説明

回転電機の冷却式ケーシング

【課題】
回転電機の全体形状を大きくすることなく、冷却式ケーシングとステータコアのコイルエンドとが干渉しないようにすることである。
【解決手段】
内ケーシング体C2 の一端部に、外ケーシング体C1 の外径とほぼ同一の外径を有する一体ケーシング部18を設け、前記内ケーシング体C2 における一体ケーシング部18を除く本体部17のみを外ケーシング体C1 の本体部13に挿入嵌合させることにより、内外の各ケーシング体C1,C2 を合体させて冷却式ケーシングCを形成し、カバー体1を取付けるための雌ねじ29の加工領域(一体ケーシング部18の肉厚t)を確保したまま、冷却式ケーシングCの内周面23からステータコア3のコイルエンド3aまでの距離eを大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナモ試験装置等に使用される回転電機の冷却式ケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイナモ試験装置は、回転電機を疑似的な負荷装置として、これに連結される自動車の変速機等の性能を試験するための装置である。この装置で使用される回転電機には、ステータコアの発熱を抑止するために、ケーシングが二重構造になっていて、当該二重構造の部分に形成された空間部に冷却水、冷却空気等が流されるもの(冷却式ケーシング)が存している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
従来の冷却式ケーシングC’について説明する。図6に示されるように、冷却式ケーシングC’は、別々に製作された略円筒状の内外の各ケーシング体C1',C2'が、合体されることによって形成される。即ち、内周面が段付き形状に加工された外ケーシング体C1'に、略ストレート円筒状の内ケーシング体C2'が圧入嵌合(焼き嵌め)される。前記内ケーシング体C2'の外周面には、冷却水を通すための溝部51が螺旋状に設けられていて、図4の(イ)に示されるように、外ケーシング体C1'の内周面と溝部51とにより、冷却水路Wが形成される。そして、水密を図るために、内外の各ケーシング体C1',C2'の接合面が溶接される。
【0004】
内外の各ケーシング体C1',C2'が合体されて冷却式ケーシングC’が形成された後、該冷却式ケーシングC’の内周面に仕上げ加工が施され、ステータコア3が取付けられる。また、冷却式ケーシングC’の両端面部には、各取付ボルト52によってカバー体53,54が取付けられるため、合体後における冷却式ケーシングC’の両端面部に各取付ボルト52を螺合させる雌ねじ55が加工される。
【0005】
ここで、図4の(イ)に示されるように、冷却式ケーシングC’におけるP側(後述)の端面部では、内外の各ケーシング体C1',C2'が二重構造になっているため、その肉厚t’が大きくなってしまう。しかも、内ケーシング体C2'に雌ねじ55を加工できるだけの肉厚t’を確保しなければならないため、冷却式ケーシングC’の内径d'(P側のカバー体53を装着させるためのインロー径)を小さくせざるを得ない。また、雌ねじ55を加工する際の下穴が、冷却式ケーシングC’の内面に貫通することを防止するため、仕上げ加工後の内周面56の形状を傾斜面形状にせざるを得ない。すると、冷却式ケーシングC’の内周面56とステータコア3のコイルエンド3aとの距離e’が短くなり、ステータコア3を取付ける際に両者が干渉するおそれが生じる。これを防止するため、冷却式ケーシングC’の外径Dを大きくすると、回転電機全体が大型化してしまう。回転電機が大型化することにより、回転電機を構成する各部材の材料費が高くなると共に、該回転電機の設置面積が大きくなってしまう。
【特許文献1】特開2003−169441号公報
