説明

固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体

【課題】供給ガスの露点によらず、高い発電性能を有し、かつ長期間に渡って安定した発電が可能な固体高分子形燃料電池用膜を提供する。
【解決手段】スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜からなり、セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜。好ましくは、セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上は、イオンとして含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長期に渡って高い出力電圧を得られる固体高分子形燃料電池用の電解質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子膜を使用する固体高分子形燃料電池は、高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギー、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
しかしながら、カソードにおける酸素の還元反応は過酸化水素(H)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、電解質膜の劣化を引き起こす可能性が懸念されている。また、アノードには、カソードから酸素分子が電解質膜内を透過してくるため、同様に過酸化水素又は過酸化物ラジカルを生成することも懸念される。特に炭化水素系膜を固体高分子電解質膜とする場合は、ラジカルに対する安定性に乏しく、長期間にわたる運転においては大きな問題となっていた。
【0004】
一方、パーフルオロカーボン重合体としては、従来、CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOHに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位からなるスルホン酸基を有する共重合体が用いられている。このスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体は、高加湿下での運転では安定性が非常に高いものの、低加湿又は無加湿での運転条件においては、電圧低下が大きいことが報告されている(非特許文献1参照)。すなわち、低加湿又は無加湿での運転条件においては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜においても過酸化水素又は過酸化物ラジカルにより電解質膜の劣化が進行するものと考えられる。
【0005】
【非特許文献1】新エネルギー・産業技術総合開発機構主催 平成12年度固体高分子形燃料電池研究開発成果報告会要旨集、56頁16〜24行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、車載用、住宅用市場等への固体高分子形燃料電池の実用化において、長期間にわたって安定した発電が可能な固体高分子形燃料電池用電解質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、固体高分子形燃料電池において、低加湿又は無加湿での運転条件における膜の劣化を防止することを目的に鋭意検討し、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜中にセリウム原子又はマンガン原子を含有させることにより電解質膜の劣化を格段に抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明は、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜からなり、セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜を提供する。
【0009】
上記セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上は、イオンとして含まれることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上述の電解質膜を得る方法であって、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体の分散液中に、当該分散液に溶解可能なセリウム化合物又はマンガン化合物からなる群から選択される1種以上を混合した後、得られた液を用いてキャスト製膜し、電解質膜を作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、触媒を含む触媒層を有するアノード及びカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される電解質膜とを備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、前記電解質膜が上述の電解質膜からなることを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電解質膜は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対して優れた耐性を有するため、本発明の電解質膜を有する膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池は、耐久性に優れ、長期にわたって安定な発電が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電解質膜は、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜から構成される。スルホンイミド基又はホスホン酸基は、水素イオン伝導性に優れ、化学的安定性が高いことから、固体高分子形燃料電池用電解質膜を構成するイオン交換膜のイオン交換基として好適である。
