説明

回転角検出又は回転同期装置

【課題】構造を簡素化するとともに、ステータ巻線を精度良く巻回できる回転角検出又は回転同期装置を提供すること。
【解決手段】レゾルバ1は、ステータ10、ロータ350及びフレキシブル基板50を備える。ステータ10は、磁性材料の輪状平板11から構成され、その輪状平板11の周方向に沿って72個のステータティース12が、輪状平板11の平板面に対して起立して形成される。ロータ350は、磁性材料から構成され、回転軸回りの回転によりステータティース12とのギャップパーミアンスが変化するようにステータ10に対して回転可能に設けられる。フレキシブル基板50は、各ステータティース12に対応する位置に複数の挿入孔が形成され、各挿入孔に各ステータティース12が挿入されてステータ10に装着される。フレキシブル基板50は、各挿入孔の周囲に、ステータ巻線がプリントされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータ及びロータを有し、ステータに対するロータの回転位置によってステータとロータとの間の相互インダクタンスが変化することを利用して、ステータに対するロータの回転角度に応じた検出信号を出力する回転角検出装置としてのレゾルバが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、図14は、従来のレゾルバの構造を示した図である。図14のレゾルバ900は、内周面910aから内方へ突出する複数のステータティース920が形成された輪状のステータ910を備える。また、ステータ910の内側には、ロータ980がそのステータ910に対して回転可能に設けられる。
【0003】
各ステータティース920には、ステータ巻線950が巻回される。そのステータ巻線950は、複数相のコイル巻線から構成される。具体的には、ステータ巻線950は、励磁信号が入力されてステータティース920を励磁する励磁巻線951と、ロータ980の回転にともなって変化するギャップパーミアンスに応じた検出信号が出力される出力巻線952とを有する。
【0004】
また、ステータ巻線950とステータティース920との絶縁を確保する等のために、各ステータティース920には、その外側を覆うように樹脂製のボビン941が設けられる。すなわち、ステータ巻線950は、各ボビン941の外側に巻回されて、ボビン941を介してステータティース920に巻回される。そして、これらボビン941が一体に形成された絶縁キャップ940が、ステータ910に装着される。
【0005】
このような構成のレゾルバ900では、コネクタピン970から励磁巻線951に対して励磁信号を入力してステータティース920を励磁し、ロータ980の回転にともなってギャップパーミアンスが変化すると、出力巻線952には、そのギャップパーミアンスに応じた検出信号が発生する。そして、出力巻線952と接続されたコネクタピン970から出力される検出信号に基づいて、ロータ980の回転角が検出される。
【0006】
また従来、レゾルバと同様の構造を有する回転同期装置としてのシンクロが知られている。このシンクロは、レゾルバと同様のステータ及びロータを有し、ステータティースに巻回される出力巻線からロータの回転角に応じて正弦波状に変化する互いに位相角が120度ずれた3相の信号を出力する。そして、同じ構造の2つのシンクロを接続すると、各シンクロから出力される信号の差に基づいて、一方のシンクロのロータが、他方のシンクロのロータと同じ回転角となるように回転される。すなわち、これら2つのシンクロが同期される。このように、シンクロは、一般的に、2個1組で用いられ、この場合、一方をシンクロ発信機と称し、他方をシンクロ受信機と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−344107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レゾルバ、シンクロにおいては、回転角の検出精度を高めるためには、励磁巻線や出力巻線を精度良く巻回する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されたレゾルバ900では、ステータティース920が内方に向けて設けられているため、励磁巻線951や出力巻線952を精度良く巻回ための機構が複雑になる。また、ステータティース920が内方に向けて設けられているため、巻回するためのスペースが狭くなる。また、従来のステータ210は、複数の電磁鋼板を積層するなどして、十分な厚さで構成されていたので、レゾルバ、シンクロの製造工程が複雑化するという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、構造を簡素化するとともに、ステータ巻線を精度良く巻回できる回転角検出又は回転同期装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の回転角検出又は回転同期装置は、磁性材料の輪状平板から構成され、その輪状平板の周方向に沿って複数のステータティースが形成されてステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記複数のステータティースに対応する位置に複数の挿入孔が形成され、各挿入孔に各ステータティースが挿入されて前記ステータに装着されるフレキシブル基板であって、各挿入孔の周りに渦巻き状の導電体パターンがステータ巻線としてプリントされたフレキシブル基板と、を備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、ステータが輪状平板から構成されているので、従来の厚いステータに比べて、ステータの構造を簡素化できる。その結果、回転角検出又は同期装置の製造工程も簡素化できる。また、フレキシブル基板には、各ステータティースに対応する位置に複数の挿入孔が形成されているので、各ステータティースを各挿入孔に挿入することで、フレキシブル基板をステータに装着することができる。そして、フレキシブル基板の各挿入口の周囲には、渦巻き状の導電体パターンがプリントされているので、その導電体パターンによって、各ステータティースに対してステータ巻線が巻回されたとすることができる。よって、導線をコイル状に巻回してステータ巻線を構成する場合よりも、簡易にステータ巻線をステータティースに装着することができる。また、フレキシブル基板にステータ巻線をプリントすることで、図14に示すようなボビンを省略することができる。さらに、フレキシブル基板は柔軟性を有するので、容易にフレキシブル基板をステータに装着することができる。
【0012】
また、本発明において、前記ステータは、16以上の前記ステータティースが形成され、
前記ステータ巻線は、前記ステータティースを励磁するための励磁信号が入力される励磁巻線と、前記ロータの回転角に応じた信号が出力される出力巻線と、を含み、
前記励磁巻線は、各ステータティースあたりの巻回数が10ターン以下とされたとするのが好ましい。
