説明

固形粉末化粧料の製造方法

【課題】滑らかなタッチで、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れる湿式製法の固形粉末化粧料の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程1〜3を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
工程1:粉末成分と、結合剤としての油性成分及び/又は多価アルコール成分を撹拌混合した後、粉砕機で解砕する工程
工程2:工程1で得た化粧料基剤100質量部に対して、沸点が200℃以下の揮発性溶媒20〜100質量部を加えて、スラリー化する工程
工程3:工程2で得たスラリーを一軸偏心ネジポンプを用いて、容器に充填し、真空吸引しながらプレス成形した後、残存する揮発性溶媒を乾燥除去する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料の製造方法に関する。さらに詳しくは、滑らかなタッチで、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れる湿式製法の固形粉末化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、携帯性、化粧方法の簡便性等の利点から、多くの顧客から支持を受けている。固形粉末化粧料は、一般的には、粉体と油剤を混合し、容器に充填後、加圧成型することにより製造されている(以下、このような製造方法を「乾式製法」と略す)。しかし、乾式製法によって製造された固形粉末化粧料は、ザラツキ感、乾燥感を感じる、粉っぽいとの不評も多くある。他方、乾式製法によって製造しつつ官能特性を差別化することには限界がある。
【0003】
粉体及び油剤からなる化粧料基剤に揮発性溶媒を加え、混合してスラリー化して、該スラリーを容器に充填した後、上記揮発性溶媒を除去して製造する方法(以下、このような製造方法を「湿式製法」と記す)においては、粉体粒子の個々に油分が効率的に付着するので粉っぽさがなくなる、滑らかなタッチで、フィット感に優れるものが得られ易いとの可能性から、近年、盛んに開発が試みられている。非特許文献1では、湿式製法について詳述されている。特許文献1には、湿式製法において、特定の粉体と油剤を含む基剤に溶媒を添加してスラリーとした後、溶媒を除去する固形粉末化粧料の製造方法が提案されている。また、特許文献2には、粉末成分、油剤及び溶媒の混合を媒体攪拌ミルにて処理する固形粉末化粧料の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3434881号公報
【特許文献2】特許3608778号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL 2006‐6 34‐39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
湿式製法は乾式製法に比して、製造工程でバルク表面にクラックが生じやすく、出荷後の耐衝撃性においても懸案を残すものが多い。また、スラリーを容器に充填する際には、ダイラタンシー現象が生じる為、安定的な定量充填が非常に困難で、しばしば品質不良を招くことになるが、具体的な対応策の記述は殆どなされていなかった。
【0007】
上記状況を踏まえ、滑らかなタッチで、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れる湿式製法の固形粉末化粧料の製造方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記工程1〜3を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法である。
工程1:粉末成分と、結合剤としての油性成分及び/又は多価アルコール成分を撹拌混合した後、粉砕機で解砕する工程
工程2:工程1で得た化粧料基剤100質量部に対して、沸点が200℃以下の揮発性溶媒20〜100質量部を加えて、スラリー化する工程
工程3:工程2で得たスラリーを一軸偏心ネジポンプを用いて、容器に充填し、真空吸引しながらプレス成形した後、残存する揮発性溶媒を乾燥除去する工程
上記固形粉末化粧料は、上記粉末成分を65〜97質量%、上記油性成分及び/又は多価アルコール成分を3〜35質量%含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、滑らかなタッチで、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れる湿式製法の固形粉末化粧料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、上述した工程1〜3を含む製造方法により得られるものであって、優れた官能特性、耐衝撃性を有するものである。すなわち、本発明はこのような知見に基づくものであり、上記特定の工程を含むことによって完成されたものである。
【0011】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、工程1として粉末成分と、油性成分及び/又は多価アルコール成分からなる結合剤とを撹拌混合した後、粉砕機で解砕する工程を有する。上記工程1は、粉末成分に結合剤を充分になじませ、更に解砕を行うことによって、粒子間の凝集を解きほぐし、これによって、個々の粒子に結合剤が充分になじんだ状態とすることができる。これにより、滑らかさ、フィット感等の官能特性に優れた固形粉末化粧料を得ることができる。
【0012】
上記工程1における粉末成分と結合剤との攪拌混合は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、粉末成分をヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、プラネタリーミキサー等で攪拌混合しながら、結合剤を添加し、均一分散する方法等が挙げられる。
【0013】
上記工程1における粉砕機による解砕の方法は特に限定されず、例えば、アトマイザー、パルペライザー、ピンミル等の衝撃式粉砕機により解砕する方法が挙げられる。