【0014】
本発明においてスルホンイミド基、ホスホン酸基を有する含フッ素重合体としては特に限定されないが、耐久性の観点からパーフルオロカーボン重合体(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が好ましい。パーフルオロカーボン重合体としては特に限定されないが、下記式(1)で表されるパーフルオロ化合物に基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを含む共重合体が好ましい。
CF=CFRf1−A ・・・(1)
ただし、式(1)中、Rf1は単結合又はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい直鎖若しくは分岐構造を有するパーフルオロアルキレン基であり、Aは−SONHSOf2(Rf2はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい直鎖若しくは分岐構造を有するパーフルオロアルキル基である。)又は−PO(OH)を示す。
【0015】
上記パーフルオロ化合物の好ましい例を示すと、下記式(2)が挙げられる。
CF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−A ・・・(2)
ただし、式(2)中、mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Aは−SONHSOf2(Rf2はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい直鎖若しくは分岐構造を有するパーフルオロアルキル基である。)又は−PO(OH)を示す。
【0016】
また、上記パーフルオロ化合物のより好ましい具体例を示すと、下記式(i)〜(viii)が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、sは1〜8の整数、tは1〜3の整数、uは0〜8の整数を示す。
【0017】
【化1】

【0018】
スルホンイミド基(−SONHSOf2基、Rf2は上記と同じ意味を示す。)を有する含フッ素重合体は、対応するフルオロスルホニル基(−SOF基)を有するモノマーの−SOF基をスルホンイミド基に変換したモノマーを共重合させる、又は対応する−SOF基を有するポリマーを合成し、該ポリマーの−SOF基を変換することによって得られる。−SOF基は、Rf2SONXM(Rf2は上記と同じ意味を示し、XはH又はSiR(R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を示す。)を示し、Mはアルカリ金属又は1〜4級のアンモニウムを示す。)との反応により塩型の−SONMSOf2基に変換でき、さらに硫酸、硝酸、塩酸等の酸で処理することにより、酸型の−SONHSOf2基に変換できる。
【0019】
ホスホン酸基(−PO(OH))を有する含フッ素重合体は、対応する−PO(OR)(OR)基(R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を示す。)を有するポリマーを合成し、該ポリマーを加水分解することによって得られる。加水分解においては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸の水溶液中においてポリマー中の−PO(OR)(OR)基が加水分解され、−PO(OH)に変換される。
【0020】
イオン交換容量は、0.7〜3.0ミリ当量/g乾燥樹脂であることが好ましく、1.0〜2.6ミリ当量/g乾燥樹脂であることがより好ましく、1.2〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂であることが特に好ましい。ここでホスホン酸基(−PO(OH))のイオン交換容量とは、イオン交換膜1g中の−OH基のモル数をいう。イオン交換容量が低すぎるとイオン交換基がセリウムイオン又はマンガンイオンでイオン交換されたときプロトンの十分な伝導性を確保することができず、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。またイオン交換容量が高すぎると膜の耐水性や強度が低下するおそれがある。
【0021】
本発明の電解質膜は、膜中にセリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上が存在することにより、耐久性に優れる。膜中におけるセリウム原子又はマンガン原子の存在形態は特に限定されないが、例えば、セリウムイオン、マンガンイオン、セリウム化合物、マンガン化合物等の形態があり、特にセリウムイオン又はマンガンイオンの形態が好ましい。なお、単体金属及び合金の形態は、電解質膜が短絡する可能性があるので好ましくない。