【0013】
これによれば、多くのステータティースを形成して各ステータティースにおいてロータの回転角に応じた検出信号を発生させることで、検出信号の分解能を向上、すなわち検出信号の精度を向上できるところ、16以上のステータティースが形成されているので、検出信号の精度を向上できる。また、励磁巻線が、各ステータティースあたりの巻回数が10ターン以下とされているので、変圧比を大きくすることができる。この場合、ステータティースが16以上とされているので、励磁巻線の総巻回数は、ある程度の多い巻回数とすることができる。よって、ステータに対する励磁能力は損なうことがない。特に、フレキシブル基板にステータ巻線をプリントする場合に、励磁巻線の各ステータティースあたりの巻回数を少なくすることは好適である。フレキシブル基板にステータ巻線をプリントする場合には、基板内に巻回しなければならず巻回数に限界があるからである。
【0014】
また、本発明において、前記複数のステータティースは、前記ステータの平板面に対して起立されたものである。
【0015】
これによれば、複数のステータティースが、ステータの平板面に対して起立されているので、フレキシブル基板を、ステータの平板面の上方から載置する形でステータに装着することができる。よって、フレキシブル基板をステータに簡易に装着できる。
【0016】
また、本発明において、前記複数のステータティースは、前記ステータの内周縁部において、内方に向くように形成され、
前記フレキシブル基板は、帯状の板が前記ステータの内周に沿って湾曲されたときの形状である湾曲形状とされ、前記ステータの内周縁部において、前記ステータの平板面と自身の基板面とが交差するように、前記ステータに装着されたとしてもよい。
【0017】
このように、ステータティースがステータの内方に向いていた場合であっても、フレキシブル基板を湾曲形状として、ステータの平板面と交差するように装着することで、各ステータティースの周囲でステータ巻線が巻回された形とすることができる。この場合、フレキシブル基板は柔軟性を有するので、湾曲したフレキシブル基板をステータの平板面と交差させる形の装着に好適である。
【0018】
また、この場合、前記ステータの内周縁部において、前記ステータの平板面に対して起立するように設けられ、前記フレキシブル基板の基板面と当接する当接面を有する起立部を備えるのが好ましい。
【0019】
これによれば、起立部の当接面において、フレキシブル基板の基板面を当接させることができるので、そのフレキシブル基板を安定させることができ、確実にステータに装着できる。
【0020】
また、この場合、前記起立部は、前記ステータの両側の平板面のうち、一方の平板面側に起立された第一の起立部と、他方の平板面側に起立された第二の起立部とを有するとするのが、さらに好ましい。
【0021】
これによれば、第一、第二の起立部によって、ステータの両側の平板面側において、フレキシブル基板を当接させることができるので、より一層、フレキシブル基板を安定させることができる。
【0022】
また、前記起立部は、前記ステータの内周縁部の前記複数のステータティースの間において、前記ステータを構成する前記輪状平板が折り曲げられて形成されたものとすることができる。
【0023】
これによれば、起立部がステータを構成する輪状平板で形成されることになるので、部品点数を減らすことができ、構造を簡素化することができる。
【0024】
また、前記起立部は、前記ステータを構成する前記輪状平板とは別部材で構成されたとしてもよい。
【0025】
このように、起立部を別部材とすることにより、上記のように輪状平板を折り曲げる必要がないので、ステータの輪状平板の加工工程を簡素化することができる。
【0026】
また、前記フレキシブル基板は、スルーホールを介して、両面に前記ステータ巻線がプリントされたものである。
【0027】
これによれば、フレキシブル基板の両面を使用することができるので、より多くのステータ巻線をプリントすることができる。換言すれば、ステータ巻線の巻回数を固定とすると、フレキシブル基板を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第一実施形態のレゾルバ1を示した図である。
【図2】ステータ10の平面図である。
【図3】フレキシブル基板20の平面図である。
【図4】フレキシブル基板20の挿入孔21の周囲の構造を説明する図である。
【図5】変形例1に係るステータ100及びフレキシブル基板200を示した図である。
【図6】第二実施形態のレゾルバ2を示した図である。
【図7】ステータ40を示した図である。
【図8】フレキシブル基板50を示した図である。
【図9】第三実施形態のレゾルバ3を示した図である。
【図10】ステータ60の平面図である。
【図11】基板保持部80を示した図である。
【図12】変形例2に係るレゾルバ4の側面断面図である。
【図13】シンクロの用途例を示した図である。
【図14】従来のレゾルバの構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る回転角検出又は同期装置の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の回転角検出装置としてのレゾルバ1を示した図である。具体的に、図1(a)は、レゾルバ1の平面図、図1(b)は、図1(a)中の、A−A線断面図を示している。なお、A−A線は、ステータ10の中心(ロータ350の回転軸)を通る線とされる。また、図2は、ステータ10の平面図である。また、図3は、フレキシブル基板20の平面図である。
【0030】
図1に示すように、レゾルバ1は、ステータ10、フレキシブル基板20及びロータ350を備える。ステータ10は、図1、図2に示すように、磁性材料の輪状平板11から構成される。また、ステータ10は、輪状平板11の周方向に沿って複数のステータティース12が、その輪状平板11の平板面に対して直角に起立するように形成される。より具体的には、72個のステータティース12が、所与の円の全周に渡って等間隔となるように形成される。また、各ステータティース12は、輪状平板11の内周縁部が折り曲げ加工されて形成されたものである。なお、図1(b)、図2では、ステータティース12の先端面にハッチングを付して示している。
【0031】
このように、ステータティース12が形成されることで、輪状平板11のステータティース12よりも内周側の内周部分112が、輪状平板11の内方に向いた複数のティースが連なった歯車状とされる。この内周部分112及び輪状平板11のステータティース12よりも外周側の外周部分111の面が、後述するフレキシブル基板20の基板面と当接される面とされる。
【0032】
