説明

回転電機およびディスク駆動装置

【課題】コギングトルクを低減しつつ逆起電圧定数を大きくする。
【解決手段】環状のステータを有する静止部と、前記ステータの内側または外側に配置されるロータマグネット23を有する回転部とを備え、前記ステータのステータコア351が、環状のコアバックと、前記コアバックから前記ロータマグネット23に向かって延びる複数のティース354とを備え、前記ロータマグネット23の磁極数が14であり、前記複数のティースの本数が12であり、前記複数のティースのそれぞれが、前記コアバックから前記ロータマグネット23に向かって延びるティース本体部355と、前記ティース本体部の前記ロータマグネット側にて前記ティース本体部355よりも周方向両側に広がるティース先端部356と、を備え、前記ステータコアにおいて、前記中心軸を中心として各スロット間隙が成す角度であるスロット間隙角θが、1°以上11°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源および/または発電機として用いられる回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10−164777号公報の図1では、12極の磁極を有する永久磁石12、および、9極の突極14を有するコア11を備えるモータが開示されている。段落0013には、突起14の先端半径aをコア全体半径bより小さくすることにより、最大磁束密度およびコギングトルクが低減できる、と記載されている。
【0003】
特開平8−322167号公報の図1では、磁極数が8の永久磁石12、および、突極数が6の鉄心11を備えるモータが開示されている。段落0016および0017には、永久磁石12の磁極幅cを180度とした電気角で、鉄心11の突極aの先端部のティース幅bを145〜165度とすることにより、コギングトルクを低く抑えることができる、と記載されている。
【0004】
特開平9−163646号公報の図3では、8極の磁極を有するマグネット2、および、6極のスロットを有するコア1を備えるモータが開示されている。段落0010には、コア1のスロット幅を一定とし、突極の幅を変えることにより、スロットピッチが60−α°と60+α°のスロットが交互に配置される点が記載されている。段落0007には、スロット数を2nとし、磁極数を2mとした場合に、スロットのピッチが、全周を2n等分した角度に対して、90/k°の前後±10%の範囲の一定角度だけ小さいスロットと、同じ角度だけ大きいスロットが交互になるようにスロットを配置することにより、コギングトルクを小さくすることができる、と記載されている。kは、nとmとの最小公倍数である。
【0005】
特開2000−209796号公報の図1では、12極の磁極を有する永久磁石、および、9極のティースを有するステータ1を備えるアウターロータ電動機が開示されている。段落0015には、各ティース部間を薄肉部2で連結することにより、コギングトルクを抑えた回転駆動が行える、と記載されている。
【0006】
特開昭62−110468号公報の図1では、14個の永久磁石磁極4を有する永久磁石ロータ6、および、外周に12個の突極磁極3を有するステータ1を備えるブラシレスモータが開示されている。3頁左欄1〜6行には、永久磁石磁極数Pと突極磁極数Mとの関係を、P:M=6n±2:6nとすることにより、巻線係数を向上させつつ、コギングトルクの大きさを低減する、と記載されている。nは2以上の整数である。
【0007】
特開平9−172762号公報の図1では、14個の永久磁石磁極4を有する永久磁石ロータ6、および、外周に12個の突極磁極3を有するステータ1を備えるブラシレスモータが開示されている。段落0020および0021には、永久磁石磁極数Pと突極磁極数Mとの関係を、(2/3)M<P<(4/3)M、かつ、M=3mとすることにより、巻線係数を向上させつつ、コギングトルクの大きさを低減する、と記載されている。mは3以上の奇数であり、MとPは等しくない。
【0008】
特開平10−243621号公報の図1では、14個の永久磁石磁極4を有する永久磁石ロータ6、および、外周に12個の突極磁極3を有するステータ1を備えるブラシレスモータが開示されている。段落0009には、永久磁石磁極数Pと突極磁極数Mとの関係を、(2/3)M<P<(4/3)M、かつ、M=6n、かつ、P<6n−2またはP>6n+2とすることにより、巻線係数を向上させつつ、コギングトルクの大きさを低減する、と記載されている。nは2以上の整数である。
【特許文献1】特開平10−164777号公報
【特許文献2】特開平8−322167号公報
【特許文献3】特開平9−163646号公報
