説明

固体撮像素子

【課題】光飛行時間計測法に用いる電荷振り分け方式の固体撮像素子において、対象物からの背景光由来の反射光による背景光由来の雑音を排除し、固体撮像素子において予め設定された所定の光源に由来する対象物からの反射光を信号成分として有効に抽出して、高感度、低雑音化を図る。
【解決手段】複数の電荷蓄積部を備え、飛来する光で生じた光電子を該飛来のタイミングで弁別して上記複数の電荷蓄積部に振り分け、該飛来する光のタイミングを計測する固体撮像素子において、複数の電荷蓄積部とそれぞれ導通可能な複数の容量と、上記複数の電荷蓄積部と上記複数の容量との導通状態を制御する制御部とを有し、上記制御部の制御によって上記複数の電荷蓄積部と上記複数の容量とを選択的に導通させることにより、上記複数の電荷蓄積部に蓄積された電荷の差分成分を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に関し、さらに詳細には、対象物へ照射した光の反射光を受光することにより光飛行時間計測法(TOF:Time of flight)を用いて光飛行時間を測定し、当該光飛行時間に基づいて当該対象物までの距離を測定する光飛行時間型距離センサや当該対象物の3次元画像を得るイメージセンサなどの各画素として利用することができる固体撮像素子の改良に関し、特に、未知の背景光照明下で使用することのできる電荷振り分け方式を採用した固体撮像素子における振り分けられた電荷の差分抽出の手法を改良した固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光飛行時間計測法を用いた従来の光飛行時間型センサなどとして用いることのできる固体撮像素子としては、例えば、特許文献1として提示する特開2001−281336号公報に開示された距離画像撮像装置、特許文献2として提示する特開2003−51988号公報に開示された固体撮像素子、特許文献3として提示する特開2004−294420号公報に開示された距離画像センサあるいは特許文献4として提示する特開2005−235893号公報に開示された光飛行時間型距離センサなどが知られている。
【0003】

ここで、図1には、光飛行時間計測法の原理を説明するための説明図が示されている。この図1において、符号10はLED光源であり、符号12はLED光源10の発光に伴う光を照射される対象物であり、符号14は対象物12からの反射光を受光する固体撮像素子を1画素として2次元平面上にアレイ状に配置してなるセンサである。
【0004】
光飛行時間計測法とは、LED光源10により信号光として高周波、例えば、10MHzで変調した光(高周波変調光)L1を対象物12に照射して、センサ14の固体撮像素子によりLED光源10に由来する反射光(高周波変調光由来の反射光)L2を信号として捉え、高周波変調光L1と高周波変調光由来の反射光L2との位相のずれから、対象物12とセンサ14およびLED光源10との距離を計測するというものである。
【0005】
こうした光飛行時間計測法においては、仮にセンサ14の固体撮像素子が受光する光がLED光源10に由来する反射光たる高周波変調光由来の反射光L2のみであるならば、計測は比較的容易である。
【0006】
しかしながら、実際の計測現場においては、太陽、街路灯あるいは室内照明などのような様々な要因の未知の背景光L3が存在するため、背景光L3に由来する反射光(背景光由来の反射光)L4が雑音となってセンサ14の固体撮像素子に受光されることになる。
【0007】
図2(a)(b)は、LED光源10の発光強度(図2(a))と固体撮像素子の受光強度(図2(b))とを示すとともに、それぞれの発光タイミングと受光タイミングとを示すタイミングチャートであるが、高周波変調光由来の反射光L2は、図2(b)に示すように、背景光由来の反射光L4に比べて受光強度が極端に小さい場合がある。
【0008】
ここで、高周波変調光L1と高周波変調光由来の反射光L2との位相のずれとしてあらわれる光飛行時間FTは、約15mの距離において約100nsecと僅かであるため、光飛行時間計測法においては、十分な信号雑音比が無ければ正確な計測を行うことができないという問題点があった。
【0009】