このような磁性材料からなるステータ10の輪状平板11の材質は、電磁鋼板、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10Cであることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S45Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.45%程度の炭素を含有している。S10Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
【0033】
以上のような構成を有するステータ10は、磁性材料として1枚の電磁鋼板により構成されるため、材料費として高価である上に折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくい積層電磁鋼板を採用する場合に比べて、低コストで、曲げによる加工精度や信頼性を維持できるようになる。しかも、曲げ加工による磁性材料の粒状破壊を防止し、曲げ加工前の磁気特性を確保することにより高精度な角度検出を可能とする。
【0034】
図1のロータ350は、電磁鋼板等の磁性材料の平板から構成され、ステータ10の内側に、ステータ10に対して回転可能に設けられるインナーロータである。より具体的には、ロータ350は、その回転軸回りの回転により各ステータティース12との間のギャップパーミアンスが変化するように、ステータ10に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ30は、軸倍角が「3」であり、所与の半径の円周線を基準に、その円周線の1周につき、平面視おける外形輪郭線が3周期で変化する形状を有している。そして、各ステータティース12の内側の面と対向するロータ350の外周側の面が、ロータ350の1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。また、ロータ350は、その回転軸と交差する中心付近において貫通されており、その貫通部にモータ等の回転角度の計測対象物を取り付けることができるようになっている。
【0035】
また、図1に示すように、ステータ10には、フレキシブル基板20が装着される。より具体的には、平面視においてステータ10と同じ輪郭線を有するフレキシブル基板20が、ステータ10の輪状平板11の上に載置される形で設けられる。このフレキシブル基板20は、図3に示すように、ステータ10と同様に輪状とされ、その周方向に沿って複数の孔21が形成される。これら孔21はそれぞれ、各ステータティース12が挿入される挿入孔である。すなわち、挿入孔21は、ステータティース12の個数と同じ72個形成されており、各ステータティース12に対応する位置に形成されている。また、各挿入孔21の形状は、ステータティース12の根元側の断面と略同じとされる。つまり、ステータティース12が丁度挿入孔21にはまるようになっており、フレキシブル基板20がステータ10に装着された際に、そのフレキシブル基板20ががたつくのを防止している。
【0036】
このフレキシブル基板20は、フィルム状の絶縁体の上に導電体パターンがプリントされた、いわゆる柔軟性を有するプリント基板である。本発明におけるフレキシブル基板20は、ステータティース12に巻回されるステータ巻線としての導電体パターンがプリントされる。ここで、図4は、フレキシブル基板20の挿入孔付近の構造を説明する図である。具体的には、図4(a)は、任意の挿入孔21付近の拡大図として、図3の破線部300の拡大図を示している。また、図4(b)は、図4(a)の挿入孔21を通るB−B線断面図を示している。
【0037】
図4(a)に示すように、挿入孔21の周囲には、ステータ巻線として、渦巻き状の導電体パターン22がプリントされている。その導電体パターン22は、導電材料から形成され、その導電材料として例えば銅材料を採用することができる。また、銅材料の他に、アルミニウムを主成分としてアルミニウム材料を採用してもよい。アルミニウム材料は、銅材料に比べて、比重が軽いので、レゾルバの軽量化や低コスト化を図ることができる。なお、以下導電体パターン22をステータ巻線22と言う場合もある。
【0038】
また、フレキシブル基板20は、図4(b)に示すように、複数層が積層された多層基板とされる。より具体的には、フレキシブル基板20は、励磁巻線形成層24、第1の出力巻線形成層25及び第2の出力巻線形成層26の3層が積層された多層基板とされる。励磁巻線形成層24は、ステータ巻線22として、励磁巻線の導電体パターンがプリントされる形成層である。励磁巻線は、外部から励磁信号が入力されて、ステータティース12を励磁するための巻線である。より具体的には、励磁巻線形成層24は、絶縁体のベースフィルム241を有する。そのベースフィルム241は、そのフィルム面が、励磁巻線の導電体パターンがプリントされる面とされ、具体的には、挿入孔21の周囲に、励磁巻線の導電体パターン221がプリントされている。さらに詳細には、ベースフィルム241には、両フィルム面に励磁巻線の導電体パターン221a、221bがプリントされている。そして、これら導電体パターン221a、221bは、第1のスルーホール231を介して電気的に接続されている。また、ベースフィルム241には、別の第2のスルーホール232が形成され、その第2のスルーホール232を介して、隣りの挿入孔21の周囲にプリントされた励磁巻線の導電体パターン221と電気的に接続される。以下、励磁巻線の導電体パターン221を励磁巻線221と言う場合もある。
【0039】
また、励磁巻線221は、その巻回数が、例えば各ステータティース12あたり8ターンとされる。つまり、この場合、各挿入孔21の周囲に、励磁巻線221が8ターン分プリントされる。この場合、ベースフィルム241の両フィルム面にプリントされた励磁巻線221a、221bの合計の巻回数が8ターンとされ、例えば、一方の励磁巻線221aが4ターン分、他方の励磁巻線221bが4ターン分とされる。
【0040】
このように、巻回数を8ターンとした場合、72個全てのステータティース12に巻回される総巻回数は、8×72で576ターンとなる。これは、ステータティースが8個の場合において、各ステータティースあたりに70ターンを巻回したときの総巻回数(8×70=560ターン)と同等の巻回数である。よって、ステータティースが8個で、各ステータティースあたりに70ターンを巻回したときと同等の励磁能力を有することができる。また、8ターンの巻回数とすることで、各ステータティースあたりに70ターンを巻回したときに比べて、変圧比を大きくとることができる。特に、本発明のように、フレキシブル基板20にステータ巻線22をプリントする場合に、ステータティース12あたりの巻回数を少なくすることは好適である。フレキシブル基板20に巻線をプリントする場合、2次元の基板平面内にプリントしなければならないので、その巻回数にも自ずと限界があるからである。
【0041】
