回転角度検出装置
【課題】回転体の回転角度を演算する演算部において、検出結果をより確実に用いることができるように出力することができる技術を提供する。
【解決手段】回転体に取り付けられたギアにより回転力が付与されて回転する第1の従動ギアおよび第2の従動ギアそれぞれの回転角度を検出する第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサと、第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサにより入力された検出結果に基づいて回転体の回転角度を演算するECUとを備え、第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサの少なくともいずれかは、検出した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのいずれか一方のエッジが予め定められた周期となるように出力するとともに、検出した回転角度に応じた時間に予め定められた時間TPを加算した時間を一方のエッジから他方のエッジまでの時間とする。
【解決手段】回転体に取り付けられたギアにより回転力が付与されて回転する第1の従動ギアおよび第2の従動ギアそれぞれの回転角度を検出する第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサと、第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサにより入力された検出結果に基づいて回転体の回転角度を演算するECUとを備え、第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサの少なくともいずれかは、検出した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのいずれか一方のエッジが予め定められた周期となるように出力するとともに、検出した回転角度に応じた時間に予め定められた時間TPを加算した時間を一方のエッジから他方のエッジまでの時間とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、360度を越えて回転可能な回転体の回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、以下のように構成された回転角度検出装置が記載されている。すなわち、回転可能な回転体は、n個の歯が形成された歯車を有している。この歯車は、m個の歯を有している歯車とm+1個の歯を有している2つの歯車に係合されている。これら2つの歯車の角度ψとθは2つの周期的な角度センサを用いて測定される。この測定は接触式か又は非接触式に行われる。そして、これらの角度センサはそれぞれ電子評価回路に接続されており、この評価回路は、回転体の回転角度φの検出に必要な計算を行う。このように構成された回転角度検出装置において、いわゆる絶対値センサである2つの角度センサは、回転角度検出装置のスイッチオン直後に、スイッチオン時の2つの歯車の回転角度ψとθを供給する。これらの角度値、回転体の歯車の角度マークないし歯の数、および2つの歯車の角度マークないし歯の数により、回転体の角度φを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3792718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
360度を越えて回転可能な回転体に取り付けられた歯車と噛み合う2つの従動歯車それぞれの回転角度を2つのセンサなどの検出手段にて検出し、これら2つのセンサの検出結果に基づいて回転体の回転角度を演算する装置において、2つの検出手段として、測定した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を出力する検出手段を用いることが考えられる。
【0005】
パルス幅変調信号を出力する検出手段を用いる場合、検出手段は、検出結果を、この検出結果に基づいて回転体の回転角度を演算する演算部において、より確実に用いることができるように出力することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記回転体の回転に連動して回転する第1の従動体および第2の従動体と、前記第1の従動体の回転角度を検出する第1の検出手段と、前記第2の従動体の回転角度を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段により入力された検出結果に基づいて前記回転体の回転角度を演算する回転角度演算手段と、を備え、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかは、検出した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのいずれか一方のエッジが予め定められた周期となるように出力するとともに、検出した回転角度に応じた時間に予め定められた時間を加算した時間を当該一方のエッジから他方のエッジまでの時間とすることを特徴とする回転角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかが出力するパルス幅変調信号の周期は、前記回転角度演算手段が前記回転体の回転角度を演算する周期と略同一であることが好適である。
また、前記パルス幅変調信号の一方のエッジでカウントし始めて前記他方のエッジまでカウントされ予め定められたレジスタに取り込まれたカウント値を予め定められた記憶領域に移動させる移動手段をさらに備え、前記回転角度演算手段は、前記移動手段により前記予め定められた記憶領域に移動されたカウント値に基づいて前記回転体の回転角度を演算することが好適である。
【0008】
また、前記回転角度演算手段および前記移動手段は同一のコンピュータであり、当該コンピュータは、前記回転体に回転補助力を与える電動モータを制御する処理の周期を確保した上で前記カウント値を前記予め定められた記憶領域に移動させるとともに前記回転体の回転角度を予め定められた周期で演算することが好適である。
また、前記回転体は歯車を有し、前記第1の従動体は第1の従動歯車を有し、前記第2の従動体は前記第1の従動歯車の歯数とは異なる歯数を有する第2の従動歯車を有し、前記第1の従動体および前記第2の従動体は、前記第1の従動歯車および前記第2の従動歯車が前記歯車により回転力が付与されることにより前記回転体の回転に連動して回転することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明を採用しない場合に比べて、回転角度演算手段において第1の検出手段および第2の検出手段の少なくともいずれかの検出結果をより確実に用いることができるように出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る回転角度検出装置の概略構成図である。
【図2】回転体の回転角度と、第1の従動ギア、第2の従動ギアの回転角度との関係を示す図である。
【図3】第1の従動ギアおよび第2の従動ギアの回転角度と、パルス幅変調信号のデューティ比との関係を示す図である。
【図4】第1の従動ギアおよび第2の従動ギアの回転角度と、第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサが出力するパルス幅変調信号との関係を示す図である。
【図5】ECUが行う回転体の回転角度演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図7】EPS装置を制御する部分の概略構成図である。
【図8】目標電流算出部の概略構成図である。
【図9】制御部の概略構成図である
【図10】第1の従動ギアおよび第2の従動ギアの回転角度と、パルス幅変調信号のデューティ比との関係の参考例を示す図である。
【図11】図10に示した参考例のときのパルス幅変調信号の出力態様の一例を示す図である。
【図12】ECUが最優先の割り込み処理としてカウント値をRAMに移動させる移動処理を行う場合の他の処理との関係を示す図である。
【図13】本実施の形態に係る第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサのパルス幅変調信号を示す図である。
【図14】本実施の形態に係る第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサのパルス幅変調信号とECUの処理との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る回転角度検出装置1の概略構成図である。
回転角度検出装置1は、例えば自動車などの乗り物の本体フレームに回転可能に支持される回転体100の回転角度を検出する装置である。回転体100としては、例えば後述するステアリングシャフト202であることを例示することができ、本体フレームに固定される部材であるハウジング(不図示)に固定されたボールベアリングなどの軸受を介してハウジングに回転可能に支持されている。
【0012】
この回転角度検出装置1にて、回転体100の回転角度を検出することにより、回転体100に連結されたステアリングホイール201(図6参照)の回転角度の検出、ひいてはステアリングホイール201(図6参照)が搭載された乗り物の進行方向の把握が可能となる。そして、回転角度検出装置1の検出結果は、進路案内を行う装置、ステアリングの角度に応じてサスペンションの硬さを変える装置等の各種の制御装置において使用される。
【0013】
以下に、回転角度検出装置1について詳述する。
回転角度検出装置1は、回転体100に取り付けられた歯車の一例としてのギア101と、ギア101と噛み合う第1の従動歯車の一例としての第1の従動ギア111と、ギア101と噛み合う第2の従動歯車の一例としての第2の従動ギア121とを有する。第1の従動ギア111は、例えば、ハウジングに回転可能に支持された第1の回転軸110に取り付けられることでハウジングに対して回転可能となっている。第2の従動ギア121も、例えば、ハウジングに回転可能に支持された第2の回転軸120に取り付けられることでハウジングに対して回転可能となっている。これら第1の従動ギア111と第1の回転軸110とで第1の従動体の一例を構成し、第2の従動ギア121と第2の回転軸120とで第2の従動体の一例を構成する。
【0014】
図2は、回転体100の回転角度と、第1の従動ギア111,第2の従動ギア121の回転角度との関係を示す図である。