【特許文献4】特開2000−209796号公報
【特許文献5】特開昭62−110468号公報
【特許文献6】特開平9−172762号公報
【特許文献7】特開平10−243621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特開平10−164777号公報、特開平8−322167号公報、特開平9−163646号公報および特開2000−209796号公報では、コギングトルクの低減は図られているが、モータの効率について考慮されていない。例えば、特開平10−164777号公報では、突起14の先端半径aを小さくしているため、逆起電圧定数が小さくなってモータの効率は低下してしまう。また、特開2000−209796号公報では、ティースの先端を連結しているため、ティースに発生する磁束が、隣接するティースへと漏れてしまい、モータの効率は低下する。特開昭62−110468号公報、特開平9−172762号公報および特開平10−243621号公報では、巻線係数を向上させつつ、コギングトルクの大きさを低減するための永久磁石磁極数と突極磁極数との関係を一般化して表しているのみであり、スロット間隙の大きさによる影響を考慮したものではない。したがって、スロット間隙の大きさ次第では、逆起電力定数が低下してしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、コギングトルクを低減しつつ逆起電圧定数を大きくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の側面からは、回転電機は、中心軸を中心とする環状のステータを有する静止部と、前記ステータの内側または外側に配置されるロータマグネットを有する回転部と、を備え、前記ステータのステータコアが、環状のコアバックと、周方向において等ピッチに配置され、前記コアバックから前記ロータマグネットに向かって延びる複数のティースと、を備え、前記ロータマグネットの磁極数が14であり、前記複数のティースの本数が12であり、前記複数のティースのそれぞれが、前記コアバックから前記ロータマグネットに向かって延びるティース本体部と、前記ティース本体部の前記ロータマグネット側にて前記ティース本体部よりも周方向両側に広がるティース先端部と、を備え、前記ステータコアにおいて、前記中心軸を中心として各スロット間隙が成す角度であるスロット間隙角が、1°以上11°以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、コギングトルクを低減しつつ逆起電圧定数を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図2】図2は、モータユニットの縦断面図である。
【図3】図3は、ステータコアおよびロータマグネットを示す平面図である。
【図4】図4は、スロット間隙角と逆起電力定数との関係を示す図である。
【図5】図5は、スロット間隙角とコギングトルクとの関係を示す図である。
【図6】図6は、ティース先端部の先端面の曲率半径と逆起電力定数およびコギングトルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、図中におけるモータの中心軸方向の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。本明細書における上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの上下方向を示すものではない。また、中心軸を中心とする周方向を、単に「周方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を、単に「径方向」と呼ぶ。
【0015】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係るディスク駆動装置50の縦断面図である。ディスク駆動装置50は、モータユニット1と、アクセス部であるヘッド51と、ヘッド移動機構52と、筐体53と、を備える。モータユニット1は、情報を記録するディスク9を回転する。ヘッド51は、ディスク9に対する情報の読み出しおよび書き込みを行う光ピックアップ機構である。ヘッド移動機構52は、ヘッド51をモータユニット1およびディスク9に対して移動する。筐体53は、モータユニット1、ヘッド51およびヘッド移動機構52を内部に収容する。ヘッド51は、光出射部と、受光部と、を有する。光出射部は、ディスク9の下面に向けてレーザー光を出射する。受光部は、ディスク9からの反射光を受光する。筐体53は、上部に蓋部531を有する。蓋部531は、ディスク駆動装置50内へのディスク9の取り付けおよび取り出し時に開閉する。