こうした光飛行時間計測法における問題点を解決するものとして、例えば、上記した特許文献1〜4に示すような様々な固体撮像素子の構造が提案されている。
【0010】
ここで、特許文献1〜4に開示された固体撮像素子は、それぞれ手法は異なるが、基本的には、2つ以上の電荷蓄積容量を1つのフォトダイオードに接続し、高周波変調した光あるいはパルス発光する光をその変調や発光時間に同期して上記2つ以上の電荷蓄積容量に分離蓄積し、一定時間毎に分離蓄積した電荷を読み出して平均化することにより信号雑音比を高め、この分離蓄積した電荷に基づいて得られた信号を用いて距離を算出するという原理に基づいている。なお、本明細書においては、この原理を電荷振り分け方式と適宜に称することとする。
【0011】
図3(a)(b)(c)には、上記したような電荷を分離蓄積する電荷振り分け方式による固体撮像素子における電荷を分離蓄積する受光部分の一例が示されており、図3(a)には回路図が示されており、図3(b)には構造図が示されており、図3(c)にはポテンシャル図が示されている。
【0012】
図3(a)(b)において、符号PDはフォトダイオードであり、符号Fd1は第1の蓄積容量であり、符号Fd2は第2の蓄積容量であり、符号M1は第1のFETスイッチであり、符号M2は第2のFETスイッチであり、符号M3’は第1のリセットFETであり、符号M4’は第2のリセットFETであり、符号Tx1は第1のFETスイッチM1を駆動する第1の転送ゲートであり、符号Tx2は第2のFETスイッチM2を駆動する第2の転送ゲートであり、符号R1は第1のリセットFET M3’のゲートであり、符号R2は第2のリセットFET M4’のゲートであり、符号Vddは電源である。
【0013】
この固体撮像素子は、1つのフォトダイオードPDに対して複数の蓄積容量として第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2が、それぞれ第1のFETスイッチM1と第2のFETスイッチM2とを介して接続されている。
【0014】
従って、第1のFETスイッチM1を駆動する第1の転送ゲートTx1と第2のFETスイッチM2を駆動する第2の転送ゲートTx2とに印加する電圧をそれぞれ制御することによって、フォトダイオードPDで発生した光電子を第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とに振り分けて蓄積することができる。
【0015】
ここで、第1のリセットFET M3’は第1の蓄積容量Fd1に蓄積された電荷を初期化するために用いられ、また、第2のリセットFET M4’は第2の蓄積容量Fd2に蓄積された電荷を初期化するために用いられるものであり、それぞれのゲートR1とゲートR2とに電圧を印加すると、蓄積容量Fd1と蓄積容量Fd2との電圧は電源Vddの電圧に初期化される。
【0016】
上記したリセット後の初期状態のポテンシャル(図c−1参照)に光が照射されると、フォトダイオードPDで光電子が発生する。
【0017】
その後に、第1の転送ゲートTx1に電圧を印加すると、フォトダイオードPDで発生した光電子はポテンシャルに従って、第1の蓄積容量Fd1の側に流れ落ちる(図c−2参照)。
【0018】
ここで、第1の転送ゲートTx1の電圧を戻し、反対に第2の転送ゲートTx2に電圧を印加すると、フォトダイオードPDで発生した光電子はポテンシャルに従って、第2の蓄積容量Fd2の側に流れ落ちる(図c−3参照)。
【0019】
上記した第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とへの電圧の印加を高周波で繰り返すと、図c−4に示すように各時間的に振り分けた電荷がそれぞれ第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とに蓄積される。
【0020】
このようにして第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とに蓄積された電荷を読み出し回路(図示せず。)によって読み出した後に、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とに電圧を印加してリセット(図c−5)し、電荷を初期化する。
【0021】
従って、図3(a)(b)(c)に示す固体撮像素子によれば、一定時間毎に第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とに蓄積された電荷を読み出して平均化することにより信号雑音比を高め、この分離蓄積した電荷に基づいて得られた信号を用いて距離を算出することができる。
【0022】

ところで、図1に示す構成においてセンサ14の固体撮像素子として図3(a)(b)(c)に示す構成の固体撮像素子を用い、図2(a)(b)に示すような光を計測した場合には、一定時間経過後に、固体撮像素子の第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とには、例えば、図4に示したような電荷が蓄積されることになる。
【0023】
なお、図4において、符号42は第1の転送ゲートTx1に同期したLED光源10に由来する高周波変調光由来の反射光L2による成分を便宜的に示し、符号45は第2の転送ゲートTx2に同期したLED光源10に由来する高周波変調光由来の反射光L2による成分を便宜的に示し、符号43は第1の転送ゲートTx1に同期した背景光L3に由来する背景光由来の反射光L4による成分を便宜的に示し、符号44は第2の転送ゲートTx2に同期した背景光L4に由来する背景光由来の反射光L4による成分を便宜的に示しているが、実際には、符号42の成分と符号43の成分とは各成分毎に分離することはできず、符号44の成分と符号45の成分とは各成分毎に分離することはできない。
【0024】
そして、図1に示す構成において、背景光L3の寄与が大きい場合には、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とにそれぞれ蓄積される電荷が、図5に示すように飽和してしまい、電荷の振り分け動作は無効になってしまうという問題点があった。
【0025】
即ち、図5において、符号52と符号53とはそれぞれ飽和してしまった電荷を表し、符号54は第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とから溢れた電荷を表している。
【0026】
この場合、電荷が第1の転送ゲートTx1で制御されるフォトダイオードPDと第1の蓄積容量Fd1との間のポテンシャル差ならびに第2の転送ゲートTx2で制御されるフォトダイオードPDと第2の蓄積容量Fd2との間のポテンシャル差を越えてしまい、電荷の振り分け動作は無効になってしまうものであった。
【0027】