なお、励磁巻線221の巻回数は8ターンに限定されるものではなく、変圧比、励磁能力、ステータティースの個数を考慮したり、また、フレキシブル基板20にプリントできる巻回数を考慮したりして、適宜決定することができる。すなわち、ステータティースあたりの励磁巻線の巻回数が少なくすると、変圧比を大きくとれるというメリットがある。一方、励磁巻線の巻回数が多くすると、ステータティースをより強く励磁できるというメリットがある。ただし、上記説明したように、本実施形態のように、ステータティース12の個数が多い場合には、励磁巻線221の巻回数を少なくすることで、励磁能力を損なうことがなく、変圧比を大きくとれるというメリットがある。よって、励磁巻線221の巻回数は10ターン以下の少ない巻回数とするのが好ましい。
【0042】
図4(b)に示すように、励磁巻線形成層24のベースフィルム241の両フィルム面には、励磁巻線221を保護するとともに他から絶縁するための絶縁層27が接合される。このように、励磁巻線形成層24は、ベースフィルム241及び絶縁層27から構成される。
【0043】
図4に示す励磁巻線221は、フレキシブル基板20の他の挿入孔21の周囲にも上記と同様にプリントされる。すなわち、各挿入孔21に周囲において、励磁巻線221が、第1のスルーホール231を介して、両フィルム面に例えば8ターン分プリントされる。そして、各挿入孔21の励磁巻線221は、第2のスルーホール232を介して、直列に電気的に接続される。ただし、励磁巻線221は、隣り合う挿入孔21の励磁巻線間で、巻回方向が互いに反対方向となるように、プリントされる。これは、後述するように、ステータティース12を励磁したときに、隣り合うステータティース12間で磁気回路を生成させるためである。
【0044】
フレキシブル基板20は、励磁巻線形成層24の他に、第1の出力巻線形成層25及び第2の出力巻線形成層26を有する。これら出力巻線形成層25、26は、ステータ巻線22として、ロータ350の回転角に応じた検出信号が出力される出力巻線の導電体パターンがプリントされる形成層である。より具体的には、第1の出力巻線形成層25は、ロータ350の回転角に応じて正弦波状に変化する第1の検出信号が出力される第1相の出力巻線の導電体パターンがプリントされる。この第1の出力巻線形成層25は、図4(b)に示すように、励磁巻線形成層24と第2の出力巻線形成層26の間に設けられ、上記の励磁巻線形成層24と同様に、ベースフィルム251及び絶縁層27から構成される。ベースフィルム251には、挿入孔21の周囲に、第1相の出力巻線の導電体パターン222がプリントされている。なお、以下導電体パターン222を第1相の出力巻線222と言う場合もある。その第1相の出力巻線222は、上記と同様に、銅材料やアルミニウム材料から形成され、第1のスルーホール231を介して、両フィルム面にプリントされた導電体パターン222a及び導電体パターン222bから構成される。また、第1相の出力巻線222は、第2のスルーホール232を介して、他の挿入孔21の周囲にプリントされた第1相の出力巻線222と電気的に接続されている。また、ベースフィルム251の両フィルム面には、第1相の出力巻線222を保護するとともに他から絶縁するための絶縁層27が接合される。
【0045】
一方、第2の出力巻線形成層26は、ロータ350の回転角に応じて正弦波状に変化する第2の検出信号が出力される第2相の出力巻線の導電体パターンがプリントされる。この第2の検出信号は、第1の検出信号と位相角が異なる信号とされる。具体的には、例えば、第1の検出信号がsin波状に変化する信号とされ、第2の検出信号が、sin波に対して位相角が90度ずれたcos波状に変化する信号とされる。
【0046】
この第2の出力巻線形成層26は、図4(b)に示すように、第1の出力巻線形成層25の下に設けられ、上記と同様に、ベースフィルム261及び絶縁層27から構成される。ベースフィルム261には、挿入孔21の周囲に、第2相の出力巻線の導電体パターン223がプリントされている。なお、以下導電体パターン223を第2相の出力巻線223と言う場合もある。その第2相の出力巻線223は、上記と同様に、銅材料やアルミニウム材料から形成され、第1のスルーホール231を介して、両フィルム面にプリントされた導電体パターン223a及び導電体パターン223bから構成される。また、第2相の出力巻線223は、第2のスルーホール232を介して、他の挿入孔21の周囲にプリントされた第2相の出力巻線223と電気的に接続されている。また、ベースフィルム261の両フィルム面には、第2相の出力巻線223を保護するとともに他から絶縁するための絶縁層27が接合される。
【0047】
これら第1相の出力巻線222、第2相の出力巻線223は、それぞれ所望の検出信号(sin波状に変化する検出信号、cos波状に変化する検出信号)が出力されるように、各挿入孔21の周囲にプリントされる巻線の巻回数及び巻回方向が調節されている。また、第1相の出力巻線222は、各挿入孔21にプリントされる各出力巻線222が第2のスルーホール232を介して直列接続され、第2相の出力巻線223も、各挿入孔21にプリントされる各出力巻線223が第2のスルーホール232を介して直列接続される。
【0048】
上記の構成のフレキシブル基板20は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、先ず(1)各形成層24〜26のベースフィルム241、251、261に、公知のプリント技術により、励磁巻線221、第1相の出力巻線222、第2相の出力巻線223をプリントする。次いで、(2)各ベースフィルム241、251、261のそれぞれの両フィルム面に、絶縁層27を接合させて、励磁巻線形成層24、第1の出力巻線形成層25、第2の出力巻線形成層26を形成する。次いで、(3)これら形成層24〜26を重ねた状態で熱圧縮して、形成層24〜26を一つの基板にする。その後、(4)挿入孔21を形成する。なお、挿入孔21は、形成層24〜26を一つの基板にする前に形成してもよい。
【0049】
なお、各巻線221、222、223をそれぞれ別のフレキシブル基板にプリントしてもよい。この場合、各形成層24〜26をそれぞれ一つの基板と考えることができる。この場合、各基板同士は、例えば接着剤で接合すればよい。
【0050】
このフレキシブル基板20は、各挿入孔21に各ステータティース12が挿入されて、ステータ10の輪状平板11の上方から載置する形で、ステータ10に装着される。よって、フレキシブル基板20をステータ10に簡易に装着できる。この際、各挿入孔21の周囲にはステータ巻線22が渦巻き状にプリントされているので、各挿入孔21に挿入された各ステータティース12の周囲でステータ巻線22が巻回されたとすることができる。
【0051】
ステータ10に装着されたフレキシブル基板20は、その基板面と輪状平板11(外周部分111及び内周部分112(図2参照))の平板面とが例えば接着剤によって固定される。これによって、フレキシブル基板20が、ステータ10から外れてしまうのを防止できる。
【0052】