【0014】
上記工程1において使用する粉末成分は、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラスフレーク等の光輝性着色顔料、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等の無機粉末やポリエチレン末、ナイロン末、架橋ポリスチレン、セルロースパウダー、シリコーン末等の有機粉末が例示される。好ましくは、官能特性向上、化粧持続性向上のため、粉末成分の一部又は全部をシリコーン類、フッ素化合物、金属石鹸、油剤、アシルグルタミン酸塩等の物質にて、公知の方法で疎水化処理して使用される。特に好ましくは、メチルポリシロキサン処理及び/又はアシルグルタミン酸塩処理された粉末が使用される。上記粉末成分配合量は65〜97質量%(対固形粉末化粧料の全量)であることが好ましい。より好ましくは、80〜93質量%である。
【0015】
上記工程1において使用する結合剤としての油性成分及び/又は多価アルコール成分は、一般的に化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、1種又は2種以上を使用することができる。このような油性成分としては、油脂類、ロウ類、硬化油類、炭化水素類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類等を挙げることができる。
【0016】
上記工程1の結合剤としての油性成分及び/又は多価アルコール成分としては、好ましくは、粉末成分の濡れを促進する油性成分及び/又は多価アルコール成分が配合される。具体的には、モノイソステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ポリエーテル変性シリコーン及び/又はジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソペンチルジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マルチトール、ラフィノースから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせることが好適である。これらの結合剤を使用することにより、滑らかなタッチで、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れる湿式製法の固形粉末化粧料を製造することができる。
【0017】
上記油性成分及び/又は多価アルコール成分の配合割合は、好ましくは3〜35質量%であり、より好ましくは7〜20質量%(対固形粉末化粧料の全量)である。3質量%以上であると耐衝撃性に優れ、35質量%以下であるとベタツキが抑えられ、パフへ取れが良くなるなど、官能特性が更に向上する。
【0018】
上記工程2は、上記工程1によって得られた粉末成分と結合剤との混合物に対して、200℃以下の揮発性溶媒を添加し、スラリーを形成する工程である。このように、揮発性溶媒を結合剤と同時に添加することなく、工程1により充分に粉体と結合剤とをなじませた後で揮発性溶媒を添加することにより、本発明の効果を得ることができる。
【0019】
本発明における工程2の沸点が200℃以下の揮発性溶媒は、常水、精製水、エタノール、炭化水素油、シリコーン油等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して用いることができる。好ましくは、防爆対策、安全性及び環境問題などの配慮から常水、精製水が用いられる。
【0020】
上記揮発性溶媒の配合割合は、工程1で得られる化粧料基剤100質量部に対して20〜100質量部が好ましく、より好ましくは30〜90質量部である。添加量が20質量部未満であると、粉体が充分に溶媒に濡れず、不均一となり成型性が悪くなることがある。添加量が100質量部を超えると、溶媒を充分に揮散させるために要する時間が長くなり生産効率が低下する。
【0021】
本発明における工程2で得られるスラリーは、レオメーター COMPAC−100II、アダプターNo.1(15φ)(サン科学社製)を用いた応力測定試験(測定条件:定深度測定モード、測定荷重20N、侵入速度400mm/min、侵入距離15.0mm)により得られる応力数値が0.3N〜15Nであるものが好ましい。このような応力数値を有するスラリーは、粉体が充分に溶媒に濡れ、結合剤が粉体粒子の個々に均一に付着するので、官能特性に優れる。また、工程3において、一軸偏心ネジポンプの雌ネジにあたるステーターにスラリーを連続的に送り込むことができる。
【0022】
上記工程3は、工程2で得たスラリーを一軸偏心ネジポンプを用いて、容器に充填し、真空吸引しながらプレス成形した後、残存する揮発性溶媒を乾燥除去する工程である。上記一軸偏心ネジポンプはスネークポンプ、モーノポンプ、スクリューポンプともいい、回転容積型の一軸偏心ネジポンプで、雄ネジにあたるローターと雌ネジにあたるステーターからなり、ローターは金属製で独自のひねり角を持ちその断面は真円である。ステーターは弾性材質でローターをぴったりと包み込み、その空間断面は長円形である。ローターをステーターに装着すると両者の間には接線によって厳密にシールされた連続する螺旋状の空間が生じ、ローターを回転させるとステーター内を回転しながら往復運動し、その結果空間に充満されたスラリーは、連続的に脈動なく定量的に移送されることになる。つまり、ポンプ内部でスラリーは、偏心回転運動するローターにより押し出されるように静かに移動するため、せん断や攪拌力が加わらず、性状変化を起こすことなく容器に充填可能となる。本発明の固形粉末化粧料は、上記一軸偏心ネジポンプにより充填されるため、ダイラタンシー現象を生じにくく、安定に定量充填することができる。充填容器としては、金属や樹脂製の中皿等、通常の固形粉末化粧料用容器を使用することができる。
【0023】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法においては、上記工程2によって得られたスラリーを、真空吸引しながらプレス成形した後、残存する揮発性溶媒を乾燥除去して、固形粉末化粧料を製造する(工程3)。上記工程3におけるプレス成形の方法は特に限定されず、常法により行うことができる。上記工程3における揮発性溶媒の除去の方法は特に限定されず、常法により行うことができる。より具体的には、例えば、自然乾燥、加温乾燥、温風乾燥、真空吸引等によって行うことができる。
