説明

固定部材

【課題】建築化粧部材と、建築下地部材とを互いに固定する際に、これらの間の間隔を容易に位置調整することができる固定部材を提供する。
【解決手段】裏面から表面へ貫通するボルト挿通孔101aを有したスティックパネル101と、柱110と、を相対位置を調節自在としつつ、固定部材1によって互いに固定する。固定部材1は、スティックパネル101を介して柱110に締結される固定ボルト25を備えた固定機構部20と、柱110に当接すると共にスティックパネル101の外面に対して出退自在に設けられる調整ネジ33を備える調整機構部30と、を備える。固定ボルト25及び調整ネジ33は、水平方向の位置が一致すると共に鉛直方向に位置が互いに異なり、且つ、軸線方向が互いに平行となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁等を柱に固定するための固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中低層住宅を含む建物では、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等からなる外壁パネルを、躯体を構成する梁に取り付けると共に、隅部では該隅部に配置された柱に外壁と同一の材質を持ったコーナーパネルを取り付けて外壁を構成することが行われている。
【0003】
外壁パネル等のパネルを躯体に取り付ける際に、躯体がパネルで覆われた後はパネル裏面側からの作業ができないことがある。従来、そのような場合の対処方法としては、予め躯体側からボルトを突設しておき、パネルに設けられた挿通孔にボルトを挿通し、ボルトの先端にナットを螺合させてパネルを固定する方法や、ドリルネジ等を用いてパネルを躯体に取り付ける方法などがあった。
【0004】
前者の方法の場合、躯体側から突設したボルトの位置及びパネルのボルト挿通孔の位置でパネルの取り付け位置が決定されてしまい、躯体側から突設したボルトの位置又はパネルのボルト挿通孔の位置のどちらかに製造上あるいは施工上の誤差があった場合にパネル位置を修正することが難しいという問題があった。また、後者の方法の場合も、ドリルネジを電動工具でねじ込む際にパネルの位置がずれたまま固定してしまうとその後の修正が困難であるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、特許文献1には、建物の隅部に取り付けられるコーナーパネルを、柱固定金具を用いて、建物の隅部に沿った軸を中心に回動可能に柱に取り付ける構成が開示されている。また、コーナーパネルの側面に一対の調整ネジを出退可能に設け、当該調整ネジを調整することでコーナーパネルと柱との間の間隔やコーナーパネルの角度を調整する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−182295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の構成においては、一対の調整ネジを調整することで柱に対するコーナーパネルの向きを調整するものであるため、柱のパネル取付面の法線に対するコーナーパネルの取り付け角度を変化させること無く単にこれら柱とコーナーパネル間の間隔を調整する場合にも、一対の調整ネジの双方を回転させて調整を行う必要が生じる。すなわち、一方のネジを調整するたびにコーナーパネルの向きが微妙に変化することとなり、間隔調整に著しく手間が掛かることが考えられる。また、上記特許文献1の構成においては、向きを調整するための調整ネジの位置と、コーナーパネルを柱に取り付けるための固定ボルトの位置とが平面視でずれた位置に設けられている(水平方向の位置がずれている)。このため、一方の調整ネジを調整する度に建物の隅部に沿った軸(鉛直方向に沿った軸)を中心にコーナーパネルが回転してしまい、コーナーパネルの位置調整を感覚的に掴みにくく、施工性が悪いという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、外壁パネル等の建築化粧部材と、建物の柱等や別の外壁パネル等の建築下地部材とを互いに固定する際に、これらの間の間隔を容易に位置調整することができる固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明に係る固定部材は、建築下地部材と、該建築下地部材に対向して設けられて裏面から表面へ貫通するボルト挿通孔を有した建築化粧部材との間に設けられ、建築下地部材に対する建築化粧部材の相対位置を調節自在としつつ当該建築化粧部材を建築下地部材に固定する固定部材であって、建築化粧部材のボルト挿通孔を介して建築下地部材に締結される固定ボルトを備えた固定機構と、建築下地部材に当接すると共に建築化粧部材の裏面に対して出退自在に設けられる調整ネジを備える調整機構と、を備え、固定機構の固定ボルト及び調整機構の調整ネジは、水平方向の位置を互いに一致させると共に鉛直方向に位置を互いに異にし、且つ、軸線方向を互いに平行として設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明では、一つの調整ネジを調整するだけで建築化粧部材と建築下地部材との間の間隔を調整することができ、これらの間の間隔をきわめて容易に調整することができる。