説明

回転角度検出装置

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関し、組立てが容易に行え、回転角度の確実な検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】回転歯車10に噛合する第一の検出歯車12の回転中心を、回転歯車10の回転中心から取付面部11Aと直交方向へ延出する中心線CLから偏心させて設けることによって、第一の検出歯車12を回転歯車10に噛合させる際、一方の歯車の歯先と他方の歯先が対向した状態でも、第一の検出歯車12が回転して、各々の歯先と歯底が合った状態で組立てが行えるため、手間がかからず、容易に組立てが可能な回転角度検出装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、これを用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
このような従来の回転角度検出装置について、図7〜図10を用いて説明する。
【0003】
図7は従来の回転角度検出装置の断面図、図8は同分解斜視図であり、同図において、左右に取付面部1Aが形成された絶縁樹脂製のケース1に、側面外周に平歯車が形成された第一の検出歯車2が回転可能に装着されると共に、第一の検出歯車2の一部がケース1側面から外方へ突出している。
【0004】
そして、側面外周に第一の検出歯車2とは歯数の異なる平歯車が形成された第二の検出歯車3が、第一の検出歯車2に噛合して、ケース1内に回転可能に収納されている。
また、両面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板4が、第一及び第二の検出歯車2、3の上方にほぼ平行に配置されると共に、第一の検出歯車2の中央に装着された磁石5Aと、第二の検出歯車3の中央に装着された磁石6Aとの対向面には、磁気検出素子5Bと6Bが各々装着されている。
【0005】
そして、このように対向した磁石5Aと磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6Aと磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板4にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子5Bや6Bに接続された制御手段7が形成されている。
【0006】
さらに、第一及び第二の検出歯車2、3や配線基板4が収納されたケース1上面を、絶縁樹脂製のカバー8が覆って、回転角度検出装置が構成されている。
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段7がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、ケース1側面から突出した第一の検出歯車2が、中央部にステアリングシャフト(図示せず)が挿通固着された、回転歯車10側面外周の平歯車に噛合して自動車に装着される。
【0007】
なお、この時、図9の平面図に示すように、第一の検出歯車2の回転中心は、回転歯車10の回転中心から、ケース1左右の取付面部1Aを結ぶ取付線TLと直交方向へ延出する、中心線CL上に配置されている。
【0008】
以上の構成において、中央部がステアリングシャフトに連結されたステアリングホイール(図示せず)を回転すると、回転歯車10が回転し、これに連動して第一の検出歯車2と第二の検出歯車3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5A、6Aも回転して、この磁石5A、6Aの変化する磁力を磁気検出素子5B、6Bが検出し、所定のデータ波形から形成された検出信号が制御手段7へ入力される。
【0009】
また、この時、第一の検出歯車2と第二の検出歯車3は歯数が異なっているため、磁気検出素子5Bと6Bからのデータ波形は、位相差のある検出信号となって、制御手段7へ入力される。
【0010】
そして、この第一の検出歯車2と第二の検出歯車3からの検出信号と、各々の歯車の歯数から、制御手段7が所定の演算を行って、回転歯車10、即ちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0011】
なお、上記のようにケース1側面から突出した第一の検出歯車2を、回転歯車10に噛合させて回転角度検出装置を車両に装着する際、第一の検出歯車2の回転中心が、回転歯車10の回転中心から取付面部1Aと直交方向へ延出する中心線CL上に配置されているため、図10(a)の部分平面図に示すように、一方の歯車の歯先が他方の歯底に、一方の歯底が他方の歯先に各々合った位置にある場合には、そのまま歯車を噛合できるが、図10(b)に示すように、歯車の歯先と歯先が対向した状態となっている場合には、そのまま噛合すると歯車の破損が生じてしまうことがある。
【0012】
