固体撮像装置およびカメラ
【課題】画素のサイズにかかわらず、斜め入射光に起因する混色を確実に抑制し、高い色分離機能、低い雑音、および高い波長感度を有する固体撮像装置およびカメラを提供する。
【解決手段】多層干渉フィルタ15は、フォトダイオード13の配置方向に沿う方向において、濾光領域A、B、Cと境界領域D、Eとを有する。多層干渉フィルタ15では、境界領域D、Eにおいて、λ/4多層膜(層151〜153の積層体および層158〜160の積層体)で挟まれる層156、157の膜厚が、合計で91[nm]に設定されている。ここで、多層干渉フィルタ15では、層156、157が領域D、Eにおけるスペーサ層に相当する。
【解決手段】多層干渉フィルタ15は、フォトダイオード13の配置方向に沿う方向において、濾光領域A、B、Cと境界領域D、Eとを有する。多層干渉フィルタ15では、境界領域D、Eにおいて、λ/4多層膜(層151〜153の積層体および層158〜160の積層体)で挟まれる層156、157の膜厚が、合計で91[nm]に設定されている。ここで、多層干渉フィルタ15では、層156、157が領域D、Eにおけるスペーサ層に相当する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置およびカメラに関し、特に、多層干渉フィルタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタルカメラや携帯電話機などで固体撮像装置が広く用いられている。固体撮像装置の構造、特に画素領域の構造について、図11を用い説明する。
図11に示すように、固体撮像装置の画素領域では、n型の半導体基板91上にp型半導体層92が形成され、さらに、層間絶縁膜94a、94b、多層干渉フィルタ95、平坦化膜96、マイクロレンズ97が順に積層・形成されている。p型半導体層92と層間絶縁膜94aとの境界部分からp型半導体層92の厚み方向内方に向けて、互いに間隔をあけた状態でフォトダイオード93が形成されている。固体撮像装置においては、各フォトダイオード93に対応して画素が構成される。
【0003】
層間絶縁膜94aと層間絶縁膜94bとの境界部分であって、各フォトダイオード93の間に相当する領域には、遮光膜98が形成されている。そして、多層干渉フィルタ95は、例えば、二酸化チタンと二酸化シリコンとの積層構成が採用されており、その積層構成の差異により、透過光の波長が規定される(特許文献1)。
【特許文献1】国際公開WO2005/069376A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の固体撮像装置では、画素領域において、隣接画素間での混色という問題を生じることがある。マイクロレンズ97を介して入射された光は、多層干渉フィルタ95で各画素に応じた波長帯域だけが透過されるのであるが、斜め入射された光Lが隣接する画素のフォトダイオード93へと入射することがある。即ち、従来の固体撮像装置においては、多層干渉フィルタ95と遮光膜98とが、その間に層間絶縁膜94bが介挿され基板厚み方向に距離をおいているため、光Lが隣接する画素のフォトダイオードへと入射してしまう。このような固体撮像装置では、色分離機能の低下、雑音の増加、あるいは波長感度の低下といった問題を有する。
【0005】
特に、上記混色の問題は、画素のサイズを小さくしようとすればするほど顕在化してくる。
本発明は、上記課題を解決しようとなされたものであって、画素のサイズにかかわらず、斜め入射光に起因する混色を確実に抑制し、高い色分離機能、低い雑音、および高い波長感度とを有する固体撮像装置およびカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、次の構成を採用する。
本発明に係る固体撮像装置は、複数のフォトダイオードが、互いに間隔をあけた状態で二次元配置されてなる半導体基板と、当該半導体基板の厚み方向上方に配された多層干渉フィルタとを有する。そして、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタが、その厚み方向において、スペーサ層(絶縁体層)の両側がλ/4多層膜により挟まれてなる積層構造を有する。ここで、λ/4多層膜は、互いに屈折率が異なる誘電体層が積層された積層体である。
【0007】
また、本発明に係る固体撮像装置の多層干渉フィルタは、フォトダイオードの配置方向に沿う方向において、複数のフォトダイオードの各々の上方に相当する濾光領域と、隣接する濾光領域間の境界領域とを有するものであって、積層構造におけるスペーサ層の膜厚が、濾光領域では、入射された光の可視波長帯域から対応するフォトダイオードに応じた波長帯域成分を選択的に透過する値であって、境界領域では、少なくとも可視波長帯域について、何れの濾光領域よりも透過光量が抑制される値に規定されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るカメラは、上記本発明に係る固体撮像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタの境界領域において、積層構造におけるスペーサ層の膜厚(物理的膜厚)が、何れの濾光領域よりも可視波長帯域の透過光量が抑制される値に規定されている。即ち、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタにおける境界領域で確実に可視光の透過を抑制することができ、隣接するフォトダイオードに不所望の波長帯域成分の光が入射し難く、混色を生じ難い。また、本発明に係る固体撮像装置では、隣接するフォトダイオードへの可視光の漏洩を抑制できるので、高い波長感度を有する。
【0010】
また、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタにおける境界領域で可視波長帯域の透過光量を抑制するので、小さな画素サイズを採用する場合にも、確実に可視光の漏洩を抑制することができる。
従って、本発明に係る固体撮像装置では、画素のサイズにかかわらず、斜め入射光に起因する混色を確実に抑制し、高い色分離機能、低い雑音、および高い波長感度とを有する。
【0011】
また、本発明に係るカメラは、上記本発明に係る固体撮像装置を備えるので、上述の効果を得ることができる。
本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、次のようなバリエーションを採用することができる。
上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタにおけるスペーサ層の膜厚を、濾光領域ではλ/4以外の光学膜厚とし、境界領域ではλ/4の光学膜厚とする構成を採用することができる。
【0012】
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタにおけるスペーサ層が、少なくとも2層の要素膜が積層されてなる構成を備える、という構成を採用することができる。
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタの濾光領域が、入射された光から赤色の波長帯域成分を選択的に透過させる赤色透過部と、緑色の波長帯域成分を選択的に透過させる緑色透過部と、青色の波長帯域成分を透過させる青色透過部とを有し、赤色透過部および緑色透過部および青色透過部では、互いにスペーサ層の膜厚が相違する、という構成を採用することができる。
【0013】
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、λ/4多層膜の設定中心波長λを530[nm]とするとき、多層干渉フィルタの境界領域におけるスペーサ層の膜厚が91[nm]である、という構成を採用することができる。
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタと半導体基板との間に遮光膜が形成されていない、という構成を採用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態)
1.カメラ1の構成
本実施の形態に係るカメラ1の構成について、図1(a)を用い説明する。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係るカメラ1は、固体撮像装置10、レンズ20、色信号合成部30、映像信号作成部40および駆動部50などから構成されている。カメラ1に入射した光は、レンズ20により固体撮像装置10の画素領域に集光される。固体撮像装置10では、各画素ごとに、入射光量に応じた色信号を生成し色信号合成部30へと出力する。固体撮像装置10および色信号合成部30は、駆動部50からの駆動信号に応じて駆動される。
【0015】
色信号合成部30では、入力された色信号に対し、色シェーディングを施し、当該色信号を映像信号作成部40へと出力する。映像信号作成部40では、色シェーディングが施された色信号からカラー映像信号を作成する。