従来、このような電荷の飽和による動作不能を回避するため、例えば、LED光源10として近赤外光を用いるとともに、それにあわせてセンサ14の固体撮像素子にその波長のバンドパスフィルターを設置して、背景光L3に由来する背景光由来の反射光L4をできるだけ減衰させるなどの工夫がなされていた。
【0028】
しかしながら、太陽光には近赤外線も多く含まれているため、屋外での使用を考えるとその影響を排除することは難しいものであった。
【0029】
また、特許文献3として提示する特開2004−294420号公報では、変調光の発光する前の背景光を別に観測することで、背景光の影響を減じるなどの工夫が開示されている。
【0030】
しかしながら、本質的に高感度なセンサーを実現するためには、このような背景光に起因する飽和の問題を根源から解決する方策が必要である。なぜならば、高感度化のためには、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との容量は小さいほど望ましいが、その場合に飽和に至る電荷量は小さくなり、背景光で飽和してしまって使用できない恐れがあるからである。
【0031】
【特許文献1】特開2001−281336号公報
【特許文献2】特開2003−51988号公報
【特許文献3】特開2004−294420号公報
【特許文献4】特開2005−235893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光飛行時間計測法に用いる電荷振り分け方式の固体撮像素子において、対象物からの背景光由来の反射光による背景光由来の雑音を排除し、固体撮像素子において予め設定された所定の光源に由来する対象物からの反射光を信号成分として有効に抽出して、高感度、低雑音化を図るようにした固体撮像素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的を達成するために、本発明は、本願発明者による以下の知見に基づいてなされたものである。
【0034】
即ち、上記した電荷の飽和の原因となる背景光は、図4に示した例のように、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とにほぼ等量蓄積される。また、実際には、図4を参照しながら上記において説明したように、符号42の成分と符号43の成分とは各成分毎に分離することはできず、符号44の成分と符号45の成分とは各成分毎に分離することはできないので、情報として有効なものは、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とにそれぞれ蓄積された電荷の差分のみである。
【0035】
従って、この差分だけを抽出して蓄積することができれば、結果的に、対象物からの背景光由来の反射光による背景光由来の雑音が排除され、固体撮像素子において予め設定された所定の光源に由来する対象物からの反射光の信号成分のみを抽出することができることになる。
【0036】

即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、複数の電荷蓄積部を備え、飛来する光で生じた光電子を該飛来のタイミングで弁別して上記複数の電荷蓄積部に振り分け、該飛来する光のタイミングを計測する固体撮像素子において、複数の電荷蓄積部とそれぞれ導通可能な複数の容量と、上記複数の電荷蓄積部と上記複数の容量との導通状態を制御する制御部とを有し、上記制御部の制御によって上記複数の電荷蓄積部と上記複数の容量とを選択的に導通させることにより、上記複数の電荷蓄積部に蓄積された電荷の差分成分を抽出するようにしたものである。
【0037】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記複数の容量の電気容量値は互いに等しく、上記制御部として、上記複数の容量それぞれの両方の端子にそれぞれ2個のFETスイッチで構成した接続切り替え回路を備えるようにしたものである。
【0038】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記FETスイッチの一方の端子を上記複数の電荷蓄積部に接続し、上記FETスイッチの他方の端子をバイアス電圧に接続するようにしたものである。
【0039】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の発明において、上記複数の電荷蓄積部は、2個の電荷蓄積部よりなり、上記複数の容量は、2個の容量よりなり、上記制御部は、上記電荷蓄積部の一方と上記容量の一方とが接続されるとともに上記電荷蓄積部の他方と上記容量の他方とが接続される第1の接続状態と、上記電荷蓄積部の他方と上記容量の一方とが接続されるとともに上記電荷蓄積部の一方と上記容量の他方とが接続される第2の接続状態とを一定時間毎に繰り返すようにしたものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、以上説明したように構成されているので、光飛行時間計測法に用いる電荷振り分け方式の固体撮像素子において、対象物からの背景光由来の反射光による背景光由来の雑音を排除し、固体撮像素子において予め設定された所定の光源に由来する対象物からの反射光を信号成分として有効に抽出して、高感度、低雑音化を図るようにした固体撮像素子を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による固体撮像素子の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0042】

図6には、本発明による固体撮像素子の実施の形態の一例の基本回路の回路図が示されている。
【0043】
なお、図6の回路図において、図3に示す従来の回路図の構成と同一または相当する構成には、図3において用いた符号と同一の符号を付して示すことにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は適宜に省略する。
【0044】
この図6に示す固体撮像素子100は、例えば、図1に示す構成におけるセンサ14の固体撮像素子として用いられるものであり、このため以下の説明においては図1も適宜参照する。
【0045】
図6に示す固体撮像素子100は、フォトダイオードPDが光を受光することにより発生した光電子の電荷を、LED光源10から対象物に対して信号光として照射される高周波変調光L1に同期して分離蓄積する分離蓄積部61と、容量の接続を切り替える第1の容量接続制御部62および第2の容量接続制御部63とを有して構成されている。
【0046】
ここで、分離蓄積部61は、図3に示す従来の固体撮像素子の回路構成と同様な回路構成を備えている。
【0047】
一方、第1の容量接続制御部62は、第1の容量C1、第3のFETスイッチM3、第4のFETスイッチM4、第5のFETスイッチM5、第6のFETスイッチM6およびバイアス電圧を印加する第1の電源Vddを有して構成されており、また、第2の容量接続制御部63は、第2の容量C2、第7のFETスイッチM7、第8のFETスイッチM8、第9のFETスイッチM9、第10のFETスイッチM4およびバイアス電圧を印加する第2の電源Vddを有して構成されている。
【0048】
第1の容量接続制御部62の第1の容量C1と第2の容量接続制御部63の第2の容量C2とは、それぞれ分離蓄積部61に存在する2つの蓄積容量たる第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とに第1〜10のFETスイッチM1〜10を介して接続されている。
【0049】
このとき、第1の容量C1と第1の蓄積容量Fd1とが接続される極性と、第2の容量C2と第2の蓄積容量Fd2とが接続される極性とは反転し、第1の容量C1と第2の蓄積容量Fd2とが接続される極性と、第2の容量C2と第1の蓄積容量Fd1とが接続される極性とは反転する。こうした極性の反転接続によって、蓄積された電荷の一部ないし全部は中和され消去されることになる。
【0050】
ここで、上記した各容量に蓄えられた電荷に差があると、その差部分は中和されずに残ることになる。
【0051】
従って、一定周期で上記した各FETスイッチを切り替えて反転接続を繰り返すと、その結果として、分離蓄積された電荷の差が残存し堆積していく。
【0052】
しかしながら、背景光は、LED光源10から対象物に対して信号光として照射される高周波変調光L1に同期していないので、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との2つの蓄積容量にほぼ等分に分配され、この反転接続の切り替えによってほぼ消去されることになる。
【0053】