【0022】
例えば、セリウムイオン又はマンガンイオン(以下、セリウムイオン等という。)の場合は、イオンとして存在すれば電解質膜中にどのような状態で存在してもかまわないが、イオン交換膜中のイオン交換基の一部がセリウムイオン等でイオン交換された状態を挙げることができる。また、セリウムイオン等を均一に含有している必要はない。2層以上の層からなるイオン交換膜(積層膜)であって、その全ての層ではなく少なくとも1層がセリウムイオン等でイオン交換されている、すなわち厚さ方向に不均一にセリウムイオン等を含んでいてもよい。したがって、特にアノード側について過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性を高める必要がある場合は、アノードに一番近い層のみセリウムイオン等を含有するイオン交換膜からなる層とすることもできる。
【0023】
スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体中に、セリウムイオン等を含有させて、本発明の電解質膜を得る方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
【0024】
(1)スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体の分散液中に、当該分散液に溶解可能なセリウム化合物又はマンガン化合物からなる群から選択される1種以上を混合した後、得られた液を用いてキャスト製膜し、電解質膜を作製する方法。
(2)セリウムイオン等が含まれる溶液中にスルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜を浸漬する方法。
(3)セリウム又はマンガンの有機金属錯塩をスルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜と接触させてセリウムイオン等を含有させる方法等。
上記(1)の方法が、均質な膜が得られ、工程が最も簡便であり、量産性にも優れることから好ましい。
【0025】
上記の方法によって得られる電解質膜は、イオン交換基の一部がセリウムイオン等によりイオン交換されていると考えられる。
ここでセリウムイオンは+3価でも+4価でもよく、セリウムイオンを含む溶液を得るために液状媒体(例えば、水、アルコール等)に溶解可能なセリウム化合物が使用される。+3価のセリウムイオンを含む塩を具体的に挙げると、例えば、炭酸セリウム(Ce(CO・8HO)、酢酸セリウム(Ce(CHCOO)・HO)、塩化セリウム(CeCl・6HO)、硝酸セリウム(Ce(NO・6HO)、硫酸セリウム(Ce(SO・8HO)等が挙げられる。+4価のセリウムイオンを含む塩としては、例えば、硫酸セリウム(Ce(SO・4HO)、硝酸二アンモニウムセリウム(Ce(NH(NO)、硫酸四アンモニウムセリウム(Ce(NH(SO)・4HO)等が挙げられる。またセリウムの有機金属錯塩としてはセリウムアセチルアセトナート(Ce(CHCOCHCOCH・3HO)等が挙げられる。
【0026】
マンガンイオンの場合は、価数は+2価でも+3価でもよく、マンガンイオンを含む溶液を得るために液状媒体に溶解可能なマンガン化合物が使用される。+2価のマンガンイオンを含む塩を具体的に挙げると、例えば、炭酸マンガン(MnCO)、酢酸マンガン(Mn(CHCOO)・4HO)、塩化マンガン(MnCl・4HO)、硝酸マンガン(Mn(NO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・5HO)等が挙げられる。+3価のマンガンイオンを含む塩としては、例えば、酢酸マンガン(Mn(CHCOO)・2HO)等が挙げられる。またマンガンの有機金属錯塩としてはマンガンアセチルアセトナート(Mn(CHCOCHCOCH)等が挙げられる。
【0027】
上記の化合物のなかでも、上記(1)の製法により電解質膜を作製する場合、含フッ素重合体の分散液に溶解可能なセリウム化合物又はマンガン化合物としては、炭酸セリウム又は炭酸マンガンが好ましい。含フッ素重合体の分散液中で炭酸セリウム等は溶解し、セリウムイオン等を生じると同時に、炭酸はガスとして除去できるので好ましい。また、上記(2)の製法により電解質膜を作製する場合は、硝酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸マンガン又は硫酸マンガンの水溶液を用いると、取扱いが容易であり好ましい。これらの水溶液で含フッ素重合体をイオン交換した際に生成する硝酸又は硫酸は、容易に水溶液中に溶解し、除去できる。
【0028】
セリウムイオンは、イオン交換膜に含まれるイオン交換基の0.3〜20モル%含まれることが好ましい(以下、この割合を「セリウムイオンの含有率」という。)。ここでいうイオン交換基とは、プロトンが非解離の状態、プロトンの一部又はすべてがイオン交換された状態を含む。具体的には、スルホンイミド基の場合、−SONHSO−又は−SOSO−を含む。ホスホン酸基の場合、−PO(OH)、−PO(OH)(O)又は−PO(O)(O)を含み、−OH及び−Oの酸素原子の総量を基準とする。セリウムイオンの含有率は、より好ましくは0.7〜16モル%、さらに好ましくは1〜13モル%である。セリウムイオンの含有率が上述の範囲よりも小さいと、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する十分な安定性が確保できないおそれがある。またセリウムイオンの含有率が上述の範囲よりも大きいと、水素イオンの十分な伝導性を確保することができず、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。
