説明

回転角検出又は回転同期装置

【課題】レゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置の構造を簡素化すること。
【解決手段】レゾルバ100は、輪状平板で構成されたステータ200を備える。そのステータ200の内周縁部においてステータティース210a〜210hが形成される。ステータ200に対して回転可能にロータ300が設けられる。各ステータティース210a〜210hには、樹脂製のボビン410a〜410hを有する絶縁キャップ400が装着される。複数のステータティース210a〜210hの内側から、複数のステータティース210a〜210hのそれぞれの面と当接するリング状のリング部材500が設けられる。これにより、ステータティース210a〜210hのステータ200の平板に対する傾きを正確にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びロータを有するレゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータ及びロータを有し、ステータに対するロータの回転位置によってステータとロータとの間の相互インダクタンスが変化することを利用して、ステータに対するロータの回転角に応じた検出信号を出力する回転角検出装置としてのレゾルバが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、図21は、従来のレゾルバの構造を示した図である。図21のレゾルバ900は、内周面910aから内方へ突出する複数のステータティース920が形成されたステータ910を備える。また、ステータ910の内側には、ロータ980が回転可能に設けられる。そのロータ980は、回転軸回りの回転によりステータティース920とのギャップパーミアンスが変化するようにステータ910に対して回転可能に設けられる。
【0003】
各ステータティース920には、絶縁性の樹脂からなるボビン941を介してステータ巻線950が巻回される。そのステータ巻線950は、複数相の巻線から構成される。具体的には、ステータ巻線950は、励磁信号が入力されてステータティース920を励磁する励磁巻線951と、ロータ980の回転にともなって変化するギャップパーミアンスに応じた検出信号が出力される出力巻線952とを有する。
【0004】
また、各ステータティース920には、その外側を覆うように樹脂製のボビン941が設けられる。そして、各ボビン941の外側にステータ巻線950が巻回される。これは、ステータ巻線950とステータティース920との絶縁を確保できる等の効果を狙ったものである。なお、これらボビン941を一体的に含んで絶縁キャップ940が構成される。
【0005】
このような構成のレゾルバ900では、励磁巻線951の両端線が接続されたコネクタピン971間に励磁信号が入力されると、ステータティース920が励磁される。この状態で、ロータ980が回転してギャップパーミアンスが変化すると、出力巻線952には、そのギャップパーミアンスに応じた検出信号が発生される。そして、出力巻線952の端線と接続されたコネクタピン971から出力される検出信号に基づいて、ロータ980の回転角が検出される。
【0006】
また従来、レゾルバと同様の構造を有する回転同期装置としてのシンクロが知られている。このシンクロは、レゾルバと同様のステータ及びロータを有し、ステータティースに巻回される出力巻線からロータの回転角に応じて正弦波状に変化する互いに位相角が120度ずれた3相の信号を出力する。そして、同じ構造の2つのシンクロを接続すると、各シンクロから出力される信号の差に基づいて、一方のシンクロのロータが、他方のシンクロのロータと同じ回転角となるように回転される。すなわち、これら2つのシンクロが同期される。このように、シンクロは、一般的に、2個1組で用いられ、この場合、一方をシンクロ発信機と称し、他方をシンクロ受信機と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−344107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レゾルバ、シンクロにおいては、回転角の検出精度を高めるためには、励磁巻線や出力巻線を精度良く巻回する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されたレゾルバ900では、ステータティース920が内方に向けて設けたれているため、励磁巻線951や出力巻線952を精度良く巻回することができず、検出精度の向上の大きな障害となっていた。また、従来のステータ910は、複数の電磁鋼板を積層するなどして、十分な厚さで構成されていたので、レゾルバ、シンクロの製造工程が複雑化するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、レゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置の構造を簡素化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の回転角検出又は回転同期装置は、磁性材料の輪状平板から構成され、その平板の周縁部において平板面に対して起立した複数のステータティースが形成されたステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記ロータの回転角に応じた検出信号を出力させるための、前記ステータティースに巻回されるステータ巻線と、
前記複数のステータティースの内側又は外側から、前記複数のステータティースのそれぞれの面と当接するように設けられるリング状のリング部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、ステータティースが平板面に対して起立しているので、ステータの内側の狭い空間でステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。そのため、ステータ巻線を精度良く巻回することができる。また、ステータが平板で形成されているので、ステータの構造を簡素化することができる。さらに、複数のステータティースの内側又は外側にはリング部材が設けられており、そのリング部材によって、ステータの平板に対する各ステータティースの傾きの位置決めをすることができる。よって、ステータティースとロータとの間のギャップパーミアンスが正確になるので、検出信号の精度を向上させることができる。また、リング部材によってステータティースの傾きが規制されるので、事後的にステータティースの傾きが変わってしまうのを防止できる。
【0012】
また、本発明の回転角検出又は回転同期装置において、前記ステータティースの先端側の一部が露出するように前記複数のステータティースのそれぞれに装着され、外側から前記ステータ巻線が巻回される複数のボビンが形成された樹脂製の絶縁キャップと、
前記ボビンの上端部から前記ステータティースの先端の方向に突出された、前記リング部材を係止する係止部と、を備え、
前記リング部材は、前記係止部に係止される被係止部が形成される。
【0013】
これによれば、ステータティースには樹脂製のボビンが装着され、そのボビンを介してステータ巻線が巻回されるので、ステータティースとステータ巻線とを確実に絶縁させることができる。また、ボビンをステータティースに装着した際に、ステータティースの先端側の一部が露出されるので、その露出した部分とロータとの間で、効率的に磁束のやり取りをさせることができる。よって、検出信号の精度を向上させることができる。また、ボビンの上端部から突出して係止部が設けられ、リング部材にその係止部に係止される被係止部が形成されるので、それら係止部と被係止部との係止によって、リング部材が外れてしまうのを防止できる。