また、固定ボルトと調整ネジとは水平方向の位置が互いに一致すると共に鉛直方向に位置が互いに異なり、且つ、軸線方向が互い平行となるように配置されている。これにより、調整ネジで建築化粧部材と建築下地部材との間の間隔を調整する前後で建築化粧部材が平面方向に回転することがなく、建築化粧部材の位置調整を感覚的に把握し易くなる。従って、建築化粧部材と建築下地部材とを互いに固定する際に、これらの間の間隔を容易に調整することができる。
【0011】
また、固定機構は、建築下地部材に固定されると共に固定ボルトを建築化粧部材に向けて突出させた状態で固定する固定部を有する下地側固定板と、建築化粧部材のボルト挿通孔に挿通された固定ボルトの先端側の端部に螺合するナットと、を更に備え、下地側固定板は、建築下地部材側の裏面から突出する調整ネジの端部に当接する当接部を有していることが好ましい。このように、下地側固定板の固定部に固定ボルトを取り付けることにより、固定ボルトを建築下地部材側から建築化粧部材側に向けて突出させることができる。また、固定ボルトに建築化粧部材のボルト挿通孔を挿通させてナットで固定することにより、建築化粧部材を建築下地部材に容易に留め付けることができる。また、下地側固定板には調整ネジの先端部が当接する当接部が設けられているので、間隔調整のために調整ネジを回転させても建築下地部材の表面を傷める虞はない。
【0012】
また、調整機構は、調整ネジが出退自在に螺合する螺合部を有して建築化粧部材の裏面に固定される化粧側固定板を更に備えることが好ましい。これによれば、化粧側固定板を建築化粧部材に固定し、当該化粧側固定板の螺合部に調整ネジを螺合させることにより、当該調整ネジを建築化粧部材に対し出退させることができるものとなる。
【0013】
また、調整ネジは、固定ボルトの直下又は直上に位置づけられると共に、建築化粧部材に設けられたネジ挿通孔に挿通され、化粧側固定板は、ネジ挿通孔に螺合部を一致させた状態で建築化粧部材に固定されることが好ましい。ここで、固定ボルトと調整ネジとの間の距離が離れれば離れるほど、調整ネジの調整により例えば建築化粧部材が撓む等して、建築化粧部材に間隔調整の結果が反映されない虞がある。そこで、上記のように固定ボルトの直下又は直上に調整ネジを設ける、すなわち、固定ボルトの近傍に調整ネジを設けることにより、調整ネジによる間隔調整がそのまま建築化粧部材に反映されることとなり、間隔調整の正確性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建築化粧部材と建築下地部材とを互いに固定する際に、これらの間の間隔を容易に位置調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る固定部材によってスティックパネルを固定した状態を示す水平方向の断面図である。
【図2】図1の固定部材の側面図である。
【図3】図1の固定部材の固定機構部を示す図である。
【図4】図1の固定ボルトを示す図である。
【図5】図1の固定部材の調整機構部を示す図である。
【図6】図1のスティックパネルの調整範囲を示す模式図である。
【図7】実施形態の変形例に係る固定部材によってスティックパネルを固定した状態を示す水平方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る固定部材の好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の固定部材1は、建物Aの柱(建築下地部材)110に取り付けられ、建物Aの外壁としてのスティックパネル(建築化粧部材)101を柱110に対して固定している。ここで、本実施形態における建物Aは、鉄骨造構造の工業化住宅であり、例えば305mmの平面モジュールMを有している。この建物Aにおいては、平面モジュールMの整数倍の値を用いて、間取りが設定される。また、建物Aの外壁を構成する外壁パネル102等の大きさも、平面モジュールMの整数倍の値が用いられている。
【0018】
例えば、建物Aの2階や3階の居室Lに隣接してベランダVが設けられていると、居室Lを囲う外壁パネル102,103の接続部分に、ベランダVの外周に配置される腰壁パネル105が接続される。外壁パネル102,103や腰壁パネル105は、建物Aの柱110の略中心位置に端面が位置するように配置されるため、例えば、外壁パネル103と腰壁パネル105とを外面が互いに同一面となるように配置した場合、腰壁パネル105と外壁パネル102との間に隙間が生じる。本実施形態の固定部材1は、外壁パネル102と腰壁パネル105との間の隙間に配置されるスティック状のスティックパネル101を保持する。
【0019】