また、フレキシブル基板20にプリントされたステータ巻線22は、図示しないコネクタピン(図14のコネクタピン970参照)に電気的に接続される。そして、コネクタピンを介して、ステータ巻線22に対して信号の入出力が行われる。具体的には、ステータ巻線22を構成する励磁巻線221に対しては、コネクタピンから励磁信号が入力される。また、ステータ巻線22を構成する第1相、第2相の出力巻線222、223に対しては、それらに発生される第1、第2の検出信号が、コネクタピンを介して出力される。
【0053】
以上のような構成を有するレゾルバ1では、励磁巻線221に励磁信号が入力されることで、各ステータティース12が励磁される。この際、隣り合うステータティース12間で、巻回方向が互いに反対方向となるように励磁巻線221が巻回されているので、隣り合うステータティース12間で磁界の向きが反対方向となるように、各ステータティース12が励磁される。そのため、隣り合う2つのステータティース12及びロータ350間でそれぞれ磁気回路が生成される。この際、ロータ350の回転角度に応じて、各ステータティース12とロータ350との間のギャップパーミアンスが変化するので、各磁気回路に発生する磁束が変化する。また、出力巻線222、223の各ステータティース12における巻回数及び巻回方向が調節されているので、出力巻線222、223には、ロータ350の回転に応じてsin波状、cos波状に変化する検出信号が発生される。よって、第1相の出力巻線222からの第1の検出信号と第2相の出力巻線223からの第2の検出信号に基づいて、ロータ350の回転角度の絶対値を一意に求めることができる。例えば、ロータ350をブラシレスモータの回転軸に固定することにより、そのブラシレスモータの回転角度を求めることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ1では、ステータ巻線22がプリントされたフレキシブル基板20を採用しているので、ステータティース12に直接導線を巻回する場合よりも、簡易にステータティース12に対してステータ巻線22を装着できる。特に、本実施形態のようにステータティース12の個数が多い場合には、ステータティース12に直接導線を巻回するのは迂遠であるので、フレキシブル基板20は好適である。また、本実施形態では、ステータティース12の72個形成されているので、検出信号の分解能を向上、すなわち検出信号の精度を向上できる。また、上記したように、変圧比を大きくとることができる。
【0055】
(変形例1)
上記実施形態では、フレキシブル基板20とステータ10とは接着剤で固定していたが、別の手段で固定してもよい。ここで、図5は、この変形例1に係るステータ100及びフレキシブル基板200が固定された状態を示した図である。具体的には、図5(a)は、ステータ100及びフレキシブル基板200の平面図を示しており、図5(b)は、図5(a)中のC−C線断面図を示している。なお、図5において、上記実施形態と変更がない部品には同一符号を付している。また、図5(a)では、第1実施形態におけるステータ10(輪状平板11)及びフレキシブル基板20の外周輪郭線301を破線で示している。
【0056】
図5に示すように、ステータ100及びフレキシブル基板200は、第1実施形態のそれよりも一回り大きくされる。そして、その大きくされた部分において、ボルト等の締結部材302で、ステータ100及びフレキシブル基板200が固定される。なお、図5の場合では、周方向において、90度間隔の4箇所で固定されているが、何箇所で固定されたとしてもよい。
【0057】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る回転角検出装置としてのレゾルバの第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心にして説明する。ここで、図6は、本実施形態のレゾルバ2を示した図である。具体的に、図6(a)は、レゾルバ2の平面図、図6(b)は、図6(a)中の、D−D線断面図を示している。また、図7は、レゾルバ2を構成するステータ40を示した図である。具体的には、図7(a)は、ステータ40の斜視図、図7(b)は、ステータ40の平面図を示している。また、図8は、レゾルバ2を構成するフレキシブル基板50を示した図である。具体的には、図8(a)は、フレキシブル基板50の斜視図、図8(b)は、フレキシブル基板50の構造を説明する図であり、帯状のフレキシブル基板53を示している。なお、図6〜図8において、上記実施形態と変更がない部品には同一符号を付している。また、図6、図7において、交差する2方向斜線のハッチングを付した部材は第一の起立部431を示しており、一方向の斜線のハッチングを付した部材は第二の起立部432を示している。
【0058】
図6に示すように、レゾルバ2は、第一実施形態のレゾルバ1と同様に、ステータ40、フレキシブル基板50及びロータ350を備える。本実施形態のレゾルバ2は、ロータ350が第一実施形態と同じとされる一方、ステータ40及びフレキシブル基板50が第一実施形態と異なる。ステータ40は、磁性材料の輪状平板41から構成される(図6、図7参照)。その輪状平板41は、その内周縁部において、周方向に沿って複数のステータティース42が形成される。より具体的には、72個のステータティース42が、内周縁部において等間隔となるように形成される。また、各ステータティース42は、輪状平板41と同一平板面内に形成され、先端が、輪状平板41の内方(中心)に向いている。これらステータティース42の先端面42a(図7(a)参照)が、ロータ350の外周側の面と対向し、それらの面の間で磁束がやり取りされる。
【0059】
また、ステータ40の輪状平板41には、その内周縁部の各ステータティース42の間において、輪状平板41の平板面に対して直角に起立したティース状の第一、第二の起立部431、432が設けられる。これら起立部431、432は、輪状平板41の内周縁部が折り曲げ加工されて形成されたものである。つまり、輪状平板41と起立部431、432とが一体化されている。また、これら起立部431、432のうち、第一の起立部431は、輪状平板41の両側の平板面のうち、一方の平板面側に起立される一方で、第二の起立部432は、他方の平板面側に起立される。
【0060】
また、これら第一、第二の起立部431、432は、それぞれ複数形成される。ただし、図7(b)に示すように、全てのステータティース12間に形成されているわけではなく、3個のステータティース12おきに形成される。すなわち、ステータティース12、第一、第二の起立部431、432の形成位置を、任意の第一の起立部431を基準として時計回りの方向に見ていくと、その第一の起立部431の隣りにステータティース42が形成され、そのステータティース42の隣りに第二の起立部432が形成される。そして、その第二の起立部432から3個のステータティース12を挟んで、次の第一の起立部431が形成される。その他の第一、第二の起立部431、432も上記と同様に形成される。
【0061】