2.固体撮像装置10の構成
固体撮像装置10の構成について、図1(b)を用い説明する。
【0016】
図1(b)に示すように、固体撮像装置10は、半導体基板を共通のベースとして、複数の画素100と、各回路部101〜104とが形成されてなる構成を有する。複数の画素100は、マトリクス状に配され、画素領域を構成している。
垂直シフトレジスタ101および水平シフトレジスタ102は、ともにダイナミック回路であり、駆動回路104からの駆動信号(電圧信号、タイミング信号)に基づき、複数の画素100を順次駆動する。
【0017】
各画素100から出力された画素信号は、出力アンプ103で増幅されて色信号合成部30へと出力される(図1(a)を参照)。
3.固体撮像装置10における画素領域の構成
次に、固体撮像装置1における画素領域の構成について、図2(a)を用い説明する。
図2(a)に示すように、固体撮像装置10における画素領域では、n型の半導体基板11上にp型半導体層12が積層され、さらにその上には、層間絶縁膜14が積層されている。p型半導体層12と層間絶縁膜14との境界から、p型半導体層12の厚み方向(Z軸方向)下向きには、互いに間隔をあけた状態で複数のフォトダイオード13が形成されている。フォトダイオード13は、半導体基板11の主面に沿う方向(Z軸に直交する方向)において、例えば、マトリクス状などの形態をもって二次元配置されている(図1(b)における画素配列に相当)。
【0018】
層間絶縁膜14上には、多層干渉フィルタ15、平坦化膜16が順に積層され、その上には、各フォトダイオード13に対応してマイクロレンズ17が形成されている。平坦化膜16は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)などの透明材料から構成されている。
多層干渉フィルタ15は、各フォトダイオード13に対応して厚みが相違しているとともに、フォトダイオード13に対応して領域ごとに透過帯域が規定されている。
【0019】
4.多層干渉フィルタ15の構成
多層干渉フィルタ15は、λ/4多層膜とスペーサ層との積層構成を有している。その構成について、図2(b)を用い説明する。
図2(b)に示すように、多層干渉フィルタ15は、フォトダイオード13の配置方向(Z軸に直交する方向)において、領域A〜領域Eに分けられる。領域A〜Cは、フォトダイオード13に対応してその上方に設けられ、領域Dおよび領域Eは、領域Aと領域Bとの間、および領域Bと領域Cとの間にそれぞれ設けられている。
【0020】
各領域A〜Eは、多層干渉フィルタ15の厚み方向(Z軸方向)において、スペーサ層の両側がλ/4多層膜で挟まれた構造となっており、領域A〜Eごとにスペーサ層の膜厚が相違する。ここで、λ/4多層膜は、所定の波長λの1/4に略等しい光学膜厚を有し、屈折率が互いに異なる2種類の誘電体層の積層構造を有する。具体的には、本実施の形態において、低屈折率層152、159の厚み方向の各両側が高屈折率層151、153および高屈折率層158、160でそれぞれ挟まれた構成を有する。なお、λ/4多層膜は、中心波長λを530[nm]として、その光学膜厚が設定されている。
【0021】
上記において、「光学膜厚」とは、物理膜厚に屈折率を乗じて得られる指数を意味する。
領域Aでは、Z軸方向下側に配されたλ/4多層膜(層151〜153の積層体であって、以下では、「下側λ/4多層膜」と記載する。)の高屈折率層153と、Z軸方向上側に配されたλ/4多層膜(層158〜160の積層体であって、以下では、「上側λ/4多層膜」と記載する。)の高屈折率層158との間に、4層の低屈折率層154〜157が介挿されている。また、領域Aでは、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、4層の低屈折率層161〜164と高屈折率層165とが順に積層されている。
【0022】
領域Bでは、下側λ/4多層膜の高屈折率層153と上側λ/4多層膜の高屈折率層158との間に、低屈折率層157が介挿されており、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、1層の低屈折率層164と高屈折率層165とが順に積層されている。
領域Cでは、下側λ/4多層膜の高屈折率層153と上側λ/4多層膜の高屈折率層158との間に、3層の低屈折率層155〜157が介挿されており、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、3層の低屈折率層162〜164と高屈折率層165とが順に積層されている。
【0023】
領域D、Eでは、下側λ/4多層膜の高屈折率層153と上側λ/4多層膜の高屈折率層158との間に、2層の低屈折率層156、157が介挿されており、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、2層の低屈折率層163、164と高屈折率層165とが順に積層されている。
各層151〜165の構成材料およびその膜厚について、表1に示す。
【0024】
【表1】
表1にも示す通り、多層干渉フィルタ15において、領域A〜Cでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜とに挟まれる低屈折率層、即ち、スペーサ層の膜厚が領域A〜Cごとに透過させる光色に応じた光学膜厚を有する。具体的には、領域Aでは低屈折率層154〜157がスペーサ層として介挿され、領域Bでは低屈折率層157がスペーサ層として介挿され、領域Cでは低屈折率層155〜157がスペーサ層として介挿されている。
【0025】
また、高屈折率層160と高屈折率層165との間には、領域Aにおいて、低屈折率層161〜164がスペーサ層として介挿され、領域Bにおいて、低屈折率層164がスペーサ層として介挿され、領域Cにおいて、低屈折率層162〜164がスペーサ層として介挿されている。なお、スペーサ層の物理膜厚は、領域Aが185[nm]、領域Bが45[nm]、領域Cが140[nm]であり、それぞれの領域において、スペーサ層が2段形成されている。
【0026】
領域A〜Cでは、全体での物理膜厚tA〜tCも透過させる光色に応じて異なっており、tA=812[nm]、tB=532[nm]、tC=722[nm]に設定されている。なお、本実施の形態では、領域Aが緑色領域であり、領域Bが赤色領域であり、領域Cが青色領域である。
一方、多層干渉フィルタ15における領域D、Eでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に、低屈折率層156、157がスペーサ層として介挿されている。低屈折率層156、157の合計の物理膜厚は、91[nm](=46[nm]+45[nm])であり、可視光を反射させる特性を実現するように調整されている。
【0027】
また、領域D、Eでは、高屈折率層160と高屈折率層165との間にも、スペーサ層としての低屈折率層163、164が介挿されている。低屈折率層163、164の合計も物理膜厚も、91[nm](=46[nm]+45[nm])となっている。即ち、領域D、Eでは、各スペーサ層がλ/4の光学膜厚に設定されており、スペーサ層が2段形成されている。
【0028】
なお、領域D、Eでは、全体での物理膜厚tD、tEがともに624[nm]となっている。
4.多層干渉フィルタ15の形成方法
本実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の形成方法について、図3〜図7を用い説明する。なお、図3〜図7では、層間絶縁膜14よりも下の構成については、簡略のため図示を省略している。
【0029】
図3(a)に示すように、層間絶縁膜14の一方の表面上に、高屈折率層151、低屈折率層152、高屈折率層153および低屈折率準備層1540を順に積層する。これらの層151〜153、1540の積層には、高周波(RF:Radio Frequency)スパッタ装置によるスパッタリング法、若しくは、電子線や抵抗加熱による蒸着法などを用いることができる。高屈折率層151、153の構成材料には、上記表1のように、二酸化チタン(TiO2)を適用し、低屈折率層152および低屈折率準備層1540の構成材料には、二酸化シリコン(SiO2)を適用する。
【0030】
なお、図3(a)に示すように、高屈折率層151、153と低屈折率層152との積層体によって下側λ/4多層膜が構成される。
図3(b)に示すように、低屈折率準備層1540上における領域Aに、マスク601を形成する。マスク601の形成では、レジストの塗布、所謂、プリベークと呼ばれる熱処理、ステッパなどの露光装置を用いた露光、有機溶剤等によるレジストの現像、そして、ポストベークと呼ばれる熱処理を順次実行する。本実施の形態に係る形成方法では、マスク601の膜厚は、例えば、1[μm]である。
【0031】