【0016】
ディスク駆動装置50では、モータユニット1の上部であるチャッキング装置40が、ディスク9の中心孔91に嵌入されることにより、ディスク9が固定される。モータユニット1の駆動に伴い、ディスク9が回転する。ヘッド51は、ヘッド移動機構52により径方向の所定の位置へと移動し、ディスク9に対する情報の読み出しおよび書き込みを行う。
【0017】
図2はモータユニット1の縦断面図である。ディスク回転用のモータユニット1は、回転電機であるモータ10と、チャッキング装置40と、を備える。モータ10は、後述するロータマグネット23がステータ35の径方向外側に配置されるアウターロータ型である。モータ10は、固定組立体である静止部30と、回転組立体である回転部20と、を備える。回転部20は、中心軸J1を中心に回転する。静止部30は、回転部20を回転自在に支持する。チャッキング装置40は、回転部20の上側、すなわち、回転部20の静止部30とは反対側に取り付けられる。チャッキング装置40は、ディスク9を着脱可能に固定する。
【0018】
回転部20は、シャフト21と、ロータホルダ22と、ロータマグネット23と、を備える。シャフト21は、中心軸J1を中心とする略円柱状である。ロータホルダ22は、シャフト21の上部に固定される。ロータホルダ22は、シャフト固定部221と、環状部222と、円筒部223と、を備える。シャフト固定部221は、円筒状であり、シャフト21が嵌め込まれる。環状部222は、シャフト固定部221の下部から径方向外側に広がる。円筒部223は、環状部222の外周縁から下側に延びる。ロータマグネット23は、中心軸J1を中心とする円筒状である。ロータマグネット23は、円筒部223の内周面に接着にて固定される。
【0019】
静止部30は、スリーブ31と、ベアリングブッシュ32と、下側プレート33と、スラストプレート34と、ステータ35と、回路基板36と、取付板37と、を備える。スリーブ31は、略円筒状であり、シャフト21を回転自在に支持する。ベアリングブッシュ32は、スリーブ31が挿入される中空穴を有する。下側プレート33は、ベアリングブッシュ32の中空穴の下側を閉塞する。スラストプレート34は、下側プレート33の内底面に配置される。スラストプレート34は、シャフト21の下端と当接することによりシャフト21を軸方向に支持する。ステータ35は、ベアリングブッシュ32の周囲に配置される。回路基板36は、ステータ35の下側に配置される。取付板37は、ベアリングブッシュ32に固定される。
【0020】
スリーブ31は含油焼結金属にて形成される。スリーブ31の内周面は、潤滑油を介してシャフト21の外周面を支持する軸受面となる。ベアリングブッシュ32は、円筒部321と、ステータ固定部322と、を備える。円筒部321は、スリーブ31を固定する。ステータ固定部322は、円筒部321の下部から径方向外側に広がるとともに、ステータ35が接着にて固定される。ステータ35は、中心軸J1を中心とする環状のステータコア351を有する。ステータコア351は、複数の薄板の磁性鋼板を上下方向に積層して形成される。ロータマグネット23の中心軸J1に平行な方向の高さ、すなわち、上下方向の高さは、好ましくは、ステータコア351の上下方向の高さの1倍以上2倍以下である。ロータマグネット23は、ステータコア351の上下方向の全高に亘って、ステータコア351に対向する。
【0021】
モータ10では、導線が各ティース354の後述するティース本体部355に多層に巻回されることにより、コイル352が形成される。図示省略の外部電源からコイル352に電流を流すことにより、コイル352とロータマグネット23との間にトルクが発生し、回転部20が中心軸J1を中心として回転する。
【0022】
図3は、ステータコア351およびロータマグネット23を示す平面図である。ロータマグネット23の磁極数は、14である。ロータマグネット23では、各磁極の周方向の幅が、全て等しい。すなわち、ロータマグネット23の各磁極の中心軸J1を中心とする周方向の角度が、全て等しい。ステータコア351は、円環状のコアバック353と、複数のティース354と、を備える。複数のティース354の本数は、12である。複数のティース354の形状は、全て等しい。12本のティース354は、周方向において等ピッチに配置される。したがって、中心軸J1を中心として隣接する2本のティース354の成す角度であるティースピッチ角は、30°である。正確には、ティースピッチ角は、2つのティース354のそれぞれの周方向における対称面が成す角度である。
【0023】