このように、第一、第二の起立部431、432は、ステータ40(輪状平板41)の内周縁部において、その内周を均等するように複数形成されることになる。そして、これら第一、第二の起立部431、432の内側にフレキシブル基板50が設けられ、第一、第二の起立部431、432の内方(中心)に向いた面431a、432a(図7(a)参照)が、フレキシブル基板50の基板面と当接する当接面とされる。
【0062】
フレキシブル基板50は、図6に示すように、ステータ40(輪状平板41)の内周縁部に設けられる。そのフレキシブル基板50は、図8(a)に示すように、筒状(輪状)とされており、その筒面の周方向に沿って複数の挿入孔51が形成されている。また、フレキシブル基板50は、図8(b)に示す帯状のフレキシブル基板53が、ステータ40(輪状平板41)の内周に沿って湾曲されたときの形状(湾曲形状)と考えることもできる。この場合、帯状のフレキシブル基板53の両端部54a、54bが互いに結合されると、図8(a)に示す筒状のフレキシブル基板50とされる。なお、フレキシブル基板50は、ステータ40に装着された状態で筒状とされておればよく、ステータ10に装着される前は、図8(b)に示すように、帯状とされていてもよい。また、フレキシブル基板50の筒(帯)の高さHは、例えば第一の起立部431と第二の起立部432の先端間の長さと同じとされる。
【0063】
このフレキシブル基板50に形成された挿入孔51は、各ステータティース42に対応する位置に形成される。つまり、挿入孔51は72個形成される。また、各挿入孔51の形状は、各ステータティース42の断面の形状と略同じとされる。また、各挿入孔51の周囲には、ステータ巻線としての渦巻き状の導電体パターン52がプリントされている。なお、以下、導電体パターン52をステータ巻線52と言う場合もある。このステータ巻線52は、第一実施形態と同様に、励磁巻線、第一相の出力巻線及び第二相の出力巻線から構成される。そして、フレキシブル基板50は、第一実施形態と同様に、各巻線の形成層が積層された多層基板とされる(図4参照)。なお、励磁巻線、第一相の出力巻線、第二相の出力巻線の巻回数や巻回方向は、第一実施形態と同じである。
【0064】
このフレキシブル基板50は、ステータ40(輪状平板41)の内周縁部において、各挿入孔51に各ステータティース42が挿入されて、輪状平板41の平板面と自身の基板面とが交差するように、ステータ40に装着される(図6参照)。なお、フレキシブル基板50をステータ40に装着する際には、筒状のフレキシブル基板50を、装着しやすいように変形させればよい。また、フレキシブル基板50が図8(b)に示すように帯状とされている場合には、輪状平板41の内周に沿って、帯状のフレキシブル基板50を湾曲させながら、ステータ40に装着すればよい。このように、ステータティース42が内方に向いて形成されていたとしても、フレキシブル基板50は柔軟性を有するので、フレキシブル基板50をステータ40に容易に装着できる。
【0065】
フレキシブル基板50がステータ40に装着されると、図9に示すように、各ステータティース42が、フレキシブル基板50から突出された形となる。この際、各挿入孔51の周囲にはステータ巻線52が渦巻き状にプリントされているので、各挿入孔51に挿入された各ステータティース42の周囲でステータ巻線52が巻回されたとすることができる。
【0066】
また、フレキシブル基板50がステータ40に装着されると、フレキシブル基板50の基板面と第一、第二の起立部431、432の当接面431a、432aとが当接される。そして、その当接面において、フレキシブル基板50が例えば接着剤によって固定される。これによって、フレキシブル基板50が、ステータ40から外れてしまうのを防止できる。また、輪状平板41の両平板面側に第一、第二の起立部431、432が形成されているので、フレキシブル基板50を確実にステータ40に固定することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ2では、フレキシブル基板50をステータ40に装着することで、ステータ巻線52を巻回したとすることができるので、第一実施形態と同様に、ステータ巻線の装着工程を簡素化できる。また、各ステータティース42が内方に向いており、第一実施形態のように起立させる必要がないので、ステータティースを起立させるための曲げ加工工程を省略できる。さらに、フレキシブル基板50を固定するための第一、第二の起立部431、432が、ステータ40を構成する輪状平板41で形成されるので、部品点数を減らすことができ、構造を簡素化することができる。
【0068】
(第三実施形態)
次に、本発明に係る回転角検出装置としてのレゾルバの第三実施形態について、第一、第二実施形態と異なる部分を中心にして説明する。ここで、図9は、本実施形態のレゾルバ3を示した図である。具体的に、図9(a)は、レゾルバ3の平面図、図9(b)は、図9(a)中のE−E線断面図、図9(c)は、図9(a)中の破線部303の拡大図を示している。また、図10は、レゾルバ3を構成するステータ60の平面図である。また、図11は、レゾルバ3を構成する基板保持部80を示した図である。具体的には、図11(a)は、基板保持部80の平面図、図11(b)は、基板保持部80の図11(a)中のF−F線断面図である。なお、図9〜図11において、上記実施形態と変更がない部品には同一符号を付している。
【0069】
図9に示すように、レゾルバ3は、ステータ60、フレキシブル基板50及びロータ350を備える点で、第一、第二実施形態と同じである。また、レゾルバ3は、フレキシブル基板50を保持するための基板保持部80を備える点で、第一、第二実施形態と異なる。さらに、レゾルバ3は、ロータ350が第一、第二実施形態のそれと同じとされ、フレキシブル基板50が第二実施形態のそれと同じとされる一方で、ステータ60が第一、第二実施形態と異なる。
【0070】
ステータ60は、磁性材料の輪状平板61から構成される(図10参照)。その輪状平板61は、その内周縁部において、周方向に沿って複数のステータティース62が形成される。より具体的には、72個のステータティース62が、内周縁部において等間隔となるように形成される。また、各ステータティース62は、輪状平板61と同一平板面内に形成され、先端が、輪状平板61の内方(中心)に向いている。これらステータティース62の先端面が、ロータ350の外周側の面と対向し、それらの面の間で磁束がやり取りされる。なお、第二実施形態と異なり、ステータ60は、輪状平板61の各ステータティース62の間には、何も形成されていない。
【0071】
基板保持部80は、非磁性体SUS(非磁性体ステンレス鋼)等の非磁性材料から形成される。その基板保持部80は、ステータ60(輪状平板61)の内周と同じ形状の内周を有する輪状で平板状の本体部82を備える。その本体部82は、その内周縁部において、本体部82の平板面に対して直角に起立した複数の起立部81が形成される。それら起立部81は、隣り合う2つのステータティース62間に形成された各スロット63(図10参照)に対応する位置に形成される。すなわち、起立部81は、本体部82の内周に沿って等間隔に72個形成されている。なお、第二実施形態のように、間隔を空けて(例えば、3個のステータティース62おきに)起立部を形成してもよい。