ギア101の歯数はn個、第1の従動ギア111の歯数はm個、第2の従動ギア121の歯数は(m+1)個である。そして、ギア101の歯数と第1の従動ギア111の歯数との関係、ギア101の歯数と第2の従動ギア121の歯数との関係を考慮すると共に、第1の従動ギア111の歯数がm個、第2の従動ギア121の歯数が(m+1)個である点を考慮すると、図2に示すような、回転体100の回転角度と、第1の従動ギア111,第2の従動ギア121の回転角度との関係を示す図を得ることができる。なお、nは81、mは21であることを例示することができる。
【0015】
また、回転角度検出装置1は、第1の従動ギア111の回転角度を検出する第1の検出手段の一例としての第1の回転角度センサ112を有している。第1の回転角度センサ112は、第1の従動ギア111の回転半径方向の外側に配置されており、第1の従動ギア111の歯又は第1の回転軸110の周方向に複数形成された角度マークに基づいて第1の従動ギア111の回転角度を検出する。
同様に、回転角度検出装置1は、第2の従動ギア121の回転角度を検出する第2の検出手段の一例としての第2の回転角度センサ122を有している。第2の回転角度センサ122は、第2の従動ギア121の回転半径方向の外側に配置されており、第2の従動ギア121の歯又は第2の回転軸120の周方向に複数形成された角度マークに基づいて第2の従動ギア121の回転角度を検出する。
そして、回転角度検出装置1は、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122からの出力値に基づいて、言い換えれば第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122により入力された検出結果に基づいて回転体100の回転角度を演算する回転角度演算手段の一例としての電子制御ユニット(以下、単に「ECU」と称す。)10(図1参照)を有している。
【0016】
第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は、それぞれ、検出した第1の従動ギア111または第2の従動ギア121の回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号PWMを予め定められた周期で出力する。
図3は、第1の従動ギア111および第2の従動ギア121の回転角度と、パルス幅変調信号PWMのデューティ比との関係を示す図である。
図3に示すように、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は、それぞれ、第1の従動ギア111または第2の従動ギア121の回転角度0度〜360度を、デューティ比D1%〜D2%のパルス幅変調信号PWMに変換して出力する。
【0017】
図4は、第1の従動ギア111および第2の従動ギア121の回転角度と、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122が出力するパルス幅変調信号PWMとの関係を示す図である。
図4に示すように、第1の回転角度センサ112は、第1の従動ギア111の回転角度に応じたON(High)パルスの時間PWMA_ONを有するパルス幅変調信号PWMAを、予め定められた周期PWMA_Tにて出力し、第2の回転角度センサ122は、第2の従動ギア121の回転角度に応じたON(High)パルスの時間PWMB_ONを有するパルス幅変調信号PWMBを、予め定められた周期PWMB_Tにて出力する。
【0018】
ECU10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどからなる算術論理演算回路である。ECU10には、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122が接続されており、ECU10を介して第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122に電力が供給される。また、ECU10は、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122から出力されたパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBを入力し、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの周期と、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBのON(High)パルスの時間PWMA_ONおよびPWMB_ONとを認識する。
【0019】
より具体的には、ECU10は、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの周期を測定するためのタイマカウンタと、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBそれぞれのON(High)パルスの時間を測定するための2つのタイマカウンタとの合計3つのタイマカウンタを備えている。
パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの周期を測定するためのタイマカウンタは、フリーランカウンタ設定とし、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの立ち上がりエッジのカウンタの値をキャプチャ・レジスタに取り込む。また、バッファ機能を使用し、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの今回(n回目)のカウント値TA(n)およびTB(n)と、前回(n−1回目)のカウント値TA(n−1)およびTB(n−1)とをRAM(メモリ)に記憶できる構成とする。
パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBそれぞれのON(High)パルスの時間を測定するための各タイマカウンタは、パルス幅変調信号PWMAあるいはPWMBの立ち上がりエッジ時にスタート、立ち下がりエッジ時にストップし、その間のカウンタの値(カウント値)をキャプチャ・レジスタに取り込みカウンタをクリアする。
【0020】
そして、ECU10は、キャプチャ・レジスタに取り込んだ、最新のパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBのONパルスのカウント値をRAM(メモリ)に移動させる。そして、ECU10は、予め定められた周期T(図4参照)で、RAMに記憶したカウント値に基づいて回転体100の回転角度φを演算する演算処理を行う。図4には、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122が回転角度を検出する周期(PWMA_TおよびPWMB_T)およびタイミングと、ECU10が行う回転体100の回転角度φを演算する処理のタイミングおよび処理周期Tを示している。
【0021】
以下、フローチャートを用いて、ECU10が行う回転体100の回転角度演算処理について説明する。
図5は、ECU10が行う回転体100の回転角度演算処理の手順を示すフローチャートである。ECU10は、上述した周期Tにてこの回転角度演算処理を行う。
ECU10は、先ず、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122の検出周期PWMA_TおよびPWMB_Tを算出する(ステップ501)。
第1の回転角度センサ112の検出周期PWMA_Tを算出する処理は、RAMに記憶している、今回(n回目)のパルス幅変調信号PWMAの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TA(n)から、前回(n−1回目)のパルス幅変調信号PWMAの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TA(n−1)を減算する処理である(PWMA_T=TA(n)−TA(n−1))。
また、第2の回転角度センサ122の検出周期PWMB_Tを算出する処理は、今回(n回目)のパルス幅変調信号PWMBの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TB(n)から、前回(n−1回目)のパルス幅変調信号PWMBの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TB(n−1)を減算する処理である(PWMB_T=TB(n)−TB(n−1))。
【0022】
その後、ECU10は、第1の従動ギア111の回転角度θAおよび第2の従動ギア121の回転角度θBを演算する(ステップ502)。
第1の従動ギア111の回転角度θAを演算する処理は、RAMに記憶した最新の第1の従動ギア111の回転角度に応じたパルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONを読み込み、以下の式(1)に代入するとともに、ステップ501にて算出した検出周期PWMA_Tを以下の式(1)に代入することにより演算する処理である。
θA=(PWMA_ON−PWMA_T×0.05)/(PWMA_T×0.9)×K1・・・(1)
ここで、K1は、パルス幅変調信号PWMAを回転角度θAに変換する係数であり、パルス幅変調信号PWMAに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度とに依存する係数であり、予めROMに記憶されている。
【0023】
また、第2の従動ギア121の回転角度θBを演算する処理は、RAMに記憶した最新の第2の従動ギア121の回転角度に応じたパルス幅変調信号PWMBのONパルスの時間PWMB_ONを読み込み、以下の式(2)に代入するとともに、ステップ501にて算出した検出周期PWMB_Tを以下の式(2)に代入することにより演算する処理である。
θB=(PWMB_ON−PWMB_T×0.05)/(PWMB_T×0.9)×K2・・・(2)
ここで、K2は、パルス幅変調信号PWMBを回転角度θBに変換する係数であり、パルス幅変調信号PWMBに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度とに依存する係数であり、予めROMに記憶されている。