【0014】
また、本発明の回転角検出又は回転同期装置において、前前記係止部は、前記ステータティースの先端から飛び出るまで延設されており、
前記係止部及び前記リング部材の前記被係止部が、前記ステータティースの先端から飛び出た部分で係止される。
【0015】
これによれば、係止部及びリング部材の被係止部が、ステータティースの先端から飛び出た部分で係止されるようにすることで、リング部材をステータティースの内側又は外側に設ける際におけるステータティースの変形を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の回転角検出又は回転同期装置において、前記リング部材と前記ステータティースとが当接する部分において、前記リング部材と前記ステータティースとがカシメで固定されたとしてもよい。これによっても、リング部材が外れてしまうのを防止できる。
【0017】
また、前記リング部材と前記ステータティースとが当接する部分において、前記リング部材と前記ステータティースとが接着剤で固定されたとしてもよい。
【0018】
また、前記リング部材と前記ステータティースとが当接する部分において、前記リング部材と前記ステータティースの一方に凸部が形成され、他方にその凸部と嵌合する凹部が形成され、それら凸部と凹部との嵌合で、前記リング部材と前記ステータティースとが固定されたとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施形態のレゾルバ100の構成例の分解斜視図である。
【図2】ステータ200の斜視図である。
【図3】第一実施形態の絶縁キャップ400の斜視図である。
【図4】第一実施形態の第一のボビン410a及び係止部420aを示した図である。
【図5】第一実施形態のリング部材500を示した図である。
【図6】リング部材500の取り付け状態を示した図である。
【図7】ステータ巻線の説明図である。
【図8】ロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示した図である。
【図9】レゾルバ100の製造方法の一例のフロー図である。
【図10】第二実施形態のレゾルバ101の構成例の分解斜視図である。
【図11】第二実施形態の絶縁キャップ401の斜視図である。
【図12】第二実施形態のリング部材501を示した図である。
【図13】リング部材501の取り付け状態を示した図である。
【図14】変形例1に係るレゾルバの断面図である。
【図15】リング部材502をカシメ710で固定した状態を示した図である。
【図16】リング部材502の接着剤720で固定した状態を示した図である。
【図17】突起部512と貫通孔212cとの勘合によって、リング部材502を固定する場合の説明図である。
【図18】図17の突起部512に代えて、凸部513を示した図である。
【図19】変形例2として、インナーロータ型のレゾルバに本発明を適用した場合のそのレゾルバの断面図である。
【図20】シンクロの用途例を示した図である。
【図21】従来のレゾルバの構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
次に、本発明に係る回転角検出装置としてのレゾルバの第一実施形態について説明する。図1は、第一実施形態のレゾルバ100の構成例の分解斜視図である。なお、図1では、ステータ巻線等の配線の図示を省略している。また、図1では、レゾルバ100が、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバを例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、図2は、図1のステータ200の斜視図である。なお、図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0021】
レゾルバ100は、ステータ(固定子)200と、ロータ(回転子)300とを含む。レゾルバ100は、いわゆるアウターロータ型の回転角検出装置である。すなわち、ステータ200の外側にロータ300が設けられ、ステータ200がロータ300の内周側(内径側)の側面と対向した状態で、ロータ300の回転角に応じて、ステータ200に設けられたステータ巻線を構成する出力巻線からの信号が変化するようになっている。
【0022】
ステータ200は、磁性材料からなる環(リング)状の平板250を用いて構成され、この平板250に複数のステータティースが設けられている。これらのステータティースは、平板250の平板面に対して交差するように設けられている。図1では、ステータ200は、折り曲げ加工(広義には曲げ加工)等により平板面に対して同一面側に略垂直に起こされた8個のステータティース(突極部)210a、210b、210c、210d、210e、210f、210g、210hを有する。ステータティース210a〜210hは、プレス加工により予め平板250に形成された後、折り曲げプレス加工(広義には曲げ加工)により、平板250の面に対して略垂直となるように起こされている。これらのステータティースは、環状の平板250の内側(内径側)の縁部に形成される。また、これらのステータティースは、各ステータティースの面のうち少なくともロータ300の側面と対向する面は平面ではなく、ロータ300の回転軸の方向に沿って見たときに、環状の平板250の内径側に位置する点を中心とする円弧の一部となるように形成されている。
【0023】
このような磁性材料からなるステータ200の平板250の材質は、電磁鋼板、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10Cであることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S45Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.45%程度の炭素を含有している。S10Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
【0024】
以上のような構成を有するステータ200は、磁性材料として1枚の電磁鋼板により構成されるため、材料費として高価である上に折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくい積層電磁鋼板を採用する場合に比べて、低コストで、曲げによる加工精度や信頼性を維持できるようになる。しかも、曲げ加工による磁性材料の粒状破壊を防止し、曲げ加工前の磁気特性を確保することにより高精度な角度検出を可能とする。
【0025】
また、ステータ200に対して突出するように、外部からの励磁信号を入力したり検出信号を出力したりするためのコネクタピン471〜476が設けられるコネクタユニット600が設けられる。そして、図2に示すように、そのコネクタユニット600の一部を構成する延設部260が、ステータ200の平板250に対して突出するように設けられる。その延設部260は、ステータ200を構成する平板250が延ばされて形成されたものである。また、延設部260は、内側がくり抜かれた四角の枠状とされている。
【0026】
