説明

固定電話着信時の応答方式

【課題】本発明は固定電話着信時の応答方式に関し,予め異なる電話番号が割り当てられて同じ位置に設けた2つの固定電話機に接続した電話回線を含むネットワークと接続した伝送路を収容した通信装置において,一方に着信があって呼出しが発生した時に近くにいる利用者が保持する端末によりその着信に対して応答できることを目的とする。
【解決手段】通信装置に2つの電話回線をそれぞれの固定電話機に接続するか,2つの電話回線を接続して相互に通話できるよう切替えられるスイッチと制御部とを設け,一方の固定電話機へのネットワークからの着信による呼出音が鳴動した状態において,他方の固定電話機に着信が発生すると,制御部は一方の固定電話機へ着信した回線を他方の固定電話機へ着信した回線と接続する制御を行うよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,それぞれに異なる電話番号が割り当てられた複数の固定電話機を収容した通信装置における固定電話着信時の応答方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,光ファイバ等の広帯域の回線を各家庭や事業所と公衆網の間を接続し,インターネットによる各種のデータによる通信を実現すると共に,光ファイバの一部の帯域を使用して電話通信(光電話または光IP電話と呼ばれる)が可能なサービスが提供されている。このような光ファイバを使用した光電話では,一つの光回線に対して複数の電話番号を付与して,それぞれに通信装置を接続することで同時に2回線の通信ができるサービスも提供されるようになった。
【0003】
複数の固定電話機のそれぞれに異なる電話番号を付与した場合,例えば,一方の電話番号を主の固定電話機に割り当て,他方の電話番号を従としてファクシミリ装置(またはファクシミリ機能付電話機)に割り当てて,両方の装置で同時に使用して,固定電話機により通話を行いながら,ファクシミリ装置によるファクシミリ画像の通信を行うこと等という運用が可能である。また,2つの電話番号をそれぞれ2つの固定電話機に割り当てることで2人の利用者が同時に2つの固定電話機による通話を行うこともできる。
【0004】
このように広帯域のデータ伝送用の帯域と電話通信用の2つの回線のための帯域を伝送する光ファイバやADSLのような伝送媒体または伝送方式で公衆網(交換局)に接続された加入者の通信装置(または宅内装置)の利用者は,電話通信用の回線の固定電話機に着信があって,呼出用のベルが鳴動した時,利用者がその呼出音を聞くことができても,その固定電話機から離れた位置(例えば,屋外)にいた場合は即座に応答(ピックアップ)することができず,一定時間が経って応答しても呼出しが終了してしまい,相手との通話ができない場合があり,直ちに応答したいという要求を満たすことができないという問題があった。
【0005】
従来技術として,固定電話機と携帯電話機に対して同一の電話番号を付与して,両者間で転送を可能にする技術が知られている(特許文献1参照)。その構成を図4に従来例の構成として示す。図中,81は交換機,82は固定電話機,83は公衆基地局,84は携帯電話機,85は局間信号である。交換機81は,中央制御回路811,スイッチ812,スイッチパス制御回路813,音源発生器814及びデータベース815とから構成される。データベース815には電話番号とその電話番号に対応する携帯電話機84の現在の位置,つまり携帯電話機84が接続可能な公衆基地局83の識別情報と,公衆基地局83以外の接続先とが互いに対応付けられて記憶されている。この公衆基地局83以外の接続先として携帯電話機84の電話番号と同じ電話番号を登録しておく。
【0006】
同一の電話番号が付された固定電話器82及び携帯電話機84の利用者に対して,自局内の加入者または局間信号85を介して他局からの着信があると,中央制御回路811はデータベース815を参照し,その着信が同一の電話番号が付された固定電話機82及び携帯電話機84に対するものであると判定すると,スイッチパス制御回路813に対し固定電話機82及び携帯電話機84の各々へのパス設定命令を出力し,スイッチパス制御回路813はスイッチ812を制御して固定電話機82と携帯電話機84の両方にパスを設定し,同時呼出しを行う。利用者が固定電話機82の方を先に応答(ピックアップまたはオフフック)すると,中央制御回路811は発呼者と固定電話機82とを接続し,通話状態となる。
【0007】
なお,携帯電話機84(または固定電話機82)が通話中に転送サービスを行う場合,通話中の携帯電話機84から連続フッキングを行うと,このフッキングを検出することで中央制御回路811は通話中の携帯電話機84から固定電話機82へのパス設定命令を出力して,固定電話機82へ呼出しを行い,固定電話機82で応答すると発呼者との通話が携帯電話機84から固定電話機82に移る。これにより,例えば,固定電話機82がFAX機能を持つ場合,携帯電話機84で応答した後,FAX通信の発信音が聞こえた場合,固定電話機82へ転送して,FAX通信のデータを固定電話機82で受信することができる。