なお、本実施の形態においては、パルス幅変調信号PWMBに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度との関係は、パルス幅変調信号PWMAに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度との関係と同じであるので、K2=K1であることが好適である。
【0024】
その後、ECU10は、ステップ502にて算出した第1の従動ギア111の回転角度θAと第2の従動ギア121の回転角度θBとの角度差ΔθABを算出する(ΔθAB=θA−θB)(ステップ503)。そして、ECU10は、ステップ503にて算出した角度差ΔθABが0度(deg)よりも小さいか否かを判別する(ステップ504)。そして、ステップ504にて肯定判定した場合には、ステップ503にて算出した角度差ΔθABに360度を加算した値をΔθABに置き換え(ΔθAB=ΔθAB+360)(ステップ505)、ステップ506へ進む。他方、ステップ504にて否定判定した場合には、ステップ506へ進む。
【0025】
そして、ECU10は、ステップ506において回転体100の回転角度φを算出する。これは、以下の式(3)により算出する処理である。
φ=ΔθAB×K3・・・(3)
ここで、K3は、第1の従動ギア111の回転角度θAと第2の従動ギア121の回転角度θBとの角度差ΔθABを回転体100の回転角度φに変換する係数であり、ギア101の歯数、第1の従動ギア111の歯数、第2の従動ギア121の歯数、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122の検出角度である360度に依存する係数であり、予めROMに記憶された係数である。
このように、ECU10が回転角度演算処理を実行することで、回転角度検出装置1は、回転体100の回転角度φを検出する。
【0026】
上述した本実施の形態に係るECU10は、後述する電動パワーステアリング装置2を制御する制御装置としても機能する。以下、電動パワーステアリング装置2について説明する。
図6は、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置2の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置2(以下、単に「EPS装置2」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0027】
EPS装置2は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)201と、ステアリングホイール201に一体的に設けられたステアリングシャフト202とを備えている。ステアリングシャフト202と上部連結シャフト203とが自在継手203aを介して連結されており、上部連結シャフト203と下部連結シャフト208とが自在継手203bを介して連結されている。
【0028】
また、EPS装置2は、転動輪としての左右の前輪250のそれぞれに連結されたタイロッド204と、タイロッド204に連結されたラック軸205とを備えている。また、EPS装置2は、ラック軸205に形成されたラック歯205aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン206aを備えている。ピニオン206aは、ピニオンシャフト206の下端部に形成されている
【0029】
また、EPS装置2は、ピニオンシャフト206を収納するステアリングギアボックス207を有している。ピニオンシャフト206は、ステアリングギアボックス207にてトーションバー(不図示)を介して下部連結シャフト208と連結されている。ステアリングギアボックス207の内部には、下部連結シャフト208とピニオンシャフト206との相対角度に基づいてステアリングホイール201の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段の一例としてのトルクセンサ209が設けられている。
【0030】
また、EPS装置2は、ステアリングギアボックス207に支持された電動モータ210と、電動モータ210の駆動力を減速してピニオンシャフト206に伝達する減速機構211とを有している。
また、EPS装置2は、電動モータ210に実際に流れる実電流の大きさおよび方向を検出するモータ電流検出部33(図9参照)と、電動モータ210の端子間電圧を検出するモータ電圧検出部260を有している。
そして、EPS装置2は、上述したECU10にて制御される。ECU10には、上述したトルクセンサ209の出力値、自動車の車速を検出する車速センサ270の出力値、モータ電圧検出部260の出力値が入力される。
【0031】
以上のように構成されたEPS装置2は、ステアリングホイール201に加えられた操舵トルクをトルクセンサ209にて検出し、その検出トルクに応じて電動モータ210を駆動し、電動モータ210の発生トルクをピニオンシャフト206に伝達する。これにより、電動モータ210の発生トルクが、ステアリングホイール201に加える運転者の操舵力をアシストする。
【0032】
次に、ECU10が行うEPS装置2の制御について説明する。
図7は、EPS装置2を制御する部分の概略構成図である。
ECU10は、トルク信号Tdに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ210が供給するのに必要となる目標電流を算出する目標電流算出部20と、目標電流算出部20が算出した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部30とを有している。
【0033】
図8は、目標電流算出部20の概略構成図である。
目標電流算出部20は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部21と、電動モータ210の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部22とを備えている。また、目標電流算出部20は、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部23と、モータ電流信号Imおよびモータ端子間電圧信号Vmに基づいて電動モータ210の回転速度を推定するモータ回転速度推定部24とを備えている。また、目標電流算出部20は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23などからの出力に基づいて最終的な目標電流を決定する最終目標電流決定部25を備えている。
【0034】
なお、目標電流算出部20には、車速センサ270にて検出された車速が出力信号に変換された車速信号vと、モータ電圧検出部260にて検出された電圧が出力信号に変換されたモータ端子間電圧信号Vmと、モータ電流検出部33にて検出された実電流が出力信号に変換されたモータ電流信号Imと、トルクセンサ209にて検出されたトルクが出力信号に変換されたトルク信号Tdとが入力される。
なお、ECU10には、車速センサ270などからの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、目標電流算出部20に取り込んでいる。
【0035】
図9は、制御部30の概略構成図である。
制御部30は、電動モータ210の作動を制御するモータ駆動制御部31と、電動モータ210を駆動させるモータ駆動部32と、電動モータ210に実際に流れる実電流を検出するモータ電流検出部33とを有している。
モータ駆動制御部31は、目標電流算出部20にて算出された目標電流と、モータ電流検出部33にて検出された電動モータ210へ供給される実電流との偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部40と、電動モータ210をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部60とを有している。
【0036】
フィードバック制御部40は、目標電流算出部20にて算出された目標電流とモータ電流検出部33にて検出された実電流との偏差を求める偏差演算部41と、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部42とを有している。
偏差演算部41は、目標電流算出部20からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部33からの出力値であるモータ電流信号Imとの偏差の値を偏差信号41aとして出力する。
【0037】
フィードバック(F/B)処理部42は、目標電流と実電流とが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号41aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号42aを生成・出力する。
PWM信号生成部60は、フィードバック制御部40からの出力値に基づいてPWM信号60aを生成し、生成したPWM信号60aを出力する。
【0038】
モータ駆動部32は、4個の電力用電界効果トランジスタをH型ブリッジ回路の構成で接続したモータ駆動回路70と、4個の中から選択した2個の電界効果トランジスタのゲートを駆動してこれらの電界効果トランジスタをスイッチング動作させるゲート駆動回路部80とを有している。ゲート駆動回路部80は、PWM信号生成部60から出力されたPWM信号(駆動制御信号)60aに基づいて、ステアリングホイール201の操舵方向に応じて2個の電界効果トランジスタを選択し、選択した2個の電界効果トランジスタをスイッチング動作させる。
モータ電流検出部33は、モータ駆動回路70に直列に接続されたシャント抵抗71の両端に生じる電圧から電動モータ210に流れるモータ電流(電機子電流)の値を検出してモータ電流信号Imを出力する。
【0039】
このように、ECU10は、目標電流算出部20、制御部30などを有し、目標補助トルクの算出、この目標補助トルクを電動モータ210が供給するのに必要となる目標電流の算出、算出した目標電流に基づくフィードバック制御、PWM(パルス幅変調)信号を生成などの、電動モータ210の作動を制御するための一連のEPS制御処理を実行する。
【0040】
すなわち、ECU10は、EPS制御処理を実行するとともに回転体100の回転角度演算処理を実行する。また、ECU10は、外部の機器との通信処理などを行うバックグラウンド処理をも実行する。このようにECU10は、複数の処理を実行するが、その中でもEPS制御処理を他の処理に優先して行うように設定され、EPS制御処理を他の処理に優先して予め定められた周期で実行するように設定されている。そして、ECU10が予め定められた周期でEPS制御処理を実行することを前提に、目標電流を算出するのに用いる係数やフィードバック制御に用いる係数などEPS制御処理に用いる各種係数を定めている。