【0029】
マンガンイオンは、イオン交換膜に含まれるイオン交換基の0.5〜30モル%含まれることが好ましい(以下、この割合を「マンガンイオンの含有率」という。)。ここでいうイオン交換基とは、プロトンが非解離の状態、プロトンの一部又はすべてがイオン交換された状態を含む。具体的には、スルホンイミド基の場合、−SONHSO−又は−SOSO−を含み、ホスホン酸基の場合、−PO(OH)、−PO(OH)(O)又は−PO(O)(O)を含む。マンガンイオンの含有率は、より好ましくは1〜25モル%、さらに好ましくは1.5〜20モル%である。マンガンイオンの含有率がこの範囲よりも小さいと過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する十分な安定性が確保できないおそれがある。またマンガンイオンの含有率が上述の範囲よりも大きいと、水素イオンの十分な伝導性を確保することができず、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。
【0030】
なお、本発明の電解質膜が積層膜からなる場合は、電解質膜全体のイオン交換基に対するセリウムイオン等の割合が上述の範囲に入っていればよく、セリウムイオン等を含む層自体のセリウムイオン等の含有率は上述の範囲より高くてもよい。また積層膜の作製方法としては、例えば上述の(1)〜(3)のいずれかの方法によりセリウムイオン等を含む陽イオン交換膜を作製しておき、セリウムイオン等を含まないイオン交換膜と積層する工程を経て作製することが好ましいが、特に限定されない。
【0031】
電解質膜中にセリウム化合物又はマンガン化合物(以下、「セリウム化合物等」という。)を含有させることによっても、電解質膜の耐久性を向上させることもできる。セリウム化合物等が水溶性の場合は、上述のように膜中でイオンとして存在すると考えられるが、セリウム化合物等が水に難溶性であっても本発明の電解質膜は過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対して優れた耐性を有し、耐久性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のいずれかの機構を考えている。1つには、難溶性セリウム化合物等が膜中で解離する、又は部分的に溶解することによりセリウムイオン等が生成し、イオン交換基の一部がセリウムイオン等でイオン交換され、当該イオンが電解質膜の過酸化水素又は過酸化物ラジカル耐性を効果的に向上させていると考えられる。もう一つとしては、難溶性セリウム化合物等の中のセリウム元素等が、触媒層から膜中に拡散してくる過酸化水素を効果的に分解する機能を有していると考えられる。
【0032】
具体的な難溶性セリウム化合物としては、リン酸第一セリウム、リン酸第二セリウム、酸化セリウム、水酸化第一セリウム、水酸化第二セリウム、フッ化セリウム、シュウ酸セリウム、タングステン酸セリウム、ヘテロポリ酸のセリウム塩が挙げられる。難溶性マンガン化合物としては、酸化マンガン(II)、四酸化三マンガン、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酸化マンガン(VII)等が挙げられる。
【0033】
スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体中に難溶性セリウム化合物等を含有させて本発明の電解質膜を得る方法は特に限定されないが、例えば以下の(4)〜(6)の方法が挙げられる。
【0034】
(4)イオン交換基を有する含フッ素重合体の分散液中に難溶性セリウム化合物等を添加して分散液中に含有させた後、得られた液を用いてキャスト法等により製膜する方法。このとき難溶性セリウム化合物等は該化合物を高度に分散できる溶媒(分散媒)とあらかじめ混合しておいてからイオン交換基を有する含フッ素重合体の溶液又は分散液と混合してもよい。
(5)セリウムイオン等が含まれる溶液中にイオン交換基を有する含フッ素重合体からなる膜を浸漬してイオンを膜中に含有させた後、リン酸、シュウ酸、NaFや水酸化ナトリウム等の、セリウムイオン等と反応して難溶性セリウム化合物等を形成する物質を含む溶液に浸漬して、難溶性セリウム化合物等を膜中に析出させる方法。
(6)イオン交換基を有する含フッ素重合体の分散液中に該分散液に溶解可能なセリウム化合物等を添加してイオン交換基をセリウムイオン等によりイオン交換した後、該分散液にリン酸、シュウ酸、NaFや水酸化ナトリウム等の、セリウムイオン等と反応して難溶性セリウム化合物等を形成する物質又はそれを含む溶液を添加して、該分散液中に難溶性セリウム化合物等を生成させ、得られた液を用いてキャスト法等により製膜する方法。
上記の方法のなかでも特に(6)の方法が好ましい。セリウムイオン等の置換量の制御が可能であり、また、製膜時の膜の厚み調整が可能であり均一な厚みの膜を得やすいからである。
【0035】