【0072】
また、各起立部81は、本体部82の両平板面のうち、一方の平板面側に起立した第一の起立部811と他方の平板面側に起立した第二の起立部812とを含む。これら起立部81(第一の起立部811、第二の起立部812)は、第二実施形態における起立部431、432に相当するものとされる。すなわち、第一、第二の起立部811、812の内方に向いた面(当接面)811a、812aにおいて、フレキシブル基板50が固定されることになる。
【0073】
また、本体部82の外周縁部には、基板保持部80自体を保持するための保持部83が設けられる。さらに、その保持部83は、設置面に固定される設置面固定部831と、設置面固定部831と本体部82とを接続する接続部832とを含む。設置面固定部831は、本体部82の平板面と平行とされる一方で、接続部832は、本体部82や設置面固定部831に対して斜めとされる。これによって、本体部82及び起立部81を、設置面に対して上方に持ち上げた形で保持することができる。また、設置面側に起立した第二の起立部812が、設置面に当たってしまうのを防止できる。
【0074】
このような構成の基板保持部80は、例えば金型に非磁性材料を流し込んで鋳物を形成する鋳造によって形成することができる。
【0075】
この基板保持部80は、ステータ60(輪状平板61)の一方の平板面側から、各起立部81が各スロット63の根元側の領域631(図10、図9(c)参照)に挿入される形で、ステータ60に装着される。基板保持部80を基準とすると、ステータ60は、基板保持部80の本体部82に載置される形で、基板保持部80に装着される。この際、本体部82の平板面とステータ60(輪状平板61)の平板面とが当接される。そして、その当接面において、ステータ60と基板保持部80とが例えば接着剤で固定される。
【0076】
なお、基板保持部80がステータ60に装着された状態では、第二実施形態のように、輪状平板61の各ステータティース62の間において起立部が形成されたようにすることができる。
【0077】
そして、この状態で、図8に示すフレキシブル基板50が、第二実施形態と同様にして、各挿入孔51に各ステータティース62が挿入されて、輪状平板61の平板面と自身の基板面とが交差するように、ステータ60に装着される。そして、フレキシブル基板50の基板面と第一、第二の起立部811、812の当接面811a、812aとが当接されて、その当接面において、フレキシブル基板50が例えば接着剤によって固定される。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ3では、フレキシブル基板50を保持する起立部81を含む基板保持部80を、ステータ60とは別部材としたので、起立部を形成するためにステータ60(輪状平板61)を折り曲げ加工する必要がなく、ステータ60の加工工程を簡素化することができる。また、基板保持部80を非磁性材料で形成してので、その基板保持部80によって磁気的に悪影響を与えるのを防止できる。
【0079】
(変形例2)
上記第三実施形態では、基板保持部80を予め形成しておき、形成後に基板保持部80をステータ60に装着していた。しかし、以下に説明するように、ステータと基板保持部とを一体成形してもよい。ここで、図12は、変形例2に係るレゾルバ4の側面断面図(図9(b)に対応する図)を示している。なお、図12において、上記実施形態と変更がない部品には同一符号を付している。
【0080】
図12に示すように、レゾルバ4は、第三実施形態と同じステータ60、ロータ350、フレキシブル基板50を備える。一方、基板保持部90は、ステータ60の外周側の一部を覆う形で設けられ、その内周側において、ステータ60の平板面に対して直角の壁91を有する。その壁91が、起立部(当接面)として機能する。すなわち、フレキシブル基板50は、基板保持部90の壁91と当接されて、その壁91において固定される。この基板保持部90は、樹脂で形成され、インサート成型により、ステータ60に対して一体成形されたものである。これにより、基板保持部90をステータ60に装着する工程を簡素化でき、基板保持部90とステータ60とを強固に固定できる。
【0081】
(第四実施形態)
上記実施形態ではレゾルバに本発明を適用した例について説明したが、回転同期装置としてのシンクロに本発明を適用してもよい。このシンクロは、ステータとロータとステータティースに巻回されたステータ巻線(励磁巻線、出力巻線)とを備えており、その出力巻線から、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力する点で、レゾルバと同じである。また、シンクロは、3相分の出力巻線がステータティースに巻回され、各出力巻線から出力される出力信号が、互いに位相角が120度ずれている点で、レゾルバと異なっている。このように、シンクロは、ステータ巻線の巻線構造以外はレゾルバと同じと考えることができるので、上記実施形態はそのままシンクロにも適用することができる。すなわち、ステータ巻線がプリントされたフレキシブル基板を採用することで、ステータ巻線を簡易にステータティースに装着できる。また、変圧比を大きくでき、検出精度を向上できる。
【0082】
ここで、図13は、シンクロの用途例を示した図である。シンクロは、図13に示すように、主に、複数の機器間でそれらの運転を同期させるために用いられ、一般的に、同じ構造のシンクロ発信機とシンクロ受信機のセットで用いられる。具体的には、図13において、シンクロとしてのシンクロ発信機702は、その回転軸701が、一方の機器(発信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ発信機702は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。また、同様に、シンクロとしてのシンクロ受信機703は、その回転軸704が他方の機器(受信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ受信機703は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。そして、これらシンクロ発信機702とシンクロ受信機703の各相が接続される。これらの動作について、(1)シンクロ発信機702とシンクロ受信機703でロータの位置が異なると、それらの間で電位差が生じ、各相に電流が流れる。(2)その電流によって、シンクロ受信機703のロータが回転する。すなわち、トルクが発生する。(3)シンクロ受信機703のロータ(回転軸704)の回転にともなって、それに接続された受信側の機器が回転される。(4)シンクロ受信機703のロータの位置がシンクロ発信機702のロータの位置と同じになると、各相に電流が流れなくなる。(5)電流が流れなくなると、シンクロ受信機703のロータの回転が停止される。よって、シンクロ発信機702とシンクロ受信機703のロータの位置が同じ、つまり発信側の機器と受信側に機器の運転が同期される。このように、レゾルバと同様に、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力するシンクロ発信機及びシンクロ受信機に対して本発明を適用しても、ステータ巻線を簡易にステータティースに装着でき、なおかつ、変圧比を大きくでき、検出精度を向上できるので、好適である。