【0024】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法では、さらに、化粧料において一般に用いられるその他の成分、例えば、薬効成分、着香剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、懸濁剤、安定化剤、湿潤剤、抗酸化剤、pH調整剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤等を配合するものであってもよい。これらの成分の添加時期は特に限定されないが、上記工程1において添加することが好ましい。
【0025】
以上のような方法で得られる固形粉末化粧料は、メイクアップ化粧料として好適に使用することができ、より具体的には例えば、ファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ等として用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合量はすべて質量%を表す。
【0027】
実施例に先立ち、本発明で用いた試験方法、評価方法を説明する。
(評価方法1:スラリーの充填性)
化粧料基剤に揮発性溶媒を加えて混合して得られたスラリーを実施例及び比較例の充填機にて容器に充填し、充填されたスラリーの性状を目視にて観察し、以下の2段階の判定基準に従って判定した。
【0028】
(判定基準)
内容 : 判定
充填前のスラリーと比較して、ほとんど性状変化がない : ◎
充填前のスラリーと比較して、溶媒の染み出し又は粉体の固まり等のムラがある: ×
【0029】
(評価方法2:耐衝撃性)
実施例及び比較例の化粧料をそれぞれ5個用意し、コンパクト内に収容した状態で、40cmの高さから塩ビ板上に正立方向で繰り返し5回自由落下させ、落下後の中味表面状態を目視にて以下の基準に従って4段階評価した。そして化粧料毎に評点を付し、さらにn=5の評点の平均点を以下の4段階の判定基準に従って判定した。
【0030】
(評価基準)
内容 : 評点
変化なし : 4点
僅かにヒビ割れがあるが、使用性に問題なし: 3点
ヒビ割れ、スキマ有り : 2点
大きなヒビ割れやスキマ有り : 1点
(判定基準)
n=5の評点の平均点 : 判定
3.5以上 : ◎
3.0以上〜3.5未満 : ○
2.0以上〜3.0未満 : △
2.0未満 : ×
【0031】
(評価方法3,4:官能特性(滑らかなタッチ、瑞々しい質感、フィット感)及び化粧持続性)
化粧品評価専門パネル20名に実施例及び比較例の化粧料を使用してもらい、官能特性(滑らかなタッチ、瑞々しい質感、フィット感)及び化粧持続性について各自が以下の基準に従って5段階評価し、化粧料毎に評点を付し、さらに全パネルの評点の平均点を以下の4段階の判断基準に従って判定した。尚、化粧持続性については、化粧料塗布直後の状態と塗布後5時間(日常生活)の状態を比較し、評価した。
【0032】
(評価基準)
評価結果 : 評点
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
(判定基準)
評点の平均点 : 判定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0033】
実施例1〜4、及び比較例1‐1〜1‐5:パウダーファンデーション
表1に示す組成のパウダーファンデーションを下記の方法により調製した。
【0034】
(パウダーファンデーションの製造方法;実施例1〜4及び比較例1−1,1−2)
A.油性成分及び/又は多価アルコール成分9〜17を75℃に加熱溶解し、均一に分散する。
B.粉末成分1〜8をヘンシェルミキサーで均一に分散する。
C.Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基剤を得る。
D.Cの化粧料基剤100質量部に対して、成分18の精製水75質量部を添加し、均一混合して、スラリー状とする。
E.Dを金皿に充填し、表面に吸水シートを置き、多孔質吸引ヘッドを用いて吸引圧縮成型する。
スラリーの充填は、実施例1〜4においては一軸偏心ネジポンプ(筑陽工業所社製、スネークポンプ式充填機、PR2型))を使用して行い、比較例1‐1においてはピストンポンプ(マセマチック社製、AS-1型)を、比較例1‐2においてはプランジャーポンプ(輪野機器社製、A2−150型)をそれぞれ用いた。
F.Eを70℃の恒温槽に一晩放置し、精製水を完全に除去して、パウダーファンデーションを得た。
【0035】
(パウダーファンデーションの製造方法;比較例1−3)
A〜Bは上記実施例1〜4及び比較例1‐1,1‐2と同様の方法で行った。
C.Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、A及び成分18の精製水75質量部を添加し、均一混合してスラリー状とする。
D.Cを金皿に充填し、表面に吸水シートを置き、多孔質吸引ヘッドを用いて吸引圧縮成型する。
スラリーの充填は、一軸偏心ネジポンプ(筑陽工業所社製、スネークポンプ式充填機、PR2型)を使用して行った。
E.Dを70℃の恒温槽に一晩放置し、精製水を完全に除去して、パウダーファンデーションを得た。
【0036】
(パウダーファンデーションの製造方法;比較例1−4)
A〜Dは上記実施例1〜4及び比較例1‐1,1‐2と同様の方法で行った。
E.Dを乾燥して精製水を揮発させる。
F.Eを粉砕機により解砕し、乾燥化粧料基剤を得る。
G.Fを金皿に充填し、公知の方法で乾式圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【0037】
(パウダーファンデーションの製造方法;比較例1−5)
A〜Cは上記実施例1〜4及び比較例1‐1,1‐2と同様の方法で行った。
D.Cを金皿に充填し、公知の方法で乾式圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【0038】