次に、ドライエッチングを施し、領域Aを除く部分の低屈折率準備層1540を除去する。ドライエッチングの条件は、例えば、次の通りである。
・エッチングガス:CF系ガス
・ガス流量:40[sccm]
・RFパワー:200[W]
・真空度:0.050[Torr](=6.666[Pa])
図3(c)に示すように、ドライエッチングの実行後では、領域Aにだけ低屈折率層154が残る。
【0032】
図4(a)に示すように、マスク601を除去した後、露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層1550を積層する。低屈折率準備層1550の形成にも、例えば、高周波スパッタ装置を用いることができる。なお、低屈折率準備層1550の膜厚は、49[nm]とする。そして、図4(b)に示すように、領域A、Cにおける低屈折率準備層1550上にマスク602を形成する。そして、この状態において、ドライエッチングを実行する。
【0033】
図4(c)に示すように、領域A、Cでは、低屈折率層155が残り、他の部分では、高屈折率層153が露出した状態となる。続いて、図4(d)に示すように、露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層1560を積層し、さらに、図5(a)に示すように、領域A、C、D、Eにおける低屈折率準備層1560上に、マスク603を形成する。そして、ドライエッチングを施し、その後にマスク603を除去することにより、図5(b)に示すように、領域A、C、D、Eでは、最上面に低屈折率層156が残り、他の部分(領域Bに相当する部分)では高屈折率層153が露出する状態となる。
【0034】
上記において、低屈折率準備層1560の膜厚は、上記表1に示す通り、46[nm]である。
図5(c)に示すように、低屈折率層157、高屈折率層158、低屈折率層159、高屈折率層160および低屈折率準備層1610を順に積層する。これらの層157〜160、1610の積層に際しても、スパッタリング法または蒸着法を採用することができる。ここで、高屈折率層158と高屈折率層160とで低屈折率層159を挟んだ積層体が、上側λ/4多層膜を構成する。
【0035】
図6(a)に示すように、領域Aにおける低屈折率準備層1610上にマスク604を形成する。そして、この状態でドライエッチングを実行することにより、領域Aを除く部分の低屈折率準備層1610を除去する。図6(b)に示すように、ドライエッチングの実行により、領域Aでは、低屈折率層161が残り、他の部分では、高屈折率層160が露出した状態となる。
【0036】
図6(c)に示すように、 露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層1620を積層し、さらに、図6(d)に示すように、領域A、Cにおける低屈折率準備層1620上に、マスク605を形成する。そして、この状態でドライエッチングを施し、領域A、Cを除く部分の低屈折率層1620を除去する。マスク605を除去すると、図7(a)に示すように、領域A、Cでは、低屈折率層162が露出し、他の部分では、高屈折率層160が露出する。
【0037】
次に、上述の積層工程と同様に、露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層を積層し、マスクを形成してドライエッチングを施す。これにより、領域A、C、D、Eを除く部分における上記低屈折率準備層を除去し、図7(b)に示すように、領域A、C、D、Eにおいて低屈折率層163が露出し、領域Bにおいて高屈折率層160が露出する。
続いて、図7(c)に示すように、露出面全体にSiO2からなる低屈折率層164とTiO2からなる高屈折率層165を順に積層する。
【0038】
以上のようにして、本実施の形態に係る固体撮像装置10の多層干渉フィルタ15が形成される。
5.固体撮像装置10およびこれを備えるカメラ1の優位性
本実施の形態に係る固体撮像装置10およびこれを備えるカメラ1の優位性について、図8および図9を用い説明する。図8(a)は、多層干渉フィルタ15における光の透過状態を示す模式図であり、図8(b)は、多層干渉フィルタ15の分光特性を、マトリクス法を用い算出した評価結果を示す特性図である。
【0039】
先ず、図8(a)に示すように、多層干渉フィルタ15においては、領域Aでは、緑色の波長帯域成分を透過し、領域Bでは、赤色の波長帯域成分を透過し、領域Cでは、青色の波長帯域成分を透過する。即ち、これら濾光領域A、B、Cでは、各々の領域の下に形成されているフォトダイオード13に応じて透過する光の波長帯域成分が調整されている。
【0040】
具体的に、領域Aでは、図8(b)に示すように、530[nm]にピークを有する波長帯域成分が透過するように、スペーサ層が185[nm]の2段構成となっている。同じように、領域Bでは、610[nm]にピークを有する波長帯域成分が透過するように、スペーサ層が45[nm]の2段構成となり、領域Cでは、450[nm]の波長帯域成分が透過するように、スペーサ層が140[nm]の2段構成となっている。
【0041】
一方、領域D、Eでは、スペーサ層が91[nm]の2段構成となっており、図8(b)にも示す通り、可視波長域の略全域で透過率が低減される。具体的に、領域A、Bについては、緑色以外の波長領域における透過率が10[%]まで低減され、赤色の波長領域における透過率が5[%]まで低減されている。また、領域Cでは、短波長側の帯域幅が増加している。
【0042】
波長選択性という観点からは、透過させようとする波長域以外の透過率としては、より低い方が波長選択性がよいということになる。また、領域D、Eについても、可視光領域の透過率が5[%]に抑えられている。
以上のように、本実施の形態に係る固体撮像装置10では、多層干渉フィルタ15における領域D、Eに、上述のような、遮光機能をもたせ、これにより層間絶縁膜14中に従来のような遮光膜を形成しなくても、十分に混色の防止が図られる。特に、本実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の構成を採用することにより、特に、画素サイズの微細化が図られる場合に、特に顕著な優位性となる。
【0043】
次に、製造上における優位性について、図9を用い説明する。
図9(a)に示すように、本実施の形態に係る固体撮像装置10では、層間絶縁膜14中に遮光膜を形成する必要がなく、このため、層間絶縁膜14の平坦化を実施する必要がない。このため、層間絶縁膜14の平坦化を行うことなく多層干渉フィルタ15を形成し、続いて平坦化準備膜1660を形成する。なお、平坦化準備膜1660の表面1660fは、多層干渉フィルタ15の表面形状に沿って凹凸を有する。
【0044】
マイクロレンズ17を形成するために(図2(a)を参照。)、平坦化準備膜1660の表面1660fを平坦化し、図9(b)に示すような、平坦な表面16を有する平坦化膜16とする。
一方、図11に示す従来技術に係る固体撮像装置の製造においては、層間絶縁膜94a上に金属材料からなる遮光膜98を形成し、層間絶縁膜94bを積層する。この状態では、層間絶縁膜94bの表面には遮光膜98に起因する凹凸が表面に存在する。このため、多層干渉フィルタ95を形成する前に、一旦その表面を平坦化する必要がある。多層干渉フィルタ95上の平坦化膜96の表面を平坦化するのは、上記本実施の形態と同様である。即ち、従来技術に係る固体撮像装置の製造においては、遮光膜98の形成に起因して、本実施の形態に係る固体撮像装置10の製造よりも1回多く平坦化を実施する必要がある。
【0045】
以上より、本実施の形態に係る固体撮像装置10では、多層干渉フィルタ15の領域D、Eに遮光膜としての機能を担わせているので、その製造において、従来技術に係る固体撮像装置よりも平坦化工程を1回少なくできる。
(変形例)
変形例に係る固体撮像装置およびカメラについて、図10を用い説明する。なお、本変形例に係る固体撮像装置およびカメラは、多層干渉フィルタ25の構成を除き、上記実施の形態に係る固体撮像装置10およびカメラ1と同一構造を有するので、差異部分である多層干渉フィルタ25の構造および特性だけを以下で説明する。
【0046】
図10(a)に示すように、本変形例に係る多層干渉フィルタ25でも、フォトダイオードの配列方向に沿う方向において、各フォトダイオードの上方に相当する領域F、G、Hと、領域Fと領域Gとの境界領域である領域I、領域Gと領域Hとの境界領域である領域Jとを有している。領域F、G、Hでは、λ/4多層膜とλ/4多層膜との間のスペーサ層の有無、およびスペーサ層の膜厚により、透過波長帯域が設定されている。なお、本変形例では、領域Fが青色領域であり、領域Gが緑色領域であり、領域Hが赤色領域であり、領域I、Jが遮光領域である。
【0047】
図10(a)に示すように、本変形例においても、高屈折率層251、253と低屈折率層252の積層体、および高屈折率層258、260と低屈折率層259との積層体でλ/4多層膜が各々構成されている。λ/4多層膜の中心波長は、上記実施の形態と同様に、530[nm]に設定されている。