上記した固体撮像素子100について、さらに詳細に説明すると、固体撮像素子100は、それぞれ4つのFETスイッチと1個の容量とを有して構成される回路たる2組の容量接続制御部(第1の容量接続制御部62および第2の容量接続制御部63)を、図3に示した従来の固体撮像素子の基本的な受光蓄積回路と同等の回路たる分離蓄積部61に付加することで構成されている。
【0054】
即ち、第1の容量接続制御部62においては、第1の容量C1を挟んで対称的に第3のFETスイッチM3、第4のFETスイッチM4、第5のFETスイッチM5および第6のFETスイッチM6が配置されている。
【0055】
ここで、第3のFETスイッチM3と第6のFETスイッチM6とは、同じ第1のゲートG1のゲート信号G1で駆動され、一方、第4のFETスイッチM4と第5のFETスイッチM5とは、同じ第2のゲートG2のゲート信号G2で駆動される。
【0056】
同様に、第2の容量接続制御部63においては、第2の容量C2を挟んで対称的に第7のFETスイッチM7、第8のFETスイッチM8、第9のFETスイッチM9および第10のFETスイッチM10が配置されている。
【0057】
ここで、第8のFETスイッチM8と第9のFETスイッチM9とは、同じ第1のゲートG1のゲート信号G1で駆動され、一方、第7のFETスイッチM7と第10のFETスイッチM10とは、同じ第2のゲートG2のゲート信号G2で駆動される。
【0058】
従って、第1の容量C1および第2の容量C2の両端は、第3〜10のFETスイッチM3〜10を介して第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2、第1の電源Vddならびに第2の電源Vddに選択的に接続される。
【0059】

なお、第1の蓄積容量Fd1ならびに第2の蓄積容量Fd2は、例えば、半導体基板中に不純物拡散で形成した容量であり、また、第1の容量C1ならびに第2の容量C2は、例えば、金属配線層間に形成した容量である。
【0060】
ここで、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電気容量値は等しいものとし、また、第1の容量C1と第2の容量C2との電気容量値は等しいものとする。
【0061】
なお、第1の蓄積容量Fd1(第2の蓄積容量Fd2)と第1の容量C1(第2の容量C2)との電気容量値は必ずしも等しい必要はないが、等しい値にすることが好ましい。
【0062】
以下の説明においては、本発明の理解を容易にするために、第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2、第1の容量C1および第2の容量C2の各電気容量値は全て等しいものとし、「C」と表記するものとする。
【0063】

また、分離蓄積部61は、上記したように、フォトダイオードPDが光を受光することにより発生した光電子の電荷を高周波変調光L1に同期して分離蓄積する回路であり、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とは高速信号で駆動され、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とに電荷を振り分ける動作をする。
【0064】

図7には、上記した固体撮像素子100の回路に印加されるゲート電圧のタイミングチャートが示されている。なお、図7において、図中左側から右側へ向かって時間が経過するものとする。
【0065】
まず、最初に、第1の転送ゲートTx1、第2の転送ゲートTx2、第1のゲートG1および第2のゲートG2の全てのゲートに電圧を印加する。なお、この最初に全てのゲートに電圧を印加する時間を、リセット期間Rと称することとする。
【0066】
このリセット期間Rにおいては、第1〜10のFETスイッチM1〜10の全てが接続されるので、第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2の端子はVdd電位と等しくなる。また、フォトダイオードPDの電位は、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とに印加した電圧に従ったポテンシャルにリセットされ、第1の容量C1と第2の容量C2とは、放電した状態にリセットされる。
【0067】
なお、上記した各リセットは、固体撮像素子100を光飛行時間型センサの各画素として用いた場合には、各画素の属するラインの画面の読み出しの最初に行うものである。
【0068】
上記したリセットを終了すると、次回にリセットするまで、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とには、図7に示すように、フォトダイオードPDが光を受光することにより発生した光電子の電荷を高周波変調光L1に同期して振り分け蓄積するための高速な駆動パルスを印加し、また、第1のゲートG1と第2のゲートG2とには、図7に示すように、交互に時間の等しい反転したパルス電圧を連続的に印加する。
【0069】
ここで、第1のゲートG1に電圧を印加するとともに第2のゲートG2に電圧を印加しない期間を正接続期間と称し、それとは反対に、第2のゲートG2に電圧を印加するとともに第1のゲートG1に電圧を印加しない期間を反転接続期間と称することとする。
【0070】
こうした正接続期間および反転接続期間は等しい時間であり、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とに与える高速パルスの整数倍の時間とする。
【0071】
なお、図7に示す例においては、便宜的に、正接続期間および反転接続期間を第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とに与える高速パルス20個に対して1組としているが、実際の光飛行時間計測にあたっては、例えば、正接続期間および反転接続期間は、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2とに与える高速パルス100〜1000個に1組ほどがこの好ましい。
【0072】