【表1】

【0039】
なお、表中の各成分は以下のものを使用した。
*1 SA−タルクJA−68R (三好化成社)
*2 SA−セリサイトFSE (三好化成社)
*3 SA−チタンCR−50(80%) (三好化成社)
*4 SI01−4 ZnO−350 (大東化成工業社)
*5 KSG−16 (信越化学工業社)
*6 LUSPLAN PI−DA (日本精化社)
*7 DISG−2EX (HLB 4) (日本エマルジョン社)
*8 NIKKOL SI−10RV (HLB
5) (日光ケミカルズ社)
【0040】
表1から明らかなように、実施例1〜4のパウダーファンデーションは、油性成分及び/又は多価アルコール成分を粉末成分に分散した後、揮発性溶媒を加えて均一に湿式混合することで、溶媒中において油性成分及び/又は多価アルコール成分が粉体成分に均一に付着、被覆した状態のスラリーを得ることができた。また、一軸偏心ネジポンプを使用することで、上記スラリーの性状変化を起こすことなく、容器に定量的に充填することが可能であった。次いで、湿式成型することにより、残存溶媒の揮発後に生じる適度な空隙により固形粉末化粧料のパフへのとれが良好となった。また、粉体粒子の個々に油分が効率的に付着することで、粉っぽさがなく、滑らかなタッチで、フィット感等の官能特性に優れ、さらに耐衝撃性にも優れた固形粉末化粧料が得られた。
【0041】
実施例5:固形白粉
【0042】
【表2】

【0043】
(製法)実施例1〜4と同様の方法で固形白粉を得た。
【0044】
実施例6:頬紅
【0045】
【表3】

【0046】
(製法)実施例1〜4の精製水の代わりにイソパラフィン系炭化水素溶剤を用いた以外は、実施例1〜4と同様の方法で頬紅を得た。
【0047】
実施例7:アイシャドウ
【0048】
【表4】

【0049】
(製法)
A〜C 実施例1〜4と同様の方法で化粧料基剤を得る。
D.Cの化粧料基剤100質量部に対して、成分(16)のエタノール10質量部及び成分(17)の精製水50質量部を添加し、均一混合して、スラリー状とする。
E.底面に充填孔を有する樹脂皿の開口部を吸引シートを介在して多孔質吸引ヘッドで閉ざし、上記充填孔より一軸偏心ネジポンプ(筑陽工業所社製、スネークポンプ式充填機、PR2型)を用いて加圧充填(バックインジェクション)して成型する。
F.Eを70℃の恒温槽に一晩放置し、エタノール及び精製水を完全に除去して、アイシャドウを得た。
【0050】
実施例5〜7の化粧料は、滑らかなタッチ、瑞々しい質感、フィット感等の官能特性及び化粧持続性、耐衝撃性に優れた化粧料であった。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、滑らかなタッチ、瑞々しい質感、フィット感等の官能特性、化粧持続性に優れ、かつ良好な耐衝撃性を有したパウダーファンデーション、固形白粉、頬紅、アイシャドウ等の化粧料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、パウダーファンデーション、固形白粉、頬紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料の製造方法として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1〜3を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
工程1:粉末成分と、結合剤としての油性成分及び/又は多価アルコール成分を撹拌混合した後、粉砕機で解砕する工程
工程2:工程1で得た化粧料基剤100質量部に対して、沸点が200℃以下の揮発性溶媒20〜100質量部を加えて、スラリー化する工程
工程3:工程2で得たスラリーを一軸偏心ネジポンプを用いて、容器に充填し、真空吸引しながらプレス成形した後、残存する揮発性溶媒を乾燥除去する工程
【請求項2】
粉末成分を65〜97質量%、油性成分及び/又は多価アルコール成分を3〜35質量%含有する請求項1記載の固形粉末化粧料の製造方法。
【請求項3】
油性成分が、モノイソステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の固形粉末化粧料の製造方法。
【請求項4】
多価アルコール成分が、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソペンチルジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マルチトール、ラフィノースから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料の製造方法。

【公開番号】特開2011−105605(P2011−105605A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259121(P2009−259121)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】