【特許文献2】特開2005−124266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した不具合に鑑み、回転電機の全体形状を大きくすることなく、該回転電機の冷却式ケーシングとステータコアのコイルエンドとが干渉しないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、ケーシング本体となる外ケーシング体と、該外ケーシング体の内側に挿入嵌合される内ケーシング体とから成り、内外で二重となった前記各ケーシング体の間には、当該二重ケーシング部に配設されるステータコアを冷却するための冷却媒体を通過させる円筒空間状をした冷却媒体通路が形成され、自身の両端面にボルトによりカバー体が取付けられる回転電機の冷却式ケーシングであって、前記外ケーシング体は、必要長よりも設定長だけ短く形成され、前記内ケーシング体の軸方向に沿って反挿入側の端部には、前記外ケーシング体と同一の外径と前記設定長と同一の長さを有していて、内端面が前記外ケーシング体の端面に当接して、ケーシング全体の前記必要長を確保するための段差状の一体ケーシング部が形成され、前記一体ケーシング部の外端面に前記ボルトと螺合する雌ねじが形成されていることを特徴としている。
【0008】
内ケーシング体の一体ケーシング部の肉厚は、内ケーシング体の肉厚(外ケーシング体に嵌合されている部分の肉厚)と外ケーシング体の肉厚との和となって大きくなるため、ケーシングの軸心から最も離れている前記一体ケーシング部の外端面に、カバー体固定用のボルトと螺合する雌ねじの加工が可能となる。このように、内ケーシング体の一体ケーシング部の開口側の内径は、内ケーシング体の一般部(一体ケーシング部を除く、二重ケーシング部を構成する部分)の内径と同一か、或いは前記一体ケーシング部の肉厚に前記雌ねじを形成しても余裕がある場合には、更に機械加工してカバー体の位置決め突部を嵌合させて位置決め穴を形成する場合には、一体ケーシング部の開口側の内径は、前記一般部の内径よりも大きくなる。このため、ケーシングの組み立て後に、そのいずれか一方から挿入されるステータコア(鉄心)に挿入状態で巻かれて、前記ステータコアの端面から突出したコイルエンドと、前記一体ケーシング部の内周面との間には、大きな隙間が形成されて、コイルエンドと一体ケーシング部とが干渉しなくなると共に、大きな隙間のために、ステータコアの両端部であるコイルエンドの部分の放熱性も高められる。また、前記雌ねじを形成する内ケーシング体の外側の端面である一体ケーシング部の端面は、従来と同様にして機械加工してケーシングの全長を所定公差内に納めているが、組み立てられたケーシングの内ケーシング体の反挿入側の端面の部分は、従来のケーシングのように二重構造ではなくて一体構造であるために、端面の機械加工も容易となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明を前提として、前記内ケーシング体の一体ケーシング部の内側に接続して、外ケーシング体の内周面に嵌合される環状突条が段差状となって形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明では、外ケーシング体の端部においては、その内周面に内ケーシング体の環状突条が嵌合していると共に、該環状突条と接続する前記一体ケーシング部の内端面が外ケーシング体の端面に当接した状態で、外ケーシング体の一端部に内ケーシング体の一体ケーシング部が軸方向に接続されているので、外ケーシング体と内ケーシング体の一体ケーシング部との一体性が高められる。この結果、外ケーシング体の長手方向の一端部に内ケーシング体の一体ケーシング部を接続して、ケーシングとしての必要長を確保している構造であるにもかかわらず、前記接続部の剛性が高まり、回転電機の使用時(回転時)における微振動発生の原因となるようなことはない。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ケーシング本体となる外ケーシング体と、該外ケーシング体の内側に挿入嵌合される内ケーシング体とから成り、内外で二重となった前記各ケーシング体の間には、当該二重ケーシング部に配設されるステータコアを冷却するための冷却媒体を通過させる円筒空間状をした冷却媒体通路が形成され、自身の両端面にボルトによりカバー体が取付けられる回転電機の冷却式ケーシングであって、前記外ケーシング体は、必要長よりも設定長だけ短く形成され、前記内ケーシング体の軸方向に沿って反挿入側の端部には、前記外ケーシング体と同一の外径と前記設定長と同一の長さを有していて、内端面が前記外ケーシング体の端面に当接して、ケーシング全体の前記必要長を確保するための段差状の一体ケーシング部が形成され、前記一体ケーシング部の外端面に前記ボルトと螺合する雌ねじが形成されていることを特徴としている。