また、ステータ200には、環状の絶縁キャップ400が装着される。ここで、図3は、絶縁キャップ400の斜視図である。絶縁キャップ400には、ステータ200のステータティース210a〜210hの位置に合わせて設けられた複数のボビン410a、410b、410c、410d、410e、410f、410g、410hが一体に形成されている。各ボビン410a〜410hは、挿入孔(ステータティース挿入孔)を有し、当該ボビンに対応するステータティースがその挿入孔に挿入されるとともに、その外側にステータ巻線が巻回される。複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンの挿入孔の向きは、ロータ300の回転軸の向きである。
【0027】
また、ボビン410a〜410hの上端部には、一個飛びに、上方(ステータティースの先端の方向)に突出された鉤状の係止部が形成される。具体的には、コネクタユニット600の接続口の配置されるボビン410aから右隣りの配置順(図3における反時計回りの配置順)にしたがって、各ボビン410a〜410hに第一〜第八までの番号を割り当てたときに、第一のボビン410a、第三のボビン410c、第五のボビン410e及び第七のボビン410gにそれぞれ係止部420a、420c、420e、420gが形成される。これら係止部420a、420c、420e、420gは、後述するリング部材を係止するためのものである。
【0028】
ここで、図4は、ボビン410a〜410h及び係止部420a、420c、420e、420gの構造を説明する図であり、それらの代表として、第一のボビン410a及びこれに接続された係止部420aを示している。具体的には、図4(a)は、ボビン及び係止部の側面図として、ボビン410a及び係止部420aを、左隣りの第八のボビン410h側から周方向に沿って見たときの図を示している。また、図4(b)は、ボビン及び係止部の平面図として、図4(a)におけるボビン410a及び係止部420aを上方から見た図を示している。つまり、図4において、紙面手前側が第八のボビン410h側、第一のボビン410a(係止部420a)の左側が絶縁キャップ400の内側(ロータ300側)、第一のボビン410a(係止部420a)の右側が絶縁キャップ400の外側となる。なお、他のボビン410b〜410hの構造は、図4の第一のボビン410aの構造と同じであり、他の係止部420c、420e、420gの構造は、図4の係止部420aの構造と同じである。
【0029】
図4に示すように、第一のボビン410aは、内部に挿入孔414が形成された筒状の本体411を有する。本体411の上端部には、ステータ巻線の位置ずれを防止する位置ずれ防止手段としてのつば部412が設けられる。そのつば部412によってボビン410a〜410hに凹部が形成されるようにし、この凹部においてステータ巻線の位置がずれないようになっている。これによって、磁束の均一化を図ることができるようになり、信頼性を向上させることができるようになる。また、本体411の下端部には、絶縁キャップ400の環状部材の一部を構成する基部413が設けられる。本体411は、その基部413に対して直角に起立して設けられる。
【0030】
本体411に形成された挿入孔414は、本体411、つば部412及び基部413を含むボビン410aを上下に貫くように形成されている。その挿入孔414は、対応するステータティース210aが挿入される孔である。そして、挿入孔414は、その向きが、ロータ300の回転軸の向きと一致しているとともに、その断面が、ステータティース210aの断面と略同じ矩形状とされる。つまり、ステータティース210a〜210hにボビン410a〜410hを含む絶縁キャップ400が装着されると、ステータティース210a〜210hが挿入孔414に丁度はまるようになっている。これによって、ボビン410a〜410hがステータティース210a〜210hに対してぐらつくのを防止でき、その結果、検出精度を向上できる。
【0031】
係止部420aは、射出成型により、ボビン410aと同じ材料で一体的に形成されたものであり、つば部412の上端部に形成される。具体的には、係止部420aは、つば部412の上端部において、挿入孔414の開口に隣接された形で形成される。より具体的には、係止部420aは、挿入孔414の開口の輪郭を成す矩形の4辺のうち、内側の長辺に沿って形成される。その係止部420aは、先端が絶縁キャップ400の内側に曲げられた鉤状とされる。また、係止部420aは、その高さが、ステータティース210aが挿入された際におけるそのステータティース210aの先端よりも係止部420aの先端が低いとされる。
【0032】
絶縁キャップ400の説明に戻り、絶縁キャップ400は、複数の渡りピン(突起部)480a、480b、480c、480d、480e、480f、480gを含み、複数のボビン410a〜410h及び複数の渡りピン480a〜480gが一体に形成されている。複数の渡りピン480a〜480gを構成する各渡りピンは、2つのボビンの間において、環状の絶縁キャップ400の所与の円周上に形成されている。なお、ボビン410a、410hの間には、渡りピンが形成されていない。各渡りピンは、2つのボビンの間に設けられた円柱状の形状を有し、一方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される導線が、渡りピンにおいて張力を持たせた状態で掛けられて、他方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される。これにより、2つのボビンの距離が長くなっても共振し難くなる上に、ステータ巻線の巻き数を半ターン単位で調整できるようになる。ここで、導線に張力を持たせ易くし、かつその状態をできるだけ長く維持させるために、渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの部分を有することが望ましい。
【0033】
さらに、絶縁キャップ400には、コネクタユニット600の一部を構成する樹脂部450が形成される。その樹脂部450は、絶縁キャップ400を構成する樹脂で、絶縁キャップ400と一体的に形成されたものである。また、樹脂部450は、上述の延設部260の設置位置と対応するように、複数のボビン410a〜410hが形成された環状の部分に対して径方向外側に突出するように形成される。また、樹脂部450は、延設部260の内側に形成されたくり抜き部分の形状と対応するように、四角の平板状とされる。すなわち、樹脂部450は、延設部260の内側に形成されたくり抜き部分にはまるように設けられる。また、樹脂部450には、6個のコネクタピン挿入孔461〜466が一列に設けられている。そして、コネクタピン挿入孔461〜466のそれぞれには、励磁信号の入力や検出信号の出力を行うために導電材からなる6個のコネクタピン471〜476がそれぞれ挿入される。
【0034】
そして、その樹脂部450が、延設部260の内側に形成されたくり抜き部分に嵌め込まれる形で設けられることで、延設部260及び樹脂部450とからコネクタユニット600が構成される(図1参照)。このように、樹脂部450を、その周囲で延設部260と接続することで、コネクタユニット600を強固にすることができる。
【0035】
このような絶縁キャップ400をステータ200の平板250に装着することにより、ステータ200とステータ巻線とが電気的に絶縁される。これにより、ステータ巻線により構成されるコイルの絶縁破壊を防止できる。
【0036】
このようなボビン及び係止部を含む絶縁キャップ400は、PBT(Poly−butylene−terephtalate:ポリブチレンテレフタレート)又はPPT(Polypropylene terephtalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂(絶縁材)を用いた射出成型により形成される。