複数のティース354は、コアバック353から径方向外方へとロータマグネット23に向かって放射状に延びる。複数のティース354はそれぞれ、ティース本体部355と、ティース先端部356と、を備える。ティース本体部355は、コアバック353からロータマグネット23に向かって径方向外方へと延びる。ティース先端部356は、ティース本体部355の径方向外側、すなわち、ロータマグネット23側にて、ティース本体部355よりも周方向両側に広がる。換言すれば、ティース本体部355は、ティース先端部356の周方向中央から、コアバック353に向かって径方向内方へと延びる。以下の説明では、隣接するティース先端部356の間の隙間を「スロット間隙358」という。より具体的には、スロット間隙358は、隣接するティース先端部356において、一方の先端面357における周方向の端縁359と、他方の先端面357における周方向の端縁359との間の隙間である。
【0024】
ステータコア351では、中心軸J1を中心として各スロット間隙358が成す角度であるスロット間隙角θは、1°以上11°以下である。スロット間隙角θは、好ましくは、4.5°以上8.5°以下である。スロット間隙角θとは、隣接するティース先端部356において、中心軸J1および一方の先端面357の端縁359を含む仮想面と、中心軸J1および他方の先端面357の端縁359を含む仮想面とが、平面視において成す角度である。平面視とは、中心軸J1に平行な方向にステータコア351を見た状態をいう。ステータコア351では、全てのスロット間隙358のスロット間隙角θが等しい。
【0025】
複数のティース354のそれぞれにおいて、ティース本体部355の径方向内側の部位における周方向の幅は、径方向外側の部位における周方向の幅よりも小さい。本実施形態では、ティース本体部355の周方向の幅は、ティース本体部355とティース先端部356との境界である径方向外端から、ティース本体部355とコアバック353との境界である径方向内端に向かうに従って漸次減少する。したがって、ティース本体部355の径方向内端における周方向の幅W1は、径方向外端における周方向の幅W2よりも当然に小さい。
【0026】
また、複数のティース354のそれぞれにおいて、ティース先端部356の先端面357は、略部分円筒面状である。先端面357の曲率半径は、好ましくは、ステータコア351の最大半径の80%以上100%以下である。ステータコア351の最大半径は、平面視において、先端面357の周方向の中心と中心軸J1とを結んだ直線の長さに等しい。換言すれば、ステータコア351の最大半径は、ステータコア351の中心軸J1から最も離れた部位と中心軸J1との間の径方向の距離である。本実施形態では、先端面357の曲率半径は、ステータコア351の最大半径と等しい。
【0027】
ところで、ディスク駆動装置では、ロータマグネットの磁極数とティースの本数の比が4:3であるモータが一般的に使用される。以下の説明では、このようなモータのうち、ロータマグネットの磁極数、および、ティースの本数がそれぞれ、16および12であり、その他の構造および大きさが、本実施形態に係るモータ10と同様であるモータを「比較例のモータ」という。
【0028】
図4は、本実施形態に係るモータ10、および、比較例のモータについて、スロット間隙角と逆起電力定数との関係を示す図である。図5は、モータ10および比較例のモータについて、スロット間隙角とコギングトルクとの関係を示す図である。図4および図5中の実線はモータ10を示し、破線は比較例のモータを示す。図4および図5では、スロット間隙角を0.5°ずつ変更しつつシミュレーションを行った結果を示す。
【0029】
図4に示すように、スロット間隙角が0°以上15°以下の範囲において、モータ10の逆起電力定数は、いずれのスロット間隙角においても、比較例のモータの逆起電力定数よりも大きい。モータ10の逆起電力定数は、スロット間隙角が8.5°の場合に最大となる。モータ10の逆起電力定数が、当該逆起電力定数の最大値の99%以上となるスロット間隙角の範囲は、4.5°以上11°以下である。また、モータ10の逆起電力定数が、比較例のモータの逆起電力定数の最大値以上となるスロット間隙角の範囲は、1°以上13.5°以下である。
【0030】
図5に示すように、スロット間隙角が0°以上15°以下の範囲において、モータ10のコギングトルクは、いずれのスロット間隙角においても、比較例のモータのコギングトルクよりも小さい。モータ10のコギングトルクは、スロット間隙角が大きくなるに従って増減を繰り返す。モータ10のコギングトルクは、スロット間隙角が3.5°、9°および13.5°のときにピークとなり、スロット間隙角が6°および11°のときにボトムとなる。