上記したように、正接続期間では、第1のゲートG1には電圧が印加されているが、第2のゲートG2には電圧が印加されていないので、図8に示すように、第3のFETスイッチM3、第6のFETスイッチM6、第8のFETスイッチM8、第9のFETスイッチM9の各FETスイッチが導通状態(図8において実線で示す。)となり、第4のFETスイッチM4、第5のFETスイッチM5、第7のFETスイッチM7、第10のFETスイッチM10の各FETスイッチが非導通状態(図8において破線で示す。)となる。
【0073】
従って、結線81と結線83とが接続されるとともに、結線84と結線88とが接続されて、第1の蓄積容量Fd1と第1の容量C1とが等価的に並列接続となり、同様に、結線82と結線86とが接続されるとともに、結線85と結線89とが接続されて、第2の蓄積容量Fd2と第2の容量C2とが等価的に並列接続となる。
【0074】
一方、反転接続期間では、第2のゲートG2には電圧が印加されているが、第1のゲートG1には電圧が印加されていないので、図9に示すように、第3のFETスイッチM3、第6のFETスイッチM6、第8のFETスイッチM8、第9のFETスイッチM9の各FETスイッチが非導通状態(図9において破線で示す。)となり、第4のFETスイッチM4、第5のFETスイッチM5、第7のFETスイッチM7、第10のFETスイッチM10の各FETスイッチが導通状態(図9において実線で示す。)となる。
【0075】
従って、結線91と結線95とが接続されるとともに、結線96と結線99とが接続されて、第1の蓄積容量Fd1と第2の容量C2とが等価的に並列接続となり、同様に、結線92と結線94とが接続されるとともに、結線93と結線98とが接続されて、第2の蓄積容量Fd2と第1の容量C1とが等価的に並列接続となる。
【0076】
ただし、第1の容量C1および第2の容量C2が第1の蓄積容量Fd1および第2の蓄積容量Fd2と接続される極性は、正接続期間と反転接続期間とでは反対である。
【0077】

次に、図10に示す動作原理の説明図を参照しながら、上記した正接続期間と反転接続期間とにおける固体撮像素子100の動作について説明する。
【0078】
この図10は、第1のゲートG1、第2のゲートG2、第1の蓄積容量Fd1および第2の蓄積容量Fd2の電圧の変化を示すタイミングチャートであり、図10において、図中左側から右側へ向かって時間が経過するものとする。なお、以下の説明においては、第1の蓄積容量Fd1の電圧をVFD1と表し、第2の蓄積容量Fd2の電圧をVFD2と表すものとする。
【0079】
ここで、正接続期間、反転接続期間のそれぞれにおいて、第1の蓄積容量Fd1ならびに第2の蓄積容量Fd2に流入した光電子は、上記した各FETスイッチを介して並列に接続された第1の容量C1ならびに第2の容量C2にも蓄積される。
【0080】
つまり、正接続期間、反転接続期間のそれぞれの期間内で流入する電荷は、電気容量が等しければ第1の蓄積容量Fd1と第1の容量C1、第2の蓄積容量Fd2と第2の容量C2にそれぞれ等分に分割される。
【0081】
正接続期間に第1の蓄積容量Fd1に対して流入した電荷をΔQFD1と表し、第2の蓄積容量Fd2に流入した電荷をΔQFD2と表すと、正接続期間が終了する時の第1の蓄積容量Fd1の電圧VFD1と第2の蓄積容量Fd2の電圧VFD2は、それぞれ次のように表される。
【0082】
VFD1=Vdd−ΔQFD1/2C(図10の符号107で示す電圧)
VFD2=Vdd−ΔQFD2/2C(図10の符号108で示す電圧)

正接続期間が終了して、次の瞬間に第1のゲートG1と第2のゲートG2への印加パルスが反転すると、第1の容量C1に蓄積された電荷は第2の蓄積容量Fd2に流入され、第2の容量C2に蓄積された電荷は第1の蓄積容量Fd1に流入される。
【0083】
このとき、第1の容量C1と第2の容量C2との接続極性は反対なので、電荷は加算されずに大半は中和される。
【0084】
しかしながら、ΔQFD1とΔQFD2との差分は中和されず、多い側には残り、少ない側からは余分に差し引かれる形で残存する。
【0085】
つまり、
VFD1=Vdd−(ΔQFD1−ΔQFD2)/4C(図10の符号109で示す電圧)
VFD2=Vdd−(ΔQFD2−ΔQFD1)/4C(図10の符号110で示す電圧)
となる。
【0086】
このように、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2、第1の容量C1と第2の容量C2には、流入する電荷の差分成分のみが残存して、同一成分は電荷の中和により消失し、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電圧として読み出すことが可能となる。
【0087】
こうした正接続期間と反転接続期間とを繰り返すと、図11に示すように、残存した差分成分に従い、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電圧は堆積的に変化する(符号117、符号118、符号119、符号120で示す電圧を参照する。)。
【0088】
ここで、ΔQFD1の一定時間での時間積分値をQFD1と表し、ΔQFD2の一定時間での時間積分値をQFD2と表すと、一定時間経過後の第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電圧差は(QFD1−QFD2)/2Cとなり、QFD1とQFD2の全体量は蓄積されずに差分量のみが蓄積される。
【0089】