【特許文献1】特開平9−162974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の技術は,固定電話機と携帯電話機に対して同一の電話番号を付与して,着信時に両方を呼出して先に応答(ピックアップ)した方と発呼側とを接続させる技術であり,それぞれが異なる電話番号が付与された複数の固定電話機(一方がFAX機能を持つ場合を含む)の一方に着信があって呼出音が発生した時に近くに居る利用者がその呼出しに対して,その固定電話機の場所に足を運ぶことなく応答して発呼者と通話を行うことはできない。
【0009】
本発明は複数の電話番号が付与された複数の固定端末(固定電話機またはFAX機能を持つ固定電話機)に着信があって呼出しが発生した時に近くにいる利用者が保持する端末によりその着信に対して応答(ピックアップ)できる固定電話着信時の応答方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1は本発明の原理構成を示す図である。図中,1は構内交換機やルータを含む宅内の装置等の通信装置,10は複数の電話回線と高速ディジタル回線を含む光ファイバ等の広帯域の伝送路30が収容された通信部,11はパーソナルコンピュータ等の情報処理装置,12はスイッチ,13は制御部,14は一つの電話番号Xが付与された回線に接続された主の固定電話機,15は前記主の固定電話機14とは異なる電話番号Yが付与された回線に接続された従の固定電話機,2は発信側の電話機(固定電話機または携帯電話機),3は伝送路で接続された各通信装置に対してIPのディジタル信号や電話信号の交換,接続のサービスを行うネットワーク,30はディジタル信号の回線と,複数の電話回線の信号を伝送する光ファイバ等の広帯域の伝送路,4は携帯電話機40に対して発・着信のサービスを行う無線基地局を含む移動通信網であり,固定電話機への交換接続を行うネットワーク3と相互接続することができる移動通信網,40は携帯電話機である。
【0011】
通信装置1に収容された2つの固定電話機14,15の回線には予め異なる電話番号XとYが付与されており,その中の主の電話番号Xに対して着信があって通信部10から呼出音が発生している時に,他の電話番号Yの従の固定電話機15に対して着信(呼出し)が発生すると,主の電話番号Xの回線(呼出し中の回線)を他の電話番号Yの従の固定電話機15の回線(Xへの呼出し中に他から着信した回線)に接続する制御機能を制御部13が備えている。
【0012】
図1において,発信側の電話機2から主の固定電話機14の電話番号Xに対して発呼すると,ネットワーク3から広帯域の伝送路30を介して通信装置1の通信部10に着信すると,制御部13はスイッチ12を通って電話番号Xの主の固定電話機14に呼出音を送る。これにより利用者が主の固定電話機14の送受器を上げて(オンフック状態になる)応答すると通話状態となる。しかし,この呼出しに対して利用者が離れた場所,例えば,通信装置1が屋内に置かれている時,利用者が屋外にいて主の固定電話機14への呼出音を聞くことができるが,直ちに主の固定電話機14の送受器を手にとることができず,応答できない状態の時に,通信装置1の利用者(主の固定電話機14,従の固定電話機15の利用者)が携帯電話機40から従の固定電話機15の電話番号Yを宛先として発呼すると,移動通信網4を介してネットワーク3に接続され,ネットワーク3における交換接続により通信装置1の通信部10に着信する。制御部13は,主の固定電話機14への呼出しをしている時に,主の固定電話機14と対の従の固定電話機15(電話番号Y)への着信を検出すると,スイッチ12を駆動して主の固定電話機14へ着信した回線を従の固定電話機15へ着信した回線と接続するよう切替える制御信号を発生する。これにより,携帯電話機40を持つ利用者は固定電話機14を呼出した発信側の電話機2の利用者と通話をすることが可能となる。
【0013】
電話機2から発信した呼が主の固定電話機14へ着信した時に,従の固定電話機15の電話番号Yを宛て先とする呼出しを携帯電話機40から発生することにより,スイッチ12を切替えて発信側の電話機2からの着信した呼に対し携帯電話機40により応答することになるが,携帯電話機40以外の第3者の電話機から従の固定電話機15を宛て先とする呼出しが発生する可能性もあるが,携帯電話機40からの発信は主の固定電話機14への呼出音を聞いた上で発信するため,その確率は極めて低いことは明らかである。
【0014】
また,上記の説明では便宜上,固定電話機14を主,固定電話機15を従として説明したが,実際には2つの固定電話機14,15は同等の装置である。但し,主の固定電話機14の回線を電話機専用として使用し,従の固定電話機15の回線をファクシミリ専用としてファクシミリ装置に接続して使用する場合は,固定電話機14に着信して呼出しが発生している時,ファクシミリ用の電話番号(固定電話機15の電話番号)に対して携帯電話機40から発信することになる。