【0031】
以上に説明したように、モータ10では、スロット間隙角を4.5°以上11°以下とすることにより、逆起電力定数を、その最大値の99%以上とすることができる。また、スロット間隙角を1°以上13.5°以下とすることにより、逆起電力定数を、比較例のモータの逆起電力定数の最大値以上とすることができる。ただし、スロット間隙角が11°よりも大きくなると、図4に示すように、スロット間隙角の増加に対する逆起電力定数の減少の割合が大きくなる。さらに、スロット間隙角が11°以上13.5°以下の範囲では、図5に示すように、スロット間隙角の増加に従ってコギングトルクは漸次増大する。したがって、スロット間隙角は、1°以上11°以下であることが好ましい。これにより、比較例のモータに比べて、モータ10のコギングトルクを低減しつつ逆起電力定数を大きくすることができる。
【0032】
スロット間隙角は、より好ましくは、4.5°以上11°以下である。これにより、モータ10の逆起電力定数を、その最大値の99%以上とすることができる。スロット間隙角は、さらに好ましくは、4.5°以上8.5°以下である。これにより、モータ10の逆起電力定数を、その最大値の99%以上とすることができるとともに、コギングトルクのピークを避けることができる。
【0033】
ところで、比較例のモータのように、ロータマグネットの磁極数とティースの本数の比が4:3であるモータでは、コギングトルクを低減するために、ティース先端部の先端面の曲率半径を、ステータコアの最大半径よりも小さくすることが行われる。例えば、先端面の曲率半径が、ステータコアの最大半径の約60%とされる。しかしながら、このような構造とすることにより、逆起電力定数も減少してしまう。
【0034】
これに対し、本実施形態に係るモータ10では、図5に示すように、コギングトルクが比較例のモータに比べて大幅に小さいため、逆起電力定数を大きく減少させてまで、コギングトルクを低減する必要はない。図6は、モータ10について、ティース先端部356の先端面357の曲率半径と逆起電力定数およびコギングトルクとの関係を示す図である。図6の横軸は、ステータコア351の最大半径に対する先端面357の曲率半径の割合を示す。図6では、逆起電力定数を実線にて示し、コギングトルクを破線にて示す。モータ10では、ティース先端部356の先端面357の曲率半径を、ステータコア351の最大半径の80%以上100%以下とすることにより、逆起電力定数をその最大値の99%以上に維持することができる。
【0035】
モータ10では、ティース本体部355の径方向内端における周方向の幅W1が、径方向外端における周方向の幅W2よりも小さい。これにより、導線の占積空間を維持しつつモータ10の逆起電力定数を増大させることができる。また、ロータマグネット23が円筒状であるため、中心軸J1を中心とする全周に亘って磁束が発生する。その結果、モータ10の逆起電力定数をより増大させることができる。
【0036】
ロータマグネット23の上下方向の高さは、ステータコア351の上下方向の高さの1倍以上であり、ステータコア351の全高に亘って対向する。これにより、ロータマグネット23の磁束が、ティース354を通過する磁束以上となる。その結果、モータ10の逆起電力定数およびコギングトルクが増大する。モータ10では、上述のように、コギングトルクが非常に小さいため、ロータマグネット23の上下方向の高さを、ステータコア351の上下方向の高さの1倍以上とすることにより、増加後のコギングトルクを許容範囲内に収めつつ、逆起電力定数を増大させることができる。ロータマグネット23の上下方向の高さは、過剰に大きくしても逆起電力定数の増大にはほとんど寄与しない上にモータ10の大型化を招く。したがって、ロータマグネット23の上下方向の高さは、ステータコア351の上下方向の高さの2倍以下であることが好ましい。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0038】
例えば、ステータコア351では、複数のスロット間隙358のスロット間隙角は、必ずしも全て等しい必要はない。この場合であっても、全てのスロット間隙角がそれぞれ、1°以上11°以下であることにより、比較例のモータに比べて、モータ10のコギングトルクを低減しつつ逆起電力定数を大きくすることができる。各スロット間隙角は、上述のように、より好ましくは、4.5°以上11°以下であり、さらに好ましくは、4.5°以上8.5°以下である。また、ステータコア351では、ティース354の先端面357の形状や、ティース本体部355の形状は、上述の形状には限定されず、適宜変更されてよい。
【0039】