【0037】
図1に示すように、複数のステータティース210a〜210hの内側にはリング部材500が設けられる。そのリング部材500は、複数のステータティース210a〜210hの内側から、複数のステータティース210a〜210hのそれぞれの面(内側に向いた面)と当接するように筒状(リング状)に形成されたものである。ここで、図5は、リング部材500の構造を説明する図であり、図5(a)はリング部材500の平面図を示しており、図5(b)は、図5(a)中のリング部材500のA−A断面図を示している。なお、図5(a)において、後述する被係止部530a、530c、530e、530gが、どのステータティース210a〜210hと対応させて設けられるかを示すために、各ステータティース210a〜210hを上方から見たときの外形線を破線で示している。また、図5(a)のA−A線は、第三のステータティース210cと第八のステータティース210hとを通る線である。すなわち、図5(b)では、リング部材500の、第三のステータティース210c及び第八のステータティース210hに対応する部分の断面を示している。
【0038】
このリング部材500は、リング部材500を構成する筒の外周面510が、各ステータティース210a〜210hの面と当接する面とされる。また、その外周面510には、上述したボビンの上端部に形成された係止部420a、420c、420e及び420gと対応する4つの被係止部530a、530c、530e及び530gが形成されている。すなわち、係止部420a、420c、420c及び420gが形成される第一、第三、第五、第七のステータティース210a、210c、210a、210gの面と対向する位置に、各被係止部530a、530c、530e、530gが形成される。
【0039】
それら被係止部530a、530c、530e、530gは、上述の係止部420a、420c、420e、420gに係止される部分であり、その係止部の鉤状に対応した凹状とされる。なお、被係止部530a、530c、530e、530g以外の外周面510の部分は平面とされ、例えば、図5(b)に示すように、第八のステータティース210hと対向する外周面510は平面とされている。
【0040】
また、リング部材500を構成する筒の上端部には、全周に渡って、その筒に対して直角に曲がった角部520が形成される。その角部520は、リング部材500の上下方向の位置決めをするための部分であり、各ステータティース210a〜210hの先端面と当接される。
【0041】
ここで、図6は、リング部材500が、ステータティース、ボビン及び係止部に対してどのように設けられるかを説明する図である。具体的には、図6は、図5(a)のA−A断面視におけるレゾルバ100を構成する各部品を示している。図6に示すように、ステータ200の平板250に対して第三のステータティース210c及び第八のステータティース210hが起立している。第三のステータティース210cには第三のボビン410cが装着され、第八のステータティース210hには第八のボビン410hが装着される。それらステータティース210c、210hは、その先端側の一部が、各ボビン410c、410hから露出している。また、ステータティース210c、210hの外側には、ロータ300が設けられる。そのロータ300は、その内周面が、ステータティース210c、210hのボビン410c、410hから露出した部分の面と対向される。また、第三のボビン410cの上端部には係止部420cが設けられる一方で、第八のボビン410hの上端部には係止部は設けられていない。
【0042】
このような配置関係において、リング部材500は、ステータティース210a〜210hの内側に設けられる。この際、リング部材500の外周面510とステータティース210a〜210hの内側に向いた面とが当接するように、リング部材500は設けられる。また、リング部材500の角部520が、各ステータティース210a〜210hの先端面と当接するように、リング部材500は設けられる。さらに、リング部材500に形成された被係止部530a、530c、530e、530gが、それぞれ係止部420a、420c、420e、420gと対応する位置となるように、リング部材500は設けられる。
【0043】
これにより、第一のステータティース210a(第一のボビン410a)において、係止部420aが、リング部材500の被係止部530aに係合される。また、第三のステータティース210c(第三のボビン410c)において、係止部420cが、リング部材500の被係止部530cに係合される。また、第五のステータティース210e(第五のボビン410e)において、係止部420eが、リング部材500の被係止部530eに係合される。また、第七のステータティース210g(第七のボビン410g)において、係止部420gが、リング部材500の被係止部530gに係合される。なお、図6では、係止部420cと被係止部530cとの係合を示している。このように、リング部材500は、係止部420a、420c、420e、420gと被係止部530a、530c、530e、530gとの係合によって係止される。
【0044】
また、図6に示すように、第八のステータティース210hには係止部が設けられていないので、その部分においては、第八のステータティース210hの面とリング部材500の外周面510とが当接されているだけで、リング部材500は固定されていない。
【0045】
このリング部材500は、ステータティース210a〜210hとロータ300との間でやり取りされる磁気に影響を及ぼさない非磁性体の材料で形成されるのが好ましく、例えば、射出成型により樹脂で形成されたり、ダイキャストによりアルミニウムで形成されたりする。
【0046】
このリング部材500を設けることで、リング部材500の外周面510によって、各ステータティース210a〜210hの平板250に対する傾きの位置決めをすることができる。つまり、リング部材500の円筒度合いを正確にすることで、各ステータティース210a〜210hの平板250に対する傾きを、正確に直角にすることができる。よって、ステータティース210a〜210hとロータ300との間のギャップパーミアンスが正確になるので、検出信号の精度を向上させることができる。また、リング部材500によってステータティース210a〜210hの傾きが規制されるので、事後的にステータティース210a〜210hの傾きが変わってしまうのを防止できる。
【0047】
ロータ300は、ステータ200と同じ材質の磁性材料である1枚の電磁鋼板から形成される。そのロータ300は、環状とされ、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ300の軸倍角が「3」であり、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において内径側の内径輪郭線を3周期で変化する形状を有している。そして、平板250に対して起こされたステータティースの外側(外径側、外周側)の面と対向するロータ300の内周側の側面が、ロータ300の1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。なお、ロータ300の材質は、電磁鋼板の他に、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10Cを採用することもできる。また、ロータ300は、複数枚の電磁鋼板を積層させて構成されたとしてもよい。