したがって、このような場合には、回転角度検出装置を一旦取り外し、第一の検出歯車2か回転歯車10の一方を手でやや回転して、各々の歯車の歯先と歯底が合う状態にしてから、再度組立てを行う必要のあるものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−275546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置においては、ケース1側面から突出した第一の検出歯車2を回転歯車10に噛合させる際、各々の歯車の歯先と歯底を合わせて噛合を行う必要があるため、組立てに時間を要し、手間がかかってしまうという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、組立てが容易に行え、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、回転歯車に噛合する検出歯車の回転中心を、回転歯車の回転中心から取付面部と直交方向へ延出する中心線から偏心させて、回転角度検出装置を構成したものであり、検出歯車を回転歯車に噛合させる際、一方の歯車の歯先と他方の歯先が対向した状態でも、検出歯車が回転して、各々の歯先と歯底が合った状態で組立てが行えるため、手間がかからず、容易に組立てが可能な回転角度検出装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、組立てが容易に行え、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を実現できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同平面図
【図4】同部分平面図
【図5】同部分平面図
【図6】同平面図
【図7】従来の回転角度検出装置の断面図
【図8】同分解斜視図
【図9】同平面図
【図10】同部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0021】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、絶縁樹脂製のケース11左右の取付面部11Aには、先端部がやや細く、根元部がやや太く形成された段差付きで、略円柱状の複数の突起部11Bが設けられている。
【0022】
また、絶縁樹脂または非磁性の金属製で、側面外周に平歯車が形成された第一の検出歯車12が、ケース11中心からやや左方へ偏心した位置に回転可能に装着されると共に、第一の検出歯車12の一部がケース11側面から外方へ突出している。
【0023】
そして、側面外周に第一の検出歯車12とは歯数の異なる平歯車が形成された第二の検出歯車13が、第一の検出歯車12に噛合して、ケース11内に回転可能に収納されている。
【0024】
また、第一及び第二の検出歯車12、13の上方にほぼ平行に配置された配線基板14の両面または片面には、複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出歯車12の中央にインサート成形等により装着された磁石5Aと、第二の検出歯車13の中央に装着された磁石6Aとの対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子やホール素子等の磁気検出素子5Bと6Bが各々装着されている。
【0025】
そして、このように対向した磁石5Aと磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6Aと磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板14にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子5Bや6Bに接続された制御手段7が形成されている。
【0026】
さらに、第一及び第二の検出歯車12、13や配線基板14が収納されたケース11上面を、絶縁樹脂製のカバー18が覆って、回転角度検出装置が構成されている。
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段7がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、ケース11側面から突出した第一の検出歯車12が、中央部にステアリングシャフト(図示せず)が挿通固着された、回転歯車10側面外周の平歯車に噛合して自動車に装着される。
【0027】
なお、この時、第一の検出歯車12はケース11の中心に対して、やや左方へ偏心した位置に装着されているため、このように回転歯車10と噛合した状態では、図3の平面図に示すように、第一の検出歯車12の回転中心は、回転歯車10の回転中心から、ケース11左右の取付面部11Aを結ぶ取付線TLと直交方向へ延出する、中心線CLからやや左方へ寸法hだけ偏心した位置に配置されている。
【0028】
また、これらの歯車の歯先が略円弧状に形成されると共に、これらの直径及び歯数は、回転歯車10が最も大きく、第一の検出歯車12、第二の検出歯車13の順に小さくなっており、例えば、回転歯車10の歯数が48、第一の検出歯車12の歯数が32、第二の検出歯車13の歯数が18となっている。
【0029】
以上の構成において、中央部がステアリングシャフトに連結されたステアリングホイール(図示せず)を回転すると、回転歯車10が回転し、これに連動して第一の検出歯車12と第二の検出歯車13が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5A、6Aも回転して、この磁石5A、6Aの変化する磁力を磁気検出素子5B、6Bが検出し、所定のデータ波形から形成された検出信号が制御手段7へ入力される。
【0030】
なお、この時、第一の検出歯車12と第二の検出歯車13は歯数が異なっているため、磁気検出素子5Bと6Bからのデータ波形は、位相差のある検出信号となって、制御手段7へ入力される。
【0031】
そして、この第一の検出歯車12と第二の検出歯車13からの検出信号と、各々の歯車の歯数から、制御手段7が所定の演算を行って、回転歯車10、即ちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0032】
また、本発明においては、ケース11側面から突出した第一の検出歯車12を、回転歯車10に噛合させて回転角度検出装置を車両に装着する際、図4(a)の部分平面図に示すように、一方の歯車の歯先が他方の歯底に、一方の歯底が他方の歯先に各々合った位置にある場合にも、図4(b)に示すように、一方の歯車の歯先と他方の歯先が対向した状態となっている場合にも、そのまま噛合を行えるようになっている。