領域Gでは、上下のλ/4多層膜の間にはスペーサ層が介挿されていない構造となっている。領域Fでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に3層の低屈折率層254、255、256が介挿されている。領域Hでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に1層の低屈折率層256が介挿されている。
【0048】
一方、境界領域である領域I、Jでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に2層の低屈折率層255、256が介挿されている。低屈折率層255と低屈折率層256との合計膜厚は、91[nm]に設定されている。
なお、本変形例に係る多層干渉フィルタ25においても、高屈折率層251、253、258、260の構成材料としてTiO2が用いられ、低屈折率層252、254、255、256、259の構成材料としてSiO2が用いられている。
【0049】
本変形例に係る多層干渉フィルタ25では、領域I、Jにおいて、低屈折率層255、256で構成される1段のスペーサ層を採用している。この場合の分光特性を図10(b)に示す。
図10(b)に示すように、本変形例に係る多層干渉フィルタ25では、領域I、Jにおいて、合計膜厚91[nm]のスペーサ層を含むことで可視波長域(波長が400[nm]〜700[nm]の範囲)での透過率の低減がなされる。なお、分光帯域幅や波長選択性などの分光特性という観点からは、上記実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の方が優れるが、本変形例に係る多層干渉フィルタ25は、その絶対的な物率的膜厚を薄くすることができる。よって、本変形例に係る多層干渉フィルタ25を備える固体撮像装置では、入射光がフォトダイオードに到達するまでの減衰という観点から優位である。よって、高い感度特性を有する。
【0050】
(その他の事項)
上記実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の形成においては、低屈折率準備層1540、1550、1560、1610、1620の除去にドライエッチングを採用することとしているが、これに限らず、ウェットエッチングを採用することも可能である。即ち、SiO2とTiO2とは、フッ化水素酸に対する選択比が大きいため、低屈折率準備層1540のエッチングに、フッ化水素酸等を用いたウェットエッチングを採用することもできる。なお、このようにウェットエッチングを採用する場合には、フッ化水素酸とフッ化アンモニウム溶液とを1:4の割合で混合したものを用いることが望ましい。
【0051】
ウェットエッチングを採用する場合には、ワークを上記混合溶液に5[秒]浸してエッチングを行い、有機溶剤等を用いてレジストの除去を行うことが望ましい。
また、上記実施の形態および変形例では、高屈折率層151、153、158、160、165、251、253、258、260の構成材料としてTiO2を採用し、低屈折率層 152、154、155、156、157、159、161、162、163、164、252、254、255、256、259の構成材料としてSiO2を採用したが、本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタの構成材料がこれに限定されるものではない。例えば、高屈折率層の構成材料として、窒化シリコン(Si3N4)や三酸化ニタンタル(Ta2O3)や二酸化ジルコニウム(ZrO2)などを採用することも可能であり、低屈折率層の構成材料についても、同様に他の材料を採用することができる。
【0052】
また、上記実施の形態および変形例では、スペーサ層の構成材料にもSiO2を採用したが、本発明では、これ以外の材料を用いてスペーサ層を構成することもできる。
さらに、上記実施の形態に係る多層干渉フィルタ15のように2段以上の構成のスペーサ層を介挿させる場合には、互いに異なる材料からスペーサ層を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、固体撮像装置およびこれを備えるカメラにおいて、優れた分光特性を維持しながら微細な画素構成を実現するのに有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は、実施の形態に係るカメラ1の構成を示すブロック図であり、(b)は、固体撮像装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、固体撮像装置10の画素領域の構成を示す模式断面図であり、(b)は、多層干渉フィルタ15の構成を示す模式断面図である。
【図3】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図4】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図5】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図6】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図7】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図8】(a)は、多層干渉フィルタ15における光透過状態を示す模式断面図であり、(b)は、その分光特性を示す特性図である。
【図9】多層干渉フィルタ15上の平坦化膜16の形成方法を示す工程図である。
【図10】(a)は、変形例に係る多層干渉フィルタ25における光透過状態を示す模式断面図であり、(b)は、その分光特性を示す特性図である。
【図11】従来技術に係る固体撮像装置の構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1.カメラ
10.固体撮像装置
11.半導体基板
12.p型半導体層
13.フォトダイオード
14.層間絶縁膜
15、25.多層干渉フィルタ
16.平坦化膜
17.マイクロレンズ
20.レンズ
30.色信号合成部
40.映像信号作成部
50.駆動部
100.撮像画素
101.垂直シフトレジスタ
102.水平シフトレジスタ
103.出力アンプ
104.駆動回路
151、153、158、160、165、251、253、258、260.高屈折率層
152、154、155、156、157、159、161、162、163、164、252、254、255、256、259.低屈折率層
601、602、603、604、605.レジストマスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置およびカメラに関し、特に、多層干渉フィルタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタルカメラや携帯電話機などで固体撮像装置が広く用いられている。固体撮像装置の構造、特に画素領域の構造について、図11を用い説明する。
図11に示すように、固体撮像装置の画素領域では、n型の半導体基板91上にp型半導体層92が形成され、さらに、層間絶縁膜94a、94b、多層干渉フィルタ95、平坦化膜96、マイクロレンズ97が順に積層・形成されている。p型半導体層92と層間絶縁膜94aとの境界部分からp型半導体層92の厚み方向内方に向けて、互いに間隔をあけた状態でフォトダイオード93が形成されている。固体撮像装置においては、各フォトダイオード93に対応して画素が構成される。
【0003】
層間絶縁膜94aと層間絶縁膜94bとの境界部分であって、各フォトダイオード93の間に相当する領域には、遮光膜98が形成されている。そして、多層干渉フィルタ95は、例えば、二酸化チタンと二酸化シリコンとの積層構成が採用されており、その積層構成の差異により、透過光の波長が規定される(特許文献1)。
【特許文献1】国際公開WO2005/069376A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の固体撮像装置では、画素領域において、隣接画素間での混色という問題を生じることがある。マイクロレンズ97を介して入射された光は、多層干渉フィルタ95で各画素に応じた波長帯域だけが透過されるのであるが、斜め入射された光Lが隣接する画素のフォトダイオード93へと入射することがある。即ち、従来の固体撮像装置においては、多層干渉フィルタ95と遮光膜98とが、その間に層間絶縁膜94bが介挿され基板厚み方向に距離をおいているため、光Lが隣接する画素のフォトダイオードへと入射してしまう。このような固体撮像装置では、色分離機能の低下、雑音の増加、あるいは波長感度の低下といった問題を有する。
【0005】
特に、上記混色の問題は、画素のサイズを小さくしようとすればするほど顕在化してくる。