【0048】
次に、ロータ300の回転によって出力巻線から出力される検出信号を取り出すためのステータ巻線について説明する。ステータ巻線は、励磁巻線と出力巻線とから構成され、励磁巻線により励磁した状態で、ステータ200に対するロータ300の回転により、出力巻線の信号が変化する。
【0049】
ここで、図7は、ステータ200のステータティース210a〜210hに巻回されるステータ巻線の説明図である。具体的には、図7(a)は、ステータ巻線を構成する励磁巻線4の説明図を示しており、図7(b)は、ステータ巻線を構成する出力巻線5の説明図を示している。図7(a)、(b)は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図7(a)では、励磁巻線4の巻き方向を模式的に示し、図7(b)では、出力巻線5の巻き方向を模式的に示す。実際には、各ボビンのステータ巻線を電気的に接続する導線は、その間に形成された渡りピンを経由させる。
【0050】
励磁巻線4は、図7(a)に示すように、隣り合うステータティースの巻回方向が互いに反対方向になるように巻回される。そして、励磁巻線4の両端線はそれぞれ、樹脂部450に設けられたコネクタピン471〜476のいずれかに接続される。ここで、励磁巻線4の端線と接続されたコネクタピン471〜476をコネクタピンR1、R2と称すと、コネクタピンR1、R2間に、励磁信号が与えられて、励磁巻線4に励磁信号が入力される。なお、各ステータティースに巻回される励磁巻線4は、例えばコイル巻線とすることができる。
【0051】
また、図7(b)に示すように、2相の検出信号を得るために、出力巻線5は2組の巻線部材からなる。2相の検出信号のうちの第1相(例えばsin相)の検出信号を得るための出力巻線51は、例えばステータティース210aから反時計回りにステータティース210gまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。そして、第1相の出力巻線51の両端線はそれぞれ、樹脂部450に設けられたコネクタピン471〜476のいずれかに接続される。ここで、第1相の出力巻線51の端線と接続されたコネクタピン471〜476をコネクタピンS1、S3と称すると、第1相の検出信号は、コネクタピンS1、S3間の信号として出力される。
【0052】
一方、2相の検出信号のうちの第2相(例えばcos相)の検出信号を得るための出力巻線52は、例えばステータティース210bから反時計回りにステータティース210hまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。そして、第2相の出力巻線52の両端線はそれぞれ、樹脂部450に設けられたコネクタピン471〜476のいずれかに接続される。ここで、第2相の出力巻線52の端線と接続されたコネクタピン471〜476をコネクタピンS2、S4と称すると、第2相の検出信号は、コネクタピンS2、S4間の信号として出力される。なお、各ステータティースに巻回される出力巻線5は、例えばコイル巻線とすることができる。
【0053】
このように、ステータティース210a、210c、210e、210gが挿入孔に挿入されるボビン410a、410c、410e、410gのそれぞれの外側には、励磁巻線4及び第1相(sin相)の出力巻線51が巻回される。ステータティース210b、210d、210f、210hが挿入孔に挿入されるボビン410b、410d、410f、410hのそれぞれの外側には、励磁巻線4及び第2相(cos相)の出力巻線52が巻回される。
【0054】
なお、励磁巻線4の巻き方向は、図7(a)に示す方向に限定されるものではない。また、出力巻線5の巻き方向は、図7(b)に示す方向に限定されるものではない。
【0055】
以上のような構成を有するレゾルバ100では、ステータ200に対するロータ300の回転によって、次のような磁気回路が形成される。ここで図8は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図8では、説明の便宜上、絶縁キャップ400の図示を省略するとともに、ステータ200に対してロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示している。また、図8において、巻線磁芯としての各ステータティースを通る磁束の向きを模式的に示している。
【0056】
絶縁キャップ400を介してステータ200のステータティース210a〜210hにステータ巻線4、5が巻回されており、ロータ300が回転すると、ロータ300を介して隣り合うステータティース間で磁気回路が形成される。図8に示すように、隣り合うステータティースを通る磁束の向きが反対方向となるようにステータ巻線4、5が巻回されているため、ロータ300の回転によって、各ステータティースに巻回されるステータ巻線4、5に発生する電流もまた変化し、例えば出力巻線5に発生する電流波形を正弦波状にすることができる。
【0057】
次に、本実施形態におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。図9は、レゾルバ100の製造方法の一例のフロー図である。レゾルバ100を製造するために、先ず、ステータ形状加工工程においてステータ200の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(曲げ工程)において、平板状のステータ200のステータティースを折り曲げて、複数のステータティースが平板面に対して起こされる(ステップS12)。その結果、図2に示すように、平板250に対してステータティース210a〜210hが起こされる。
【0058】
すなわち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、1枚の電磁鋼板、普通鋼であるSPCC、機械構造用炭素鋼であるS45C又はS10Cを材質とする磁性材料からなる平板をプレス加工する。そして、内径側の縁部に折り曲げ加工前のステータティースを有した環状の平板250を形成する。またその際、その平板250と同じ磁性材料で、その平板250に対して突出した延設部260(図2参照)も形成する。具体的には、例えば、平板をプレス加工して、四角状の平板に形成するとともに、その四角状の平板の内側をくり抜いて、延設部260を形成する。なお、延設部260の形成は、ステータティースの形成と同時又は別時のどちらでもよい。
【0059】
そして、ステップS12では、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数のステータティースを、断面視において、その根本部分がR形状となるように加工される。この結果、ステータティース210a〜210hは、ステータ200の平板面に対して略垂直となるように起こされる。
【0060】
続いて、絶縁キャップ取り付け工程として、射出成型により、図3に示す絶縁キャップ400を、ステップS10、S12で形成したステータ200と一体成形する(ステップS14)。すなわち、ステータ200に対して装着された状態で、絶縁キャップ400を形成する。この際、上述したボビン410a〜410h及び係止部420a、420c、420e、420gも形成されることになる。また、絶縁キャップ400と一体的に形成される樹脂部450が、延設部260に取り付けられた状態で形成される。
【0061】
なお、図3に示す絶縁キャップ400を予め射出成型により形成しておき、その絶縁キャップ400を、ステータティース210a〜210hの上方からステータ200に装着するようにしてもよい。