ロータマグネット23は、必ずしも、円筒状には限定されず、中心軸J1を中心とする円周上に配置された複数の磁石を備えるものであってもよい。モータ10は、ロータマグネットがステータの径方向内側に配置されるインナロータ型であってもよい。ステータコア351は、周方向に複数の部品を並べて構成される、いわゆる分割コアでもよい。
【0040】
モータ10は、光ディスク以外の様々な種類のディスクを駆動する装置に採用されてよい。さらに、ディスク駆動装置50は、ディスク9に対する情報の読み出しおよび書き込みの一方または両方、すなわち、読み出しおよび/または書き込みを行うものであればよい。ディスク駆動装置50は、蓋が開閉するタイプ以外のものであってもよく、例えば、ディスクが載置されるトレイが筐体から出し入れ可能である、いわゆるトレイタイプであってもよい。また、モータ10は、発電機として利用されてもよい。
【0041】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、様々な種類のディスクに対して、情報の読み出しおよび/または書き込みを行うディスク駆動装置に利用することができる。また、本発明は、様々な回転電機に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
9 ディスク
10 モータ
20 回転部
23 ロータマグネット
30 静止部
35 ステータ
50 ディスク駆動装置
51 ヘッド
53 筐体
351 ステータコア
353 コアバック
354 ティース
355 ティース本体部
356 ティース先端部
357 先端面
J1 中心軸
θ スロット間隙角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心とする環状のステータを有する静止部と、
前記ステータの内側または外側に配置されるロータマグネットを有する回転部と、
を備え、
前記ステータのステータコアが、
環状のコアバックと、
周方向において等ピッチに配置され、前記コアバックから前記ロータマグネットに向かって延びる複数のティースと、
を備え、
前記ロータマグネットの磁極数が14であり、
前記複数のティースの本数が12であり、
前記複数のティースのそれぞれが、
前記コアバックから前記ロータマグネットに向かって延びるティース本体部と、
前記ティース本体部の前記ロータマグネット側にて前記ティース本体部よりも周方向両側に広がるティース先端部と、
を備え、
前記ステータコアにおいて、前記中心軸を中心として各スロット間隙が成す角度であるスロット間隙角が、1°以上11°以下である、回転電機。
【請求項2】
前記スロット間隙角が、4.5°以上8.5°以下である、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータマグネットが、前記ステータの径方向外側に配置される、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記複数のティースのそれぞれにおいて、前記ティース先端部の先端面が略部分円筒面状であり、前記先端面の曲率半径が、前記ステータコアの最大半径の80%以上100%以下である、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記複数のティースのそれぞれにおいて、前記ティース本体部の径方向内側の部位の周方向の幅が、前記ティース本体部の径方向外側の部位の周方向の幅よりも小さい、請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ロータマグネットが、前記中心軸を中心とする円筒状である、請求項1ないし5のいずれかに記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータマグネットの前記中心軸に平行な方向の高さが、前記ステータコアの前記中心軸に平行な方向の高さの1倍以上2倍以下である、請求項1ないし6のいずれかに記載の回転電機。
【請求項8】
ディスクを回転させる請求項1ないし7のいずれかに記載の回転電機と、
前記ディスクに対して情報の読み出しおよび/または書き込みを行うアクセス部と、
前記回転電機および前記アクセス部を収容する筐体と、
を備える、ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143107(P2012−143107A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−764(P2011−764)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】