本発明において、電解質膜中に含まれる難溶性セリウム化合物等の好ましい割合としては、電解質膜全質量の0.3〜80%(質量比)であることが好ましく、より好ましくは0.4〜70%、さらに好ましくは0.5〜50%である。膜中の難溶性セリウム化合物等の含有量がこの範囲よりも少ないと、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する十分な安定性が確保できないおそれがある。また含有量がこの範囲よりも多いと、電流遮蔽が発生するため、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。
【0036】
本発明の電解質膜を有する固体高分子形燃料電池は、例えば以下のような構成である。すなわち、本発明の電解質膜の両面に、触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノード及びカソードが配置された膜電極接合体を備える。膜電極接合体のアノード及びカソードは、好ましくは触媒層の外側(膜と反対側)にカーボンクロスやカーボンペーパー等からなるガス拡散層が配置される。膜電極接合体の両面には、燃料ガス又は酸化剤ガスの通路となる溝が形成されセパレータが配置され、セパレータを介して膜電極接合体が複数積層されたスタックを構成し、アノード側には水素ガスが供給され、カソード側には酸素又は空気が供給される構成である。アノードにおいてはH→2H+2eの反応が起こり、カソードにおいては1/2O+2H+2e→HOの反応が起こり、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。
また、本発明の電解質膜は、アノード側に燃料ガスではなくメタノールを供給する直接メタノール燃料電池にも使用できる。
【0037】
上述の触媒層は通常の手法に従い、例えば以下のようにして得られる。まず、白金触媒又は白金合金触媒微粒子を担持させた導電性のカーボンブラック粉末とイオン交換基を有する含フッ素重合体の溶液とを混合し均一な分散液を得て、例えば以下のいずれかの方法でガス拡散電極を形成して膜電極接合体を得る。
【0038】
第1の方法は、電解質膜の両面に上記分散液を塗布し乾燥後、両面を2枚のカーボンクロス又はカーボンペーパーで密着する方法である。第2の方法は、上記分散液を2枚のカーボンクロス又はカーボンペーパー上に塗布乾燥後、分散液が塗布された面が上記電解質膜と密着するように、上記電解質膜の両面から挟みこむ方法である。なお、ここでカーボンクロス又はカーボンペーパーは触媒を含む層により均一にガスを拡散させるためのガス拡散層としての機能と集電体としての機能を有するものである。また、別途用意した基材に上記分散液を塗工して触媒層を作製し、転写等の方法により電解質膜と接合させた後に基材をはく離し、上記ガス拡散層で挟み込む方法も使用できる。
【0039】
触媒層中に含まれるイオン交換樹脂は特に限定されないが、本発明の電解質膜を構成する樹脂と同様に、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体であることが好ましい。触媒層は、本発明の電解質膜と同様にセリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上を含む触媒層は、アノードにもカソードにも適用でき、樹脂の分解は効果的に抑制されるので、固体高分子形燃料電池はさらに耐久性が付与される。
【0040】
本発明の電解質膜は、一部がセリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上を含み、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体のみからなる膜であってもよいが、他の成分を含んでいてもよく、ポリテトラフルオロエチレンやパーフルオロアルキルエーテル等の他の樹脂等の繊維、織布、不織布、多孔体等により補強されている膜であってもよい。なお、電解質膜を補強する場合、膜全体を補強してもよいが、膜周辺近くを額縁状に補強してもよい。額縁状に膜を補強すると、周辺部の強度が増すために取り扱い性が向上する。膜全体を空隙率の高い補強材で補強し、周辺部のみを空隙率が低いか又は空隙のない補強材で補強してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を具体的に実施例(例1〜6)及び比較例(例7〜13)を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
[例1]
(モノマーの合成)
下記化合物(a1)446gをフラスコに仕込み、臭素170gを滴下し、室温で20時間撹拌した。その後窒素ガスでバブリングした後、さらに系内を減圧にして過剰の臭素を追い出し、下記化合物(a2)を得た。
【0043】
トリフルオロメタンスルホンアミド39.3g、ナトリウムメトキシドの28%エタノール溶液49.8g及びメタノール40gをフラスコに仕込み、窒素気流下60℃で1時間撹拌した。得られた溶液からメタノールを除去して、トリフルオロメタンスルホンアミドのナトリウム塩を得た。この固体を乾燥窒素中で粉砕した後再度フラスコに投入し、さらにヘキサメチルジシラザン270gを投入し、140℃で16時間還流させながら機械式撹拌機にて激しく撹拌した。過剰のヘキサメチルジシラザンを初めは常圧蒸留にて、ついで130℃で4時間減圧乾燥を行い、下記化合物(b1)を合成した。
【0044】