【0062】
次に、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされたステータティース210a〜210hの各ステータティースを巻線磁芯として、各ボビン410a〜410hの外側にステータ巻線が巻回される(ステップS16)。こうして起こされたステータティースのそれぞれの周囲に、励磁用の励磁巻線4及び検出用の出力巻線5が巻回される。
【0063】
次に、リング部材取り付け工程として、先ず、図5に示すリング部材500を、射出成型により樹脂で形成、又はダイキャストによりアルミで形成する(ステップS18)。その後、そのリング部材500を、上記したように、ステータティース210a〜210hの内側に設けて、各係止部420a、420c、420e、420g及び各被係止部530a、530c、530e、530gとで係止させる。
【0064】
次に、ロータ加工工程として、1枚の電磁鋼板がプレス加工されて、図1に示すロータ300が形成される(ステップS20)。
【0065】
次に、ロータ取り付け工程として、ロータ300が、ステータ200に対して回転自在となるように、ステータ200の外径側に設けられる(ステップS22)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の内周側の側面とステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。なお、図9では、ロータ加工工程が、巻線部材取り付け工程の後に行われるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくともロータ取り付け工程に先立って行われていればよい。以上のように、本実施形態におけるレゾルバ100が製造される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100によれば、ステータ200が平板250で構成されているので、ステータの構造を簡素化できる。また、そのステータ200に形成されるステータティース210a〜210hが、ステータ200の平板250に対して起立しているので、絶縁キャップ400の装着が容易になるとともに、ステータ巻線を簡易に巻回することができる。
【0067】
また、ステータティース210a〜210hの内側には、リング部材500が設けられるので、そのリング部材500の外周面510によって、各ステータティース210a〜210hの平板250に対する傾きの位置決めをすることができる。よって、ステータティース210a〜210hとロータ300との間のギャップパーミアンスが正確になるので、検出信号の精度を向上させることができる。また、リング部材500によってステータティース210a〜210hの傾きが規制されるので、事後的にステータティース210a〜210hの傾きが変わってしまうのを防止できる。また、リング部材500は、係止部と被係止部とによって4箇所で係止されているので、リング部材500が外れてしまうのを防止できる。
【0068】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る回転角検出装置としてのレゾルバの第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心にして説明する。図10は、第二実施形態のレゾルバ101の構成例の分解斜視図である。なお、図10では、ステータ巻線等の配線の図示を省略するとともに、ステータとロータとを分解して示している。図11は、図10の絶縁キャップ401の斜視図である。また、図12は、図10のリング部材501の構成を説明する図であり、図12(a)はリング部材501の平面図、図12(b)は、図12(a)中のリング部材501のB−B断面図を示している。なお、図12(a)において、各ステータティース210a〜210hを上方から見たときの外形線を破線で示している。また、図12(a)のB−B線は、第三のステータティース210cと第八のステータティース210hとを通る線である。なお、図10〜図12において、第一実施形態と同一部分には同一符号を付している。
【0069】
図10に示すように、本実施形態のレゾルバ101は、第一実施形態と同様に、ステータティース210a〜210hの内側に、リング部材501が設けられる。ただし、リング部材501の構造及び固定の方法が第一実施形態と異なっている。それにともなって、絶縁キャップ401の構造も第一実施形態と異なっている。
【0070】
絶縁キャップ401は、図11に示すように、第一実施形態と同様に、第一のボビン410aの上端部に係止部421aが、第三のボビン410cの上端部に係止部421cが、第五のボビン410eの上端部に係止部421eが、第七のボビン410gの上端部に係止部421gが設けられる。それら係止部421a、421c、421e、421gは、つば部412の上端部において、第一実施形態の係止部と同じ位置に形成されるとともに、先端が内側に曲げられた鉤状とされる(図4参照)。ただし、係止部421a、421c、421e、421gは、その高さが、第一実施形態の係止部の高さと異なっている。具体的には、ステータティース210a〜210hの先端よりも、係止部421a、421c、421e、421gの先端のほうが高いとされる。換言すると、係止部421a、421c、421e、421gは、ステータティース210a〜210hの先端から飛び出るまで延設されている。なお、係止部421a、421c、421e、421gは、互いに構造が同じとされる。
【0071】
リング部材501は、第一実施形態と同様に、非磁性体の材料で形成される。また、リング部材501は、第一実施形態と同様に、複数のステータティース210a〜210hの内側から、複数のステータティース210a〜210hのそれぞれの面(内側に向いた面)と当接するように筒状(リング状)に形成されたものである。具体的には、図12に示すように、リング部材501は、筒状の本体筒部511を有する。その本体筒部511を構成する筒の外周面521が、各ステータティース210a〜210hの面と当接する面とされる。
【0072】
また、リング部材501は、本体筒部511の上端部に設けられた、本体筒部511の径よりも小さい径の筒状の上筒部531を有する。その上筒部531は、本体筒部511の上端部において、上筒部531の軸が、本体筒部511の同軸となるように設けられる。これによって、リング部材501は、本体筒部511と上筒部531との接続部において、段差541が形成される。その段差541が、係止部421a、421c、421e、421gに係止される被係止部として機能する。なお、本体筒部511は、その上端部が、ステータティース210a〜210hの先端よりも高くなるように形成され、それにともなって、上筒部531は、ステータティース210a〜210hの先端よりも高い位置に設けられる。より具体的には、上筒部531は、係止部421a、421c、421e、421gと同じ高さに設けられる。
【0073】
なお、リング部材501が上記の構造とされることで、段差541は、リング部材501の全周に渡って形成されることになる。つまり、例えば、図12(b)に示すように、リング部材501は、係止部が設けられない第八のステータティース210hに対応する部分にも、段差541が形成されることになる。
【0074】
ここで、図13は、リング部材501が、ステータティース、ボビン及び係止部に対してどのように設けられるかを説明する図である。具体的には、図13は、図12(a)のB−B断面視におけるレゾルバ101を構成する各部品を示している。なお、図13において、第一実施形態と変更がないものについては、説明を省略する。