【0015】
図1に示す通信装置1はネットワーク3と接続する構内交換機(PBX)として構成することができる。その場合,多数の固定電話機が構内交換機に収容されるが,主の固定電話機と従の固定電話機として予め対応付けて登録しておくことにより,一方の電話機へ着信した時に別の電話機から,他方の電話機を呼出すと,一方の電話機の回線と他方の電話機に着信した回線とを接続するよう構内交換機により切替えるように構成することができる。
【0016】
また,図1ではネットワーク3と広帯域の伝送路30により接続する通信装置1において,2つの電話回線をスイッチ12において接続する制御を行っていたが,主の固定電話機14への着信により呼出音が発生した時,携帯電話機40から従の固定電話機15の電話番号に対して発呼した時にその固定電話機15への着信回線を,通信装置1側ではなくネットワーク3を構成する交換機(またはスイッチ)において固定電話機14への着信回線と接続するよう切替える制御を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,主の電話機と従の電話機の2つの固定電話機を収容してそれぞれに異なる電話番号が割り当てられた通信装置において,主の固定電話機への着信が発生して呼出音が発生している時間に,通信装置の利用者が携帯電話機から従の固定電話機を呼び出すことにより,主の固定電話機へ着信した呼に対して携帯電話機から応答することで,主の固定電話機を呼出した相手と速やかに通話することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図2は実施例の構成である。図中,5は事務所や住宅に設けられ,ネットワーク(公衆電話網,移動通信網,IP網等を含む)と光ファイバにより接続されたルータ,50は回線終端装置,51は回線終端装置50からの信号(下り信号)を2つの電話信号及び広帯域のディジタル信号とに分離し,逆方向(上り)の2つの電話信号や広帯域のディジタル信号を多重化すると共に,ディジタル信号処理(符号・復号,フォーマット化)を行うインタフェース,510は制御部,511はスイッチ,52はパーソナルコンピュータ,53は固有の電話番号(Xとする)が割り当てられた回線Aに接続された固定電話機,54は固定電話機53とは異なる電話番号(Yとする)が割り当てられた回線Bに接続されたファクシミリ装置,6は固定電話網,移動通信網,IP電話網及びインターネットと相互に接続するネットワーク(図1の3)に接続する光ファイバであり,2つの電話回線A,Bと高速のディジタル回線(パーソナルコンピュータ52と接続)を含む光ファイバである。
【0019】
電話信号(音声やFAX信号)はVoIP(Voice-On IP)により例えば,SIP(Session Initiation Protocol)という公知のプロトコルを用いてネットワーク(インターネット)を伝送することができ,IP対応の網(インターネット)と一般の公衆電話網や移動通信網との相互接続は従来技術により実行することができる。図2の光ファイバ6の2つの電話回線もIP対応の信号により伝送され,ネットワークを介して発信側の電話機(固定または携帯)と接続されて通話することができる。
【0020】
図3は実施例の制御フローであり,図2の制御部510において回線(インタフェース51)の状態に対応して実行される。なお,ルータ5内のスイッチ511は通常は,回線Aと固定電話機53が接続し,回線Bがファクシミリ装置54に接続するよう切替えられている。
【0021】
動作を開始して,電話番号Xの回線Aに着信があると(図3のS1),固定電話機53の呼出音を鳴動させる(同S2)。この状態で,固定電話機53の呼出音に気付いた利用者が図2では図示されない携帯電話機(図1の40)から電話番号Yを呼出し先として発呼すると,移動通信網(図1の4),ネットワーク(図1の3)を介してルータ5に着信する。ルータ5のインタフェース51では回線Aへの呼出中に回線Bへの着信があるかを判別し(図3のS3),着信がなければ回線Aの呼び出し中が続いているか判別し(同S4),呼び出し中であればステップS3に戻り,呼び出しが終了するとステップS6に移行する。回線Bへの着信であることを制御部510が検出すると,回線Aと回線Bを接続する制御信号をスイッチ511に対して発生して(図3のS5),スイッチ511が電話番号Xの回線Aと電話番号Yの回線Bを接続するよう切替えられる。これによって電話番号Xへ発信した発信側の電話機(図1の2)と利用者が保持する携帯電話機(図1の40)との間で通話が可能となり(図3のS4),固定電話機53の呼出音の鳴動を停止させる(同S6)。
【0022】