このスティックパネル101、外壁パネル102,103、及び、腰壁パネル105は、一例として、軽量気泡コンクリート(ALC)によって形成されている。柱110は、一例として角型鋼管が用いられている。
【0020】
図1〜図5に示すように、固定部材1は、固定バンド10、固定機構部(固定機構)20、及び、調整機構部(調整機構)30を含んで構成される。固定バンド10は、柱110に巻き付けられ、両端部がそれぞれ固定機構部20にネジ止めされる。これにより、固定機構部20は、固定バンド10によって柱110に固定される。固定バンド10として、例えば、金属製のベルトが用いられる。
【0021】
固定機構部20は、柱側固定板(下地側固定板)21、固定部22、固定ボルト25、及び、ナット26を含んで構成される。柱側固定板21は、固定片21aと固定片21bとより構成され、固定片21a(図3参照)と固定片21b(図2参照)の端部同士が略直角に接続されて、断面略L字状に形成されている。また、柱側固定板21は、断面略L字状の内側の折り曲げ線が、柱110の角部に対向するように配置される。柱側固定板21において、スティックパネル101と対向する固定片21aには、固定ボルト25を固定するための固定部22が設けられている。
【0022】
固定部22は、図3に示すように、柱110の長手方向(鉛直方向)に延びるスリット状のスライド孔23を備えている。固定ボルト25は、スライド孔23に柱110側からスティックパネル101側に向けて差し込まれている。また、固定ボルト25がスライド孔23から脱落しないように、固定ボルト25の軸部25aにはプッシュワッシャ24(図2参照)が取り付けられる。ここで、固定ボルト25は、図4に示すように、軸部25aと、ヘッド部25bとより構成されている。また、固定ボルト25の軸部25aにおいてヘッド部25b側の端部は、断面が矩形に形成された角型軸部25cとなっている。固定ボルト25をスライド孔23に差し込んだときに、角型軸部25cがスライド孔23の側壁に当接することで、固定ボルト25の回転が規制される。また、固定ボルト25は、スライド孔23のスリットの延び方向(柱110の長手方向)にスライド可能となっている。
【0023】
固定片21aの固定部22の近傍は、柱110に対向する側の面をスティックパネル101側に向けて窪ませた形状となっている。この窪みの深さは、少なくとも、固定ボルト25のヘッド部25bが隠れる深さとなっている。これにより、固定ボルト25をスライド孔23に差し込んだ状態で柱側固定板21を柱110に当接させたときに、柱側固定板21の固定片21aを柱110に密着させることができる。
【0024】
スティックパネル101には、固定ボルト25を通すためのボルト挿通孔101aが設けられている。ボルト挿通孔101aにおいて、固定ボルト25が差し込まれる側の端部(固定ボルト25をボルト挿通孔101a内に差し込む際の差込口となる側の端部)に対して反対側の端部には、大径部101bが形成されている。固定ボルト25をボルト挿通孔101aに差し込んで柱側固定板21とスティックパネル101とを固定する際には、大径部101b内にナット26を落とし込み、固定ボルト25の先端部にナット26を螺合させる。これにより、ナット26がスティックパネル101の外面から突出することがない。また、固定ボルト25の長さは、スティックパネル101を固定したときに、固定ボルト25がボルト挿通孔101aを通り抜けてスティックパネル101の外面から突出することがない長さとなっている。
【0025】
調整機構部30は、パネル側固定板(化粧側固定板)31、及び、調整ネジ33を含んで構成されている。パネル側固定板31は、調整ネジ33が出退自在に螺合する螺合部32を有している。パネル側固定板31には、ビス孔35が設けられ、ビス孔35を介して差し込まれたビス36によってスティックパネル101の裏面側に固定される。また、パネル側固定板31には、スティックパネル101に固定されたときにスティックパネル101のボルト挿通孔101aと対向する位置にボルト孔34が設けられている。これにより、ボルト孔34を介してスティックパネル101のボルト挿通孔101aに固定ボルト25を差し込むことができる。
【0026】
調整ネジ33は、一例として、ヘッド部33aと軸部33bとが同一径のいわゆるイモネジであり、パネル側固定板31の螺合部32に螺合している。調整ネジ33は、ヘッド部33aがパネル側固定板31に対してスティックパネル101側となるように螺合部32に螺合している。スティックパネル101には、調整ネジ33との干渉を避けるためのネジ挿通孔101cが設けられている。すなわち、パネル側固定板31の螺合部32と、スティックパネル101のネジ挿通孔101cとが対向している。
【0027】