【0075】
図13に示すように、第三のボビン410cの上端部には係止部421cが、ステータティース210cの先端の方向に突出するように設けられる。その係止部421cは、その先端の鉤状の部分が、ステータティース210cの先端から飛び出ている。一方、第八のボビン410hの上端部には係止部は設けられていない。
【0076】
このような配置関係において、リング部材501は、ステータティース210a〜210hの内側に設けられる。この際、本体筒部511の外周面521が、ステータティース210a〜210hの面と当接される。また、各係止部421a、421c、421e、421gが、本体筒部511と上筒部531との接続部に形成された段差541に係合される。なお、図13では、係止部421cと段差541との係合を示している。このように、リング部材501は、係止部421a、421c、421e、421gと段差541との係合によって、ステータティース210a〜210hの先端から飛び出た部分において係止される。さらに、本体筒部511の下端部が、各ボビン410a〜410hの上端面に当接される。よって、リング部材501は、上下方向の変位が規制されている。
【0077】
なお、図13に示すように、第八のステータティース210hには係止部が設けられていないので、その部分においては、第八のステータティース210hの面と本体筒部511の外周面521とが当接されているだけで、リング部材501は固定されていない。
【0078】
また、本実施形態のレゾルバ101は、第一実施形態と同様の手順(図9のフローチャート)で製造される。この際、ステップS14の絶縁キャップ取り付け工程では、係止部421a、421c、421e、421gが形成された絶縁キャップ401が形成されて、ステータ200に装着される。また、ステップS18のリング部材取り付け工程では、図12のリング部材501が形成されて、ステータティース210a〜210hの内側に設けられる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態では、ステータティース210a〜210hの内側にリング部材501が設けられるので、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、そのリング部材501は、ステータティース210a〜210hの先端から飛び出た部分で係止されるので、リング部材501をステータティース210a〜210hの内側に設ける際におけるステータティース210a〜210hの変形を抑えることができる。
【0080】
(変形例1)
上記第一、第二実施形態では、ボビンの上端部に係止部を設け、リング部材に被係止部を設けて、それら係止部と被係止部との係合によって、リング部材を固定していた。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、以下のようにリング部材を固定してもよい。
【0081】
ここで、図14は、変形例1に係るレゾルバにおいて、図6、図13と対応する断面図を示している。なお、第一、第二実施形態と同一部分には同一符号を付している。なお、図14において、第一、第二実施形態と変更がないものについては、説明を省略する。
【0082】
この変形例1に係るリング部材502は、第一実施形態のそれと同様に、筒状に形成されるとともに、その筒の外周面が、各ステータティース210a〜210hの面と当接される。ここで、図15、図16は、リング部材502の固定方法を説明する図であり、それぞれ、図14の破線部700の詳細図を示している。図15に示すように、リング部材502とステータティース(図15ではステータティース210c)とをカシメ710で固定されたとしてもよい。また、図16に示すように、リング部材502とステータティース(図15ではステータティース210c)とを接着剤720で固定されたとしてもよい。これによっても、リング部材502が外れてしまうのを防止できる。また、この場合、ボビン410a〜410hの上端部には係止部を設ける必要がなく、リング部材502には被係止部を設ける必要がない。
【0083】
また、図17は、リング部材のさらに別の固定方法を説明する図である。具体的には、図17(a)は、図14の破線部700におけるリング部材502の詳細図、図17(b)は、図14の破線部700におけるステータティース210cの詳細斜視図、図17(c)は、図14の破線部700におけるリング部材502及びステータティース210cの接続状態を示した図である。図17(a)に示すように、リング部材502は、その外周面から外側に突起された凸部としての突起部512が形成される。また、図17(b)に示すように、ステータティース210cには、リング部材502の突起部512に対応した凹部としての貫通孔212cが形成される。そして、図17(c)に示すように、突起部512が貫通孔212cに挿入されて、それらが勘合することで、リング部材502が固定されたとしてもよい。
【0084】
さらに、図18に示すように、図17(a)の突起部512に代えて、リング部材502の内周面を凹ませることで、その外周面に凸部513を形成するようにしてもよい。この場合、その凸部513とステータティース210cの貫通孔212c(図17(b)参照)とが勘合されることになる。なお、図17、図18の場合、全てのステータティース210a〜210hに、貫通孔212cと同じ位置及び形状の貫通孔を形成するのが望ましい。ステータ200の磁気特性を均一にするためである。なお、ステータティースの側に凸部を設け、リング部材の側に凹部を設けてもよい。
【0085】
(変形例2)
上記実施形態では、アウターロータ型のレゾルバの例について説明したが、インナーロータ型のレゾルバにも本発明を適用できる。ここで、図19は、変形例2に係るレゾルバの断面図を示している。図19において、ステータ201に起立してステータティース215が形成される。ステータティース215には、ボビン415が装着される。また、ステータティース215は、先端側の一部が、ボビン415から露出される。そして、ロータ301は、ステータティース215の内側に設けられる。このような構成のレゾルバにおいて、リング部材503は、ステータティース215の外側から、ステータティース215の外側の面216と当接するように設けられる。すなわち、リング部材503の内周面とステータティース215の面216とが当接される。これによれば、ステータティース215の外側にリング部材503が設けられるので、ステータティース215とロータ301とのギャップパーミアンスを正確にすることができる。よって、検出精度を向上できる。
【0086】
(第三実施形態)
上記実施形態ではレゾルバに本発明を適用した例について説明したが、回転同期装置としてのシンクロに本発明を適用してもよい。このシンクロは、ステータとロータとステータティースに巻回されたステータ巻線(励磁巻線、出力巻線)とボビンが設けられた絶縁キャップとを備えており、その出力巻線から、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力する点で、レゾルバと同じである。また、シンクロは、3相分の出力巻線がステータティースに巻回され、各出力巻線から出力される出力信号が、互いに位相角が120度ずれている点で、レゾルバと異なっている。このように、シンクロは、ステータ巻線の巻線構造以外はレゾルバと同じと考えることができるので、上記実施形態はそのままシンクロにも適用することができる。すなわち、ステータティースの内側又は外側にリング部材を設けることで、ステータティースの平板に対する傾きを正確にすることができる。