本発明は、上記課題を解決しようとなされたものであって、画素のサイズにかかわらず、斜め入射光に起因する混色を確実に抑制し、高い色分離機能、低い雑音、および高い波長感度とを有する固体撮像装置およびカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、次の構成を採用する。
本発明に係る固体撮像装置は、複数のフォトダイオードが、互いに間隔をあけた状態で二次元配置されてなる半導体基板と、当該半導体基板の厚み方向上方に配された多層干渉フィルタとを有する。そして、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタが、その厚み方向において、スペーサ層(絶縁体層)の両側がλ/4多層膜により挟まれてなる積層構造を有する。ここで、λ/4多層膜は、互いに屈折率が異なる誘電体層が積層された積層体である。
【0007】
また、本発明に係る固体撮像装置の多層干渉フィルタは、フォトダイオードの配置方向に沿う方向において、複数のフォトダイオードの各々の上方に相当する濾光領域と、隣接する濾光領域間の境界領域とを有するものであって、積層構造におけるスペーサ層の膜厚が、濾光領域では、入射された光の可視波長帯域から対応するフォトダイオードに応じた波長帯域成分を選択的に透過する値であって、境界領域では、少なくとも可視波長帯域について、何れの濾光領域よりも透過光量が抑制される値に規定されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るカメラは、上記本発明に係る固体撮像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタの境界領域において、積層構造におけるスペーサ層の膜厚(物理的膜厚)が、何れの濾光領域よりも可視波長帯域の透過光量が抑制される値に規定されている。即ち、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタにおける境界領域で確実に可視光の透過を抑制することができ、隣接するフォトダイオードに不所望の波長帯域成分の光が入射し難く、混色を生じ難い。また、本発明に係る固体撮像装置では、隣接するフォトダイオードへの可視光の漏洩を抑制できるので、高い波長感度を有する。
【0010】
また、本発明に係る固体撮像装置では、多層干渉フィルタにおける境界領域で可視波長帯域の透過光量を抑制するので、小さな画素サイズを採用する場合にも、確実に可視光の漏洩を抑制することができる。
従って、本発明に係る固体撮像装置では、画素のサイズにかかわらず、斜め入射光に起因する混色を確実に抑制し、高い色分離機能、低い雑音、および高い波長感度とを有する。
【0011】
また、本発明に係るカメラは、上記本発明に係る固体撮像装置を備えるので、上述の効果を得ることができる。
本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、次のようなバリエーションを採用することができる。
上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタにおけるスペーサ層の膜厚を、濾光領域ではλ/4以外の光学膜厚とし、境界領域ではλ/4の光学膜厚とする構成を採用することができる。
【0012】
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタにおけるスペーサ層が、少なくとも2層の要素膜が積層されてなる構成を備える、という構成を採用することができる。
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタの濾光領域が、入射された光から赤色の波長帯域成分を選択的に透過させる赤色透過部と、緑色の波長帯域成分を選択的に透過させる緑色透過部と、青色の波長帯域成分を透過させる青色透過部とを有し、赤色透過部および緑色透過部および青色透過部では、互いにスペーサ層の膜厚が相違する、という構成を採用することができる。
【0013】
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、λ/4多層膜の設定中心波長λを530[nm]とするとき、多層干渉フィルタの境界領域におけるスペーサ層の膜厚が91[nm]である、という構成を採用することができる。
また、上記本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタと半導体基板との間に遮光膜が形成されていない、という構成を採用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態)
1.カメラ1の構成
本実施の形態に係るカメラ1の構成について、図1(a)を用い説明する。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係るカメラ1は、固体撮像装置10、レンズ20、色信号合成部30、映像信号作成部40および駆動部50などから構成されている。カメラ1に入射した光は、レンズ20により固体撮像装置10の画素領域に集光される。固体撮像装置10では、各画素ごとに、入射光量に応じた色信号を生成し色信号合成部30へと出力する。固体撮像装置10および色信号合成部30は、駆動部50からの駆動信号に応じて駆動される。
【0015】
色信号合成部30では、入力された色信号に対し、色シェーディングを施し、当該色信号を映像信号作成部40へと出力する。映像信号作成部40では、色シェーディングが施された色信号からカラー映像信号を作成する。
2.固体撮像装置10の構成
固体撮像装置10の構成について、図1(b)を用い説明する。
【0016】
図1(b)に示すように、固体撮像装置10は、半導体基板を共通のベースとして、複数の画素100と、各回路部101〜104とが形成されてなる構成を有する。複数の画素100は、マトリクス状に配され、画素領域を構成している。
垂直シフトレジスタ101および水平シフトレジスタ102は、ともにダイナミック回路であり、駆動回路104からの駆動信号(電圧信号、タイミング信号)に基づき、複数の画素100を順次駆動する。
【0017】
各画素100から出力された画素信号は、出力アンプ103で増幅されて色信号合成部30へと出力される(図1(a)を参照)。
3.固体撮像装置10における画素領域の構成
次に、固体撮像装置1における画素領域の構成について、図2(a)を用い説明する。
図2(a)に示すように、固体撮像装置10における画素領域では、n型の半導体基板11上にp型半導体層12が積層され、さらにその上には、層間絶縁膜14が積層されている。p型半導体層12と層間絶縁膜14との境界から、p型半導体層12の厚み方向(Z軸方向)下向きには、互いに間隔をあけた状態で複数のフォトダイオード13が形成されている。フォトダイオード13は、半導体基板11の主面に沿う方向(Z軸に直交する方向)において、例えば、マトリクス状などの形態をもって二次元配置されている(図1(b)における画素配列に相当)。
【0018】
層間絶縁膜14上には、多層干渉フィルタ15、平坦化膜16が順に積層され、その上には、各フォトダイオード13に対応してマイクロレンズ17が形成されている。平坦化膜16は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)などの透明材料から構成されている。
多層干渉フィルタ15は、各フォトダイオード13に対応して厚みが相違しているとともに、フォトダイオード13に対応して領域ごとに透過帯域が規定されている。
【0019】
4.多層干渉フィルタ15の構成
多層干渉フィルタ15は、λ/4多層膜とスペーサ層との積層構成を有している。その構成について、図2(b)を用い説明する。
図2(b)に示すように、多層干渉フィルタ15は、フォトダイオード13の配置方向(Z軸に直交する方向)において、領域A〜領域Eに分けられる。領域A〜Cは、フォトダイオード13に対応してその上方に設けられ、領域Dおよび領域Eは、領域Aと領域Bとの間、および領域Bと領域Cとの間にそれぞれ設けられている。
【0020】
各領域A〜Eは、多層干渉フィルタ15の厚み方向(Z軸方向)において、スペーサ層の両側がλ/4多層膜で挟まれた構造となっており、領域A〜Eごとにスペーサ層の膜厚が相違する。ここで、λ/4多層膜は、所定の波長λの1/4に略等しい光学膜厚を有し、屈折率が互いに異なる2種類の誘電体層の積層構造を有する。具体的には、本実施の形態において、低屈折率層152、159の厚み方向の各両側が高屈折率層151、153および高屈折率層158、160でそれぞれ挟まれた構成を有する。なお、λ/4多層膜は、中心波長λを530[nm]として、その光学膜厚が設定されている。
【0021】
上記において、「光学膜厚」とは、物理膜厚に屈折率を乗じて得られる指数を意味する。