調整ネジ33は、当該調整ネジ33のヘッド部33a側からネジ挿通孔101cに差し込まれる。ネジ挿通孔101cにおけるパネル側固定板31側に対して反対側の端部から、調整ネジ33を調節するための工具T(図2参照)を差し込み、差し込んだ工具Tの先端を調整ネジ33のヘッド部33aに係合させることができる。ネジ挿通孔101cに差し込んだ工具Tによって調整ネジ33を回転させることで、スティックパネル101における柱110側の外面から突出する調整ネジ33の突出長さを調節することができる。
【0028】
なお、柱側固定板21の固定片21aには、調整ネジ33の柱110側の先端部が当接する当接部27を備えている。これにより、調整ネジ33の先端部が柱110に直接接触することがない。
【0029】
固定ボルト25と調整ネジ33とは、水平方向の位置が一致する、すなわち、調整ネジ33は、固定ボルト25の近傍において、固定ボルト25の位置の鉛直方向の直下に位置している。また、固定ボルト25の軸線方向と調整ネジ33の軸線方向とが互いに平行となるように、固定ボルト25と調整ネジ33とが配置されている。
【0030】
次に、固定部材1を用いて、柱110に対してスティックパネル101を取り付ける手順について説明する。まず、固定部材1の固定機構部20を、固定バンド10を用いて柱110に固定する(図3参照)。固定機構部20を柱110に固定する際に、予め、固定部22によって固定ボルト25を固定しておく。なお、ナット26は、固定ボルト25から取り外された状態とする。
【0031】
次に、固定部材1の調整機構部30を、ビス36を用いてスティックパネル101に取り付ける(図5参照)。調整ネジ33は、パネル側固定板31をスティックパネル101に取り付ける前に螺合部32に螺合させておいてもよく、パネル側固定板31をスティックパネル101に取り付けた後に螺合部32に螺合させてもよい。また、固定機構部20の柱110への取り付けと、調整機構部30のスティックパネル101への取り付けは、どちらを先に行ってもよい。
【0032】
次に、固定ボルト25の先端が調整機構部30のボルト孔34及びスティックパネル101のボルト挿通孔101aを通るように、スティックパネル101を柱110の前に配置する。そして、固定ボルト25の先端にナット26を取り付けて、固定機構部20に対してスティックパネル101を固定する。このとき、パネル側固定板31から固定片21a側に向けて調整ネジ33を突出させておくことで、調整ネジ33が突出する長さ分だけ、固定片21aとパネル側固定板31との間に隙間が形成される。すなわち、柱110とスティックパネル101との間に所定の隙間を設けた状態で、柱110に対してスティックパネル101が固定される。
【0033】
次に、柱110に取り付けられたスティックパネル101の位置の調整方法について説明する。図2に示すように、ネジ挿通孔101cに工具Tを差し込んで調整ネジ33を回転させることで、スティックパネル101の外面からの調整ネジ33の突出長さが変化し、柱110とスティックパネル101との間隔を調節することができる。なお、スティックパネル101の外面から調整ネジ33を突出させる場合には、固定ボルト25に螺合するナット26を緩めておく。このように、調整ネジ33を回転させることで、柱110にスティックパネル101を取り付けた後においても、柱110に対するスティックパネル101の位置を調節することができる。
【0034】
ここで、本実施形態では、2つの固定部材1を用いて、スティックパネル101を柱110に固定している。この場合におけるスティックパネル101の位置の調節方法について説明する。図6(a)に示すように、柱110及びスティックパネル101を側方から見た場合、スティックパネル101は、スティックパネル101の上端近傍に配置された固定部材1Aと、下端近傍に配置された固定部材1Bとによって、柱110に対して固定されている。なお、固定部材1A,1Bは、それぞれ上述した固定部材1と同じものである。ここでは、説明の便宜上、異なる符合を付してある。
【0035】
固定部材1Aの調整ネジ33、及び、固定部材1Bの調整ネジ33を同じ長さだけスティックパネル101の外面から出退させることで、スティックパネル101を柱110に対して水平方向に平行移動させることができる。即ち、調整ネジ33の調整によってスティックパネル101の軸方向に回転を伴わせること無くスティックパネル101と柱110との間の間隔を調整できるものとなっているのである。また、固定部材1Aの調整ネジ33におけるスティックパネル101の外面からの突出長さと、固定部材1Bの調整ネジ33におけるスティックパネル101の外面からの突出長さと、を異なる長さに調節することで、例えば、スティックパネル101の上端部のみを柱110から離間させたり、或いは、下端部のみを柱110から離間させたりすることができる。
【0036】
また、固定ボルト25を固定するスライド孔23は鉛直方向に延びている(図3参照)。従って、ナット26を緩めることにより固定ボルト25がスライド孔23内で上下方向に移動可能となる。すなわち、スライド孔23の鉛直方向の孔の長さの範囲内で、スティックパネル101を鉛直方向に移動させることができる。
【0037】