【0041】
ECU10が予め定められた周期でEPS制御処理を実行することができるように回転角度検出装置1の第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は、以下のように構成されている。
すなわち、第1の回転角度センサ112は、パルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONを、第1の従動ギア111の回転角度に応じた時間T1と回転角度に依存しない予め定められた時間TPとを加算した時間として出力する。同様に、第2の回転角度センサ122は、パルス幅変調信号PWMBのONパルスPWMB_ONの時間を、第2の従動ギア121の回転角度に応じた時間T2と回転角度に依存しない予め定められた時間TPとを加算した時間として出力する。
【0042】
これは以下の理由による。なお、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は同じであるので、以下では、代表して第1の回転角度センサ112について説明する。
例えば、第1の回転角度センサ112が、ONパルスの時間PWMA_ONを、予め定められた時間TPを加算せずに第1の従動ギア111の回転角度に応じた時間T1のみとし、デューティ比を5%〜95%(D1=5、D2=95)とした場合を考える。図10は、第1の従動ギア111および第2の従動ギア121の回転角度と、パルス幅変調信号PWMのデューティ比との関係の参考例を示す図である。
【0043】
図11は、図10に示した参考例のときのパルス幅変調信号PWMの出力態様の一例を示す図である。
上述したように、ECU10は、タイマカウンタがキャプチャ・レジスタに取り込んだパルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONのカウント値をRAM(メモリ)に移動させる。また、タイマカウンタは、立ち下がりエッジ時のカウンタの値をすぐにキャプチャ・レジスタに取り込む。そのため、カウント値をキャプチャ・レジスタに取り込む間隔が短い場合には、カウント値をRAMに移動させるのに必要な時間がなくなり、移動させる前にキャプチャ・レジスタのカウント値が次の立ち下がりエッジに基づくカウント値に上書きされてしまうおそれがある。例えば、第1の従動ギア111の回転角度が359.9度から0度へ変化する場合、つまり、デューティ比が略95%から5%へ急激に変化する場合、第1の回転角度センサ112が出力する立ち下がりエッジ間の間隔が非常に短いため(図11参照。例えば、PWMA_T=1msである場合、エッジ間の最短時間は100μsとなる)、この間に、デューティ比略95%の立ち下がりエッジに基づくカウント値をRAMに移動しないとデューティ比略5%の立ち下がりエッジに基づくカウント値に上書きされてしまう。その結果、ECU10が、異なるONパルスPWMA_ONの時間に基づいて回転体の回転角度φを演算してしまうため、回転体の回転角度φの検出精度が悪化する。
【0044】
このような問題に対して、ECU10が、カウント値をRAMに移動させる移動処理を最優先の割り込み処理として行い、他の処理に優先して行うことで対処することも可能ではある。
図12は、ECU10が最優先の割り込み処理としてカウント値をRAMに移動させる移動処理を行う場合の他の処理との関係を示す図である。
ECU10が、移動処理を最優先の割り込み処理として行う場合、ECU10がEPS制御処理を実行している途中においても、割り込みで移動処理を実行することから、図12に示すように、EPS制御処理の処理周期が変動してしまう。その結果、EPS制御処理の精度が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、ECU10がEPS制御処理を予め定められた周期で実行しても、移動処理を行うのに必要な時間を十分に確保することができるように、第1の回転角度センサ112が出力する立ち下がりエッジ間の間隔を長くするべく、第1の回転角度センサ112が、パルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONを、第1の従動ギア111の回転角度に応じた時間T1と予め定められた時間TPとを加算した時間として出力するようにする。図13は、本実施の形態に係る第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122のパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBを示す図である。
【0046】
予め定められた時間TPは、ECU10がEPS制御処理を予め定められた周期で実行しても、移動処理を行うのに必要な時間を十分に確保することができるように定める。例えば、予め定められた時間TPは、パルス幅変調信号PWMAの周期PWMA_Tの半分であることを例示することができる。これにより、デューティ比は少なくとも50%となり、移動処理を行う時間間隔として少なくとも周期PWMA_Tの半分の時間を確保することが可能となる。
【0047】
そして、周期PWMA_Tを可能な限り長くする。これは、周期PWMA_Tを同じにしたまま、単に予め定められた時間TPをONパルスの時間PWMA_ONに加えるのでは、予め定められた時間TPを加えない場合に比べて回転角度に応じた時間をきめ細かくパルス幅変調信号PWMAとして出力することができなくなるためである。それゆえ、予め定められた時間TPの分周期PWMA_Tを長くすることが好ましい。例えば、周期PWMA_Tの半分の時間を予め定められた時間TPとしてONパルスPWMA_ONの時間に加える場合には、周期PWMA_Tを、予め定められた時間TPを加えない場合の周期PWMA_Tの倍にすることが好適である。
【0048】
ただし、周期PWMA_Tは、回転体100の回転角度を精度高く演算するために、回転角度演算処理の処理周期T以下とする必要がある。そこで、本実施の形態においては、周期PWMA_Tを、回転角度演算処理の処理周期Tと同一に設定し、予め定められた時間TPを、ECU10がEPS制御処理を予め定められた周期で実行しても、移動処理を行うのに必要な時間を十分に確保することができるように定める。例えば、回転角度演算処理の処理周期Tが2msである場合には、周期PWMA_Tを2msに設定し、予め定められた時間TPを1msとし、第1の従動ギア111の回転角度0度〜360度を、デューティ比50%〜95%(回転角度0度に応じた時間T1を0、回転角度360度に応じた時間T1を900μs)のパルス幅変調信号PWMに変換して出力する。そして、このように第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122を構成することで、周期PWMA_T=1msで、第1の従動ギア111の回転角度0度〜360度を、デューティ比5%〜95%(回転角度0度に応じた時間を50μs、回転角度360度に応じた時間を950μs)のパルス幅変調信号PWMに変換して出力する構成と同じ分解能にしたまま、少なくとも、予め定められた時間TPを加算しない構成の周期分の時間間隔を確保することが可能となる。
【0049】
図14は、本実施の形態に係る第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122のパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBとECU10の処理との関係を示す図である。
上述のように、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122を構成することで、ECU10は、図14に示すように、EPS制御処理を予め定められた周期(例えば、250μs)で実行することができるとともに、キャプチャ・レジスタに取り込んだカウント値を確実にRAMに移動させて、そのカウント値に基づいて回転体100の回転角度を演算することができる。したがって、電動モータ210を適切に制御することができるとともに回転体100の回転角度を精度高く検出することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…回転角度検出装置、2…電動パワーステアリング装置、10…ECU、20…目標電流算出部、30…制御部、100…回転体、101…ギア、110…第1の回転軸、111…第1の従動ギア、112…第1の回転角度センサ、120…第2の回転軸、121…第2の従動ギア、122…第2の回転角度センサ、201…ステアリングホイール、202…ステアリングシャフト、209…トルクセンサ、210…電動モータ、260…モータ電圧検出部、270…車速センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、360度を越えて回転可能な回転体の回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、以下のように構成された回転角度検出装置が記載されている。すなわち、回転可能な回転体は、n個の歯が形成された歯車を有している。この歯車は、m個の歯を有している歯車とm+1個の歯を有している2つの歯車に係合されている。これら2つの歯車の角度ψとθは2つの周期的な角度センサを用いて測定される。この測定は接触式か又は非接触式に行われる。そして、これらの角度センサはそれぞれ電子評価回路に接続されており、この評価回路は、回転体の回転角度φの検出に必要な計算を行う。このように構成された回転角度検出装置において、いわゆる絶対値センサである2つの角度センサは、回転角度検出装置のスイッチオン直後に、スイッチオン時の2つの歯車の回転角度ψとθを供給する。これらの角度値、回転体の歯車の角度マークないし歯の数、および2つの歯車の角度マークないし歯の数により、回転体の角度φを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3792718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
360度を越えて回転可能な回転体に取り付けられた歯車と噛み合う2つの従動歯車それぞれの回転角度を2つのセンサなどの検出手段にて検出し、これら2つのセンサの検出結果に基づいて回転体の回転角度を演算する装置において、2つの検出手段として、測定した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を出力する検出手段を用いることが考えられる。