このため、内ケーシング体の一体ケーシング部の外端面に雌ねじの加工領域を確保したまま、前記一体ケーシング部の内周面とステータコアのコイルエンドとの隙間を大きくすることができ、両者が干渉するおそれが少なくなると共に、放熱性も良好となる。更に、前記距離を小さくすることにより、冷却式ケーシングの外径を小さくすることができ、回転電機の全体形状を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明の実施例の回転電機Aの全体斜視図、図2は同じく正面断面図、図3は冷却式ケーシングCを構成する外ケーシング体C1 、内ケーシング体C2 及び各カバー体1,2を分離させた状態を示す図である。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図3に示されるように、本実施例の回転電機Aは、別々に製作され、ケーシング本体となる外ケーシング体C1 と内ケーシング体C2 が合体して形成された冷却式ケーシングCと、該冷却式ケーシングCの両側の開口端面部を塞ぐための各カバー体1,2より成る。そして、前記冷却式ケーシングCの内側にステータコア3が取付けられていると共に、ロータコア4が回転自在に装着されている。ロータコア4に設けられたロータシャフト4aは、カバー体1から突出されている。ここで、図2の図面視における冷却式ケーシングCの右側(P側)を符号Pで示し、同じく左側(S側)を符号Sで示す。
【0014】
最初に、外ケーシング体C1 について説明する。図1ないし図3に示されるように、略円筒状に形成された外ケーシング体C1 は、方形のベース板5に支持されている。即ち、外ケーシング体C1 は、ベース板5における長手方向(外ケーシング体C1 の軸方向)の端部に取付けられた各支持板部6に載置された状態で支持されている。各支持板部6には、ベース板5の幅方向に沿って冷却水供給穴6aが貫通状態で設けられている。また、外ケーシング体C1 において各支持板部6と対応する部分には、冷却水供給穴6aと連通する連通穴7が設けられている。いずれか一方側の冷却水供給穴6aから供給された冷却水は、連通穴7を介して冷却式ケーシングCに設けられた冷却水路W(後述)に供給され、該冷却水路Wを流れて他方側の冷却水供給穴6aから排出される。その状態を、図1において矢印8で示す。なお、図2において、9は、各支持板部6の間に取付けられた補強板である。
【0015】
図3に示されるように、外ケーシング体C1 の内周面は、段付き形状を呈していて、外ケーシング体C1 のP側の端面部11からS側の端面部12にかけての大部分に亘って形成された本体部13と、それ以外の部分に形成された一体ケーシング部14とから成る。前記外ケーシング体C1 の本体部13には、後述する内ケーシング体C2 の本体部17が挿入嵌合され、冷却式ケーシングCの二重ケーシング部が形成される。前記一体ケーシング部14における軸方向のほぼ中央部には、全周に亘ってリング状溝部15が設けられていると共に、該リング状溝部15における上部には、ケーブル類を外部に挿通させるためのケーブル通し穴15aが設けられている。ここで、外ケーシング体C1 の全長をL1 、同じく本体部13の長さをL2 とする。なお、図1において、16は、ケーブル通し穴15aに取付けられた端子箱である。
【0016】
次に、内ケーシング体C2 について説明する。図2及び図3に示されるように、本実施例の内ケーシング体C2 は略円筒状であり、外ケーシング体C1 の本体部13に挿入嵌合される本体部17と、該本体部17の一端部(合体後におけるP側)に形成された一体ケーシング部18と、前記本体部17と前記一体ケーシング部18との接続部に設けられた環状突条19とから成る。該一体ケーシング部18の外径は、外ケーシング体C1 の外径とほぼ同一であり、前記環状突条19の外径は、前記本体部17の外径と同一である。そして、前記内ケーシング体C2 の本体部17の外周面には、冷却水を通すための螺旋溝部21が螺旋状に設けられている。ここで、内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18の長さをL3 とする。前述したように、内ケーシング体C2 の本体部17は、外ケーシング体C1 の本体部13に挿入嵌合される。このため、内ケーシング体C2 の本体部17の長さは、外ケーシング体C1 の本体部13の長さと同じくL2 である。