化合物(b1)を合成したフラスコに、予め脱水蒸留しておいたアセトニトリル300mL及び化合物(a2)170gを投入し、窒素気流下加熱還流させながら5日間反応を行った。得られた反応液からアセトニトリルを留去し、80℃で減圧乾燥し、固体の下記化合物(c1)190.5gを得た。
【0045】
亜鉛16.7gとアセトニトリル200mLをフラスコに仕込み、60℃に加熱し、ジブロモエタン1.7gをゆっくりと滴下した。ついで、化合物(c1)38.6gをアセトニトリル80mLに溶解した溶液を滴下した後、80℃で20時間撹拌し反応させた。得られた溶液をろ過して亜鉛を除去し、ろ液からアセトニトリルを留去し固体を回収した。さらに得られた固体をジエチルエーテルに再溶解し水洗を行い、ジエチルエーテル層を回収した。ジエチルエーテルを留去し、さらに80℃で3時間減圧乾燥を行い、固体の下記化合物(c2)36gを得た。
【0046】
化合物(c2)36gと濃硫酸60gをフラスコに仕込み撹拌を行い、化合物(c2)を下記化合物(c3)に変換させた。ついで系内を95℃まで加熱し、減圧蒸留により主留分として下記化合物(c3)25gを回収した。
【0047】
【化2】

【0048】
(ポリマーの重合)
上記化合物(c3)7.3gを200mLの水に溶解し、1モル/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下して中和し、さらに水で希釈し300mLの水溶液とした。これを500mLオートクレーブに投入し、パーフルオロオクタン酸ナトリウム(C15COONa)を2.1g、リン酸一水素ナトリウム・7水和物(NaHPO・7HO)を3.5g、過硫酸ナトリウム(Na)を0.8g及び硫酸水素ナトリウム(NaHSO)を0.8g、仕込んだ。撹拌しながら減圧脱気と窒素加圧を繰り返し行い、系内を脱酸素した。ここにテトラフルオロエチレンを仕込んで0.5MPa(ゲージ圧)まで加圧し、この圧力を保持しつつ21℃で重合を行った。0.3MPa相当分のテトラフルオロエチレンが消費されるまで重合反応を行った。得られた重合粗液を抜き出し、濃塩酸100mLを投入し、撹拌した後ポリマーをろ過回収した。ポリマーを繰り返し水洗を行い、その後80℃で減圧乾燥した。テトラフルオロエチレンと化合物(c2)との共重合体が得られた。このポリマーのイオン交換基容量は0.97ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0049】
(電解質膜の作製)
得られたポリマーを熱プレスにより厚さ約50μmのイオン交換膜を成形した。硝酸セリウム(Ce(NO・6HO)12.0mgを500mLの蒸留水に溶解した。この中に上記イオン交換膜0.8gを浸漬し、室温で40時間、スターラーを用いて撹拌を行ってイオン交換膜中にセリウムイオンを含有させた。なお、浸漬前後の硝酸セリウム溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により分析し、イオン交換膜のセリウムイオンの含有率を算出すると10%であった。
【0050】
(膜電極接合体の作製)
CF=CF/CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOH共重合体(イオン交換容量1.2ミリ当量/g乾燥樹脂)を内面がハステロイC合金で作られた耐圧オートクレーブを用いてエタノールに分散させ、質量比で固形分が10%のエタノール分散液(分散液Aという。)を得た。カーボンブラック粉末に白金を質量比で50%担持した触媒20gに水126gを添加し、超音波を10分かけて均一に分散させた。これに上記分散液A80gを添加し、さらに54gのエタノールを添加して固形分濃度を10%(質量比)とし、これをカソード触媒層作製用塗工液とした。この塗工液をエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体からなるシート(商品名:アフレックス100N、旭硝子社製、以下、単にETFEシートという。)上に塗布して乾燥し、白金量が0.5mg/cmのカソード触媒層を作製した。
【0051】
また、カーボンブラック粉末に白金とルテニウムの合金(白金/ルテニウム比=30/23(質量比))を質量比で53%担持した触媒20gに水124gを添加し、超音波を10分かけて均一に分散させた。これに上記分散液A75gを添加し、さらに56gのエタノールを追加して固形分濃度を10%とし、これをアノード触媒層作製用塗工液とした。この塗工液をETFEシート上に塗布して乾燥し、白金量が0.35mg/cmのアノード触媒層を作製した。
【0052】
イオン交換膜をカソード触媒層及びアノード触媒層で挟み、加熱プレスして(プレス条件:120℃、2分、3MPa)、両触媒層を膜に接合し、ETFEシートを剥離して電極面積25cmの膜触媒層接合体を得る。膜触媒層接合体を2枚のカーボンペーパーからなるガス拡散層で挟み込んで膜電極接合体を得た。ここで使用したカーボンペーパーは、片側の表面にカーボンとポリテトラフルオロエチレンとからなる層を有しており、該層が膜触媒層接合体の触媒層と接触するように配置した。
【0053】
(膜電極接合体の耐久性評価)
この膜電極接合体を発電用セルに組み込み、加速試験として開回路試験(OCV試験)を行う。試験は、常圧で、アノード及びカソードにそれぞれ水素、空気を50mL/分の速度で供給し、セル温度は120℃、アノードガスの露点は73℃、カソードガスの露点は73℃として、発電は行わずに開回路状態で放置し、100時間後の電圧を測定する。結果を表1に示す。
【0054】