【0005】
パルス幅変調信号を出力する検出手段を用いる場合、検出手段は、検出結果を、この検出結果に基づいて回転体の回転角度を演算する演算部において、より確実に用いることができるように出力することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記回転体の回転に連動して回転する第1の従動体および第2の従動体と、前記第1の従動体の回転角度を検出する第1の検出手段と、前記第2の従動体の回転角度を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段により入力された検出結果に基づいて前記回転体の回転角度を演算する回転角度演算手段と、を備え、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかは、検出した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのいずれか一方のエッジが予め定められた周期となるように出力するとともに、検出した回転角度に応じた時間に予め定められた時間を加算した時間を当該一方のエッジから他方のエッジまでの時間とすることを特徴とする回転角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかが出力するパルス幅変調信号の周期は、前記回転角度演算手段が前記回転体の回転角度を演算する周期と略同一であることが好適である。
また、前記パルス幅変調信号の一方のエッジでカウントし始めて前記他方のエッジまでカウントされ予め定められたレジスタに取り込まれたカウント値を予め定められた記憶領域に移動させる移動手段をさらに備え、前記回転角度演算手段は、前記移動手段により前記予め定められた記憶領域に移動されたカウント値に基づいて前記回転体の回転角度を演算することが好適である。
【0008】
また、前記回転角度演算手段および前記移動手段は同一のコンピュータであり、当該コンピュータは、前記回転体に回転補助力を与える電動モータを制御する処理の周期を確保した上で前記カウント値を前記予め定められた記憶領域に移動させるとともに前記回転体の回転角度を予め定められた周期で演算することが好適である。
また、前記回転体は歯車を有し、前記第1の従動体は第1の従動歯車を有し、前記第2の従動体は前記第1の従動歯車の歯数とは異なる歯数を有する第2の従動歯車を有し、前記第1の従動体および前記第2の従動体は、前記第1の従動歯車および前記第2の従動歯車が前記歯車により回転力が付与されることにより前記回転体の回転に連動して回転することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明を採用しない場合に比べて、回転角度演算手段において第1の検出手段および第2の検出手段の少なくともいずれかの検出結果をより確実に用いることができるように出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る回転角度検出装置の概略構成図である。
【図2】回転体の回転角度と、第1の従動ギア、第2の従動ギアの回転角度との関係を示す図である。
【図3】第1の従動ギアおよび第2の従動ギアの回転角度と、パルス幅変調信号のデューティ比との関係を示す図である。
【図4】第1の従動ギアおよび第2の従動ギアの回転角度と、第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサが出力するパルス幅変調信号との関係を示す図である。
【図5】ECUが行う回転体の回転角度演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図7】EPS装置を制御する部分の概略構成図である。
【図8】目標電流算出部の概略構成図である。
【図9】制御部の概略構成図である
【図10】第1の従動ギアおよび第2の従動ギアの回転角度と、パルス幅変調信号のデューティ比との関係の参考例を示す図である。
【図11】図10に示した参考例のときのパルス幅変調信号の出力態様の一例を示す図である。
【図12】ECUが最優先の割り込み処理としてカウント値をRAMに移動させる移動処理を行う場合の他の処理との関係を示す図である。
【図13】本実施の形態に係る第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサのパルス幅変調信号を示す図である。
【図14】本実施の形態に係る第1の回転角度センサおよび第2の回転角度センサのパルス幅変調信号とECUの処理との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る回転角度検出装置1の概略構成図である。
回転角度検出装置1は、例えば自動車などの乗り物の本体フレームに回転可能に支持される回転体100の回転角度を検出する装置である。回転体100としては、例えば後述するステアリングシャフト202であることを例示することができ、本体フレームに固定される部材であるハウジング(不図示)に固定されたボールベアリングなどの軸受を介してハウジングに回転可能に支持されている。
【0012】
この回転角度検出装置1にて、回転体100の回転角度を検出することにより、回転体100に連結されたステアリングホイール201(図6参照)の回転角度の検出、ひいてはステアリングホイール201(図6参照)が搭載された乗り物の進行方向の把握が可能となる。そして、回転角度検出装置1の検出結果は、進路案内を行う装置、ステアリングの角度に応じてサスペンションの硬さを変える装置等の各種の制御装置において使用される。
【0013】
以下に、回転角度検出装置1について詳述する。
回転角度検出装置1は、回転体100に取り付けられた歯車の一例としてのギア101と、ギア101と噛み合う第1の従動歯車の一例としての第1の従動ギア111と、ギア101と噛み合う第2の従動歯車の一例としての第2の従動ギア121とを有する。第1の従動ギア111は、例えば、ハウジングに回転可能に支持された第1の回転軸110に取り付けられることでハウジングに対して回転可能となっている。第2の従動ギア121も、例えば、ハウジングに回転可能に支持された第2の回転軸120に取り付けられることでハウジングに対して回転可能となっている。これら第1の従動ギア111と第1の回転軸110とで第1の従動体の一例を構成し、第2の従動ギア121と第2の回転軸120とで第2の従動体の一例を構成する。
【0014】
図2は、回転体100の回転角度と、第1の従動ギア111,第2の従動ギア121の回転角度との関係を示す図である。
ギア101の歯数はn個、第1の従動ギア111の歯数はm個、第2の従動ギア121の歯数は(m+1)個である。そして、ギア101の歯数と第1の従動ギア111の歯数との関係、ギア101の歯数と第2の従動ギア121の歯数との関係を考慮すると共に、第1の従動ギア111の歯数がm個、第2の従動ギア121の歯数が(m+1)個である点を考慮すると、図2に示すような、回転体100の回転角度と、第1の従動ギア111,第2の従動ギア121の回転角度との関係を示す図を得ることができる。なお、nは81、mは21であることを例示することができる。
【0015】
また、回転角度検出装置1は、第1の従動ギア111の回転角度を検出する第1の検出手段の一例としての第1の回転角度センサ112を有している。第1の回転角度センサ112は、第1の従動ギア111の回転半径方向の外側に配置されており、第1の従動ギア111の歯又は第1の回転軸110の周方向に複数形成された角度マークに基づいて第1の従動ギア111の回転角度を検出する。
同様に、回転角度検出装置1は、第2の従動ギア121の回転角度を検出する第2の検出手段の一例としての第2の回転角度センサ122を有している。第2の回転角度センサ122は、第2の従動ギア121の回転半径方向の外側に配置されており、第2の従動ギア121の歯又は第2の回転軸120の周方向に複数形成された角度マークに基づいて第2の従動ギア121の回転角度を検出する。
そして、回転角度検出装置1は、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122からの出力値に基づいて、言い換えれば第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122により入力された検出結果に基づいて回転体100の回転角度を演算する回転角度演算手段の一例としての電子制御ユニット(以下、単に「ECU」と称す。)10(図1参照)を有している。
【0016】
第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は、それぞれ、検出した第1の従動ギア111または第2の従動ギア121の回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号PWMを予め定められた周期で出力する。
図3は、第1の従動ギア111および第2の従動ギア121の回転角度と、パルス幅変調信号PWMのデューティ比との関係を示す図である。
図3に示すように、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は、それぞれ、第1の従動ギア111または第2の従動ギア121の回転角度0度〜360度を、デューティ比D1%〜D2%のパルス幅変調信号PWMに変換して出力する。
【0017】
図4は、第1の従動ギア111および第2の従動ギア121の回転角度と、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122が出力するパルス幅変調信号PWMとの関係を示す図である。
図4に示すように、第1の回転角度センサ112は、第1の従動ギア111の回転角度に応じたON(High)パルスの時間PWMA_ONを有するパルス幅変調信号PWMAを、予め定められた周期PWMA_Tにて出力し、第2の回転角度センサ122は、第2の従動ギア121の回転角度に応じたON(High)パルスの時間PWMB_ONを有するパルス幅変調信号PWMBを、予め定められた周期PWMB_Tにて出力する。
【0018】