【0017】
前記内ケーシング体C2 は、外ケーシング体C1 に圧入嵌合(焼き嵌め)される。図2に示されるように、内ケーシング体C2 における本体部17の端面部17aは、外ケーシング体C1 における本体部13と一体ケーシング部14との段付部13aに当接される。また、内ケーシング体C2 における本体部17と一体ケーシング部18との段付部18aは、外ケーシング体C1 におけるP側の端面部11と略当接される。これにより、環状突条19を含む内ケーシング体C2 の本体部17の全体が、外ケーシング体C1 の本体部13に挿入嵌合され、外ケーシング体C1 の本体部13と内ケーシング体C2 の本体部17の螺旋溝部21との間が閉塞され、冷却水路Wが形成される。そして、内外の各ケーシング体C1,C2 の嵌合状態において、各段付部13a,18a が溶接され、前記冷却水路Wの水密が図られて、二重構造の冷却式ケーシングCが形成される。冷却式ケーシングCの全長をL0 とすると、全長L0 は、外ケーシング体C1 の全長L1 と内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18の長さL3 との和となる(L0 =L1 +L3)。そして、図2に示されるように、各支持板部6に設けられた冷却水供給穴6aは、各連通穴7を介して、冷却水路Wにおける軸方向の端部と接続される。いずれかの冷却水供給穴6aから供給された冷却水は、連通穴7を通って螺旋溝部21に浸入し、内外の各ケーシング体C1,C2 の間に螺旋状に形成された冷却水路Wを周回して流れる。これにより、ステータコア3の発熱が抑止される。
【0018】
続いて、溶接による歪を除去するため、冷却式ケーシングCにおける内周面22,23と、冷却式ケーシングCのS側及びP側の各端面部12,24が加工される。ここで、「内周面22」は、冷却式ケーシングCにおける二重ケーシング部(内外の各ケーシング体C1,C2 の本体部13,17の部分)の内周面であり、「内周面23」は、内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18の部分の内周面である。前記内周面22,23との間でP側の近傍には、環状にして突条25が形成されている。冷却式ケーシングCのS側から挿入されたステータコア3は、内周面22と突条25との間の段付部に当接して位置決めされる。また、「冷却式ケーシングCのS側の端面部12」とは、外ケーシング体C1 のS側の端面部12を意味し、「冷却式ケーシングCのP側の端面部24」とは、内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18の端面部24を意味する。
【0019】
図2及び図3に示されるように、冷却式ケーシングCのP側及びS側の各端面部12,24に、各カバー体1,2が取付けられる。各カバー体1,2の構成はほぼ同一であるため、本明細書では、冷却式ケーシングCのP側の端面部24に取付けられるカバー体1についてのみ説明する。本実施例のカバー体1は、内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18とほぼ同一外径のカバー本体部1aと、該カバー本体部1aと同心に設けられ、前記冷却式ケーシングCにインロー状態で嵌め込まれる嵌合部1bとから成る。カバー本体部1aと嵌合部1bの軸心の部分には、ロータコア4のロータシャフト4aを通すための通し穴1cが設けられていて、該通し穴1cの部分に軸受26が装着されている。前記カバー体1は、複数本(本実施例の場合、8本)の取付ボルト27によって取付けられる。このため、カバー体1のカバー本体部1aの周縁部には、周方向に一定角度をおいて各取付ボルト27のねじ挿通穴28が設けられている。そして、冷却式ケーシングCのP側の端面部24で、各ねじ挿通穴28と対応する位置には、各取付ボルト27を螺合するための雌ねじ29が加工される。
【0020】