【0083】
なお、本発明に係る回転角検出又は回転同期装置は、上記実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変形することができる。例えば、上記実施形態では、ステータティースが72個形成された例について説明したが、これに限定されるものではなく、何個形成されたとしてもよい。ただし、上述したように、ステータティースの個数が多ければ、その分、ステータティースあたりの励磁巻線の巻回数を少なくすることができるので、変圧比を大きくとることができる。また、ステータティースの個数が多ければ、検出信号の精度を向上できる。そのため、例えば16以上の多数のステータティースを形成するのが好ましい。
【0084】
また、上記実施形態では、ステータの内側にロータが設けられたインナーロータ型のレゾルバ、シンクロについて説明したが、ステータの外側にロータが設けられたアウターロータ型のレゾルバ、シンクロにも適用できる。また、上記実施形態では、軸倍角「3」のロータを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸倍角「5」のロータであってもよい。また、ロータは、電磁鋼板等の磁性材料の平板が複数積層された積層板で構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1〜4 レゾルバ(回転角検出装置)
10、100、40、60 ステータ
11、41、61 輪状平板
12、42、62 ステータティース
63 スロット
12 ステータティース
20、200、50 フレキシブル基板
21、51 挿入孔
22、52 ステータ巻線
221 励磁巻線
222 第1相の出力巻線
223 第2相の出力巻線
231 第1のスルーホール
232 第2のスルーホール
24 励磁巻線形成層
25 第1の出力巻線形成層
26 第2の出力巻線形成層
241、251、261 ベースフィルム
302 締結部材
431 第一の起立部
431a 第一の起立部431の当接面
432 第二の起立部
432a 第二の起立部432の当接面
80、90 基板保持部
81 起立部
811 第一の起立部
811a 第一の起立部811の当接面
812 第二の起立部
812a 第二の起立部812の当接面
82 本体部
83 保持部
831 設置面固定部
832 接続部
91 基板保持部90の壁(起立部)
350 ロータ
702 シンクロ発信機(シンクロ、回転同期装置)
703 シンクロ受信機(シンクロ、回転同期装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料の輪状平板から構成され、その輪状平板の周方向に沿って複数のステータティースが形成されてステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記複数のステータティースに対応する位置に複数の挿入孔が形成され、各挿入孔に各ステータティースが挿入されて前記ステータに装着されるフレキシブル基板であって、各挿入孔の周りに渦巻き状の導電体パターンがステータ巻線としてプリントされたフレキシブル基板と、を備えることを特徴とする回転角検出又は回転同期装置。
【請求項2】
前記ステータは、16以上の前記ステータティースが形成され、
前記ステータ巻線は、前記ステータティースを励磁するための励磁信号が入力される励磁巻線と、前記ロータの回転角に応じた信号が出力される出力巻線と、を含み、
前記励磁巻線は、各ステータティースあたりの巻回数が10ターン以下とされたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項3】
前記複数のステータティースは、前記ステータの平板面に対して起立されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項4】
前記複数のステータティースは、前記ステータの内周縁部において、内方に向くように形成され、
前記フレキシブル基板は、帯状の板が前記ステータの内周に沿って湾曲されたときの形状である湾曲形状とされ、前記ステータの内周縁部において、前記ステータの平板面と自身の基板面とが交差するように、前記ステータに装着されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項5】
前記ステータの内周縁部において、前記ステータの平板面に対して起立するように設けられ、前記フレキシブル基板の基板面と当接する当接面を有する起立部を備えることを特徴とする請求項4に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項6】
前記起立部は、前記ステータの両側の平板面のうち、一方の平板面側に起立された第一の起立部と、他方の平板面側に起立された第二の起立部とを有することを特徴とする請求項5に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項7】
前記起立部は、前記ステータの内周縁部の前記複数のステータティースの間において、前記ステータを構成する前記輪状平板が折り曲げられて形成されたものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項8】
前記起立部は、前記ステータを構成する前記輪状平板とは別部材で構成されたことを特徴とする請求項5又は6に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項9】
前記フレキシブル基板は、スルーホールを介して、両面に前記ステータ巻線がプリントされたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転角検出又は回転同期装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−239506(P2011−239506A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106671(P2010−106671)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】