また、試験中にセルから排出される排気ガスを0.1モル/L水酸化カリウム溶液中にバブリングさせ、液中に含まれるフッ素イオン量をイオンクロマトグラフィーで測定し、フッ素イオンの排出速度を算出する。試験を開始して76時間目から100時間目までの24時間で採取したフッ素イオン量から下記式によって算出したフッ素イオン排出速度を表1に示す。
【0055】
【化3】

【0056】
[例2]
例1で得られたポリマーに、セリウムイオンのかわりに、以下のとおりマンガンイオンを含有させるほかは、例1と同様にして電解質膜を作製する。
得られたポリマーを熱プレスにより厚さ約50μmのイオン交換膜を成形した。硝酸マンガン(Mn(NO・6HO)12.0mgを500mLの蒸留水に溶解し、この中に上記イオン交換膜0.9gを浸漬し、室温で40時間、スターラーを用いて撹拌を行ってイオン交換膜中にセリウムイオンを含有させる。なお、浸漬前後の硝酸マンガン溶液をICP発光分析によりにより分析し、イオン交換膜のマンガンイオンの含有率を算出すると14%になる。
【0057】
次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1に示す結果のとおりとなる。
【0058】
[例3]
例1で得られたポリマーをエタノールと水の混合溶媒(70/30質量比)に分散させ、質量比で固形分が9%の分散液を得た。その分散液100gに対し、炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)0.29gを加え、セリウムイオンを含有した分散液を得る。次にこの分散液を100μmのETFEシート上に、ダイコータにて塗工して製膜する。これを80℃で30分乾燥し、さらに150℃で30分のアニールを施し、膜厚50μmのイオン交換膜を形成する。イオン交換膜のセリウムイオンの含有率を算出すると9%になる。
【0059】
次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1に示す結果のとおりとなる。
【0060】
[例4]
(モノマーの合成)
2Lのオートクレーブにパーフルオロ−1,2−ジクロロ−3−オキサ−6−ヨードヘキサン(下記化合物(d1))を420g仕込み、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを780g加えて溶解させた。ジ−t−ブチルパーオキサイド65gとテトラエチルピロホスファイト360gを添加し、撹拌しながら120℃で5時間反応させ、パーフルオロ−5,6−ジクロロ−4−オキサヘキサン亜ホスホン酸ジエチル(下記化合物(d2))の生成をNMRで確認した。
【0061】
冷却後、窒素気流下、t−ブチルハイドロパーオキサイド250gのメタノール溶液600mLを滴下し酸化反応させ、蒸留して、165gのパーフルオロ−5,6−ジクロロ−4−オキサヘキサンホスホン酸ジエチル(下記化合物(d3))を得た。これに亜鉛粉末80g、塩化亜鉛8g及びエタノール500mLを加え、16時間加熱還流した。減圧下エタノールを除去し、残渣に五塩化リン380gを加え、120℃、5時間加熱後、蒸留してパーフルオロ−4−オキサ−5−ヘキセンホスホン酸ジクロリド(下記化合物(d4))75gを得た。
【0062】
これに1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン20gを加え、−10℃に冷却したメタノール25g/1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン90gの混合液中に滴下した。1時間室温で撹拌後、水洗しメタノールを除去後、減圧蒸留してパーフルオロ−4−オキサ−5−ヘキセンホスホン酸ジメチル(下記化合物(d5))48gを得た。
【0063】
【化4】

【0064】
(ポリマーの重合)
内容積30mLのハステロイ製オートクレーブに、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート8.2mg、上記化合物(d5)13.0g及びCFClCFCHClF(以下、225cbという。)3.12gを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、テトラフルオロエチレン4.8gを減圧下で導入して、40℃に昇温した。圧力は1.2MPaG(ゲージ圧)を示し、重合中はその圧力を一定に保持した。40℃で8時間撹拌後、オートクレーブを冷却して、系内のガスをパージし反応を終了させた。
【0065】
生成物を225cbで希釈後、n−ヘキサンを添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、225cb中でポリマーを撹拌して、n−ヘキサンで再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥した。生成量は2.5gであった。
【0066】
(電解質膜の作製)
得られたポリマーを加熱プレスで製膜し、厚さ50μmのフィルムを得た。このフィルムを1モル/Lの塩酸水溶液と1モル/Lの酢酸水溶液との混合水溶液中で加水分解し、水洗後、1モル/L塩酸水溶液中に浸漬した。次いで、水洗し、60℃で1時間乾燥してイオン交換膜を得た。得られた膜のイオン交換容量は、2.54ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0067】