上記図2の構成例では,ルータ5には回線終端装置50を介してインタフェース51が接続されているが,ルータ5の代わりにPBX(構内交換機)等の複数の電話機が接続されている交換機が設けられている場合でもよい。その場合も,PBXの一つの電話機に着信があった時に,その電話機と対の形で設けられた他方の電話機の電話番号を他の携帯電話機から呼出すことで,同様に2つの電話回線同士を接続する構成となる。
【0023】
上記図2の構成では,ネットワークと接続された光ファイバ6にルータ5を設け,高速ディジタル信号と2つの電話回線の信号が送受信されるが,光ファイバ6により接続する構内交換機(PBX)を設けて本発明による着信時の応答の機能を実現することができる。その場合,構内交換機に収容された2つの固定電話機(異なる電話番号を付与)の対(組み合わせ)を同じ位置に配置して,その固定電話機の組み合わせの電話番号を予め記憶部に登録しておき,上記図2のスイッチ511と同様に2つの固定電話機の電話回線をそれぞれの固定電話機に接続するか,2つの電話回線を相互に通話できるよう切替えるスイッチを設け,構内交換機の制御部に図2の制御部510と同様に固定電話機の組み合わせの一方の固定電話機への着信による呼出音が鳴動した状態において,対をなす他方の固定電話機を宛先とした着信が発生すると,一方の固定電話機へ着信した回線を他方の固定電話機へ着信した回線と接続するようスイッチを制御するように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の原理構成を示す図である。
【図2】実施例の構成を示す図である。
【図3】実施例の制御フローを示す図である。
【図4】従来例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 通信装置
10 通信部
11 情報処理装置
12 スイッチ
13 制御部
14 主の固定電話機
15 従の固定電話機
2 発信側の電話機
3 ネットワーク
30 広帯域の伝送路
4 移動通信網
40 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに異なる電話番号が割り当てられて同じ位置に設けた2つの固定電話機に接続した電話回線を含むネットワークと接続した伝送路を収容した通信装置における固定電話着信時の応答方式において,
前記通信装置に前記2つの電話回線をそれぞれの固定電話機に接続するか,前記2つの電話回線を接続して相互に通話できるよう切替えられるスイッチと,制御部とを設け,
前記2つの固定電話機の一方へのネットワークからの着信による呼出音が鳴動した状態において,他方の固定電話機に着信が発生すると,前記制御部は前記一方の固定電話機へ着信した回線を前記他方の固定電話機へ着信した回線と接続するよう制御することを特徴とする固定電話着信時の応答方式。
【請求項2】
請求項1において,
前記ネットワークに接続した伝送路を2つの固定電話機の回線と高速ディジタル信号回線の各信号を伝送する広帯域の光ファイバで構成し,
前記通信装置をルータにより構成したことを特徴とする固定電話着信時の応答方式。
【請求項3】
請求項1において,
前記ネットワークは移動通信網及び固定電話網を含み,
前記他方の固定電話機への着信は,前記固定電話機の一方へのネットワークからの着信による呼出音の鳴動時に,前記固定電話機の利用者による携帯電話機からの前記移動通信網を介した前記他方の固定電話機を宛先とした発信により発生することを特徴とする固定電話着信時の応答方式。
【請求項4】
それぞれに異なる電話番号が割り当てられて同じ位置に設けた2つの固定電話機に接続した電話回線を含むネットワークと接続した伝送路を収容した通信装置における固定電話着信時の応答方式において,
それぞれに異なる電話番号が割り当てられた対をなす2つの固定電話機を組み合わせて設けた構内交換機における固定電話着信時の応答方式において,
前記対をなす2つの固定電話機の組み合わせの電話番号の情報の記憶部と,前記対をなす固定電話機の2つの電話回線をそれぞれの固定電話機に接続するか,前記2つの電話回線を相互に接続して通話できるよう切替えるスイッチと,制御部とを設け,
前記対をなす2つの固定電話機の組み合わせの一方の固定電話機への着信による呼出音が鳴動した状態において,前記対をなす2つの固定電話機の組み合わせの他方の固定電話機を宛先とした着信が発生すると,前記制御部は前記一方の固定電話機へ着信した回線を前記他方の固定電話機へ着信した回線と接続するよう制御することを特徴とする固定電話着信時の応答方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−113283(P2008−113283A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295331(P2006−295331)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】