ECU10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどからなる算術論理演算回路である。ECU10には、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122が接続されており、ECU10を介して第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122に電力が供給される。また、ECU10は、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122から出力されたパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBを入力し、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの周期と、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBのON(High)パルスの時間PWMA_ONおよびPWMB_ONとを認識する。
【0019】
より具体的には、ECU10は、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの周期を測定するためのタイマカウンタと、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBそれぞれのON(High)パルスの時間を測定するための2つのタイマカウンタとの合計3つのタイマカウンタを備えている。
パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの周期を測定するためのタイマカウンタは、フリーランカウンタ設定とし、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの立ち上がりエッジのカウンタの値をキャプチャ・レジスタに取り込む。また、バッファ機能を使用し、パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBの今回(n回目)のカウント値TA(n)およびTB(n)と、前回(n−1回目)のカウント値TA(n−1)およびTB(n−1)とをRAM(メモリ)に記憶できる構成とする。
パルス幅変調信号PWMAおよびPWMBそれぞれのON(High)パルスの時間を測定するための各タイマカウンタは、パルス幅変調信号PWMAあるいはPWMBの立ち上がりエッジ時にスタート、立ち下がりエッジ時にストップし、その間のカウンタの値(カウント値)をキャプチャ・レジスタに取り込みカウンタをクリアする。
【0020】
そして、ECU10は、キャプチャ・レジスタに取り込んだ、最新のパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBのONパルスのカウント値をRAM(メモリ)に移動させる。そして、ECU10は、予め定められた周期T(図4参照)で、RAMに記憶したカウント値に基づいて回転体100の回転角度φを演算する演算処理を行う。図4には、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122が回転角度を検出する周期(PWMA_TおよびPWMB_T)およびタイミングと、ECU10が行う回転体100の回転角度φを演算する処理のタイミングおよび処理周期Tを示している。
【0021】
以下、フローチャートを用いて、ECU10が行う回転体100の回転角度演算処理について説明する。
図5は、ECU10が行う回転体100の回転角度演算処理の手順を示すフローチャートである。ECU10は、上述した周期Tにてこの回転角度演算処理を行う。
ECU10は、先ず、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122の検出周期PWMA_TおよびPWMB_Tを算出する(ステップ501)。
第1の回転角度センサ112の検出周期PWMA_Tを算出する処理は、RAMに記憶している、今回(n回目)のパルス幅変調信号PWMAの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TA(n)から、前回(n−1回目)のパルス幅変調信号PWMAの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TA(n−1)を減算する処理である(PWMA_T=TA(n)−TA(n−1))。
また、第2の回転角度センサ122の検出周期PWMB_Tを算出する処理は、今回(n回目)のパルス幅変調信号PWMBの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TB(n)から、前回(n−1回目)のパルス幅変調信号PWMBの立ち下がりエッジ時のカウンタ値TB(n−1)を減算する処理である(PWMB_T=TB(n)−TB(n−1))。
【0022】
その後、ECU10は、第1の従動ギア111の回転角度θAおよび第2の従動ギア121の回転角度θBを演算する(ステップ502)。
第1の従動ギア111の回転角度θAを演算する処理は、RAMに記憶した最新の第1の従動ギア111の回転角度に応じたパルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONを読み込み、以下の式(1)に代入するとともに、ステップ501にて算出した検出周期PWMA_Tを以下の式(1)に代入することにより演算する処理である。
θA=(PWMA_ON−PWMA_T×0.05)/(PWMA_T×0.9)×K1・・・(1)
ここで、K1は、パルス幅変調信号PWMAを回転角度θAに変換する係数であり、パルス幅変調信号PWMAに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度とに依存する係数であり、予めROMに記憶されている。
【0023】
また、第2の従動ギア121の回転角度θBを演算する処理は、RAMに記憶した最新の第2の従動ギア121の回転角度に応じたパルス幅変調信号PWMBのONパルスの時間PWMB_ONを読み込み、以下の式(2)に代入するとともに、ステップ501にて算出した検出周期PWMB_Tを以下の式(2)に代入することにより演算する処理である。
θB=(PWMB_ON−PWMB_T×0.05)/(PWMB_T×0.9)×K2・・・(2)
ここで、K2は、パルス幅変調信号PWMBを回転角度θBに変換する係数であり、パルス幅変調信号PWMBに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度とに依存する係数であり、予めROMに記憶されている。
なお、本実施の形態においては、パルス幅変調信号PWMBに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度との関係は、パルス幅変調信号PWMAに用いるデューティ比の幅と最大回転角度360度との関係と同じであるので、K2=K1であることが好適である。
【0024】
その後、ECU10は、ステップ502にて算出した第1の従動ギア111の回転角度θAと第2の従動ギア121の回転角度θBとの角度差ΔθABを算出する(ΔθAB=θA−θB)(ステップ503)。そして、ECU10は、ステップ503にて算出した角度差ΔθABが0度(deg)よりも小さいか否かを判別する(ステップ504)。そして、ステップ504にて肯定判定した場合には、ステップ503にて算出した角度差ΔθABに360度を加算した値をΔθABに置き換え(ΔθAB=ΔθAB+360)(ステップ505)、ステップ506へ進む。他方、ステップ504にて否定判定した場合には、ステップ506へ進む。
【0025】
そして、ECU10は、ステップ506において回転体100の回転角度φを算出する。これは、以下の式(3)により算出する処理である。
φ=ΔθAB×K3・・・(3)
ここで、K3は、第1の従動ギア111の回転角度θAと第2の従動ギア121の回転角度θBとの角度差ΔθABを回転体100の回転角度φに変換する係数であり、ギア101の歯数、第1の従動ギア111の歯数、第2の従動ギア121の歯数、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122の検出角度である360度に依存する係数であり、予めROMに記憶された係数である。
このように、ECU10が回転角度演算処理を実行することで、回転角度検出装置1は、回転体100の回転角度φを検出する。
【0026】
上述した本実施の形態に係るECU10は、後述する電動パワーステアリング装置2を制御する制御装置としても機能する。以下、電動パワーステアリング装置2について説明する。
図6は、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置2の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置2(以下、単に「EPS装置2」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0027】
EPS装置2は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)201と、ステアリングホイール201に一体的に設けられたステアリングシャフト202とを備えている。ステアリングシャフト202と上部連結シャフト203とが自在継手203aを介して連結されており、上部連結シャフト203と下部連結シャフト208とが自在継手203bを介して連結されている。
【0028】
また、EPS装置2は、転動輪としての左右の前輪250のそれぞれに連結されたタイロッド204と、タイロッド204に連結されたラック軸205とを備えている。また、EPS装置2は、ラック軸205に形成されたラック歯205aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン206aを備えている。ピニオン206aは、ピニオンシャフト206の下端部に形成されている
【0029】
また、EPS装置2は、ピニオンシャフト206を収納するステアリングギアボックス207を有している。ピニオンシャフト206は、ステアリングギアボックス207にてトーションバー(不図示)を介して下部連結シャフト208と連結されている。ステアリングギアボックス207の内部には、下部連結シャフト208とピニオンシャフト206との相対角度に基づいてステアリングホイール201の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段の一例としてのトルクセンサ209が設けられている。
【0030】
また、EPS装置2は、ステアリングギアボックス207に支持された電動モータ210と、電動モータ210の駆動力を減速してピニオンシャフト206に伝達する減速機構211とを有している。