領域Aでは、Z軸方向下側に配されたλ/4多層膜(層151〜153の積層体であって、以下では、「下側λ/4多層膜」と記載する。)の高屈折率層153と、Z軸方向上側に配されたλ/4多層膜(層158〜160の積層体であって、以下では、「上側λ/4多層膜」と記載する。)の高屈折率層158との間に、4層の低屈折率層154〜157が介挿されている。また、領域Aでは、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、4層の低屈折率層161〜164と高屈折率層165とが順に積層されている。
【0022】
領域Bでは、下側λ/4多層膜の高屈折率層153と上側λ/4多層膜の高屈折率層158との間に、低屈折率層157が介挿されており、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、1層の低屈折率層164と高屈折率層165とが順に積層されている。
領域Cでは、下側λ/4多層膜の高屈折率層153と上側λ/4多層膜の高屈折率層158との間に、3層の低屈折率層155〜157が介挿されており、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、3層の低屈折率層162〜164と高屈折率層165とが順に積層されている。
【0023】
領域D、Eでは、下側λ/4多層膜の高屈折率層153と上側λ/4多層膜の高屈折率層158との間に、2層の低屈折率層156、157が介挿されており、上側λ/4多層膜の高屈折率層160の上に、2層の低屈折率層163、164と高屈折率層165とが順に積層されている。
各層151〜165の構成材料およびその膜厚について、表1に示す。
【0024】
【表1】
表1にも示す通り、多層干渉フィルタ15において、領域A〜Cでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜とに挟まれる低屈折率層、即ち、スペーサ層の膜厚が領域A〜Cごとに透過させる光色に応じた光学膜厚を有する。具体的には、領域Aでは低屈折率層154〜157がスペーサ層として介挿され、領域Bでは低屈折率層157がスペーサ層として介挿され、領域Cでは低屈折率層155〜157がスペーサ層として介挿されている。
【0025】
また、高屈折率層160と高屈折率層165との間には、領域Aにおいて、低屈折率層161〜164がスペーサ層として介挿され、領域Bにおいて、低屈折率層164がスペーサ層として介挿され、領域Cにおいて、低屈折率層162〜164がスペーサ層として介挿されている。なお、スペーサ層の物理膜厚は、領域Aが185[nm]、領域Bが45[nm]、領域Cが140[nm]であり、それぞれの領域において、スペーサ層が2段形成されている。
【0026】
領域A〜Cでは、全体での物理膜厚tA〜tCも透過させる光色に応じて異なっており、tA=812[nm]、tB=532[nm]、tC=722[nm]に設定されている。なお、本実施の形態では、領域Aが緑色領域であり、領域Bが赤色領域であり、領域Cが青色領域である。
一方、多層干渉フィルタ15における領域D、Eでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に、低屈折率層156、157がスペーサ層として介挿されている。低屈折率層156、157の合計の物理膜厚は、91[nm](=46[nm]+45[nm])であり、可視光を反射させる特性を実現するように調整されている。
【0027】
また、領域D、Eでは、高屈折率層160と高屈折率層165との間にも、スペーサ層としての低屈折率層163、164が介挿されている。低屈折率層163、164の合計も物理膜厚も、91[nm](=46[nm]+45[nm])となっている。即ち、領域D、Eでは、各スペーサ層がλ/4の光学膜厚に設定されており、スペーサ層が2段形成されている。
【0028】
なお、領域D、Eでは、全体での物理膜厚tD、tEがともに624[nm]となっている。
4.多層干渉フィルタ15の形成方法
本実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の形成方法について、図3〜図7を用い説明する。なお、図3〜図7では、層間絶縁膜14よりも下の構成については、簡略のため図示を省略している。
【0029】
図3(a)に示すように、層間絶縁膜14の一方の表面上に、高屈折率層151、低屈折率層152、高屈折率層153および低屈折率準備層1540を順に積層する。これらの層151〜153、1540の積層には、高周波(RF:Radio Frequency)スパッタ装置によるスパッタリング法、若しくは、電子線や抵抗加熱による蒸着法などを用いることができる。高屈折率層151、153の構成材料には、上記表1のように、二酸化チタン(TiO2)を適用し、低屈折率層152および低屈折率準備層1540の構成材料には、二酸化シリコン(SiO2)を適用する。
【0030】
なお、図3(a)に示すように、高屈折率層151、153と低屈折率層152との積層体によって下側λ/4多層膜が構成される。
図3(b)に示すように、低屈折率準備層1540上における領域Aに、マスク601を形成する。マスク601の形成では、レジストの塗布、所謂、プリベークと呼ばれる熱処理、ステッパなどの露光装置を用いた露光、有機溶剤等によるレジストの現像、そして、ポストベークと呼ばれる熱処理を順次実行する。本実施の形態に係る形成方法では、マスク601の膜厚は、例えば、1[μm]である。
【0031】
次に、ドライエッチングを施し、領域Aを除く部分の低屈折率準備層1540を除去する。ドライエッチングの条件は、例えば、次の通りである。
・エッチングガス:CF系ガス
・ガス流量:40[sccm]
・RFパワー:200[W]
・真空度:0.050[Torr](=6.666[Pa])
図3(c)に示すように、ドライエッチングの実行後では、領域Aにだけ低屈折率層154が残る。
【0032】
図4(a)に示すように、マスク601を除去した後、露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層1550を積層する。低屈折率準備層1550の形成にも、例えば、高周波スパッタ装置を用いることができる。なお、低屈折率準備層1550の膜厚は、49[nm]とする。そして、図4(b)に示すように、領域A、Cにおける低屈折率準備層1550上にマスク602を形成する。そして、この状態において、ドライエッチングを実行する。
【0033】
図4(c)に示すように、領域A、Cでは、低屈折率層155が残り、他の部分では、高屈折率層153が露出した状態となる。続いて、図4(d)に示すように、露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層1560を積層し、さらに、図5(a)に示すように、領域A、C、D、Eにおける低屈折率準備層1560上に、マスク603を形成する。そして、ドライエッチングを施し、その後にマスク603を除去することにより、図5(b)に示すように、領域A、C、D、Eでは、最上面に低屈折率層156が残り、他の部分(領域Bに相当する部分)では高屈折率層153が露出する状態となる。
【0034】
上記において、低屈折率準備層1560の膜厚は、上記表1に示す通り、46[nm]である。
図5(c)に示すように、低屈折率層157、高屈折率層158、低屈折率層159、高屈折率層160および低屈折率準備層1610を順に積層する。これらの層157〜160、1610の積層に際しても、スパッタリング法または蒸着法を採用することができる。ここで、高屈折率層158と高屈折率層160とで低屈折率層159を挟んだ積層体が、上側λ/4多層膜を構成する。
【0035】
図6(a)に示すように、領域Aにおける低屈折率準備層1610上にマスク604を形成する。そして、この状態でドライエッチングを実行することにより、領域Aを除く部分の低屈折率準備層1610を除去する。図6(b)に示すように、ドライエッチングの実行により、領域Aでは、低屈折率層161が残り、他の部分では、高屈折率層160が露出した状態となる。
【0036】
図6(c)に示すように、 露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層1620を積層し、さらに、図6(d)に示すように、領域A、Cにおける低屈折率準備層1620上に、マスク605を形成する。そして、この状態でドライエッチングを施し、領域A、Cを除く部分の低屈折率層1620を除去する。マスク605を除去すると、図7(a)に示すように、領域A、Cでは、低屈折率層162が露出し、他の部分では、高屈折率層160が露出する。
【0037】
次に、上述の積層工程と同様に、露出面全体にSiO2からなる低屈折率準備層を積層し、マスクを形成してドライエッチングを施す。これにより、領域A、C、D、Eを除く部分における上記低屈折率準備層を除去し、図7(b)に示すように、領域A、C、D、Eにおいて低屈折率層163が露出し、領域Bにおいて高屈折率層160が露出する。
続いて、図7(c)に示すように、露出面全体にSiO2からなる低屈折率層164とTiO2からなる高屈折率層165を順に積層する。