【0033】
すなわち、第一の検出歯車12の回転中心が、回転歯車10の回転中心から取付面部11Aと直交方向へ延出する中心線CLから左方へ、寸法hだけ偏心してケース11に装着されているため、図4(b)に示すように、一方の歯車の歯先と他方の歯先が対向した状態となっている場合でも、このままケース11を回転歯車10の方向へ押圧すれば、回転歯車10の歯先に当接した第一の検出歯車12の歯先に、中心線CLから偏心した斜め方向の力が加わって第一の検出歯車12が回転し、互いの歯先と歯底が合った状態で回転歯車10への噛合が行われるように構成されている。
【0034】
したがって、第一の検出歯車12の歯先と回転歯車10の歯先が対向した状態であっても、回転角度検出装置を一旦取り外し、第一の検出歯車12または回転歯車10の一方を手でやや回転して、各々の歯車の歯先と歯底を合わせる必要はなく、手間がかからず、容易に組立てを行うことができる。
【0035】
また、このような回転角度検出装置の車両への組立て時に、第一の検出歯車12や回転歯車10に無理な力が加わり、歯車の破損等が生じることがないため、各歯車が確実に噛合して回転が行われ、誤差のない、回転角度の検出が可能なようになっている。
【0036】
さらに、図5(b)の部分平面図に示すように、ケース11左右の取付面部11Aの突起部11Bを、車両側の筐体20の通孔20Aに挿入して、車両への回転角度検出装置の組立てを行うが、この時、突起部11Bは先端部がやや細く、根元部がやや太く段差がついて形成されているため、これによって対向した歯車の歯先と歯先を、歯先と歯底が合った状態に調整することもできる。
【0037】
つまり、図4(b)に示すように、第一の検出歯車12の歯先と回転歯車10の歯先が対向し、通孔20A内に突起部11Bのやや細い先端部が挿入された状態から、先ず、図5(a)の部分平面図に示すように、突起部11B先端部の左端が通孔20A左端に当接するまでケース11を左方へ移動し、各歯車の歯先と歯底が概ね合った状態にする。
【0038】
そして、この後、図5(b)に示すように、ケース11を回転歯車10の方向へ押圧して、突起部11B先端部より太い根元部を通孔20A内に挿入することで、各歯車の歯先と歯底が合った状態で、第一の検出歯車12を回転歯車10に噛合させることができる。
【0039】
また、この時、回転歯車10や第一の検出歯車12の歯車の歯先が、略円弧状に形成されているため、上記のように歯車の歯先を少しずらせるだけで、各歯車の歯先と歯底が合った状態での噛合を、より容易に行うことが可能となる。
【0040】
なお、以上の説明では、ケース11左右の二つの取付面部11Aを、ケース11中心に対しほぼ左右対称に設けた構成について説明したが、二つの取付面部11Aを左右非対称に設けた構成や、あるいは図6(a)の平面図に示すように、回転歯車10に向かって二つの取付面部11Aをずれた位置に形成した構成、さらには図6(b)に示すように、取付面部11Aを一つにした構成としても、本発明の実施は可能である。
【0041】
このように本実施の形態によれば、回転歯車10に噛合する第一の検出歯車12の回転中心を、回転歯車10の回転中心から取付面部11Aと直交方向へ延出する中心線CLから偏心させて設けることによって、第一の検出歯車12を回転歯車10に噛合させる際、一方の歯車の歯先と他方の歯先が対向した状態でも、第一の検出歯車12が回転して、各々の歯先と歯底が合った状態で組立てが行えるため、手間がかからず、容易に組立てが可能な回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0042】
また、車両の筐体20の通孔20Aに挿入されるケース11の突起部11Bを、先端部がやや細く、根元部がやや太くなるように段差をつけて形成することで、この突起部11Bによっても、各々の歯車の歯先と歯底の位置合わせを行うことができる。
【0043】
なお、以上の説明では、配線基板14に磁気検出素子5Bや6Bと共に、制御手段7を設けた構成について説明したが、制御手段7は車両の電子回路に一体に設け、これに磁気検出素子5Bや6Bを接続して、回転歯車10の回転角度を検出する構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明による回転角度検出装置は、組立てが容易に行え、回転角度の確実な検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0045】
5 第一の検出手段
6 第二の検出手段
5A、6A 磁石
5B、6B 磁気検出素子
7 制御手段
10 回転歯車
11 ケース
11A 取付面部
11B 突起部
12 第一の検出歯車
13 第二の検出歯車
14 配線基板
18 カバー
20 筐体
20A 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面部が形成されたケースと、
このケースに回転可能に装着され回転歯車に噛合する検出歯車と、
この検出歯車の回転を検出する検出手段と、
この検出手段からの検出信号により上記回転歯車の回転角度を検出する制御手段からなり、
上記検出歯車の回転中心を、上記回転歯車の回転中心から上記取付面部と直交方向へ延出する中心線から偏心させて設けた回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−21890(P2012−21890A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160159(P2010−160159)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】