また、EPS装置2は、電動モータ210に実際に流れる実電流の大きさおよび方向を検出するモータ電流検出部33(図9参照)と、電動モータ210の端子間電圧を検出するモータ電圧検出部260を有している。
そして、EPS装置2は、上述したECU10にて制御される。ECU10には、上述したトルクセンサ209の出力値、自動車の車速を検出する車速センサ270の出力値、モータ電圧検出部260の出力値が入力される。
【0031】
以上のように構成されたEPS装置2は、ステアリングホイール201に加えられた操舵トルクをトルクセンサ209にて検出し、その検出トルクに応じて電動モータ210を駆動し、電動モータ210の発生トルクをピニオンシャフト206に伝達する。これにより、電動モータ210の発生トルクが、ステアリングホイール201に加える運転者の操舵力をアシストする。
【0032】
次に、ECU10が行うEPS装置2の制御について説明する。
図7は、EPS装置2を制御する部分の概略構成図である。
ECU10は、トルク信号Tdに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ210が供給するのに必要となる目標電流を算出する目標電流算出部20と、目標電流算出部20が算出した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部30とを有している。
【0033】
図8は、目標電流算出部20の概略構成図である。
目標電流算出部20は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部21と、電動モータ210の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部22とを備えている。また、目標電流算出部20は、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部23と、モータ電流信号Imおよびモータ端子間電圧信号Vmに基づいて電動モータ210の回転速度を推定するモータ回転速度推定部24とを備えている。また、目標電流算出部20は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23などからの出力に基づいて最終的な目標電流を決定する最終目標電流決定部25を備えている。
【0034】
なお、目標電流算出部20には、車速センサ270にて検出された車速が出力信号に変換された車速信号vと、モータ電圧検出部260にて検出された電圧が出力信号に変換されたモータ端子間電圧信号Vmと、モータ電流検出部33にて検出された実電流が出力信号に変換されたモータ電流信号Imと、トルクセンサ209にて検出されたトルクが出力信号に変換されたトルク信号Tdとが入力される。
なお、ECU10には、車速センサ270などからの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、目標電流算出部20に取り込んでいる。
【0035】
図9は、制御部30の概略構成図である。
制御部30は、電動モータ210の作動を制御するモータ駆動制御部31と、電動モータ210を駆動させるモータ駆動部32と、電動モータ210に実際に流れる実電流を検出するモータ電流検出部33とを有している。
モータ駆動制御部31は、目標電流算出部20にて算出された目標電流と、モータ電流検出部33にて検出された電動モータ210へ供給される実電流との偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部40と、電動モータ210をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部60とを有している。
【0036】
フィードバック制御部40は、目標電流算出部20にて算出された目標電流とモータ電流検出部33にて検出された実電流との偏差を求める偏差演算部41と、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部42とを有している。
偏差演算部41は、目標電流算出部20からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部33からの出力値であるモータ電流信号Imとの偏差の値を偏差信号41aとして出力する。
【0037】
フィードバック(F/B)処理部42は、目標電流と実電流とが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号41aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号42aを生成・出力する。
PWM信号生成部60は、フィードバック制御部40からの出力値に基づいてPWM信号60aを生成し、生成したPWM信号60aを出力する。
【0038】
モータ駆動部32は、4個の電力用電界効果トランジスタをH型ブリッジ回路の構成で接続したモータ駆動回路70と、4個の中から選択した2個の電界効果トランジスタのゲートを駆動してこれらの電界効果トランジスタをスイッチング動作させるゲート駆動回路部80とを有している。ゲート駆動回路部80は、PWM信号生成部60から出力されたPWM信号(駆動制御信号)60aに基づいて、ステアリングホイール201の操舵方向に応じて2個の電界効果トランジスタを選択し、選択した2個の電界効果トランジスタをスイッチング動作させる。
モータ電流検出部33は、モータ駆動回路70に直列に接続されたシャント抵抗71の両端に生じる電圧から電動モータ210に流れるモータ電流(電機子電流)の値を検出してモータ電流信号Imを出力する。
【0039】
このように、ECU10は、目標電流算出部20、制御部30などを有し、目標補助トルクの算出、この目標補助トルクを電動モータ210が供給するのに必要となる目標電流の算出、算出した目標電流に基づくフィードバック制御、PWM(パルス幅変調)信号を生成などの、電動モータ210の作動を制御するための一連のEPS制御処理を実行する。
【0040】
すなわち、ECU10は、EPS制御処理を実行するとともに回転体100の回転角度演算処理を実行する。また、ECU10は、外部の機器との通信処理などを行うバックグラウンド処理をも実行する。このようにECU10は、複数の処理を実行するが、その中でもEPS制御処理を他の処理に優先して行うように設定され、EPS制御処理を他の処理に優先して予め定められた周期で実行するように設定されている。そして、ECU10が予め定められた周期でEPS制御処理を実行することを前提に、目標電流を算出するのに用いる係数やフィードバック制御に用いる係数などEPS制御処理に用いる各種係数を定めている。
【0041】
ECU10が予め定められた周期でEPS制御処理を実行することができるように回転角度検出装置1の第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は、以下のように構成されている。
すなわち、第1の回転角度センサ112は、パルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONを、第1の従動ギア111の回転角度に応じた時間T1と回転角度に依存しない予め定められた時間TPとを加算した時間として出力する。同様に、第2の回転角度センサ122は、パルス幅変調信号PWMBのONパルスPWMB_ONの時間を、第2の従動ギア121の回転角度に応じた時間T2と回転角度に依存しない予め定められた時間TPとを加算した時間として出力する。
【0042】
これは以下の理由による。なお、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122は同じであるので、以下では、代表して第1の回転角度センサ112について説明する。
例えば、第1の回転角度センサ112が、ONパルスの時間PWMA_ONを、予め定められた時間TPを加算せずに第1の従動ギア111の回転角度に応じた時間T1のみとし、デューティ比を5%〜95%(D1=5、D2=95)とした場合を考える。図10は、第1の従動ギア111および第2の従動ギア121の回転角度と、パルス幅変調信号PWMのデューティ比との関係の参考例を示す図である。
【0043】
図11は、図10に示した参考例のときのパルス幅変調信号PWMの出力態様の一例を示す図である。
上述したように、ECU10は、タイマカウンタがキャプチャ・レジスタに取り込んだパルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONのカウント値をRAM(メモリ)に移動させる。また、タイマカウンタは、立ち下がりエッジ時のカウンタの値をすぐにキャプチャ・レジスタに取り込む。そのため、カウント値をキャプチャ・レジスタに取り込む間隔が短い場合には、カウント値をRAMに移動させるのに必要な時間がなくなり、移動させる前にキャプチャ・レジスタのカウント値が次の立ち下がりエッジに基づくカウント値に上書きされてしまうおそれがある。例えば、第1の従動ギア111の回転角度が359.9度から0度へ変化する場合、つまり、デューティ比が略95%から5%へ急激に変化する場合、第1の回転角度センサ112が出力する立ち下がりエッジ間の間隔が非常に短いため(図11参照。例えば、PWMA_T=1msである場合、エッジ間の最短時間は100μsとなる)、この間に、デューティ比略95%の立ち下がりエッジに基づくカウント値をRAMに移動しないとデューティ比略5%の立ち下がりエッジに基づくカウント値に上書きされてしまう。その結果、ECU10が、異なるONパルスPWMA_ONの時間に基づいて回転体の回転角度φを演算してしまうため、回転体の回転角度φの検出精度が悪化する。
【0044】
このような問題に対して、ECU10が、カウント値をRAMに移動させる移動処理を最優先の割り込み処理として行い、他の処理に優先して行うことで対処することも可能ではある。
図12は、ECU10が最優先の割り込み処理としてカウント値をRAMに移動させる移動処理を行う場合の他の処理との関係を示す図である。
