット管602の両端内に緊密に嵌合している。インサート676の内側には、以下の機能要素が、ターゲット管602の内側に配置されるように、内蔵されている。
【0057】
・ガス対真空シール650。シールの品質を改良するために、付加的なガス対真空シール651も挿入されている。
・ガス対冷媒シール640
・ガス対冷媒シール640とガス対真空シール650との間に配置されたターゲット管602を回転可能に保持するための1つの軸受リング610
【0058】
連結手段668は、絶縁リング672によって、電気的に絶縁されている。インサート674内において、以下の機能要素が、ターゲット管602の内側に内蔵されている。
【0059】
・ターゲット管602を回転可能に保持するための1つの軸受リング611
・ガス対真空シール653と、それに続く、シールの品質を改良するための他のガス対真空シール652
【0060】
ガス対冷媒シールは、こちら側には必要ではない。連結手段670は、絶縁リング671によって、ターゲット管から電気的に絶縁されている。
【0061】
他の好ましい実施形態が、図7に示されている。ここでは、ターゲット管702に運動を与える機能要素のみが、ターゲット管の外側に配置されている。他の機能要素は、全て、ターゲット管702の内側に一体化されている。ターゲット材料703が成膜されたターゲット管702は、連結手段707によって保持され、保持管705は、この連結手段707に直交して固定されている。組立体は、保持管705に取り付けられた磁石アレー706をさらに備えている。回転運動は、柔軟シャフト722によって、スパッタ装置の外側のモータ(図示せず)からターゲット管に伝達されるようになっている。このような柔軟シャフトは、保護スリーブ720の内側で回転している。スリーブ720は、保持管705の内側に固定して取り付けられた固定具780に接続されている。シャフト722は、それ自体、電気的絶縁片773を介して、インサート770に機械的に接続されている。冷却は、冷媒をターゲット管702と保持管705との間の空間に送給する冷媒送給管704によって、行われている。冷媒は、出口管708を通して排出されることになる。電気接点は、一連の平行に接続されたリング状グラファイトブラシ730,730’及び730”によって、ターゲット管702の内側に確実に得られる。これらのブラシ730、730’及び730”は、回転導電インサート770と静止円筒導体732との間に配置されている。円筒導体732は、導体733を介して、電源(図示せず)に接続されている。円筒導体732は、絶縁体734によって、保持管705から絶縁されている。ターゲット管702は、ターゲット管702の両端に配置された軸受712,710によって回転可能に支持されている。軸受710は、ガス対真空シール754,756とガス対冷媒シール742との間に配置されている。軸受712では、ガス対冷媒シール740のみが必要とされ、ガス対真空シールは必要とされない。インサート770と保持管705は、絶縁体772によって、互いに絶縁されている。反対側端では、ターゲット管702が、絶縁体750によって、保持管705から絶縁されている。
【0062】
この設計において、図示されているが、説明されなかった一部の部品があるが、それらの機能は、当業者にとっては明らかである。例えば、必要に応じて、Oリングのシールが、この設計の互いに固定された部品間に内蔵されている。他の例として、絶縁されたシールドが、第1及び第2連結手段を保護している。また、例えば、ネジや位置決めピンのような固定手段は、説明を理解し易くするために、詳細には示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】連結手段を備えるターゲット組立体の好ましい第1実施形態の全体を示す、正面図と側面図である。
【図2】図1の面AA’に沿った好ましい第1実施形態の断面図である。
【図3】図1の線BB’に沿った断面図である。
【図4】図1の線CC’に沿った断面図である。
【図5】駆動手段が冷媒によって駆動される流体回転モータである好ましい第2実施形態の断面図である。
【図6】軸受システム、ガス対真空シール、及びガス対冷媒シールがターゲット管の内側に配置され、他の機能要素がターゲット管の外側に実装された好ましい実施形態を示す図である。
【図7】軸受システム、ガス対真空シール、及びガス対冷媒シール、及び電気接点がターゲット管の内側に配置され、他の機能要素がターゲット管の外側に実装された好ましい実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なターゲット管と中心体とを備えるターゲット組立体において、
前記管を前記中心体によって回転可能に支持するための軸受システム、
前記管を前記中心体に対して回転させるための駆動手段、
前記中心体と前記管との間の電気接点、
冷媒を前記中心体を通して前記管に供給するか又はそこから排出するための少なくとも1つの回転可能な冷媒シール、及び
前記管の外側を真空に保つことを可能にするための少なくとも1つの回転可能な真空シール、
の少なくとも1つを前記管の内側にさらに備えていることを特徴とするターゲット組立体。
【請求項2】
前記駆動手段は、電気回転モータであることを特徴とする請求項1に記載のターゲット組立体。
【請求項3】
前記電気回転モータは、固定軸回転ドラムモータであることを特徴とする請求項2に記載のターゲット組立体。
【請求項4】
前記駆動手段は、流体回転モータであることを特徴とする請求項1に記載のターゲット組立体。
【請求項5】
前記流体回転モータは、冷媒によって駆動されるようになっていることを特徴とする請求項4に記載のターゲット組立体。
【請求項6】
減圧可能なチャンバーの壁内に配置され、請求項1〜5のいずれか一項に記載のターゲット組立体を備えるスパッタ装置において、前記チャンバー壁に接続される第1及び第2連結手段をさらに備え、前記中心体を前記第1及び第2連結手段に取り外し可能に連結させていることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項7】
減圧可能なチャンバーの壁内に配置され、請求項1〜5のいずれか一項に記載のターゲット組立体を備えるスパッタ装置において、前記壁に接続される1つの連結手段をさらに備え、前記中心体を前記1つの連結手段に取り外し可能に連結させていることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項8】
回転可能なターゲット管と第1及び第2中心体とを備えるターゲット組立体において、
前記管を前記第1又は第2中心体によって回転可能に支持するための軸受システム、
前記管を前記第1又は第2中心体に対して回転させるための駆動手段、
前記管を前記第1又は第2中心体を介して電気的に接続するための前記中心体と前記管との間の電気接点、
冷媒を前記第1又は第2中心体を介して前記管に供給又はそこから排出するための少なくとも1つの回転可能な冷媒シール、及び
前記管の外側を真空に保つことを可能にするための少なくとも1つの回転可能な真空シール、
の少なくとも1つを前記管の内側にさらに備えていることを特徴とするターゲット組立体。
【請求項9】
前記第1及び第2中心体は、互いに連結されていることを特徴とする請求項8に記載のスパッタ組立体。
【請求項10】
減圧可能なチャンバーの壁内に配置され、請求項8あるいは9に記載のターゲット組立体を備えるスパッタ装置において、前記チャンバー壁に接続される第1及び第2連結手段をさらに備え、前記第1及び第2中心体を前記第1及び第2連結手段に取り外し可能に連結させていることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項11】
減圧可能なチャンバーの壁内に配置され、請求項8あるいは9に記載のターゲット組立体を備えるスパッタ装置において、前記チャンバー壁に接続される1つの連結手段をさらに備え、前記第1中心体を前記1つの連結手段に取り外し可能に連結させていることを特徴とするスパッタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−513818(P2009−513818A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518200(P2006−518200)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051247
【国際公開番号】WO2005/005682
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505360498)
【Fターム(参考)】