また、固定ボルト25が通るボルト挿通孔101aの径は、固定ボルト25の軸部25aの外径よりも所定の径だけ大きくなっている。同様に、調整ネジ33が通るネジ挿通孔101cの径も、調整ネジ33の外径よりも所定の径だけ大きくなっている。これにより、図6(b)に示すように、スティックパネル101をベランダV側から見た場合、ナット26を締め込んでスティックパネル101を固定する前に、固定ボルト25とボルト挿通孔101aとの径の違い、及び、調整ネジ33とネジ挿通孔101cとの径の違いの分だけ、外壁パネル102側または腰壁パネル105側にスティックパネル101を移動させることができる。このとき、例えば、スティックパネル101の上端のみを外壁パネル102側に寄せたり、或いは、スティックパネル101の上端のみを腰壁パネル105側に寄せたりすることもできる。このように、固定ボルト25とボルト挿通孔101aとの径の違い、及び、調整ネジ33とネジ挿通孔101cとの径の違いを利用してスティックパネル101の位置調整を行った後、ナット26を締め込んでスティックパネル101を固定することができる。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る固定部材1を用いることで、柱110に対する位置を調整しながらスティックパネル101を柱110に固定することができる。これにより、例えば、外壁パネル102の外面とスティックパネル101の外面とが同一面となるように、スティックパネル101を固定することができる。また、例えば、スティックパネル101と外壁パネル102との間隔と、スティックパネル101と腰壁パネル105との間隔と、が同一となるようにスティックパネル101を柱110に固定することができる。
【0039】
例えば、固定部材1を用いずにスティックパネル101を固定する場合、ビス等を用いて腰壁パネル105に対してスティックパネル101を固定する方法が考えられる。この場合、腰壁パネル105とスティックパネル101とが密着した状態となる。腰壁パネル105とスティックパネル101とが密着した状態では、スティックパネル101と腰壁パネル105との間にシーリング材を充填したときにシーリング材をスティックパネル101と腰壁パネル105との間に適正に入り込ませることができず、これらスティックパネル101と腰壁パネル105間のシーリング性が悪くなり、これらの間からパネル裏側に雨水等が侵入する虞があるのみならず、シーリング材が脱落しやすくなる虞がある。これに対して、固定部材1を用いてスティックパネル101を腰壁パネル105から独立させて柱110に固定することで、腰壁パネル105とスティックパネル101との間、及び、スティックパネル101と外壁パネル102との間に適切な隙間を確保することができ、これらの隙間にシーリング材を充填した場合におけるシーリング性の向上やシーリング材の脱落の防止を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る固定部材1は、一つの固定部材1に対して一つの調整ネジ33を調整するだけでスティックパネル101と柱110との間の間隔を調整することができ、これらの間の間隔をきわめて容易に調整することができる。また、固定ボルト25と調整ネジ33とは水平方向の位置が互いに一致すると共に鉛直方向に位置が互いに異なり、且つ、軸線方向が互い平行となるように配置されている。これにより、調整ネジ33でスティックパネル101と柱110との間の間隔を調整する前後でスティックパネル101が平面方向に回転することがなく(鉛直方向を軸線方向として回転することがなく)、スティックパネル101の位置調整を感覚的に把握し易くなる。
【0041】
また、固定片21aの固定部22に固定ボルト25を取り付けることにより、固定ボルト25を柱110側からスティックパネル101側に向けて突出させることができる。また、固定ボルト25にスティックパネル101のボルト挿通孔101aを挿通させてナット26で固定することにより、スティックパネル101を柱110に容易に留め付けることができる。また、柱側固定板21の固定片21aには調整ネジ33の先端部が当接する当接部27が設けられているので、間隔調整のために調整ネジ33を回転させても柱110の表面を傷める虞はない。
【0042】
また、パネル側固定板31をスティックパネル101に固定し、当該パネル側固定板31の螺合部32に調整ネジ33ジを螺合させることにより、当該調整ネジ33をスティックパネル101に対し出退自在に設けることができる。
【0043】