前記冷却式ケーシングCにステータコア3とロータコア4が取付けられ、冷却式ケーシングCのP側及びS側の各端面部12,24にカバー体1,2が取付けられる。そして、各カバー体1,2の周縁部に設けられている複数個のねじ挿通穴28に挿通された各取付ボルト27が、冷却式ケーシングCの各端面部12,24に設けられた雌ねじ29に螺合される。
【0021】
図4の(イ)に示されるように、従来の冷却式ケーシングC’の場合、冷却式ケーシングC’のP側の端面部は、内外の各ケーシング体C1',C2'が二重構造になっている。このため、冷却式ケーシングC’におけるP側の端面部に雌ねじ55を設ける場合、内ケーシング体C2'の端面部の肉厚を大きくして、該雌ねじ55の加工領域を確保しなければならない。この結果、カバー体53(図6参照)を嵌め込むための内径d'(インロー径)が小さくなってしまうと共に、冷却式ケーシングC’の内周面56からコイルエンド3aまでの距離e’が短くなってしまい、コイルエンド3aと干渉するおそれがある。
【0022】
しかし、本実施例の冷却式ケーシングCの場合、図4の(ロ)に示されるように、冷却式ケーシングCにおけるP側の端面部24は、内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18のみで形成されている。このため、雌ねじ29を加工するために端面部24に確保すべき領域(一体ケーシング部18の肉厚t)は小さくて済む。換言すれば、カバー体1を嵌め込むための内径d(インロー径)を大きくすることができる。冷却式ケーシングC,C’の外径Dが同一であるとすると、冷却式ケーシングCの内周面23からコイルエンド3aまでの距離eが長くなり、コイルエンド3aと干渉するおそれが少なくなる。そして、前記コイルエンド3aの周囲の隙間が大きくなり、放熱性も良好になる。
【0023】
そして、従来の冷却式ケーシングC’の場合、内外の各ケーシング体C1',C2'の一方側(P側)の接合部分は、冷却式ケーシングC’の端面部に設けられる。このため、前記端面部の仕上げ加工代を大きくとらなければならない。しかし、本実施例の冷却式ケーシングCの場合、内外の各ケーシング体C1,C2 の一方側(P側)の接合部分は、冷却式ケーシングCの外周面に設けられる。このため、前記接合部分の仕上げ加工が不要になると共に、端面部24の加工代も少なくできる。また、内ケーシング体C2 における一体ケーシング部18の肉厚tを薄くできるため、内ケーシング体C2 の材料費、加工費が削減できる。
【0024】
また、従来の冷却式ケーシングC’の場合、一方側(P側)の端面部の内周面56が傾斜面となっているため、当該部分を加工する際には、冷却式ケーシングC’の他方側(S側)から工具を挿入させることが必要であった。しかし、本実施例の冷却式ケーシングCの場合、一方側(P側)の端面部の内周面23をストレート形状にすることができるため、当該部分を加工する際に、冷却式ケーシングCの一方側(P側)からそのまま工具を挿入させることができ、加工が極めて容易である。
【0025】
更に、図5に示されるように、一体ケーシング部18の肉厚tを同じにしたまま、冷却式ケーシングCの内周面23からコイルエンド3aまでの距離を最小の距離e1 とした場合、距離eと距離e1 の差分(e−e1)だけ、冷却式ケーシングCの外径D1 及び内径d1 が小さくなる。これは、冷却式ケーシングCの内周面23とコイルエンド3aとの干渉を回避したまま、冷却式ケーシングCの全体形状を小さくできることを意味している。
【0026】
本実施例の回転電機Aを構成する内ケーシング体C2 には、一体ケーシング部18の内側に接続して、外ケーシング体C1 の本体部13の内周面22に嵌合される環状突条19が設けられている。即ち、外ケーシング体C1 の端面部11においては、その内周面22に内ケーシング体C2 の環状突条19が嵌合していると共に、該環状突条19と接続する内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18の内端面23が、外ケーシング体C1 の端面部11に当接した状態で、外ケーシング体C1 の一端部に内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18が軸方向に接続されているので、内外の各ケーシング体C1,C2 の一体性が高められる。この結果、外ケーシング体C1 の長手方向の一端部に内ケーシング体C2 の一体ケーシング部18を接続して、冷却式ケーシングCとしての必要長L0 を確保している構造であるにもかかわらず、前記接続部の剛性が高まり、回転電機Aの使用時(回転時)における微振動発生の原因となるようなことはない。