【0038】
以上のようにして、本実施の形態に係る固体撮像装置10の多層干渉フィルタ15が形成される。
5.固体撮像装置10およびこれを備えるカメラ1の優位性
本実施の形態に係る固体撮像装置10およびこれを備えるカメラ1の優位性について、図8および図9を用い説明する。図8(a)は、多層干渉フィルタ15における光の透過状態を示す模式図であり、図8(b)は、多層干渉フィルタ15の分光特性を、マトリクス法を用い算出した評価結果を示す特性図である。
【0039】
先ず、図8(a)に示すように、多層干渉フィルタ15においては、領域Aでは、緑色の波長帯域成分を透過し、領域Bでは、赤色の波長帯域成分を透過し、領域Cでは、青色の波長帯域成分を透過する。即ち、これら濾光領域A、B、Cでは、各々の領域の下に形成されているフォトダイオード13に応じて透過する光の波長帯域成分が調整されている。
【0040】
具体的に、領域Aでは、図8(b)に示すように、530[nm]にピークを有する波長帯域成分が透過するように、スペーサ層が185[nm]の2段構成となっている。同じように、領域Bでは、610[nm]にピークを有する波長帯域成分が透過するように、スペーサ層が45[nm]の2段構成となり、領域Cでは、450[nm]の波長帯域成分が透過するように、スペーサ層が140[nm]の2段構成となっている。
【0041】
一方、領域D、Eでは、スペーサ層が91[nm]の2段構成となっており、図8(b)にも示す通り、可視波長域の略全域で透過率が低減される。具体的に、領域A、Bについては、緑色以外の波長領域における透過率が10[%]まで低減され、赤色の波長領域における透過率が5[%]まで低減されている。また、領域Cでは、短波長側の帯域幅が増加している。
【0042】
波長選択性という観点からは、透過させようとする波長域以外の透過率としては、より低い方が波長選択性がよいということになる。また、領域D、Eについても、可視光領域の透過率が5[%]に抑えられている。
以上のように、本実施の形態に係る固体撮像装置10では、多層干渉フィルタ15における領域D、Eに、上述のような、遮光機能をもたせ、これにより層間絶縁膜14中に従来のような遮光膜を形成しなくても、十分に混色の防止が図られる。特に、本実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の構成を採用することにより、特に、画素サイズの微細化が図られる場合に、特に顕著な優位性となる。
【0043】
次に、製造上における優位性について、図9を用い説明する。
図9(a)に示すように、本実施の形態に係る固体撮像装置10では、層間絶縁膜14中に遮光膜を形成する必要がなく、このため、層間絶縁膜14の平坦化を実施する必要がない。このため、層間絶縁膜14の平坦化を行うことなく多層干渉フィルタ15を形成し、続いて平坦化準備膜1660を形成する。なお、平坦化準備膜1660の表面1660fは、多層干渉フィルタ15の表面形状に沿って凹凸を有する。
【0044】
マイクロレンズ17を形成するために(図2(a)を参照。)、平坦化準備膜1660の表面1660fを平坦化し、図9(b)に示すような、平坦な表面16を有する平坦化膜16とする。
一方、図11に示す従来技術に係る固体撮像装置の製造においては、層間絶縁膜94a上に金属材料からなる遮光膜98を形成し、層間絶縁膜94bを積層する。この状態では、層間絶縁膜94bの表面には遮光膜98に起因する凹凸が表面に存在する。このため、多層干渉フィルタ95を形成する前に、一旦その表面を平坦化する必要がある。多層干渉フィルタ95上の平坦化膜96の表面を平坦化するのは、上記本実施の形態と同様である。即ち、従来技術に係る固体撮像装置の製造においては、遮光膜98の形成に起因して、本実施の形態に係る固体撮像装置10の製造よりも1回多く平坦化を実施する必要がある。
【0045】
以上より、本実施の形態に係る固体撮像装置10では、多層干渉フィルタ15の領域D、Eに遮光膜としての機能を担わせているので、その製造において、従来技術に係る固体撮像装置よりも平坦化工程を1回少なくできる。
(変形例)
変形例に係る固体撮像装置およびカメラについて、図10を用い説明する。なお、本変形例に係る固体撮像装置およびカメラは、多層干渉フィルタ25の構成を除き、上記実施の形態に係る固体撮像装置10およびカメラ1と同一構造を有するので、差異部分である多層干渉フィルタ25の構造および特性だけを以下で説明する。
【0046】
図10(a)に示すように、本変形例に係る多層干渉フィルタ25でも、フォトダイオードの配列方向に沿う方向において、各フォトダイオードの上方に相当する領域F、G、Hと、領域Fと領域Gとの境界領域である領域I、領域Gと領域Hとの境界領域である領域Jとを有している。領域F、G、Hでは、λ/4多層膜とλ/4多層膜との間のスペーサ層の有無、およびスペーサ層の膜厚により、透過波長帯域が設定されている。なお、本変形例では、領域Fが青色領域であり、領域Gが緑色領域であり、領域Hが赤色領域であり、領域I、Jが遮光領域である。
【0047】
図10(a)に示すように、本変形例においても、高屈折率層251、253と低屈折率層252の積層体、および高屈折率層258、260と低屈折率層259との積層体でλ/4多層膜が各々構成されている。λ/4多層膜の中心波長は、上記実施の形態と同様に、530[nm]に設定されている。
領域Gでは、上下のλ/4多層膜の間にはスペーサ層が介挿されていない構造となっている。領域Fでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に3層の低屈折率層254、255、256が介挿されている。領域Hでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に1層の低屈折率層256が介挿されている。
【0048】
一方、境界領域である領域I、Jでは、下側λ/4多層膜と上側λ/4多層膜との間に2層の低屈折率層255、256が介挿されている。低屈折率層255と低屈折率層256との合計膜厚は、91[nm]に設定されている。
なお、本変形例に係る多層干渉フィルタ25においても、高屈折率層251、253、258、260の構成材料としてTiO2が用いられ、低屈折率層252、254、255、256、259の構成材料としてSiO2が用いられている。
【0049】
本変形例に係る多層干渉フィルタ25では、領域I、Jにおいて、低屈折率層255、256で構成される1段のスペーサ層を採用している。この場合の分光特性を図10(b)に示す。
図10(b)に示すように、本変形例に係る多層干渉フィルタ25では、領域I、Jにおいて、合計膜厚91[nm]のスペーサ層を含むことで可視波長域(波長が400[nm]〜700[nm]の範囲)での透過率の低減がなされる。なお、分光帯域幅や波長選択性などの分光特性という観点からは、上記実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の方が優れるが、本変形例に係る多層干渉フィルタ25は、その絶対的な物率的膜厚を薄くすることができる。よって、本変形例に係る多層干渉フィルタ25を備える固体撮像装置では、入射光がフォトダイオードに到達するまでの減衰という観点から優位である。よって、高い感度特性を有する。
【0050】
(その他の事項)
上記実施の形態に係る多層干渉フィルタ15の形成においては、低屈折率準備層1540、1550、1560、1610、1620の除去にドライエッチングを採用することとしているが、これに限らず、ウェットエッチングを採用することも可能である。即ち、SiO2とTiO2とは、フッ化水素酸に対する選択比が大きいため、低屈折率準備層1540のエッチングに、フッ化水素酸等を用いたウェットエッチングを採用することもできる。なお、このようにウェットエッチングを採用する場合には、フッ化水素酸とフッ化アンモニウム溶液とを1:4の割合で混合したものを用いることが望ましい。
【0051】
ウェットエッチングを採用する場合には、ワークを上記混合溶液に5[秒]浸してエッチングを行い、有機溶剤等を用いてレジストの除去を行うことが望ましい。
また、上記実施の形態および変形例では、高屈折率層151、153、158、160、165、251、253、258、260の構成材料としてTiO2を採用し、低屈折率層 152、154、155、156、157、159、161、162、163、164、252、254、255、256、259の構成材料としてSiO2を採用したが、本発明に係る固体撮像装置およびカメラでは、多層干渉フィルタの構成材料がこれに限定されるものではない。例えば、高屈折率層の構成材料として、窒化シリコン(Si3N4)や三酸化ニタンタル(Ta2O3)や二酸化ジルコニウム(ZrO2)などを採用することも可能であり、低屈折率層の構成材料についても、同様に他の材料を採用することができる。
【0052】