ここで、固定ボルト25と調整ネジ33との間の距離が離れれば離れるほど、調整ネジ33の調整により例えばスティックパネル101が撓む等して、スティックパネル101に間隔調整の結果が反映されない虞がある。そこで、上記のように固定ボルト25の直下に調整ネジ33を設ける、すなわち、固定ボルト25の近傍に調整ネジ33を設けることにより、調整ネジ33による間隔調整がそのままスティックパネル101に反映されることとなり、間隔調整の正確性を高めることができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、柱側固定板21の固定片21aに固定部22(スライド孔23)や当接部27が設けられているものとしたが、固定片21a,21bの両方にこれらが設けられていてもよい。この場合には、固定ボルト25を、固定片21a側の固定部22又は固定片21b側の固定部22に取り付けることで、所望の方向に固定ボルト25を突出させることができ、所望の方向においてスティックパネル101を固定することができる。
【0045】
また、柱側固定板21を、断面略L字状としたが、柱110とスティックパネル101との間隔によっては、柱側固定板21の形状を上記実施形態と異なる形状としてもよい。例えば、図7に示すように、柱110Aが上記実施形態における柱110よりも細く、柱110Aとスティックパネル101とが離れている場合、固定バンド10によって柱110Aに固定される柱側固定板21Aのうち、固定ボルト25を固定する固定部22及び当接部27が形成される部位をスティックパネル101側に突出させた形状としてもよい。このように、柱側固定板21Aの形状を変形させることで、柱110Aとスティックパネル101との距離が離れている場合や近い場合のいずれの場合であっても、スティックパネル101を固定することができる。
【0046】
なお、上記では、スティック状のスティックパネル101を柱110,110Aに取り付けるものとしたが、スティック状のパネルに限定されず、平板状のパネルを固定することもできる。また、角型鋼管の柱110に固定機構部20を取り付けるものとしたが、角型鋼管以外にも、木製の柱や他の部材に固定機構部20を取り付けてもよい。
【0047】
また、固定ボルト25の位置の鉛直方向の直下に調整ネジ33を配置するものとしたが、固定ボルト25の位置の鉛直方向の直上に調整ネジ33を配置してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…固定部材、20…固定機構部(固定機構)、21,21A…柱側固定板(下地側固定板)、22…固定部、25…固定ボルト、26…ナット、27…当接部、30…調整機構部(調整機構)、31…パネル側固定板(化粧側固定板)、32…螺合部、33…調整ネジ、101…スティックパネル(建築化粧部材)、101a…ボルト挿通孔、101c…ネジ挿通孔、110,110A…柱(建築下地部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築下地部材と、該建築下地部材に対向して設けられて裏面から表面へ貫通するボルト挿通孔を有した建築化粧部材との間に設けられ、前記建築下地部材に対する前記建築化粧部材の相対位置を調節自在としつつ当該建築化粧部材を前記建築下地部材に固定する固定部材であって、
前記建築化粧部材のボルト挿通孔を介して前記建築下地部材に締結される固定ボルトを備えた固定機構と、
前記建築下地部材に当接すると共に前記建築化粧部材の裏面に対して出退自在に設けられる調整ネジを備える調整機構と、を備え、
前記固定機構の前記固定ボルト及び前記調整機構の前記調整ネジは、水平方向の位置を互いに一致させると共に鉛直方向に位置を互いに異にし、且つ、軸線方向を互いに平行として設けられている
ことを特徴とする固定部材。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記建築下地部材に固定されると共に前記固定ボルトを前記建築化粧部材に向けて突出させた状態で固定する固定部を有する下地側固定板と、
前記建築化粧部材のボルト挿通孔に挿通された前記固定ボルトの先端側の端部に螺合するナットと、を更に備え、
前記下地側固定板は、前記建築下地部材の裏面から突出する前記調整ネジの端部に当接する当接部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記調整機構は、前記調整ネジが出退自在に螺合する螺合部を有して前記建築化粧部材の裏面に固定される化粧側固定板を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定部材。
【請求項4】
前記調整ネジは、前記固定ボルトの直下又は直上に位置づけられると共に、前記建築化粧部材に設けられたネジ挿通孔に挿通され、
前記化粧側固定板は、前記ネジ挿通孔に前記螺合部を一致させた状態で前記建築化粧部材に固定される
ことを特徴とする請求項3に記載の固定部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−96216(P2013−96216A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243394(P2011−243394)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000154853)株式会社北浦工業 (21)
【Fターム(参考)】