【0027】
本実施例では、冷却式ケーシングCにおける内側で、P側の端面部24の近傍に、ステータコア3の位置決めをするための突条25が設けられていて、冷却式ケーシングCのS側からステータコア3を挿入する形態である。しかし、本実施例の冷却式ケーシングCでは、P側にも大きな内径dの開口を設けることができるため、前記突条25を、冷却式ケーシングCにおけるS側の端面部12の近傍に設けて、冷却式ケーシングCのP側からステータコア3を挿入する形態であっても構わない。
【0028】
本明細書では、ダイナモ試験装置の回転電機Aについて説明した。しかし、本発明に係る冷却式ケーシングの取付構造は、回転電機以外であって、内部に気密性又は水密性のある空間部を有する二重構造の冷却式ケーシングから構成される装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例の回転電機Aの全体斜視図である。
【図2】同じく正面断面図である。
【図3】冷却式ケーシングCを構成する外ケーシング体C1 、内ケーシング体C2 及び各カバー体1,2を分離させた状態を示す図である。
【図4】(イ)は従来の冷却式ケーシングC’におけるP側の端面部の正面断面図であり、(ロ)は本実施例の冷却式ケーシングCにおけるP側の端面部24の正面断面図である。
【図5】別の実施例の冷却式ケーシングCにおけるP側の端面部24の正面断面図である。
【図6】従来の冷却式ケーシングC’を構成する外ケーシング体C1'、内ケーシング体C2'及び各カバー体53,54を分離させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
A:回転電機
C:冷却式ケーシング
1 :外ケーシング体
2 :内ケーシング体
D:外径
0 :必要長
2 :設定長
t:肉厚(加工領域)
W:冷却水路(冷却媒体通路)
1,2:カバー体
3:ステータコア
4:ロータコア
11,12:端面部(外ケーシング体の端面)
24:端面部(一体ケーシング部の外端面)
13:本体部(外ケーシング体の内周面)
18:一体ケーシング部
18a:段付部(内端面)
19:環状突条
21:螺旋溝部
22:内周面(外ケーシング体の内側)
23:内周面(内ケーシング体の一体ケーシング部の内側)
27:取付ボルト(ボルト)
29:雌ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング本体となる外ケーシング体と、該外ケーシング体の内側に挿入嵌合される内ケーシング体とから成り、
内外で二重となった前記各ケーシング体の間には、当該二重ケーシング部に配設されるステータコアを冷却するための冷却媒体を通過させる円筒空間状をした冷却媒体通路が形成され、自身の両端面にボルトによりカバー体が取付けられる回転電機の冷却式ケーシングであって、
前記外ケーシング体は、必要長よりも設定長だけ短く形成され、
前記内ケーシング体の軸方向に沿って反挿入側の端部には、前記外ケーシング体と同一の外径と前記設定長と同一の長さを有していて、内端面が前記外ケーシング体の端面に当接して、ケーシング全体の前記必要長を確保するための段差状の一体ケーシング部が形成され、
前記一体ケーシング部の外端面に前記ボルトと螺合する雌ねじが形成されていることを特徴とする回転電機の冷却式ケーシング。
【請求項2】
前記内ケーシング体の一体ケーシング部の内側に接続して、外ケーシング体の内周面に嵌合される環状突条が段差状となって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の冷却式ケーシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−20351(P2007−20351A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201086(P2005−201086)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】