【0087】
ここで、図20は、シンクロの用途例を示した図である。シンクロは、図20に示すように、主に、複数の機器間でそれらの運転を同期させるために用いられ、一般的に、同じ構造のシンクロ発信機とシンクロ受信機のセットで用いられる。具体的には、図20において、シンクロとしてのシンクロ発信機702は、その回転軸701が、一方の機器(発信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ発信機702は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。また、同様に、シンクロとしてのシンクロ受信機703は、その回転軸704が他方の機器(受信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ受信機703は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。そして、これらシンクロ発信機702とシンクロ受信機703の各相が接続される。これらの動作について、(1)シンクロ発信機702とシンクロ受信機703でロータの位置が異なると、それらの間で電位差が生じ、各相に電流が流れる。(2)その電流によって、シンクロ受信機703のロータが回転する。すなわち、トルクが発生する。(3)シンクロ受信機703のロータ(回転軸704)の回転にともなって、それに接続された受信側の機器が回転される。(4)シンクロ受信機703のロータの位置がシンクロ発信機702のロータの位置と同じになると、各相に電流が流れなくなる。(5)電流が流れなくなると、シンクロ受信機703のロータの回転が停止される。よって、シンクロ発信機702とシンクロ受信機703のロータの位置が同じ、つまり発信側の機器と受信側に機器の運転が同期される。このように、レゾルバと同様に、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力するシンクロ発信機及びシンクロ受信機に対して本発明を適用しても、ステータティースの平板に対する傾きを正確にすることができるので、好適である。
【0088】
なお、本発明に係るレゾルバ、シンクロは、上記実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変形することができ、例え次のような変形も可能である。
【0089】
上記実施形態では、係止部を1個飛びに4箇所に設けていたが、何箇所設けても良い。例えば、全てのボビンの上端部に係止部を設けても良い。これによって、より一層、リング部材を強固に固定できる。また、対角線上の2箇所に係止部を設けても良い。これによって、リング部材を固定しつつ、構造を簡素化できる。
【0090】
上記の各実施形態では、レゾルバが、1相励磁2相出力型であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記の各実施形態におけるレゾルバが、励磁信号が1相以外の相を有する信号であったり、検出信号が2相以外の相を有する信号であったりしてもよい。
【0091】
上記の各実施形態では、磁性材料からなるステータの材質が1枚の電磁鋼板、普通鋼又は機械構造用炭素鋼材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
上記の各実施形態では、軸倍角「3」のロータを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸倍角「5」のロータであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
4 励磁巻線(ステータ巻線)
5 出力巻線(ステータ巻線)
100、101 レゾルバ(回転角検出装置)
200、201 ステータ
210a〜210h、215 ステータティース
212c 貫通孔(凹部)
216 ステータティース215の面
250 平板
300、301 ロータ
400、401 絶縁キャップ
410a〜410h、415 ボビン
411 本体
412 つば部
413 基部
414 挿入孔
420a、420c、420e、420g、421a、421c、421e、421g 係止部
500、501、502、503 リング部材
510 リング部材の外周面
511 本体筒部
512 突起部(凸部)
513 凸部
521 本体筒部の外周面
520 角部
530a、530c、530e、530g 被係止部
531 上筒部
541 段差(被係止部)
702 シンクロ発信機(シンクロ、回転同期装置)
703 シンクロ受信機(シンクロ、回転同期装置)
710 カシメ
720 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料の輪状平板から構成され、その平板の周縁部において平板面に対して起立した複数のステータティースが形成されたステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記ロータの回転角に応じた検出信号を出力させるための、前記ステータティースに巻回されるステータ巻線と、
前記複数のステータティースの内側又は外側から、前記複数のステータティースのそれぞれの面と当接するように設けられるリング状のリング部材と、を備えることを特徴とする回転角検出又は回転同期装置。
【請求項2】
前記ステータティースの先端側の一部が露出するように前記複数のステータティースのそれぞれに装着され、外側から前記ステータ巻線が巻回される複数のボビンが形成された樹脂製の絶縁キャップと、
前記ボビンの上端部から前記ステータティースの先端の方向に突出された、前記リング部材を係止する係止部と、を備え、
前記リング部材は、前記係止部に係止される被係止部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項3】
前記係止部は、前記ステータティースの先端から飛び出るまで延設されており、
前記係止部及び前記リング部材の前記被係止部が、前記ステータティースの先端から飛び出た部分で係止されたことを特徴とする請求項2に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項4】
前記リング部材と前記ステータティースとが当接する部分において、前記リング部材と前記ステータティースとがカシメで固定されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項5】
前記リング部材と前記ステータティースとが当接する部分において、前記リング部材と前記ステータティースとが接着剤で固定されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項6】
前記リング部材と前記ステータティースとが当接する部分において、前記リング部材と前記ステータティースの一方に凸部が形成され、他方にその凸部と嵌合する凹部が形成され、それら凸部と凹部との嵌合で、前記リング部材と前記ステータティースとが固定されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−234595(P2011−234595A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105603(P2010−105603)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】