硝酸セリウム(Ce(NO・6HO)12.0mgを500mLの蒸留水に溶解し、この中に上記イオン交換膜0.7gを浸漬し、室温で40時間、スターラーを用いて撹拌を行ってイオン交換膜中にセリウムイオンを含有させる。なお、浸漬前後の硝酸セリウム溶液をICP発光分析により分析し、イオン交換膜のセリウムイオンの含有率を算出すると6%である。
【0068】
次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1に示す結果のとおりとなる。
【0069】
[例5]
例1において、イオン交換膜中にセリウムイオンを含ませない以外は、同様の方法で電解質膜を作製する。次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1に示す結果のとおりとなる。
【0070】
[例6]
例4において、イオン交換膜中にセリウムイオンを含ませない以外は、同様の方法で膜電極接合体を作製し、耐久性評価を行う。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の電解質膜は、燃料電池の発電により生成される過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性が極めて優れている。したがって、この電解質膜を有する膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池は、低加湿発電においても長期の耐久性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体からなるイオン交換膜からなり、セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜。
【請求項2】
前記セリウム原子及びマンガン原子からなる群から選ばれる1種以上は、イオンとして含まれる請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
【請求項3】
セリウム原子が、前記イオン交換膜に含まれるイオン交換基の0.3〜20モル%含まれる請求項1又は2に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
【請求項4】
マンガン原子が、前記イオン交換膜に含まれるイオン交換基の0.5〜30モル%含まれる請求項1又は2に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
【請求項5】
前記含フッ素重合体は、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい。)である請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
【請求項6】
前記パーフルオロカーボン重合体は、下記式(1)で表されるパーフルオロ化合物に基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを含む共重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
CF=CFRf1−A ・・・(1)
式中、Rf1は単結合又はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい直鎖若しくは分岐構造を有するパーフルオロアルキレン基であり、Aは−SONHSOf2(Rf2はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい直鎖若しくは分岐構造を有するパーフルオロアルキル基である。)又は−PO(OH)を示す。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電解質膜の製造方法であって、スルホンイミド基及びホスホン酸基から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する含フッ素重合体の分散液中に、当該分散液に溶解可能なセリウム化合物又はマンガン化合物からなる群から選択される1種以上を混合した後、得られた液を用いてキャスト製膜し、電解質膜を作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項8】
前記溶解可能なセリウム化合物又はマンガン化合物からなる群から選択される1種以上は、炭酸セリウム又は炭酸マンガンである請求項7に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項9】
触媒を含む触媒層を有するアノード及びカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される電解質膜とを備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、前記電解質膜が請求項1〜6のいずれかに記載の電解質膜からなることを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。

【公開番号】特開2007−12520(P2007−12520A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193934(P2005−193934)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】