従って、図1において、背景光L3に由来する背景光由来の反射光L4による光電子(雑音)の大半はこの回路によって除去され、目的の情報量であるLED光源10に由来する高周波変調光由来の反射光L2による光電子(信号)だけが蓄積される。
【0090】
即ち、光飛行時間計測法に用いる電荷振り分け方式の固体撮像素子100によれば、対象物からの背景光由来の反射光による背景光由来の雑音を排除することができるとともに、固体撮像素子において予め設定された所定の光源に由来する対象物からの反射光を信号成分として有効に抽出することができ、高感度、低雑音化を図ることが可能になる。
【0091】

なお、上記した実施の形態においては、第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2、第1の容量C1および第2の容量C2の各電気容量値が、全て等しい場合について説明した。
【0092】
しかしながら、実用上は、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2とがほぼ等しく、かつ、第1の容量C1と第2の容量C2とが正確に等しいことが条件であって、拡散で形成される第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電気容量値と、金属層で形成される第1の容量C1と第2の容量C2との電気容量値は一致している必要性はない。
【0093】
即ち、この固体撮像素子100は、標準的なICプロセスで制御される精度で十分に動作するものである。
【0094】

なお、図15には、第1の容量C1と第2の容量C2との精度が劣る場合のSpiceシミュレーションの結果を表すグラフが示されている。
【0095】
この図15のラフにおいては、横軸に時間(Time)をマイクロ秒(μs)単位でとり、縦軸に抽出した蓄積電荷の差分成分、即ち、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電圧の差を計算した結果の値をとっている。なお、5マイクロ秒周期で各FETスイッチを切り替えて、正接続期間と反転接続期間とを反転している。
【0096】
この図15において、実線Aは、第1の容量C1と第2の容量C2との電気容量値が等しい場合のシミュレーション結果を示し、ほぼ直線的に電荷の差分成分が抽出されていることが分かる。
【0097】
こうした実線Aに対して、破線Bは、第1の容量C1を固定するとともに第2の容量C2を10%減じた場合のシミュレーション結果を示し、また、一点鎖線Cは、第1の容量C1を固定するとともに第2の容量C2を10%増加させた場合のシミュレーション結果を示している。
【0098】
ここで、蓄積電荷の電圧変換は容量に比例するため、容量の精度劣化は大きな誤差を生じ、実線Aと破線Bならびに一点鎖線Cとは乖離する。
【0099】
しかしながら、第1の容量C1と第2の容量C2とは、上記したように各FETスイッチで切り替えられて第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との両方に接続されるため、例えば、5マイクロ秒周期の切り替えにより誤差は相殺される方向に働き、正常値に引き戻される。
【0100】
その結果として、堆積する誤差は差分量の5%にすぎないものであり、実際の半導体プロセスでの容量精度は2〜3%であるので、実用上全く問題ない誤差に収まることになる。
【0101】

また、第3〜10のFETスイッチM3〜10に寄生する接合容量によりスイッチング損失があるため、実際の設計では、第3〜10のFETスイッチM3〜10を小型化して、これらの接合容量の減少に努める必要がある。
【0102】
それと同時に、適切な容量値の第1の容量C1と第2の容量C2とを用いることで、より損失の少ない回路を構成することができる。
【0103】

なお、上記した固体撮像素子100において、第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2や第1〜10のFETスイッチM1〜10で使用する半導体拡散領域はP型でもN型でも構成可能である。
【0104】
例えば、上記半導体拡散領域をN型で構成する場合には、P基板上に形成されたN領域で第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2および第1〜10のFETスイッチM1〜10を形成し、各ゲートには電源電圧Vddにスレショルド電圧分を加えた適切な電圧のパルスを印加する。
【0105】
また、第1のFETスイッチM1、第2のFETスイッチM2をN型FETで構成し、第3〜10のFETスイッチM3〜10をP型FETで構成する場合には、印加する電源電圧Vddよりもバックゲート電圧(回路図には示されていないN領域の電圧)をPN接合により順方向電流が流れない程度に高めにする。例えば、電源電圧Vddが1.8Vのときに、バックゲート電圧を2.5Vとする。その場合に、第3〜10のFETスイッチM3〜10への各ゲート印加電圧は、バックゲート電圧とGND電位にするとよい。
【0106】
また、上記した以外の構成も可能であるが、第1の容量C1または第2の容量C2のどちらかは電源電圧Vddよりも充電が進み、高い電圧になることに注意して構成することが望ましい。
【0107】
即ち、一般には、光の量子性に基づく雑音(フォトンショットノイズと称される。)は露光した光量の2乗根で増加し、信号成分は比例で増加するので、露光時間を延ばすほど露光光量が増え、信号雑音比は向上する。
【0108】
本発明によれば、微量なLED光源10に由来する高周波変調光由来の反射光L2が、大量の背景光L3に由来する背景光由来の反射光L4に埋もれている場合でも、背景光L4は除去されて、長い露光時間での撮像においても飽和することを防げるので、信号雑音比は向上する。
【0109】
しかしながら、第3〜10のFETスイッチM3−10のスイッチングノイズ(kCTノイズと称される。)は、反転動作を繰り返す毎に発生するので、過度な反転動作を行うと信号雑音比は劣化する恐れがある。仮に単位時間での飛来する背景光L3に由来する背景光由来の反射光L4のフォトン数が100万電子相当だとすると、前記フォトンショットノイズは約1000電子である。
【0110】
また、0.05pFの蓄積容量を想定すると、1回のスイッチングによるkCTノイズは約50電子ほどなので、単位時間当たりに100回程度の反転動作繰り返しにより生じるkCTノイズは2乗根加算により、約500電子である。従って、フォトンショットノイズが優位であるので、スイッチングによる悪影響は少ない。しかし、1000回の繰り返しでは、1500電子相当のkCTノイズが発生するため悪影響が出る。このことを考慮し、背景光量と蓄積容量、単位時間当たりの正接続期間と反転接続期間との反転動作回数を最適な値に設定することが好ましい。
【0111】