また、上記実施の形態および変形例では、スペーサ層の構成材料にもSiO2を採用したが、本発明では、これ以外の材料を用いてスペーサ層を構成することもできる。
さらに、上記実施の形態に係る多層干渉フィルタ15のように2段以上の構成のスペーサ層を介挿させる場合には、互いに異なる材料からスペーサ層を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、固体撮像装置およびこれを備えるカメラにおいて、優れた分光特性を維持しながら微細な画素構成を実現するのに有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は、実施の形態に係るカメラ1の構成を示すブロック図であり、(b)は、固体撮像装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、固体撮像装置10の画素領域の構成を示す模式断面図であり、(b)は、多層干渉フィルタ15の構成を示す模式断面図である。
【図3】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図4】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図5】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図6】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図7】多層干渉フィルタ15の形成方法を示す工程図である。
【図8】(a)は、多層干渉フィルタ15における光透過状態を示す模式断面図であり、(b)は、その分光特性を示す特性図である。
【図9】多層干渉フィルタ15上の平坦化膜16の形成方法を示す工程図である。
【図10】(a)は、変形例に係る多層干渉フィルタ25における光透過状態を示す模式断面図であり、(b)は、その分光特性を示す特性図である。
【図11】従来技術に係る固体撮像装置の構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1.カメラ
10.固体撮像装置
11.半導体基板
12.p型半導体層
13.フォトダイオード
14.層間絶縁膜
15、25.多層干渉フィルタ
16.平坦化膜
17.マイクロレンズ
20.レンズ
30.色信号合成部
40.映像信号作成部
50.駆動部
100.撮像画素
101.垂直シフトレジスタ
102.水平シフトレジスタ
103.出力アンプ
104.駆動回路
151、153、158、160、165、251、253、258、260.高屈折率層
152、154、155、156、157、159、161、162、163、164、252、254、255、256、259.低屈折率層
601、602、603、604、605.レジストマスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフォトダイオードが、互いに間隔をあけた状態で二次元配置されてなる半導体基板と、当該半導体基板の厚み方向上方に配された多層干渉フィルタとを有する固体撮像装置であって、
前記多層干渉フィルタは、その厚み方向において、スペーサ層の両側がλ/4多層膜により挟まれてなる積層構造を有するとともに、前記フォトダイオードの配置方向に沿う方向において、前記複数のフォトダイオードの各々の上方に相当する濾光領域と、隣接する濾光領域間の境界領域とを有し、
前記λ/4多層膜は、互いに屈折率が異なる誘電体層の積層体であり、
前記積層構造における前記スペーサ層の膜厚は、前記濾光領域において、入射された光の可視波長帯域から、対応する前記フォトダイオードに応じた波長帯域成分を選択的に透過する値であって、前記境界領域において、少なくとも可視波長帯域について、何れの前記濾光領域よりも透過光量が抑制される値に規定されている
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記多層干渉フィルタでは、
前記濾光領域における前記スペーサ層の膜厚がλ/4以外の光学膜厚に設定され、
前記境界領域における前記スペーサ層の膜厚がλ/4の光学膜厚に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記多層干渉フィルタにおける前記スペーサ層は、少なくとも2層の要素膜が積層されてなる構成である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記多層干渉フィルタの前記濾光領域は、入射された光から赤色の波長帯域成分を選択的に透過させる赤色透過部と、緑色の波長帯域成分を選択的に透過させる緑色透過部と、青色の波長帯域成分を透過させる青色透過部とを有し、
前記赤色透過部および前記緑色透過部および前記青色透過部では、互いに前記スペーサ層の膜厚が相違する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記多層干渉フィルタでは、λ/4多層膜の中心波長λが530nmに設定されているとき、前記境界領域における前記スペーサ層の膜厚は、91nmに設定されている
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記多層干渉フィルタと前記半導体基板との間には、光を遮蔽する遮光膜が形成されていない
ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の固体撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の固体撮像装置を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項1】
複数のフォトダイオードが、互いに間隔をあけた状態で二次元配置されてなる半導体基板と、当該半導体基板の厚み方向上方に配された多層干渉フィルタとを有する固体撮像装置であって、
前記多層干渉フィルタは、その厚み方向において、スペーサ層の両側がλ/4多層膜により挟まれてなる積層構造を有するとともに、前記フォトダイオードの配置方向に沿う方向において、前記複数のフォトダイオードの各々の上方に相当する濾光領域と、隣接する濾光領域間の境界領域とを有し、
前記λ/4多層膜は、互いに屈折率が異なる誘電体層の積層体であり、
前記積層構造における前記スペーサ層の膜厚は、前記濾光領域において、入射された光の可視波長帯域から、対応する前記フォトダイオードに応じた波長帯域成分を選択的に透過する値であって、前記境界領域において、少なくとも可視波長帯域について、何れの前記濾光領域よりも透過光量が抑制される値に規定されている
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記多層干渉フィルタでは、
前記濾光領域における前記スペーサ層の膜厚がλ/4以外の光学膜厚に設定され、
前記境界領域における前記スペーサ層の膜厚がλ/4の光学膜厚に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記多層干渉フィルタにおける前記スペーサ層は、少なくとも2層の要素膜が積層されてなる構成である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記多層干渉フィルタの前記濾光領域は、入射された光から赤色の波長帯域成分を選択的に透過させる赤色透過部と、緑色の波長帯域成分を選択的に透過させる緑色透過部と、青色の波長帯域成分を透過させる青色透過部とを有し、
前記赤色透過部および前記緑色透過部および前記青色透過部では、互いに前記スペーサ層の膜厚が相違する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記多層干渉フィルタでは、λ/4多層膜の中心波長λが530nmに設定されているとき、前記境界領域における前記スペーサ層の膜厚は、91nmに設定されている
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記多層干渉フィルタと前記半導体基板との間には、光を遮蔽する遮光膜が形成されていない
ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の固体撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の固体撮像装置を備えることを特徴とするカメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−4680(P2009−4680A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166081(P2007−166081)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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