ECU10が、移動処理を最優先の割り込み処理として行う場合、ECU10がEPS制御処理を実行している途中においても、割り込みで移動処理を実行することから、図12に示すように、EPS制御処理の処理周期が変動してしまう。その結果、EPS制御処理の精度が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、ECU10がEPS制御処理を予め定められた周期で実行しても、移動処理を行うのに必要な時間を十分に確保することができるように、第1の回転角度センサ112が出力する立ち下がりエッジ間の間隔を長くするべく、第1の回転角度センサ112が、パルス幅変調信号PWMAのONパルスの時間PWMA_ONを、第1の従動ギア111の回転角度に応じた時間T1と予め定められた時間TPとを加算した時間として出力するようにする。図13は、本実施の形態に係る第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122のパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBを示す図である。
【0046】
予め定められた時間TPは、ECU10がEPS制御処理を予め定められた周期で実行しても、移動処理を行うのに必要な時間を十分に確保することができるように定める。例えば、予め定められた時間TPは、パルス幅変調信号PWMAの周期PWMA_Tの半分であることを例示することができる。これにより、デューティ比は少なくとも50%となり、移動処理を行う時間間隔として少なくとも周期PWMA_Tの半分の時間を確保することが可能となる。
【0047】
そして、周期PWMA_Tを可能な限り長くする。これは、周期PWMA_Tを同じにしたまま、単に予め定められた時間TPをONパルスの時間PWMA_ONに加えるのでは、予め定められた時間TPを加えない場合に比べて回転角度に応じた時間をきめ細かくパルス幅変調信号PWMAとして出力することができなくなるためである。それゆえ、予め定められた時間TPの分周期PWMA_Tを長くすることが好ましい。例えば、周期PWMA_Tの半分の時間を予め定められた時間TPとしてONパルスPWMA_ONの時間に加える場合には、周期PWMA_Tを、予め定められた時間TPを加えない場合の周期PWMA_Tの倍にすることが好適である。
【0048】
ただし、周期PWMA_Tは、回転体100の回転角度を精度高く演算するために、回転角度演算処理の処理周期T以下とする必要がある。そこで、本実施の形態においては、周期PWMA_Tを、回転角度演算処理の処理周期Tと同一に設定し、予め定められた時間TPを、ECU10がEPS制御処理を予め定められた周期で実行しても、移動処理を行うのに必要な時間を十分に確保することができるように定める。例えば、回転角度演算処理の処理周期Tが2msである場合には、周期PWMA_Tを2msに設定し、予め定められた時間TPを1msとし、第1の従動ギア111の回転角度0度〜360度を、デューティ比50%〜95%(回転角度0度に応じた時間T1を0、回転角度360度に応じた時間T1を900μs)のパルス幅変調信号PWMに変換して出力する。そして、このように第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122を構成することで、周期PWMA_T=1msで、第1の従動ギア111の回転角度0度〜360度を、デューティ比5%〜95%(回転角度0度に応じた時間を50μs、回転角度360度に応じた時間を950μs)のパルス幅変調信号PWMに変換して出力する構成と同じ分解能にしたまま、少なくとも、予め定められた時間TPを加算しない構成の周期分の時間間隔を確保することが可能となる。
【0049】
図14は、本実施の形態に係る第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122のパルス幅変調信号PWMAおよびPWMBとECU10の処理との関係を示す図である。
上述のように、第1の回転角度センサ112および第2の回転角度センサ122を構成することで、ECU10は、図14に示すように、EPS制御処理を予め定められた周期(例えば、250μs)で実行することができるとともに、キャプチャ・レジスタに取り込んだカウント値を確実にRAMに移動させて、そのカウント値に基づいて回転体100の回転角度を演算することができる。したがって、電動モータ210を適切に制御することができるとともに回転体100の回転角度を精度高く検出することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…回転角度検出装置、2…電動パワーステアリング装置、10…ECU、20…目標電流算出部、30…制御部、100…回転体、101…ギア、110…第1の回転軸、111…第1の従動ギア、112…第1の回転角度センサ、120…第2の回転軸、121…第2の従動ギア、122…第2の回転角度センサ、201…ステアリングホイール、202…ステアリングシャフト、209…トルクセンサ、210…電動モータ、260…モータ電圧検出部、270…車速センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記回転体の回転に連動して回転する第1の従動体および第2の従動体と、
前記第1の従動体の回転角度を検出する第1の検出手段と、
前記第2の従動体の回転角度を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段により入力された検出結果に基づいて前記回転体の回転角度を演算する回転角度演算手段と、
を備え、
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかは、検出した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのいずれか一方のエッジが予め定められた周期となるように出力するとともに、検出した回転角度に応じた時間に予め定められた時間を加算した時間を当該一方のエッジから他方のエッジまでの時間とすることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかが出力するパルス幅変調信号の周期は、前記回転角度演算手段が前記回転体の回転角度を演算する周期と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記パルス幅変調信号の一方のエッジでカウントし始めて前記他方のエッジまでカウントされ予め定められたレジスタに取り込まれたカウント値を予め定められた記憶領域に移動させる移動手段をさらに備え、
前記回転角度演算手段は、前記移動手段により前記予め定められた記憶領域に移動されたカウント値に基づいて前記回転体の回転角度を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記回転角度演算手段および前記移動手段は同一のコンピュータであり、当該コンピュータは、前記回転体に回転補助力を与える電動モータを制御する処理の周期を確保した上で前記カウント値を前記予め定められた記憶領域に移動させるとともに前記回転体の回転角度を予め定められた周期で演算することを特徴とする請求項3に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記回転体は歯車を有し、
前記第1の従動体は第1の従動歯車を有し、
前記第2の従動体は前記第1の従動歯車の歯数とは異なる歯数を有する第2の従動歯車を有し、
前記第1の従動体および前記第2の従動体は、前記第1の従動歯車および前記第2の従動歯車が前記歯車により回転力が付与されることにより前記回転体の回転に連動して回転することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項1】
回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記回転体の回転に連動して回転する第1の従動体および第2の従動体と、
前記第1の従動体の回転角度を検出する第1の検出手段と、
前記第2の従動体の回転角度を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段により入力された検出結果に基づいて前記回転体の回転角度を演算する回転角度演算手段と、
を備え、
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかは、検出した回転角度に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのいずれか一方のエッジが予め定められた周期となるように出力するとともに、検出した回転角度に応じた時間に予め定められた時間を加算した時間を当該一方のエッジから他方のエッジまでの時間とすることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかが出力するパルス幅変調信号の周期は、前記回転角度演算手段が前記回転体の回転角度を演算する周期と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記パルス幅変調信号の一方のエッジでカウントし始めて前記他方のエッジまでカウントされ予め定められたレジスタに取り込まれたカウント値を予め定められた記憶領域に移動させる移動手段をさらに備え、
前記回転角度演算手段は、前記移動手段により前記予め定められた記憶領域に移動されたカウント値に基づいて前記回転体の回転角度を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記回転角度演算手段および前記移動手段は同一のコンピュータであり、当該コンピュータは、前記回転体に回転補助力を与える電動モータを制御する処理の周期を確保した上で前記カウント値を前記予め定められた記憶領域に移動させるとともに前記回転体の回転角度を予め定められた周期で演算することを特徴とする請求項3に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記回転体は歯車を有し、
前記第1の従動体は第1の従動歯車を有し、
前記第2の従動体は前記第1の従動歯車の歯数とは異なる歯数を有する第2の従動歯車を有し、
前記第1の従動体および前記第2の従動体は、前記第1の従動歯車および前記第2の従動歯車が前記歯車により回転力が付与されることにより前記回転体の回転に連動して回転することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−107062(P2011−107062A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264609(P2009−264609)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】
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