ところで、実際の光飛行時間計測法では、第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との2つの蓄積容量間の差分信号だけでは、対象物の反射率と光源からの距離による光の減衰による項を知ることができない。
【0112】
ここで、獲得される信号をS、位相角をd、不明な項を強度係数Xとすると、その関係は
S=X・sin(d) ・・・ (1)
と近似することができる。ただし、0<d<360度とする。
【0113】
上記した式(1)において、Xは正の値なので、Sが正か負かという違いから、dが180度以下か以上かということだけは知ることができる。しかし、正確なdの値を知ることはできない。
【0114】
そこで、正確なdの値を知るためには、図6で説明した差分を抽出するための2個の蓄積容量を設けた分離蓄積部61、第1の容量接続制御部62および第2の容量接続制御部63を有する回路(差分抽出回路)を備えた固体撮像素子100をほぼ倍に拡張して、4個の蓄積容量と4個の容量接続制御部とを有して構成される図12に示した本発明の他の実施の形態による回路を構成する。
【0115】
図12において、第1〜10のFETスイッチM1〜10で構成される回路構成部分は図6と同等であり、第1〜10のFETスイッチM1〜10とそれぞれ全く同一の構造で構成された第11〜20のFETスイッチM11〜20で構成される回路構成部分が、図6に示す回路に対して新たに追加された回路部分である。
【0116】
ここで、第21〜28のFETスイッチM21〜28は信号読み出し回路であり、これらのなかで第21のFETスイッチM21、第23のFETスイッチM23、第25のFETスイッチM25、第27のFETスイッチM27は、第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2、第3の蓄積容量Fd3ならびに第4の蓄積容量Fd4のそれぞれの電位を検出するバッファーアンプであり、第22のFETスイッチM22、第24のFETスイッチM24、第26のFETスイッチM26、第28のFETスイッチM28は、それぞれライン選択線(SEL)で制御されるスイッチである。
【0117】
こうした図12に示す回路は、図13で示すタイミングチャートに従って各ゲート線を駆動する。
【0118】
この図12に示す回路では、電荷を振り分ける蓄積容量が、第1の蓄積容量Fd1、第2の蓄積容量Fd2、第3の蓄積容量Fd3および第4の蓄積容量Fd4の4個あるので、0度、90度、180度および270度の各位相角度の高周波変調光由来の反射光L2の成分を分離蓄積することができる。
【0119】
そして、図12に示す回路においては、0度と180度、即ち、第1の転送ゲートTx1と第2の転送ゲートTx2に対応する分離蓄積部61と、第1の容量接続制御部62および第2の容量接続制御部63とにより図6に示す回路に相当する回路が構成され、また、90度と270度、即ち、第3の転送ゲートTx3と第4の転送ゲートTx4に対応する分離蓄積部121(分離蓄積部61に相当する。)と、第1の容量接続制御部122(第1の容量接続制御部62に相当する。)および第2の容量接続制御部123(第2の容量接続制御部63に相当する。)とにより図6に示す回路に相当する回路が構成される。
【0120】
即ち、図12に示す回路によれば、図6に示す回路に相当する2組の回路がそれぞれ独立して構成されることになるが、このとき、印加する駆動パルスを工夫すれば、第1の容量接続制御部62および第2の容量接続制御部63を駆動する第1のゲートG1と第1の容量接続制御部122および第2の容量接続制御部123を駆動する第3のゲートG3、第1の容量接続制御部62および第2の容量接続制御部63を駆動する第2のゲートG2と第1の容量接続制御部122および第2の容量接続制御部123を駆動する第4のゲートG4は同一のパルスを使用することができる。
【0121】
即ち、その工夫とは、図13に示すように、第1〜4の転送ゲートTx1〜4の転送ゲートへのパルスをデューティー比1:3のパルスとし、LED光源10の駆動パルスに対して、0度、90度、180度、270度となるタイミングに発生させ、第1〜4の転送ゲートTx1〜4の各パルスが同じ個数含まれるように、第1のゲートG1、第2のゲートG2の切り替えタイミングを設定することである。
【0122】
また、リセットパルスは、0度の転送ゲート信号、即ち、図13において第1の転送ゲートTx1の有効な位相直前で終了させる。
【0123】
この結果、0度と180度の差に対応する差分信号と90度と270度の差に対応する差分信号の2つの情報が獲得できる。対象物の反射率や光源からの距離による光の減衰の項は、どちらの差分信号にも等しく影響しているので、どちらも同一の値Xとして良い。新たに加わった信号をCとすれば、
S=X・sin(d) ・・・ 式(2)
C=X・cos(d) ・・・ 式(3)
と近似できる。ただし、0<d<360度とする。
【0124】
SとCの2つの計測値から、上記した式(2)および式(3)の2式を解いて、Xとdを一意に決定することができる。
【0125】

なお、図14には、図12に示す回路をIC上にレイアウトしたレイアウト図の一例が示されている。
【0126】
即ち、図12に示す回路は、1層のポリシリコン配線(P1)、5層の金属配線(M1〜M5)を用いた一般的なCMOSプロセスで無理なく配置配線できることが確認できる。従って、本発明は実施可能である。
【0127】

なお、図13に示した各ゲート線の波形は一例であり、発光パルスの位相角と第1〜4の転送ゲートTx1〜4の各Tx線との関係は任意の組み合わせが可能である。同様に、LED光源10の発光直前に1つあるいは2つの転送を開き、残りを発光後に割り当てるということも可能である。
【0128】
また、図6に示す回路では2個の蓄積容量を使用し、図12に示す回路では4個の蓄積容量を使用したが、蓄積容量の数はこれに限られるものではなく、蓄積容量の数は複数の任意数とすることができる。即ち、図6に示す回路で2個以上の蓄積容量を使用してもよいし、図12に示す回路で4個以上の蓄積容量を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、自動車などに搭載して、障害物までの距離を測定する距離センサなどに利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、光飛行時間計測法の原理を説明するための説明図である。
【図2】図2は、光飛行時間計測法で測定される信号としてLED光源の発光強度(図2(a))と固体撮像素子の受光強度(図2(b))とを示すとともに、それぞれの発光タイミングと受光タイミングとを示すタイミングチャートである。
【図3】図3は、電荷を分離蓄積する電荷振り分け方式による固体撮像素子における電荷を分離蓄積する受光部分の一例による動作説明図が示されており、図3(a)には回路図が示されており、図3(b)には構造図が示されており、図3(c)にはポテンシャル図が示されている。
【図4】図4は、正常な電荷蓄積の様子を示す説明図である。
【図5】図5は、飽和した電荷蓄積の様子を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明による固体撮像素子の実施の形態の一例の基本回路の回路図である。
【図7】図7は、本発明による固体撮像素子の基本タイミング図であり、本発明による固体撮像素子の回路に印加されるゲート電圧のタイミングチャートが示されている。
【図8】図8は、正接続期間におけるFETスイッチの接続状態を示す回路図である。
【図9】図9は、反転接続期間におけるFETスイッチの接続状態を示す回路図である。
【図10】図10は、本発明による固体撮像素子の動作原理の説明図である。
【図11】図11は、本発明による固体撮像素子の動作結果の説明図であり、正接続期間と反転接続期間との繰り返による第1の蓄積容量Fd1と第2の蓄積容量Fd2との電圧の変化を示す。
【図12】図12は、4個の蓄積容量と4個の容量接続制御部とを有して構成される本発明による固体撮像素子の他の実施の形態の一例の回路図である。
【図13】図13は、4個の蓄積容量と4個の容量接続制御部とを有して構成される本発明による固体撮像素子のタイミング図であり、4個の蓄積容量と4個の容量接続制御部とを有して構成される本発明による固体撮像素子の回路に印加されるゲート電圧のタイミングチャートが示されている。
【図14】図14は、4個の蓄積容量と4個の容量接続制御部とを有して構成される本発明による固体撮像素子の回路をIC上にレイアウトしたレイアウト図の一例である。
【図15】図15は、第1の容量C1と第2の容量C2との精度が劣る場合のSpiceシミュレーションの結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0131】
10 LED光源
12 対象物
14 センサ
100 固体撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電荷蓄積部を備え、飛来する光で生じた光電子を該飛来のタイミングで弁別して前記複数の電荷蓄積部に振り分け、該飛来する光のタイミングを計測する固体撮像素子において、
複数の電荷蓄積部とそれぞれ導通可能な複数の容量と、
前記複数の電荷蓄積部と前記複数の容量との導通状態を制御する制御部と
を有し、
前記制御部の制御によって前記複数の電荷蓄積部と前記複数の容量とを選択的に導通させることにより、前記複数の電荷蓄積部に蓄積された電荷の差分成分を抽出する
ことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記複数の容量の電気容量値は互いに等しく、
前記制御部として、前記複数の容量それぞれの両方の端子にそれぞれ2個のFETスイッチで構成した接続切り替え回路を備えた
ことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項3】
請求項2に記載の固体撮像素子において、
前記FETスイッチの一方の端子を前記複数の電荷蓄積部に接続し、前記FETスイッチの他方の端子をバイアス電圧に接続した
ことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項4】
請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の固体撮像素子において、
前記複数の電荷蓄積部は、2個の電荷蓄積部よりなり、
前記複数の容量は、2個の容量よりなり、
前記制御部は、前記電荷蓄積部の一方と前記容量の一方とが接続されるとともに前記電荷蓄積部の他方と前記容量の他方とが接続される第1の接続状態と、前記電荷蓄積部の他方と前記容量の一方とが接続されるとともに前記電荷蓄積部の一方と前記容量の他方とが接続される第2の接続状態とを一定時間毎に繰り返す
ことを特徴とする固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図3】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−89346(P2008−89346A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268324(P2006−268324)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構半導体アプリケーションチップ開発プロジェクト委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(306033715)ブレインビジョン株式会社 (6)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】